JP2012250883A - 表面修飾炭素材料の製造方法、樹脂複合材料及び樹脂複合材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機溶媒及びポリオレフィン樹脂中において分散性に優れた表面修飾炭素材料を高い生産性で製造する方法、並びに上記表面修飾炭素材料とポリオレフィン樹脂との樹脂複合材料及び上記樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る工程と、前記超強酸混合液中において、前記ポリオレフィン樹脂により前記炭素材料を表面修飾することにより、表面修飾炭素材料を生成させる工程と、前記工程の後に、前記超強酸混合液から前記表面修飾炭素材料を分離することにより、前記表面修飾炭素材料を得る工程とを備える、表面修飾炭素材料の製造方法、前記表面修飾炭素材料とポリオレフィン樹脂材料とを含む樹脂複合材料及び樹脂複合材料の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る工程と、前記超強酸混合液中において、前記ポリオレフィン樹脂により前記炭素材料を表面修飾することにより、表面修飾炭素材料を生成させる工程と、前記工程の後に、前記超強酸混合液から前記表面修飾炭素材料を分離することにより、前記表面修飾炭素材料を得る工程とを備える、表面修飾炭素材料の製造方法、前記表面修飾炭素材料とポリオレフィン樹脂材料とを含む樹脂複合材料及び樹脂複合材料の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリオレフィン樹脂により表面修飾され、有機溶媒及びポリオレフィン樹脂中において分散性に優れた表面修飾炭素材料の製造方法、並びに上記表面修飾炭素材料により補強されたポリオレフィン樹脂複合材料及び上記樹脂複合材料の製造方法に関する。
近年、グラフェンシート構造を有する炭素材料は、高い弾性率や高い導電性を有することから注目されている。このようなグラフェン構造を有する炭素材料を、合成樹脂に複合することにより、合成樹脂からなる製品を補強したり、導電性を付与したりすることができる。特に、グラフェンシートやカーボンナノチューブ、薄片化黒鉛などは、ナノサイズであり、また比表面積が大きい。そのため、上記炭素材料を樹脂に複合させた場合には、上記効果がより発現できると考えられる。
一般的に複合材料としての効果を十分に発現するには、上記炭素材料がマトリクス樹脂に均一に分散された状態にあることが好ましい。しかしながら、上記炭素材料は、πスタッキング力による凝集力が大きく、上記マトリクス樹脂との相互作用も弱い。そのため、樹脂中の分散性が極めて低い。従って、上記炭素材料をマトリクス樹脂中に均一に分散することは困難である。
上記炭素材料の分散性を改善する方法としては、例えば、上記樹脂中に分散しやすい適切な分子を、上記炭素材料の表面に吸着または結合させることにより、上記炭素材料の表面を修飾する方法が挙げられる。しかしながら、上記炭素材料は、上述の非常に強いπスタッキング力のために有機溶媒に極めて分散し難い。従って、表面修飾を行うことが困難である。
一方、グラフェンを酸化することで得られる酸化グラフェンは、sp3構造を部分的に含んでいるため、酸化前のグラフェンよりもπスタッキング力が弱く、有機溶媒中における分散性が高められている。このような酸化グラフェンを有機溶媒中に分散させ、さらに表面修飾することにより、分散性を大幅に改善することができる。例えば、下記の非特許文献1には、有機イソシアネートにより表面修飾された酸化グラフェンが開示されている。非特許文献1によれば、表面修飾された酸化グラフェンは、表面に導入された有機イソシアネート分子によって、有機材料に対する分散性が大幅に改善している。
他方、下記の非特許文献2では、グラフェンはクロロスルホン酸に溶解することが報告されている。非特許文献2によれば、クロロスルホン酸中に溶解しているグラフェンは、凝集体ではなく理論的には単一分子として存在している。そのため、上記グラフェンは、表面修飾されやすい状態となっている。
Carbon 2006,Vol.44,p3342−3347
Nature Nanotechnology 2010、Vol.5、p406−411
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、グラフェンを酸化することにより酸化グラフェンを得る工程と、得られた酸化グラフェンを表面修飾させる工程との2つの工程が必要であった。そのため、このような方法で表面修飾を行うとグラフェンの酸化工程および表面修飾工程の両方が必要になり、生産性が悪いという問題があった。
これに対し、非特許文献2に記載のクロロスルホン酸中に溶解しているグラフェンを表面修飾することができれば、上記のようなグラフェンの酸化工程が不要となる。従って、生産性を向上することができると考えられる。しかしながら、クロロスルホン酸は極めて強い酸であるため、グラフェンの表面修飾に使用する表面修飾剤が分解または劣化してしまうという問題があった。そのため、クロロスルホン酸中での表面修飾は困難であった。
本発明の目的は、有機溶媒及びポリオレフィン樹脂中において分散性に優れた表面修飾炭素材料を高い生産性で製造する方法、並びに上記表面修飾炭素材料とポリオレフィン樹脂との樹脂複合材料及び上記樹脂複合材料の製造方法を提供することにある。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法は、グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る工程と、前記超強酸混合液中において、前記ポリオレフィン樹脂により上記炭素材料を表面修飾することにより、前記表面修飾炭素材料を生成させる工程と、前記工程の後に、前記超強酸混合液から前記表面修飾炭素材料を分離することにより、前記表面修飾炭素材料を得る工程とを備える。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法のある特定の局面では、前記超強酸がクロロスルホン酸である。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法の他の特定の局面では、前記グラフェン構造を有する炭素材料が黒鉛である。その場合には、黒鉛を超強酸に溶解または分散する際において、黒鉛を元の黒鉛より薄い積層体またはグラフェンシート単体へと剥離することができる。従って、ポリオレフィン樹脂中に分散させた際に、前記ポリオレフィン樹脂の機械的強度をより効果的に高めることのできる表面修飾炭素材料を得ることができる。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法の別の特定の局面では、前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである。
本発明の樹脂複合材料は、前記製造方法により得られた表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを含んでいる。
本発明の樹脂複合材料の製造方法は、前記製造方法により得られた表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを混合することにより、前記表面修飾炭素材料を前記ポリオレフィン樹脂材料中に分散させる。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法によれば、グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを超強酸中に溶解または分散させるため、上記炭素材料は凝集することなく超強酸中に分散する。加えて、上記ポリオレフィン樹脂の一部が超強酸により分解し、上記ポリオレフィン樹脂の一部にフリーラジカルやカチオンが発生する。それによって、一部が分解した上記ポリオレフィン樹脂と上記炭素材料との間においてグラフト反応が進行し、化学結合が生じる。従って、上記ポリオレフィン樹脂によって上記炭素材料の表面が修飾された表面修飾炭素材料を得ることができる。
上記のように、グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを超強酸中に溶解または分散させることにより、上記炭素材料の表面を修飾することができるため、少ない工程により表面修飾炭素材料を得ることができる。従って、表面修飾炭素材料を高い生産性により得ることができる。
さらに、本発明の表面修飾炭素材料では、上記ポリオレフィン樹脂によって表面修飾されているため、有機溶媒及びポリオレフィン樹脂中における分散性が高められる。従って、ポリオレフィン等の低極性樹脂中に本発明の表面修飾炭素材料を分散させることにより得られた樹脂複合材料の機械的強度を効果的に高めることができる。
本発明の樹脂複合材料は、本発明の製造方法により得られた上記表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを含んでいるため、上記表面修飾炭素材料が上記ポリオレフィン樹脂材料中に均一に分散している。従って、樹脂複合材料の機械的強度を効果的に高めることができる。
加えて、本発明の樹脂複合材料の製造方法では、上記表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを混合することにより、前記表面修飾炭素材料を前記ポリオレフィン樹脂材料中に均一に分散させることができる。従って、機械的強度が効果的に高められた樹脂複合材料を得ることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
(表面修飾炭素材料)
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法では、まずグラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る。それによって、上記超強酸混合液は、上記炭素材料及び上記ポリオレフィン樹脂の超強酸溶液または分散液となる。以下、本発明において、混合液とは、溶液または分散液のことをいう。
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法では、まずグラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る。それによって、上記超強酸混合液は、上記炭素材料及び上記ポリオレフィン樹脂の超強酸溶液または分散液となる。以下、本発明において、混合液とは、溶液または分散液のことをいう。
本発明において、超強酸とは、100%硫酸よりも酸性度が高い酸をいい、具体的には、100%硫酸の酸解離定数よりも大きい酸解離定数を有する酸を意味する。上記超強酸としては、例えば、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、発煙硫酸等が挙げられる。上記超強酸は単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記超強酸は、その高い酸性度によって上記炭素材料を溶解することができるため、上記炭素材料は上記超強酸混合液中において凝集することなく溶解または分散することができる。それによって、上記炭素材料は、後述のように、ポリオレフィン樹脂による表面修飾されやすくなる。
上記炭素材料としては、好ましくは、グラフェン、酸化グラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ及びフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
上記炭素材料としては、より好ましくは、多数のグラフェンシートの積層体である黒鉛が選択される。その場合には、黒鉛を構成する多数のグラフェンシートが超強酸混合液中において剥離される。それによって、剥離された上記黒鉛は、元の黒鉛より薄い積層体である薄片化黒鉛またはグラフェンシート単体として、超強酸中に溶解または分散される。そのため、本発明の製造方法によって、剥離された炭素材料が表面修飾された表面修飾炭素材料を得ることができる。上記のような表面修飾炭素材料は、ポリオレフィン樹脂材料等のマトリクス樹脂中に分散された場合において、グラフェンシート積層面に交差する方向に加わる外力に対する補強効果を効果的に高めることができる。
上記ポリオレフィン樹脂は、上記強酸中においてその一部が上記炭素材料の表面に結合できる限りにおいて、特に限定されない。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;マレイン酸変性ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン;エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ブテン単独重合体、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンの単独重合体及び共重合体等が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が4000〜1000000g/モルの範囲であることが好ましい。上記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が4000g/モル未満であると、得られる表面修飾炭素材料の分散性が充分に高められないことがある。上記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が1000000g/モルを超えると、上記ポリオレフィン樹脂が上記超強酸中に充分に溶解または分散されないことがあり、上記炭素材料を充分に表面修飾できないことがある。
なお、本発明の製造方法により得られた表面修飾炭素材料を、マトリクス樹脂と混合させて樹脂複合材料を得る場合には、上記ポリオレフィン樹脂は、上記マトリクス樹脂と同一の樹脂を用いることが好ましい。それによって、上記マトリクス樹脂中における上記表面修飾炭素材料の分散性をより高めることができる。例えば、上記マトリクス樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、上記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂の量は特に限定されないが、上記炭素材料1重量部に対して0.5〜1000重量部の範囲であることが好ましい。0.5重量部未満であると、得られる表面修飾炭素材料の分散性が充分に高められないことがある。1000重量部を超えると、上記超強酸混合液中に存在する過剰量の上記ポリオレフィンによって、得られる表面修飾炭素材料を上記超強酸混合液から分離することが困難となることがある。
上記炭素材料及び上記ポリオレフィン樹脂を上記超強酸中に溶解または分散する順序は特に限定されず、上記炭素材料及び上記ポリオレフィン樹脂のうちどちらを先に溶解させてもよく、両者を同時に溶解させてもよい。もっとも、上記ポリオレフィン樹脂を上記炭素材料よりも先に上記超強酸中に溶解または分散させると、上記炭素材料に表面修飾する前に上記ポリオレフィン樹脂が分解されてしまうことがある。そのため、先に上記炭素材料を上記超強酸中に溶解または分散させることが好ましい。
次に、上記超強酸混合液中において、上記ポリオレフィン樹脂により上記炭素材料を表面修飾することにより、上記表面修飾炭素材料を生成させる。それによって、有機溶媒及びポリオレフィン樹脂中における分散性が高められる。上記表面修飾は、例えば、上記超強酸混合液中の混合等により行うことができる。
上記超強酸混合液中では、上記超強酸混合液中に溶解または分散された上記ポリオレフィン樹脂の一部が上記超強酸の高い酸性度により分解し、上記ポリオレフィン樹脂の一部にフリーラジカルやカチオンが発生する。それによって、一部が分解した上記ポリオレフィン樹脂と上記炭素材料との間においてグラフト反応が進行し、化学結合が生じる。従って、上記強酸中において、一部が分解した上記ポリオレフィン樹脂が上記炭素材料の表面に結合した表面修飾炭素材料が生成される。
上記表面修飾を行う時間は特に限定されないが、1分〜100時間の範囲であることが好ましい。1分以下だと、上記ポリオレフィン樹脂の分解及びフリーラジカルやカチオン発生が充分に起こらず、表面修飾が充分に行われないことがある。100時間を超えると、上記ポリオレフィン樹脂の分解が進行しすぎることにより、得られる上記表面修飾炭素材料の分散性が充分に高められないことがある。
次に、上記超強酸混合液から、生成した上記表面修飾炭素材料を分離することにより、上記表面修飾炭素材料を得る。上記分離方法は特に限定されず、適宜の方法により上記表面修飾炭素材料を得ることができる。上記分離方法としては、例えば、上記表面修飾炭素材料を析出させて濾過する方法や、超強酸を蒸発させ上記炭素材料を得る方法などが挙げられる。
上記分離方法としては、好ましくは、上記超強酸混合液を氷水へと滴下することによって上記表面修飾炭素材料を析出させた後、析出した上記表面修飾炭素材料を濾過することにより得る方法を用いることができる。その場合には、上記超強酸は水を加えると激しく発熱することがあるため、上記分離の際には氷水を常に冷却しつつ、上記超強酸混合液を水中へと一滴ずつ滴下することが安全上の理由において好ましい。
(樹脂複合材料)
本発明の樹脂複合材料は、本発明の製造方法により得られた上記表面修飾炭素材料と、マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料とを含んでいる。
本発明の樹脂複合材料は、本発明の製造方法により得られた上記表面修飾炭素材料と、マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料とを含んでいる。
上述のように、上記表面修飾炭素材料は、上記ポリオレフィン樹脂により表面修飾されているため、ポリオレフィン樹脂材料中における分散性が高められている。そのため、上記樹脂複合材料中における上記表面修飾炭素材料は、上記マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料中において均一に分散している。従って、上記樹脂複合材料の機械的強度が効果的に高められる。
上記炭素材料の配合割合は特に限定されないが、上記マトリクス樹脂100重量部に対し、0.1〜40重量部の範囲とすることが好ましい。0.1重量部未満では、上記酸化薄片化黒鉛による補強効果が不十分となることがある。40重量部を超えると、樹脂複合材料に高い剛性が得られる半面、脆くて割れやすくなることがある。
なお、上記表面修飾炭素材料の製造の際に用いた上記炭素材料が黒鉛である場合には、上述のように黒鉛が上記超強酸中において剥離される。そのため、上記表面修飾炭素材料は、元の黒鉛より薄い積層体である薄片化黒鉛またはグラフェンシート単体が、上記表面修飾に用いられたポリオレフィン樹脂により修飾されたものとなる。それによって、上記表面修飾炭素材料は、ポリオレフィン樹脂材料等のマトリクス樹脂中に分散された場合において、グラフェンシート積層面に交差する方向に加わる外力に対する補強効果を効果的に高めることができる。従って、このような上記表面修飾炭素材料を含む上記樹脂複合材料では、機械的強度をより効率的に高めることができる。
上記マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料は特に限定されず、適宜のポリオレフィン樹脂材料を用いる事ができる。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;マレイン酸変性ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン;エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ブテン単独重合体、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンの単独重合体及び共重合体等が挙げられる。上記マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料は、上述の製造方法において用いられた表面修飾用のポリオレフィン樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。もっとも、両者が同一である場合には、上記表面修飾炭素材料の上記マトリクス樹脂中における分散性がより高められるため、好ましい。
上記樹脂複合材料は、さらに相溶化剤、酸化防止剤等の様々な添加剤を含んでいてもよい。上記相溶化剤としては、例えば、マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、アミン系もしくはイオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。
上記樹脂複合材料の製造方法は、本発明の製造方法により得られた上記表面修飾炭素材料と、マトリクス樹脂であるポリオレフィン樹脂材料とを混合することにより、前記表面修飾炭素材料を前記ポリオレフィン樹脂材料中に均一に分散させることからなる。それによって、機械的強度が効果的に高められた樹脂複合材料を得ることができる。
上記混合方法は、上記表面修飾炭素材料を上記ポリオレフィン樹脂材料中に均一に分散することができる限りにおいて、特に限定されない。上記混合方法としては、例えば、上記表面修飾炭素材料及び上記ポリオレフィン樹脂材料の共溶媒中における混合や、プラスト等による溶融混練等が挙げられる。
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例において、以下の炭素材料、超強酸、表面修飾用樹脂及びマトリクス樹脂を使用した。
(1)炭素材料
・黒鉛:SECカーボン社製、商品名「SNO−5」、平均粒径5μm、比表面積15m2/g
・カーボンナノチューブ(CNT):東京化成社製、製品コード「C2151」、直径10〜20nm、長さ5〜15μm
(2)超強酸
・クロロスルホン酸:東京化成社製
・フルオロスルホン酸:シグマアルドリッチ社製
(3)表面修飾用樹脂及びマトリクス樹脂
・ポリプロピレン:プライムポリマー社製 商品名「J−721GR」、引張弾性率1.2GPa
・ポリエチレン:プライムポリマー社製 商品名「7800M」、引張弾性率1.2GPa
・黒鉛:SECカーボン社製、商品名「SNO−5」、平均粒径5μm、比表面積15m2/g
・カーボンナノチューブ(CNT):東京化成社製、製品コード「C2151」、直径10〜20nm、長さ5〜15μm
(2)超強酸
・クロロスルホン酸:東京化成社製
・フルオロスルホン酸:シグマアルドリッチ社製
(3)表面修飾用樹脂及びマトリクス樹脂
・ポリプロピレン:プライムポリマー社製 商品名「J−721GR」、引張弾性率1.2GPa
・ポリエチレン:プライムポリマー社製 商品名「7800M」、引張弾性率1.2GPa
(実施例1〜8)
上記の炭素材料、超強酸及び表面修飾用樹脂を、下記の表1に記載の組み合わせにより使用して、以下の方法により表面修飾炭素材料を製造した。
上記の炭素材料、超強酸及び表面修飾用樹脂を、下記の表1に記載の組み合わせにより使用して、以下の方法により表面修飾炭素材料を製造した。
上記炭素材料を上記超強酸50mg/mlに溶解させ、上記炭素材料の超強酸混合液を得た。次に、上記表面修飾用樹脂を粉状に粉砕した後、粉砕した上記表面修飾用樹脂1.0gを上記炭素材料の上記超強酸混合液に添加した。続いて、上記炭素材料の上記超強酸混合液を室温で12時間マグネチックスターラーにより攪拌した。得られた溶液を1Lの氷水へと徐々に滴下して、表面修飾炭素材料を析出させた。上記氷水溶液を減圧濾過することにより上記表面修飾炭素材料を回収した後、上記表面修飾炭素材料をエタノールで洗浄し、真空乾燥させ、表面修飾炭素材料を得た。
(比較例1〜2)
未処理の黒鉛またはCNTを、比較例1〜2の炭素材料とした。
未処理の黒鉛またはCNTを、比較例1〜2の炭素材料とした。
(分散性の評価)
実施例1〜8で得た表面修飾炭素材料及び比較例1〜2で得た未処理の炭素材料について、以下の方法により溶媒中での分散性を評価した。
実施例1〜8で得た表面修飾炭素材料及び比較例1〜2で得た未処理の炭素材料について、以下の方法により溶媒中での分散性を評価した。
各炭素材料をトルエン中に添加し、1mg/mlの濃度の混合液を得た。上記混合液をマグネチックスターラーで5分間攪拌し分散させた。その後、攪拌を止めて、上記混合液を3時間静置した。その後、上記混合液を目視により観察し、上記炭素材料の分散性を評価した。結果を表1に示す。
表1より明らかなように、比較例1〜2で得た未処理の炭素材料では、上記混合液中に沈殿が見られた。これに対し、実施例1〜8で得た表面修飾炭素材料では、上記混合液中に沈殿が見られなかった。これは、実施例1〜8ではポリプロピレンまたはポリエチレンにより表面修飾された炭素材料の修飾部分により、有機溶媒に対する親和性が高められていることによるものと考えられる。従って、実施例1〜8で得た表面修飾炭素材料では、トルエン溶媒中における分散性が高められている。
(実施例9〜16)
実施例1〜8により得られた表面修飾炭素材料50mgと、マトリクス樹脂としてのポリプロピレン1.6gとを、o−ジクロロベンゼン溶媒300mlに添加し、表面修飾炭素材料のo−ジクロロベンゼン混合液を得た。その後、上記混合液をホットスターラー上により130℃で攪拌して、上記ポリプロピレンを溶解させた。その後、上記混合液を、常温のイソプロパノール2000ml中にスポイトを用いて滴下することにより、樹脂複合材料を析出させた。続いて、上記樹脂複合材料を濾過及び乾燥することにより、液体を除去した。その後、上記樹脂複合材料を油圧プレスにより190℃で加熱圧縮してシート状に加工し、厚み0.5mmの樹脂複合材料シートを得た。
実施例1〜8により得られた表面修飾炭素材料50mgと、マトリクス樹脂としてのポリプロピレン1.6gとを、o−ジクロロベンゼン溶媒300mlに添加し、表面修飾炭素材料のo−ジクロロベンゼン混合液を得た。その後、上記混合液をホットスターラー上により130℃で攪拌して、上記ポリプロピレンを溶解させた。その後、上記混合液を、常温のイソプロパノール2000ml中にスポイトを用いて滴下することにより、樹脂複合材料を析出させた。続いて、上記樹脂複合材料を濾過及び乾燥することにより、液体を除去した。その後、上記樹脂複合材料を油圧プレスにより190℃で加熱圧縮してシート状に加工し、厚み0.5mmの樹脂複合材料シートを得た。
(実施例17〜24)
マトリクス樹脂としてポリエチレンを用いたこと以外は実施例9〜16と同様にして、厚み0.5mmの樹脂複合材料シートを得た。
マトリクス樹脂としてポリエチレンを用いたこと以外は実施例9〜16と同様にして、厚み0.5mmの樹脂複合材料シートを得た。
(比較例3〜4)
表面修飾炭素材料に代えて未処理の黒鉛またはCNTを用いたこと以外は実施例9と同様にして、樹脂複合材料シートを得た。
表面修飾炭素材料に代えて未処理の黒鉛またはCNTを用いたこと以外は実施例9と同様にして、樹脂複合材料シートを得た。
(比較例5〜6)
表面修飾炭素材料に代えて未処理の黒鉛またはCNTを用いたこと以外は実施例17と同様にして、樹脂複合材料シートを得た。
表面修飾炭素材料に代えて未処理の黒鉛またはCNTを用いたこと以外は実施例17と同様にして、樹脂複合材料シートを得た。
(引張弾性率)
実施例9〜24及び比較例3〜6の樹脂複合材料シートの23℃における引張弾性率を、JIS K6767に準拠して測定した。結果を下記の表2に示す。
実施例9〜24及び比較例3〜6の樹脂複合材料シートの23℃における引張弾性率を、JIS K6767に準拠して測定した。結果を下記の表2に示す。
表2から明らかなように、実施例9〜24の樹脂複合材料シートは、比較例3〜6の樹脂複合材料シートに比べて、引張弾性率が大幅に高められていることがわかる。これは、分散性が高められた実施例1〜8の表面修飾炭素材料を用いたことにより、上記表面修飾炭素材料がポリプロピレンまたはポリエチレン中に均一に分散したことによるものと考えられる。
Claims (6)
- グラフェン構造を有する炭素材料とポリオレフィン樹脂とを、超強酸中に溶解または分散させることにより、超強酸混合液を得る工程と、
前記超強酸混合液中において、前記ポリオレフィン樹脂により上記炭素材料を表面修飾することにより、表面修飾炭素材料を生成させる工程と、
前記工程の後に、前記超強酸混合液から前記表面修飾炭素材料を分離することにより、前記表面修飾炭素材料を得る工程とを備える、表面修飾炭素材料の製造方法。 - 前記超強酸がクロロスルホン酸である、請求項1に記載の表面修飾炭素材料の製造方法。
- 前記グラフェン構造を有する炭素材料が黒鉛である、請求項1または2に記載の表面修飾炭素材料の製造方法。
- 前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面修飾炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られた表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを含む樹脂複合材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られた表面修飾炭素材料と、ポリオレフィン樹脂材料とを混合することにより、前記表面修飾炭素材料を前記ポリオレフィン樹脂材料中に分散させる、樹脂複合材料の製造方法。
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