JP2012246466A - 重合体、複合体および重合体の製造方法 - Google Patents

重合体、複合体および重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性および他の材料との密着性に優れる、シクロオレフィンポリマー系の結晶性重合体を提供すること。
【解決手段】ジシクロペンタジエンとオキシシリル基を有するノルボルネン系化合物とを開環共重合した後、水素添加することにより得ることができる、ジシクロペンタジエンに由来する繰り返し単位A98〜99.9999モル%とオキシシリル基を有するノルボルネン系化合物に由来する繰り返し単位B0.0001〜2モル%とを含んでなる、結晶性を有する重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合体、複合体および重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性および他の材料との密着性に優れるシクロオレフィンポリマー系の結晶性重合体と、その製造方法と、その重合体を用いてなる複合体に関する。
例えば特許文献1に記載されるようなジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、いわゆるシクロオレフィンポリマーの一種であり、透明性、低複屈折性、成形加工性などに優れることから、光学用途をはじめとして、種々の用途に適用できる材料として用いられている。
特許文献1に記載されたものもそうであるように、ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、アタクチックな構造を有する非晶性の重合体として得られることが一般的である。しかし、アタクチックな構造を有する非晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、その用途によっては、耐熱性、機械強度、耐溶剤性などが不十分となる場合があるものである。そこで、それらの性能を改良する手法として、ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物に立体規則性を有させることにより、結晶性を付与することが提案されている。
例えば、非特許文献1には、ビフェノキシ基が2つ配位した、タングステンまたはモリブデンの錯体を重合触媒として用いることにより、メソ・ダイアッドの割合が50%を超える、すなわち、アイソタクチック構造を有する、結晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物が得られることが開示されている。また、特許文献2および特許文献3には、窒素原子上に特定構造の置換基を有するイミド基を持つタングステン錯体を重合触媒として用いることにより、ラセモ・ダイアッドの割合が51%以上の、すなわち、シンジオタクチック構造を有する、結晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物が得られることが開示されている。
特開平11−124429号公報 特開2005−89744号公報 特開2006−52333号公報
高分子学会予稿集,2002年,第8巻,p.1629−1630
例えば特許文献2や特許文献3に記載されるような結晶性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は耐熱性に優れる重合体であるが、本発明者らが検討したところ、他の材料と密着させることが困難であるという性質をも有するものであることが明らかとなった。他の材料と密着性が不十分であると、他の材料との複合体を構成するための材料として適用することが困難となるので、用途の幅を広げる観点から、その改良が望まれるといえる。
そこで、本発明は、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物について、元来の特長である高耐熱性を維持しつつ、他の材料との密着性を改良することにより、耐熱性および他の材料との密着性に優れる、シクロオレフィンポリマー系の結晶性重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、ジシクロペンタジエンの開環重合体を得るにあたり、オキシシリル基を含むノルボルネン系化合物を特定割合で共重合させた上で、それにより得られる開環重合体に水素添加を行って結晶性の重合体を得ることにより、高耐熱性などの結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が元来有する特長を備えながら、他の材料との密着性にも優れる重合体が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、下記の式(1)で表される繰り返し単位A98〜99.9999モル%と下記の式(2)で表される繰り返し単位B0.0001〜2モル%とを含んでなる結晶性を有する重合体が提供される。
Figure 2012246466
Figure 2012246466
(式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
上記の重合体は、繰り返し単位Aについてのラセモ・ダイアッドの割合が60%以上であることが好ましい。
上記の重合体は、融点が250℃以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の重合体を成形してなる成形体に、硬化性樹脂を塗布して硬化させて得られる複合体が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の重合体の製造方法であって、重合触媒の存在下で、ジシクロペンタジエンおよび下記の式(3)で表される化合物を含んでなる単量体混合物を開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法が提供される。
Figure 2012246466
(式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
本発明によれば、耐熱性および他の材料との密着性に優れる、シクロオレフィンポリマー系の結晶性重合体が提供される。
本発明の重合体は、下記の式(1)で表される繰り返し単位A98〜99.9999モル%と下記の式(2)で表される繰り返し単位B0.0001〜2モル%とを含んでなり、結晶性を有する重合体である。
Figure 2012246466
Figure 2012246466
(式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
式(1)で表される繰り返し単位Aは、ジシクロペンタジエンを開環重合して得られる繰り返し単位の全ての炭素−炭素二重結合を水素化することにより得ることができる繰り返し単位である。本発明の重合体における繰り返し単位Aの含有量は、全繰り返し単位に対して、98〜99.9999モル%であることが必要であり、98.5〜99.999モル%であることが好ましく、99.0〜99.99モル%であることがより好ましい。繰り返し単位Aの含有量が少なすぎると、重合体の耐熱性が不十分となるおそれがあり、繰り返し単位Aの含有量が多すぎると、重合体の他の材料との密着性が不十分となるおそれがある。
式(2)で表される繰り返し単位Bは、後述する式(3)で表される化合物を開環重合して得られる繰り返し単位について、少なくとも主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化し、さらに必要に応じて主鎖中以外に存在する炭素−炭素二重結合を水素化することにより得ることができる、オキシシリル基を含む繰り返し単位である。式(2)においてR〜Rとして示される置換基は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;からなる群から選択される基であるが、少なくとも1つがオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である必要がある。なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(2)においてR〜Rとして示される置換基となりうる、オキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基は、ケイ素−酸素結合を含有する基であれば特に限定されず、例えば、アルコキシシリル基やアリーロキシシリル基などのヒドロカルビルオキシシリル基、シラノール基、シロキサン基やこれらの基を含有する炭素数0〜20の基を挙げることができる。オキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基として、特に好ましい基としては、ヒドロカルビルオキシシリル基および/またはシラノール基を含有する炭素数0〜20の基を挙げることができ、そのなかでも下記の式(4)で表される基が特に好ましい。
Figure 2012246466
(式(4)中、Rは単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1〜3の整数である。R10およびR11のそれぞれが複数存在する場合、それらの基は同じ基であっても異なる基であってもよい。)
式(4)において、Rは単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基であればよいが、得られる重合体の他の材料との密着性を特に良好とする観点からは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2〜9の2価の炭化水素基であることが特に好ましい。
式(2)においてR〜Rとして示される置換基となりうる、オキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基以外の置換基は、水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基(但し、オキシシリル基を除く)を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;からなる群から選択される基であればよいが、これらのなかでも、水素原子またはケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基(但し、オキシシリル基を除く)を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
式(2)においてR〜Rとして示される置換基のうち、オキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基の数は、1〜4個のいずれであってもよいが、単量体や重合体の合成を容易にする観点からは、1個または2個であることが好ましく、1個であることが特に好ましい。
式(2)におけるnの数は0〜2の整数のいずれであってもよいが、単量体の合成容易性や得られる重合体の融点を適度なものとする観点からは、0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
本発明の重合体における繰り返し単位Bの含有量は、全繰り返し単位に対して、0.0001〜2モル%であることが必要であり、0.001〜1.5モル%であることが好ましく、0.01〜1.0モル%であることがより好ましい。繰り返し単位Bの含有量が少なすぎると、重合体の他の材料との密着性が不十分となるおそれがあり、繰り返し単位Bの含有量が多すぎると、重合体の耐熱性が不十分となるおそれある。なお、本発明の重合体は、繰り返し単位Bとして、1種の繰り返し単位のみを含むものであってもよいし、2種以上の繰り返し単位Bを含むものであってもよい。
本発明の重合体は、繰り返し単位Aおよび繰り返し単位Bのみからなるものであってよいが、繰り返し単位Aおよび繰り返し単位Bの含有量が上記の範囲内となる限りにおいて、さらに他の繰り返し単位を含むものであってもよい。本発明の重合体に含有されうる繰り返し単位Aおよび繰り返し単位B以外の繰り返し単位としては、ジシクロペンタジエンを開環重合することにより得られる繰り返し単位(全ての炭素−炭素二重結合が水素化されていないもの)、ジシクロペンタジエンを開環重合して得られる繰り返し単位の炭素−炭素二重結合の一部を水素化することにより得ることができる繰り返し単位、後述する式(3)で表される化合物を開環重合して得られる繰り返し単位(主鎖中の炭素−炭素二重結合が水素化されていないもの)、ジシクロペンタジエンおよび後述する式(3)で表される化合物以外の単量体に由来する繰り返し単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の重合体における、繰り返し単位Aおよび繰り返し単位B以外の繰り返し単位の含有量は、1.9999モル%以下であり、1.499モル%以下であることが好ましく、0.99モル%以下であることがより好ましい。繰り返し単位Aおよび繰り返し単位B以外の繰り返し単位の含有量が多すぎると、重合体の他の材料との密着性や耐熱性が不十分となるおそれある。
本発明の重合体における、各繰り返し単位の配列様式は、特に限定されず、ランダム、ブロック構造、テーパー構造などのいずれであってもよいが、繰り返し単位Bの含有量制御の観点からは、ランダムに各繰り返し単位が配列した構造を有することが好ましい。
本発明の重合体の立体規則性の有無は、重合体が結晶性を有するものとなる限りにおいて特に限定されるものではないが、重合体に結晶性に付与して耐熱性に優れたものとする観点からは、立体規則性を有するものである(すなわち、アタクチック構造以外である)ことが好ましく、特にシンジオタクチック構造を有するものであることが好ましい。より具体的には、繰り返し単位Aについてのラセモ・ダイアッドの割合が、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。繰り返し単位Aについてのラセモ・ダイアッドの割合が高いものほど、すなわち、シンジオタクチック立体規則性の高いものほど、高い融点を有する耐熱性に優れた重合体となる。なお、重合体の繰り返し単位Aについてのラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトル分析で測定し、定量することができる。具体的な定量の方法としては、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定する方法を挙げることができる。
本発明の重合体は、結晶性を有するものであればよく、すなわち、常温(23℃)を超える融点を有するものであればよい。但し、重合体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、250℃以上の融点を有するものであることが好ましく、255〜290℃の融点を有するものであることが好ましい。
本発明の重合体を得る方法は、結晶性を有する目的の構造の重合体が得られる方法である限りにおいて特に限定されるものではないが、以下に述べる本発明の重合体の製造方法が好適である。すなわち、本発明の重合体の製造方法は、重合触媒の存在下で、ジシクロペンタジエンおよび下記の式(3)で表される化合物を含んでなる単量体混合物を開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法である。
Figure 2012246466
(式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
本発明の重合体の製造方法で用いる単量体混合物は、最終的に目的とする重合体の繰り返し単位Aを構成するための単量体として、ジシクロペンタジエンを含むものである。ジシクロペンタジエンには、エンド体およびエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体およびエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、最終的に得られる重合体の結晶性を高め、耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体またはエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
また、本発明の重合体の製造方法で用いる単量体混合物は、最終的に目的とする重合体の繰り返し単位Bを構成するための単量体として、式(3)で表される化合物を含むものである。式(3)においてR〜Rとして示される置換基は、式(2)においてR〜Rとして示される置換基と同様、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;からなる群から選択される基であるが、少なくとも1つがオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である必要がある。なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(3)においてR〜Rとして示される置換基として好ましい置換基は、式(2)においてR〜Rとして示される置換基として好ましい置換基として挙げたものと同様である。また、式(3)におけるnの数は0〜2の整数のいずれであってもよいが、0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
式(3)で表される化合物の具体例としては、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシラン、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)メチルトリメトキシシラン、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)メチルトリエトキシシラン、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)フェニルトリメトキシシラン、2−[4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)フェニル]エチルトリメトキシシラン、5−(トリメトキシシリルメトキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−(3−ジメチルメトキシシリルプロポキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−(3−ジメチルメトキシシリルプロポキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)トリメトキシシラン、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)トリエトキシシラン、5,6−ジ(トリエトキシシリル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エンを挙げることができる。なお、式(3)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の重合体の製造方法では、本発明を逸脱しない範囲において、単量体混合物に、ジシクロペンタジエンおよび式(3)で表される化合物以外の単量体を含ませてもよい。ジシクロペンタジエンおよび式(3)で表される化合物以外の単量体としては、オキシシリル基を含まないノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、および環状ジエン、ならびにこれらの誘導体を挙げることができる。
本発明の重合体の製造方法で用いる単量体混合物における各単量体の組成比は、目的とする重合体の各繰り返し単位の組成比に応じて決定すればよい。
本発明の重合体の製造方法で用いる重合触媒は、ジシクロペンタジエンおよび式(3)で表される化合物を開環共重合させることができるものであって、最終的に目的とする重合体に結晶性を付与できるものであれば、特に限定されない。但し、最終的に目的とする重合体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を与えることができる重合触媒を用いることが好ましく、なかでも、下記の式(5)で表される金属化合物を含んでなる重合触媒が好適である。
M(NR12)X4−a(OR13・L (5)
(式(5)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、R12は3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH14で表される基であり、R13は置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0または1であり、bは0〜2の整数である。R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
式(5)で表される金属化合物を構成する金属原子(式(5)中のM)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデンまたはタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
式(5)で表される金属化合物は、金属イミド結合を含んでなるものである。金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基(式(5)中のR12)は、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH14(但し、R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)で表される基である。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基;などが挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、無置換フェニル基や、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基などの二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基などの三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基などの置換基を有していてもよい2−ナフチル基;を挙げることができる。
式(5)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(5)中のR12)として用いられ得る、−CH14で表される基において、R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基を表す。このR14で表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
式(5)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(5)中のR12)として用いられ得る、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、およびこれらの基の水素原子が他の置換基に置き換わってなるアリール基などが挙げられる。また、このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
14で表される基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの炭素数が1〜20のアルキル基が特に好適に用いられる。
式(5)で表される金属化合物は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を3個または4個有してなる。すなわち、式(5)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、式(5)で表される金属化合物においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
式(5)で表される金属化合物は、1個の金属アルコキシド結合または1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合または金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(5)中のR13)は、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このR13で表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR14で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
式(5)で表される金属化合物は、1個または2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(5)中のL)としては、例えば、周期律表第14族または第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジンなどのアミン類;を挙げることができる。これらの中でも、エーテル類が特に好適に用いられる。
本発明の重合体の製造方法で用いる重合触媒として、特に好適に用いられる式(5)で表される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(5)中のMがタングステン原子で、かつ、R12がフェニル基である化合物)を挙げることができ、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体が特に好適である。
式(5)で表される金属化合物は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、または一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、および必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合することなど(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された式(5)で表される金属化合物は、結晶化などにより精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま重合触媒として使用することもできる。
重合触媒として用いる式(5)で表される金属化合物の使用量は、(金属化合物:用いる単量体全体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000でとなる量で用いる。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
式(5)で表される金属化合物を重合触媒として用いるにあたっては、式(5)で表される金属化合物を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点からは式(5)で表される金属化合物と有機金属還元剤とを併用することが好ましい。用いられ得る有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族の有機金属化合物を挙げることができる。その中でも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、または有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウムまたは有機スズが特に好ましく用いられる。有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミドなどを挙げることができる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシドなどを挙げることができる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。有機金属還元剤の使用量は、式(5)で表される金属化合物に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、生じる開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
開環重合反応は、単量体混合物と、式(5)で表される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始することができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体混合物に式(5)で表される金属化合物と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体混合物と式(5)で表される金属化合物との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体混合物と有機金属還元剤との混合物に式(5)で表される金属化合物を添加して混合してもよい。また、各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。
有機溶媒中の重合反応時における単量体混合物の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体混合物の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、重合触媒の安定化、重合反応の速度および重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテートなどのエステル類;アセトニトリルベンゾニトリルなどのニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリンなどのアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジンなどのピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類;などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性調整剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなどの酸素含有ビニル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン;を挙げることができる。添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体混合物に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
重合温度は特に制限はないが、通常、−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
上述したような式(5)で表される金属化合物を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件で単量体混合物の開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有する開環共重合体を得ることができる。水素化反応で開環共重合体のタクチシチーが変化することはないので、このシンジオタクチック立体規則性を有する開環共重合体を水素化反応に供することにより、シンジオタクチック立体規則性を有することに基づいて結晶性を有する、開環共重合体水素化物である目的の重合体を得ることができる。なお、開環重共合体のシンジオタクチック立体規則性の度合いは、重合触媒の種類を選択することなどにより、調節することが可能である。
水素化反応に供する開環共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算で10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する開環共重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性と耐熱性とのバランスに優れた重合体を得ることができる。開環共重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量などを調節することにより、調節することができる。
水素化反応に供する開環共重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.5〜4.0であり、好ましくは1.6〜3.5である。このような分子量分布を有する開環共重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性に優れた重合体を得ることができる。開環共重合体の分子量分布は、重合反応時における単量体混合物の添加方法や単量体混合物の濃度により、調節することができる。
開環共重合体の水素化反応(重合体主鎖中およびジシクロペンタジエンに由来する繰り返し単位中に存在する二重結合の水素化)は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどの貴金属錯体触媒を挙げることができる。
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの触媒系が挙げられる。
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。水素化反応後は、常法に従って目的の重合体を回収すればよく、重合体の回収にあたっては、ろ過などの手法により、触媒残渣を除去することができる。
開環共重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。水素化率が高くなるほど、最終的に得られる重合体の耐熱性が良好なものとなる。
以上のように開環重合体を水素化反応に供して得られる重合体は、従来公知の変性反応に付して、官能基を導入したり、重合体中に含まれる官能基を他の官能基に変換したりしてもよい。また、そのような変性反応により、重合体中のオキシシリル基を他のオキシシリル基に変換することもできる。例えば、シリルオキシ基としてヒドロカルビルオキシシリル基を含む重合体は、酸などを用いた加水分解反応に供することにより、ヒドロカルビルオキシシリル基をシラノール基に変換することができる。
例えば以上のようにして得ることができる本発明の重合体は、シクロオレフィンポリマー元来の優れた成形加工性を備え、さらに、耐熱性および他の材料との密着性が高度に改良されたものであるので、種々の用途の材料として好適に使用することができる。本発明の重合体の利用形態は特に限定されるものではないが、他の材料との密着性に優れる性質を活かす観点からは、本発明の重合体の成形体と他の材料との複合体として用いることが好ましく、なかでも、本発明の重合体を成形してなる成形体に、硬化性樹脂を塗布して硬化させて得られる複合体として用いることが好ましい。
本発明の重合体の成形方法は、特に限定されないが、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形などの溶融成形法が好適である。また、成形体を得るにあたっては、必要に応じて、各種の添加剤を重合体に配合してもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、滑剤を挙げることができる。
複合体を得る場合に、成形体に塗布して硬化させる硬化性樹脂の例としては、硬化性シリコーン樹脂、硬化性エポキシ樹脂、硬化性エポキシシリコーン混成樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。これらの中でも、硬化性シリコーン樹脂、または硬化性エポキシ樹脂が特に好適である。硬化性樹脂の硬化方式も特に限定されず、熱硬化性、光硬化性などのいずれの方式であってもよいが、熱硬化性樹脂が特に好適である。
本発明の重合体の成形体と硬化性樹脂から得られる複合体の用途は特に限定されるものではないが、重合体の成形体を光反射体とし、硬化性樹脂を封止剤として、LEDを構成するために特に好適に用いられる。この場合、重合体に、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化ジルコニウム、バライト、炭酸バリウム、白亜、沈降性炭酸カルシウム、石コウ、炭酸マグネシウム、アルミナ、クレー、滑石粉、珪藻土などの白色顔料を添加することにより、光反射性を向上させることができる。
また、本発明の重合体は、金属との密着性にも優れるものであるので、電子回路基板やフレキシブルプリント基板などの電子部品の材料としても好適に用いることができる。本発明の重合体をこのような用途に用いる場合は、本発明の重合体の成形体と、例えば、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウムなどの金属との複合体として用いることができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)重合体の分子量(重量平均分子量および数平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)重合体中の各繰り返し単位の含有量
水素化前の開環重合体についてH−NMRを測定することにより得られる、オキシシリル基に由来するピーク面積およびジシクロペンタジエンを開環重合してなる繰り返し単位に由来するピーク面積に基づいて、全繰り返し単位に対するオキシシリル基を含む繰り返し単位の含有割合を求め、この割合を重合体(水素化後のもの)における繰り返し単位Bの含有割合とした。但し、オキシシリル基を含む繰り返し単位の含有割合が極めて小さい場合(0.01モル%以下の場合)は、H−NMR測定による定量が困難であるので、重合反応後の反応溶液についてガスクロマトグラフィの測定により未反応のモノマー量を求め、その値に基づいて、全繰り返し単位に対するオキシシリル基を含む繰り返し単位の含有割合を求めた。
(3)開環重合体の水素化率
H−NMR測定に基づいて求めた。
(4)重合体の融点および融解熱
示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温して測定した。
(5)重合体のラセモ・ダイアッドの割合
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、繰り返し単位A(ジシクロペンタジエンを開環重合した後、全ての炭素−炭素二重結合を水素化することにより得られた繰り返し単位)についてのラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(6)熱硬化性シリコーン樹脂との密着性試験
各例で得られた重合体の粉末を真空熱プレスして、30mm×30mm×1mmの試験板を作製した。次いで、熱硬化性シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製の「OE−6636A」と「OE−6636B」とを重量比1:2で混合したもの)を試験板に厚さ0.05mmで塗布し、これをオーブンに入れて100℃で1時間加熱し、続いて150℃で1時間加熱することにより、熱硬化性シリコーン樹脂を硬化させた。そして、試験板上の硬化したシリコーン樹脂の膜に、カッターナイフで5mm角方眼状に3個×3個の格子状の切れ目を入れて、当該部に接着テープ(ニチバン社製、「NICHIBAN セロテープ No.405」)を貼り付け、90°剥離試験を行い、剥がれた格子の数を数えた。剥がれた格子の数が少ないものほど、密着性に優れる。
〔実施例1〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)と2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシラン0.055部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン76部および1−ヘキセン1.9部を加え、続いて、ジエチルアルミニウムエトキシドの19%n−ヘキサン溶液0.46部を加えて攪拌した。次いで、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.11部を2部のトルエンに溶解した溶液を加えて、50℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下40℃で20時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は28部(収率93%)であった。また、得られた開環重合体については、分子量とH−NMRの測定を行った。次いで、得られた開環重合体10部とシクロヘキサン44部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0065部をトルエン6部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性の重合体を得た。得られた重合体については、H−NMR、13C−NMRおよび示差走査熱量の測定と熱硬化性シリコーン樹脂との密着性試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%(水素化されていない炭素−炭素二重結合が検出限界以下の含有率)であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
Figure 2012246466
〔実施例2、3〕
開環重合反応における2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランの使用量を、それぞれ、0.0055部および0.00055部に変更したこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の実施例2および実施例3の重合体を得た。開環重合体の収量は、それぞれ、28部(収率93%)、30部(収率100%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率はそれぞれ実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例4〕
開環重合反応において、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランに代えて、2−[4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)フェニル]エチルトリメトキシシラン0.073部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。開環重合体の収量は、30部(収率100%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%(但し、重合体中の芳香環は水素化されずに残留した)であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例5〕
開環重合反応において、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランに代えて、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)トリメトキシシラン0.049部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。開環重合体の収量は、7部(収率23%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例6〕
開環重合反応において、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランに代えて、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)トリエトキシシラン0.058部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。開環重合体の収量は、9部(収率30%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例7〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)を仕込み、さらに、シクロヘキサン738部および1−ヘキセン1.9部を加え、50℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体1.1部を56部のトルエンに溶解した溶液に、ジエチルアルミニウムエトキシドの19%n−ヘキサン溶液4.6部を加えて10分間攪拌し、重合触媒液を調製し、この重合触媒液を反応器に加えて開環重合反応を開始した。その後、50℃を保ちながら、5分毎にジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部を9回添加(合計360部添加)した後、さらに1時間反応を継続した。続いて、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシラン2.2部を加えて、さらに2時間反応を継続させた。その後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下40℃で20時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は287部(収率95%)であった。得られた開環重合体については、実施例1と同様の測定を行った後、実施例1と同様にして水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。得られた結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例8〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシラン2.2部を仕込み、さらに、シクロヘキサン738部および1−ヘキセン1.9部を加え、50℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体1.1部を56部のトルエンに溶解した溶液に、ジエチルアルミニウムエトキシドの19%n−ヘキサン溶液4.6部を加えて10分間攪拌し、重合触媒液を調製し、この重合触媒液を反応器に加えて開環重合反応を開始し、50℃を保ちながら1時間反応を継続した。続いて、5分毎にジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部を10回添加(合計400部添加)した後、さらに2時間反応を継続した。その後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下40℃で20時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は290部(収率96%)であった。得られた開環重合体については、実施例1と同様の測定を行った後、実施例1と同様にして水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。得られた結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例9〕
実施例1と同様にして開環重合反応を行って得られた開環重合体10部を、テトラヒドロフラン50部に溶解させ、さらに1規定の塩酸水溶液1.0部を添加して80℃にて4時間攪拌することにより、加水分解反応(トリメトキシシリル基を反応させ、トリヒドロキシシリル基とする反応)を行った。得られた開環重合体については、実施例1と同様の測定を行った後、実施例1と同様にして水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。得られた重合体の収量は10部(原料の開環重合体からの収率100%)であった。得られた結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例1〕
開環重合反応における2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランの使用量を、2.74部に変更したこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。開環重合体の収量は、28部(収率87%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例2〕
開環重合反応において2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランを用いなかったこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応および水素化反応を行って、結晶性の重合体を得た。開環重合体の収量は、29部(収率95%)であった。得られた開環重合体および結晶性の重合体については、実施例1と同様の測定および試験を行った。それぞれの測定の結果から求められた、開環重合体の水素化率は実質的に100%であり、また、開環重合体の分子量、重合体中の繰り返し単位Bの含有量、重合体のラセモ・ダイアッドの割合、融点、および融解熱、ならびに密着性試験の結果は表1にまとめて示した。
表1に示した結果からわかるように、本発明の重合体(実施例1〜9)は、高い融点および大きな融解熱を示し、かつ、密着性試験でテープの剥離を殆ど生じさせないことから、耐熱性および他の材料との密着性に優れるものであるといえる。なかでも、繰り返し単位Bとして、環構造骨格とオキシシリル基とが2価の炭化水素基を介して結合してなる単位を有する重合体(実施例1〜4,7〜9)は、特に優れた密着性を示すものであるといえる。一方、繰り返し単位Bを含んでいても、その含有量が多すぎる重合体(比較例1)は、本発明の重合体に比して低い融点および小さな融解熱を示す、耐熱性に劣るものであり、また、繰り返し単位Bを含まず、オキシシリル基を含まない重合体(比較例2)は、密着性試験でテープの剥離を生じさせるものであり、本発明の重合体に比して、他の材料との密着性に劣るものであった。

Claims (5)

  1. 下記の式(1)で表される繰り返し単位A98〜99.9999モル%と下記の式(2)で表される繰り返し単位B0.0001〜2モル%とを含んでなる結晶性を有する重合体。
    Figure 2012246466
    Figure 2012246466
    (式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
  2. 繰り返し単位Aについてのラセモ・ダイアッドの割合が60%以上である請求項1に記載の重合体。
  3. 融点が250℃以上である請求項1または2に記載の重合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の重合体を成形してなる成形体に、硬化性樹脂を塗布して硬化させて得られる複合体。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の重合体の製造方法であって、重合触媒の存在下で、ジシクロペンタジエンおよび下記の式(3)で表される化合物を含んでなる単量体混合物を開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法。
    Figure 2012246466
    (式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ケイ素原子、酸素原子および窒素原子から選択される少なくとも一つの原子を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基;を表し、R〜Rの少なくとも1つはオキシシリル基を含む炭素数0〜20の置換基である。RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜2の整数である。)
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