以下、本発明のサーマルヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態のサーマルヘッドXは、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。
放熱体1は、例えば、CuまたはAl等の金属材料で形成されており、平面視で長方形状である台板部1aと、この台板部1aの一方の長辺に沿って延びる突出部1bとを備えている。図2に示すように、突出部1bを除いた台板部1aの上面には、図示していないが、両面テープや接着剤等によってヘッド基体3が接着されている。同様に、突出部1b上には、両面テープや接着剤等によってFPC5が接着されている。また、放熱体1は、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
図1〜図5に示すように、ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7上に設けられ、基板7の長手方向に沿って列状に配列された複数の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7上に並べて配置された複数の駆動IC11とを備えている。なお、図4は、ヘッド基体3の平面図である。図5は、後述する保護膜25、被覆層27、駆動IC11および被覆部材29の図示を省略したヘッド基体3の平面図である。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
図2、図3および図5に示すように、基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。この蓄熱層13は、基板7の上面全体に形成された下地部13aと、この下地部13aから部分的に隆起するとともに複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状の隆起部13bとを有している。この隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する保護膜25に良好に押し当てるように作用する。
蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドXの熱応答特性を高めるように作用する。この蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリ
ーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを高温で焼成することで形成される。蓄熱層13を形成するガラスとしては、例えば、SiO2、Al2O3、CaOおよびBaOを含有するもの、SiO2、Al2O3およびPbOを含有するもの、SiO2、Al2O3およびBaOを含有するもの、SiO2、B2O3、PbO、Al2O3、CaOおよびMgOを含有するものが挙げられる。
蓄熱層13の上面には、電気抵抗層15が設けられている。この電気抵抗層15は、蓄熱層13と、後述する共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23との間に介在し、図5に示すように、平面視において、これらの個別電極配線19、共通電極配線17、グランド電極配線21およびIC制御配線23と同形状の領域(以下、介在領域という)と、個別電極配線19と共通電極配線17との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。なお、図5では、この電気抵抗層15の介在領域は、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23で隠れている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。この複数の発熱部9は、図2および図5に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配列されている。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1、図4および図5で簡略化して記載しているが、例えば、180〜2400dpi程度の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極配線17と個別電極配線19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。なお、電気抵抗層15がこのような電気抵抗の比較的高い材料で形成されていることから、発熱部9が電気抵抗層15で形成されることとなる。
図1〜図6に示すように、電気抵抗層15の上面、より詳細には、上記の介在領域の上面には、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23が設けられている。これらの共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。なお、図6は、後述する保護膜25、被覆層27および被覆部材29の図示を省略したヘッド基体3に、FPC5を接続した状態を示す平面図である。
共通電極配線17は、図5に示すように、基板7の一方の長辺に沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延び、一端部が主配線部17aに接続された2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって延びる複数のリード部17cとを有している。そして、図6に示すように、副配線部17bの他端部がFPC5に接続されているとともに、リード部17cの先端部が発熱部9に接続されている。これにより、FPC5と発熱部9との間が電気的に接続されている。
個別電極配線19は、図2および図6に示すように、各発熱部9と駆動IC11との間に延びており、これらの間を接続している。より詳細には、個別電極配線19は、複数の発熱部9をそれぞれ複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。なお、本実施形態では、上記の共通電極配線17および個別電極配線19が、本発明における電極配線に相当する。
グランド電極配線21は、図5に示すように、発熱部9の配列方向に沿って、基板7の他方の長辺の近傍で帯状に延びている。このグランド電極配線21上には、図3および図
6に示すように、FPC5および駆動IC11が接続されている。より詳細には、FPC5は、図6に示すように、グランド電極配線21の一方および他方の端部に位置する端部領域21Eに接続されているとともに、隣接する駆動IC11の間に位置するグランド電極配線21の第1中間領域21Mに接続されている。駆動IC11は、グランド電極配線21の端部領域21Eと第1中間領域21Mとの間の第2中間領域21Nに接続されているとともに、隣接する第1中間領域21Mの間の第3中間領域21Lに接続されている。これにより、駆動IC11とFPC5との間が電気的に接続されている。
駆動IC11は、図6に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されており、個別電極配線19の一端部とグランド電極配線21とに接続されている。この駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、後述するように、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。各駆動IC11は、図2に示すように、内部のスイッチング素子に接続されている一方の接続端子11a(以下、第1接続端子11aという)が個別電極配線19に接続されており、このスイッチング素子に接続されている他方の接続端子11b(以下、第2接続端子11bという)がグランド電極配線21に接続されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極配線19とグランド電極配線21とが電気的に接続される。
なお、図示していないが、個別電極配線19に接続された第1接続端子11aおよびグランド電極配線21に接続された第2接続端子11bは、各個別電極配線19に対応して複数個設けられている。この複数の第1接続端子11aは、各個別電極配線19に個別に接続されている。また、複数の第2接続端子11bは、グランド電極配線21に共通して接続されている。
IC制御配線23は、駆動IC11を制御するためのものであり、図5および図6に示すように、IC電源配線23aとIC信号配線23bとを備えている。IC電源配線23aは、基板7の長手方向の両端部で基板7の右側の長辺の近傍に配置された端部電源配線部23aEと、隣接する駆動IC11間に配置された中間電源配線部23aMとを有している。
図6に示すように、端部電源配線部23aEは、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、グランド電極配線21の周囲を回り込むようにして、他端部が基板7の右側の長辺の近傍に配置されている。この端部電源配線部23aEは、一端部が駆動IC11に接続されているとともに、他端部がFPC5に接続されている。これにより、駆動IC11とFPC5との間が電気的に接続されている。
図6に示すように、中間電源配線部23aMは、グランド電極配線21に沿って延び、一端部が隣接する駆動IC11の一方の配置領域に配置され、他端部が隣接する駆動IC11の他方の配置領域に配置されている。この中間電源配線部23aMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方に接続され、他端部が隣接する駆動IC11の他方に接続され、中間部がFPC5に接続されている(図3参照)。これにより、駆動IC11とFPC5との間が電気的に接続されている。
端部電源配線部23aEと中間電源配線部23aMとは、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。また、隣接する中間電源配線部23aM同士は、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。
このようにIC電源配線23aを各駆動IC11と接続することにより、IC電源配線
23aが各駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。これにより、後述するようにFPC5から端部電源配線部23aEおよび中間電源配線部23aMを介して各駆動IC11に電源電流を供給するようになっている。
IC信号配線23bは、図5および図6に示すように、基板7の長手方向の両端部で基板7の右側の長辺の近傍に配置された端部信号配線部23bEと、隣接する駆動IC11間に配置された中間信号配線部23bMとを有している。
図6に示すように、端部信号配線部23bEは、端部電源配線部23aEと同様、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、グランド電極配線21の周囲を回り込むようにして、他端部が基板7の右側の長辺の近傍に配置されている。この端部信号配線部23bEは、一端部が駆動IC11に接続されているとともに、他端部がFPC5に接続されている。
中間信号配線部23bMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方の配置領域に配置され、中間電源配線部23aMの周囲を回り込むようにして、他端部が隣接する駆動IC11の他方の配置領域に配置されている。この中間信号配線部23bMは、一端部が隣接する駆動IC11の一方に接続され、他端部が隣接する駆動IC11の他方に接続されている。
端部信号配線部23bEと中間信号配線部23bMとは、これらの双方が接続された駆動IC11の内部で電気的に接続されている。また、隣接する中間信号配線部23bM同士は、これらの双方が接続された駆動ICの内部で電気的に接続されている。
このようにIC信号配線23bを各駆動IC11と接続することにより、IC信号配線23bが各駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。これにより、後述するようにFPC5から端部信号配線部23bEを介して駆動IC11に伝送された制御信号を、中間信号配線部23bMを介して、隣接する駆動IC11へさらに伝送するようになっている。
上記の電気抵抗層15、共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法などの従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトリソグラフィー技術やエッチング技術等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。また、駆動IC11あるいは後述するFPC5と接合される共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23に、めっき法によりNiめっきを施すことにより、図示しないが電極パッドを形成して、電極パッドを介して共通電極配線17、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23と駆動IC11あるいはFPC5とを接合する。
図2および図3に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極配線17の一部および個別電極配線19の一部を被覆する保護膜25が形成されている。図示例では、この保護膜25は、複数の発熱部9の配列方向に沿って形成され、蓄熱層13の上面の略左半分の領域を覆うように設けられている。なお、図示していないが、保護膜25は、蓄熱層13上に形成された電気絶縁層と、電気絶縁層上に形成された封止層と、封止層上に形成された耐摩耗層とを有している。
保護膜25を形成することにより、被覆した発熱部9、共通電極配線17および個別電極配線19の部分が、酸素との反応によって酸化することを抑制したり、大気中に含まれている水分等の付着によって腐食することを抑制したりすることもできる。この保護膜2
5を構成する電気絶縁層、封止層および耐摩耗層は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術や、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
また、図1〜図4に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、共通電極配線17、個別電極配線19、IC制御配線23およびグランド電極配線21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。図示例では、この被覆層27は、蓄熱層13の上面の略右半分の領域を部分的に覆うように設けられている。被覆層27は、被覆した共通電極配線17、個別電極配線19、IC制御配線23およびグランド電極配線21を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、被覆層27は、共通電極配線17、個別電極配線19およびIC制御配線23の保護をより確実にするため、保護膜25の端部に重なるようにして形成されている。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、被覆層27には、駆動IC11を接続する個別電極配線19の端部、グランド電極配線21の第2中間領域21Nおよび第3中間領域21LならびにIC制御配線23の端部を露出させるための露出した部位が形成されており、この露出した部位を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極配線19、グランド電極配線21およびIC制御配線23に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続する部位の保護のため、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。
FPC5は、図6に示すように、上記のように共通電極配線17、グランド電極配線21およびIC制御配線23に接続されている。このFPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数の配線導体(プリント配線)が配線された周知のものであり、各配線導体がコネクタ31を介して、図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。
より詳細には、FPC5は、内部に形成された各プリント配線が、詳細は後述する接合材33(図3参照)によって、共通電極配線17の副配線部17bの端部、グランド電極配線21の端部およびIC制御配線23の端部にそれぞれ接続され、これらの配線17,21,23とコネクタ31との間を接続している。そして、コネクタ31が、図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極配線17は、正電位(例えば20V〜24V)に保持された電源装置のプラス側端子に接続され、個別電極配線19は、接地電位(例えば0V〜1V)に保持された電源装置のマイナス側端子に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電流が供給され、発熱部9が発熱する。
また、コネクタ31が、図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、IC制御配線23のIC電源配線23aは、共通電極配線17と同様、正電位に保持された電源装置のプラス側端子に接続されるようになっている。これにより、駆動IC11が接続されたIC電源配線23aとグランド電極配線21との電位差によって、駆動IC11に駆動IC11を動作させるための電圧が印加される。また、IC制御配線23のIC信号配線23bは、駆動IC11の制御を行う制御装置に接続される。これにより、制御装置からの制御信号が端部信号配線部23bEを介して駆動IC11に伝送され、この駆動IC11に伝送された制御信号が中間信号配線部23bMを介して、隣接する駆動ICにさらに伝送される。この制御信号によって、駆動IC11内のスイッチング素
子のオン・オフ状態を制御することで、発熱部9を選択的に発熱させることができる。
図7、8を用いて、ヘッド基体3の共通電極配線17の副配線部17bの端部とFPC5との接合状態について説明する。なお、図7(a)、(b)は、図1に示すAの部位を拡大して示す平面図である。
図7(a)は、副配線部17bの要部を拡大して示す平面図であり、図7(b)は副配線部17bと接合されるFPC5の要部を拡大して示す平面図である。第1の端子24と第2の端子26とが接続される接合部28は、図7においては簡易的に丸で示しているが、第1の端子24と第2の端子26とが電気的に導通される部位を示す。また、図8(a)は、ヘッド基体3とFPC5とを接合した状態の図7におけるIV−IV線断面図である。図8(b)は、ヘッド基体3とFPC5とを接合した状態の図7におけるV−V線断面図である。図8(c)は、ヘッド基体3とFPC5とを接続した状態の図7におけるVI−VI線断面図である。
図7(a)を用いて第1の端子24について説明する。第1の端子24は、共通部24aと、図7(a)においては4つの個別接続部24bと、第2の端子26と接続される接合部28と、接合部28同士を連結する連結部24cと、基板7または蓄熱層13が露出した露出部24fとを有している。つまり、共通部24aと、個別接続部24bと、連結部24cとにより囲まれた領域が露出部24fとなっている。
そして、接合部28同士が連結部24cにより連結されているため、FPC5に変形が生じて、第2の端子26と接続される接合部28が、図7では上下方向である発熱部9の配列方向に変位した場合においても、連結部24cにて第1の端子24と第2の端子26とが電気的に接続された状態を維持することができる。
図7(b)を用いてFPC5の配線導体である第2の端子26について説明する。図7(b)においては4つの第2の端子26がプリント配線基板上に配置されている。第2の端子26の形状は直線形状に限定されるものではなく、途中で屈曲していてもよい。
第1の端子24と第2の端子26は、接合材33を介して電気的に接続されている。具体的には、異方導電性フィルムの圧着接続(以下、ACF接合と称する場合がある)により、電気的に接続されている。なお、本明細書にて示すACF接合とは、一般的に知られているACF接合を示し、例えば、熱硬化性の樹脂と、導電性粒子とにより接合するものである。
異方導電性フィルムを構成する熱硬化性の樹脂としては、熱硬化性のエポキシ樹脂を例示することができる。また、導電性粒子としては、NiまたはAlの金属粒子あるいは、セラミック粒子や有機樹脂をAuの金属でコーティングしたものを用いることができる。
図8を用いて第1の端子24と第2の端子26との接続状態を説明する。第1の端子24と第2の端子26との間に、異方導電性フィルムを構成する金属粒子が配置されている。それにより、第1の端子24と第2の端子26とが電気的に接続されている。
ここで、異方導電性フィルムを構成する熱硬化性の樹脂と第1の端子24を構成する金属との接合強度よりも、異方導電性フィルムを構成する熱硬化性の樹脂と第1の端子24の下面に配置されるセラミックスにより形成される基板7あるいはガラスにより形成される蓄熱層13との接合強度の方が、化学結合力が強くなるため、接合強度が高くなっている。また、基板7あるいは蓄熱層13の方が、めっき法によりNiめっきが施された第1の端子24よりも表面粗度が高く、機械的結合力が強くなるため、接合強度が高くなって
いる。すなわち、第1の端子24が、露出部24fを有するため、接合材33とヘッド基体3との接合強度をより強固なものとすることができる。
また、第1の端子24は、図8(b)に示すように、露出部24fのある領域で接合材33とヘッド基体3との接合強度を高めるとともに、図8(c)に示すように、接合部28または連結部24cにより、第2の端子26と電気的に接続されている。
FPC5は、ヘッド基体3よりも熱膨張率が大きく、ヘッド基体3に比べて大きく延びる場合があるが、FPC5が熱膨張して、図8(c)における左右方向である発熱部9の配列方向に、FPC5が延びる場合がある。この場合においても、図8(c)に示すように、連結部24cが接合部28同士の間にあることから、連結部24cにより第1の端子24と第2の端子26とが電気的に接続された状態を維持することができる。
本発明によれば、サーマルヘッド1の印字時や作動時における温度変化により、FPC5が発熱部9の配列方向に延びる変形をして、第2の端子26が発熱部9の配列方向に変位した場合においても、それぞれの接合部28同士の間を連結する連結部24cと第2の端子26とが電気的に接続されることとなる。それにより、ヘッド基体3とFPC5との接合部28である第1の端子24と第2の端子26の電気的な接続を維持することができる。
また、第1の端子24が、FPC5と接続される領域に個別接続部24bを複数有していることから、個別接続部24bを有していない領域が、露出部24fとなる。この露出部24fが、第1の端子24を構成する金属材料よりも、接合材33である異方導電性フィルムを構成する熱硬化性の樹脂との接合強度が高いことから、ヘッド基体3とFPC5との接続強度を高めることができ、ヘッド基体3とFPC5との剥離を抑えることができる。
第1の端子24が、FPC5と接続される部位に、露出部24fを有しているため、接合材33の接合面積を増加することができ、ヘッド基板3と接合材33との接合強度をさらに強固なものとすることができる。
さらに、共通部24aから複数の個別接続部24bが延びており、FPC5と接続されない共通部24aは、複数の個別接続部24bにより構成されていないため、相対的に電流が流れる面積が大きい。それにより、電極配線における電流が流れる面積を確保することができ、主配線部17aから個別接続部24bまで電圧の損失を少なくすることができる。
また、端部に位置する共通電極配線17である電極配線の第1の端子24が、共通部24aと、共通部24aからヘッド基体3の端部へ向けて延び、第2の端子26と接合部28にてそれぞれ電気的に接続される複数の個別接続部24bとを有しており、隣り合う個別接続部24bの接合部同士の間を連結する連結部24cを有することから、変形の最も大きい発熱部9の配列方向における端部に位置するヘッド基体3と、第2の端子26との接合を強固にすることができる。それにより、ヘッド基体3と、FPC5との接合を強固なものとすることができる。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図9を参照しつつ説明する。図9は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図9に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サー
マルヘッドXは、サーマルプリンタZの筐体に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、このサーマルヘッドXは、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向、言い換えると主走査方向であり、図9においては紙面に直交する方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図9の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドXの複数の発熱部9上、より詳細には保護膜25上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドXの発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドXの発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
なお、本実施形態では、記録媒体Pの幅は、サーマルヘッドXにおける蓄熱層13の隆起部13bの長さよりも大きくなっている。また、プラテンローラ50の長さ、より詳細には、弾性部材50bの長さは、サーマルヘッドXにおける蓄熱層13の隆起部13bの長さよりも長くなっている。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドXの発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドXの発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給するためのものである。
本実施形態のサーマルプリンタZは、図9に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体をサーマルヘッドXの発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、図示しないが記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルムのインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
次に第2の実施形態に係るサーマルヘッドXについて説明する。第2の実施形態に係るサーマルヘッドXは、第1の端子24の構成が異なっており、その他の構成は第1の実施形態に係るサーマルヘッドXと同様である。
図10で示す第1の端子24´は、個別接続部24´bに切欠部24´dが設けられおり、その他の構成は第1の端子24と同様である。切欠部24´dは、個別接続部24´b同士の対向する面に設けられており、また、両端に位置する個別接続部24´bは、外側にも切欠部24´dが設けられている。
図11(a)に示すように、切欠部24´dが設けられた領域では、露出部24´fが増加しており、露出部24´fと接合材33とが接合される面積が増加することとなる。また、図11(b)に示すように、切欠部24´dが設けられていない領域においても、露出部24´fが存在することから、露出部24´fと、接合材33とが接合される面積
を確保することができる。
図示していないが、第1の端子24´は、接合部28´同士の間を連結部24´cにより連結されていることから、接合部28´がFPC5の変形により変位した場合においても、連結部24´cが第2の端子26と接続され、連結部24´c上に接合部28´が形成されることとなる。それにより、第1の端子24´と第2の端子26とが電気的な接続を維持することができる。
第2の実施形態に係るサーマルヘッドXによれば、個別接続部24´bが所定の間隔をあけて配置されており、個別接続部24´b同士が対向する面に切欠部24´dが設けられているため、露出部24´fを増加させることができ、ヘッド基体3とFPC5との接合強度を向上させることができる。また、個別接続部24´b同士が対向する面に切欠部24´dを設けたため、発熱部9の配列方向における接合強度を向上させることができる。
個別接続部24´bが所定の間隔を開けて配置されているため、露出部24´fと個別接続部24´bとが、発熱部9の配列方向において交互に配置されることとなる。それにより、応力の生じやすい発熱部9の配列方向において、接合強度の強い露出部24´fが、接合強度の弱い個別接続部24´b同士の間に配置することができる。そのため、発熱部9の配列方向における接合強度をさらに強固なものとすることができる。
さらに、図10に示すように、最外部に位置する個別接続部24´bの外側に切欠部24´dを設けることにより、最外部に位置する個別接続部24´bと、第2の端子26との接合強度を向上させることができる。それにより、最外部に位置する個別接続部24´bと、FPC5とが剥離することに起因して、ヘッド基体3とFPC5との剥離が生じることを低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、第1の端子24の変形例として、図12(a)に示すような例をあげることができる。このように、切欠部24dの角部を面取りすることにより、平面視して、個別接続部24bの外周を曲線状としてもよい。切欠部24dの形成された面が面取りされているため、切欠部24dの角部に応力が集中することを抑えることができ、切欠部24dと第2の端子26との接合強度を向上させることができる。それにより、切欠部24dから第2の端子26とが剥離することを抑えることができ、ヘッド基体3とFPC5との剥離が生じることを低減することができる。
また、平面視して、個別接続部24bの外周を曲線状としているため、上述したように切欠部24dの角部における応力の集中を緩和することができる。そのため、ヘッド基体3から第1の端子24が剥離することを抑えることができる。
第1の端子24の変形例である図12(b)によれば、個別接続部24bが接合部28からヘッド基体3の端部にむけてさらに延びる突出部24eを有することから、発熱部9の配列方向に垂直な方向にFPC5が変形することにより、第2の端子26が発熱部9の配列方向に垂直な方向に変位した場合においても第1の端子24と、第2の端子26との接続を維持することができる。それにより、第1の端子24と、第2の端子26との電気的な接続を維持することができる。
さらに、この図12(c)のように、突出部24eの角部を面取りして、平面視して曲
線状になっていることが好ましい。それにより、突出部24eの角部に生じる応力を低減することができ、突出部24eの角部から第2の端子が剥離することを抑えることができる。
また、図12(a)、(b)に示すように、切欠部24dまたは突出部24eの角部を面取りして、平面視して曲線状とすることにより、切欠部24dまたは突出部24eの角部に生じる応力を低減することができることから、第1の端子24とヘッド基体3との剥離を抑えることができる。それにより、第1の端子24がヘッド基体3から剥離した状態で、第2の端子26と、ヘッド基体3とに接合されることを抑えることができる。そのため、第1の端子24に応力が生じて第1の端子24が断線することを抑えることができる。
なお、面取り方法は従来公知な方法により、切欠部24dまたは突出部24eの角部を面取りすることができる。また、平面視して、個別接続部24bの外周が曲線状に形成する方法も、印刷または面取りにより作製することができる。
また、上記実施形態のサーマルヘッドXでは、保護膜25が、電気絶縁層、封止層および耐摩耗層の3つの層を積層した積層体によって形成されているが、保護膜25の積層構成はこれに限定されるものではない。例えば、図示しないが、電気絶縁層と封止層との間や、封止層と耐摩耗層との間に他の層が介在していてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドXでは、例えば、図1、図4、図7および図8に示すように、蓄熱層13は、下地部13a上にこの下地部13aから部分的に隆起する隆起部13bを設けることによって、基板7上で部分的に隆起する隆起部が形成されているが、蓄熱層13の構成はこれに限定されるものではない。例えば、下地部13aを設けず、隆起部13bのみで蓄熱層13が構成されていてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドXでは、例えば、図1〜図8に示すように、下地部13aと隆起部13bとを有する蓄熱層13が基板7上に形成されているがこれに限定されるものではない。例えば、隆起部13bを設けず、蓄熱層13が下地部13aのみで構成されていてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドXでは、例えば、図1および図4に示すように、保護膜25が基板7上の略左半分の領域を覆うように設けられているが、この保護膜25は、少なくとも複数の発熱部9の配列方向に沿って形成され、複数の発熱部9、共通電極配線17および個別電極配線19を被覆するとともに、この複数の発熱部9からなる列の延長線上に形成されている限り、基板7上の任意の領域を覆うように形成してもよい。
なお、FPC5の配線導体である第2の端子26を複数からなる構成を示したが、第2の端子26が、複数ではなく1つからなる構成としてもよい。その場合においても、接合材33とヘッド基体3との接合強度を高いものとすることができ、接合材33とヘッド基体3との接合強度の高いサーマルヘッドとすることができる。