以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内において本発明を変更及び/又は修正をして他の実施形態をなすことは容易である。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明に係るトナーの製造法は、結着樹脂と着色剤とワックスを含むトナー組成物を有機溶剤に溶解又は分散させてトナー組成液を調製する工程と、1つ以上の吐出孔を有する液滴吐出手段を用いて、前記トナー組成液を気相中へ吐出させて液滴を生成する工程と、前記液滴中の前記有機溶剤を乾燥させて粒子を固化させる工程とを含む。
各々の工程に関しては、下記に詳細に解説する。
(トナー組成液の温度調整手段)
本発明では液滴吐出手段によりトナー組成液を吐出させて液滴を生成する際に、構成する有機溶剤の蒸気圧が1.3×104Pa以下となる温度、より好ましくは1.0×104Pa以下となる温度で吐出することが好ましい。これにより、ノズル孔付近におけるトナー組成液の乾燥を防止でき、長時間に亘り吐出安定性を確保することが出来る。有機溶剤の蒸気圧が1.3×104Pa以上の温度では、液滴吐出手段のノズル孔に存在するトナー組成液が徐々に乾燥するために、液滴の吐出が徐々に悪化し、吐出が停止することがある。また、液滴吐出手段からのトナー組成液への励振により、トナー組成液に含まれる溶存気体が気体として発生することや、揮発溶剤そのものが圧力変動によって気化し、キャビテーションを生じることがある。液滴吐出手段の内部に気泡が存在すると、液体に対して気体の圧縮性が異なるために、均一に圧力を伝播することが出来ず、液滴の吐出悪化を招くことがある。
トナー組成液の温度調整機構は公知のものを適宜選択することができるが、例えば、気体による温度調整手段、液体媒体を間接的に接触させる手段、ペルチェ素子による冷却手段、などが挙げられる。トナー組成液の温度変化は、粘度変化、乾燥しやすさ、分散物の凝集等の変化を引き起こす。つまり、液滴吐出の安定性に大きく作用するため、温度制御の安定性の高い手段が好ましい。先に挙げた方法の中では、液体媒体を用いる方法が好ましい。具体的にはトナー組成液の配管の場合は、周囲を別の配管で覆ってそこに温度調整された液体媒体を流す、あるいは配管を温度調整用液体媒体に浸漬しても良い。トナー組成液を貯蔵しておくタンクに対し、周囲を温度調整用の液体媒体で覆うような2重構造の容器を用いることで温度調整することも出来る。温度調整用の液体媒体の種類は何でも構わず、調整温度にあわせて適宜選択すればよいが、腐食性・揮発性の高いものはメンテナンス性が悪いために望ましくない。トナー組成液の温度調整幅は狭い方が均一な粒子を製造できるため好ましく、所定の温度に対して±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃である。
(有機溶剤の蒸気圧)
有機溶剤の蒸気圧は、予め所定の有機溶剤の蒸気圧を、静止法、沸点法、アイソテニスコープ、気体流通法、DSC法などの公知の方法を用いて、直接測定することで求めることができる。また、下記の方法により標準状態での蒸気圧を求め、それを使用することも可能である。
化合物Aが液体A(l)から気体A(g)に相変化する場合、式1のように表される。
A(l)→A(g) (式1)
この時、反応のギブスエナジーの変化ΔGは、A(l)の標準生成ギブスエナジーΔG° A(l)と、A(g)の標準生成ギブスエナジーΔG° A(g)と、気体定数Rと、温度Tと、A(l)の活量αA(l)と、A(g)の標準状態での蒸気圧ρA(g)とを用いて、下記の式2のように表される。
ΔG=ΔG° A(g)−ΔG° A(l)+RTln(ρA(g)/αA(l)) (式2)
この時、平衡状態ではΔGは0となる。また、A(l)が系内に十分に存在するとき、αA(l)は1と仮定することができる。さらに、ΔG° A(l)、ΔG° A(g)はHSCなどの熱力学データ集より与えられる。そのため、式2を用いることで、温度Tと、A(g)の標準状態での蒸気圧ρA(g)と、の関数を求められる。つまり、所定の蒸気圧に対して、温度を算出することができる。
(液滴吐出手段)
本発明のトナーの製造手段の一例を図1〜図17を用いて説明する。本発明のトナー製造手段は液滴吐出手段、液滴乾燥捕集手段に分けられる。まず液滴吐出手段について下記で解説する。
本発明で用いる液滴吐出手段は、吐出する液滴の粒子径分布が狭ければ、特に制限は無く、公知のものを用いることができる。具体的には、流体ノズル、膜振動方式の液滴吐出手段、レイリー分裂方式の液滴吐出手段、液振動方式の液滴吐出手段、液柱共鳴方式の液滴吐出手段、等が挙げられる。
上記の吐出手段の中でも、液柱共鳴方式の液滴吐出手段及び膜振動方式の液滴吐出手段のいずれか一方を用いることが、液滴の粒子径分布が狭く、かつ、トナーの生産性を確保することができるため好ましい。液柱共鳴方式の液滴吐出手段とは、複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された吐出孔から液体を吐出する吐出手段のことである。また、膜振動方式の液滴吐出手段とは、液体に接した複数の吐出孔が形成された薄膜を振動させる手段である。
《液柱共鳴方式の液滴吐出手段》
液柱の共鳴を利用して吐出する液柱共鳴方式の液滴吐出手段について解説する。
図1に、液柱共鳴方式の液滴吐出手段11の一例を示す。液柱共鳴方式の液滴吐出手段11は液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を含む。液柱共鳴液室18は、長手方向の両壁面のうち、一方の壁面に設けられる液共通供給路17と連通している。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうちの一つの壁面に、液滴21を吐出する吐出孔19を有している。さらに、液柱共鳴液室18は、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ後述する液柱共鳴による定在波を形成するための、高周波振動を発生する振動発生手段20を有している。なお、振動発生手段20には、図示しない高周波電源が接続されている。
トナー組成液14は、例えば、容易に揮発可能である有機溶媒などの溶媒に、トナー原材料を溶解又は分散されて作成される。トナー組成液14は、図示しない液循環ポンプにより液供給管を通り、図2に示す液柱共鳴液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図1に示す液柱共鳴方式の液滴吐出手段11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。この時、液滴21は、振幅の大きく圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置された吐出孔19から吐出される。液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味する。具体的には、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。
定在波の腹となる領域に吐出孔19が形成されることにより、吐出孔19が複数個開口された場合においても、それぞれの吐出孔からほぼ均一な液滴を効率的に形成することができる。そのため、吐出孔19の詰まりが生じ難い。
液共通供給路17を通過したトナー組成液14は、図示しない液戻り管を流れて原料収容器に戻される。液滴21の吐出により液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用する。そのため、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が減少する。
液柱共鳴方式の液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、当業者が所望する液滴の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームを接合することで形成される。前記高い剛性を持つ材質とは、例えば、金属、セラミックス及びシリコンなどが挙げられる。
また、図1に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述する液柱共鳴原理に基づいて決定される。さらに、図2に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、前記長さLの2分の1より小さいことが望ましい。さらに、液柱共鳴液室18は、1つの液滴形成ユニット10に対して複数配置されていることが、生産性を飛躍的に向上できるため好ましい。1つの液滴形成ユニット10に対する液柱共鳴液室18の数に限定はないが、100〜2000個であることが、操作性と生産性が両立できるため、好ましい。
図2に示すように、液柱共鳴液室毎に、液を供給するための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通していることが好ましい。
振動発生手段20は、所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板9に貼りあわせた形態であることが好ましい。弾性板9は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成していることが好ましい。圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などが挙げられる。
振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、液柱共鳴液室の配置にあわせて、上記で挙げた振動発生手段であって、単一の材質のブロック状の振動部材を一部切断し、弾性板9を介して形成する構成が、それぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるため好ましい。
吐出孔19の開口部の直径は、1μm〜40μmの範囲であることが望ましい。吐出孔19の開口部の直径が1μmより小さい場合、非常に小さい液滴を形成しなければならず、トナーを得ることが困難となることがある。また、顔料などの固形微粒子が含有された構成の場合、吐出孔19で閉塞が頻繁に発生し、生産性が低下することがある。また、吐出孔19の開口部の直径が40μmより大きい場合、液滴の直径が大きくなる。所望とする粒子径(3〜6μm)を得るために、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要となることがある。そのため、液滴後に乾燥固化して所望のトナー粒子径を得る場合、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となる。
図2からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成であることが、吐出孔19の開口を多数設けることができ、生産効率が高くなるため好ましい。また、吐出孔19の開口配置によっては、液柱共鳴周波数が変動する。そのため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認した後に、当業者が適宜決定することが望ましい。
《液柱共鳴方式の液滴吐出手段における液滴形成のメカニズム》
次に、本発明のトナー製造装置の液滴形成のメカニズムの一実施形態について説明する。図1の液柱共鳴方式の液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明する。
液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式3)
の関係にある。
図1の液柱共鳴液室18において、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さをL、液共通供給路17側のフレームの端部の高さをh1(=約80μm)、液柱共鳴液室18と液共通供給路17との連通口の高さをh2(=約40μm)とする。h1はh2の約2倍の長さを有している。
ここで、液柱共鳴液室18の長手方向の端部が、固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に、共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式4で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式4)(但し、Nは偶数)
また、液柱共鳴液室18の長手方向の端部が両端とも完全に開いている両側開放端の場合にも、上記式4が成り立つ。
液柱共鳴液室18の長手方向の一方端部のが、圧力の逃げ部を有する開放端と等価で、他方の端部が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式4のNが奇数で表現される。
上記式3と上記式4を組み合わせることにより、最も効率の高い駆動周波数fは式5で表現される。
f=N×c/(4L) ・・・(式5)
しかし、実際には、液体は粘性を有するため、共鳴は減衰される。そのため、振動は無限に増幅されず、Q値を有する。後述する式4、式5に示すように、式5に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴が発生する。
整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生するため、図3にN=1、2又は3の場合の、速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。また、図4にN=4又は5の場合の、速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。
本来は形成される定在波は疎密波(縦波)であるが、表記上図3及び図4のように横波とすることが一般的である。図3及び図4中において、実線は速度定在波を、点線は圧力定在波を示す。例えば、図3の(a)にN=1の片側固定端の場合を示すが、速度分布の場合は、固定端で速度分布の振幅がゼロとなり、開放端で振幅が最大となる。
両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、図3及び図4では複数のパターン例を併記した。詳細は後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
一般的には音響学において、開放端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。一方、固定端とは、媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。つまり、固定端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口又は開口している場合は、波の重ね合わせすることによって図4及び図5のような形態の共鳴定在波を生じる。吐出孔の数や、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動するため、実際には上記式5より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れることがある。この場合は、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
液体の音速cが1,200m/sとし、液柱共鳴液室の長さLを1.85mmと仮定し、両側固定端と完全に等価であると仮定して、N=2の共鳴モードを用いた場合、上記式(4)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、上記と同じ条件を用い、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式(4)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれる。つまり、同じ構成の液柱共鳴液室を使用した場合でも、より高次の共鳴を利用することができる。
図1に示す液柱共鳴方式の液滴吐出手段11における液柱共鳴液室は、両端が固定端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で吐出孔側の壁面が音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、開放端であってもよい。つまり、図3の(b)及び図4の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるため好ましい。前記吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、コンプライアンス成分が大きくなることを意味する。
吐出孔の開口数、開口配置位置及び吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば、吐出孔の数を多くすると、固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が徐々に緩くなる。そのため、開放端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。この時、液供給路側に最も近い吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となる。また、吐出孔の断面形状がラウンド形状となり、他にもフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動することで、実際の定在波は短波長となり駆動周波数もより高くなる。このように、決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液供給側の端部と、液供給側の端部から最も近い吐出孔とまでの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて、下記式6及び式7で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。LとLeの比は、Le/L>0.6であることが好ましい。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式6)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式7)
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図1の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、吐出孔19において連続的に液滴が吐出される。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置(前記定在波の腹に相当する領域)に吐出孔19を配置することが、吐出効率が高く、低い電圧で駆動できるため好ましい。
吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、1つの液柱共鳴液室18に対して2〜100個の吐出孔を形成することが好ましい。1つの液柱共鳴液室18に対する吐出孔の数が100個を超える場合、所望の液滴を形成させるために振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要が生じ、圧電体などの振動発生手段20の挙動が不安定となる。また、複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチは20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20μmより大きい場合、隣接する吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となることがあり、トナーの粒子径分布が広くなる。
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について、図5を用いて説明する。なお、図5では、液柱共鳴液室内に記した実線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの各測定位置における速度をプロットした速度分布を示している。この時、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−としている。また、液柱共鳴液室内に記した点線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示している。この時、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−としている。また、正圧であれば図中の鉛直下方向に圧力が加わり、負圧であれば図中の鉛直上方向に圧力が加わる。さらに、図5において、上述したように液共通供給路側が開放されているが、液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が約2倍以上である場合、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であると近似可能である。そのため、図5では、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であると近似した条件のもとで、速度分布及び圧力分布の時間変化を示している。
図5(a)は、液滴吐出直前の圧力波形と速度波形を示している。液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は徐々に大きくなり、直前の液滴吐出時の液引き込み後において減少したメニスカス圧が、再び増加している。その後、図5(b)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、液滴21が吐出されると共に、負圧の方向へ移行する。
そして、図5(c)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図5(d)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図5(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。
このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹の領域に吐出孔19が配置されていることから、当該定在波の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
次に、液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一実施形態の例について説明する。この一例は、図1においてLが1.85mmで、N=2の共鳴モードであって、N=2の共鳴モードの圧力定在波の腹の位置に第一から第四の吐出孔を配置されている。また、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った。
図6に各々の吐出孔からの吐出の様子をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を示す。図6から、非常に液滴の径が揃い、吐出速度もほぼ同じであることがわかる。また、図7は駆動周波数290kHz〜395kHzの同一の振幅を有するサイン波にて駆動した際の、液滴速度周波数特性を示す特性図である。図7からわかるように、第一乃至第四のノズルにおいて、駆動周波数が340kHz付近では、各ノズルからの吐出速度が均一であり、かつ、吐出速度が最大となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図7の特性結果から、130kHz付近の第一モードと、340kHz付近の第二モードとの間では、液滴は吐出しないことがわかる。これは、液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性によるものである。
《膜振動方式の液滴吐出手段》
膜振動方式の液滴吐出手段としては、主として、間接振動型と直接振動型とがある。
〔間接振動型〕
図8は、間接振動型の液滴吐出手段51の概略断面図である。また、図9は、間接振動型の液滴吐出手段51の液滴吐出する側の面を示す図である。間接振動型の液滴吐出手段51は、複数の吐出孔19が形成された薄膜41と、薄膜41を振動させる機械的振動手段33とを有する。また、薄膜41と機械的振動手段33との間に、トナー組成液14を供給する液流路7を形成するフレーム40と有する。トナー組成液14は図示しない原料収容器から液循環ポンプにより液供給管を通り、トナー組成液供給口6から供給される。さらに、流路7を通り、トナー組成液排出口8から排出され、図示しない液戻り管を通って再び原料収容器に戻る。
前記複数の吐出孔19を有する薄膜41は、前記振動手段33の振動面43に対して平行に設置されている。また、薄膜41の一部がフレーム40に接合固定されており、機械的振動手段33の振動方向とは実質的に鉛直垂直方向に位置する。機械的振動手段33の振動発生手段20の鉛直方向上下の面に電圧信号が付与されるよう、回路35が設けられている。これにより、駆動信号発生源34からの信号を機械的振動に変換することができる。電気信号を与える回路35としては、表面を絶縁被覆されたリード線が好ましい。また、機械的振動手段33は後述する各種ホーン型振動子、ボルト締めランジュバン型振動子など、振動振幅の大きな素子を用いることが、効率的かつ安定してトナーを生産できるため好ましい。
機械的振動手段33は、振動を発生する振動発生手段20と、この振動発生手段20で発生した振動を増幅する振動増幅手段42とを含む。駆動信号発生源34から振動発生手段20の電極31間に、所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることによって、振動発生手段20に振動が励起される。この振動が振動増幅手段42で増幅され、薄膜41と平行に配置される振動面43が周期的に振動する。この振動面43の振動による周期的な圧力によって薄膜41が所要周波数で振動する。図8に示される振動発生手段20は圧電体30などの一つの振動発生手段を電極31で挟んでいる構成になっているが、これを複数重ねた構造としても良い。
この振動発生手段20としては、薄膜41に対して縦振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。例えば、圧電体30、超音波振動発生体などが挙げられる。圧電体30は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、たわみ振動が励起され、薄膜41を振動させることが可能となる。圧電体30としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などの材質から形成された圧電体などが挙げられる。また、超音波振動発生体としては、例えば、ニッケル、フェライト、アルフェルなどの強磁性体から成る磁歪素子や、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムなどの強誘電体から成る電歪素子などが挙げられる。これらの中でも、薄膜41を振動させる観点では、振動発生手段20にはバイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体30が好ましい。また、高い強度を有するボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。このボルト締めランジュバン型振動子は圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがない。
前記吐出孔の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの母体粒子を均一に振動させる点で、円形が好ましい。
図10は、膜振動型吐出手段の液滴吐出原理を説明するための、薄膜の径方向座標に対する振動変位を示す概略図である。撓み振動は、図10からわかるように、薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。膜が周期的に上下振動することで吐出孔19から液滴13が周期的に吐出する。液滴21が吐出できる薄膜41の速度は、振動変位に依存するため、吐出可能な面積範囲は図10に示す領域に限られる。そのため、図10に示す面積範囲に吐出孔19を形成することが望ましい。吐出孔19は一般的には、図9に示されるように薄膜41の中心部に配置されている。
機械的振動手段33は、吐出孔19を有する薄膜41に対して垂直方向の振動を与えるものであれば、どのような配置でもよいが、振動面43と薄膜41とは平行に配置されることが好ましい。
図8で示した例では振動発生手段20と振動増幅手段42で構成される機械的振動手段33としてホーン型振動子を用いており、このホーン型振動子は、圧電素子などの振動発生手段20の振幅を振動増幅手段42で増幅することができる。そのため、機械的振動を発生する振動発生手段20は比較的小さな振動を発生出来れば良く、機械的負荷が軽減できるため、生産装置としての長寿命化につながる。ホーン型振動子としては、公知の代表的なホーン形状で良く、目的に合わせて当業者が適宜形状を選択することができる。
機械的振動手段33の大きさは、発振振動数の減少に伴い大きくなることが一般的であり、必要な周波数に応じて、適宜振動手段に直接穴あけ加工を施し貯留部を設けることができる。また、貯留部全体を効率的に振動させることも可能である。
〔直接振動型〕
図11は直接振動型の液滴吐出手段53の概略断面図である。また、図12は直接振動型の液滴吐出手段53の液滴吐出する側の面を示す図である。直接振動型吐出手段53は、液滴21を吐出させる吐出孔19を備えた薄膜41と、薄膜41を振動させるための円環状振動発生手段37と、トナー組成液14を供給する流路7を設けたフレーム40とを含む。トナー組成液14は図示しない原料収容器から液循環ポンプによって液供給管を通ってトナー組成液供給口6から供給される。その後、流路7を通り、トナー組成液排出口8から排出され、図示しない液戻り管を通って再び原料収容器に戻る。
薄膜41は、外周部をフレーム40に接合固定している。円環状振動発生手段37は、この薄膜41の孔12を設けた領域の周囲に配されている。この円環状振動発生手段37は、円環状圧電体36と電極31を含む構成である。電極31に回路35を通じて駆動信号発生源34から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。円環状圧電体36の種類や、電極31、ノズル孔の数や形状、薄膜の材料などは、前記間接振動型と同様のものを好適に用いることができる。
撓み振動は間接振動型の液滴吐出手段51と同様に、図10のように薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。膜が周期的に上下振動することで吐出孔19から液滴21が周期的に吐出する。液滴21が吐出できる薄膜41の速度は、振動変位に依存するため、吐出可能な面積範囲は図10に示す領域に限られる。そのため、図10に示す面積範囲に吐出孔19を形成することが望ましい。吐出孔19は一般的には、図9に示されるように薄膜41の中心部に配置されている。
《膜振動方式の液滴形成メカニズム》
次に、間接振動型の液滴吐出手段51および直接振動型の液滴吐出手段53による液滴形成のメカニズムについて説明する。
上述したように、これらの液滴吐出手段は流路7に臨む複数の吐出孔19を有する薄膜41に、振動発生手段によって発生した振動を伝播させて、薄膜41を周期的に振動させることで、吐出孔19より液滴を周期的に、安定に形成して放出する。
薄膜41の振動により、薄膜41に設けられたノズル近傍の液体には、膜の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと膜振動速度Vmの積で下記式8の方程式を用いて表される。
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t) (式8)
薄膜の振動速度Vmは時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。
また、前述のとおり、膜の各所で振動方向の振動変位は異なっているため、Vmは、膜上の位置座標の関数でもある。しかし、本発明で用いられる薄膜の振動形態は、軸対象であるため、実質的には半径(r)座標の関数となる。
以上のように、分布を持った薄膜の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液が、気相へ吐出される。
気相へ周期的に排出されたトナー組成液は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
液滴化を可能とする膜の振動周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20kHz〜2.0MHzが好ましく、50kHz〜500kHzがより好ましい。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進されるため好ましい。
さらに、前記音圧の変位量が、10kPa以上であることが、上述の微粒子の分散がより促進するため好ましい。
《膜振動方式で用いる薄膜》
吐出孔19を有する薄膜41は、トナー組成物の溶解乃至分散液を、吐出させて液滴とする部材である。
この薄膜41の材質、吐出孔19の形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができる。例えば、薄膜41は厚み5〜500μmの金属板で形成され、かつ、吐出孔19の開口径が3〜30μmであることが、吐出孔19からトナー組成液14の液滴21を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。なお、吐出孔19の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。吐出孔19の個数は、1つのヘッドに対し、2乃至3000個であることが好ましい。
複数の吐出孔における、吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上であることが好ましい。前記吐出孔間のピッチが20μm未満の場合、隣接する吐出孔から放出された液滴同士が衝突して大きな粒子となってしまう確率が高くなり、トナーの粒子径分布が悪化することがある。
吐出孔間のピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒子径のトナーを得ることができる点で好ましい。
吐出孔19の断面形状は、図8や図11において、吐出孔19の開口部と接液面とで大きさが変わらない形状として記載されているが、適宜断面形状は当業者が適宜変更することができる。
図13に吐出孔19の断面形状の一例を示す。図13(a)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有している。この形状の場合、薄膜41が振動した際に吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力が最大となる。そのため、吐出の安定化の面では、最も好ましい形状である。
図13(b)は、吐出孔19の接液面から吐出口に向かって一定の角度で開口径が狭くなるような形状を有している。このノズル角度44は当業者が適宜変更することができる。図13(a)の場合と同様に、このノズル角度により薄膜41が振動したときの吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができる。ノズル角度44の角度の範囲は60〜90°であることが好ましい。ノズル角度44の角度60°未満の場合、液に圧力がかかりにくく、さらに薄膜41の加工も困難であるため好ましくない。一方、ノズル角度44の角度が90°である場合(図13(c))、液滴吐出の出口付近に圧力がかかりにくくなる。また、ノズル角度44の角度が90°以上の場合、孔12の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。図13(d)は、図13(a)の構造と、図13(b)の構造とを組み合わせた形状である。図13(d)のように、段階的に形状を変更しても構わない。
(液滴乾燥捕集手段)
前述の液滴吐出手段により気体中に吐出させたトナー組成液の液滴を、乾燥、次いで捕集することで、本発明のトナーを得ることが出来る。ここでは乾燥及び捕集を行う手段について解説する。
図14は、本発明のトナーの製造方法を実施する装置一例の断面図である。トナー製造装置1は、主に、液滴吐出手段2及び乾燥捕集ユニット60を含んで構成されている。液滴吐出手段2は、前述のように様々な方式の液滴吐出手段を適宜用いることが出来る。
液滴吐出手段2には、原料収容器13と液循環ポンプ15とが連結されている。原料収容器13はトナー組成液14を収容している。液循環ポンプ15は、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を、液供給管16経由で液滴吐出手段2に供給する。また、液循環ポンプ15は、トナー組成液14を液戻り管22により原料収容器13に戻すために、液供給管16内のトナー組成液14を圧送する。これにより、トナー組成液14を随時液滴吐出手段2に供給することができる。
液供給管16にはP1、乾燥捕集ユニットにはP2の圧力測定器が設けられている。液滴吐出手段2への送液圧力および、乾燥捕集ユニット内の圧力は圧力計P1、P2によって管理される。このときに、P1>P2の場合には、トナー組成液1が孔12から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には、吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
図14に示す乾燥捕集手段60は、チャンバ61及びトナー捕集手段62、トナー貯留部63を含んで構成される。乾燥工程のメカニズムを以下に示す。トナー組成液14で構成された液滴21は液滴吐出手段2から吐出された直後は液体の状態である。その後、チャンバー内を搬送される間に、トナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行し、液体から固体に変化する。固体状態では粒子同士が接触しても合着は生じない。そのため、トナー捕集手段62により、トナーは粉体として回収することが可能であり、得られたトナーはトナー貯蔵部63に格納することが出来る。トナー貯蔵部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
チャンバ61内では、搬送気流導入口64から作られる下降気流101が形成されている。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、重力の他に、搬送気流101によっても例えば、鉛直方向下向き搬送される。そのため、噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が乾燥する前に空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴21と合着し、トナー液滴21の粒子径が大きくなることを抑制できる。図14では液滴吐出手段2は鉛直方向下向きに液滴21を吐出しているが、吐出させる角度は適宜選択できる。気流発生手段としては、チャンバー61上部の搬送気流導入口64に送風機を設けて加圧する方法や、搬送気流排出口65より吸引する方法などを採用することもできる。トナー捕集手段62としては公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機やバックフィルター等を用いることが出来る。
搬送気流101の状態は、液滴21同士の合着を抑制することが出来れば特に限定されることは無く、層流や旋回流や乱流などを適宜選択することができる。搬送気流101を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気以外にも、窒素等の不燃性気体を用いても良い。前述のように液滴21は、乾燥することで合着しなくなる性質を有するため、液滴21の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。つまり、搬送気流101は、トナー組成液14に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが望ましい。また、搬送気流101の温度は、当業者が適宜調整可能であり、生産時において変動の無いことが望ましい。さらに、チャンバー61内に、搬送気流101の気流状態を変える手段を有する構成として構わない。搬送気流101は液滴21同士の合着を防止するだけでなく、液滴21がチャンバ61に付着することを防止することも可能である。
(合着防止手段)
前記液滴乾燥捕集手段では、液滴の合着を搬送気流によって抑える説明を行った。本発明では、搬送気流の他にも、更なる合着防止手段を取り入れることも出来る。具体的な合着防止手段としては、液滴吐出手段付近での補助搬送気流の導入すること、液滴を同一極性に帯電すること、及び、電界制御すること等が挙げられる。
図15は、補助搬送気流を用いた合着防止手段の一例である。液滴吐出手段2の周りにはシュラウド66が配置されており、その一部に補助搬送気流導入口67が配置されている。補助搬送気流導入口67から導入された気体は、シュラウド66によって形成された気流通路12を通り、吐出孔19の周辺に補助搬送気流68が作られる。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、補助搬送気流68により、液滴吐出手段2の近傍においては速度を落とすことなく移動する。そのため、液滴同士の合着の頻度を低く抑えることが出来る。補助搬送気流68の速度は、液滴吐出手段2から吐出された直後の液滴速度に対して、同じ速さか、より早い速さであることが望ましい。補助搬送気流68の速度は、液滴吐出手段2から吐出された直後の液滴速度に対して遅い場合は、逆効果となる場合がある。
図15に示すように、補助搬送気流68は液滴21の進行方向と同一であることが望ましいが、合着を防ぐことが出来れば液滴吐出方向と補助搬送気流の方向が同じである必要は無い。
シュラウド66の形状としては、図15に示すように液滴吐出手段2の吐出孔19付近で開口部を絞ることによって流速を制御しても良いが、絞りを持たせなくても良い。補助搬送気流68を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気であっても窒素等の不燃性気体などを使用することができる。
図16に、本発明で捕集したトナーの粒子径分布の一例を示す。粒子径分布測定はフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製 FPIA−3000)を用いて行った。図16より、粒子径分布が狭いトナー粒子を得ることができたことがわかる。これは吐出された液滴13が合着することなく、乾燥して得られたためである。
図17に、液敵同士が合着した場合の、トナーの粒子径分布を示す。図17は微量の搬送気流101および補助搬送気流102を用いていない以外は、図16と同条件で捕集されたトナーの粒子径分布である。また、図18に、図17で得られたトナーの粒子径分布を説明するための図を示す。ノズル孔19から吐出した液滴21は、自然落下するとともに、空気抵抗を受けて吐出速度が急速に低下する。吐出速度が低下すると液滴間距離が短くなり、液滴間の合着粒子23を生じるようになる。また、合着した粒子はさらに空気抵抗が増し、乾燥も遅れるため、更に別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もある。これにより、結果として得られるトナーの粒子径分布は広くなる。図17中の基本粒子径と示したピークを構成する乾燥粒子は、合着しなかった液滴21がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子は、液滴21が吐出後に少なくとも1回以上合着した後に乾燥固化して得られたトナー粒子である。同様に3倍、4倍と記載されたピークは、少なくとも2回以上の合着が進行していることが推測することができる。
図19に合着した粒子(合着粒子と呼ぶことがある)の写真を示す。また、図20に基本粒子が結着した状態(結着粒子と呼ぶことがある)の写真を示す。結着粒子は、機械的衝撃を与えても結着した粒子がほぐれ無い。その結果、大粒子径を有する粒子と同様に振舞うため、好ましくない。結着粒子は、粒子がある程度乾燥した後、粒子同士が結合することにより得られると考えられる。具体的には、ある程度乾燥が進行した粒子が配管壁面への付着し、やがて別の乾燥が進んでいない粒子が壁面に付着した粒子と結着した後に乾燥が進行し、配管から剥がれて回収されると考えられる。このような粒子の発生を防止するためには、乾燥を早く確実に実施することや、気流制御によって配管内への粒子付着を抑えることで達成できる。
粒子径分布としては、体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)との比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は、最も小さい場合1.0であり、これはすべての粒子径が同一であることを示す。一般的に、Dv/Dnが大きいほど粒子径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーはDv/Dn=1.15〜1.25程度である。また重合トナーはDv/Dn=1.10〜1.15程度である。本発明のトナーはDv/Dn=1.15以下とすることで印刷品質に効果が確認されており、より好ましくはDv/Dn=1.10以下である。
電子写真システムにおいては、粒子径分布が狭いことが現像工程・転写工程・定着工程に求められるため、粒子径分布の広がりは望ましくない。安定的に高精細な画質を得るためにはDv/Dn=1.15以下であることが好ましく、より高精細な画像を得るためにはDv/Dn=1.10以下であることがより好ましい。
(二次乾燥)
図14で示した乾燥捕集手段によって得られたトナーに対して、残留溶剤量が多い場合はこれを低減するために必要に応じて、二次乾燥が行われる。二次乾燥としては、流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることが出来る。有機溶剤がトナー中に残留すると、耐熱保存性、定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動する。さらに、加熱による定着時において有機溶剤が揮発し、機器使用者および周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まる。そのため、トナー中の残留溶剤量を低く抑えることが望ましい。
(液滴吐出手段の温度調整手段)
一般的なスプレードライによる造粒工程では、工程の効率向上および液滴の合着を防止することを目的として、液滴吐出する気相(空間)の温度を上げることによって液滴中の溶剤を短時間のうちに揮発させ、粉体を得る。本発明においても、液滴を吐出させる気相の温度は、生産性の確保及び液滴の合着を防止する目的で、高い温度に設定することが好ましい。しかしながら、液滴を吐出させる空間を高い温度に設定した場合、液滴を吐出させる空間からの輻射熱で液滴吐出手段の温度が上昇する。液滴吐出手段の温度上昇は液滴吐出空間に接するノズル孔周辺において顕著である。そのため、ノズル孔周辺に存在するトナー組成液の温度が上昇し、前述のようにノズル孔の乾燥、溶存気体の気化及びキャビテーションが促進されることになる。
本発明では、トナー組成液を構成する揮発溶剤の蒸気圧が1.3×104Pa以下となる温度に調整することで、ノズル孔の乾燥を防ぎ、長時間に亘り吐出安定性を確保することができる。しかし、前記輻射熱による吐出手段の温度上昇が避けられない場合は、液滴吐出手段に対する温度調整手段を設けることが必要となる。
液滴吐出手段の温度調整機構は、温度を調整する公知の手法を適宜選択することができるが、トナー組成液の温度調整手段と同様、空冷手段、液体媒体を間接的に接触させる手段、ペルチェ素子による冷却手段、などが挙げられる。液滴吐出手段の温度変化は内部のトナー組成液の温度変化を引き起こし、粘度変化、乾燥しやすさ、分散物の凝集等の変化を引き起こす。つまり、液滴吐出の安定性に大きく作用するため、温度制御の安定性の高い手段が好ましく、先に挙げた中では液体冷却媒体を用いる方法が好ましい。
トナー組成液の温度調整幅は狭いことが望ましく、±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃である。液滴出手段の温度とトナー組成液の温度は変わらないことが望ましい。
(トナー用材料)
次に、本発明に係るトナーについて説明する。
本発明に係るトナーは上述した本実施の形態に係るトナー製造装置のように、本発明を適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒子径分布が狭いものが得られる。
次に、本発明で使用できるトナー材料について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。
前記トナー用材料としては、樹脂、着色剤及びワックスを含有し、必要に応じて、帯電調整剤、添加剤およびその他の成分を含有することが好ましい。また、主として一成分現像方式で使用する目的で、トナー用材料として磁性体を含むこともできる。
《樹脂》
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができる。例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
結着樹脂としてスチレン−アクリル系樹脂を使用する場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体の場合、その酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂が、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましい。また、THF可溶分として、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか一方の中に、各々の樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体、他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、JIS K−0070に準ずる以下の方法により求めることができる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をSmlとし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をBmlとし、以下の式9で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W (式9)
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であることが好ましく、40〜75℃であることがより好ましい。Tgが35℃より低い場合、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
《着色剤》
本発明で使用できる着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができる。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
着色剤の含有量としては、トナー質量に対して1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、フラッシング法と呼ばれる方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができ、乾燥する必要がないため好適に使用される。フラッシング法とは、着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法である。また、混合混練する場合には、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
また、前記マスターバッチ用の樹脂は着色剤を分散させて使用することが好ましい。前記マスターバッチ用の樹脂の酸価が、30mgKOH/g以下で、アミン価が1〜100であることが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下で、アミン価が10〜50であることがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
また、分散剤は、顔料分散性の観点から、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましい。具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがある。また、配合割合が10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量における、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100,000がより好ましく、5000〜50,000が特に好ましく、5000〜30,000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
《ワックス》
本発明で用いるトナー組成液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有することが好ましい。
本発明で使用できるワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類が使用できる。他にも、脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
上記ワックスの中でも好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、前記ワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物及びその他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、前記ワックスのうち、2種類以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるワックス、極性基を有する構造のワックス、などが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のワックスや、官能基を有さない無極性のワックスなどが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
2種類以上のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものと、官能基の如き極性基を有するものと、主成分とは異なる成分で変性されたものと、が可塑作用を発揮する。一方、相対的により直鎖構造のものと、官能基を有さない無極性のものと、未変性のストレートのものと、が離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれのワックスを組み合わせた場合においても、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有していることが、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなるため好ましい。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM規格の一つであるD3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
《磁性体》
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
上記磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、Fe3O4、γ−Fe2O3の微粉末が好適に挙げられる。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムなどが挙げられる。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよく、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒子径としては、0.1〜2μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
《流動性向上剤》
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善することができる。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記流動性向上剤の粒子径としては、平均一次粒子径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84、Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40、D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名)、Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
更に、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体を使用することがより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が、30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。更に、ジメチルシリコーンオイルといった、シリコーンオイルが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
流動性向上剤の個数平均粒子径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
流動性向上剤のBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m2/g以上であることが好ましく、60〜400m2/gであることがより好ましい。また、前記表面処理された微粉体としては、20m2/g以上であることが好ましく、40〜300m2/gであることがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部であることが好ましい。
《その他の成分》
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体やキャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性、電気特性及び物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
前記添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
本発明に係るトナーを利用した現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけば良い。また、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させても良く、例えば、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれる、トナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、更には水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
他にも、高分子系微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子を外添剤として使用することができる。
前記外添剤は、表面処理剤を用いることで、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
前記無機微粒子の一次粒子径は、5〜2000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましい。前記外添剤のBET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒子径分布が狭く、体積平均粒子径が0.01から1μmのものが好ましい。
次に、実施形態で用いた溶解乃至分散液の処方を示す。表1に各実施例及び比較例で使用した有機溶剤を示す。なお、表1に記載の有機溶剤は、下記に詳述する着色剤分散液の調整、ワックス分散液の調整、トナー組成液の調整で使用する「選択した有機溶剤」のことである。
(着色剤分散液の調製)
先ず、着色剤分散液を調製した。
カーボンブラック(RegaL400;Cabot社製)17質量部と、顔料分散剤3質量部とを、選択した有機溶剤80質量部中に、攪拌羽を有するミキサーを用いて、一次分散させた。前記顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ、ジルコニアビーズ 0.3mmφ)を用いてせん断力を加えて細かく分散し、5μm以上の凝集体を除去した二次分散液を調製した。
(ワックス分散液の調整)
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部と、ワックス分散剤2質量部とを、選択した有機溶剤80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを用いて、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ、最大径が3μm以下となるようにワックス粒子を析出させた。前記ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ、ジルコニアビーズ 0.3mmφ)を用いてせん断力を加えて細かく分散し、最大径が1μm以下なるよう調整した。
(トナー組成液の調製)
結着樹脂としての樹脂と、上記着色剤分散液と、上記ワックス分散液とを添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてポリエステル樹脂(分子量40,000、ガラス転移温度 60℃)100質量部と、前記着色剤分散液30質量部と、ワックス分散液30質量部とを、選択した有機溶剤840質量部中で、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈により顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
(トナー製造装置)
図14に一例として示す構成のトナー製造装置1を用い、吐出手段としては下記の吐出手段でトナーの製造を行った。
各構成物のサイズを記載する。
《液柱共鳴方式の液滴吐出手段》
液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2の共鳴モードの圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを用いた。駆動信号発生源はNF社ファンクションジェネレーターWF1973を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。この時の駆動周波数は液共鳴周波数に合わせて340kHzとなる。
《膜振動方式の液滴吐出手段(直接振動型)》
フレーム外径が26mm、薄膜41はφ20mm、厚さ40μmのニッケル板を用いた。
複数の吐出孔19の出口径は10μmで、薄膜41の中心部φ1mmのエリアに100個空けられている。圧電体30は、外径φ15.0mm、内径φ4.0mm、厚さ0.5mmのPZTであり、電極31は銀ペーストで作成されている。駆動信号発生源34はNF社ファンクションジェネレーターWF1973を用い、回路35はポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続されている。この時の駆動周波数は液共鳴周波数に合わせて108kHzとなる。
なお、両液滴吐出手段共に、フレームには冷却を目的とするペルチェ素子が備えている。ペルチェ素子へ通電することにより、液滴吐出手段の吐出孔付近の温度を調整することができる。吐出孔付近の温度は非接触温度計Keyence社製 FY−H20、センサアンプ FT−50Aによって確認し、その出力を元に、オムロン社アナログ入力温調機E5CNによりペルチェ素子への入力を制御し、吐出孔付近が一定温度となるように設定することができる。
(トナー捕集部)
シュラウド66は円筒状で、径は50mm、開口部の径はφ10mmである。チャンバ61の内径はφ400mm、高さは2000mmの円筒形で垂直に固定されており、上端部と下端部が絞られており、搬送気流導入口の径はφ100mm、搬送気流出口の径はφ100mmである。液滴吐出手段2はチャンバ61内上端より300mm下の高さで、チャンバ61の中央に配置されている。搬送気流の温度は40℃の窒素とし、補助搬送気流は適宜変更できるようになっている。
(粒子像分析)
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下となるようにする。その粒子数濃度の水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加える。これに測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz,50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行う。さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒子径分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、0.06−400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
次に各実施例及び比較例について詳述する。表1に各実施例及び比較例での吐出手段、を示す。また、表1には、吐出孔におけるトナー組成液の温度及び、前記温度における各トナー組成液中の有機溶剤の蒸気圧を示す。さらに、表1には、搬送気流の温度及び、前記温度における各トナー組成液中の有機溶剤の蒸気圧を示す。
各実施例及び比較例において、吐出手段として液柱共鳴方式と記載された例においては、Sin波で340kHz、8.0Vp−pの入力信号を用いた。また、吐出手段として直接膜振動方式と記載された例においては、入力信号はSin波で52kHz、18.0Vp−pの入力信号を用いた。
(実施例1)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.29×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(25℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を25℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度はレーザーシャドウクラフィを用いて測定され、平均速度は10.2m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例1のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.83μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.51μmであり、Dv/Dnの平均は1.07であった。
(実施例2)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.29×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(25℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を25℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、直接膜振動方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度11.5m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例2のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.98μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.53μmであり、Dv/Dnの平均は1.10であった。
(実施例3)
有機溶剤(THF;Tetrahydro Fran)の蒸気圧を1.27×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(10℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を10℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度12.2m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例3のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.72μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.41μmであり、Dv/Dnの平均は1.07であった。
(実施例4)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.01×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(20℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を20℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度9.6m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例4のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.70μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.49μmであり、Dv/Dnの平均は1.05であった。
(実施例5)
有機溶剤(トルエン)の蒸気圧を0.8×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(40℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を40℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度11.0m/sであった。1次搬送気流は7m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例5のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.89μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.53μmであり、Dv/Dnの平均は1.08であった。
(実施例6)
有機溶剤(酢酸ブチル)の蒸気圧を0.35×104Paにするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(40℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を40℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度11.8m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例6のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は4.85μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.45μmであり、Dv/Dnの平均は1.09であった。
(実施例7)
有機溶剤(酢酸ブチル)の蒸気圧を0.35×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(40℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を40℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度12.7m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例7のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は7.25μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は5.33μmであり、Dv/Dnの平均は1.36であった。
(比較例1)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.63×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(30℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を30℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度12.0m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、比較例1のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は5.25μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.61μmであり、Dv/Dnの平均は1.14であった。
(比較例2)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.63×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(30℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を30℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、直接膜振動方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度12.2m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、比較例2のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は5.32μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.63μmであり、Dv/Dnの平均は1.15であった。
(比較例3)
有機溶剤(酢酸エチル)の蒸気圧を1.41×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(27℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を27℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度10.5m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、比較例3のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は5.54μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.70μmであり、Dv/Dnの平均は1.18であった。
(比較例4)
有機溶剤(THF)の蒸気圧を2.42×104Paとするために、この蒸気圧に対応する温度を計算により求めた(25℃)。吐出孔におけるトナー組成液の温度を25℃に設定し、前述のトナー製造装置を用いて、液柱共鳴方式によりトナー組成液を吐出させた。
吐出直後の液滴速度は、平均速度13.3m/sであった。1次搬送気流は7.0m/s、2次搬送気流は14.0m/sとし、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子を捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、比較例4のトナーを得た。
得られたトナーの粒子径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)にて測定した。これを3回繰り返し、体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)を決定した。体積平均粒子径(Dv)の平均は5.30μmであり、個数平均粒子径(Dn)の平均は4.65μmであり、Dv/Dnの平均は1.14であった。
(評価)
各実施例及び比較例におけるトナーの吐出について、連続吐出している吐出孔の数が90%以上を保持できる時間を評価した。評価基準は下記の通りである。
10分未満 ×
10分〜20分 △
20分〜30分 ○
30分以上 ◎
また、捕集したトナー粒子の粒子径分布測定結果のDv/Dnの値についても評価を行った。評価基準は下記の通りである。
1.10以下 ◎
1.11〜1.10 ○
1.11〜1.15 △
1.16〜1.20 ×
1.20以上 ××
以上のように、トナー組成液に含まれる揮発溶剤の蒸気圧が1.3×104Pa以下となる液温度に設定することで、長時間に亘り安定的に液滴を吐出可能であり、かつ、噴霧後の液滴同士の合着を防止して狭い粒子径分布を有する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供できる。また、液滴吐出させる空間を、揮発溶剤の蒸気圧が2.0×104Pa以上となる温度に設定とすることで、粒子径分布の品質を高度に維持できることが示される。