JP2012242701A - フォトクロミックレンズ、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層を有するフォトクロミック積層体有し、該光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方の面上に合成樹脂層を有するフォトクロミックレンズであって、該光学シート又は光学フィルムと合成樹脂層との間に、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂を含む硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層を有するフォトクロミックレンズ。
【選択図】 なし
Description
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
を有するフォトクロミックレンズであって、
前記塗膜層(B)が、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を分子内に有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズである。
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
該光学シート又は光学フィルム(A2)の少なくとも一方の面上に合成樹脂層(C)を有するフォトクロミックレンズであって、
該光学シート又は光学フィルム(A2)と合成樹脂層(C)との間に、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有することを特徴とするフォトクロミックレンズである。
フォトクロミック積層体(A)は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するものである。本発明において、このフォトクロミック積層体(A)における密着性とは、1)母材となる合成樹脂(B)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性、さらには、2)ポリウレタン接着層(A1)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性の両者を意味する。先ず、フォトクロミック積層体(A)を構成する、ポリウレタン接着層(A1)について説明する。
(ポリウレタン接着層(A1)を構成するポリウレタン樹脂)
本発明において、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)に使用するポリウレタン樹脂は、光学シート又は光学フィルム(A2)を接合できる接着剤の役割を果たす。そのため、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に存在し、両者を接合できる樹脂であれば、特に制限されるものではない。このポリウレタン樹脂は、熱硬化性ポリウレタン、または熱可塑性ポリウレタンであってもよい。
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネート化合物としては、耐候性の観点から脂肪族ポリイソシアネート化合物、または脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート化合物を挙げることができ、特にイソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを用いることが好ましい。
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物を使用することできる。中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。該ポリオール化合物の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。中でも、得られるポリウレタン接着層の耐熱性、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、特にフォトクロミック化合物の耐候性の観点から、数平均分子量は400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
該ポリウレタン樹脂に使用される鎖延長剤としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の化合物である。具体的には、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、ジオール化合物、及びトリオール化合物を使用できる。特に、密着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性の観点から、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミンなどのジアミン化合物を使用することが好ましい。
上述のポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から得られるポリウレタン樹脂の末端は、イソシアネート基であってもよいし、該イソシアネート基を反応停止剤によりキャップしていてもよい。該反応停止剤は、1つのイソシアネート基と反応しうる基と、その他、様々な機能を発揮できる基、構造を有する化合物を使用することができる。具体的には、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンのようなイソシアネート基と反応する基を有する化合物を反応停止剤として使用することができる。
該ポリウレタン樹脂は、前記成分を用い、公知の方法で製造することができる。具体的には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができる。例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物と反応させ、次いで、鎖延長剤を反応させ、必要に応じて、反応停止剤を反応させる方法を採用することができる。これら成分の反応条件は、公知の条件を採用することができる。また、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒中で反応を実施することができる。精製方法等も、公知の方法を採用することができる。
次に、ポリウレタン接着層(A1)に含まれるフォトクロミック化合物について説明する。
本発明において、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)は、前記方法で得られるポリウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物とを含むフォトクロミック組成物を用いて形成できる。
本発明で使用される光学シート又は光学フィルム(A2)は、光透過性を有するシート又はフィルムが使用される。原料としてはポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートアロイ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、アリル樹脂、ポリスルフォン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。また、偏光フィルム(例えば、ポリビニルアルコール製の偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、光学フィルム(シート)として使用できる。該偏光フィルムを用いることにより、偏光フォトクロミックレンズを得ることができる。
本発明で使用するフォトクロミック積層体(A)は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有してなる。このフォトクロ積層体(A)は、例えば、下記のような手順・条件により製造できる。
本発明のフォトクロミックレンズにおいて、塗膜層(B)は、必ず、光学シート又は光学フィルム(A2)と下記に詳述する合成樹脂層(C)との間に介在するものである。そして、この塗膜層(B)は、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる。
本発明で使用する硬化性組成物は、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含むものである。先ず、このウレタンウレア樹脂(b1)について説明する。
本発明で使用するウレタンウレア樹脂(b1)が有する重合性基は、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基(重縮合する基)、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる基である。以下、これらの基をまとめて「重合性基」とする場合もある。なお、加水分解してシラノール基を形成しうる基とは、アルコキシシリル基などである。また、(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基、又はメタアクリレート基を指す。
(b1−1)分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(以下、単に(b1−1)成分ともいう。)と、
(b1−2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、単に(b1−2)成分ともいう。)と、
(b1−3)分子内に分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つ以上がアミノ基(−NH2基、または−NH(R))である分子量50〜300のアミノ基含有化合物(以下、単に(b1−3)成分ともいう。)と、
(b1−4)分子内に1つ、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に前記重合性基を有する化合物(以下、単に(b1−4)成分ともいう。)とを反応させて製造することが好ましい。この(b1−3)成分を使用することにより、分子内にウレア結合を有するウレタンウレア樹脂を製造することができる。また、(b1−4)成分を使用することにより、分子内に重合性基を有するウレタン−ウレア樹脂(b1)を製造できる。
以下、これらの成分について説明する。
(b1−1)成分は、分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物である。水酸基の数は、分子内に2〜6個あることが好ましく、特に2個であることが好ましい。また、(b1−1)成分の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。この(b1−1)成分はポリマーであり、そのため、分子量は数平均分子量で示す。得られるb1成分の耐溶剤性、及び密着性の観点から、数平均分子量は、400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどのポリカーボネートポリオール;
ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどのポリカプロラクトンポリオール;
DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどのポリエステルポリオール
などが挙げられる。
(b1−2)成分は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート基の数は、分子内に2〜6個であることが好ましく、さらに2〜3個であることが好ましい。この(b1−2)成分である“分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物”としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、耐候性の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
アミノ基含有化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つ以上がアミノ基(−NH2基、または−NH(R))である分子量50〜300の化合物である。分子内にイソシアネート基と反応する基が2〜4個であり、アミノ基が1〜2個であることが好ましく、特に、アミノ基のみが2個であることが好ましい。なお、該アミノ基含有化合物はポリマーではないため、該分子量は、アミノ基含有化合物そのものの分子量を指す。
本発明は、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用することにより、該ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を硬化させた硬化体の架橋密度を向上させることができる。そのため、該硬化体よりなる塗膜層(B)の耐溶剤性を向上できるとともに、光学シート(A2)との密着性も向上できる。
先ず、ウレタンウレア樹脂(b1)の末端に重合性基を導入できる化合物について説明する。
(シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を末端に導入する重合性付与化合物)
この化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
R1は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R3は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Tは、イソシアネート基と反応しうる基であり、
mは、1〜3の整数である。)。
アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
この化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
R4は、水素原子、又はメチル基であり、
R5は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Qは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
前記一般式(2)で示される化合物を例示すれば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート等のアクリル酸エステルモノオール;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノオールが挙げられる。
この化合物としては、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
R6は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、nは0〜3の整数であり、Uはイソシアネート基と反応しうる基である。)。
この化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
R7は炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Vは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
(シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を側鎖に導入する重合性付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(5)、または(6)で示される化合物を挙げることができる。
R8は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R9は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R10、及びR11は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
pは、1〜3の整数である。)。
R10、及びR11は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
R12は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R13は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
qは、1〜3の整数であり、Wは、−O(C=O)NH−、または−NH(C=O)NH−であり、
Xはイソシアネートと反応しうる基である。)。
R14、R15、R16、及びR17は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
この化合物としては、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
R18は、水素原子、又はメチル基であり、
R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
sは、0、または1の整数であり、
Yは、−O(C=O)NH−、または−NH(C=O)NH−であり、
Mは、イソシアネートと反応しうる基である。)。
この化合物としては、下記一般式(8)で示される化合物を挙げることができる。
R23、R24、及びR25は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Zは、イソシアネート基と反応する基である。)
前記一般式(8)において、
R23、R24、及びR25は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
上記(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分を反応させてウレタンウレア樹脂(b1)を得る場合には、前述のポリウレタン樹脂と同様に、既知のワンショット法、またはプレポリマー法を採用することができる。
(b1−1)成分に含まれる、“イソシアネート基と反応しうる基”(具体的には水酸基)の総モル数をn1とし、
前記(b1−2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、
前記(b1−3)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3とし、
前記(b1−4)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n3:n4=0.30〜0.85:1.0:0.1〜0.69:0.01〜0.3となる量比とすることが好ましい。中でも、塗膜層(B)が優れた耐溶剤性、密着性を発揮するためには、好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.40〜0.80:1.0:0.15〜0.55:0.02〜0.25、より好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.45〜0.75:1.0:0.15〜0.4:0.04〜0.2である。
この重合性モノマー(b2)は、分子内に、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するモノマーである。ただし、当然のことながら、前記ウレタンウレア樹脂(b1)は、この重合性モノマー(b2)には該当しない。
本発明において、塗膜層(B)を形成するために使用する硬化性組成物には、ウレタンウレア樹脂(b1)の重合性基を効率的に架橋させるために、各種重合開始剤を配合することもできる。
ウレタンウレア樹脂(b1)が加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する場合には、酸水溶液を添加することが好ましい。このような酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸等の有機酸が代表的であり、特に加水分解性の観点から、塩酸が好適であり、さらには0.0001〜0.1規定の塩酸水溶液が好適に用いられる。酸水溶液の添加量は、加水分解してシラノール基を形成しうる基の全ての加水分解性基が加水分解するのに必要な量の0.1〜3モル倍になるように添加することが好ましい。
ウレタンウレア樹脂(b1)が(メタ)アクリレート基、又はビニル基を有する場合には、重合開始剤として、熱重合開始剤、または光重合開始剤を配合することが好ましい。
ウレタンウレア樹脂(b1)がエポキシ基を有する場合には、重合開始剤として、従来のエポキシ化合物の重合に用いられる硬化剤を制限なく使用することができる。該硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を挙げることができる。具体的には、フェノール樹脂系のものとしては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられ、ポリアミン系硬化剤としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、メラミン樹脂、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′―ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド等があげられ、ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸があげられ、またイミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2−フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等があげられる。
本発明で使用する硬化性組成物には、必要に応じて、有機溶媒を配合することもできる。有機溶媒を配合することにより、ウレタンウレア樹脂(b1)、及び、必要に応じて配合される重合性モノマー(b2)、及びその他の成分が混合しやすくなる。その結果、塗膜層を形成する硬化性組成物の粘度を適度に調製することができる。そして、光学シート又は光学フィルム(A2)に、該硬化性組成物を塗布するときの操作性、及び塗布膜の厚みの均一性を高くすることもできる。
本発明において、塗膜層(B)は、光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される。そのため、フォトクロミック積層体(A)を製造する前に、予め、光学シート又は光学フィルム(A2)上に、塗膜層(B)を形成してもよい。また、フォトクロミック積層体(A)を形成した後、該フォトクロミック積層体(A)の合成樹脂層(C)を配置する面上に、塗膜層(B)を形成することもできる。以下、光学シート又は光学フィルム(A2)上に、塗膜層(B)を形成する場合の例を説明する。
合成樹脂層(C)は、通常のプラスチックレンズ材料となる熱可塑性樹脂、又はレンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂から形成することができる。中でも、塗膜層(B)を形成することの効果がより顕著に発揮されるのは、レンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂より合成樹脂層(C)を形成する場合である。レンズ形成用モノマー組成物としては、具体的には、(メタ)アクリレート系モノマー組成物、アリル系モノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂を形成しうるレンズ形成用モノマー組成物を挙げることができる。
(メタ)アクリレート系モノマー組成物
(メタ)アクリレートモノマー組成物としては、下記に例示されるような(メタ)アクリレートモノマーを含んでなる組成物であり、さらには他の(メタ)アクリレートモノマー、や他の重合性モノマーを混合しても構わない。具体的な(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルメタアクリレート等の少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーなどを挙げることができる。
アリル系モノマー組成物としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のアリル基を有するアリルモノマーを含んでなる組成物が挙げられる。
チオウレタン系モノマー組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物からなる。ポリイソシアネート化合物としては、前記ウレタン−ウレア樹脂(C1)のポリイソシアネート化合物で例示したイソシアネート化合物に加えて、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(4−イソシアナート−2−チアブチル)−1, 4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナートメチル−4−イソシアナート−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナート−2−チアプロピル)−1,4−ジチアン、1,3,5 − トリイソシアナートシクロヘキサン、1, 3,5−トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、1,5−ジイソシアネート−2−イソシアネートメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアネートエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアネートメチルチオ)プロパン、1,1,6,6−テトラキス(イソシアネートメチル)−2,5−ジチアヘキサン、1,1,5,5 −テトラキス(イソシアネートメチル)−2,4−ジチアペンタン、1,2−ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン等のポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネート類のビュレット型反応によるニ量体、これらのポリイソシアネート類の環化三量体およびこれらのポリイソシアネート類とアルコールもしくはチオールの付加物等が挙げられる。これら、ポリイソシアネート化合物は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
ウレタン系モノマー組成物としては、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン硬化剤を含んでなる混合物を好適に用いることができる。
チオエポキシ系モノマー組成物としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物等;テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4'−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フォトクロミック積層体(A)における光学シート又は光学フィルムの塗膜層(B)上に、合成樹脂層(C)を形成(積層)する方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、最表面に塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、プラスチックレンズ製造の際に使用されるガラスモールドや金型の中に設置し、そこに該合成樹脂層(C)を形成するレンズ形成用モノマー組成物を充填する方法である。
(分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)の合成に使用した原料)
(ポリオール化合物:(b1−1)成分)
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
CE1: 4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)。
RC1:アミノプロピルトリメトキシシラン。
RC2:2−ヒドロキシエチルアクリレート。
RC3:ブタンジオールモノグリシジルエーテル。
RC4:アリルアルコール。
RC5:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエメトキシシラン。
RC6:下記式で示される化合物
2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルアクリレート
2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルグリシジルエーテル
(b1):ウレタンウレア樹脂(U1)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1:(b1−1)成分)234g、イソホロンジイソシアネート(NCO1:(b1−2)成分)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、テトラヒドロフラン(THF)1500mlを加えた後、窒素雰囲気下で4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(CE1:(b1−3)成分)18.9gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。そして、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア樹脂を合成した。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1:(b1−1)成分)234g、イソホロンジイソシアネート(NCO1:(b1−2)成分)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、THF1500mlを加えた後、窒素雰囲気下でN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(RC5:(b1−4)成分)を15g滴下しながら加え、滴下終了後25℃で2時間反応させた。さらに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(CE1:(b1−3)成分)14.2gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。その後、アミノプロピルトリメトキシシラン(RC1:(b1−4)成分)8.0gを加え、25℃にて1時間反応させた。そして、溶媒を減圧留去することで、ウレタンウレア樹脂の側鎖、及び末端にトリメトキシシリル基を有するウレタンウレア樹脂(U5)を得た。得られたウレタンウレア樹脂(U5)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で1.7万(理論値;1.6万)であった。また、ウレア結合の量は、1分子当たり平均24個であり、1分子当たりの重合性基の数は、平均14個であった。これらの結果を表2にまとめた。
表1に示す(b−1)成分、(b−2)成分、(b−3)成分、(b−4)成分、及び反応溶媒を用い、表1に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1、もしくはU5の合成方法と同様にして、ウレタンウレア樹脂(U2)〜(U4)、及び(U6)〜(U8)の合成を実施した。ウレタンウレア樹脂の合成条件についても表1に示した。
(重合性モノマー(b2))
M1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
M2:エチレングリコールジアクリレート。
M3:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル。
D1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
(重合開始剤)
P1:0.001N塩酸水溶液。
P2:ジエチレントリアミン。
P3:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート。
P4:Irgacure1800{1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比3:1)}。
P5:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)
ポリウレタン接着層(A1)用組成物(フォトクロミック組成物)の調製方法
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール)252g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、テトラヒドロフラン(THF)1000mlを加えた後、窒素雰囲気下でイソホロンジアミン19gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。次いで、上記溶液に窒素雰囲気下にて、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン8gを加え、25℃にて1時間反応させることによりポリウレタン樹脂を合成した。このポリウレタン樹脂を含む溶液に、下記に示すフォトクロミック化合物(PC1)18.5gを混合、溶解してフォトクロミック組成物を得た。
・POLYCA;ポリカーボネート製シート(厚み 0.4mm)。
・PET;ポリエチレンテレフタレート製シート(厚み 0.3mm)。
・TAC;トリアセチルセルロース製シート(厚み 0.3mm)。
各々作製した、塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、直径65mmの円形に裁断し、ガスケットを有するガラスモールド内(0.00D、レンズ径70mm、肉厚3.0mmに設定)に設置した。このガラスモールド内に、下記に記載するレンズ形成用モノマー組成物を注入し、下記条件により硬化させた。その後、外周を玉摺機にて研磨することにより、直径60mmのフォトクロミックレンズを得た。なお、比較例1〜3は、塗膜層(B)を有していないフォトクロミック積層体(A)を使用した。
レンズ形成用モノマー組成物として、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)3質量部、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート100質量部を準備した。
ラジカル重合性単量体であるトリメチロールプロパントリメタクリレート 20質量部、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート 40質量部、ウレタンアクリレート(ダイセル化学工業製EBECRYL4858) 40質量部の混合物を準備した。
レンズ形成用モノマー組成物として、ジシクロヘキシルメタン−4 ,4 ’−ジイソシアネート43.5質量部、イソホロンジイソシアネート43.5質量部、1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン63.0質量部、及び重合開始剤としてジブチルチンジラウレート0.1質量部の混合物を準備した。
レンズ形成用モノマー組成物として、ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン95質量部、2−メルカプトエタノール5質量部、及び重合触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド0 . 1 重量部の混合物を準備した。
レンズ形成用モノマー組成物として、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる数平均分子量1000のポリエステルポリオール 100質量部と4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物78質量部、及び芳香族ジアミン硬化剤としての2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン/2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン17質量部を準備した。
(塗膜層(B)の形成)
分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)として(U1) 100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル100g、重合開始剤として0.001N塩酸水溶液(P1)2.0g、及びトリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(P5)0.5gを、攪拌混合して塗膜層(B)を形成するための硬化性組成物を得た。この硬化性組成物を、厚さ0.4mmのポリカーボネート製シート(光学シート又は光学フィルム(A2):POLYCA)の一方の面に塗布し、50℃で30分乾燥後、110℃で2時間加熱・硬化することにより、膜厚5μmの塗膜層(B)を有する光学シートを得た。
ポリウレタン接着層(A1)用組成物の前記調製方法で得られたフォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し、50℃で30分乾燥させた。その後、該PET製フィルムを分離して、厚み約40μmのポリウレタン接着層(A1)を得た。次いで、前記方法で塗膜層(B)を形成した2枚のPOLYCAシート(ポリカーボネート製シート:光学シート)で、得られたポリウレタン接着層(A1)を挟み、40℃で24時間静置した後、さらに110℃で1時間、加熱処理した。そして、目的のフォトクロミック特性を有するフォトクロミック積層体(A:(S1))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S1))は、ポリウレタン接着層(A1)と接していない面にのみ塗膜層(B)を有していた。この積層体の構成を表1に示した。
上記のアリル系モノマー組成物を用いて、上記の方法に従いフォトクロミックレンズを作製した。得られたフォトクロミックレンズを評価したところ、フォトクロミック特性としての発色濃度は1.1であり、退色速度は40秒であり、耐久性は98%であった。また、該フォトクロミックレンズの各層間のハガレ、及び色調を目視により評価行ったが、初期、耐候性試験後、煮沸試験1時間後、2時間後、及び3時間後のいずれにおいても不良は見られなかった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
得られたフォトクロミックレンズを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、フォトクロミックレンズのフォトクロミック特性を測定した。
下記2点の観点から、目視評価を実施した。
得られたフォトクロミックレンズは、複数の界面を有しており、各層間の密着性評価を目視により実施した。この密着性評価、1)初期、2)前述の劣化促進試験(48時間)後、さらに3)蒸留水による煮沸試験(1時間、2時間、及び3時間)後に実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;各層間で全くハガレが見られない。
1;塗膜層と合成樹脂層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
2;光学シートとポリウレタン接着層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
得られたフォトクロミックレンズの色調を、集光機を用いた目視評価により実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;白濁や、黄変等の色調不良が見られず、透明性が高い。
1;集光機を当てることにより、わずかに白濁などの色調不良を確認することができるが、実用上問題ないレベル。
2;集光機を当てなくとも、白濁などの色調不良を確認することができる。
塗膜層(B)の形成、及びフォトクロミック積層体(A)(塗膜層を有する積層体(S1)〜(S12))の作製
表3に示す硬化性組成物、及び光学シート(A2)を用いた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、光学シート(A2)表面(片面、または両面)に、塗膜層(B)を形成した。表3の塗膜層の積層面の欄において、片面と記載したものは、光学シートの合成樹脂層が積層される面上にのみ塗膜層を設けたものを指す。また、両面と記載したものは、光学シートの両面に塗膜層を設けたものを指す。
塗膜層を形成する硬化性組成物を、厚さ0.4mmのポリカーボネート製シート(光学シート又は光学フィルム(A2):POLYCA)の一方の面に塗布し、フュージョンUVシステムズ社製F3000SQ(Dバルブ)を用い、窒素フロー下において1分間光硬化させることにより、膜厚5μmの塗膜層を有する光学シートを得た。
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、次いで、上記で得た塗膜層(B)を有する光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S2)〜(S12))を得た。表3にその結果を示す。
表4に示す塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A:(S1)〜(S12))、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表4に示す。
フォトクロミック積層体(A)の作製
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、表3に示す光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S13)〜(S15))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S13)〜(S15))は、塗膜層(B)を有していない。表3にその結果を示す。
表4に示すフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表5に示す。
塗膜層(B)の形成、及びフォトクロミック積層体(A)(塗膜層を有する積層体(S16))の作製
表3に示す硬化性組成物、及び光学シート(A2)を用いた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、光学シート(A2)表面(片面)に、塗膜層(B)を形成させた。
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、表2に示す光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S16))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S16))は、光学シート(A2)のポリウレタン接着層(A1)と接していない面にのみ塗膜層(B)を有していた。表3にその結果を示す。
表5に示すフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表5に示す。
2 フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)
3 光学シート又は光学フィルム(A2)
4 フォトクロミック積層体(A)
5 塗膜層(B)
6 合成樹脂層(C)
Claims (7)
- 互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、
前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
を有するフォトクロミックレンズであって、
前記塗膜層(B)が、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズ。 - 前記硬化性組成物が、さらに、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有する重合性モノマー(b2)を含むことを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
- 前記ポリウレタン接着層(A1)と前記光学シート又は光学フィルム(A2)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有することを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
- 請求項1に記載のフォトクロミックレンズを製造する方法であって、
シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、硬化させることにより、前記硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を形成する工程を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法。 - 互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の該光学シート又は光学フィルム(A2)上に、
シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有する積層体。 - 前記硬化性組成物が、さらに、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有する重合性モノマー(b2)を含むことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
- 請求項5に記載の積層体において、前記光学シート又は光学フィルム(A2)と前記ポリウレタン接着層(A1)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有する積層体。
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