JP2012242701A - フォトクロミックレンズ、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた密着性、フォトクロミック性を示すフォトクロミックレンズを提供する。
【解決手段】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層を有するフォトクロミック積層体有し、該光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方の面上に合成樹脂層を有するフォトクロミックレンズであって、該光学シート又は光学フィルムと合成樹脂層との間に、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂を含む硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層を有するフォトクロミックレンズ。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光照射により吸収スペクトルが可逆的に変化する現象、すなわちフォトクロミズムを付与した新規なフォトクロミックレンズに関する。具体的には、フォトクロミック特性、密着性に優れた、特定の塗膜層を介してフォトクロミック積層体と合成樹脂とが接合された新規なフォトクロミックレンズに関する。
近年、眼鏡レンズにおいては、防眩性を有するサングラスの需要が急速に高まっている。このサングラスの母材としては、ガラス製レンズに比べて軽量であること、および割れ難さの点で安全性が高いことから、プラスチック製レンズが使用されている。そして、このようなプラスチック製サングラスには、フォトクロミック化合物を含有させることによって、周囲の明るさに応じて透過率が変化して防眩性を調節できる、フォトクロミックレンズが適用されている。
このようなプラスチック製のフォトクロミックレンズは、様々な方法で製造されている。具体的には、プラスチックレンズの表面にフォトクロミック化合物を含むコーティング組成物を塗布する方法、プラスチックレンズの材質自体にフォトクロミック化合物を混合し、レンズを形成する方法などが挙げられる。
また、母材となるプラスチック材料の特性を損なうことなく、安価にフォトクロミック特性を付与できる方法として、フォトクロミック積層体を使用する方法が検討されている。このフォトクロミック積層体は、先ず、フォトクロミック化合物を接着性ポリウレタン樹脂中に分散させて接着シートを形成する。次いで、該接着シートに、ポリカーボネート樹脂のような光学シートを積層して製造することができる。
このフォトクロミック積層体を使用したフォトクロミックレンズの製造方法としては、該積層体に、レンズ用の熱可塑性樹脂を射出成型により積層する方法が知られている。また、機能性のレンズを容易に製造できるという点で、重合してレンズ用の熱硬化性樹脂となる組成物(以下、「レンズ形成用モノマー組成物」とする場合もある)を使用する方法も知られている。この方法は、レンズ形成用モノマー組成物中に該積層体を埋設(浸漬)し、該レンズ形成用モノマー組成物を重合してフォトクロミックレンズを製造する方法である。このレンズ形成用モノマー組成物を使用する方法は、比較的低温でフォトクロミックレンズを製造することができる。また、モノマーの種類を変えることによって、様々な機能をレンズに付与することができる。そのため、多くの検討がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、従来のこれらの方法では、以下の点で改善の余地があった。例えば、特許文献1、及び2に記載された方法では、母材となる熱硬化性樹脂(合成樹脂層)と光学シートとの密着性、及び光学シートとフォトクロミック層(接着シート)との密着性が十分でない場合があった。そのため、フォトクロミックレンズ製造後に、各層が剥離する場合があった。さらに、使用する光学シートの材質によっては耐薬品性が十分ではないため、レンズ形成用モノマー組成物を重合して熱硬化性樹脂(母材:合成樹脂層)とする際、白化や黄変といった外観不良が生じる場合があった。
このような問題を解決するため、特許文献3には、塗膜層を表面に有するフォトクロミック積層体を使用する方法が示されている。該方法では、この塗膜層上に、レンズ形成用モノマー組成物の重合(硬化)体よりなる熱硬化性樹脂(合成樹脂層)を形成している。そして、特許文献3には、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートからなる塗膜層が例示されている。
しかしながら、この塗膜層を設けたフォトクロミックレンズにおいても、熱硬化性樹脂(合成樹脂層)や光学シートの種類によっては、熱硬化性樹脂(合成樹脂層)と光学シートとの密着性が十分に改善されない場合があった。密着性が十分ではない場合、特に、フォトクロミック積層体の端面が熱硬化性樹脂(合成樹脂層)の端面と同一面上に存在すると、フォトクロミックレンズ自体が剥離するおそれがあった。
上述の通り、フォトクロミック積層体を使用したこれまでの方法では、複数形成された層のいずれかの界面が剥離する問題を十分に解消できなかった。フォトクロミックレンズは、日常生活で使用するにあたり、高湿度下に放置されたり、温水と接触する場合がある。このような状況下におかれても、フォトクロミックレンズは、各層間の界面において、高い密着性が保持されなければならない。そのため、高いフォトクロミック特性を維持したまま、例えば、熱水と接触させた後であっても、各層間の密着性が高く、剥離の問題がないフォトクロミックレンズの開発が望まれていた。
特開昭61−236521号公報 特開2005−181426号公報 特開2005−215640号公報
したがって、本発明の目的は、母材となる熱可塑樹脂あるいは熱硬化性樹脂からなる合成樹脂層と、光学シートあるいは光学フィルムとの密着性に優れるフォトクロミックレンズを提供することにある。さらには、前記密着性の特性に加え、透明性、フォトクロミック特性に優れたフォトクロミックレンズを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、光学シート又は光学フィルムと、フォトクロミック化合物を含有するポリウレタン樹脂層との密着性をより向上したフォトクロミック積層体を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。そして、フォトクロミックレンズにおいて、光学シート又は光学フィルム上に形成され、それを介して母材となる合成樹脂と接合する塗膜層について、様々な材料を検討した。その結果、該塗膜層として、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
を有するフォトクロミックレンズであって、
前記塗膜層(B)が、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を分子内に有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズである。
また、本発明における該硬化性組成物には、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有する重合性モノマー(b2)を含むこともできる。
さらに、本発明は、前記ポリウレタン接着層(A1)と前記光学シート又は光学フィルム(A2)との間に、さらに、塗膜層(B)を有するフォトクロミックレンズである。
他の本発明は、前記フォトクロミックレンズを製造する方法であって、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を分子内に有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、硬化させることにより、前記硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を形成する工程を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法である。
また、他の発明は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の該光学シート又は光学フィルム(A2)上に、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有する積層体である。
本発明のフォトクロミックレンズは、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を設けることにより、母材となる合成樹脂層と、光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性を向上させることができる。さらには、光学シート又は光学フィルム(A2)と、フォトクロミック化合物を含有するポリウレタン接着層(A1)との間に、該塗膜層(B)を設けることにより、両者の密着性をより向上させることができる。
そのため、本発明のフォトクロミックレンズは、優れたフォトクロミック特性を有し、長期間使用できる。
さらに、該塗膜層を有するフォトクロミック積層体(積層体)は、耐溶剤性に優れる。そのため、熱硬化性樹脂(母材)となるレンズ形成用モノマー組成物中に、該塗膜層を有するフォトクロミック積層体(積層体)を埋設(浸漬)してフォトクロミックレンズを製造する場合には、レンズ形成用モノマー組成物中に光学シート又は光学フィルムが溶出することを防止できる。その結果、白濁などが生じない、透明なフォトクロミックレンズを得ることができる。また、該塗膜層を有するフォトクロミック積層体(積層体)を使用することにより、有機溶媒を用いてフォトクロミックレンズを製造することも可能となる。
本発明のフォトクロミックレンズの一態様を示す。 本発明のフォトクロミックレンズの他の態様を示す。
本発明のフォトクロミックレンズは、
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
該光学シート又は光学フィルム(A2)の少なくとも一方の面上に合成樹脂層(C)を有するフォトクロミックレンズであって、
該光学シート又は光学フィルム(A2)と合成樹脂層(C)との間に、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有することを特徴とするフォトクロミックレンズである。
以下、これらのフォトクロミック積層体(A)、塗膜層(B)、合成樹脂層(C)について説明する。
フォトクロミック積層体(A)
フォトクロミック積層体(A)は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するものである。本発明において、このフォトクロミック積層体(A)における密着性とは、1)母材となる合成樹脂(B)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性、さらには、2)ポリウレタン接着層(A1)と光学シート又は光学フィルム(A2)との密着性の両者を意味する。先ず、フォトクロミック積層体(A)を構成する、ポリウレタン接着層(A1)について説明する。
フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)
(ポリウレタン接着層(A1)を構成するポリウレタン樹脂)
本発明において、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)に使用するポリウレタン樹脂は、光学シート又は光学フィルム(A2)を接合できる接着剤の役割を果たす。そのため、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に存在し、両者を接合できる樹脂であれば、特に制限されるものではない。このポリウレタン樹脂は、熱硬化性ポリウレタン、または熱可塑性ポリウレタンであってもよい。
ポリウレタン接着層(A1)に使用するポリウレタン樹脂は、公知の方法で製造することができる。中でも、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から合成されるポリマーであることが好ましい。以下、これら各成分について説明する。
(ポリイソシアネート化合物)
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネート化合物としては、耐候性の観点から脂肪族ポリイソシアネート化合物、または脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート化合物を挙げることができ、特にイソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを用いることが好ましい。
(ポリオール化合物)
該ポリウレタン樹脂に使用されるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物を使用することできる。中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。該ポリオール化合物の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。中でも、得られるポリウレタン接着層の耐熱性、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、特にフォトクロミック化合物の耐候性の観点から、数平均分子量は400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
(鎖延長剤)
該ポリウレタン樹脂に使用される鎖延長剤としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の化合物である。具体的には、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、ジオール化合物、及びトリオール化合物を使用できる。特に、密着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性の観点から、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミンなどのジアミン化合物を使用することが好ましい。
(ポリウレタン樹脂を構成するその他の成分)
上述のポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から得られるポリウレタン樹脂の末端は、イソシアネート基であってもよいし、該イソシアネート基を反応停止剤によりキャップしていてもよい。該反応停止剤は、1つのイソシアネート基と反応しうる基と、その他、様々な機能を発揮できる基、構造を有する化合物を使用することができる。具体的には、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンのようなイソシアネート基と反応する基を有する化合物を反応停止剤として使用することができる。
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
該ポリウレタン樹脂は、前記成分を用い、公知の方法で製造することができる。具体的には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができる。例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物と反応させ、次いで、鎖延長剤を反応させ、必要に応じて、反応停止剤を反応させる方法を採用することができる。これら成分の反応条件は、公知の条件を採用することができる。また、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒中で反応を実施することができる。精製方法等も、公知の方法を採用することができる。
このようにして得られたポリウレタン樹脂は、次に説明するフォトクロミック化合物と混合されて、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を形成する。この際、粘度調節のために、テトラヒドロフラン(THF)やプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶媒を使用することができる。
(フォトクロミック化合物)
次に、ポリウレタン接着層(A1)に含まれるフォトクロミック化合物について説明する。
本発明で使用されるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られている。具体的には、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット等に開示されている。
これらフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノナフト「2,1−f」ナフト「2,1−b」ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。
フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)の形成方法
本発明において、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)は、前記方法で得られるポリウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物とを含むフォトクロミック組成物を用いて形成できる。
このフォトクロミック組成物は、特に制限されるものではないが、ポリウレタン樹脂100質量部当たり、フォトクロミック化合物を1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。そのため、ポリウレタン接着層(A1)は、ポリウレタン樹脂100質量部当たり、フォトクロミック化合物を1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。
また、形成されるポリウレタン接着層(A1)の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、該フォトクロミック組成物に、公知の添加剤を配合することもできる。具体的な添加剤を例示すると、界面活性剤、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等が挙げられる。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用され、これらは2種以上を混合して使用してもよい。上記添加剤の配合量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し、合計で0.001〜10質量部の範囲が好ましい。
さらに、該フォトクロミック組成物には、ポリウレタン接着層(A1)と光学シートの密着性を向上させる目的で、粘着剤を配合することもできる。具体的な粘着剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、水添テルペン樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。
また、該フォトクロミック組成物には、ポリウレタン接着層の耐熱性の向上、及びレンズ形成用モノマー組成物への溶解性を低減させる目的で、無機酸化物微粒子、及び有機/無機複合材料などを配合することもできる。無機酸化物微粒子としては、メタノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの等の有機溶剤に分散したシリカゾル、複合酸化物ゾルなどの金属酸化物ゾルが挙げられる。有機/無機ハイブリッド材料としては、シリカ/メラミンハイブッリド材料、シリカ/ウレタンハイブリッド材料、シリカ/アクリルハイブリッド材料、シリカ/エポキシ樹脂ハイブリッド材料等が挙げられる。
このフォトクロミック組成物から該ポリウレタン接着層(A1)を形成すればよい。該ポリウレタン接着層(A1)を形成する方法は、下記のフォトクロミック積層体(A)の製造方法で説明する。
本発明において、該ポリウレタン接着層(A1)の厚さは、特に制限されるものではないが、フォトクロミック積層体(A)とした際に、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。
該ポリウレタン接着層(A1)の両面には、光学シート又は光学フィルム(A2)が積層される。次に、光学シート又は光学フィルム(A2)について説明する。
光学シート又は光学フィルム(A2)
本発明で使用される光学シート又は光学フィルム(A2)は、光透過性を有するシート又はフィルムが使用される。原料としてはポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートアロイ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、アリル樹脂、ポリスルフォン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。また、偏光フィルム(例えば、ポリビニルアルコール製の偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、光学フィルム(シート)として使用できる。該偏光フィルムを用いることにより、偏光フォトクロミックレンズを得ることができる。
以上のような原料の中でも、密着性、光学特性、及び機械強度などの観点から、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。好ましいポリカーボネート樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンや2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジハロゲノフェニル) アルカンで代表されるビスフェノール化合物から周知の方法で製造された重合体が挙げられる。また、該重合体には、脂肪酸ジオールに由来する構造単位が含まれるエステル結合を有していてもよい。特に、好ましいポリカーボネート樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される樹脂である。また、このポリカーボネート樹脂の分子量についても、特に制限はないが、賦型性や機械的強度の観点から、粘度平均分子量で17,000〜40,000、より好ましくは20,000〜30,000である。
また、本発明で使用される光学シート又は光学フィルム(A2)は、公知の手法で改質したものを使用することもできる。例えば、ポリウレタン接着層(A1)との密着性をさらに向上させるため、表面を改質したものを使用することができる。改質の手法としては、特に限定されないが、プラズマ放電処理、コロナ処理、火炎処理、酸、アルカリ薬液等による化学的処理などを挙げることができる。
また、本発明において、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)は、同一の樹脂からなるシート又はフィルムであってもよいし、異なる樹脂からなるシート又はフィルムであってもよい。特に、上記偏光フィルムを使用する際は、対向するもう一方の光学シート又は光学フィルムは、他の種類の透明性を有する光学シート又は光学フィルムであることが好ましい。
本発明で使用される光学シート又は光学フィルム(A2)の厚さは、通常、50μm〜1mmであり、特に0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。50μmより薄い場合には、レンズ形成用モノマー組成物中にフォトクロミック積層体(A1)を埋設(浸漬)し、該組成物を硬化させる際に、光学シート又はフィルムに歪が生じるおそれがある。その一方で、光学シート又は光学フィルム(A2)の厚さが1mmを超える場合、得られるフォトクロミックレンズが厚くなり、メガネ用途には不向きになるおそれがある。また、曲面加工が困難となる場合がある。
この光学シート又は光学フィルム(A2)には、合成樹脂層(C)が接する面に塗膜層(B)を積層する。また、必要に応じて、前記ポリウレタン樹脂層(A1)が接する面に塗膜層(B)を積層してもよい。次に、この光学シート又は光学フィルム(A2)を有するフォトクロミック積層体(A)の製造方法について説明する。
フォトクロミック積層体(A)の製造方法
本発明で使用するフォトクロミック積層体(A)は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有してなる。このフォトクロ積層体(A)は、例えば、下記のような手順・条件により製造できる。
具体的には、該ポリウレタン接着層(A1)において説明したフォトクロミック組成物を使用してやればよい。例えば、光学シート又は光学フィルム(A2)上に直接、該フォトクロミック組成物を層状に積層してポリウレタン接着層(A1)を形成し、さらに、該ポリウレタン接着層(A1)の表面に、別の光学シート又は光学フィルム(A2)を積層してやればよい。
また、有機溶媒を含むフォトクロミック組成物を使用した場合は、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、有機溶媒を乾燥して該ポリウレタン接着層(A1)を形成し、さらに、該ポリウレタン接着層(A1)の表面に、別の光学シート又は光学フィルム(A2)を積層してやればよい。
その他、有機溶媒に溶解しやすい、例えば、ポリカーボネート製の光学シート又は光学フィルム(A2)を使用する場合には、以下の方法を採用することもできる。先ず、耐溶剤性の高い平滑な基材上に、有機溶媒を含むフォトクロミック組成物を塗布した後、有機溶媒を乾燥し、該基材上から該ポリウレタン接着層(A1)を分離する。次いで、得られたポリウレタン接着層(A1)の両面に光学シート又は光学フィルム(A2)を積層する方法である。この場合、耐溶剤性の高い平滑な基材として、該ポリウレタン接着層(A1)と接する光学シート又は光学フィルム(A2)上に、予め塗膜層(B)を積層したものも使用できる。下記に詳述する塗膜層(B)は、耐溶剤性に優れる。そのため、例えば、耐溶剤性の低いポリカーボネート製の光学シート又は光学フィルムの上に塗膜層(B)を積層したものは、そのまま該基材として使用することができる。塗膜層(B)を有するポリカーボネート製光学シートを光学シート又は光学フィルム(A2)を該基材として使用することにより、フォトクロミック積層体(A)の製造工程を簡略化することができる。
以上のいずれかの方法を採用することにより、ポリウレタン接着層(A1)を形成し、フォトクロミック積層体(A)を製造できる。該ポリウレタン接着層(A1)は、主成分であるポリウレタン樹脂が接着剤として機能する。そのため、上記方法で製造したフォトクロミック積層体(A)は、そのまま、フォトクロミックレンズの製造に使用できる。ただし、該ポリウレタン接着層(A1)の両面に、光学シート又は光学フィルム(A2)を積層した後、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することが好ましい。具体的には、接合(積層)したばかりのフォトクロミック積層体(A)を20℃以上60℃以下の温度で12時間以上静置しておくことが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。さらに、この静置したフォトクロミック積層体(A)を80℃以上130℃以下の温度下、30分間以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。この加熱処理して得られた積層体は、その状態が非常に安定なものとなる。
本発明は、このような方法により得られたフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の面上に、合成樹脂層(C)を有するフォトクロミックレンズである。そして、該フォトクロミック積層体(A)と合成樹脂層(C)との間に、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有することを特徴とする。次に、この塗膜層(B)について説明する。
塗膜層(B)
本発明のフォトクロミックレンズにおいて、塗膜層(B)は、必ず、光学シート又は光学フィルム(A2)と下記に詳述する合成樹脂層(C)との間に介在するものである。そして、この塗膜層(B)は、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる。
本発明において、ウレタンウレア樹脂とは、分子内に必ずウレア結合を有する有機高分子である。本発明で使用するウレタンウレア樹脂(b1)は、ウレア結合を有し、かつ、下記に詳述する重合性基を有する有機高分子である。このウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物から塗膜層(B)を形成することにより、各種光学シート又は光学フィルム(A2)への密着性を向上させることができる。そのため、優れた効果を有するフォトクロミックレンズを得ることができる。
次に、この塗膜層(B)を形成するための硬化性組成物について説明する。
硬化性組成物
本発明で使用する硬化性組成物は、分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含むものである。先ず、このウレタンウレア樹脂(b1)について説明する。
分子内に特定の重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)
本発明で使用するウレタンウレア樹脂(b1)が有する重合性基は、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基(重縮合する基)、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる基である。以下、これらの基をまとめて「重合性基」とする場合もある。なお、加水分解してシラノール基を形成しうる基とは、アルコキシシリル基などである。また、(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基、又はメタアクリレート基を指す。
従来技術においては、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートを、光学シート上に塗布し、重合硬化させて塗膜層を形成している。しかし、従来技術で使用しているポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートでは、形成される塗膜層の耐溶剤性、及び密着性という点で改善の余地があった。
これに対し、本発明においては、分子内に特定の重合性基を有し、かつウレア結合を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用している。そのため、優れた効果を発揮する。 該重合性基は、塗膜層(B)を形成する際に、重合して架橋構造を形成する。また、該ウレタンウレア樹脂(b1)は、凝集力が高いウレア結合を分子内に含んでいる。その結果、該ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を有する積層体は、耐溶剤性が向上し、さらには、密着性も向上するものと考えられる。
このウレタンウレア樹脂(b1)は、特に制限されるものではないが、以下の方法で製造することが好ましい。具体的には、耐溶剤性、及び密着性の観点から、
(b1−1)分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(以下、単に(b1−1)成分ともいう。)と、
(b1−2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、単に(b1−2)成分ともいう。)と、
(b1−3)分子内に分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つ以上がアミノ基(−NH基、または−NH(R))である分子量50〜300のアミノ基含有化合物(以下、単に(b1−3)成分ともいう。)と、
(b1−4)分子内に1つ、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に前記重合性基を有する化合物(以下、単に(b1−4)成分ともいう。)とを反応させて製造することが好ましい。この(b1−3)成分を使用することにより、分子内にウレア結合を有するウレタンウレア樹脂を製造することができる。また、(b1−4)成分を使用することにより、分子内に重合性基を有するウレタン−ウレア樹脂(b1)を製造できる。
以下、これらの成分について説明する。
(b1−1)成分:ポリオール化合物
(b1−1)成分は、分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物である。水酸基の数は、分子内に2〜6個あることが好ましく、特に2個であることが好ましい。また、(b1−1)成分の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。この(b1−1)成分はポリマーであり、そのため、分子量は数平均分子量で示す。得られるb1成分の耐溶剤性、及び密着性の観点から、数平均分子量は、400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
また、(b1−1)成分としては公知のポリオール化合物を何ら制限なく使用することが可能である。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物を使用することが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。その中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上ポリオールのホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートによるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。
また、ポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が挙げられる。
なお、前記ポリオール化合物は、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどのポリエーテルポリオール;
旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどのポリカーボネートポリオール;
ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどのポリカプロラクトンポリオール;
DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどのポリエステルポリオール
などが挙げられる。
(b1−2)成分:ポリイソシアネート化合物
(b1−2)成分は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート基の数は、分子内に2〜6個であることが好ましく、さらに2〜3個であることが好ましい。この(b1−2)成分である“分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物”としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、耐候性の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
(b1−2)成分のポリイソシアネート化合物において、分子内に含まれるイソシアネート基の数は2以上であればよい。(b1−2)成分として好適に使用できるポリイソシアネート化合物としては、耐候性の観点から脂肪族ポリイソシアネート化合物、または脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート化合物を挙げることができ、特にイソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを用いることが好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
また、このポリイソシアネート化合物は、分子内に以下の重合性基を有する化合物であってもよい。この重合性基は、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる基である。なお、該重合性基は、シラノール基であってもよいが、シラノール基はイソシアネート基と反応して制御が困難となるため、加水分解してシラノール基を形成しうる基、例えば、アルコキシシリル基であることが好ましい。
この分子内に重合性基を有するポリイソシアネート化合物、例えば、ジイソシアネート化合物は、以下の方法により製造することができる。加水分解してシラノール基を形成しうる基を有するジイシシアネート化合物を例にして、該化合物の製造方法を説明する。具体的には、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートなどの分子内に3つのイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物と、下記一般式(1)で示される化合物のような分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基(アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基)と加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する化合物とを反応させればよい。
なお、前記のような重合性基を有するジイソシアネート化合物を(b1−2)成分として使用することにより、重合性基を有するb1成分を合成できる。そのため、(b1−2)成分として、重合性基を有する該ジイソシアネート化合物を使用する場合、下記に詳述する(b1−4)成分(重合性基付与化合物)を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
これらのジイソシネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
(b1−3)成分:アミノ基含有化合物
アミノ基含有化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つ以上がアミノ基(−NH2基、または−NH(R))である分子量50〜300の化合物である。分子内にイソシアネート基と反応する基が2〜4個であり、アミノ基が1〜2個であることが好ましく、特に、アミノ基のみが2個であることが好ましい。なお、該アミノ基含有化合物はポリマーではないため、該分子量は、アミノ基含有化合物そのものの分子量を指す。
(b1−3)成分は、ウレタンウレア樹脂(b1)を合成する際の鎖延長剤として機能するものである。(b1−3)成分を用いることにより、ウレタンウレア樹脂(b1)の分子量、ウレア結合量の制御が可能となる。該アミノ基含有化合物の分子量が50未満の場合には、得られるウレタンウレア樹脂(b1)が硬くなり、密着性が低下する傾向がある。一方で、該アミノ基含有化合物の分子量が300を越える場合には、得られるウレタンウレア樹脂(b1)が柔らかくなりすぎる傾向がある。そのため、得られる塗膜層の耐溶剤性が低下する傾向にある。以上のことから、該アミノ基含有化合物の分子量は、50〜250であることがより好ましく、55〜200であることが最も好ましい。
(b1−3)成分は、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、及びアミノチオール化合物から選ばれる少なくとも1種のアミノ基含有化合物である。該アミノ基含有化合物としては、分子内に少なくとも2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つがアミノ基(−NH2基、及び−NH(R)基、Rは置換基)であり、アミノ基以外のイソシアネート基との反応性基は、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕である。
(b1−3)成分のアミノ基含有化合物として好適に使用される化合物を例示すれば、ジアミン化合物、及びトリアミン化合物として、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
また、アミノアルコール化合物としては、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンメタノール、4−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール等を挙げることができる。
アミノカルボン酸としては、グリシン、アラニン、リシン、ロイシン等を挙げることができる。
アミノチオールとしては、1−アミノチオール、2−アミノエタンチオール等を挙げることができる。
以上のアミノ基含有化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
前記アミノ基含有化合物を使用することにより、ウレア結合を有するウレタンウレア樹脂(b1)を製造できる。そして、得られたウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)は、耐溶剤性、及び密着性が向上する。
また、該アミノ基含有化合物に加えて、後述する一般式(5)、(6)、(7)、及び(8)等の重合性基を側鎖に導入可能な化合物を本発明の鎖延長剤として用いることもできる。後述する重合性基を側鎖に導入可能な化合物が、イソシアネート基と反応しうる基としてアミノ基を含む場合は、そのまま上記アミノ基含有化合物として使用することもできるし、アミノ基を含まない場合には上記アミノ基含有化合物と併用することが好ましい。また、(b1−3)成分として、前述のような重合性基を有する鎖延長剤を使用する場合、下記に詳述する(b1−4)成分(重合性基付与化合物)を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
(b1−4)成分:分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、重合性基を有する化合物(重合性基付与化合物))
本発明は、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用することにより、該ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を硬化させた硬化体の架橋密度を向上させることができる。そのため、該硬化体よりなる塗膜層(B)の耐溶剤性を向上できるとともに、光学シート(A2)との密着性も向上できる。
(b1−4)成分は、分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、重合性基を有する化合物(重合性基付与化合物)である。前述のイソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH2基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕及び酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕から選ばれる。
前記重合性基は、 シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる基である。C1−4成分は、該重合性基を分子内に少なくとも1つ以上有することで、ウレタンウレア樹脂(b1)に重合性基を導入できる。以下、(b1−4)成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
先ず、ウレタンウレア樹脂(b1)の末端に重合性基を導入できる化合物について説明する。
(末端に重合性基を導入できる重合性基付与化合物(b1−4成分))
(シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を末端に導入する重合性付与化合物)
この化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中、
R1は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R3は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Tは、イソシアネート基と反応しうる基であり、
mは、1〜3の整数である。)。
前記一般式(1)において、R1は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。特に、好ましくは、メチル基、またはエチル基である。
R2は、炭素数1〜5のアルキル基であり、特に、メチル基、またはエチル基であることが好ましい。
R3は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
Tは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基であることが好適である。
mは、1〜3の整数であり、ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を硬化させた硬化体の架橋密度が向上することから、2又は3であることが好ましい。
前記一般式(1)で示される化合物を例示すれば、
アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
また、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン等の(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するメルカプトアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
((メタ)アクリレート基を末端に導入する重合性付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中、
R4は、水素原子、又はメチル基であり、
R5は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Qは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
前記一般式(2)において、R4は、水素原子、またはメチル基である。
また、R5は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
Qは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基などが挙げられるが、化合物の安定性の観点から、水酸基であることが好適である
前記一般式(2)で示される化合物を例示すれば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート等のアクリル酸エステルモノオール;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノオールが挙げられる。
(エポキシ基を末端に導入する重合性基付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中、
R6は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、nは0〜3の整数であり、Uはイソシアネート基と反応しうる基である。)。
前記一般式(3)において、R6は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
nは0〜3の整数であり、0または1の整数であることが好ましい。特に、nが0の場合には、Uは直接メチレン基に結合している。
Uは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であるが、入手の容易さなどの観点から水酸基であることが好ましい。
前記一般式(3)で示される化合物は、例えば、2価のアルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって合成することができる。本発明にかかる合成方法を特に制限するものではないが、いずれの合成においても、2価のアルコール1モルに対してエピクロルヒドリン1モルが結合したものとなる。2価のアルコールとエピクロルヒドリンとの反応において、対応する副生成物が生じるが、従来の分離方法により単離することが可能である。
前記一般式(3)で示される化合物を例示すれば、グリシドール、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
(ビニル基を末端に導入する重合性付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中、
R7は炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Vは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
前記一般式(4)において、R7は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
Vは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。
前記一般式(4)で示される化合物を例示すれば、アリルアルコール等が挙げられる。
次に、ウレタンウレア樹脂(b1)の側鎖に重合性基を導入できる化合物について説明する。
(側鎖に重合性基を導入できる重合性付与化合物(b1−4)成分)
(シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を側鎖に導入する重合性付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(5)、または(6)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 2012242701
(式中、
R8は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R9は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R10、及びR11は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
pは、1〜3の整数である。)。
前記一般式(5)において、R8は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。特に、好ましくは、メチル基、またはエチル基である。
R9は、炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
R10、及びR11は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
pは、1〜3の整数であり、ウレタン−ウレア樹脂(C1)から形成される塗膜層の架橋密度が向上することから、2又は3であることが好ましい。
前記一般式(5)で示される化合物を例示すれば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中、
R12は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R13は、炭素数1〜5のアルキル基であり、
R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
qは、1〜3の整数であり、Wは、−O(C=O)NH−、または−NH(C=O)NH−であり、
Xはイソシアネートと反応しうる基である。)。
前記一般式(6)において、R12は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。特に、好ましくは、メチル基、またはエチル基である。
R13は、炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
R14、R15、R16、及びR17は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
qは、1〜3の整数であり、ウレタン−ウレア樹脂(C1)から形成される塗膜層の架橋密度が向上することから、2又は3であることが好ましい。
Wは、−O(C=O)NH−、または−NH(C=O)NH−であり、イソシアネート基と、水酸基、またはアミノ基の反応によって形成される。
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、合成の容易さなどの観点からアミノ基、または水酸基であることが好適である。
前記一般式(6)で示される化合物としては、分子内に3つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(3価のアルコール、または3価のアミン)と、分子内にイソシアネート基と加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する化合物(イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物)の反応により得られる。該化合物は、分子内に3つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物1モルに対して、分子内にイソシアネート基とシラノール基、または加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する化合物1モルを反応させることにより得られる。
分子内に3つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物をしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の3価のアルコール;2,2’,2”−トリアミノトリエチルアミン、4−アミノメチルオクタン−1,8−ジアミン等の3価のアミンが挙げられる。分子内にイソシアネート基と加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
((メタ)アクリレート基を側鎖に導入する重合性付与化合物(b1−4)成分)
この化合物としては、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012242701
(式中
R18は、水素原子、又はメチル基であり、
R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
sは、0、または1の整数であり、
Yは、−O(C=O)NH−、または−NH(C=O)NH−であり、
Mは、イソシアネートと反応しうる基である。)。
前記一般式(7)において、R18は、水素原子、またはメチル基である。
また、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
sは、0、または1の整数であり、sが0の場合には、R19とR20が直接結合する。
Yは、−O(C=O)NH−であり、イソシアネート基と、水酸基の反応によって形成される。
Mは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基などが挙げられるが、化合物の安定性の観点から、水酸基であることが好適である。
前記一般式(7)で示される化合物としては、3価のアルコールと(メタ)アクリル酸、または分子内にイソシアネート基と(メタ)アクリレート基を有する化合物の反応生成物が挙げられる。該化合物は、3価のアルコール1モルに対して、(メタ)アクリル酸、または分子内にイソシアネート基と(メタ)アクリレート基を有する化合物1モルとを反応させることにより得られる。
使用される3価のアルコールを例示すれば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。使用される分子内にイソシアネート基と(メタ)アクリレート基を有する化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
(エポキシ基を側鎖に導入する重合性付与化合物)
この化合物としては、下記一般式(8)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 2012242701
(式中、
R23、R24、及びR25は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Zは、イソシアネート基と反応する基である。)
前記一般式(8)において、
R23、R24、及びR25は、それぞれ、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。
Zは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であるが、入手の容易さなどの観点から水酸基であることが好ましい。
前記一般式(8)で示される化合物としては、3価のアルコールとエピクロルヒドリンとの反応により合成することができる。該化合物は、3価のアルコール1モルに対して、エピクロルヒドリン1モルを反応させることにより得られる。3価のアルコールとエピクロルヒドリンとの反応において、対応する副生成物が生じるが、従来の分離方法により単離することが可能である。ウレタンポリマー側鎖にエポキシ基を導入しうる化合物を合成するために使用される3価のアルコールを例示すれば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。
以上のような(b1−4)成分を使用することにより、重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)が得られる。この(b1−4)成分は、ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)の耐溶剤性、密着性の向上を目的として、ウレタンウレア樹脂(b1)の分子末端、および側鎖のどちらにも導入することが可能である。
次に、ウレタンウレア樹脂(b1)の製造方法、各成分の配合割合、及び特性について説明する。
(製造方法、各成分の割合、ウレタンウレア樹脂(b1)の特性)
上記(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分を反応させてウレタンウレア樹脂(b1)を得る場合には、前述のポリウレタン樹脂と同様に、既知のワンショット法、またはプレポリマー法を採用することができる。
反応に使用する(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分の量比は、得られるウレタンウレア樹脂(b1)が重合性基、およびウレア結合を有するような割合としなければならない。中でも、形成される塗膜層(B)の耐溶剤性、密着性の観点から、次のような量比とすることが好ましい。(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分の量比は、
(b1−1)成分に含まれる、“イソシアネート基と反応しうる基”(具体的には水酸基)の総モル数をn1とし、
前記(b1−2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、
前記(b1−3)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3とし、
前記(b1−4)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n3:n4=0.30〜0.85:1.0:0.1〜0.69:0.01〜0.3となる量比とすることが好ましい。中でも、塗膜層(B)が優れた耐溶剤性、密着性を発揮するためには、好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.40〜0.80:1.0:0.15〜0.55:0.02〜0.25、より好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.45〜0.75:1.0:0.15〜0.4:0.04〜0.2である。
ここで、前記n1、n2、n3、及びn4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。ウレタンウレア樹脂(b1)自体の保存安定性を考慮すると、構成する各成分の量比は、n2=n1+n3+n4を満足することが好ましい。
以上のような反応により得られたウレタンウレア樹脂(b1)は、反応溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)など)に溶解しているまま使用しても構わないが、必要に応じて溶媒を留去する、或いは水などの貧溶媒中に反応液を滴下し、ウレタンウレア樹脂(b1)を沈降・濾過後、乾燥させるなどの後処理を行って使用することもできる。
ウレタンウレア樹脂(b1)は、形成される塗膜層の耐溶剤性、密着性などの観点から、数平均分子量が2千〜10万であることが好ましく、さらに3千〜5万であることが好ましく、特に4千〜3万であることが最も好ましい。なお、前記ウレタンウレア樹脂(b1)の数平均分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−805、KD−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ウレタンポリマー試料溶液:0.5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件により測定した数平均分子量である。
また、該ウレタンウレア樹脂(b1)の1分子に含まれる重合性基の数は、2〜30個であることが好ましい。この重合性基の数は、該ウレタンウレア樹脂(b1)の合成に用いた(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分の比率、さらには前記GPC分析により求めた数平均分子量より求めることができる。なお、この重合性基の数は、平均値となる。また、シラノール基あるいはシラノール基を形成しうる基を有する場合には、ケイ素原子に結合する水酸基の数が重合性基の数に該当する。
また、該ウレタンウレア樹脂のウレア結合は、1分子内に2〜50個存在することが好ましい。ウレア結合の割合も、該ウレタンウレア樹脂(b1)の合成に用いた(b1−1)成分、(b1−2)成分、(b1−3)成分、及び(b1−4)成分の比率、さらには前記GPC分析により求めた数平均分子量により求めることができる。このウレア結合の割合は、平均値である。
以上の数分子量、重合性基の数、ウレア結合の割合を満足するウレタンウレア樹脂(b1)を使用することにより、重合収率をより小さくすることができ、凝集力をより高めることができる。その結果、耐溶剤性、及び密着性により優れた積層体を得ることができる。
本発明において、該ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を使用することにより優れた効果を発揮する理由は、以下の通りであると推定している。ウレア結合を有するウレタンウレア樹脂(b1)は、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固であると考えられる。そして、塗膜層(B)を形成する際、該ウレタンウレア樹脂(b1)は、その分子内に含まれる重合性基が反応して架橋構造を形成すると考えられる。その結果、該硬化性組成物の硬化体よりなる該塗膜層(B)は、耐溶剤性が向上するものと考えられる。さらに、密着性の向上に関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって、形成される硬化体(塗膜層)の凝集破壊が起こりにくくなることも、要因であると考えられる。
本発明で使用する硬化性組成物は、該ウレタンウレア樹脂(b1)に加え、その他の重合性モノマーを配合することもできる。次に、硬化性組成物に配合できる重合性モノマー(b2)について説明する。
重合性モノマー(b2)
この重合性モノマー(b2)は、分子内に、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するモノマーである。ただし、当然のことながら、前記ウレタンウレア樹脂(b1)は、この重合性モノマー(b2)には該当しない。
本発明で使用される重合性モノマー(b2)としては、公知のアルコキシシラン化合物、(メタ)アクリレート系モノマー、エポキシ系モノマー、及びビニル系モノマーを使用することができる。
本発明において、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用する場合には、重合性モノマー(b2)として、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。該アルコキシシラン化合物を例示すれば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。
(メタ)アクリレート基、まはたビニル基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用する場合には、重合性モノマー(b2)として、(メタ)アクリレート系モノマー、及びビニル系モノマーを使用することが好ましい。該(メタ)アクリレート系モノマー、及び該ビニル系モノマーを例示すれば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチレングリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、平均分子量250〜1000のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、平均分子量250〜1000のポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、平均分子量250〜1000のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、α−クロロスチレン、クロロビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼンなどが挙げられる。
また、各種ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを使用することもでき、該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートまたはメチルシクロヘキサンジイソシアネートと、炭素数2〜4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、或いはポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール等の公知のジオール類とを反応させたウレタンプレポリマーを、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレートで更に反応させ、分子量を1300−10000の範囲で調整したウレタンジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
エポキシ基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を使用する場合には、重合性モノマー(b2)として、エポキシ系モノマーを使用することが好ましい。該エポキシ系モノマーを例示すれば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、前記重合性モノマー(b2)は、塗膜層(B)を形成するために使用する硬化性組成物において、重合性基を有する全成分100g当たり、重合性基のモル数が30ミリモル以上500ミリモル以下を満足する範囲内で配合することが好ましい。前記ウレタンウレア樹脂(b1)のみで重合性基のモル数が30ミリモル以上500ミリモル以下を満足する場合には、重合性モノマー(b2)は、配合しなくてもよいし、重合性基を有する全成分100g当たり、重合性基のモル数が1ミリモル以上300ミリモル以下を満足する範囲で配合することもできる。
この重合性基のモル数は、重合に関与する部分のモル数を指す。そのため、例えば、重合性基がジアルコキシシリル基の場合、ジアルコキシシリル基が1ミリモル存在するのであれば、重合性基は2ミリモルと換算する。このモル数は、硬化性組成物に含まれる重合性基を有する全成分100g当たりのモル数である。全成分とは、ウレタンウレア樹脂(b1)と任意に配合する前記重合性モノマー(b2)とを合計した成分である。そして、該モル数は、下記式により各成分(ウレタンウレア樹脂(b1)、及び重合性モノマー(b2))に含まれる重合性基のモル数を算出した後、それらの総和より求めた値である。
重合性基のモル数=(1分子中に含まれる重合性基の数)×{重合性基を有する全成分100g当たりの各成分の使用量(g)}/(分子量)。
硬化性組成物に重合性モノマー(b2)を配合する場合、好ましい範囲としては、重合性基のモル数が前記範囲を満足し、かつ、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部である。
また、本発明で使用する硬化性組成物は、前記重合性モノマー(b2)の他、ウレタンウレア樹脂(b1)が有する重合性基に応じて、各種重合開始剤を配合することが好ましい。次に、重合開始剤について説明する。
(重合開始剤)
本発明において、塗膜層(B)を形成するために使用する硬化性組成物には、ウレタンウレア樹脂(b1)の重合性基を効率的に架橋させるために、各種重合開始剤を配合することもできる。
(シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基の重合開始剤)
ウレタンウレア樹脂(b1)が加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する場合には、酸水溶液を添加することが好ましい。このような酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸等の有機酸が代表的であり、特に加水分解性の観点から、塩酸が好適であり、さらには0.0001〜0.1規定の塩酸水溶液が好適に用いられる。酸水溶液の添加量は、加水分解してシラノール基を形成しうる基の全ての加水分解性基が加水分解するのに必要な量の0.1〜3モル倍になるように添加することが好ましい。
さらに、ウレタンウレア樹脂(b1)がシラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基を有する場合には、重合開始剤として、アセチルアセトナート錯体、過塩素酸塩、有機金属塩、各種ルイス酸などの硬化触媒を使用することが好ましい。
アセチルアセトナート錯体としては、アルミニウムアセチルアセトナート、リチウムアセチルアセトナート、インジウムアセチルアセトナート、クロムアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、チタニウムアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、等を挙げることができる。これらの中では、アルミニウムアセチルアセトナート、チタニウムアセチルアセトナートが好適である。
過塩素酸塩としては、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アンモニウム等を例示することができる。
有機金属塩としては、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛等を例示することができる。
ルイス酸としては、塩化第二錫、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アンチモン等を例示することができる。
本発明においては、比較的低温でも短時間で架橋させるという観点から、アセチルアセトナート錯体が、特に好適である。
これら硬化触媒の使用量は、ウレタンウレア樹脂(b1)、および必要に応じて配合される重合性モノマー(b2)が十分に反応する量であれば、特に制限されるものではない。具体的には、ウレタンウレア樹脂(b1)100質量部に対して0.001〜3質量部の範囲で用いることが好適である。前記硬化触媒は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いてもよい。
((メタ)アクリレート基、又はビニル基の重合開始剤)
ウレタンウレア樹脂(b1)が(メタ)アクリレート基、又はビニル基を有する場合には、重合開始剤として、熱重合開始剤、または光重合開始剤を配合することが好ましい。
熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)などのアゾ化合物等を使用することができる。
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性基の種類や含有量によって異なるが、ウレタンウレア樹脂(b1)100質量部に対し、て0.001〜1質量部の範囲で用いることが好適である。前記熱重合開始剤は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても良い。
また、光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等を使用することができる。
これらの光重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性基の種類や含有量によって異なるが、ウレタンウレア樹脂(b1)100質量部に対して0.001〜0.5質量部の範囲で用いることが好適である。前記光重合開始剤は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても良い。
光重合開始剤を配合した場合には、硬化性組成物を光学シート(A2)上に塗布した後、光照射して重合を促進させることが好ましい。具体的には、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、キセノンランプ等の有電極ランプ、または無電極ランプ等を光源として用い、光重合開始剤を含む硬化性組成物に対し、光照射を実施すればよい。光照射する雰囲気は、酸素存在下でも構わないが、窒素などの不活性ガスで置換することも可能である。さらに、光照射後に、加熱処理などを実施しても構わない。
(エポキシ基の重合開始剤)
ウレタンウレア樹脂(b1)がエポキシ基を有する場合には、重合開始剤として、従来のエポキシ化合物の重合に用いられる硬化剤を制限なく使用することができる。該硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を挙げることができる。具体的には、フェノール樹脂系のものとしては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられ、ポリアミン系硬化剤としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、メラミン樹脂、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′―ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド等があげられ、ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸があげられ、またイミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2−フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等があげられる。
また、エポキシ基の重合開始剤としては、光カチオン発生剤を使用することもできる。該光カチオン発生剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩またはヨードニウム塩等のオニウム塩を用いることができ、特に、芳香族オニウム塩を用いることが好ましい。その他、フェロセン誘導体等の鉄−アレーン錯体や、アリールシラノール−アルミニウム錯体等も好ましく用いることができる。
該光カチオン発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ)フェニル]スルフィド‐ビス‐ヘキサフルオロアンチモネート、(2、4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。市販品の例としては、株式会社ADEKA製の「SP−150」、「SP−170」;チバガイギー社製の「Irgacure261」、「Irgacure264」;ユニオンカーバイド社製の「UVR−6974」、「UVR−6990」;米国ダウケミカル社製の「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」、「サイラキュアUVI−6990」;日本曹達製の「CI−2481」、「CI−2624」などを挙げることができる。
これらの硬化剤の使用量は、ウレタンウレア樹脂(b1)100質量部に対して0.001〜1.0質量部の範囲で用いることが好適である。前記硬化剤は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても良い。
(その他の成分)
本発明で使用する硬化性組成物には、必要に応じて、有機溶媒を配合することもできる。有機溶媒を配合することにより、ウレタンウレア樹脂(b1)、及び、必要に応じて配合される重合性モノマー(b2)、及びその他の成分が混合しやすくなる。その結果、塗膜層を形成する硬化性組成物の粘度を適度に調製することができる。そして、光学シート又は光学フィルム(A2)に、該硬化性組成物を塗布するときの操作性、及び塗布膜の厚みの均一性を高くすることもできる。
本発明で、好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;及びこれらの組み合せを挙げることができる。これらの中から、使用するウレタンウレア樹脂(b1)の種類や、光学シート又は光学フィルム(A2)の材質に応じて、適宜選定して使用すればよい。たとえば、光学シート又は光学フィルム(A2)としてポリカーボネート樹脂製のものを使用し、直接本発明の硬化性組成物を塗布する場合には、溶媒としては、アルコール類、又は多価アルコール誘導体を使用することが好ましい。
硬化性組成物には、以上のような有機溶媒を配合することもできる。ただし、該硬化性組成物は、有機溶媒を配合せずに使用することもできる。
本発明においては、以上のような成分を含む硬化性組成物を使用することが好ましい。該硬化性組成物は、特に制限されるものではないが、25℃における粘度が50〜10,000cP、より好ましくは100〜7,000cPの範囲に調製されることが好ましい。
次に、該硬化性組成物を使用して塗膜層(B)を形成する方法について説明する。
(塗膜層(B)の形成方法)
本発明において、塗膜層(B)は、光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される。そのため、フォトクロミック積層体(A)を製造する前に、予め、光学シート又は光学フィルム(A2)上に、塗膜層(B)を形成してもよい。また、フォトクロミック積層体(A)を形成した後、該フォトクロミック積層体(A)の合成樹脂層(C)を配置する面上に、塗膜層(B)を形成することもできる。以下、光学シート又は光学フィルム(A2)上に、塗膜層(B)を形成する場合の例を説明する。
塗膜層(B)を形成する方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、光学シート又は光学フィルム(A2)の片面、もしくは両面に、前記ウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を塗布して硬化することにより、該硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を形成することができる。
該硬化性組成物を塗布する方法は、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップースピンコート法、ドライラミネート法、フローコート法、バーコーター法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。該硬化性組成物の硬化は、熱や光によって実施することができる。この条件は、該硬化性組成物に含まれる成分の重合性基、配合する各種重合開始剤の種類によって適宜選択すればよい。また、熱硬化と光硬化を併用することもできる。具体的な硬化方法を説明すれば、加熱を行う場合には、該硬化性組成物を塗布したシートを、40℃以上130℃以下の温度で保持することが好ましい。加熱は、対流式オーブン中などで行えばよく、ウレタンウレア樹脂(b1)の重合性基が十分に反応する時間、例えば、0.5〜5時間実施すればよい。
また、光照射を行う場合には、不活性ガス、または空気中で、メタルハライド、高圧水銀ランプ、または無電極ランプ等の光源を用い、光照射を実施すればよい。さらに、光照射後に、加熱などを実施することもできる。
該硬化性組成物に粘度調整などのために有機溶剤を添加した場合には、まず有機溶剤をオーブンなどで加熱・乾燥させた後に、上記のような加熱処理や光照射を実施すればよい。
上記方法により形成される該塗膜層(B)の膜厚は、合成樹脂層(C)を構成するレンズ形成用モノマー組成物に対する耐溶解性、さらには合成樹脂層(C)、またはポリウレタン接着層(A1)(光学シート又は光学フィルム(A2)の両面に塗膜層(B)を積層した場合)との密着性の観点から、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.2〜10μmであり、最も好ましくは0.3〜5μmである。
なお、前記の通り、この塗膜層(B)は、予め光学シート又は光学フィルム(A2)の表面に設けることもできるし、フォトクロミック積層体(A)を製造した後、該積層体の表面に設けることもできる。該ポリウレタン接着層(A1)と光学シート又は光学フィルム(A2)との間に介在させる場合には、予め、光学シート又は光学フィルム(A2)の両面に塗膜層(B)を形成しておくことが好ましい。
次に、この塗膜層(B)の上に形成される合成樹脂層(C)について説明する。
(合成樹脂層(C))
合成樹脂層(C)は、通常のプラスチックレンズ材料となる熱可塑性樹脂、又はレンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂から形成することができる。中でも、塗膜層(B)を形成することの効果がより顕著に発揮されるのは、レンズ形成用モノマー組成物を硬化させた熱硬化性樹脂より合成樹脂層(C)を形成する場合である。レンズ形成用モノマー組成物としては、具体的には、(メタ)アクリレート系モノマー組成物、アリル系モノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂を形成しうるレンズ形成用モノマー組成物を挙げることができる。
(レンズ形成用モノマー組成物)
(メタ)アクリレート系モノマー組成物
(メタ)アクリレートモノマー組成物としては、下記に例示されるような(メタ)アクリレートモノマーを含んでなる組成物であり、さらには他の(メタ)アクリレートモノマー、や他の重合性モノマーを混合しても構わない。具体的な(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルメタアクリレート等の少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーなどを挙げることができる。
(アリル系モノマー組成物)
アリル系モノマー組成物としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のアリル基を有するアリルモノマーを含んでなる組成物が挙げられる。
(チオウレタン系モノマー組成物)
チオウレタン系モノマー組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物からなる。ポリイソシアネート化合物としては、前記ウレタン−ウレア樹脂(C1)のポリイソシアネート化合物で例示したイソシアネート化合物に加えて、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(4−イソシアナート−2−チアブチル)−1, 4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナートメチル−4−イソシアナート−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアナート−2−チアプロピル)−1,4−ジチアン、1,3,5 − トリイソシアナートシクロヘキサン、1, 3,5−トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、1,5−ジイソシアネート−2−イソシアネートメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアネートエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアネートメチルチオ)プロパン、1,1,6,6−テトラキス(イソシアネートメチル)−2,5−ジチアヘキサン、1,1,5,5 −テトラキス(イソシアネートメチル)−2,4−ジチアペンタン、1,2−ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアネートメチル−2,4−ジチアペンタン等のポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネート類のビュレット型反応によるニ量体、これらのポリイソシアネート類の環化三量体およびこれらのポリイソシアネート類とアルコールもしくはチオールの付加物等が挙げられる。これら、ポリイソシアネート化合物は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
ポリチオール化合物の具体例としては、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2− メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,2,7−トリメルカプト−4,6−ジチアヘプタン、1,2,9−トリメルカプト−4,6,8−トリチアノナン、1,2,8,9−テトラメルカプト−4,6−ジチアノナン、1,2,10,11−テトラメルカプト−4,6,8−トリチアウンデカン、1,2,12,13−テトラメルカプト− 4,6,8,10−テトラチアトリデカン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(4−メルカプト−2 −チアブチル)メタン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 、1,1−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,4−チオフェンジチオール、1,2 −ジメルカプト−3−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、グリセリルジチオグリコーレート、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ) エタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン等のポリチオール類を挙げることができる。これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
(ウレタン系モノマー組成物)
ウレタン系モノマー組成物としては、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン硬化剤を含んでなる混合物を好適に用いることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、前記ウレタンウレア樹脂(b1)のポリイソシアネート化合物で例示したイソシアネート化合物を使用できる。
ポリオール化合物としては、前記ウレタン−ウレア樹脂(b1)のポリオール化合物で例示したポリオール化合物を使用できる。
ジアミン化合物としては、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン、2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエンおよびそれらの混合物、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、及び市販品としてLonza Ltd.社製「Lonzacure」シリーズなどの芳香族ジアミン化合物;前記ウレタン−ウレア樹脂(C1)の鎖延長剤で例示したジアミン化合物に加えて、市販品としてHuntsman社製「JEFFAMINE」シリーズなどを挙げることができる。
(チオエポキシ系モノマー組成物)
チオエポキシ系モノマー組成物としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物等;テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4'−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物およびこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上のようなレンズ形成用モノマー組成物には、必要に応じて、適当量の熱重合開始剤、光重合開始剤などの重合開始剤を添加してもよい。
(合成樹脂層(C)の形成方法(フォトクロミックレンズの製造方法))
フォトクロミック積層体(A)における光学シート又は光学フィルムの塗膜層(B)上に、合成樹脂層(C)を形成(積層)する方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、最表面に塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、プラスチックレンズ製造の際に使用されるガラスモールドや金型の中に設置し、そこに該合成樹脂層(C)を形成するレンズ形成用モノマー組成物を充填する方法である。
合成樹脂層(C)として、前述の熱硬化性樹脂を採用する場合には、一般的に使用されているガラスモールドを用い、該ガラスモールド内にレンズ形成用モノマー組成物を充填後に熱硬化(注型重合)することで、フォトクロミックレンズを成型することができる。さらに、熱硬化と併せるか、または単独で光照射によって重合を実施することができる。重合時間は、適宜決定してやればよい。
前述のような注型重合を実施するための具体的操作は、以下の通りである。例えば、ガラスモールドの一方にレンズ形成用モノマー組成物を充填しておいて、その上に、表面に塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を浮かべる。次いで、ガスケットやテープを介して他方のガラスモールドをセットした後、該ガラスモールド内にレンズ形成用モノマー組成物を更に注入して重合する方法である。また、ガラスモールドを固定化しているガスケットやテープ、またはその他の手段により該フォトクロミック積層体(A)をガラスモールド内において支持し、レンズ形成用モノマー組成物を該ガラスモールド内に充填して重合する方法も挙げられる。さらにはガラスモールドの一方にフォトクロミック積層体(A)を密着させておき、密着させた反対側の塗膜層(B)上に、レンズ形成用モノマー組成物を充填して重合する方法も挙げられる。
また、本発明において、合成樹脂層(C)は、前記レンズ形成用モノマー組成物を使用する以外に、熱可塑性樹脂からも構成することができる。合成樹脂として、熱可塑性樹脂を採用する場合には、射出成型法を採用できる。具体的には、塗膜層(B)を最表面に有するフォトクロミック積層体(A)を、金型の片方の内壁に密着させておくか、金型の中間近傍に固定化した後に、熱可塑性樹脂を金型内部に射出することにより、本発明のフォトクロミックレンズを得ることができる。
フォトクロミックレンズを製造する際、塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の大きさ、及び形状は、必要に応じて適宜決定することができる。即ち、最終的に得られるフォトクロミックレンズの全体に亘る形状のものであってもよいし、或いはレンズの一部を覆うようなものであってもよい。その中でも、フォトクロミック積層体(A)の側面を、前記ガラスモールドや金型の外部にはみ出すような大きさのものを使用することが好ましい。こうすることにより、ポリウレタン接着層(A1)からのフォトクロミック化合物、またはポリウレタン樹脂自体の溶出を抑制することができる。
以上のような方法により、フォトクロミックレンズを製造することができる。図1、図2に本発明のフォトクロミックレンズの構成例を示した。フォトクロミックレンズ1は、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)2の両面に、光学シート又は光学フィルム(A2)3を有するフォトクロミック積層体(A)4である。そして、この光学シート又は光学フィルム(A2)3の上に、塗膜層(B)5を有し、さらに、この塗膜層(B)5上に、合成樹脂層(C)6を積層してなるものがフォトクロミックレンズ1である(図1)。
また、本発明のフォトクロミックレンズ1は、図2に示すように、ポリウレタン接着層2と光学シート又は光学フィルム3との間に、塗膜層5を形成することもできる。この塗膜層5を形成することにより、生産性や、フォトクロミック積層体4自体の密着性高めることができる。
なお、図1、2には、フォトクロミック積層体4の両表面上に、塗膜層5を有する形態を示したが、一方の面にのみ塗膜層5を有するものであってもよい。
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
(塗膜層(B)を形成するための成分(硬化性組成物に使用する成分))
(分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)の合成に使用した原料)
(ポリオール化合物:(b1−1)成分)
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
(ポリイソシアネート化合物:(b1−2)成分)
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
(アミノ基含有化合物:(b1−3)成分)
CE1: 4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)。
(重合性付与化合物:(b1−4)成分)
RC1:アミノプロピルトリメトキシシラン。
RC2:2−ヒドロキシエチルアクリレート。
RC3:ブタンジオールモノグリシジルエーテル。
RC4:アリルアルコール。
RC5:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエメトキシシラン。
RC6:下記式で示される化合物
2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルアクリレート
Figure 2012242701
RC7:下記式で示される化合物
2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルグリシジルエーテル
Figure 2012242701
(分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)の合成)
(b1):ウレタンウレア樹脂(U1)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1:(b1−1)成分)234g、イソホロンジイソシアネート(NCO1:(b1−2)成分)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、テトラヒドロフラン(THF)1500mlを加えた後、窒素雰囲気下で4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(CE1:(b1−3)成分)18.9gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。そして、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア樹脂を合成した。
次いで、前記溶液に窒素雰囲気下にて、アミノプロピルトリメトキシシラン(RC1:(b1−4)成分)24.2gを加え、25℃にて1時間反応させた。その後、溶媒を減圧留去し、ウレタンウレア樹脂の末端にトリメトキシシリル基(重合性基)を有するウレタンウレア樹脂(U1:(b1))を得た。この分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(U1)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で5千(理論値;5千)であった。ここで言う数平均分子量の理論値とは、原料に用いた(b−1)成分、(b−2)成分、(b−3)成分、及び(b−4)成分が、架橋することなく理論的に直線状にウレタンウレア樹脂を生成した場合の分子量である。また、ウレア結合の量は、1分子当たり平均4.7個であり、1分子当たりの重合性基の数は、平均6個であった。これらの結果を表2にまとめた。
(b1):ウレタンウレア樹脂(U5)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1:(b1−1)成分)234g、イソホロンジイソシアネート(NCO1:(b1−2)成分)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、THF1500mlを加えた後、窒素雰囲気下でN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(RC5:(b1−4)成分)を15g滴下しながら加え、滴下終了後25℃で2時間反応させた。さらに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(CE1:(b1−3)成分)14.2gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。その後、アミノプロピルトリメトキシシラン(RC1:(b1−4)成分)8.0gを加え、25℃にて1時間反応させた。そして、溶媒を減圧留去することで、ウレタンウレア樹脂の側鎖、及び末端にトリメトキシシリル基を有するウレタンウレア樹脂(U5)を得た。得られたウレタンウレア樹脂(U5)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で1.7万(理論値;1.6万)であった。また、ウレア結合の量は、1分子当たり平均24個であり、1分子当たりの重合性基の数は、平均14個であった。これらの結果を表2にまとめた。
(b1):ウレタンウレア樹脂(U2〜U4、及びU6〜U8)の合成
表1に示す(b−1)成分、(b−2)成分、(b−3)成分、(b−4)成分、及び反応溶媒を用い、表1に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1、もしくはU5の合成方法と同様にして、ウレタンウレア樹脂(U2)〜(U4)、及び(U6)〜(U8)の合成を実施した。ウレタンウレア樹脂の合成条件についても表1に示した。
また、得られたウレタンウレア樹脂(U1)〜(U9)の合成に使用した各成分の配合割合、数平均分子量、及び1分子当たりの重合性基の数、1分子当たりのウレア結合の数の結果を表2にまとめた。
Figure 2012242701
Figure 2012242701
硬化性組成物に配合するその他の成分
(重合性モノマー(b2))
M1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
M2:エチレングリコールジアクリレート。
M3:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル。
(有機溶媒)
D1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
(重合開始剤)
P1:0.001N塩酸水溶液。
P2:ジエチレントリアミン。
P3:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート。
P4:Irgacure1800{1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比3:1)}。
P5:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)
ポリウレタン接着層(A1)用組成物(フォトクロミック組成物)の調製方法
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール)252g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、プレポリマーを得た。その後、テトラヒドロフラン(THF)1000mlを加えた後、窒素雰囲気下でイソホロンジアミン19gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させた。次いで、上記溶液に窒素雰囲気下にて、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン8gを加え、25℃にて1時間反応させることによりポリウレタン樹脂を合成した。このポリウレタン樹脂を含む溶液に、下記に示すフォトクロミック化合物(PC1)18.5gを混合、溶解してフォトクロミック組成物を得た。
Figure 2012242701
光学シート又は光学フィルム(A2)
・POLYCA;ポリカーボネート製シート(厚み 0.4mm)。
・PET;ポリエチレンテレフタレート製シート(厚み 0.3mm)。
・TAC;トリアセチルセルロース製シート(厚み 0.3mm)。
(レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法)
各々作製した、塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)を、直径65mmの円形に裁断し、ガスケットを有するガラスモールド内(0.00D、レンズ径70mm、肉厚3.0mmに設定)に設置した。このガラスモールド内に、下記に記載するレンズ形成用モノマー組成物を注入し、下記条件により硬化させた。その後、外周を玉摺機にて研磨することにより、直径60mmのフォトクロミックレンズを得た。なお、比較例1〜3は、塗膜層(B)を有していないフォトクロミック積層体(A)を使用した。
〔アリル系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)3質量部、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート100質量部を準備した。
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に、前記レンズ形成用モノマー組成物を注入し、空気炉中で30〜90℃まで20時間かけて徐々に昇温し、90℃で1時間保持して重合を行った。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、120℃で2時間熱処理を実施した。
〔アクリル系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
ラジカル重合性単量体であるトリメチロールプロパントリメタクリレート 20質量部、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート 40質量部、ウレタンアクリレート(ダイセル化学工業製EBECRYL4858) 40質量部の混合物を準備した。
さらに、該ラジカル重合性単量体100質量部に対し、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシネオデカネート1.0質量部を撹拌混合し、レンズ形成用モノマー組成物とした。
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に、前記レンズ形成用モノマー組成物を注入し、重合は空気炉を用い、33℃から90℃まで17時間かけて徐々に昇温した後、90℃で2時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ110℃で3時間加熱した。
〔チオウレタン系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ジシクロヘキシルメタン−4 ,4 ’−ジイソシアネート43.5質量部、イソホロンジイソシアネート43.5質量部、1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン63.0質量部、及び重合開始剤としてジブチルチンジラウレート0.1質量部の混合物を準備した。
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体の上下に、前記合成樹脂組成物を注入し、重合は空気炉を用い、35℃から130℃まで12時間かけて徐々に昇温した後、130℃で0.5時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ130℃で3時間加熱した。
〔チオエポキシ系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン95質量部、2−メルカプトエタノール5質量部、及び重合触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド0 . 1 重量部の混合物を準備した。
次いで、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体の上下に、前記合成樹脂組成物を注入し、重合は空気炉を用い、20℃から90℃まで20時間かけて徐々に昇温した後、90℃で1時間保持した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ90℃で1時間加熱した。
〔ウレタン系モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの製造方法〕
レンズ形成用モノマー組成物として、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる数平均分子量1000のポリエステルポリオール 100質量部と4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物78質量部、及び芳香族ジアミン硬化剤としての2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン/2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン17質量部を準備した。
まず、上記ポリエステルポリオールと4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物との混合物を、乾燥窒素下で140℃にて10分間加熱し、プレポリマーを生成させた。このプレポリマーを70℃まで冷却し、24時間放置した。ここに、芳香族ジアミン硬化剤を混合し、前記ガラスモールド内に設置した塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A)の上下に注入し、120℃で10時間にわたり硬化させた。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、オーブンに入れ110℃で1時間加熱した。
実施例1
(塗膜層(B)の形成)
分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)として(U1) 100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル100g、重合開始剤として0.001N塩酸水溶液(P1)2.0g、及びトリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(P5)0.5gを、攪拌混合して塗膜層(B)を形成するための硬化性組成物を得た。この硬化性組成物を、厚さ0.4mmのポリカーボネート製シート(光学シート又は光学フィルム(A2):POLYCA)の一方の面に塗布し、50℃で30分乾燥後、110℃で2時間加熱・硬化することにより、膜厚5μmの塗膜層(B)を有する光学シートを得た。
フォトクロミック積層体(A)の作製
ポリウレタン接着層(A1)用組成物の前記調製方法で得られたフォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し、50℃で30分乾燥させた。その後、該PET製フィルムを分離して、厚み約40μmのポリウレタン接着層(A1)を得た。次いで、前記方法で塗膜層(B)を形成した2枚のPOLYCAシート(ポリカーボネート製シート:光学シート)で、得られたポリウレタン接着層(A1)を挟み、40℃で24時間静置した後、さらに110℃で1時間、加熱処理した。そして、目的のフォトクロミック特性を有するフォトクロミック積層体(A:(S1))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S1))は、ポリウレタン接着層(A1)と接していない面にのみ塗膜層(B)を有していた。この積層体の構成を表1に示した。
フォトクロミックレンズの作製
上記のアリル系モノマー組成物を用いて、上記の方法に従いフォトクロミックレンズを作製した。得られたフォトクロミックレンズを評価したところ、フォトクロミック特性としての発色濃度は1.1であり、退色速度は40秒であり、耐久性は98%であった。また、該フォトクロミックレンズの各層間のハガレ、及び色調を目視により評価行ったが、初期、耐候性試験後、煮沸試験1時間後、2時間後、及び3時間後のいずれにおいても不良は見られなかった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
フォトクロミック特性
得られたフォトクロミックレンズを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、フォトクロミックレンズのフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
4)耐久性(%)=〔(A48/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により48時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A48)を測定し、〔(A48)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
目視評価
下記2点の観点から、目視評価を実施した。
〔ハガレ〕
得られたフォトクロミックレンズは、複数の界面を有しており、各層間の密着性評価を目視により実施した。この密着性評価、1)初期、2)前述の劣化促進試験(48時間)後、さらに3)蒸留水による煮沸試験(1時間、2時間、及び3時間)後に実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;各層間で全くハガレが見られない。
1;塗膜層と合成樹脂層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
2;光学シートとポリウレタン接着層間の少なくとも一部でハガレが見られる。
〔色調〕
得られたフォトクロミックレンズの色調を、集光機を用いた目視評価により実施した。評価基準は、下記の通りである。
0;白濁や、黄変等の色調不良が見られず、透明性が高い。
1;集光機を当てることにより、わずかに白濁などの色調不良を確認することができるが、実用上問題ないレベル。
2;集光機を当てなくとも、白濁などの色調不良を確認することができる。
以上の結果を表4に示した。
実施例2〜16
塗膜層(B)の形成、及びフォトクロミック積層体(A)(塗膜層を有する積層体(S1)〜(S12))の作製
表3に示す硬化性組成物、及び光学シート(A2)を用いた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、光学シート(A2)表面(片面、または両面)に、塗膜層(B)を形成した。表3の塗膜層の積層面の欄において、片面と記載したものは、光学シートの合成樹脂層が積層される面上にのみ塗膜層を設けたものを指す。また、両面と記載したものは、光学シートの両面に塗膜層を設けたものを指す。
なお、重合開始剤として、Irgacure1800(P4)を使用した場合には、下記の手順にてフォトクロミック積層体を作製した。
光重合開始剤を使用した場合の塗膜層(B)の形成
塗膜層を形成する硬化性組成物を、厚さ0.4mmのポリカーボネート製シート(光学シート又は光学フィルム(A2):POLYCA)の一方の面に塗布し、フュージョンUVシステムズ社製F3000SQ(Dバルブ)を用い、窒素フロー下において1分間光硬化させることにより、膜厚5μmの塗膜層を有する光学シートを得た。
フォトクロミック積層体(A)の作製 (塗膜層を有する積層体)
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、次いで、上記で得た塗膜層(B)を有する光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S2)〜(S12))を得た。表3にその結果を示す。
フォトクロミックレンズの作製
表4に示す塗膜層(B)を有するフォトクロミック積層体(A:(S1)〜(S12))、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表4に示す。
なお、各合成樹脂層を得るための硬化条件等に関しては、前述の「レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法」に従って実施した。
比較例1〜3
フォトクロミック積層体(A)の作製
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、表3に示す光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S13)〜(S15))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S13)〜(S15))は、塗膜層(B)を有していない。表3にその結果を示す。
フォトクロミックレンズの作製
表4に示すフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表5に示す。
なお、各合成樹脂層を得るための硬化条件等に関しては、前述の「レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法」に従って実施した。
比較例4
塗膜層(B)の形成、及びフォトクロミック積層体(A)(塗膜層を有する積層体(S16))の作製
表3に示す硬化性組成物、及び光学シート(A2)を用いた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、光学シート(A2)表面(片面)に、塗膜層(B)を形成させた。
フォトクロミック積層体(A)の作製
実施例1と同様にしてポリウレタン接着層(A1)を作製し、表2に示す光学シートを用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック積層体(A:(S16))を得た。得られたフォトクロミック積層体(A:(S16))は、光学シート(A2)のポリウレタン接着層(A1)と接していない面にのみ塗膜層(B)を有していた。表3にその結果を示す。
フォトクロミックレンズの作製
表5に示すフォトクロミック積層体(A)、及び合成樹脂層(C)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミックレンズを作製した。また、得られたフォトクロミックレンズの評価結果を表5に示す。
なお、各合成樹脂層を得るための硬化条件等に関しては、前述の「レンズ形成用モノマー組成物、及びそれを用いたフォトクロミックレンズの作製方法」に従って実施した。
Figure 2012242701
Figure 2012242701
Figure 2012242701
上記実施例1〜16から明らかなように、本発明の塗膜層を有するフォトクロミックレンズは、優れたフォトクロミック特性、密着性を有するフォトクロミックレンズが得られることが分かる。
一方、比較例1〜3のように、塗膜層のない光学シートを用いた場合には、フォトクロミック特性には問題がないものの、密着性が不十分であった。また、比較例4から明らかな通り、分子内に重合性基を有するウレタンウレア樹脂を使用しない硬化体よりなる塗膜層を有するフォトクロミックレンズは、フォトクロミック特性には問題がないものの、密着性が不十分であった。
1 フォトクロミックレンズ
2 フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)
3 光学シート又は光学フィルム(A2)
4 フォトクロミック積層体(A)
5 塗膜層(B)
6 合成樹脂層(C)

Claims (7)

  1. 互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)と、
    少なくとも一方の前記光学シート又は光学フィルム(A2)上に形成される塗膜層(B)と、
    前記塗膜層(B)上に形成される合成樹脂層(C)と
    を有するフォトクロミックレンズであって、
    前記塗膜層(B)が、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなることを特徴とするフォトクロミックレンズ。
  2. 前記硬化性組成物が、さらに、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有する重合性モノマー(b2)を含むことを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
  3. 前記ポリウレタン接着層(A1)と前記光学シート又は光学フィルム(A2)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有することを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
  4. 請求項1に記載のフォトクロミックレンズを製造する方法であって、
    シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物を、光学シート又は光学フィルム(A2)上に塗布し、硬化させることにより、前記硬化性組成物の硬化体よりなる塗膜層(B)を形成する工程を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法。
  5. 互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルム(A2)の間に、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層(A1)を有するフォトクロミック積層体(A)の少なくとも一方の該光学シート又は光学フィルム(A2)上に、
    シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂(b1)を含む硬化性組成物の硬化体からなる塗膜層(B)を有する積層体。
  6. 前記硬化性組成物が、さらに、シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有する重合性モノマー(b2)を含むことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
  7. 請求項5に記載の積層体において、前記光学シート又は光学フィルム(A2)と前記ポリウレタン接着層(A1)との間に、さらに、前記塗膜層(B)を有する積層体。
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