JP2012241293A - 布帛 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電糸が長さ方向に撓んだ撓み部と、撓んでいない非撓み部とを有する布帛を提供する。
【解決手段】経糸又は緯糸の少なくとも一部に導電糸1(ステンレス鋼線等)を有する織布(平織り、綾織り等の織布)を加熱収縮させることによって、導電糸1が撓んだ撓み部3aと、導電糸1が撓んでいない非撓み部4aとが形成されている。撓み部3aの形成方法は特に限定されないが、例えば、導電糸1が、織布の織り組織の所定範囲内での挙動を自由とされた第1部位と、織り組織の所定範囲内での挙動を抑制された第2部位と、を有し、織布の加熱収縮の際に、第1部位が撓む挙動をすることで撓み部3aを形成することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電糸を有する織布を加熱収縮させてなる布帛に関する。更に詳しくは、本発明は、導電糸が、長さ方向に撓んだ撓み部と、撓んでいない非撓み部とを有する布帛に関する。
従来、導電糸を用いて織製された各種の布帛が知られており、車両用シートを暖めるためのヒータ部材等として用いられている。例えば、織布の構成糸の一部に導電糸を使用し、この導電糸に通電して発熱させ、昇温させる各種のヒータ部材が用いられている。このようなヒータ部材は、例えば、車両用シートのシートクッションなどの表皮材の裏面に貼着され、冬期等の寒冷時に乗員を下方等から暖めることができる。
また、このヒータ部材では、着座した乗員とヒータ部材との間に表皮材が介在するため、より速暖性を高めることを目的として、導電糸が織り込まれた織布が表皮材として用いられている。更に、これらのヒータ部材及び導電糸が織り込まれた表皮材では、通常、側端部に、導電糸に通電するための給電用部材が取り付けられており、導電糸と、給電用部材の導体とが電気的に接続され、この導体及びワイヤーハーネス等を介して電源から導電糸に給電され、導電糸が発熱して、ヒータ部材及び表皮材が昇温する構成となっている。
前述のような導電糸が織り込まれた布帛として、例えば、導電糸群が接続された加熱帯が設けられ、各群の導電糸が平面接続手段を介して電気的に接続された表面加熱部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この表面加熱部材では、互いに離間した状態で延在する少なくとも2つの加熱帯が形成され、選択的な並列、直列等の組合せ接続によって、全抵抗値と加熱効果を変化させることができると説明されている。更に、複数の熱導体を備えた、自動車のシートのための平面状発熱体が知られており(例えば、特許文献2参照。)、特許文献2の図1によれば、熱導体は、シートの幅方向に全体に一様に波状に配されていると推察される。
特開2007−227384号公報 特表2009−513201号公報
特許文献1に記載された表面加熱部材では、複数の加熱帯が形成され、全抵抗値と加熱効果を変化させることができる。しかし、十分な温熱感を得るためには、加熱帯を増やすとともに、電流を増加させる必要もある。また、特許文献2に記載された平面状発熱体では、熱導体はシートの幅方向に全体に一様に波状に配されていると考えられる。しかし、特許文献2では、熱導体は全体に一様に波状であり、部分的に波状にするとともに、それにより十分な温熱感を得ることについて全く言及されていない。
人が加熱部材に触れた場合、例えば、車両用シートのシートクッションに乗員が着座したときなどに、加熱部材が一様な温度であるときよりも、一部が高温であるときにより暖かく感じる。そこで、織布に織り込まれた導電糸を部分的に撓ませることで、この部分が高温になり、より暖かく感じられる布帛とし得るのではないかと考えた。
本発明は前述のような知見に基づいてなされたものである。
本発明は前述の従来の状況に鑑みてなされたものであり、導電糸が、長さ方向に撓んだ撓み部と、撓んでいない非撓み部とを有し、導電糸に通電したときに、非撓み部が撓み部と比べて低温であっても、全体としてより暖かく感じることができる布帛を提供することを課題とする。
本発明は以下のとおりである。
1.経糸又は緯糸の少なくとも一部に導電糸を有する織布を加熱収縮させることによって、
前記導電糸が撓んだ撓み部と、前記導電糸が撓んでいない非撓み部とが形成されていることを特徴とする布帛。
2.前記導電糸は、前記織布の織り組織の所定範囲内での挙動を自由とされた第1部位と、
前記織り組織の所定範囲内での挙動を抑制された第2部位と、を有し、
前記織布の前記加熱収縮の際に、前記第1部位が撓む挙動をすることで前記撓み部が形成されている前記1.に記載の布帛。
本発明の布帛は、導電糸を有する織布を加熱収縮させてなり、導電糸が撓み部と非撓み部とを有するため、導電糸に通電したときに、撓み部は非撓み部と比べてより高温になる。このように撓み部が部分的に高温になることで、人はより暖かく感じることができる。また、略同じ消費電力で、より暖かく感じることができるため、省エネルギーの観点でも有利である。
また、導電糸が、織布の織り組織の所定範囲内での挙動を自由とされた第1部位と、織り組織の所定範囲内での挙動を抑制された第2部位と、を有し、織布の加熱収縮の際に、第1部位が撓む挙動をすることで撓み部が形成されている場合は、導電糸を、長さ方向の所定の部位で容易に撓ませることができ、一部が他部と比べて高温になり、より暖かく感じられる布帛とすることができる。
導電糸の長さ方向の一部に撓み部が形成された布帛の模式図である。 図1の場合と比べてより多くの導電糸を撓ませた撓み部と、より長く導電糸を撓ませない非撓み部とを形成することにより、より暖かく感じられるとともに、導電糸の長さ方向に高温部と低温部とが設けられた布帛の模式図である。 図2の導電糸が織り込まれた部位と、導電糸が織り込まれていない部位とが交互に形成され、導電糸の織り込み方向とは反対方向にも高温部と低温部とが設けられている布帛の模式図である。尚、図1〜3では、導電糸が織り込まれた方向と略直交する方向に織り込まれた非導電糸の図示は省略した。 織り構造によって撓み部と非撓み部とを設定するための、加熱収縮前の織布の織り構造を説明するための模式図である。 図4の織布を加熱収縮させることで、収縮した非導電糸間に殆ど収縮しない導電糸が突出し、撓んでいることを説明するための模式図である。 シートクッションの前方の特に速暖性を必要とする箇所に本発明の布帛が表皮材として用いられている車両用シートの斜視図である。
以下、本発明を図1〜6を参照して詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本発明の布帛101(図1参照)は、経糸又は緯糸の少なくとも一部に導電糸1を有する織布10(緯糸の一部に導電糸1を有する図4の織布10参照)を加熱収縮させてなり、導電糸1が撓んだ撓み部3aと、導電糸1が撓んでいない非撓み部4aとが形成されている(図1、5参照)。
前記「織布10」(図4参照)は特に限定されず、平織り、綾織り、朱子織り等のいずれの織り組織であってもよい。
織布10は非導電糸21、22と導電糸1とを用いて織製され、導電糸1は、経糸として織り込まれてもよく、緯糸として織り込まれてもよい。また、導電糸1が経糸及び緯糸として織り込まれていてもよいが、通常、導電糸1は経方向、緯方向のいずれか一方に織り込まれておればよい。
更に、布帛(図1の布帛101等参照)を車両用シートの表皮材として用いる場合、左右方向(幅方向)と比べて前後方向に乗員の動きによる引張力及び屈曲等の負荷がより多く加わるため、強度等に優れる糸が前後方向となるように配されることが好ましい。より具体的には、糸の引張強さ、耐屈曲性等は、通常、導電糸と比べて非導電糸が優れているため、布帛は、多くの非導電糸が、シートクッションの前後方向及びシートバックの上下方向となるように配されることが好ましい。
[1]撓み部と非撓み部
本発明の布帛(図1の布帛101等参照)は、織布(図4の織布10参照)を加熱収縮させることにより作製される。また、織布10の構成糸として用いられる非導電糸は加熱により収縮する必要がある(図1〜3の非導電糸2は加熱収縮後である。)。非導電糸21、22の材質は特に限定されないが、加熱収縮の観点から、ポリアミド及びポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維等を用いてなる糸を使用することが好ましい。この非導電糸は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、非導電糸は、通常、比抵抗が10Ω・cmを超え、絶縁性である。
前記「加熱収縮」の条件は特に限定されず、非導電糸の収縮開始温度及び熱収縮率によって設定することが好ましい。非導電糸が合成樹脂を用いてなる糸である場合、その収縮開始温度は、非導電糸を溶融紡糸した後、冷却させ、固化させるときの温度により定まり、熱収縮率は紡糸速度等によって定まる。従って、紡糸温度及び紡糸速度等に基づいて加熱収縮時の温度、時間を設定することが好ましい。更に、紡糸後、非導電糸の融点未満の温度で冷延伸すれば、収縮開始温度は延伸温度で定まり、熱収縮率は延伸倍率によって定まる。この場合、延伸温度及び延伸倍率に基づいて加熱収縮時の温度、時間を設定することが好ましい。更に、加熱方法も特に限定されず、例えば、織布を所定温度に調温された熱風循環炉に収容し、所要時間加熱する方法が挙げられる。この他、所定温度の加熱水中を通す方法等の加熱方法が挙げられる。
加熱収縮時、導電糸と同方向に織り込まれた非導電糸が収縮することにより、殆ど収縮しない導電糸が撓んで前記「撓み部」(図1の撓み部3a参照)が形成される。布帛101の平面方向における撓み部3aの分布は特に限定されず、平面方向に略等間隔に形成されていてもよく、偏在していてもよいが、略等間隔に形成されていることが好ましい。撓み部3aが略等間隔に形成されておれば、昇温させたときに平面方向の全体がより高い温熱感を有する布帛101とすることができる。一方、撓み部3aを偏在させることで、高い温熱感を有する箇所と、有さない箇所とを有する布帛101とすることができ、布帛101の用途等によって、各々の箇所を使い分けるようにして使用することができる。
更に、布帛における撓み部と非撓み部とは、図2のように、より長く導電糸1を撓ませた撓み部3bと、より長く導電糸1を撓ませない非撓み部4bとすることもできる。この場合、撓み部を形成することで、より高い温熱感が得られるという作用は弱まるかもしれないが、特に撓み部3bを布帛の幅方向において略同じ位置に配することにより、導電糸1の長さ方向に高温部(図2の撓み部3bにより構成される高温領域A参照)と低温部(図2の非撓み部4bにより構成される低温領域B参照)とを有する布帛102とすることができ、布帛102の用途等によって、各々の箇所を使い分けるようにして使用することができる。
また、撓み部3a、3bにおいて、導電糸1が蛇行している回数を調整することにより、撓み部3a、3bの温度調節をすることが可能である(図1、2参照)。また、撓み部3a、3bの1箇所当たりの導電糸1の全長さによって、温度調節をすることも可能である。
更に、図3のように、導電糸1が織り込まれている方向が緯方向であるときは、経方向に、所定間隔で導電糸1が織り込まれていない、又は一部に導電糸が織り込まれていたとしても撓み部が形成されていない低温領域を形成することができる。また、導電糸1が織り込まれている方向が経方向であるときは、緯方向に、所定間隔で導電糸1が織り込まれていない、又は一部に導電糸が織り込まれていたとしても撓み部が形成されていない低温領域を形成することができる。より具体的には、図3のように、導電糸1が緯糸であるときは経方向、導電糸1が経糸であるときは緯方向に、導電糸1が隣り合って、又は近接して配されている高温領域Cと、導電糸1が織り込まれていない、又は一部に導電糸が織り込まれていたとしても撓み部が形成されていない低温領域Dとを備える布帛103とすることができる。
前述の図3の布帛103であれば、導電糸1の長さ方向に、高温領域Aと低温領域Bとを有するとともに、導電糸1の長さ方向と略直交する方向に、高温領域Cと低温領域Dとを備える布帛103とすることができる。このように経方向及び緯方向の両方向に、高温領域A、Cと低温領域B、Dとを備える布帛103とすることができるため、布帛103の用途等によって、各々の箇所を使い分けるようにして使用することができる。
尚、非撓み部は厳密な意味で直線状である必要はなく、撓み部がより多く撓んでいることにより、高い温熱感が得られ、また、高温領域A、Cと低温領域B、Dとを備える布帛とすることができる限り、多少は撓んでいてもよい。
[2]撓み部及び非撓み部の形成方法
布帛101における撓み部3aと非撓み部4aとの形成方法は特に限定されず、織布10の織り組織の所定範囲内での導電糸1の挙動が自由とされた第1部位と、織り組織の所定範囲内での導電糸1の挙動が抑制された第2部位と、を有する織布10を加熱収縮させる際に、第1部位が撓む挙動をすることで形成することができる。例えば、図4のような織り構造の織布10を加熱し、緯糸として織り込まれた非導電糸22を収縮させることにより、図5のように、導電糸1が長さ方向、即ち、緯方向に撓んだ撓み部3aを形成することができる。
より具体的には、図4の織布10では、経糸として非導電糸21が用いられ、緯糸として導電糸1と非導電糸22とが用いられている。そして、緯方向の特定の箇所で、導電糸1に織り込まれている経方向の非導電糸21と、導電糸1に隣り合う緯方向の非導電糸22とで、導電糸1の経方向への動きを規制している。即ち、符号Sの部位では、導電糸1の挙動が周りの織り組織により抑制されているため、本発明における第2部位に相当する。また、符号Sと符号Sとの間の部位は、周りの織り組織によっては導電糸1の挙動は抑制されず自由なので、本発明における第1部位に相当する。そして、この織布10を所定条件で加熱し、緯方向の非導電糸22を熱収縮させることにより、図5のように、導電糸1を長さ方向に湾曲させて撓み部3aを形成することができる。更に、織布10の経方向に間隔をおいた特定箇所で前述のようにして次の撓み部3aを形成することで、撓み部3a間に非撓み部4aを形成することができる(図1参照)。尚、図4では非導電糸は熱収縮しておらず、図5では非導電糸は熱収縮しているが、同符号を付する。
撓み部と非撓み部とを形成する他の方法としては、例えば、導電糸が緯糸として用いられている場合、経糸の張力を撓み部を形成したい部分で、非撓み部と比べて弱くする方法が挙げられる。このようにすれば、撓み部を形成したい部分で、導電糸が緯方向に動き易くなるため、緯糸として織り込まれた非導電糸が熱収縮したときに、導電糸を緯方向に撓ませることができる。また、撓み部と非撓み部とは、織布全体を一度に加熱せず、撓ませたい部分を加熱し、収縮させて形成することもできる。
以上、布帛101の撓み部3a及び非撓み部4aの形成方法について説明したが、布帛102、布帛103の撓み部3b及び非撓み部4bも同様にして形成することができる。
[3]織布を構成する導電糸及び非導電糸
織布の構成糸の一部として用いられる前記「導電糸1」(図1等参照)は、通電可能な導電性の繊維材料であり、特にJIS K 7194に準拠して測定した比抵抗(体積抵抗率)が100〜10−12Ω・cmの導電糸1を使用することができる。このような導電糸1としては、例えば、金属線、めっき線材及び炭素繊維のフィラメント等が挙げられる。
金属線としては、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等からなる線材が挙げられる。これらのうちでは、ステンレス鋼製の金属線が、優れた耐食性及び強度等を有するため好ましい。ステンレス鋼は特に限定されず、SUS304,SUS316及びSUS316L等が挙げられ、SUS304は汎用性が高いため好ましく、SUS316及びSUS316Lはモリブデンが含有されており、優れた耐食性を有するため好ましい。
金属線の線径も特に限定されないが、強度及び柔軟性の観点で、10〜150μm、特に20〜60μmであることが好ましい。更に、金属線は、例えば、ポリエステル繊維等の他の繊維材料を芯糸とし、金属線を鞘糸とし、S及びZのうちの少なくとも一方の撚方向に金属線を巻き付けてなる複合糸の形態で用いることもできる。この場合、線径の小さい金属線を使用すれば、優れた柔軟性を有するとともに、芯糸による十分な引張強度を併せて有する導電糸とすることができるため好ましい。
また、金属線として、その表面に樹脂コーティング(電気絶縁性の被覆)が施された金属線を用いることもできる。このような金属線は、被覆された樹脂層により保護されるため優れた防錆性を有する。更に、導電糸の露出部と後述する給電用部材が有する導体とを接続するときは、樹脂層を剥がして金属線を露出させ、電気的に確実に接続させることができる。コーティングに用いる樹脂は特に限定されず、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、耐久性の観点でポリウレタン樹脂が好ましい。
樹脂層の厚さは、樹脂の種類及びその耐久性等、並びに布帛の用途等によって設定することができ、例えば、0.05〜500μm、特に1〜10μmとすることができる。また、樹脂コーティングの方法も特に限定されないが、金属線を樹脂分散液に浸漬し、又は液中を通過させて樹脂分散液を付着させ、その後、加熱して媒体を除去し、次いで、冷却して固着させる方法が挙げられる。また、樹脂粉末を金属線に付着させ、その後、加熱し、次いで、冷却して固着させることもできる。更に、溶融樹脂を金属線に融着させ、必要に応じて加熱し、その後、冷却して固着させることもできる。
めっき線材としては、非導電性又は導電性の繊維材料を芯材とし、この芯材の表面のうちの全面又は幅方向の一部において全長さに亘って形成された、単体金属又は合金からなるめっき層を有する線材を用いることができる。このように芯材の表面にめっき層を形成することで、芯材が非導電性の繊維材料であっても導電糸とすることができる。一方、芯材が導電性の繊維材料の場合、めっき層を形成することで耐久性を向上させることができる。
めっき線材の芯材として用いることができる導電性繊維としては、各種の金属繊維等が挙げられる。一方、非導電性繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びボロン繊維等が挙げられる。更に、めっき処理に用いられる金属としては、錫、ニッケル、金、銀、銅、鉄、鉛、白金、亜鉛、クロム、コバルト及びパラジウム等の単体金属、並びにニッケル−錫、銅−ニッケル、銅−錫、銅−亜鉛及び鉄−ニッケル等の合金が挙げられる。
導電糸1として用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの炭素繊維のうちでは、1000℃以上の焼成温度で製造される炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維等の炭素繊維が、優れた電気伝導性を有するため好ましい。
前述の各種の導電糸1は、織布10に用いられる他の糸である非導電糸と比べて高い耐熱性を有していることが好ましい。言い換えれば、加熱により溶融する温度、又は溶融しない糸である場合は、燃焼開始温度が非導電糸より高いことが好ましい。即ち、非導電糸より高融点であるか、又は燃焼し難い糸であることが好ましい。この燃焼性の指標としては、JIS K 7201及びJIS L 1091(1999) 8.5E−2法に準拠して測定される限界酸素指数(LOI)を用いることができ、LOIが26以上である導電糸1が好ましい。前述の導電糸1のうち、金属線は、一般に、非導電糸として用いられる合成繊維より高融点であって、且つLOIは、通常、26以上であり、例えば、ステンレス鋼繊維のLOIは49.6である。また、炭素繊維は溶融せず、LOIは60以上である。
非導電糸は、加熱により溶融する温度、又は溶融せず燃焼する場合は、燃焼開始温度が導電糸より低く、溶融せず燃焼する非導電糸の場合は、LOIが26未満であることが好ましい。合成繊維は、導電糸1より低融点であることが多く、燃焼性は導電糸1より高いことが多い。例えば、ポリエステル繊維のLOIは18〜20であり、ポリアミド繊維のLOIは20〜22である。
[4]導電糸の配置
織布の構成糸として織製される非導電糸中の導電糸1の間隔は特に限定されないが、例えば、乗用車のシートクッション等では、図1のように、導電糸1に撓み部3aと非撓み部4aとを形成する場合、5〜30mm、特に10〜30mm程度であれば、十分な温熱感を有する布帛101とすることができる。また、図2、3のように、導電糸1に撓み部3bと非撓み部4bとを形成する場合、非導電糸中の導電糸1の間隔が2〜30mmであれば、十分に温熱感の差がある高温領域Aと低温領域Bとを有する布帛102、103とすることができる。更に、図3の布帛103では、高温領域Cと低温領域Dの各々の幅は特に限定されないが、50〜500mm、特に200〜400mm程度であれば、十分に温熱感の差がある高温領域A、Cと低温領域B、Dとを有する布帛103とすることができる。
また、布帛101、102における導電糸1の配置は特に限定されず、導電糸1は略等間隔に織製されていてもよく、導電糸1間の間隔が異なっていてもよい。導電糸1が略等間隔に織製されておれば、図1の布帛101では全面をより均等に暖めることができ、図2の布帛102では温熱感の差がより明らかな高温領域Aと低温領域Bとを形成することができる。更に、図3の布帛103の高温領域Cにおける導電糸1の配置も特に限定されず、導電糸1は略等間隔に織製されていてもよく、導電糸1間の間隔が異なっていてもよい。導電糸1が略等間隔に織製されておれば、温熱感の差がより明らかな高温領域A、Cと低温領域B、Dとを形成することができる。
また、導電糸1は、非導電糸の間に1本のみを織製してもよく、非導電糸の間に複数本、例えば、2〜10本、特に2〜5本の導電糸を連続して織製してもよい。この場合も、連続して織製された複数の導電糸1の、布帛101、102及び103における配置は、前述のように等間隔でもよく、間隔が異なっていてもよい。このように、布帛101、102及び103では、導電糸1を配置させる間隔、及び連続して織製するときの導電糸1の本数等によって、全面をより均等に暖めるか、又は特定箇所をより十分に暖めるか等を調整することができる。
[5]導電糸への給電
布帛が有する導電糸は、ワイヤーハーネス等を介してエンジンコントロールユニット(ECU)などに接続され、電源から供給される電力により導電糸が発熱し、布帛が昇温する。導電糸とECU等との接続方法は特に限定されないが、導体を有する給電用部材を用いて接続することができる。例えば、帯状の給電用部材が有する導体と、布帛101等の側端部に露出している導電糸1の露出部1a(図1、2参照、図3の場合も同様)とを、接続端子、ワイヤーハーネス等を介してECUなどに接続する方法が挙げられる。この場合、布帛101等の側端部の導電糸1が露出している部分には、織製された非導電糸等の非導電材が混在しており、この非導電材は、導電糸1の露出部1aと導体とを接続する前に除去する必要がある。
非導電材は、布帛101等の側端部を加熱することによって、溶融させ、又は燃焼させて除去することができる。加熱手段は特に限定されず、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザを照射する方法、及び電熱加熱により昇温した発熱部材等を接触させる方法などが挙げられるが、レーザを照射する方法が好ましい。レーザを照射する方法であれば、非導電材の材質等によって、レーザの強度及び出力を非導電材の溶融、燃焼に必要とされるレベルに容易に調整することができ、非導電材を容易に、且つ効率よく除去することができる。更に、レーザの照射とともに、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを吹き付けることにより、過熱による導電糸1の酸化劣化を防止、又は少なくとも抑えることもできる。
布帛101等の露出された導電糸1と給電用部材の導体との接続方法は特に限定されず、導電糸1と導体とが接触した状態で、給電用部材を布帛101等の側端部に接合させる、及び縫着させる等の接続方法が挙げられる。接合方法としては、溶着、及び接着剤を用いて接合させる等の方法が挙げられるが、溶着であれば、給電用部材をより強固に固定することができるため、溶着可能であれば、加熱し、溶着させて接続させることが好ましい。また、接合させたうえで、更に縫着させることもでき、このようにすれば、給電用部材をより強固に固定することができ、且つ導電糸1と導体とを電気的により確実に接続させることができる。
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は、昇温させ、暖めることが必要とされる車両用シートのシートクッション(図6の車両用シート200の符号aの部位参照)及びシートバック等の製品に利用することができる。特に乗用車のシートのように居住性が重視される車両用シートにおいて有用である。
101、102、103;布帛、10;織布、1;導電糸、2;加熱収縮後の非導電糸、21;経糸として用いられた非導電糸、22;緯糸として用いられた非導電糸、3a、3b;撓み部、4a、4b;非撓み部、A、C;高温領域、B、D;低温領域、S;第2部位。

Claims (2)

  1. 経糸又は緯糸の少なくとも一部に導電糸を有する織布を加熱収縮させることによって、
    前記導電糸が撓んだ撓み部と、前記導電糸が撓んでいない非撓み部とが形成されていることを特徴とする布帛。
  2. 前記導電糸は、前記織布の織り組織の所定範囲内での挙動を自由とされた第1部位と、
    前記織り組織の所定範囲内での挙動を抑制された第2部位と、を有し、
    前記織布の前記加熱収縮の際に、前記第1部位が撓む挙動をすることで前記撓み部が形成されている請求項1に記載の布帛。
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