しかしながら、上記の電動パワーステアリング装置においては、ブラシ付モータの機械的な異常に関しては検出することができない。ブラシ付モータ(永久磁石式DCモータ)は、一般に、永久磁石(マグネット)をステータに配置し、ロータに電機子巻線を設けるように構成される。こうしたブラシ付モータにおいては、マグネットとブラシとの機械的な相対位置が何らかの原因で回転方向にずれた場合には、モータの効率低下により操舵アシストが低下するため、マイコンは、モータに流す目標電流を増加させる。このため、モータに大電流が流れブラシ部の摩耗を早めてしまうおそれがある。また、マグネットとブラシとのずれ角によっては、操舵アシストトルクを発生できなくなるおそれもある。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、ブラシ付モータのマグネットとブラシとの機械的な相対位置のずれを検出できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、ステアリング機構に設けられたブラシ付モータを駆動制御して操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置において、前記ブラシ付モータのステータに設けられるマグネットとブラシとにおける、ロータの回転方向の相対的な位置ずれを、前記位置ずれが発生した場合に前記モータに流れる電流に対する前記モータの逆起電圧定数の特性が変化することを利用して検出する位置ずれ検出手段(80,85)を備えたことにある。
本発明においては、ブラシ付モータを駆動制御することにより操舵アシストトルクを発生する。例えば、操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに基づいてモータ制御量を演算し、演算したモータ制御量にてブラシ付モータを駆動制御する。これにより、モータは、操舵トルクに応じた操舵アシストトルクを発生する。
ブラシ付モータは、ブラシとマグネットとにおけるロータの回転方向の相対位置がずれてしまうと、適正なトルクを出力することができない。そこで、本発明においては、位置ずれ検出手段を備えている。ブラシ付モータにおいては、マグネットによる主磁束と、電機子電流による起磁力とが直交するようにブラシとマグネットとの相対位置が決められている。マグネットに対してブラシが相対的に位置ずれしていない状態、つまり、電気的中性軸に対してブラシが対称位置となる正常な位置に固定されている場合においては、モータに流れる電流に対する逆起電圧定数は、電流がゼロの時に最大となり、電流の大きさ(絶対値)が増加するにしたがって減少する特性を有する。従って、モータの回転方向(通電方向)によらず逆起電圧定数の低下する特性は変わらない。一方、マグネットに対してブラシが相対的に位置ずれしている場合においては、モータに流れる電流に対する逆起電圧定数は、電流がゼロの時に最大とならず、その特性は、電流の正方向あるいは負方向に全体的にシフトする。このため、モータの回転方向(通電方向)によって逆起電圧定数の特性が異なる。
そこで、位置ずれ検出手段は、位置ずれが発生した場合にモータに流れる電流に対するモータの逆起電圧定数の特性が変化することを利用して、マグネットとブラシとにおける相対的な位置ずれを検出する。この結果、本発明によれば、ブラシ付モータのマグネットとブラシとの機械的な相対位置のずれを簡単に検出することができる。
本発明の他の特徴は、前記位置ずれ検出手段は、前記モータに流れる電流の情報を取得する電流取得手段(S31)と、前記モータの逆起電圧定数を演算する逆起電圧定数演算手段(S32)と、前記電流取得手段により取得された電流の情報と前記逆起電圧定数演算手段により演算された逆起電圧定数とに基づいて、前記モータに流れる電流と逆起電圧定数との関係を表す逆起電圧定数特性を、前記電流の流れる方向別に検出する逆起電圧定数特性検出手段(S35)とを備え、前記逆起電圧定数特性検出手段により検出された正方向に流れる電流の逆起電圧定数特性と負方向に流れる電流の逆起電圧定数特性との相違度合に基づいて前記位置ずれを検出すること(S36〜S39)にある。
この場合、前記位置ずれ検出手段は、前記モータに印加される電圧の情報を取得する電圧取得手段(S31)と、前記モータの回転角速度の情報を取得する回転角速度取得手段(S31)とを備え、前記逆起電圧定数演算手段は、前記電流取得手段により取得された電流の情報と、前記電圧取得手段により取得された電圧の情報と、前記回転角速度取得手段により取得された回転角速度の情報とに基づいて、前記モータの逆起電圧定数を演算するとよい。
本発明においては、電流取得手段がモータに流れる電流の情報を取得し、逆起電圧定数演算手段がモータの逆起電圧定数を演算し、逆起電圧定数特性検出手段が電流の情報と逆起電圧定数とに基づいて、モータに流れる電流と逆起電圧定数との関係を表す逆起電圧定数特性を電流の流れる方向別に検出する。
例えば、逆起電圧定数演算手段は、モータに流れる電流と、モータに印加される電圧と、モータの回転角速度とに基づいて逆起電圧定数を演算する。
また、逆起電圧定数特性検出手段は、例えば、モータに流れる電流と、その電流を検出したときの逆起電圧定数とを一組のデータとして記憶し、そのデータをモータ駆動中に複数サンプリングすることにより、モータに流れる電流と逆起電圧定数との関係を表す逆起電圧定数特性を検出するとよい。
ブラシとマグネットとの相対位置がずれている場合には、正方向に流れる電流の逆起電圧定数特性と負方向に流れる電流の逆起電圧定数特性とが相違する。このことを利用して、位置ずれ検出手段は、正方向に流れる電流の逆起電圧定数特性と負方向に流れる電流の逆起電圧定数特性との相違度合に基づいて位置ずれを検出する。従って、本発明によれば、ブラシ付モータのマグネットとブラシとの機械的な相対位置のずれを簡単に検出することができる。
本発明の他の特徴は、前記位置ずれ検出手段は、予め一定値に設定された仮の逆起電圧定数を使った演算により前記モータの回転角速度を推定する回転角速度推定手段(S54)と、前記回転角速度推定手段により推定された回転角速度を時間積分することにより推定舵角を演算する舵角推定手段(S55)と、前記仮の逆起電圧定数を使わずに、車両の走行状態に基づいて実際の舵角に相当する実舵角を演算する実舵角演算手段(77)と、前記舵角推定手段により演算された推定舵角と前記実舵角演算手段により演算された実舵角との関係を表す推定舵角特性を、操舵方向別に検出する推定舵角特性検出手段(S59)とを備え、前記推定舵角特性検出手段により検出された右操舵方向の前記推定舵角特性と左操舵方向の前記推定舵角特性との相違度合に基づいて前記位置ずれを検出すること(S60〜S63)にある。
この場合、前記位置ずれ検出手段は、前記モータに流れる電流の情報を取得する電流取得手段(S53)と、前記モータに印加される電圧の情報を取得する電圧取得手段(S53)とを備え、前記回転角速度推定手段は、前記仮の逆起電圧定数と、前記電流取得手段により取得された電流の情報と、前記電圧取得手段により取得された電圧の情報とに基づいて、前記モータの回転角速度を推定するとよい。
本発明においては、回転角速度推定手段が予め一定値に設定された仮の逆起電圧定数を使った演算によりモータの回転角速度を推定し、舵角推定手段が回転角速度を時間積分することにより推定舵角を演算し、実舵角演算手段が仮の逆起電圧定数を使わずに、車両の走行状態に基づいて実際の舵角に相当する実舵角を演算し、推定舵角特性検出手段が推定舵角と実舵角との関係を表す推定舵角特性を操舵方向別に検出する。
例えば、回転角速度推定手段は、仮の逆起電圧定数と、モータに流れる電流と、モータに印加される電圧とに基づいてモータの回転角速度を演算により推定する。また、舵角推定手段は、例えば、車両が直進走行している状態から旋回して保舵状態に達するまでの回転角速度を積算することにより、その保舵状態における推定舵角を演算する。
また、実舵角演算手段は、車両の走行状態を表す情報を取得して、その情報に基づいて実際の舵角に相当する実舵角を演算する。例えば、車両の走行状態を表す情報として、左右の車輪の車輪速を表す情報を取得することにより、左右の車輪速に基づいて舵角を推定することができる。また、例えば、ヨーレートを表す情報と車速を表す情報とを取得することにより、舵角を推定することもできる。
また、推定舵角特性検出手段は、例えば、舵角推定手段により演算された推定舵角と、その推定舵角を演算したときの実舵角演算手段により演算された実舵角とを一組のデータとして記憶し、そのデータをモータ駆動中に複数サンプリングすることにより、推定舵角と実舵角との関係を表す推定舵角特性を検出するとよい。
ブラシとマグネットとの相対位置がずれている場合には、正方向に流れる電流の逆起電圧定数特性と負方向に流れる電流の逆起電圧定数特性とが相違する。このため、予め一定値に設定された仮の逆起電圧定数を使った演算により推定されたモータの回転角速度を積分して得られた推定舵角は、右操舵方向と左操舵方向とで大きさが相違する。このことを利用して、位置ずれ検出手段は、右操舵方向の推定舵角特性と左操舵方向の推定舵角特性との相違度合に基づいて位置ずれを検出する。従って、本発明によれば、ブラシ付モータのマグネットとブラシとの機械的な相対位置のずれを簡単に検出することができる。
本発明の他の特徴は、前記位置ずれ検出手段により前記位置ずれが検出された場合には、前記位置ずれが検出されていない場合に比べて、前記モータの制御量を低減するモータ制御量低減手段(S14〜S16)を備えたことにある。
本発明においては、モータ制御量低減手段が、位置ずれが検出された場合には、モータの制御量を低減する。このため、モータに大電流が流れないように作動制限した状態で操舵アシストを継続することができる。このため、運転者は、操舵アシストが得られた状態で、車両を修理工場等にまで運転することができるため不便を感じない。また、モータが大きなトルクを出力しないようになり、更なる位置ずれを抑制できる。
モータの制御量を低減するにあたっては、例えば、モータに流す電流の上限値を低減する、あるいは、モータの目標電流を低減補正する、あるいは、モータの電圧指令値を低減補正するなど種々の手法を採用することができる。
本発明の他の特徴は、前記モータ制御量低減手段は、前記位置ずれの検出により前記モータの制御量を低減した後、前記モータの制御量を低減する度合いを徐々に増やしていくことにある。
本発明においては、モータ制御量低減手段が、位置ずれの検出によりモータの制御量を低減した後、モータの制御量を低減する度合いを徐々に増やしていく。例えば、モータ制御量低減手段は、位置ずれが検出されてからの時間経過、あるいは、位置ずれが検出されてからの車両の使用量にしたがって低減度合を増加する。車両の使用量は、例えば、イグニッションスイッチがオンしている積算時間、イグニッションスイッチのオン回数(オフ回数)、車両の走行時間、車両の走行距離、エネルギー補給(給油、充電)回数、エネルギー補給量(給油量、充電量)、操舵回数、モータに流れる電流の絶対値の積算値、モータに印加する電圧の絶対値の積算値、モータに供給する電力の絶対値の積算値、操舵トルクの絶対値の積算値などを表す値を用いて検出することができる。
この結果、本発明によれば、ブラシの位置ずれが検出された後に、操舵アシストを徐々に低下させることができるため、運転者に対して、安全に、確実に、故障を認識させることができ、早期の修理を促すことができる。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
以下、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
この電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生するモータ20と、操舵ハンドル11の操作状態に応じてモータ20の作動を制御する電子制御ユニット100とを主要部として備えている。以下、電子制御ユニット100をアシストECU100と呼ぶ。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FW1,FW2を転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたギヤ部14aと噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。
ラックバー14は、ギヤ部14aがラックハウジング16内に収納され、その左右両端がラックハウジング16から露出してタイロッド17と連結される。このラックバー14のタイロッド17との連結部には、ストロークエンドを構成するストッパ18が形成され、このストッパ18とラックハウジング16の端部との当接によりラックバー14の左右動ストロークが機械的に規制されている。左右のタイロッド17の他端は、左右前輪FW1,FW22に設けられたナックル19に接続される。こうした構成により、左右前輪FW1,FW2は、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ステアリングシャフト12には減速ギヤ25を介してモータ20が組み付けられている。モータ20は、その回転により減速ギヤ25を介してステアリングシャフト12をその軸中心に回転駆動して、操舵ハンドル11の回動操作に対してアシスト力を付与する。このモータ20は、ブラシ付DCモータである。
ステアリングシャフト12には、操舵ハンドル11と減速ギヤ25とのあいだに操舵トルクセンサ21が組みつけられている。操舵トルクセンサ21は、例えば、ステアリングシャフト12の中間部に介装されたトーションバー(図示略)の捩れ角度をレゾルバ等により検出し、この捩れ角に基づいてステアリングシャフト12に働いた操舵トルクtrを検出する。操舵トルクtrは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。例えば、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクtrを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクtrを負の値で示す。尚、本実施形態においては、トーションバーの捩れ角度を、トーションバーの両端に設けた2つのレゾルバにより検出するが、エンコーダ等の他の回転角センサにより検出することもできる。
また、ステアリングシャフト12には、操舵ハンドル11と操舵トルクセンサ21とのあいだに舵角センサ22が組み付けられている。舵角センサ22は、ステアリングシャフト12の回転角度に基づいて、舵角ゼロとなる中立位置からの回転角度を表す舵角θhを検出する。舵角θhは、正負の値により中立位置からの操舵方向が識別される。例えば、中立位置から右方向の舵角θhを正の値で、中立位置から左方向の舵角θhを負の値で示す。尚、操舵トルクtr、舵角θhについて、その大きさを論じる場合には、絶対値を用いる。
尚、第1実施形態の電動パワーステアリング装置においては、舵角センサ22を、モータ20の回転角速度ωを検出するために用いる。従って、モータ20の回転角速度ωを検出できるセンサが備わっていれば、舵角センサ22に代えて、そのセンサを利用してもよい。例えば、操舵トルクセンサ21がトーションバーの両端の回転角度(絶対角度)を検出して、両端の回転角度差から操舵トルクtrを検出する構成のものであれば、トーションバーの片側端の回転角度の検出値を利用することもできる。
次に、第1実施形態におけるアシストECU100について図2を用いて説明する。アシストECU100は、モータ20の目標制御量を演算し、演算された目標制御量に応じたスイッチ駆動信号を出力する電子制御回路50と、電子制御回路50から出力されたスイッチ駆動信号にしたがってモータ20に通電するモータ駆動回路40とを含んで構成される。
電子制御回路50は、CPU,ROM,RAM等からなる演算回路と入出力インタフェースを備えたマイクロコンピュータ60(以下、マイコン60と呼ぶ)と、マイコン60から出力されるスイッチ制御信号を増幅してモータ駆動回路40に供給するスイッチ駆動回路51とを備える。
アシストECU100は、電源装置200から電力供給される。この電源装置200は、図示しないバッテリと、エンジンの回転により発電するオルタネータとから構成される。この電源装置200の定格出力電圧は、例えば12Vに設定されている。尚、図中においては、電源装置200からモータ駆動回路40への電源供給ラインである電源ライン210のみを示しているが、電子制御回路50の作動電源も電源装置200から供給される。
モータ駆動回路40は、電源ライン210とグランドライン220との間に設けられる。モータ駆動回路40は、スイッチング素子Q1Hとスイッチング素子Q2Hとを並列にして電源ライン210に接続した上アーム回路45Hと、スイッチング素子Q1Lとスイッチング素子Q2Lとを並列にしてグランドライン220に接続した下アーム回路45Lとを直列に接続し、上アーム回路45Hと下アーム回路45Lとの接続部から、モータ20への電力供給を行うための通電ライン47a,47bを引き出したHブリッジ回路である。このモータ駆動回路40では、スイッチング素子Q1Hとスイッチング素子Q1Lとが電源−グランド間に直列接続され、スイッチング素子Q2Hとスイッチング素子Q2Lとが電源−グランド間に直列接続される。
モータ駆動回路40に設けられるスイッチング素子Q1H,Q2H,Q1L,Q2Lとしては、例えば、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が使用される。スイッチング素子Q1H,Q2H,Q1L,Q2Lは、各ソース−ドレイン間に電源電圧が印加されるように上下のアーム回路45H,45Lに設けられ、また、各ゲートが電子制御回路50のスイッチ駆動回路51に接続される。以下、スイッチング素子Q1H,Q2H,Q1L,Q2Lについて、その何れかを特定しない場合には、単に、スイッチング素子Qと呼ぶ。
尚、図中に回路記号で示すように、MOS−FETには構造上、ダイオードが寄生している。このダイオードを寄生ダイオードと呼ぶ。各スイッチング素子Qの寄生ダイオードは、電源ライン210からグランドライン220への電流の流れを遮断し、グランドライン220から電源ライン210へ向かう電流のみを許容する逆導通ダイオードである。また、モータ駆動回路40は、寄生ダイオードとは別の逆導通ダイオード(電流遮断方向は寄生ダイオードと同じであって、電源電圧方向に対して逆方向にのみ導通するダイオード)をスイッチング素子Qに並列に接続した構成であってもよい。また、スイッチング素子Qは、MOS−FETに限るものではない。
マイコン60は、スイッチ駆動回路51を介してモータ駆動回路40の各スイッチング素子Qのゲートに独立した駆動信号を出力する。この駆動信号により、各スイッチング素子Qのオン状態とオフ状態とが切り替えられる。
モータ駆動回路40においては、スイッチング素子Q2Hとスイッチング素子Q1Lとがオフに維持された状態でスイッチング素子Q1Hとスイッチング素子Q2Lとがオンすると、図中の(+)方向に電流が流れる。これにより、モータ20は、正回転方向のトルクを発生する。また、スイッチング素子Q1Hとスイッチング素子Q2Lとがオフに維持された状態でスイッチング素子Q2Hとスイッチング素子Q1Lとがオンすると、図中の(−)方向に電流が流れる。これにより、モータ20は、逆回転方向のトルクを発生する。
アシストECU100は、モータ20に流れる電流を検出する電流センサ31を備えている。この電流センサ31は、下アーム回路45Lとグランドとを接続するグランドライン220に設けられる。電流センサ31は、例えば、グランドライン220にシャント抵抗(図示略)を設け、このシャント抵抗の両端に現れる電圧をアンプ(図示略)で増幅し、増幅した電圧をA/Dコンバータ(図示略)によりデジタル信号に変換してマイコン60に供給する。以下、電流センサ31により検出されるモータ20に流れる電流の値を、モータ実電流Imと呼ぶ。モータ実電流Imは、その符号(正負)により、電流の流れる方向を識別できるようになっている。尚、モータ実電流Imの検出にあたっては、電流センサ31側にA/Dコンバータを設けずに、マイコン60側にA/Dコンバータを設けた構成であってもよい。つまり、電流センサ31でアナログ電圧信号を出力し、マイコン60でデジタル信号に変換する構成であってもよい。また、電流センサ31を設ける位置は、グランドライン200に限らず、例えば、電源ライン210でも良いし、通電ライン47a(または47b)でもよい。
また、アシストECU100は、モータ20の端子間電圧を検出する電圧センサ32を備えている。この電圧センサ32は、モータ20の端子間電圧をA/Dコンバータ(図示略)によりデジタル信号に変換してマイコン60に供給する。以下、電圧センサ32により検出される電圧の値を、モータ端子間電圧Vmと呼ぶ。モータ端子間電圧Vmは、上アーム回路45Hと下アーム回路45Lとの一方の接続部のグランドに対する電位V1と、他方の接続部のグランドに対する電位V2との差(V1−V2)に相当する。尚、電圧センサ32は、電圧信号をデジタル信号に変換する機能をマイコン60側に設けてもよい。また、電圧センサ32に代えて、モータ20の一方の端子のグランドに対する電位を検出する電圧センサと、モータ20の他方の端子のグランドに対する電位を検出する電圧センサとを設け、この2つの電圧センサにより検出される検出値の差をモータ端子間電圧Vmとして検出する構成を採用することもできる。
また、アシストECU100は、車速センサ33を接続している。車速センサ33は、車速vxを表す検出信号をアシストECU100に出力する。また、アシストECU100は、ウォーニングランプ34を接続している。ウォーニングランプ34は、アシストECU100から出力される故障検出信号により点灯する。
次に、マイコン60の制御処理について説明する。図2は、マイコン60の機能ブロックを表している。マイコン60は、その機能に着目すると、モータ制御部70と、回転角速度演算部75と、位置ずれ検出部80とを備えている。各機能部における処理は、マイコン60に記憶された制御プログラムを所定の周期で繰り返し実行することにより行われる。
モータ制御部70は、モータ20の目標制御量を演算し、その目標制御量に応じたスイッチ駆動信号を出力するブロックである。モータ制御部70は、目標電流演算部71と、電圧指令値演算部72と、PWM制御部73とを備えている。
図3は、目標電流演算部71の行う目標電流演算ルーチンを表すフローチャートである。目標電流演算ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実行される。目標電流演算ルーチンが起動すると、目標電流演算部71は、ステップS11において、車速センサ33よって検出された車速vxと、操舵トルクセンサ21によって検出された操舵トルクtrとを読み込む。続いて、ステップS12において、図4に示すアシストマップを参照して、車速vxおよび操舵トルクtrに応じて設定される目標アシストトルクtr*を計算する。
アシストマップは、代表的な複数の車速vxごとに、操舵トルクtrと目標アシストトルクtr*との関係を設定した関係付けデータであり、目標電流演算部71に記憶されている。アシストマップは、操舵トルクtrが大きくなるにしたがって目標アシストトルクtr*が増加し、車速vxが低くなるにしたがって目標アシストトルクtr*が増加する特性を有している。尚、図4は、右方向の操舵時におけるアシストマップであって、左方向の操舵時におけるアシストマップは、左方向のものに対して操舵トルクtrと目標アシストトルクtr*の符号をそれぞれ反対(つまり負)にしたものとなる。
続いて、目標電流演算部71は、ステップS13において、目標アシストトルクtr*を発生させるために必要な電流である基本目標電流I*0を計算する。基本目標電流I*0は、目標アシストトルクtr*をトルク定数で除算することにより求められる。続いて、目標電流演算部71は、ステップS14において、位置ずれ検出部80から出力される位置ずれ判定フラグFfailが「0」であるか否かを判断する。
位置ずれ判定フラグFfailは、後述するように、モータ20において、マグネットとブラシとの機械的な相対位置が回転方向にずれていること(位置ずれと呼ぶ)が検出されているか否かを表す信号であって、「0」により位置ずれが検出されていないことを表し、「1」により位置ずれが検出されていることを表す。
目標電流演算部71は、位置ずれ判定フラグFfailが「0」である場合には、ステップS15において、上限電流Imaxを通常上限電流Imax0に設定する(Imax←Imax0)。一方、位置ずれ判定フラグFfailが「1」である場合には、ステップS16において、上限電流Imaxを異常時上限電流Imax1に設定する(Imax←Imax1)。上限電流Imaxは、モータ20に流す電流の大きさ(絶対値)の上限値であり、位置ずれ判定フラグFfailによって、その値が異なるように設定される。異常時上限電流Imax1は、通常上限電流Imax0に比べて、その大きさが小さくなるように予め設定されている。
続いて、目標電流演算部71は、ステップS17において、基本目標電流I*0が上限電流Imaxよりも大きいか否かを判断し、基本目標電流I*0が上限電流Imaxよりも大きい場合には、ステップS18において、上限電流Imaxを目標電流I*に設定する(I*←Imax)。また、基本目標電流I*0が上限電流Imax以下となる場合には、ステップS19において、基本目標電流I*0を目標電流I*に設定する(I*←I*0)。尚、本明細書において、方向(符号)により方向を表す検出値について大きさを論じる場合には、その絶対値を用いる。従って、ここでは、電流の流す向きに関係しない絶対値の比較となる。
目標電流演算部71は、目標電流I*を計算すると、ステップS20において、目標電流I*を電圧指令値演算部72に出力して、目標電流演算ルーチンを一旦終了する。目標電流演算部71は、こうした処理を所定の周期で繰り返す。
電圧指令値演算部72は、目標電流演算部71から出力される目標電流I*と、電流センサ31により検出されるモータ実電流Imとを読み込む。電圧指令値演算部72は、目標電流I*からモータ実電流Imを減算した偏差ΔIを算出し、この偏差ΔIを使ったPI制御(比例積分制御)により、モータ実電流Imが目標電流I*に追従するようにモータ20に印加する目標電圧を表す電圧指令値V*を計算する。つまり、電流フィードバック制御により電圧指令値V*を計算する。電圧指令値V*は、例えば、下記式(1)により計算する。
V*=Kp・ΔI+Ki・∫ΔI dt ・・・(1)
ここでKpは、PI制御における比例項の制御ゲイン、Kiは、PI制御における積分項の制御ゲインである。
電圧指令値演算部72は、電圧指令値V*を計算すると、電圧指令値V*をPWM制御部73に出力する。PWM制御部73は、電圧指令値演算部72から出力された電圧指令値V*を入力し、電圧指令値V*で表される電圧がモータ20に印加されるようなデューティ比を設定したPWM(Pulse Width Modulation)制御信号をスイッチ駆動回路51に出力する。
スイッチ駆動回路51は、入力したPWM制御信号を増幅してモータ駆動回路40に出力する。これにより、モータ制御部70にて計算された電圧指令値V*に応じたデューティ比のパルス信号列がPWM制御信号としてモータ駆動回路40に出力される。このPWM制御信号により、各スイッチング素子Q1H,Q2H,Q1L,Q2Lのデューティ比が制御され、モータ20の駆動電圧が電圧指令値V*に調整される。こうして、モータ20には、操舵操作方向に回転する向きに電流が流れ、モータ20が操舵トルクを発生して運転者の操舵操作をアシストする。
PWM制御部73は、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lと、逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1LとにPWM制御信号を交互に出力することによりモータ20を駆動する。例えば、電圧指令値V*がゼロ、つまり、モータに通電しないときには、50%のデューティ比のPWM制御信号を、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lと、逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1Lとに交互に出力する。この場合、モータ20には電流が流れない。そして、モータ20を正回転駆動する場合には、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1Lに出力するPWM制御信号のデューティ比よりも大きくする。例えば、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を60%、逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を40%にする。逆に、モータ20を逆回転駆動する場合には、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1Lに出力するPWM制御信号のデューティ比よりも小さくする。例えば、正回転用のスイッチング素子Q1H,Q2Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を40%、逆回転用のスイッチング素子Q2H,Q1Lに出力するPWM制御信号のデューティ比を60%にする。そして、電圧指令値V*が大きい(絶対値)ほど、50%から離れたデューティ比のPWM制御信号を出力することにより、モータ20に印加する電圧を増大させる。
次に、位置ずれ検出部80の処理について説明する。まず、位置ずれ検出の原理について説明する。ブラシ付モータ(永久磁石式DCモータ)においては、図5に示すように、マグネット120がステータ140に配置され、ロータ150に電機子巻線160が設けられる。ブラシ130は、図示しないブラシ保持器によりステータ140側に保持される。従って、マグネット120とブラシ130とは、相対位置が固定される。
ブラシ付モータにおいては、図5に示すように、マグネット120による主磁束と、電機子電流による起磁力とが直交するようにブラシ130や整流子170の位置が決められている。マグネット120による主磁束と電機子巻線160による起磁力との合成磁束方向は、電機子電流が大きくなるにつれて、図6に示すように、電機子反作用により、ブラシ位置で決まる電気的中性軸Nと直交せず次第に傾いてくる。この状態においては、電機子巻線160に鎖交する磁束が減少するため(極端に90°傾けば0になる)、トルク定数や逆起電圧定数は減少する。
ここで、マグネット120とブラシ130との相対位置が回転軸中心にずれ、図7に示すように電動機としてのモータ20の回転方向の反対側にブラシ130が動いた場合を考える。この場合には、電気的中性軸Nと合成磁束がほぼ直交するため、トルク定数や逆起電圧定数は、図6に示す状態よりも増加する。しかし、合成磁束の傾きは、電流の方向および大きさによって変化する。このため、トルク定数や逆起電圧定数は、増加する場合も減少する場合も考えられる。尚、図6,7においては、合成磁束を表す矢印を途中省略している。
図8は、モータ20に流れる電流に対する逆起電圧定数Keの特性を表す。マグネット120に対してブラシ130が相対的に位置ずれしていない状態、つまり、電気的中性軸Nに対してブラシ130が対称位置となる正常な位置に固定されている場合においては、逆起電圧定数Keは、実線にて示すように、電流がゼロの時に最大となり、電流の大きさ(絶対値)が増加するにしたがって減少する特性を有する。つまり、逆起電圧定数Keの特性は、電流ゼロを表す縦軸に対して対称となる。従って、モータ20の回転方向(通電方向)によらず逆起電圧定数の低下する特性は変わらない。
一方、マグネット120に対してブラシ130が相対的に位置ずれしている状態、例えば、電動機としてのモータ20の回転方向の反対側にブラシ130が位置ずれした場合には、逆起電圧定数Keの特性は、破線にて示すように、電流ゼロを表す縦軸に対して非対称となる。つまり、逆起電圧定数Keは、電気的中性軸Nと合成磁束が直交する付近で最大となり、その最大となるときの電流Ia(≠0)を境界として、電流Iaから離れるにしたがって減少する。このため、逆起電圧定数Keの特性は、正常時の実線にて示す特性を、電流Iaだけシフトしたものとなる。従って、電流を流す方向によって、電流の大きさ(絶対値)に対する逆起電圧定数Keが相違する。以下、マグネット120とブラシ130との相対位置がずれていることをブラシの位置ずれと呼ぶ。尚、ブラシの位置ずれは、マグネット120の取付位置がずれている場合にも生じる。
位置ずれ検出部80は、モータ20に流れる電流に対する逆起電圧定数Keの特性が、ブラシの位置ずれに応じて変化することを捉えて、ブラシの位置ずれの有無を判定する。図9は、位置ずれ検出部80の実行する位置ずれ検出ルーチンを表すフローチャートである。
位置ずれ検出部80は、位置ずれ検出ルーチンを起動すると、まず、ステップS31において、電流センサ31により検出されたモータ実電流Imと電圧センサ32により検出されたモータ端子間電圧Vmと回転角速度演算部75により計算された回転角速度ωとを読み込む。回転角速度演算部75は、所定の短い周期で舵角センサ22により検出された舵角θhを読み込み、この舵角θhを時間で微分することにより回転角速度ωを計算し、回転角速度ωを表す信号を位置ずれ検出部80に出力する。位置ずれ検出部80は、この回転角速度演算部75から出力された信号を回転角速度ωとして読み込む。
続いて、位置ずれ検出部80は、ステップS32において、モータ実電流Imとモータ端子間電圧Vmと回転角速度ωとに基づいて、逆起電圧定数Keを計算する。モータ端子間電圧Vmは、モータ内部抵抗をRとすると、次式(2)にて表される。
Vm=R・Im+ω・Ke ・・・(2)
従って、逆起電圧定数Keは次式(3)により計算することができる。
Ke=(Vm−R・Im)/ω ・・・(3)
続いて、位置ずれ検出部80は、ステップS33において、逆起電圧定数Keとモータ実電流Imとを対応付けた一組のサンプリングデータ(Ke,Im)をメモリに記憶する。続いて、位置ずれ検出部80は、ステップS34において、サンプリングを終了してもよいか否かを判断する。例えば、サンプリングデータ(Ke,Im)の数が、目標値に到達したか否かを判断する。位置ずれ検出部80は、サンプリングデータ(Ke,Im)の数が目標値に達しないあいだは、その処理をステップS31に戻して、上述した処理を実行する。こうした処理が繰り返されて、サンプリングデータ(Ke,Im)の数が目標値に達すると、位置ずれ検出部80は、その処理をステップS35に進める。
位置ずれ検出部80は、ステップS35において、サンプリングデータ(Ke,Im)に基づいて、電流方向別にモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性を表す近似式を計算する。例えば、図10,図11に示すように、横軸をモータ実電流Imの絶対値|Im|、縦軸を逆起電圧定数Keとした平面座標に、電流方向別にサンプリングデータ(Ke,Im)をプロットし、その分布に対して、最小二乗法による近似式を計算する。ブラシの位置ずれが生じていない場合には、図10の(a),(b)に示すように、プラス方向のモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性と、マイナス方向のモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性とは、ほぼ同一となり、両者の近似式の係数、例えば、1次関数の係数は、ほぼ等しくなる。
一方、ブラシの位置ずれが生じている場合には、図11の(a),(b)に示すように、プラス方向のモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性と、マイナス方向のモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性とは、大きく相違し、両者の近似式の係数、例えば、1次関数の係数も相違する。従って、プラス方向とマイナス方向とにおける逆起電圧定数Keの特性を比較することにより、ブラシの位置ずれの有無を判定できる。
位置ずれ検出部80は、ステップS36において、プラス方向のモータ実電流Imに対する逆起電圧定数Keの特性(サンプリング値の分布)を表す近似式の1次の係数A1と、マイナス方向のモータ実電流|Im|に対する逆起電圧定数Keの特性を表す近似式の1次の係数A2との偏差ΔA(=|A1−A2|)を計算する。係数A1,A2は、図10あるいは図11における1次関数の直線の傾きを表す。
続いて、位置ずれ検出部80は、ステップS37において、偏差ΔAが判定基準値Aref以下であるか否かを判断する。偏差ΔAが判定基準値Aref以下である場合には、ブラシの位置ずれが発生していないと判断して、ステップS38において、位置ずれ判定フラグFfailを「0」に設定する。一方、偏差ΔAが判定基準値Arefを超える場合には、ブラシの位置ずれが発生していると判断して、ステップS39において、位置ずれ判定フラグFfailを「1」に設定するとともに、ステップS40において、ウォーニングランプ34に点灯指令を出力して、ウォーニングランプ34を点灯させる。
ブラシの位置ずれが発生している場合、例えば、図11(b)に示した例では、モータ実電流Imがプラスとなる逆起電圧定数Keの特性において、モータ実電流Imがゼロより大きいときに逆起電圧定数Keが最大となる山部が形成される。このため、サンプリングデータ(Ke,Im)の分布に対して、最小二乗法により近似した近似式の傾きは、モータ実電流Imがプラスの場合とマイナスの場合と大きく異なる。従って、偏差ΔAが判定基準値Arefよりも大きくなり、ブラシの位置ずれを検出することができる。
位置ずれ検出部80は、位置ずれ判定フラグFfailを設定すると、続くステップS41において、位置ずれ判定フラグFfailをモータ制御部70に出力して位置ずれ検出ルーチンを終了する。位置ずれ検出ルーチンは、任意のタイミングで繰り返し実行する。従って、経時的な位置ずれの変化に対応することができる。
モータ制御部70の目標電流演算部71は、上述したように、位置ずれ判定フラグFfailに応じた上限電流Imaxを設定する。つまり、位置ずれ判定フラグFfailが「1」である場合には「0」である場合に比べて、小さな上限電流Imaxを設定する。従って、ブラシの位置ずれが検出されている場合には、モータ20に流す電流の上限制限が厳しくなり、モータ20に大きな電流が流れなくなる。
以上説明した第1実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、回転角速度ωとモータ実電流Imとモータ端子間電圧Vmとに基づいて逆起電圧定数Keを演算するとともに、逆起電圧定数Keとモータ実電流Imとを対応付けたデータ(Ke,Im)をサンプリングし、サンプリングデータの分布に基づいて、モータ20に流れる電流方向別に逆起電圧定数の特性を求める。そして、プラス方向に流れる電流に対する逆起電圧定数の特性と、マイナス方向に流れる電流に対する逆起電圧定数の特性との相違度合を表す偏差ΔAに基づいて、偏差ΔAが判定基準値ΔArefより大きい場合には、ブラシの位置ずれが発生していると判定する。
従って、ブラシの位置ずれを簡単に検出することができる。このため、ブラシの位置ずれによりモータ20に大電流が流れてブラシが早期摩耗する前に、また、ブラシの位置ずれが進行して急に操舵アシストが停止してしまう前に、運転者に異常を知らせることができる。これにより、運転者は、適切なタイミングで、車両の修理を手配することができる。
また、ブラシの位置ずれを検出した場合には、モータ20の上限電流Imaxを小さくして、モータ20に大電流が流れないように作動制限した状態で操舵アシストを継続する。従って、モータ20が大きなトルクを出力しないようになり、更なるブラシの位置ずれを抑制できる。この結果、操舵アシストを継続できる期間を長くすることができる。このため、運転者は、操舵アシストが得られた状態で、車両を修理工場等にまで運転することができるため不便を感じない。
次に、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。上述した第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、舵角センサ22を使ってモータ20の回転角速度ωを検出したが、モータ20の回転角速度ωを検出できるセンサを備えていない車両も存在する。そこで、第2実施形態においては、モータ20の回転角速度ωを検出せずに、ブラシの位置ずれを検出する実施形態について説明する。以下、第1実施形態と相違する構成について説明する。
図12は、第2実施形態におけるアシストECU100の構成を表す。第2実施形態におけるアシストECU100は、第1実施形態におけるアシストECU100に備えていた回転角速度演算部75に代えて舵角演算部77を備え、位置ずれ検出部80に代えて、位置ずれ検出処理の異なる位置ずれ検出部85を備えたものであり、他の構成については、第1実施形態と同一である。
まず、第2実施形態における位置ずれ検出の原理ついて説明する。モータ20の回転角速度が検出できない場合は、逆起電圧定数Keが一定であると仮定して回転角速度を推定する。推定回転角速度ωaは、次式(4)にて計算することができる。
ωa=(Vm−R・Im)/Ke ・・・(4)
この推定回転角速度ωaを時間で積分することで舵角を推定することができる。そこで、車両が直進走行している状態から旋回して保舵するパターンのように舵角が増加する区間において、推定回転角速度ωaを時間積分して推定舵角θaを求め、推定舵角θaと実舵角θとを比較する。モータ20にブラシの位置ずれが生じていない場合には、右操舵でも左操舵でも、推定舵角θaと実舵角θとの関係は同じになる。尚、ここでは、推定舵角θaと実舵角θとの差を問題にするものではない。
一方、モータ20にブラシの位置ずれが生じている場合には、電流方向によって逆起電圧定数Keが異なるため、図13に示すように、右操舵と左操舵とで、推定回転角速度ωa(破線)と実回転角速度(実線)との誤差幅が異なる。このため、実舵角θと推定舵角θaとの関係をプロットすると、図14に示すように、右操舵と左操舵とで、推定舵角θaと実舵角θとの関係(分布)に差が生じることになる。尚、図14に示す分布は、実舵角θと推定舵角θaとの絶対値を用いたものである。
図13、図14の例は、モータ20の逆起電圧定数Keが、図8に示すような特性を有する場合の例である。この例では、左操舵においては、逆起電圧定数Keが小さいため、推定回転角速度ωaが過剰に小さく計算される。また、右操舵においては、左操舵に比べて逆起電圧定数Keが大きいため、推定回転角速度ωaの実回転角速度に対する誤差が少なくなる。従って、図14に示すように、実舵角θと推定舵角θaとの関係をプロットすると、左旋回時のほうが右旋回時に比べてグラフの上に分布することになる。
位置ずれ検出部85は、モータ20に流れる電流に対する逆起電圧定数Keの特性が、ブラシの位置ずれに応じて変化することを捉えて、逆起電圧定数Keを一定であると仮定した場合の、右操舵と左操舵とにおける実舵角θと推定舵角θaとの関係に基づいて、ブラシの位置ずれの有無を判定する。
位置ずれ検出部85は、ブラシの位置ずれの有無を判定するにあたって、舵角演算部77により演算された演算舵角を上記実舵角θとして使用する。舵角演算部77は、例えば、左右の後輪の車輪速v1,v2を表す情報を取得し、この車輪速v1,v2に基づいて、次式(5)による計算にて舵角θを推定する。
ここで、図15に示すように、v1は左後輪RW1の回転速度、v2は右後輪RW2の回転速度、Gはモータ20から前輪FW1,FW2までのギヤ比、aは左右後輪RW1,RW2のトレッド、bはホイールベースを表す。
尚、後輪駆動車においては、左右前輪FW1,FW2の車輪速の差から舵角θを求めるようにしてもよい。
舵角演算部77は、計算した演算舵角θを位置ずれ検出部85に出力する。位置ずれ検出部85は、舵角演算部77から入力した演算舵角θを実舵角θとして位置ずれ検出処理に利用する。以下、演算舵角θを実舵角θと呼ぶ。
図16は、位置ずれ検出部85の実行する位置ずれ検出ルーチンを表すフローチャートである。位置ずれ検出ルーチンが起動すると、位置ずれ検出部85は、ステップS51において、舵角演算部77から出力される実舵角θを読み込む。続いて、位置ずれ検出部85は、ステップS52において、舵角θに基づいて、車両が直進走行しているか否かを判断し、直進していなければ、その処理をステップS51に戻す。位置ずれ検出部85は、こうした処理を繰り返し、直進走行であることを判定すると、その処理をステップS53に進める。
位置ずれ検出部85は、ステップS53において、電流センサ31により検出されたモータ実電流Imと電圧センサ32により検出されたモータ端子間電圧Vmと舵角演算部77により演算された実舵角θを読み込む。続いて、ステップS54において、上記式(4)を使って、モータ20の回転角速度の推定値である推定回転角速度ωaを計算する。この推定回転角速度ωaは、逆起電圧定数Keが一定であると仮定して計算したものである。つまり、予め設定した一定値Keを使って計算したものである。
続いて、位置ずれ検出部85は、ステップS55において、推定回転角速度ωaを時間積分(積算)することにより舵角を推定する。この推定した舵角が推定舵角θaである。続いて、位置ずれ検出部85は、ステップS56において、保舵状態となったか否かを判断する。つまり、操舵ハンドル11が右方向あるいは左方向に回動操作された後、操舵ハンドル11が保持された状態になったか否かを判断する。保舵状態になっていない場合は、位置ずれ検出部85は、その処理をステップS53に戻して、推定舵角θaの演算(推定回転角速度ωaの積算)を繰り返す。
保舵状態は、実舵角θに基づいて判断する。この場合、操舵操作が行われている舵角の過渡状態においては、舵角演算部77により演算される実舵角θは、本来の舵角と一致しないこともあり得る。そこで、このステップS56においては、実舵角θの時間変化量が一定値以下となる状態が設定時間以上継続したことをもって保舵状態であると判定する。また、ステップS52における直進走行の判定についても、実舵角θの絶対値|θ|がゼロに近い閾値以下となる状態が設定時間以上継続したことをもって直進走行状態であると判定する。
位置ずれ検出部85は、こうした処理を繰り返し、保舵状態を検出すると、ステップS57において、その時点における実舵角θと推定舵角θaとを対応付けた一組のサンプリングデータ(θ,θa)をメモリに記憶する。続いて、位置ずれ検出部85は、ステップS58において、サンプリングを終了してもよいか否かを判断する。例えば、サンプリングデータ(θ,θa)の数が、目標値に到達したか否かを判断する。位置ずれ検出部85は、サンプリングデータ(θ,θa)の数が目標値に達しないあいだは、その処理をステップS51に戻して、上述した処理を実行する。こうした処理が繰り返されて、サンプリングデータ(θ,θa)の数が目標値に達すると、位置ずれ検出部85は、その処理をステップS59に進める。
位置ずれ検出部85は、ステップS59において、サンプリングデータ(θ,θa)に基づいて、旋回方向別(操舵方向別)に、実舵角θに対する推定舵角θaの特性を表す近似式を計算する。例えば、図14に示すように、横軸を実舵角θの絶対値|θ|、縦軸を推定舵角θa(推定回転角速度ωaの積算値)の絶対値|θa|とした平面座標に、旋回方向別にサンプリングデータ(θ,θa)をプロットし、その分布に対して、最小二乗法による近似式を計算する。
ブラシの位置ずれが生じていない場合には、右旋回方向の分布と、左旋回方向の分布とがほぼ同一となる。従って、2つの旋回方向の近似式を1次関数で表した場合、その1次の係数は、ほぼ等しくなる。一方、ブラシの位置ずれが生じている場合には、図14に示すように、右旋回方向の分布と、左旋回方向の分布とが大きく相違する。従って、2つの旋回方向の近似式を1次関数で表した場合、その1次の係数が大きく相違する。この例では、左旋回方向の近似式の係数が、右旋回方向の近似式の係数に比べて小さくなる。従って、右旋回方向と左旋回方向とにおける分布特性の近似式の係数を比較することにより、ブラシの位置ずれの有無を判定できる。
位置ずれ検出部85は、ステップS60において、右旋回方向の実舵角|θ|に対する推定舵角|θa|の特性(サンプリング値の分布)を表す近似式の1次の係数B1と、左旋回方向の実舵角|θ|に対する推定舵角|θa|の特性(サンプリング値の分布)を表す近似式の1次の係数B2との偏差ΔB(=|B1−B2|)を計算する。係数B1,B2は、図14における1次関数の直線の傾きを表す。
続いて、位置ずれ検出部80は、ステップS61において、偏差ΔBが判定基準値Bref以下であるか否かを判断する。偏差ΔBが判定基準値Bref以下である場合には、ブラシの位置ずれが発生していないと判断して、ステップS62において、位置ずれ判定フラグFfailを「0」に設定する。一方、偏差ΔBが判定基準値Brefを超える場合には、ブラシの位置ずれが発生していると判断して、ステップS63において、位置ずれ判定フラグFfailを「1」に設定するとともに、ステップS64において、ウォーニングランプ34に点灯指令を出力して、ウォーニングランプ34を点灯させる。
位置ずれ検出部80は、位置ずれ判定フラグFfailを設定すると、続くステップS65において、位置ずれ判定フラグFfailをモータ制御部70に出力して位置ずれ検出ルーチンを終了する。位置ずれ検出ルーチンは、任意のタイミングで繰り返し実行する。従って、経時的な位置ずれの変化に対応することができる。
モータ制御部70は、第1実施形態と同様に、位置ずれ判定フラグFfailに応じた上限電流Imaxを設定する。
以上説明した第2実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、逆起電圧定数Keを一定であると仮定してモータ実電流Imとモータ端子間電圧Vmとに基づいて推定回転角速度ωaを推定し、推定回転角速度ωaを操舵中に積算することで推定舵角θaを演算する。そして、右操舵と左操舵とにおける実舵角θと推定舵角θaとを対応付けたデータ(θ,θa)をサンプリングし、旋回方向別にサンプリングデータの分布特性を求め、旋回方向別の分布特性の相違度合を表す偏差ΔBに基づいて、偏差ΔBが判定基準値ΔBrefより大きい場合には、ブラシの位置ずれが発生していると判定する。
従って、ブラシの位置ずれを簡単に検出することができる。このため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
また、モータ20の回転角速度を検出できない車両においても実施できるため、例えば、舵角センサ22を備えていない車両等、幅広い車種に適用することができる。また、推定舵角θaの計算にあたっては、直進走行から保舵状態となるまでの期間において推定回転角速度ωaを積算するようにしているため、推定舵角θaの検出値が安定し実舵角θに対してばらつきにくい。
次に、変形例について説明する。上述した2つの実施形態においては、偏差ΔAあるいは偏差ΔBが判定基準値Arefあるいは判定基準値Brefを超えているか否かに基づいて、ブラシの位置ずれの有無を判定しているが、判定基準値を複数設定して、判定レベルに応じてモータ制御部70における処理を変更するようにしてもよい。
図17、図18は、その一例として、第1実施形態における位置ずれ検出ルーチンの変形例および目標電流演算ルーチンを表す。この変形例においては、第1実施形態における位置ずれ検出ルーチンにおけるステップS37に代えて、ステップS371,S372,S373を設け、第1実施形態における目標電流演算ルーチンにおけるステップS14に代えて、ステップS141,S142を設けたものであり、他の処理については第1実施形態と同一である。
位置ずれ検出部80は、ステップS36において、偏差ΔAを計算すると、続くステップS371において、偏差ΔAが第1判定基準値Aref1以下であるか否かを判断する。偏差ΔAが第1判定基準値Aref1以下である場合には、ブラシの位置ずれが発生していないと判断して、ステップS38において、位置ずれ判定フラグFfailを「0」に設定する。一方、偏差ΔAが第1判定基準値Arefを超える場合には、ブラシの位置ずれが発生していると判定するわけであるが、この変形例においては、更に、ステップS372において、偏差ΔAが第1判定基準値Arefより大きな第2判定基準値Aref2以下であるか否かを判断する。そして、偏差ΔAが第2判定基準値Aref2以下である場合には、ステップS39からの処理を行い、偏差ΔAが第2判定基準値Aref2を超える場合には、ステップS373において、位置ずれ判定フラグFfailを「2」に設定する。
位置ずれ判定フラグFfailは、「1」、「2」ともに、ブラシの位置ずれが発生していることを表すが、「2」は「1」に比べて、位置ずれの程度が大きいことを表す。
一方、モータ制御部70の目標電流演算部71は、図18に示すように、ステップS13において、基本目標電流I*0を計算すると、続くステップS141において、位置ずれ判定フラグFfailが「0」であるか「1」であるか「2」であるかを判定する。位置ずれ判定フラグFfailが「0」である場合には、ステップS15において、上限電流Imaxを通常上限電流Imax0に設定し、位置ずれ判定フラグFfailが「1」である場合には、ステップS16において、上限電流Imaxを異常時上限電流Imax1に設定する。
また、位置ずれ判定フラグFfailが「2」である場合には、ステップS142において、操舵アシストを終了する。この場合、目標電流演算部71は、電圧指令値演算部72に対して、操舵アシストの終了を指令する。これにより、電圧指令値演算部72は、電圧指令値演算処理を終了する。
以上説明した変形例によれば、ブラシの位置ずれが検出された状況においては、その程度が小さい場合には、運転者に異常を知らせながら、上限電流Imaxを小さくし操舵アシストを継続できるようにする。従って、運転者は、その間において操舵アシストを得ながら車両を修理工場等にまで運転することができる。また、車両の修理を行わずに車両を使用し続けてブラシの位置ずれが拡大した場合には、操舵アシストを停止すことにより、運転者に対して、確実に修理を促すことができる。
尚、この変形例は、第1実施形態だけでなく、第2実施形態においても適用することができる。
また、別の変形例として、ブラシの位置ずれを検出した後は、位置ずれの程度に関係なく、一定期間の経過後に、操舵アシストを停止するようにしてもよい。例えば、モータ制御部70の目標電流演算部71は、図19に示すような制御量制限マップを記憶している。この制御量制限マップは、カウント値Cに応じてモータ20の上限電流Imaxを設定するものである。カウント値Cは、ブラシの位置ずれが検出されてからの時間経過、あるいは、ブラシの位置ずれが検出されてからの車両の使用量を表す。
この制御量制限マップは、カウント値Cが大きくなるにしたがって、上限電流Imaxを低下させる特性を有する。この例では、カウント値CがCmaxとなる時点で、モータ20の制御量はゼロとなる。
例えば、目標電流演算部71は、タイマー機能を備え、ブラシの位置ずれが検出されてからの時間経過をカウント値Cとしてカウントする。また、例えば、目標電流演算部71は、各種のセンサ信号を入力し、センサ信号に基づいて車両の使用量を検出し、使用量に相当するカウント値Cを設定する。車両の使用量は、例えば、イグニッションスイッチがオンしている積算時間、イグニッションスイッチのオン回数(オフ回数)、車両の走行時間、車両の走行距離、エネルギー補給(給油、充電)回数、エネルギー補給量(給油量、充電量)、操舵回数、モータ20に流れる電流の絶対値の積算値、モータ20に印加する電圧の絶対値の積算値、モータ20に供給する電力の絶対値の積算値、操舵トルクtrの絶対値の積算値などを表す値を用いて検出することができる。
目標電流演算部71は、位置ずれ検出部80(85)から入力した位置ずれ判定フラグFfailが「1」になった場合、制御量制限マップを参照して、カウント値Cから上限電流Imaxを計算する。そして、計算した上限電流Imaxを使ってステップS17、S18の処理を行う。
この変形例によれば、ブラシの位置ずれが検出された後に、操舵アシストを徐々に低下させることができるため、運転者に対して、安全に、確実に、故障を認識させることができ、早期の修理を促すことができる。
また、別の変形例として、ブラシの位置ずれを検出した後は、上限電流Imaxに代えて、他のモータ制御パラメータの値を制限するようにしてもよい。例えば、電圧指令値V*に通常時よりも厳しい上限制限を加えるようにしてもよい。また、電圧指令値V*に低減係数(<1)を乗じて電圧指令値V*を低減補正するようにしてもよい。また、目標電流I*に低減係数(<1)を乗じて目標電流I*を低減補正するようにしてもよい。また、モータ駆動回路40のスイッチング素子Qに出力するPWM制御信号のデューティ比の可変幅を狭くするようにしてもよい。
また、第2実施形態においては、車輪速v1,v2を表す情報を取得して、式(5)を使って実舵角θを計算しているが、実舵角θの計算にあたっては、他の車両状態を表す情報を取得して計算することもできる。例えば、ヨーレートセンサを備えた車両であれば、ヨーレートセンサにより検出したヨーレートδを車速vxで除算した値から実舵角θを計算することもできる。また、後輪駆動車両においては、左右の前輪FW1,FW2の車輪速の差から実舵角θを計算することもできる。
以上、2つの実施形態とその変形例について説明したが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、モータ20の発生するトルクをステアリングシャフト12に付与するコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置について説明したが、モータの発生するトルクをラックバー14に付与するラックアシスト式の電動パワーステアリング装置であってもよい。