JP2012234872A - 圧粉成形体の成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄損の少ない磁心が得られる圧粉成形体を成形可能な圧粉成形体の成形方法を提供する。
【解決手段】柱状の第一パンチ(下パンチ12)と筒状のダイ10とでつくるキャビティに、絶縁層を具える軟磁性粉末と潤滑剤との混合粉末3を充填し、下パンチ12と上パンチ11とで混合粉末3を加圧して、磁心に利用される圧粉成形体100を製造する。下パンチ12は、液媒に固体潤滑剤の粉末を分散させた金型用潤滑剤を充填する液溜め溝24を具える。液溜め溝24から下パンチ12の外周面12oとダイ10の内周面10iとの間に金型用潤滑剤を供給して、下パンチ12とダイ10との相対移動により、ダイ10の内周面10iに金型用潤滑剤を塗布する。混合粉末3は、潤滑剤を0.4質量%〜0.8質量%含む。成形用金型1に金型用潤滑剤を塗布すると共に、潤滑剤を含む混合粉末3を利用することで、金型1と成形体との摺接などによって絶縁層の損傷を防止できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、リアクトルやモータなどの磁心の素材となる圧粉成形体を成形する方法に関するものである。特に、鉄損が小さい磁心が得られる圧粉成形体を成形可能な圧粉成形体の成形方法に関するものである。
鉄やその合金、フェライトといった酸化物などの軟磁性材料からなる磁心と、この磁心に配置されるコイルとを具える磁気部品が種々の分野で利用されている。具体的には、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両に載置される車載部品、種々の電気機器の電源回路部品などに利用されるモータ、トランス、リアクトル、チョークコイルなどが挙げられる。上記磁心には、複数の薄い電磁鋼板を積層させた積層体、上記軟磁性材料からなる粉末(以下、軟磁性粉末と呼ぶ)を金型に充填して成形した後、得られた成形体に歪み除去のための熱処理を施した圧粉磁心がある。
上記磁気部品を交流磁場で使用する場合、磁心には、鉄損(概ね、ヒステリシス損と渦電流損との和)と呼ばれるエネルギー損失が生じる。渦電流損は作動周波数の2乗に比例するため、上記磁気部品が数kHz以上といった高周波数で使用される場合、鉄損が顕著になる。このように作動周波数が高い場合には、鉄や鉄合金などの軟磁性金属粒子の外周に絶縁層を具える被覆粒子(例えば、特許文献1)からなるものを利用すると、渦電流損を効果的に低減でき、結果として鉄損を低減できる。
上記成形体の製造にあたり、原料粉末に固体潤滑剤を混合させたり(類似の技術を開示する文献として特許文献2段落0002、以下、この形態を内部潤滑と呼ぶ)、金型にスプレーや刷毛により潤滑剤を塗布したりして(特許文献2段落0016、以下、この形態を外部潤滑と呼ぶ)、金型と成形体との摩擦を低減して成形性を高めることがなされている。
上記被覆粒子からなる軟磁性粉末を用いて圧粉成形体を成形する場合、このように潤滑剤を利用することで、被覆粒子と金型との摺接や粒子同士の摺接による絶縁層の損傷を抑制して絶縁性に優れる圧粉成形体が得られる。この絶縁性に優れる圧粉成形体を利用することで、圧粉磁心の渦電流損、ひいては鉄損の低減を図ることができる。
特開2006-202956号公報 特開平09-272901号公報
圧粉磁心の鉄損を更に低減することが望まれている。
昨今、磁気部品の作動周波数がますます高くなってきており、渦電流損を更に低減して、鉄損を低減することが望まれている。渦電流損を低減するには、成形時の絶縁層の損傷を更に抑制することが望まれる。しかし、従来の成形方法では、当該損傷を更に抑制することが難しい。
上述した内部潤滑の場合、原料粉末中における固体潤滑剤の混合量を多くすることで、潤滑性を高められ、成形時、上述した被覆粒子の絶縁層の損傷を抑制できる。しかし、原料粉末中における固体潤滑剤の混合量の増加は、得られた圧粉成形体における軟磁性金属粒子の含有割合の低下を招き、ひいては圧粉磁心の磁気特性の低下を招く。
上述した外部潤滑の場合、スプレーや刷毛では成形用金型において成形体が摺接し得る面に均一的に潤滑剤を塗布することが難しい。特に、キャビティの深さが大きくなるほど、均一的な塗布が困難になる。
そこで、本発明の目的は、鉄損の少ない圧粉磁心が得られる圧粉成形体を成形可能な圧粉成形体の成形方法を提供することにある。
本発明者らは、成形時の潤滑性を高めるために、内部潤滑と外部潤滑とを組み合せて利用することを検討した。しかし、上述のようにスプレーなどを利用すると、成形用金型において成形体と摺接し得る面(以下、摺接面と呼ぶ)に均一的に薄く潤滑剤を塗布することが難しい。潤滑剤の厚さ(塗布厚さ)をある程度厚くすると、摺接面に十分に潤滑剤を存在させることができる。しかし、塗布厚さを厚くすると、摺接面の全体的に亘って、或いは部分的に必要以上に潤滑剤が多くなり、得られた圧粉成形体の表面強度の低下を招く恐れがある。また、潤滑剤を厚く塗るために塗布時間が長くなり、作業性の低下を招いたり、潤滑剤の使用量の増大により、圧粉成形体の生産性の低下も招く。
ここで、圧粉成形体の成形にあたり、給粉→成形を連続的に行うことで、圧粉成形体の生産性を高められる。このような連続作業を行う場合、別途用意したスプレーや刷毛などの塗布手段を金型の近傍に配置させておき、成形と給粉との間に塗布作業を行う必要がある。塗布手段が成形用金型と独立した部材であると、成形用金型の動作・給粉手段の動作・塗布手段の動作の制御が煩雑になり易く、作業性の低下を招く。
そこで、本発明者らは、スプレーなどの独立した塗布手段を用いるのではなく、成形用金型自体を潤滑剤の塗布手段として利用することを検討した。その結果、一対の柱状のパンチと、一つの筒状のダイとを具える成形用金型を利用する場合、少なくとも一方のパンチとダイとの相対移動を利用すれば、キャビティを構成するダイの内周面に均一的に潤滑剤を塗布することができる、との知見を得た。かつ、このような特定の手法により外部潤滑を行うことに加えて、原料粉末に特定量の潤滑剤を含有させて圧粉成形体を成形することで、得られた圧粉成形体により、鉄損が小さい圧粉磁心が得られる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明の圧粉成形体の成形方法は、磁心に利用される圧粉成形体を成形する方法に係るものであり、相対的に移動可能な柱状の第一パンチと筒状のダイとでつくられるキャビティに軟磁性粉末を充填し、上記第一パンチと柱状の第二パンチとにより上記キャビティ内の軟磁性粉末を加圧して、圧粉成形体を成形する。この成形方法は、以下の準備工程と、塗布工程と、成形工程とを具える。
準備工程:固体潤滑剤からなる原料用潤滑剤と軟磁性粉末とを混合した混合粉末を用意する工程。軟磁性粉末は、絶縁層を具える軟磁性金属粒子からなるものとする。
塗布工程:上記第一パンチの外周面と上記ダイの内周面との間に金型用潤滑剤を存在させ、この状態でこれら第一パンチとダイとを相対的に移動させて、上記ダイの内周面に上記金型用潤滑剤を塗布する工程。
成形工程:上記第一パンチと上記金型用潤滑剤が塗布された上記ダイとで囲まれたキャビティに上記混合粉末を充填し、上記第一パンチと上記第二パンチとにより当該混合粉末を加圧して圧粉成形体を成形する工程。
そして、本発明成形方法では、上記混合粉末における上記原料用潤滑剤の含有量を0.4質量%以上0.8質量%以下とし、かつ、上記金型用潤滑剤は引火性を有しない液媒に固体潤滑剤からなる粒子を分散させた分散剤とする。
本発明成形方法では、成形用金型に特定の潤滑剤を塗布すると共に、原料粉末(軟磁性粉末)に特定量の固体潤滑剤(原料用潤滑剤)を含有する混合粉末を利用することで、成形体を構成する粒子(軟磁性金属粒子)と成形用金型との間、及び粒子同士の双方に十分な潤滑性を有することができる。そのため、本発明成形方法では、軟磁性金属粒子の外周に形成された絶縁層の損傷を効果的に抑制でき、得られた圧粉成形体により、絶縁性に優れる磁心を製造することができる。絶縁性に優れることで、この磁心は、作動周波数が高い場合でも渦電流損が小さく、鉄損が小さい。また、原料用潤滑剤の含有量が特定の範囲であることで、得られた圧粉成形体の相対密度の低下を抑制できる。そのため、得られた圧粉成形体を素材とする磁心は磁性相の割合が高く、飽和磁束密度が高いといった磁気特性に優れる。
また、本発明成形方法では、第一パンチ及びダイという成形用金型の構成要素を塗布手段とし、両者の相対移動を利用して塗布作業を行うため、スプレーなどの塗布手段を別途用意して成形用金型の近傍に配置する必要がない。かつ、この構成は、成形のための動作と塗布のための動作とが実質的に重複することから成形時の作業効率がよく、圧粉成形体の製造性に優れる上に、上記動作により成形体との摺接面になるダイの内周面に均一的に潤滑剤を塗布し易い。
更に、本発明成形方法では、金型用潤滑剤として上記分散剤を利用することで、固体潤滑剤のみを利用する場合や液体潤滑剤を利用する場合に比較して、ダイの内周面に潤滑剤を均一的に塗布し易い上に、この均一的な塗布状態を維持し易い。例えば、金型用潤滑剤に固体潤滑剤の粉末のみを利用する場合、潤滑剤の排出口が詰まったり、上記分散剤よりも流動性に劣ることで、ダイの内周面に付着させ難かったり、塗布しても重力により落下したりする恐れがある。一方、金型用潤滑剤に液体潤滑剤を利用する場合、例えば、グリースのように粘度が高い液体潤滑剤では、上述した固体潤滑剤のみを利用する場合と同様に排出口が詰まったり、流動性に劣ることで潤滑剤の過不足(塗布斑)を招いたりする恐れがある。上記分散剤を利用する本発明成形方法では、液媒が固体潤滑剤からなる粒子の流動性を高める助剤となり、上述のように塗布作業の容易性、潤滑剤の存在状態の均一性を高められる。特に、本発明成形方法では、液媒を引火性を有しないものとすることで、作業者の安全性を高められる。
本発明の一形態として、上記金型用潤滑剤中の固体潤滑剤の粒子の最大粒径が20μm以下である形態が挙げられる。
第一パンチとダイとの間には、一般に、当該パンチ又はダイの移動方向(ダイの中心軸方向)に沿って、相互に移動可能な程度のクリアランス(代表的には20μm〜50μm程度)を設ける。上記形態では、固体潤滑剤の粒子が20μm以下と微細であることで、当該粒子が第一パンチとダイとの間で実質的に詰まらず容易に移動可能であるため、第一パンチとダイとの相対移動によりダイの内周面に容易に付着することができる。また、上記形態は、固体潤滑剤の粒子が微細であることで、ダイの内周面に、薄く、かつ均一的な潤滑剤層を形成し易い。更に、固体潤滑剤を微細な粒子とすることで、液媒に対する分散性をも高められる。
本発明の一形態として、上記金型用潤滑剤を塗布した後、上記ダイを50℃以上100℃未満に加熱して上記液媒を蒸発させる液媒除去工程を具える形態が挙げられる。
上述のようにダイを特定の温度に加熱することで液媒を蒸発(乾燥)可能であり、上記形態は、固体潤滑剤の粒子を十分に露出させた状態にすることができる。
本発明の一形態として、上記液媒が水である形態が挙げられる。
上記液媒を水とすると、入手が容易である上に、環境保全の面、作業者の安全面の点でも好ましい。また、上記液媒を水とし、かつ上述のようにダイを特定の温度に加熱することで、当該液媒を容易に除去できる。また、ダイを加熱することでキャビティ内に余分な水分が存在し難いため、絶縁層の損傷により鉄などの軟磁性金属材料が露出された場合にも、当該水分により、当該軟磁性金属材料が酸化される恐れが少ない。
本発明の一形態として、上記第一パンチの外周面において上記第二パンチに対向する先端側に、上記金型用潤滑剤を充填する液溜め溝を設けた形態が挙げられる。
上記ダイの内周面に金型用潤滑剤を存在させる手法として、例えば、金型用潤滑剤を貯留するタンクからノズルを介して当該潤滑剤をダイの内周面に噴射塗布する方法が考えられる。しかし、この方法では、上記塗布にあたり、ダイの内部空間近傍にノズルを逐一配置する必要があり、作業性の改善が望まれる。別の方法として、例えば、第一パンチの外周面及びダイの内周面の少なくとも一方に開口し、この開口部に繋がる流通孔を第一パンチの内部やダイの内部に設けて、この流通孔を介して、上記タンク内の金型用潤滑剤を第一パンチの外周面とダイの内周面との間に導入する方法が考えられる。この方法では、金型自体が潤滑剤の供給手段にもなるため、第一パンチの外周面とダイの内周面との間に潤滑剤を容易に供給可能である。この方法において、上記開口部を複数設けることで、ある程度の量の潤滑剤を第一パンチの外周面とダイの内周面との間に供給でき、ダイの内周面の全周に潤滑剤を行き渡らせ易い。しかし、開口部や流通孔が多いと、金型強度の低下を招く。上記形態では、開口部から排出された金型用潤滑剤を液溜め溝に一旦溜めるため、開口部や流通孔を少なくしても、ダイの内周面の全周に潤滑剤を行き渡らせ易い。特に、この液溜め溝を第一パンチの周方向に連続して設けることで、ダイの内周面の全周に亘って潤滑剤を存在させることができる。
上記液溜め溝を具える形態において、上記第一パンチの外周面における上記液溜め溝よりも先端側の領域と上記ダイの内周面との間のクリアランスCtを上記液溜め溝よりも後端側の領域とダイの内周面との間のクリアランスCbと同等以上にする(先端側のクリアランスCt≧後端側のクリアランスCb)形態が挙げられる。
上記形態では、第一パンチの外周面とダイの内周面との間に設けられるクリアランスの大きさを少なくとも等しくする、好ましくは部分的に異ならせる。代表的には、先端側の領域におけるクリアランスを積極的に大きくする。この構成により、クリアランスが大きい先端側の領域では、当該先端側の領域と上記ダイとの間に液溜め溝からの金型用潤滑剤を十分に供給でき、第一パンチとダイとの相対的な移動により、当該金型用潤滑剤をダイの内周面に均一的に塗布することができる。また、クリアランスが小さい後端側の領域では、第一パンチとダイとの相互の位置関係を維持することができる。
本発明の一形態として、上記軟磁性粉末の上記絶縁層が、上記軟磁性金属粒子の表面を覆い、水和水を含有する絶縁材料で構成された内側膜と、上記内側膜の表面を覆い、加水分解・縮重合反応により形成されたシリコーン樹脂膜とを具える形態が挙げられる。
上記形態では、多層構造の絶縁層を具えることで、絶縁性により優れる圧粉成形体が得られる。従って、この圧粉成形体により、渦電流損がより小さい圧粉磁心を得ることができる。特に、上記形態では、上記内側膜に含有される水和水をシリコーン樹脂膜の形成の促進剤として利用することで、上記多層構造の絶縁層を具える軟磁性粉末を効率良く、短時間で製造できる。また、加水分解・縮重合反応により形成されたシリコーン樹脂膜は、変形性及び耐熱性に優れることから、上記形態では、成形時や成形後の熱処理時の双方において絶縁層が損傷し難く、絶縁性に優れる圧粉成形体が得られる。このことからも、上記形態では、渦電流損が小さい圧粉磁心、即ち鉄損が小さい圧粉磁心が得られると期待される。
本発明の一形態として、上記金型用潤滑剤中の固体潤滑剤がエチレンビスステアリン酸アミドを含む形態が挙げられる。
エチレンビスステアリン酸アミドは、潤滑性に優れ、絶縁層の損傷を効果的に防止できる他、金属元素を含まない。そのため、上記形態により得られた圧粉成形体に熱処理を施す場合、熱処理時、金属元素を含む酸化物が形成されず、当該酸化物の生成により熱処理炉を汚染し難い。
本発明圧粉成形体の成形方法により得られた圧粉成形体を利用することで、鉄損が少ない磁心が得られる。
本発明圧粉成形体の成形方法の手順を説明する工程説明図である。 本発明圧粉成形体の成形方法に用いる成形用金型の一部を示し、図2(A)は下パンチ及びダイの一部を拡大して示す断面図、図2(B)は下パンチの一部(先端側)を示す正面図である。 試験例で作製した磁気部品の鉄損を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明成形方法に利用する成形用金型を説明する。
[成形用金型]
本発明成形方法は、代表的には、貫通孔が設けられた筒状のダイと、ダイの貫通孔の各開口部からそれぞれ挿入されて、貫通孔内で対向配置される一対の柱状の第一パンチ・第二パンチとを具える成形用金型を用いる。そして、本発明成形方法では、一方のパンチの一面(他方のパンチとの対向面)とダイの内周面とでつくられる有底筒状の空間をキャビティとし、このキャビティ内に軟磁性粉末を充填した後、両パンチで当該粉末を加圧することで、圧粉成形体を成形する。一対のパンチの少なくとも一方とダイとは、相対的に移動可能である。そして、本発明成形方法は、少なくとも一方のパンチとダイとの間に流動性のある金型用潤滑剤を存在させ、これらパンチとダイとの相対移動により、ダイの内周面に上記潤滑剤を塗布する工程を具えることを特徴の一つとする。
具体的には、本発明成形方法は、例えば、図1に示すように貫通孔10hを具える筒状のダイ10と、貫通孔10hに挿入される及び貫通孔10hから排出される一対の柱状の上パンチ11・下パンチ12とを具える成形用金型1を利用する。図1に示す成形用金型1では、下パンチ12が図示しない本体装置に固定され、ダイ10及び上パンチ11が図示しない移動機構によりそれぞれ上下方向に移動可能な構成である。その他、ダイ10が固定されて両パンチ11,12が移動可能な構成、ダイ10及び両パンチ11,12のいずれもが移動可能な構成とすることができる。成形用金型1の構成材料には、従来、金属材料の圧粉成形体の成形に利用されている適宜な高強度材料(高速度鋼など)が挙げられる。
そして、ここでは、第一パンチ(ここでは下パンチ12)に対してダイ10が相対移動することにより、ダイ10の内周面10iに特定の金型用潤滑剤を塗布する。
下パンチ12は、下パンチ12の外周面12oとダイ10の内周面10iとの間に液媒を含有する金型用潤滑剤を供給可能な潤滑剤供給機構20を具える。潤滑剤供給機構20は、金型用潤滑剤を貯留するタンク21と、下パンチ12の外周面12oに開口し、下パンチ12の内部に設けられてタンク21からの金型用潤滑剤を流通する流通孔22と、下パンチ12の外周面12oにおいて上パンチ11に対向する先端側(ここでは上方側)に設けられ、流通孔22から搬送された金型用潤滑剤を充填する液溜め溝24とを具える。
図1,図2に示す下パンチ12は、その外周面12oにおいて後端側(ここでは下方側)にタンク21から流通孔22に金型用潤滑剤を導入する導入口25が設けられ、上パンチ11との対向面(ここでは上面12u)の近傍に、流通孔22から液溜め溝24に金型用潤滑剤を供給する排出口23が設けられている。
ここでは、流通孔22は、下パンチ12の内部において上下方向に直線状に設けられた本体部と、下パンチ12の先端側及び後端側でそれぞれ本体部に対して直角に屈曲した分岐部とを有し、各分岐部の端部に導入口25・排出口23が設けられている。流通孔22の導入口25とタンク21とは配管29により接続し、配管29と流通孔22との接続箇所には、適宜なシール部材(図示せず)を施して金型用潤滑剤の漏出を防止することが好ましい。また、ここでは、導入口25及び本体部を一つとし、排出口23を複数設けている。流通孔22・導入口25・排出口23の形状、大きさ、個数は、金型用潤滑剤を導入、流通、排出可能な範囲で適宜選択することができる。例えば、流通孔22の本体部は、下パンチの下面から先端側に連続する構成とすると、ドリルなどで容易に形成可能である。このとき、下面の開口部は、適宜、シール部材などで封止するとよい。
下パンチ12の外周面12oにおいて先端側の全周に亘って連続して液溜め溝24が設けられている。この液溜め溝24の底面に複数の排出口23を具える。液溜め溝24の断面形状、正面からみた形状、大きさ(容積)は、適宜選択することができる。ここでは、正面からみた形状(図1、図2(B))及び断面形状(図2(A))のいずれも長方形状としている。例えば、液溜め溝24は、正面からみた形状をジグザグ形状、波形状などとすることができる。上述のように液溜め溝24の断面形状を長方形状とすると、下パンチ12の外周面12oにおける液溜め溝24よりも先端側の領域12t(図2(B))の厚さ(下パンチ12の上面12uから液溜め溝24までの最短距離l(図2(A))が実質的に一定となり、上述のように波形状などとすると、先端側の領域における最短距離が小さい箇所を有することができる。
ここで、図1(B)に示すようにダイ10の上面と下パンチ12の上面12uとが面一となるようにダイ10及び下パンチ12を配置した場合、ダイ10の内周面10iにおいて、下パンチ12の外周面12oの先端側の領域12t(図2(B))と対向する箇所は、後述するようにダイ10を移動させても、液溜め溝24に接触しない。従って、この配置状態において上記ダイ10における先端側の領域12tと対向する箇所は、金型用潤滑剤が塗布され難い箇所となる。しかし、先端側の領域12tが小さい場合、上記金型用潤滑剤が塗布され難い箇所を低減できる。
一方、先端側の領域12tが大きくなるように液溜め溝24の形状や形成位置を設定すると、成形時に圧力が加わり易い下パンチ12の先端側領域の剛性を高められ、寸法精度に優れる圧粉成形体を得易い。
液溜め溝24における下パンチ12の周方向の形成領域は、上述のように全周とすると、ダイ10の内周面10iの全周に金型用潤滑剤を十分に接触できるため、ダイ10の内周面10iの全周に亘って潤滑剤層を容易に設けられる。
液溜め溝24にスポンジなどの多孔質体が収納された構成とすることができる。この場合、(1)下パンチ12とダイ10との相対移動により金型用潤滑剤を塗布する際に上記多孔質体がダイ10の内周面10iを摺接することで当該潤滑剤を均一的に塗布し易い、(2)液溜め溝24に充填された金型用潤滑剤が液溜め溝24の後端側に漏洩し難い、(3)ダイ10の内周面10iに塗布された余剰の金型用潤滑剤を払拭できる、といった効果を奏する。多孔質体の孔の大きさは、金型用潤滑剤に分散される固体潤滑剤の粒子が十分に通過可能な大きさとする。
また、ここでは、下パンチ12の外周面12oにおいて、液溜め溝24の後端側の領域の全周に亘ってシール溝26を設けている。シール溝26には、シール性の高いスポンジなどの多孔質体を配置すると、液溜め溝24から後端側に漏れ出た金型用潤滑剤が更に後端側に落下することを防止できる上に、多孔質体に吸収された当該潤滑剤によりダイ10の移動を良好に行える。金型用潤滑剤の供給圧力などによっては、当該潤滑剤の漏洩の恐れが少ないことが考えられる。この場合、シール溝26は省略してもよい。また、シール溝26に上記多孔質体を配置せず、漏れ出た金型用潤滑剤をそのまま溜める構成としてもよい。シール溝26の断面形状、正面からみた形状、大きさ(容積)、下パンチの周方向における形成領域は、適宜選択することができる。
下パンチ12の外周面12oとダイ10の内周面10iとの間に、ダイ10が移動可能な程度のクリアランスが設けられるように、下パンチ12及びダイ10の大きさを設定する。ここでは、図2(A)に示すようにダイ10の貫通孔10hの寸法W10を貫通孔10hの軸方向に沿って一様とし、かつ、上記クリアランスの大きさが部分的に異なるように下パンチ12の外形を異形状としている。具体的には、図2(B)に示すように液溜め溝24よりも先端側の領域12tの外形寸法をWa、液溜め溝24よりも後端側の領域の外形寸法をWb、シール溝26よりも後端側の領域でシール溝26の近傍の外形寸法をWcとするとき、先端側の領域12tとダイ10の内周面10iとのクリアランスCt=(W10-Wa)/2が、液溜め溝24よりも後端側の領域とダイ10の内周面10iとのクリアランスCb=(W10-Wb)/2よりも大きくなるように(Ct>Cb)、下パンチ12の外形を形成している。即ち、先端側の領域12tの外形寸法Waは、後端側の領域の外形寸法Wbよりも小さく細い(Wb≧Wa)。
液溜め溝24よりも先端側におけるクリアランスCtが後端側におけるクリアランスCbよりも大きいことで、後述するように下パンチ12とダイ10との相対的な移動により、液溜め溝24内の金型用潤滑剤をダイ10の内周面10iに均一的に塗布可能であると共に、下パンチ12とダイ10との相互の位置関係を維持可能である。この形態は、ダイ10の内周面10iのうちキャビティを構成する箇所の全域に金型用潤滑剤を付着した状態を得易い。なお、先端側のクリアランスCtと後端側のクリアランスCbとを少なくとも等しくすることで(Ct=Cb)、先端側の領域12tとダイ10との間に潤滑剤を充填できる。
タンク21内の金型用潤滑剤は、図示しない圧力手段により、下方側の導入口25から流通孔22を介して排出口23に圧送される。
次に、上記成形用金型に塗布する金型用潤滑剤を説明する。
[金型用潤滑剤]
本発明成形方法では、引火性を有しない液媒に固体潤滑剤からなる粒子を分散させた分散剤を金型用潤滑剤に利用することを特徴の一つとする。
(固体潤滑剤)
固体潤滑剤は、種々の材質のものが利用できる。例えば、金属元素を含むもの、代表的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、金属元素を含まないもの、代表的には、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドなどが挙げられる。上記列挙した材質から選択される1種以上の固体潤滑剤を利用することができる。1種のみでも、複数の異なる材質の固体潤滑剤を組み合せて用いてもよい。特に、エチレンビスステアリン酸アミドは、優れた潤滑性を示し、金型との擦れによる軟磁性粉末の絶縁層の損傷を抑制できる。後述するように金型用潤滑剤を塗布した後、適宜加熱して、液媒を蒸発除去する場合には、固体潤滑剤は、当該熱により変質し難いものを利用することが好ましい。本発明成形方法では、上記材質の固体潤滑剤の粉末を用いる。
上記固体潤滑剤の粒子の大きさは、ダイ10と下パンチ12とのクリアランス、特に、ここでは、液溜め溝24よりも先端側におけるクリアランスCtよりも小さいと、液溜め溝24からダイ10の内周面10iに塗布された金型用潤滑剤が後述するダイ10の移動により脱落することを効果的に防止でき、当該潤滑剤が塗布された状態を良好に維持できる。また、液溜め溝24からダイ10の内周面10iに塗布された金型用潤滑剤が液溜め溝24よりも先端側の領域12tとダイ10との間を通過することで、当該潤滑剤が過剰に厚く塗布されることを防止でき、均一的で薄い潤滑剤層を形成することができる。
具体的には、金型用潤滑剤中の固体潤滑剤を構成する粒子の最大粒径は、20μm以下、更に10μm以下が好ましい。特に5μm以下といった微細な粒子とすると、塗布厚さを更に薄くできる上に、金型用潤滑剤の流動性を高められ、より均一的に塗布し易いと期待される。
(液媒)
液媒は、主として、上記金型用潤滑剤における固体潤滑剤の粉末の流動性を高めるための媒体として利用される。特に、本発明成形方法では、液媒は、作業者の安全性を高めるために、引火性を有しないものとする。引火性を有しない液媒として、代表的には、引火点を有しない液体、端的に言うと危険物以外の液体が挙げられる。引火性を有しない液媒であれば、無機物でも有機物でもよい。
上記無機物には、水が挙げられる。水は、用意が簡単、安全、環境負荷が小さい、といった利点を有する。この水のように、潤滑剤として実質的に機能しない液媒を用いる場合、ダイ10の内周面10iに金型用潤滑剤を塗布した後、除去することが望まれる。例えば、下パンチ12を加熱してもよいが、液媒が付着しているダイ10を加熱すると、短時間で、かつ容易に液媒の除去が可能であり、作業性に優れる。この加熱温度は、50℃以上が好ましく、当該温度が高いほど蒸発に要する時間を短縮できて作業性に優れることから、60℃以上がより好ましい。一方、100℃未満とすることで、加熱に伴うエネルギーを低減できる。この加熱温度は、65℃〜75℃程度がより好ましい。ダイ10などの成形用金型1を加熱するには、ダイ10などにカートリッジヒータといった加熱手段を内蔵したり、ダイ10などに温風を吹きつけたりすることが挙げられる。
圧粉成形体の成形を連続して行う場合、連続成形により生じた加工熱により成形用金型1がある程度温められた状態となり得る。例えば、加工熱などにより金型温度が50℃以上となっている場合、液媒を除去するために加熱手段による加熱を成形ごとに行わなくてもよい。即ち、加工熱のみを利用して、液媒の蒸発・除去を行ってもよい。加工熱を利用することで、別途、蒸発・除去のための加熱手段やエネルギーを不要、或いは低減することができる。成形用金型の温度を適宜測定し、測定温度に応じて、加熱手段による加熱の要否を設定することができる。
一方、上記有機物には、揮発性の高いもの(市販の溶剤、例えば、1-ブロモプロパンとn-プロピルブロマイド(99質量%)とを含む溶剤、など)を利用すると、上述のように成形用金型1(ダイ10)を加熱することなく、或いは加熱温度を低くしても容易に除去できる。また、上記有機物として、潤滑油などの潤滑性に優れるものを利用することができる。潤滑性に優れる液媒を利用する場合、上記加熱による液媒除去工程を省略することができる。また、本発明成形方法では、金型用潤滑剤が固体潤滑剤を含有するため、液媒に液体潤滑剤を利用した場合でも、液垂れなどが生じ難いと期待される。
金型用潤滑剤の塗布量は、液媒の材質にもよるが、0.001g/cm2〜0.01g/cm2であれば、潤滑剤として十分に機能することができる。
次に、本発明成形方法に用いる軟磁性粉末を説明する。
[軟磁性粉末]
本発明成形方法では、絶縁層を具える軟磁性金属粒子からなる軟磁性粉末に原料用潤滑剤が特定量混合された混合粉末を用いることを特徴の一つとする。
(軟磁性金属粒子)
軟磁性金属粒子の材質は、鉄を50質量%以上含有するものが好ましい。例えば、純鉄(Fe)、その他、Fe-Si系合金,Fe-Al系合金,Fe-N系合金,Fe-Ni系合金,Fe-C系合金,Fe-B系合金,Fe-Co系合金,Fe-P系合金,Fe-Ni-Co系合金,及びFe-Al-Si系合金から選択される1種の鉄合金が挙げられる。特に、透磁率及び磁束密度の点から、99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。
軟磁性金属粒子は、その平均粒径dが1μm以上70μm以下であることが好ましい。平均粒径dが1μm以上であることで、流動性に優れる上に、本発明成形方法により得られた圧粉成形体により磁心を作製した場合、ヒステリシス損の増加を抑制でき、70μm以下であることで、得られた圧粉成形体により磁心を作製し、この磁心を1kHz以上といった高周波数で使用した場合でも、渦電流損を効果的に低減できる。特に、平均粒径dが50μm以上であると、ヒステリシス損の低減効果を得易い上に、粉末を取り扱い易い。上記平均粒径dは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さい粒子からの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径(質量)をいう。
(絶縁層)
軟磁性金属粒子はその表面に絶縁層を有することで、本発明成形方法により得られた圧粉成形体は絶縁性に優れる。また、この圧粉成形体により磁心を作製した場合、上記絶縁層により各軟磁性金属粒子同士を絶縁することができ、当該粒子同士の接触を防止することで、渦電流損を低減できる。従って、本発明成形方法は、渦電流損、ひいては鉄損が小さい磁心の製造に寄与することができる。
絶縁層の厚さは、10nm以上1μm以下が挙げられる。10nm以上であると、軟磁性金属粒子間の絶縁を確保でき、1μm以下であると、絶縁層の存在により、圧粉成形体中の軟磁性材料の含有割合の低下を抑制できる。即ち、この圧粉成形体により磁心を作製した場合、磁束密度の著しい低下を抑制できる。絶縁層の厚さは、組成分析(透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光法を利用した分析装置:TEM-EDX)により得られる膜組成と、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により得られる元素量とを鑑みて相当厚さを導出し、更に、TEM写真により直接、絶縁層を観察して、先に導出された相当厚さのオーダーが適正な値であることを確認して決定される平均的な厚さとする。
絶縁層の材質は、絶縁性に優れる適宜な絶縁材料が利用できる。例えば、絶縁材料には、Fe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,及び希土類元素(Yを除く)などから選択された1種以上の金属元素の酸化物、窒化物、炭化物などの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物が挙げられる。また、絶縁材料には、上記金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物以外の金属化合物、例えば、リン化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物から選択された1種以上の化合物が挙げられる。その他の絶縁材料には、金属塩化合物、例えば、リン酸金属塩化合物(代表的には、リン酸鉄やリン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなど)、ホウ酸金属塩化合物、ケイ酸金属塩化合物、チタン酸金属塩化合物などが挙げられる。リン酸金属塩化合物は変形性に優れることから、リン酸金属塩化合物による絶縁層を具えると、圧粉成形体の成形時、当該絶縁層は、軟磁性金属粒子の変形に追従して容易に変形して損傷し難く、絶縁層が健全な状態で存在する圧粉成形体を得易い。また、リン酸金属塩化合物による絶縁層は、鉄系の軟磁性金属粒子に対する密着性が高く、当該粒子の表面から脱落し難い。
上記金属元素を含む絶縁材料以外の絶縁材料として、熱可塑性樹脂や非熱可塑性樹脂といった樹脂や高級脂肪酸塩が挙げられる。特に、シリコーン樹脂といったシリコン系有機化合物は耐熱性に優れることから、得られた圧粉成形体に熱処理を施した際にも分解し難い。
絶縁層の形成には、例えば、リン酸塩化成処理といった化成処理を利用することができる。その他、絶縁層の形成には、溶剤の吹きつけや前駆体を用いたゾルゲル処理が利用できる。シリコン系有機化合物により絶縁層を形成する場合、有機溶剤を用いた湿式被覆処理や、ミキサーによる直接被覆処理などを利用することができる。
特に、シリコーン樹脂からなる絶縁層を具える形態とする場合、水和水を含有する絶縁材料で構成された内側膜を軟磁性金属粒子の表面に形成し、この内側膜を水分子の発生源として、加水分解・縮重合反応によりシリコーン樹脂を形成する材料を利用してシリコーン樹脂膜を上記内側膜の上に形成してもよい。この場合、非常に短時間で加水分解・縮重合反応を行えてシリコーン樹脂膜を効率よく形成でき、上記内側膜とシリコーン樹脂膜との多層構造の絶縁層を生産性よく形成できる。また、加水分解・縮重合反応により形成されたシリコーン樹脂膜は、変形性に優れるため、圧粉成形体の成形時、割れや亀裂が生じ難く、内側膜から剥離し難い。更に、このシリコーン樹脂膜は、耐熱性に優れるため、得られた圧粉成形体に熱処理を施した際、熱分解などの損傷を受け難い。従って、この多層構造の絶縁層を具える軟磁性粉末は、絶縁性、耐熱性、変形性、密着性に優れる。
水和水を含有する内側膜は、例えば、上述したリン酸金属塩化合物などにおいて水和水を含むものを材料に用いることで形成することができる。加水分解・縮重合反応によりシリコーン樹脂を形成する樹脂材料は、例えば、Sim(OR)n(m,n:自然数、OR:加水分解基)で表される化合物が挙げられる。加水分解基は、例えば、アルコキシ基やアセトキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などが挙げられる。より具体的な材料は、分子末端がアルコキシリル基(≡Si-OR)で封鎖されたアルコキシオリゴマーが好適に利用可能である。アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシが挙げられる。特に、メトキシは、加水分解後の反応生成物の除去が容易である。これら樹脂材料は、1種でも複数種を組み合わせて用いてもよい。加水分解・縮重合反応によりシリコーン樹脂となる樹脂材料は、市販品、例えば、GE東芝シリコーン株式会社製のTSR116やXC96-B0446などを利用することができる。
上記内側膜と上記シリコーン樹脂膜との二重構造の絶縁層を具える軟磁性粉末は、例えば、軟磁性金属粉末を用意して、当該粉末を構成する粒子の表面に上述したリン酸塩化成処理やゾルゲル処理などにより内側膜を形成した後、この被覆粒子と加水分解・縮重合反応によりシリコーン樹脂となる樹脂材料とを加熱雰囲気(80℃〜150℃、好ましくは100℃以上)で混合することで製造できる。上記加熱雰囲気での混合により、内側膜の構成材料に含まれる水和水が離脱して、上記樹脂材料の加水分解を促進して、シリコーン樹脂を形成することができる。この混合時、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸などの有機酸や、塩酸、リン酸、硝酸、ほう酸、硫酸などの無機酸などを触媒に利用することができる。
(原料用潤滑剤)
軟磁性粉末に混合する原料用潤滑剤も、固体潤滑剤からなる粒子(粉末)とする。液体潤滑剤ではなく、粉末とすることで、軟磁性粉末と混合し易い上に、混合粉末を取り扱い易い。原料用潤滑剤も種々の材質のものを利用でき、上述した金型用潤滑剤で列挙した各種の金属石鹸、各種の脂肪酸アミド、各種の高級脂肪酸アミドなどを利用することができる。その他、六方晶系の結晶構造を有する無機潤滑剤、例えば、窒化ほう素、硫化モリブデン、硫化タングステン、及びグラファイトなどから選択される無機物が挙げられる。この無機物と上述した金属石鹸などとを組み合わせて用いてもよい。原料用潤滑剤の材質と金型用潤滑剤の材質とは同じでもよいし異なっていてもよい。
原料用潤滑剤は、軟磁性粉末に均一的に混合し易く、圧粉成形体の成形時、軟磁性金属粒子間で十分に変形可能であり、得られた圧粉成形体に熱処理を施した際、この加熱により除去し易いものを利用することが好ましい。
そして、本発明成形方法では、軟磁性粉末に対する原料用潤滑剤の含有割合を0.4質量%〜0.8質量%とする(複数の材質の場合は合計量)。原料用潤滑剤の含有量を上記特定の範囲とすることで、後述する試験例に示すように、原料粉末に潤滑剤を含有せず、かつ金型のみに潤滑剤を塗布する場合や原料粉末に潤滑剤を混合し、かつ金型に潤滑剤を塗布しない場合と比較して、潤滑性に優れ、原料粉末に具える絶縁層の損傷を効果的に抑制できる。その結果、得られた圧粉成形体も絶縁層が健全な状態で存在しており、この圧粉成形体により磁心を作製した場合、この磁心は、絶縁性に優れる。従って、本発明成形方法により得られた圧粉成形体を利用することで、鉄損が小さい圧粉磁心が得られる。
次に、図1を参照して本発明成形方法の成形手順を説明する。
[成形手順]
(準備工程)
まず、成形に用いる原料粉末を用意する。具体的には、軟磁性粉末を用意し、当該粉末を構成する粒子の表面に、絶縁材料により絶縁層を形成し、絶縁層を具える被覆粒子からなる原料粉末を用意する。また、所望の組成からなる固体潤滑剤(原料用潤滑剤)の粉末を用意する。そして、原料粉末と原料用潤滑剤の粉末とを混合した混合粉末を作製しておく。この混合には、V型混合機、振動ボールミル、遊星ボールミルなどの混合手段を用いるとよい。
また、金型用潤滑剤を用意する。具体的には、固体潤滑剤の粉末(好ましくは最大径20μm以下)及び引火性を有しない液媒を用意する。そして、液媒にこの固体潤滑剤の粉末を分散させた分散剤を作製しておく。分散性を高めるために適宜な助剤を利用することができる。
(塗布工程)
図1(A)に示すように、作製した分散剤を充填したタンク21と流通孔22の導入口25とを配管29により接続して、金型用潤滑剤を流通孔22に供給可能な状態とする。そして、図1(B)に示すように、ダイ10の一面と下パンチ12の上面12uとがほぼ面一となるようにダイ10を移動させる(ここでは図1(A)に示す状態から下方に移動)。このとき、ダイ10の内周面10iの実質的に全域は、下パンチ12の外周面12oと対向するように配置され、ダイ10の内周面10iと下パンチ12の外周面12oとの間には、下パンチ12の外形に応じた、種々の大きさのクリアランスが設けられる。
上記配置状態で、タンク21内の金型用潤滑剤を流通孔22に供給し、流通孔22から排出口23を介して液溜め溝24内に当該潤滑剤を充填する。ここでは、排出口23を複数具えることから、金型用潤滑剤を短時間で液溜め溝24の全体に均一的に充填させることができる。また、ここでは、液溜め溝24を下パンチ12の全周に亘って形成していることで、ダイ10の内周面10iの全周に亘って液溜め溝24に接する領域、即ち金型用潤滑剤に接する領域が形成される。液溜め溝24よりも後端側の領域に漏れ出た潤滑剤は、シール溝26に溜められ(或いはシール溝26内のスポンジなどに吸着され)、それより下方に流出することを低減できる。
液溜め溝24に金型用潤滑剤が十分に充填されたら、ダイ10を上方に移動させて所定の大きさのキャビティを形成する。このとき、ダイ10は、その内周面10iが液溜め溝24内の金型用潤滑剤に接しながら移動することで、内周面10iに潤滑剤が順次塗布される。ダイ10の内周面10iにおいて液溜め溝24に接した箇所は、その後、下パンチ12において液溜め溝24よりも先端側の領域12tの外周を通過する。このとき、先端側の領域12tとダイ10とのクリアランスCtは、上述のように十分に広く設けられているため(ここでは、金型用潤滑剤中の固体潤滑剤の粒子の最大粒径よりも十分に大きい)、ダイ10の移動により、既に塗布された金型用潤滑剤が下パンチ12と接して脱落することを効果的に防止することができる。
図1(C)に示すようにダイ10の内周面10iと下パンチ12の上面12uとで構成されるキャビティが所定の大きさとなったら、ダイ10の移動を一旦停止する。上記キャビティを構成するダイ10の内周面10iには、金型用潤滑剤が均一的に塗布されている。即ち、均一的な厚さの潤滑剤層2が形成されている。なお、図1,図2では分かり易いように潤滑剤層2を構成する固体潤滑剤の粒子を誇張して示す。
ここで、金型用潤滑剤の液媒が水などの比較的蒸発に時間を要するものである場合、金型を適宜加熱して(好ましくは50℃以上100℃未満)、液媒を蒸発除去することができる。液媒が揮発性の高いものである場合、上記加熱を行わなくてもよいし、加熱温度を低くしてもよい。キャビティ内の蒸気をより確実に外部に放出できるように室温(代表的には20℃程度)の乾燥空気をキャビティ内に供給してもよい。
(成形工程)
図1(D)に示すように潤滑剤層2を具えるキャビティ内に、図示しない給粉装置を用いて用意した混合粉末3を給粉する。そして、図1(E)に示すように上パンチ11を下方に移動してダイ10に挿入して、両パンチ11,12によって混合粉末3を加圧する。このとき、潤滑剤層2(金型用潤滑剤を構成する固体潤滑剤の粒子)によって、混合粉末3とダイ10との摩擦を低減できると共に、混合粉末3内の原料用潤滑剤により混合粉末3とダイ10、混合粉末3と両パンチ11,12、及び混合粉末3内の被覆粒子同士の摩擦を低減して、混合粉末3を良好に圧縮することができる。
成形圧力は、390MPa以上1500MPa以下が挙げられる。390MPa以上とすることで、混合粉末3(被覆粒子)を十分に圧縮することができ、圧粉成形体の相対密度を高められ、1500MPa以下とすることで、混合粉末3内の被覆粒子同士の接触による絶縁層の損傷を抑制できる。500MPa以上1300MPa以下がより好ましい圧力である。
所定の加圧を行ったら、図1(F)に示すように、上パンチ11を上方に、ダイ10を下方に移動して、圧粉成形体100を取り出す。このとき、ダイ10の内周面10iに塗布された金型用潤滑剤、及び混合粉末3に含まれる原料用潤滑剤によって圧粉成形体100とダイ10の内周面10iとの摩擦が低減されるため、圧粉成形体100を容易に取り出すことができる。上記工程により、圧粉成形体100が得られる。なお、上パンチ11の移動とダイ10の移動とはいずれが先でもよいし、同時でもよい。
連続的に成形を行う場合、圧粉成形体100を取り出して図1(B)に示す状態となったら、次の圧粉成形体を成形するにあたり、上述したように金型用潤滑剤の供給→ダイ10の移動→キャビティへの給粉→加圧成形を繰り返し行うとよい。
[効果]
上記構成を具える本発明成形方法を利用することで、成形体と成形用金型との摩擦、及び原料粉末を構成する粒子同士の摩擦を効果的に抑制できる。そのため、上記摩擦により、成形体を構成する粒子に具える絶縁層が損傷することを効果的に抑制できる。また、原料粉末の流動性を高められることで、相対密度が高い圧粉成形体や寸法精度に優れる圧粉成形体を得易い。従って、得られた圧粉成形体に熱処理を施して圧粉磁心を作製した場合、得られた圧粉磁心は、渦電流損が効果的に低減されており、鉄損が小さい。即ち、本発明成形方法によれば、鉄損が小さい圧粉磁心が得られる圧粉成形体を提供することができる。
なお、得られた圧粉成形体により磁心を作製する場合、圧粉成形体に熱処理を施して、成形時に導入された歪みを除去すると、ヒステリシス損の低減を図ることができる。この熱処理の温度は、高いほどヒステリシス損を低減できるが、高過ぎると絶縁層の構成材料が熱分解されることがあるため、当該構成材料の熱分解温度未満の範囲で選択する。代表的には、上記加熱温度は、400℃〜700℃ぐらい、保持時間は、30分以上60分以下が挙げられる。絶縁層がリン酸鉄やリン酸亜鉛などの非晶質リン酸塩からなる場合、上記加熱温度は500℃程度までが好ましく、金属酸化物やシリコーン樹脂などの耐熱性に優れる絶縁材料からなる場合、550℃以上、更に600℃以上、特に650℃以上に加熱温度を高められる。加熱温度及び保持時間は、絶縁層の構成材料に応じて適宜選択することができる。
≪変形例1≫
上述した実施形態では、貫通孔を有していない中実の圧粉成形体を成形する構成を説明した。その他、本発明成形方法は、貫通孔を有する圧粉成形体(代表的にはリング状体)の成形にも適用することができる。この場合、ダイと、下パンチと、上パンチと、下パンチに対して相対的に移動可能に配置されるコアロッドとを具える成形用金型を利用する。この形態では、ダイの内周面とコアロッドの外周面との双方が成形体との摺接面になり得る。そこで、ダイの内周面とコアロッドの外周面との双方に金型用潤滑剤を塗布できるように、下パンチに液溜め溝を設ける。例えば、下パンチを、コアロッドが挿通される貫通孔を有する筒状体とする場合、この下パンチの外周面及び内周面に、上述した実施形態と同様に液溜め溝を設けるとよい。この構成により、上述した実施形態と同様に下パンチとダイとの相互移動により、下パンチの外周面に設けられた液溜め溝内の金型用潤滑剤をダイの内周面に塗布することができ、かつ下パンチとコアロッドとの相互移動により、下パンチの内周面に設けられた液溜め溝内の金型用潤滑剤をコアロッドの外周面に塗布することができる。
≪変形例2≫
上述した実施形態では、キャビティを形成した後、混合粉末3を供給する構成を説明した。この構成に代えて、例えば、図1(B)に示す状態において、下パンチ12の上面12uを覆うように給粉装置を配置し、ダイ10の移動により給粉装置も上方に移動する構成とすることができる。この場合、ダイ10の上方への移動に伴って、下パンチ12の上面12uとダイ10の内周面10iとで囲まれる空間がつくられていき、この空間に順次、給粉装置からの混合粉末3が供給される。かつ、ダイ10の上方への移動により、ダイ10の内周面10iには、金型用潤滑剤が塗布されていく。即ち、この構成では、ダイ10の移動により、金型用潤滑剤の塗布と、当該潤滑剤が塗布された空間への混合粉末3の供給とを同時に行うことができる。図1(D)に示すように、下パンチ12の上面12uとダイ10の内周面10iとがつくる空間が所定のキャビティの大きさになったら、上パンチ11で押圧できるように給粉装置を移動するとよい。
[試験例]
種々の粉末及び成形方法を利用して、圧粉成形体を作製し、得られた圧粉成形体に熱処理を施して圧粉磁心を作製し、得られた圧粉磁心を具える磁気部品の損失を調べた。
(試料No.1:本発明法)
試料No.1は、軟磁性金属粉末に固体潤滑剤からなる粉末を混合した混合粉末を利用すると共に、図1に示す成形用金型(下パンチに潤滑剤供給機構を具えるもの)を利用して、ダイの内周面に金型用潤滑剤を塗布した後、成形を行って圧粉成形体を作製した。
この試験では、軟磁性金属粉末として、水アトマイズ法により製造された純鉄粉(平均粒径d:50μm)を用意した。この純鉄粉に、化成処理によりリン酸金属塩化合物からなる絶縁層(厚さ:20nm以下程度)を形成した。この絶縁層を具える被覆粒子からなる粉末に、原料用潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛の粉末を混合した。原料用潤滑剤は、混合粉末を100質量%とするとき、0.6質量%となるように混合量を調整した。
固体潤滑剤としてエチレンビスステアリン酸アミドの粉末(最大粒径:18.5μm、平均粒径:4.2μm)を用意し、この粉末を液媒:水に分散させて作製した分散剤を金型用潤滑剤に利用した。この固体潤滑剤の粉末は、分散剤を100質量%とするとき、38質量%となるように混合量を調整した。金型用潤滑剤の塗布量は、0.0018g/cm2とした。
そして、試料No.1では、圧粉成形体の成形にあたり、上述のように一方のパンチ(上述の実施形態では下パンチ)とダイとの相対移動により、ダイの内周面に金型用潤滑剤を塗布した後(ここでは、金型用潤滑剤の供給圧力:0.02MPa)、金型を70℃に加熱して液媒を十分に蒸発・除去してから、上記混合粉末をキャビティに充填して、成形圧力:730MPaで加圧し、直方体状の圧粉成形体を得た。なお、下パンチにおいて液溜め溝よりも先端側の領域とダイの内周面とのクリアランスCtは60μmとし、上記液溜め溝よりも後端側の領域とダイの内周面とのクリアランスCb:50μmよりも大きくした。
(試料No.100:原料用潤滑剤のみ有り)
試料No.100は、試料No.1と同様の混合粉末、即ち、リン酸金属塩化合物からなる絶縁層を具える軟磁性金属粒子からなる粉末に、固体潤滑剤(ステアリン酸亜鉛を0.6質量%含有)を混合した粉末を用い、成形用金型には金型用潤滑剤を塗布せず成形を行った。金型用潤滑剤を用いていない点を除いて、試料No.100は、上記試料No.1と同様の条件で、同様の圧粉成形体を作製した。
(試料No.200:金型用潤滑のみ)
試料No.100は、試料No.1で用いたリン酸金属塩化合物からなる絶縁層を具える軟磁性金属粒子からなる粉末、即ち、固体潤滑剤を含有していない粉末を用い、ダイの内周面に試料No.1と同様にして同様の潤滑剤を塗布した後、成形を行った。原料粉末に固体潤滑剤を含んでいない点を除いて、試料No.200は、上記試料No.1と同様の条件で、同様の圧粉成形体を作製した。
各試料の圧粉成形体に熱処理(400℃×30分、窒素雰囲気)を施して、熱処理材を得た。ここでは、試料ごとに熱処理材を複数用意して、環状に組み合せて試験用磁心を作製し、この試験用磁心に巻線で構成したコイル(いずれの試料も同様の仕様のもの)を配置した測定部材(磁気部品に相当)を作製した。各測定部材に対して、AC-BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:1kG(=0.1T)、測定周波数:5kHzにおけるヒステリシス損Wh(W)、渦電流損We(W)を測定し、ヒステリシス損Wh+渦電流損Weにより鉄損W1/5k(W)を算出した。その結果を表1及び図3に示す。
Figure 2012234872
表1及び図3に示すように、絶縁層を具える軟磁性粉末に特定量の固体潤滑剤が混合された混合粉末を利用し、かつ、特定の金型用潤滑剤を一方のパンチとダイとの相対移動により塗布することで、損失が小さい磁心が得られる圧粉成形体を成形可能であることが分かる。より具体的には、上記特定の混合粉末と、特定の手法により潤滑剤を成形用金型に塗布する本発明成形方法により得られた圧粉成形体を用いて磁心を作製した場合、混合粉末のみを用いた場合や金型にのみ潤滑剤を塗布した場合と比較して、この磁心は、渦電流損が非常に小さく、その結果、鉄損が小さいことが分かる。特に、この試験では、試料No.1の圧粉成形体を利用した場合、試料No.100,200の圧粉成形体を利用した場合と比較して、磁心の鉄損を半分程度、或いはそれ以下に低減できることが分かる。
上記試験結果から、絶縁層を具える軟磁性粉末に特定量の固体潤滑剤が混合された混合粉末を利用し、かつ、特定の金型用潤滑剤を一方のパンチとダイとの相対移動により塗布して圧粉成形体を成形することで、鉄損が小さい磁心が得られると言える。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、軟磁性金属粒子の材質・粒径、絶縁層の材質・厚さ、金型用潤滑剤中の固体潤滑剤の材質・大きさ、液媒の材質、液媒に対する固体潤滑剤の割合、原料用潤滑剤の材質・含有量、パンチ及びダイでつくられるキャビティの形状、パンチの形状などを適宜変更することができる。
本発明の圧粉成形体の成形方法は、圧粉磁心、特に、高周波特性に優れる圧粉磁心の素材に適した圧粉成形体の製造に好適に利用することができる。
1 成形用金型 2 潤滑剤層 3 混合粉末 100 圧粉成形体
10 ダイ 10h 貫通孔 10i ダイの内周面
11 上パンチ
12 下パンチ 12o 下パンチの外周面 12u 上面 12t 先端側の領域
20 潤滑剤供給機構 21 タンク 22 流通孔 23 排出口 24 液溜め溝
25 導入口 26 シール溝 29 配管

Claims (7)

  1. 相対的に移動可能な柱状の第一パンチと筒状のダイとでつくられるキャビティに軟磁性粉末を充填し、前記第一パンチと柱状の第二パンチとにより前記キャビティ内の軟磁性粉末を加圧して、磁心に利用される圧粉成形体を成形する圧粉成形体の成形方法であって、
    絶縁層を具える軟磁性金属粒子からなる軟磁性粉末と、固体潤滑剤からなる原料用潤滑剤とを混合した混合粉末を用意する準備工程と、
    前記第一パンチの外周面と前記ダイの内周面との間に金型用潤滑剤を存在させ、この状態でこれら第一パンチとダイとを相対的に移動させて、前記ダイの内周面に前記金型用潤滑剤を塗布する塗布工程と、
    前記第一パンチと前記金型用潤滑剤が塗布された前記ダイとで囲まれたキャビティに、前記混合粉末を充填し、前記第一パンチと前記第二パンチとにより当該混合粉末を加圧して圧粉成形体を成形する成形工程とを具え、
    前記混合粉末における前記原料用潤滑剤の含有量が0.4質量%以上0.8質量%以下であり、
    前記金型用潤滑剤は、引火性を有しない液媒に固体潤滑剤からなる粒子を分散させた分散剤であることを特徴とする圧粉成形体の成形方法。
  2. 前記金型用潤滑剤中の固体潤滑剤の粒子の最大粒径が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉成形体の成形方法。
  3. 前記金型用潤滑剤を塗布した後、前記ダイを50℃以上100℃未満に加熱して前記液媒を蒸発させる液媒除去工程を具えることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉成形体の成形方法。
  4. 前記液媒は、水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉成形体の成形方法。
  5. 前記第一パンチの外周面において前記第二パンチに対向する先端側に、前記金型用潤滑剤を充填する液溜め溝を具えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉成形体の成形方法。
  6. 前記第一パンチの外周面における前記液溜め溝よりも先端側の領域と前記ダイの内周面との間のクリアランスCtを前記液溜め溝よりも後端側の領域とダイの内周面との間のクリアランスCbと同等以上にすることを特徴とする請求項5に記載の圧粉成形体の成形方法。
  7. 前記金型用潤滑剤中の固体潤滑剤は、エチレンビスステアリン酸アミドを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧粉成形体の成形方法。
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