本願の発明の実施形態を説明する。
《発明の適用アプリケーション》
以下に説明する実施形態では、本願の発明を、移動体、例えばプラグインハイブリッド自動車の電源であるバッテリ装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
《バッテリ装置の概略構成》
バッテリ装置は、複数の蓄電器(蓄電池又は二次電池)を備え、複数の蓄電器の電気化学的作用によって電気エネルギーを蓄積(充電)及び放出(放電)する蓄電装置である。複数の蓄電器は、バッテリ装置に要求される出力電圧,蓄電容量などの仕様に応じて、電気的に直列或いは並列若しくは直並列に接続される。
《アプリケーションにおけるバッテリ装置の電気エネルギーの流れ》
バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、電動力(回転動力)によってプラグインハイブリッド自動車を駆動する場合(力行時)、直流電力として放電される。バッテリ装置から放電された直流電力は、インバータ装置(電力変換装置)によって交流電力に変換された後、モータとして機能してプラグインハイブリッド自動車を駆動するための電動力を発生するモータジェネレータ(回転電機)に供給される。また、バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、内燃機関であるエンジンを始動する場合、ラジオなどのカーオーディオ,カーナビゲーション装置,ライトなどの電装品を駆動する場合、直流電力として放電されることもある。この場合、バッテリ装置から放電された直流電力は、電力変換装置によって、交流電力或いは電圧が制御(昇降圧)された所定の直流電力に変換された後、各電気負荷や他の蓄電装置に供給される。
バッテリ装置に充電される電気エネルギーは、プラグインハイブリッド自動車の減速時或いは制動時の回生エネルギーから得られた交流電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から出力された交流電力がインバータ装置によって直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ装置に供給されることにより得られる。回生エネルギーから得られる交流電力は、車両側から供給された回転動力によってモータジェネレータが発電機として駆動されることにより、その発電機から出力される。また、バッテリ装置に充電される電気エネルギーは、家庭電源である商用電源から取り込んだ単相交流電力,電気ステーションや商業施設に設けられた電気スタンドを介して購入した単相或いは三相交流電力が、プラグインハイブリッド自動車に搭載された充電器によって電圧が制御された所定の直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ装置に供給されることにより得られる。
《発明の他の適用アプリケーション》
以下に説明する実施形態の構成は、商用電源や電気スタンドなどの外部電源から供給された交流電力をバッテリ装置に充電するための充電器を持たない(車両の減速時の回生によって得られた電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から得られた電力により充電する)ハイブリッド自動車,車両の駆動源として内燃機関を持たない(電動力を発生するモータを車両の唯一の駆動源とする)純粋な電気自動車などの乗用車,電動バイク,電動自転車などの二輪車,ハイブリッド電車などの鉄道車両,ハイブリッドトラックなどの貨物自動車,ハイブリッドバスなどの乗合自動車,建設機械やフォークリフトトラックなどの産業用車両,電動福祉機器など、他の移動体の電源を構成するバッテリ装置にも適用できる。
それらの移動体には、バッテリ装置を電源として電動力を発生するモータ(移動体側から動力の供給を受けて電力を発生する場合にはジェネレータを兼ねる)と、バッテリ装置とモータとの間の電力を制御するインバータ装置とが搭載されている。また、原動機によって駆動されて電力を発生する発電機を備え、バッテリ装置を充電する場合もある。
また、以下に説明する実施形態の構成は、通信設備などの無停電用電源(バックアップ用電源)として設置される定置用バッテリ装置にも適用できる。
さらに、以下に説明する実施形態の構成は、需要家に配置され、夜間電力を貯蔵し、この貯蔵された電力を昼間に放出して電力負荷の平準化を図る電力貯蔵システムや、風力発電システムや太陽光発電システムなどと共に発電ファームに設置され、発電システムの出力変動の抑制を図る電力貯蔵システムなどとして設置される定置用バッテリ装置にも適用できる。
《バッテリ装置に適用される蓄電器》
バッテリ装置を構成する蓄電器としてはリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
《蓄電器の概略構成》
リチウムイオン二次電池(セル)は、金属ケース(電槽)内に電解液(非水系溶媒)と共に収納された発電(蓄電)要素体の電気化学的反応によって電気エネルギーを充放電する蓄電器である。リチウムイオン二次電池の形状としては円筒型,角型,ラミネートなどがある。以下に説明する実施形態では、角型リチウムイオン二次電池を用いた場合を例に挙げて説明する。
《適用可能な他の蓄電器》
蓄電器としては、鉛電池,ニッケル水素電池などの他の二次電池(蓄電池)や、キャパシタ、例えば電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどを用いてもよい。
《発明の適用アプリケーションにおける代表的な技術課題》
プラグインハイブリッド自動車は、基本的にはEVモード、すなわちバッテリ装置に蓄電された電気エネルギーを使って駆動されるモータのみを動力源として走行し、バッテリ装置の蓄電容量が下限値を下回ろうとすると、HEVモード、すなわち内燃機関であるエンジンとモータとを動力源として走行すると共に、エンジンの動力により発電機を駆動してバッテリ装置を充電する。このように、プラグインハイブリッド自動車ではEVモードを有することから、プラグインハイブリッド自動車に搭載されるバッテリ装置には、ハイブリッド自動車に搭載されるバッテリ装置よりも大きい蓄電容量が要求される。バッテリ装置の蓄電容量を大きくするためには、蓄電容量の大きい蓄電器を用いてバッテリ装置を構成すればよい。ここでは、蓄電器として、高容量角型リチウムイオン二次電池を用いている。一方、リチウムイオン二次電池には高い安全性が要求されている。リチウムイオン二次電池において高い安全性を確保するためには、リチウムイオン二次電池の異常を検知することが重要である。
《技術課題を解決する代表的な手段の概略》
角型リチウムイオン二次電池は、電槽(外槽)が圧力容器により構成されている円筒型リチウムイオン二次電池とは異なり、電槽内の圧力が増大すると電槽が膨らむ。この現象は角型リチウムイオン二次電池の充電時の他、例えば電極間の内部短絡,外部短絡,過充電などの異常時にも見られる。しかも、電槽内の圧力の増大による膨らみは、角型リチウムイオン二次電池に生じる事象によって異なる。このようなことから、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみの要因である内圧を検知すれば、角型リチウムイオン二次電池の状態(異常)を検出することができる。角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみの要因である内圧は、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみ(膨張力である応力)によって生じる歪み(変形)に比例する関係にある。
そこで、以下に説明する実施形態では、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみ(膨張力である応力)によって生じる歪み(変形)を測定することができる素子、例えば歪みゲージ(センサ)を、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の表面に取り付け、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを測定し、この測定結果から、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみの要因である内圧(電槽内部の圧力)の増加を検知し、この検知結果に基づいて、角型リチウムイオン二次電池の異常を検出している。
《解決手段による代表的な作用効果》
このように、以下に説明する実施形態によれば、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを測定することによって、角型リチウムイオン二次電池の異常を検出しているので、角型リチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。従って、以下に説明する実施形態によれば、信頼性の高いバッテリ装置を提供することができる。
《他の技術課題、その解決手段及び作用効果》
歪みゲージは、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化する部位の表面に取り付けることが好ましい。これは、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを直接、かつ感度よく測定できるためである。しかし、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化する部位の表面に歪みゲージを取り付けると、複数の角型リチウムイオン二次電池を組んで構成した電池モジュールの設計に大きな制約を与える場合がある。例えば角型リチウムイオン二次電池の実装密度を上げて電池モジュールの小型化を図りたいとき、角型リチウムイオン二次電池に対する歪みゲージの取り付けが要因となって、うまく小型化を図れないなど、設計自由度が低下する場合がある。このようなことから、歪みゲージを角型リチウムイオン二次電池に取り付けるにあたっては、電池モジュールの構成を考慮して取り付けることが望ましい。
また、電池モジュールを構成する複数の角型リチウムイオン二次電池のそれぞれの異常検出精度を向上させるためには、各角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみの要因である内圧を正確に検知することが好ましい。このためには、複数の角型リチウムイオン二次電池のそれぞれに歪みゲージを取り付けることが考えられる。しかし、その場合、歪みゲージが角型リチウムイオン二次電池の数だけ必要になり、特に角型リチウムイオン二次電池を100個程度或いはそれ以上用いたバッテリ装置では大幅な価格増加が考えられる。また、歪みゲージから制御装置に延びる配線の数が増加したり、配線の引き回しが複雑になったりすることが考えられる。このようなことから、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨れによって生じる歪みを歪みゲージによって測定するにあたっては、角型リチウムイオン二次電池の数よりも少ない歪みゲージを用いて、各角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨れによって生じる歪みを測定できることが好ましい。
そこで、以下に説明する実施形態では、1個の歪みゲージを、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化である膨らみが生じる部位とは異なる部位、例えば角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化である膨らみによって生じる歪みを捉えることができる、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化である膨らみが生じる部位とは異なる電槽の他の部位の表面、或いは複数の角型リチウムイオン二次電池を固縛する固縛部材の、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを捉えることができる部位の表面に取り付けている。電槽の膨らみが生じる部位とは異なる他の部位に取り付けた歪みゲージによって歪みを測定するにあたっては、測定部位に生じる歪みのうち、歪みを大きく増幅させることができる方向に生じる歪みを測定する。歪みゲージを固縛部材に取り付けるにあたっては、固縛部材の、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを増幅させることができる部位の表面、或いは固縛部材の歪みゲージ取付部位に、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを増幅させる増幅機構を設け、その増幅機構の近傍の表面に歪みゲージを取り付けている。
このように、以下に説明する実施形態によれば、角型リチウムイオン二次電池を構成する電槽の形状変化である膨らみが生じる部位とは異なる電槽の他の部位の表面に、その表面に生じる歪みを大きく増幅できる方向の歪みを測定するように、或いは固縛部材の、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを増幅させることができる部位の表面に、若しくは固縛部材に設けられた、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを増幅させる増幅機構の近傍の表面に一つの歪みゲージを取り付けるので、電池モジュールの設計や組み立てなどに与える影響の小さい部位において、角型リチウムイオン二次電池の数よりも少ない数の歪みゲージによって、角型リチウムイオン二次電池の形状変化である膨らみによって生じる歪みを感度よく測定することができる。従って、以下に説明する実施形態によれば、歪みゲージの数を角型リチウムイオン二次電池の数よりも少なくできる分、バッテリ装置の価格を低くできる。また、以下に説明する実施形態によれば、歪みゲージから制御装置に延びる配線の本数を少なくでき、しかも、配線の引き回しも容易にできる。さらには、以下に説明する実施形態によれば、歪みゲージの取り付けが電池モジュールの設計や組み立てなどに与える影響を小さく抑えることができる。さらにまた、歪みゲージの数が角型リチウムイオン二次電池の数より少なくても、電池モジュールを構成する複数の角型リチウムイオン二次電池のそれぞれの異常を確実に検出することができる。
尚、この他にも解決すべき課題及びその解決手段はある。それらについては、これ以降の各実施形態の中において、課題の裏返しとなる効果に置き換え、その解決手段と共に説明する。
以下、図面を用いて、各実施形態を具体的に説明する。
〔実施形態1〕
第1実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。
まず、図1を用いて、バッテリ装置100を含むプラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成について説明する。
図1は、プラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成及びその一部を構成する電動駆動装置の各コンポーネントの電気的な接続構成を示す。
尚、図1において、太い実線は強電系を示し、細い実線は弱電系を示す。
《プラグインハイブリッド自動車に適用される駆動方式》
プラグインハイブリッド自動車(以下、「PHEV」と記述する)1はパラレルハイブリッド方式の駆動システムを備えている。
パラレルハイブリッド方式の駆動システムは、内燃機関であるエンジン4とモータジェネレータ200とを駆動輪2に対してエネルギーの流れ的に並列に配置(構造的には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4とモータジェネレータ200とを機械的に直列に接続)し、エンジン4の回転動力による駆動輪2の駆動、モータジェネレータ200の回転動力による駆動輪2の駆動、及びエンジン4とモータジェネレータ200の両方の回転動力による駆動輪2の駆動ができるように構成されている。すなわちパラレルハイブリッド方式の駆動システムは、エンジン4を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源として用いられるエンジン駆動装置と、モータジェネレータ200を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源及びPHEV1の電力発生源として用いられる電動駆動装置とを備えている。
ハイブリッド方式としては、内燃機関であるエンジンの回転動力を用いて発電機を駆動し、この駆動によって発生した電力を用いてモータジェネレータを駆動し、この駆動によって発生した回転動力を用いて駆動輪を駆動する、いわゆるエンジンから駆動輪までのエネルギーの流れがシリーズであるシリーズハイブリッド方式がある。また、ハイブリッド方式としては、上記パラレルハイブリッド方式と上記シリーズハイブリッド方式とを組み合わせたシリーズ・パラレルハイブリッド方式(エンジンの回転動力の一部を発電用モータジェネレータに分配して発電させ、これにより得られた電力により駆動用モータジェネレータを駆動できるように、遊星歯車機構などの動力伝達機構を用いてエンジンと二つのモータジェネレータとを機械的に接続した方式)がある。
本実施形態では、パラレルハイブリッド方式の駆動システムを例に挙げて説明するが、以下において説明する本実施形態のバッテリ装置100は、前述した他のハイブリッド方式の駆動システムのバッテリ装置に適用しても構わない。
《駆動システムの構成》
図示省略した車体のフロント部或いはリア部には車軸3が回転可能に軸支されている。車軸3の両端には一対の駆動輪2が設けられている。図示省略したが、車体のリア部或いはフロント部には、両端に一対の従動輪が設けられた車軸が回転可能に軸支されている。PHEV1では、駆動輪2を前輪とし、従動輪を後輪とした前輪駆動方式を採用している。駆動方式としては後輪駆動方式や4輪駆動方式(前後輪の一方をエンジン駆動装置により駆動し、他方を電動駆動装置により駆動する方式)を採用しても構わない。
車軸3の中央部にはデファレンシャルギア(以下、「DEF」と記述する)7が設けられている。車軸3はDEF7の出力側に機械的に接続されている。DEF7の入力側には変速機6の出力軸が機械的に接続されている。DEF7は、変速機6によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の車軸3に分配する差動式動力分配機構である。変速機6の入力側にはモータジェネレータ200の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ200の入力側には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4の出力側が機械的に接続されている。クラッチ5は、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達する場合には締結状態になり、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達しない場合には切離し状態になるように制御される。
モータジェネレータ200及びクラッチ5は、変速機6の筐体の内部に収納されている。
《モータジェネレータの構成》
モータジェネレータ200は、電機子巻線211を備えた電機子(本実施形態では固定子)210と、電機子210に空隙を介して対向配置され、永久磁石221を備えた界磁(本実施形態では回転子)220を有する回転電機であり、PHEV1の力行時にはモータとして、PHEV1の回生時や発電が必要な時にはジェネレータとして、それぞれ機能する。
本実施形態では、モータジェネレータ200として、三相交流同期機(永久磁石界磁型)を用いた場合を例に挙げて説明するが、他の三相交流同期機(巻線界磁型)や三相交流誘導機(界磁鉄心に短絡された導体バーが装着された界磁を用いたもの)を用いても構わない。
《モータジェネレータの動作》
モータジェネレータ200がモータとして機能する場合、すなわちPHEV1の力行時やエンジン4を始動する時など、回転動力が必要な運転モードにある場合には、バッテリ装置100に蓄積された電気エネルギーがインバータ装置300を介して電機子巻線211に供給される。これにより、モータジェネレータ200は電機子210と界磁220との間の磁気的作用により回転動力(機械エネルギー)を発生し、その回転動力を出力する。モータジェネレータ200から出力された回転動力は、PHEV1の力行時には、変速機6及びDEF7を介して車軸3に伝達され、駆動輪2を駆動し、エンジン4の始動時には、クラッチ5を介してエンジン4に伝達され、エンジン4を駆動する。
モータジェネレータ200がジェネレータとして機能する場合、すなわちPHEV1の減速時や制動時などの回生時及びPHEV1の走行中にバッテリ装置100の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードにある場合には、駆動輪2或いはエンジン4から伝達された機械エネルギー(回転動力)がモータジェネレータ200に伝達され、モータジェネレータ200が駆動される。このように、モータジェネレータ200が駆動されると、電機子巻線211には電機子210と界磁220との間の磁気的作用により電圧が誘起される。これにより、モータジェネレータ200は電力を発生し、その電力を出力する。モータジェネレータ200から出力された電力はインバータ装置300を介してバッテリ装置100に供給される。これにより、バッテリ装置100は充電される。
《インバータ装置の構成》
モータジェネレータ200の駆動は、電機子210とバッテリ装置100との間の電力がインバータ装置300によって制御されることにより制御される。すなわちインバータ装置300はモータジェネレータ200の制御装置である。
インバータ装置300は、スイッチング半導体素子のスイッチング動作によって電力を直流から交流に、交流から直流に変換する電力変換装置であり、パワーモジュール310,パワーモジュール310に実装されたスイッチング半導体素子を駆動する駆動回路330,パワーモジュール310の直流側に電気的に並列に接続され、直流電圧を平滑する電解コンデンサ320、及びパワーモジュール310のスイッチング半導体素子のスイッチング指令を生成し、このスイッチング指令に対応する信号を駆動回路330に出力するモータ制御装置340を備えている。
パワーモジュール310は、二つの(上アーム及び下アームの)スイッチング半導体素子を電気的に直列に接続し直列回路(一相分のアーム)が三相分、電気的に並列に接続(三相ブリッジ接続)されて電力変換回路が構成されるように、六つのスイッチング半導体素子を基板上に実装し、アルミワイヤなどの接続導体によって電気的に接続した構造体である。
スイッチング半導体素子としては金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)或いは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。ここで、電力変換回路をMOSFETによって構成する場合、ドレイン電極とソース電極との間には寄生ダイオードが存在するので、別途、それらの間にダイオード素子を実装する必要がない。一方、電力変換回路をIGBTによって構成する場合、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはダイオード素子が存在していないので、別途、それらの間にダイオード素子を電気的に逆並列に接続する必要がある。
各上アームの下アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、コレクタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の正極側に電気的に接続されている。各下アームの上アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、エミッタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の負極側に電気的に接続されている。各アームの中点、すなわち上アームの下アーム接続側(IGBTの場合、上アームのエミッタ電極側)と下アームの上アーム接続側(IGBTの場合、下アームのコレクタ電極側)との接続点はパワーモジュール310の交流側から外部に導出され、電機子巻線211の対応する相の巻線に電気的に接続されている。
電解コンデンサ320は、スイッチング半導体素子の高速スイッチング動作に起因して生じる電圧変動を抑制する平滑用コンデンサである。平滑用コンデンサとしては電解コンデンサ320の代わりにフィルムコンデンサを用いてもよい。
モータ制御装置340は、車両全体の制御を司る車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路330に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310とは熱的に隔絶されたインバータ筐体内に配置されている。
駆動回路330は、モータ制御装置340から出力されたスイッチング指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成し、六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310の近傍、例えばパワーモジュール310のケース上部に配置されている。
《車両制御装置の機能》
車両制御装置8は、運転者からのトルク要求,車両の速度など、車両の運転状態を示す複数の状態パラメータに基づいて、モータ制御装置340に対するモータトルク指令信号及びエンジン制御装置(図示省略)に対するエンジントルク指令信号をそれぞれ生成し、それぞれトルク指令信号を、対応する制御装置に出力する。
尚、エンジン制御装置は、エンジン4のコンポーネントである空気絞り弁,燃料噴射弁,吸排気弁などの駆動を制御する電子機器である。
《バッテリ装置の構成》
バッテリ装置100は、モータジェネレータ200の駆動用電源を構成する、公称出力電圧200ボルト以上の高電圧で、これまでのハイブリッド自動車用駆動バッテリよりも出力密度及びエネルギー密度が高い蓄電装置であり、ジャンクションボックス400を介してインバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。
バッテリ装置100は、インバータ装置300及び充電器500によって充放電される蓄電装置であり、主要部として電池モジュール110及び制御装置を備えている。
電池モジュール110及び制御装置は、計測器,冷却装置(例えば冷却媒体として冷却空気を採用する場合には電池モジュール110に送風する冷却ファン),リレーなどを含む他の構成部品と共に一つの電源筐体内に収納されている。電源筐体は、車室内の座席の下或いはトランクルーム若しくは床下などに設置される。電源筐体には、インバータ装置300及び充電器500など、バッテリ装置100と同様の高電圧機器を一つに纏めて収納してもよい。
《電池モジュールの構成》
電池モジュール110は、電気エネルギーの出し入れが可能な貯蔵庫であり、インバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。
電池モジュール110は、電気エネルギーの蓄積及び放出(直流電力の充放電)が可能な複数のリチウムイオン電池セル111(以下、単に「電池セル111」と記述する)を備えている。複数の電池セル111は、収納ケース(モジュールケース)の内部に配置されて電気的に直列に接続されている。これにより、電池モジュール110には一つの組電池が構成される。電池セル111は電池モジュール110における最小の構成単位であり、単電池と呼ばれる場合もある。電池セル111の公称出力電圧は3.0〜4.2ボルト(平均公称出力電圧が3.6ボルト)である。
複数の電池セル111は、その状態管理上及び制御上、所定の単位数により区分されて複数の電池群に分けられている。別な言い方をすれば、所定の数の電池セル111が電気的に直列に接続されて一つの電池群が構成され、その電池群が複数、電気的に直列に接続されて組電池が構成されている。所定の単位数としては、例えば4個,6個,10個,12個・・・というように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって等区分とする。また、所定の単位数としては、4個と6個との組み合わせ・・・というように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって複合区分とする場合もある。
PHEV1においては、実際には100本前後〜200本前後の電池セル111が搭載され、電気的に直列或いは直並列に接続される。
尚、電池モジュール110の実際の構成については後述する。
《センサの構成》
電池モジュール110の正極側とインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側との間の充放電路には、電池モジュール110からインバータ装置300(パワーモジュール310)に供給される電流、或いはインバータ装置300(パワーモジュール310)から電池モジュール110に供給される電流を検出するための電流計測器(回路)又は電流センサが電気的に直列に接続されている。電池モジュール110の正極及び負極の間には、電池モジュール110の正極及び負極の間の電圧(総電圧)を検出するための電圧計測器(回路)又は電圧センサが電気的に並列に接続されている。電池モジュール110の内部には、複数の温度計測器(回路)又はサーミスタや熱電対などの温度センサが設けられている。
《制御装置の構成》
制御装置は、複数の電子回路部品から構成された電子制御装置であり、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、インバータ装置300及び充電器500に許容充放電量を提供して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する。
機能上、制御装置は、二つの階層に分かれて構成されており、バッテリ装置100内において上位(親)に相当するバッテリ制御装置130と、バッテリ制御装置130に対して下位(子)に相当するセル制御装置120とを備えている。
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、お互いに電気信号の授受ができるように通信回路によって接続されている。バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は動作電源が異なり、お互いに基準電位が異なる。すなわちセル制御装置120は、シャーシグランドから浮動状態にある電池モジュール110を電源としているのに対して、バッテリ制御装置130は、シャーシグランドを基準電位とする車載補機用低圧バッテリ(例えば14ボルト系バッテリ)を電源としている。このため、バッテリ制御装置130とセル制御装置120との間の通信線(信号伝送路)の途中には絶縁素子140が設けられており、絶縁素子140の一方側の通信線(信号伝送路)と絶縁素子140の他方側の通信線(信号伝送路)との間が電気的に絶縁されている。これにより、バッテリ制御装置130とセル制御装置120との間において、基準電位の異なる電気信号により信号伝送が可能になる。
絶縁素子140としてはフォトカプラを用いた場合を例に挙げて説明する。フォトカプラは、電気信号を発光側において光信号に変換して受光側に伝送し、受光側路において光信号を電気信号に変換する光学素子である。絶縁素子140としてはカップリングコンデンサ,変圧器などの他の絶縁素子を用いても構わない。カップリングコンデンサは直流電流を流さず、交流電流(電気信号)を流す容量性結合素子である。変圧器は電気信号を一次側において磁気信号に変換して二次側に伝送し、二次側において磁気信号を電気信号に変換する磁気素子である。
通信回路は二つのシリアル通信回路から構成されている。バッテリ制御装置130とセル制御装置120との間では、セル制御装置120を動作させる指令信号などのように、複数の領域が設けられた複数バイトの信号が一つのシリアル通信回路を介して伝送されるようになっていると共に、異常有無を示すHigh/Lowレベルのフラグ信号や異常を確認するHigh/Lowレベルのテスト信号などのように、1ビットの信号が他の一つのシリアル通信回路を介して伝送されるようになっている。シリアル通信回路には、LIN(Local Interconnect Network)と呼ばれる通信方式を採用している。LINと呼ばれる通信方式は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる通信方式のサブネットワーク方式に位置付けられている。
尚、本実施形態では、二つのシリアル通信回路を備えた場合を例に挙げて説明する。通信回路の数としては、一つ或いは三つ以上であっても構わない。
指令信号はバッテリ制御装置130から一つのシリアル通信回路を介してセル制御装置120に送信されると共に、一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130に戻る。コマンド信号としては、各電池セル111の検出された端子電圧の送信を要求するための指令信号,電池セル111の充電状態の調整を実行させるための指令信号,セル制御装置120を起動させるための指令信号,セル制御装置120の動作を停止させるための指令信号,セル制御装置120から通知された異常の内容を確認するための指令信号などがある。
異常有無を示すHigh/Lowレベルのフラグ信号は、セル制御装置120を構成する複数の集積回路のそれぞれにおいて、内部回路や回路素子に、例えば各電池セル111の端子電圧を検出する電圧検出回路や、バイパス回路を構成するスイッチング半導体素子に異常がある場合、或いは電池群を構成する複数の電池セル111のいずれかに過充放電(特に過充電)の異常がある場合、異常を検出した集積回路から他の一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130に送信される。これにより、バッテリ制御装置130は異常有無を速やかに認知でき、車両制御装置8及びモータ制御装置340などの上位制御装置に異常有無を速やかに通報できると共に、後述するリレーの開放による充放電禁止などの異常対応を速やかに実行できる。
異常を確認するHigh/Lowレベルのテスト信号は、他の一つのシリアル通信回路が断線しているか否や、セル制御装置120を構成する複数の集積回路のそれぞれにおいて、他の一つのシリアル通信回路に電気的に接続された信号入出力回路に異常があるか否かを確認するための信号であって、バッテリ制御装置130から他の一つのシリアル通信回路を介してセル制御装置120に送信され、セル制御装置120から他の一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130に戻る。もし、他の一つのシリアル通信回路に断線の異常がある場合には、例えばバッテリ制御装置130から出力されたHighレベルのテスト信号がLowレベルの信号としてバッテリ制御装置130に戻ってくる。これにより、バッテリ制御装置130は他の一つのシリアル通信系の異常を検知することができる。
《セル制御装置の構成》
セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された指令信号に基づいて、バッテリ制御装置130の手足となって動作し、複数の電池セル111のそれぞれの状態を管理及び制御する複数のセルコントロール集積回路(以下、「セルコンIC(Integrated Circuit)」という)を備えている。複数のセルコンICは、前述した複数の電池群のそれぞれに個別に対応して設けられて、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のそれぞれの状態を管理及び制御するように、セル制御装置120を構成する他の構成部品、例えばノイズ除去用或いは保護用の回路素子、さらには前述した絶縁素子140と共に回路基板に実装されている。
複数のセルコンICはそれぞれ、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のそれぞれの正極及び負極に電気的に接続されている。これにより、複数のセルコンICはそれぞれ、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のそれぞれの正極及び負極の間の端子電圧を取り込んで検出する。また、複数のセルコンICはそれぞれ、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のうち、最も高電位に位置する電池セル111の正極側と、最も低電位に位置する電池セル111の負極側との間の電圧を、内部回路(例えば端子電圧を検出するためのアナログディジタル変換器)の動作電圧(例えば3〜5v)を生成させるための電源電圧として入力する。さらに、複数のセルコンICはそれぞれ、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のうち、最も低電位に位置する電池セル111の負極側の電位を基準電位として入力する。
複数のセルコンICはそれぞれ、バッテリ制御装置130から出力された、充電状態の調整に関する指令信号に基づいて、対応する電池群を構成する複数の電池セル111のうち、充電状態の調整が必要な電池セル111について充電状態を調整する。このため、セル制御装置120は、複数の電池セル111のそれぞれの正極及び負極の間に電気的に並列に接続されるバイパス回路を備えている。バイパス回路は、抵抗とスイッチング半導体素子とを電気的に直列に接続した直列回路により構成されている。抵抗はセルコンICの外部に外付けされている。スイッチング半導体素子はセルコンICの内部に内臓されている。
ここで、充電状態の調整が必要な電池セル111とは、例えば複数の電池セル111の端子間電圧のうち、最高端子電圧と最低端子電圧との平均(中間)値である平均充電状態よりも所定以上高い充電状態にある電池セル111を示す。また、バッテリ制御装置130は、充電状態の調整が必要な電池セル111の充電状態に基づいて、その電池セル111の放電時間を求め、その放電時間に関する情報を指令信号として、一つのシリアル通信回路によって、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するセルコンICに伝送する。
尚、本実施形態では、バイパス回路を構成する抵抗をセルコンICの外部に外付けし、パイパス回路を構成するスイッチング半導体素子をセルコンICの内部に内蔵した場合を例に挙げて説明するが、バイパス回路を構成する抵抗及びスイッチング半導体素子の両方をセルコンICの外部に外付けしても構わないし、セルコンICの内部に内蔵しても構わない。
充電状態の調整に関する(放電時間に関する)指令信号がバッテリ制御装置130から、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するセルコンICに一つのシリアル通信回路を介して伝送されると、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するセルコンICは、入力した指令信号に基づいて、内臓された、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するスイッチング半導体素子を導通(オン)させる。これにより、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するスイッチング半導体素子が導通(オン)する。
充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するスイッチング半導体素子が導通(オン)すると、充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するバイパス回路が、充電状態の調整が必要な電池セル111に対して電気的に接続される。これにより、電気的な閉ループが形成され、充電状態の調整が必要な電池セル111は放電を開始する。充電状態の調整が必要な電池セル111が放電を開始すると、充電状態の調整が必要な電池セル111から出力された電流は抵抗に流れ、熱として消費される。充電状態の調整が必要な電池セル111に対応するスイッチング半導体素子の導通(オン)は、指令信号に基づいて指示された放電時間分だけ継続する。この間、充電状態の調整が必要な電池セル111から出力された電流は抵抗によって熱として消費される。これにより、充電状態の調整が必要な電池セル111の充電量が減少し、充電状態の調整が必要な電池セル111はその充電状態が平均充電状態に近づくように調整される。
複数のセルコンICはそれぞれ、異常診断するための回路を備えている。前述のように、異常診断としては、大きく分けて、電池セル111側の異常診断、すなわち複数のセルコンICのそれぞれに対応する電池群を構成する複数の電池セル111が過放電或いは過充電であるか否かの診断と、セル制御装置120側の異常診断の二つがある。前者の異常診断では、前述した電圧検出によって計測した電池セル111の端子間電圧と過放電閾値及び過充電閾値とを比較し、端子電圧が過放電閾値を下回った場合には過放電、端子電圧が過充電閾値を上回った場合には過充電と診断する。後者の異常診断には、複数のセルコンICのそれぞれの電圧検出回路に異常があるか否かの診断、バイパス回路を構成するスイッチング半導体素子が異常か否かの診断、セルコンICの内部温度が許容温度以上であるか否かなどの診断を含む複数の異常診断がある。
上記異常診断により異常が検出された場合には、その異常を検出したセルコンICは、異常有無を示すHigh/Lowレベルの1ビット信号を他の一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130に送信する。また、複数のセルコンICはそれぞれ、電池セル111の過放電及び過充電の異常フラグ、内部回路診断の異常フラグを記憶しており、一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130から異常内容の確認要求に関する指令信号が送信されてきた場合には、記憶されている異常フラグに対応した異常内容を確認できるデータを、一つのシリアル通信回路を介してバッテリ制御装置130に出力する。これにより、バッテリ制御装置130は異常内容を確認できる。
《バッテリ制御装置の構成》
バッテリ制御装置130は、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、車両制御装置8又はモータ制御装置340に許容充放電量を通知して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する電子制御装置であり、マイクロコントローラを備えている。マイクロコントローラは集積回路に組み込まれ、他の電子回路部品と共に回路基板に実装されている。他の電子回路部品としては、例えば電圧計測器,電源回路(14ボルト系バッテリから供給された12ボルトの電圧を例えば5ボルトの電圧に降圧してマイクロコントローラに供給してマイクロコントローラを駆動させるレギュレータ回路),リーク検出器(電池モジュール110からモータジェネレータ200に至るまでの強電系と、弱電系の基準電位となるシャーシグランドとの間が電気的に接続されて(短絡して)いるか否かを検出するための計測器)などがある。
尚、本実施形態では、バッテリ制御装置130を、セル制御装置120を構成する回路基板とは分離した別の回路基板に構成した場合を例に挙げて説明するが、両制御装置を一つの回路基板に構成しても構わない。
バッテリ制御装置130には、前述した電流計測器,電圧計測器及び温度計測器から出力された計測信号,セル制御装置120から戻った指令信号(データ領域に要求したデータが書き込まれた指令信号)や他の一つのシリアル通信系の異常診断するためのテスト信号,セル制御装置120から出力された異常を示す1ビット信号,イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号を含む複数の信号が入力されている。イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号は、前述したCAN(Controller Area Network)と呼ばれる、バッテリ制御装置130,車両制御装置8,モータ制御装置340などの自動車内の複数の制御装置の間を接続してお互いの情報を送受信するためのローカルエリアネットワークを介してバッテリ制御装置130に入力されている。
バッテリ制御装置130は、それらの入力信号から得られた情報、予め設定された電池セル111の特性情報及び演算に必要な演算情報を含む複数の情報に基づいて、電池モジュール110の状態(例えば電池モジュール110の充電状態「以下、SOC(State Of Charge)という」及び劣化状態「以下、SOH(State Of Health)という」などを検知するための演算,電池モジュール110を制御するための演算、及び電池モジュール110の充放電量を制御するための演算を含む複数の演算を実行する。そして、バッテリ制御装置130は、それらの演算結果に基づいて、セル制御装置120に対する指令信号,電池モジュール110の充放電量を制御するための許容充放電量に関する信号,電池モジュール110のSOCに関する信号、及び電池モジュール110のSOHに関する信号を含む複数の信号を生成して出力する。
バッテリ制御装置130から出力された信号のうち、許容充放量(許容充放電電流又は許容充放電電力)に関する信号,SOCに関する信号,SOHに関する信号、及び異常状態通知に関する信号は、上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340に対してローカルエリアネットワーク(CAN)を介して出力される。このうち、許容充放電量に関する信号は、許容充放電量の範囲においてバッテリ装置100が充放電され、車両制御装置8から出力されたトルク指令信号に基づく交流電力がパワーモジュール310からモータジェネレータ200に供給されるように、また、車両制御装置8から出力されたトルク指令信号に基づいて、モータジェネレータ200から出力された交流電力がパワーモジュール310により直流電力に変換されてバッテリ装置100に供給されるように、モータ制御装置340に入力される。モータ制御装置340は、許容充放電量に関する信号及び車両制御装置8から出力されたトルク指令信号に基づいて、パワーモジュール310のスイッチング半導体素子のオンオフが制御されるように、パワーモジュール310のスイッチング半導体素子を駆動する駆動回路330にスイッチング指令信号を出力する。
バッテリ制御装置130はリーク検出装置(図示省略)を備えている。リーク検出装置は、MCU(ディジタル処理部)及びアナログ処理部から構成されており、電池モジュール110からモータジェネレータ200までの強電系と、弱電系の基準電位となるシャーシグランドとの間に、それらの間の電気的な接続によってリークが生じているか否かを検出する。
リーク検出方式には交流方式及び直流方式と呼ばれる両方式がある。交流方式は、電池モジュール110の正極側或いは負極側に電気的に接続された容量性結合素子(カップリングコンデンサ)に対してMCUから交流波形(例えば矩形波)を注入し、この注入によって得られた応答波形のディジタル値と閾値とを比較することにより、リークの有無を検出する方式である。直流方式は、電池モジュール110の正極とシャーシグランドとの間に電気的に接続される第1抵抗分圧回路及び電池モジュール110の負極とシャーシグランドとの間に電気的に接続された第2抵抗分圧回路から得られた電圧のディジタル値のそれぞれに対応する絶縁抵抗を演算し、それらの比が所定の閾値の範囲にあるか否かを比較することにより、リークの有無を検出する方式である。
MCUには、リーク検出装置のアナログ処理部において処理されて得られた応答波形或いは電圧に関するアナログ値が入力されている。MCUは、そのアナログ値をアナログディジタル変換器によってディジタル値に変換し、予め設定されたリーク判定用閾値とそのディジタル値とを比較演算してリーク検出の有無を判断する。リークが検出されると、MCUは、その情報を車両制御装置8又はモータ制御装置340に通知する。
イグニションキースイッチから出力された信号はバッテリ装置100の起動及び停止の合図として用いられている。イグニションキースイッチから出力された信号がオン信号である場合、その信号によってバッテリ制御装置130が起動し、その後、バッテリ制御装置130から出力された起動信号(ウェークアップ信号)によって、セル制御装置120(複数のセルコンIC)が起動する。イグニションキースイッチから出力された信号がオフ信号である場合、その信号によって、バッテリ制御装置130から停止信号(スリープ信号)がセル制御装置120に出力され、その信号によってセル制御装置120(複数のセルコンIC)が停止し、その後、バッテリ制御装置130が停止する。
《低圧バッテリ装置との接続関係》
電池モジュール110には、バッテリ装置100よりも電圧の低いバッテリ装置(図示省略)が電気的に接続されている。低圧バッテリ装置は、ライトやオーディオなどの車載補機及び電子制御装置などの動作電源である、公称出力電圧12ボルトの鉛電池であり、図示省略したDC−DCコンバータを介してバッテリ装置100に電気的に接続されている。DC−DCコンバータは、直流電力を、所定の電圧に昇降圧された直流電力に変換するための電力変換装置である。
《充電器の構成》
家庭の商用電源560或いは電気スタンドの給電装置からバッテリ装置100を充電するプラグインモードの場合、充電器500の外部電源接続端子に電気的に接続された電源ケーブルの先端の電源プラグ550を商用電源560側のコンセント570に差し込み或いは電気スタンドの給電装置から延びる電源ケーブルを充電器500の外部電源接続端子に接続し、充電器500と商用電源560或いは電気スタンドの給電装置とを電気的に接続する。これにより、単相或いは三相の交流電力が商用電源560或いは電気スタンドの給電装置から充電器500に供給される。充電器500は、供給された交流電力を直流電力に変換し、かつバッテリ装置100の充電電圧に調整した後、バッテリ装置100に供給する。これにより、バッテリ装置100は充電される。
尚、本実施形態では、家庭の商用電源560と充電器500とを電気的に接続し、バッテリ装置100を充電する場合を例に挙げて説明するが、電気スタンドの給電装置からの充電も基本的には家庭の商用電源560からの充電と同じように行われる。但し、家庭の商用電源560からの充電と電気スタンドの給電装置からの充電とでは、充電器500に供給される電流容量及び充電時間が異なり、電気スタンドの給電装置からの充電の方が、家庭の商用電源560からの充電よりも電流容量が大きく、かつ充電時間が速い、すなわち急速充電ができる。
充電器500は、家庭の商用電源560から供給された交流電力を直流電力に変換すると共に、この変換された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧に昇圧してバッテリ装置100に供給する電力変換装置であり、交直変換回路510,昇圧回路520,駆動回路530及び充電制御装置540を主な構成機器として備えている。
交直変換回路510は、外部電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換回路であり、例えば複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、外部電源から供給された交流電力を直流電力に整流するために設けられた整流回路、及び整流回路の直流側に電気的に接続され、整流回路の出力の力率を改善するために設けられた力率改善回路を備えている。交流電力を直流電力に変換する回路としては、ダイオード素子が逆並列に接続された複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成された回路を用いても構わない。
昇圧回路520は、交直変換回路510(力率改善回路)から出力された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧まで昇圧するための電力変換回路であり、例えば絶縁型のDC−DCコンバータにより構成されている。絶縁型のDC−DCコンバータは、変圧器、変圧器の一次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成され、交直変換回路510から出力された直流電力を交流電力に変換して変圧器の一次側巻線に入力する変換回路、変圧器の二次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、変圧器の二次側巻線に発生した交流電力を直流電力に整流する整流回路、整流回路の出力側(直流側)の正極側に電気的に直列に接続された平滑リアクトル、整流回路の出力側(直流側)の正負極間に電気的に並列に接続された平滑コンデンサから構成されている。
充電制御装置540は、充電器500によるバッテリ装置100の充電終始や、充電時に充電器500からバッテリ装置100に供給される電力,電圧,電流などを制御するために、車両制御装置8から出力された信号や、バッテリ制御装置130から出力された信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路530に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
充電制御装置540は、車両制御装置8から出力された指令信号を受けて、充電器500の動作を制御する。車両制御装置8から出力される指令信号としては、充電を開始するための指令信号及び充電を終了するための指令信号がある。充電を開始するための指令信号は、充電器500の入力側の電圧を監視し、充電器500と外部電源の両者が電気的に接続されて充電器500の入力側に電圧が印加され、充電開始状態になったと判断した場合に出力される。一方、充電を終了するための指令信号は、バッテリ制御装置130から出力された信号に基づいてバッテリ装置100が満充電状態になったと判断した場合に出力される。
バッテリ制御装置1300から出力された信号は、電池モジュール110の組電池の状態を検知し、この検知した状態に基づいて演算された許容充電量である。
尚、本実施形態では、充電を開始するための指令信号及び充電を終了するための指令信号を車両制御装置8から出力する場合を例に挙げて説明したが、モータ制御装置340或いはバッテリ装置100から出力しても構わない。
また、バッテリ装置100の制御装置と協調して充電制御装置540が自ら車両制御装置8と同様の判断を行い、充電の開始,終了を制御しても構わない。
駆動回路530は、充電制御装置540から出力されたトルク指令信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対する駆動信号を発生し、複数のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
尚、交直変換回路510がスイッチング半導体素子によって構成されている場合には、充電制御装置540から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号が駆動回路530に出力され、駆動回路530から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対する駆動信号が交直変換回路510のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力され、交直変換回路510のスイッチング半導体素子のスイッチングが制御される。
《リレーの構成》
ジャンクションボックス410の内部には第1及び第2正極側リレー410,430及び第1及び第2負極側リレー420,440が収納されている。
第1正極側リレー410はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第1負極側リレー420はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2正極側リレー430は充電器500(昇圧回路520)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2負極側リレー440は充電器500(昇圧回路500)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420は、モータジェネレータ200の回転動力が必要な運転モードにある場合及びモータジェネレータ200の発電が必要な運転モードにある場合に投入され、車両が停止モードにある場合(イグニションキースイッチが開放された場合)、電動駆動装置或いは車両に異常が発生した場合及び充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に開放される。一方、第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440は、充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に投入され、充電器500によるバッテリ装置100の充電が終了した場合及び充電器500或いはバッテリ装置100に異常が発生した場合に開放される。
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、車両制御装置8から出力される開閉指令信号によって制御される。第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、他の制御装置、例えばモータ制御装置340或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、充電制御装置540から出力される開閉指令信号によって制御される。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、他の制御装置、例えば車両制御装置8或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。
以上のように、本実施形態では、バッテリ装置100とインバータ装置300と充電器500との間に第1正極側リレー410,第1負極側リレー420,第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440を設けて、それらの間の電気的な接続を制御するようにしているので、高電圧である電動駆動装置に対する高い安全性を確保できる。
《電池モジュールの詳細構成》
次に、図2乃至図6を用いて、電池モジュール110の構成について詳細に説明する。
図2及び図3は、電池モジュール110を構成する一つのサブ角型電池モジュール150の全体構成を示す。図4は、サブ角型電池モジュール150の一つの構成部品である端板151の全体構成を示す。図5は、電池セル111の全体構成を示す。図6は、電池セル111の電槽20内に収納された電極捲回体41の構成を示す。
本実施形態では、6個の電池セル111を固縛して1個のサブ角型電池モジュール150を構成すると共に、サブ角型電池モジュール150をいくつか用いて1個の電池モジュール110を構成している。例えば96個の電池セル111を用いて電池モジュール110を構成する場合には、サブ角型電池モジュール150は16個構成されることになる。
尚、本実施形態では、6個の電池セル111を用いて1個のサブ角型電池モジュール150を構成する場合を例に挙げて説明するが、1個のサブ角型電池モジュール150を構成する電池セル111の個数としては6個以外でもよい。
また、本実施形態では、複数のサブ角型電池モジュール150を用いて電池モジュール110を構成する場合を例に挙げて説明するが、バッテリ装置が適用されるアプリケーションの仕様(例えば定格電圧)によっては一つのサブ角型電池モジュール150が電池モジュール110となる場合もある。
《電池セルの構成》
まず、図5及び図6を用いて、電池セル111の構成について説明する。
図5に示すように、電池セル111は扁平角型電池セルであり、密閉された扁平直方体形状の電槽20を備えている。電槽20は、対向配置された、最も面積が大きい矩形状の二つの主面(例えば上面と下面)と、この二つの主面の4辺(4縁)に沿って二つの主面に垂直に設けられ、主面よりも面積が小さい矩形状の四つの副面(対向配置された2組の側面)とを備えると共に、二つの主面の間の長さが主面の4辺の長さよりも短い6面体(短角柱)であり、二つの構成要素によって構成されている。二つの構成要素の一方は、二つの主面及び三つの副面を備え、残りの一つの副面に対応する部分が開口した扁平直方体形状の容器体である電池缶21である。二つの構成要素の他方は、電池缶21の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶21の開口部の輪郭に合致するように形成された矩形状の平板である電池蓋22である。電池缶21と電池蓋22の両者はレーザビーム溶接によって接合されている。電槽20(電池缶21及び電池蓋22)は金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
尚、本実施形態では、説明の便宜上、電池セル111の搭載方向に関係なく、扁平直方体形状の容器体である電池缶21の開口部側とは反対側の面を底面、この底面の4辺に沿って底面に垂直に設けられた4面のうち、底面の長辺に沿って底面に垂直に設けられた二つの対向面を第1側面、底面の短辺に沿って底面に垂直に設けられた二つの対向面を第2側面と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
また、本実施形態では、説明の便宜上、平行に対向配置された二つの長辺、この長辺に直交すると共に、並行に対向配置され、長辺よりも長さが短い二つの短辺により形成される矩形平面形状を備えた構成要素において、長辺と同じ方向に延びる(短辺が対向する)方向を長手方向、短辺と同じ方向に延びる(長辺が対向する)方向を短手方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
電池蓋22には、その外表面から外に向かって突出するように、外部導体と接続するための外部導体接続導体である正極外部端子30及び負極外部端子31が設けられている。正極外部端子30は電池蓋22の長手方向一方側端部に配置され、負極外部端子31は電池蓋22の長手方向他方側端部に配置されている。電池蓋22と正極側外部端子30との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための正極シール材32が設けられている。電池蓋22と負極側外部端子31との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための負極シール材33が設けられている。電槽20の内部において、正極外部端子30には、内部接続導体である正極接続板34が、正極シール材32によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。電槽20の内部において、負極外部端子31には、内部接続導体である負極接続板(図示省略)が、負極シール材33によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。このように、正極外部端子30及び負極外部端子31と電槽20との間が電気的に絶縁されているので、電槽20は電気的に中立状態、すなわち電位を持たない状態になっている。
正極外部端子30は円柱形状の金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。負極外部端子31は円柱形状の金属製部材であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。正極シール材32及び負極シール材33は、電気的な絶縁性を有する樹脂製部材であり、その材質としてポリフェニレンサルファイド(PPS)或いはポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)を用いている。正極接続板34は、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。負極接続板は正極接続板34と同じ形状のものであって、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。
電槽20(電池缶21)の内部には発電要素体40が収容されている。発電要素体40は、電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入される。電槽20(電池缶21)の内部には、電池蓋22に設けられた注液孔22aを介して電解液が注入されている。注液孔22aは、電池蓋22をその外表面から内表面に貫通した貫通孔であり、電槽20の内部に電解液を注入した後、レーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
電解液としては、例えばエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1:1の混合溶液中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lとなるように溶解した非水系の有機溶媒を用いている。
尚、電解質としては、LiClO4,LiAsF6,LiBF4,LiB(C6H5)4,CH3SO3Li,CF3SOLiなどやこれらの混合物を用いてもよい。また、非水電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン,γ―ブチルラクトン,テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル,スルホラン,メチルスルホラン,アセトニトリル,プロピオニトリル,プロピオニトリルなど、少なくとも1種以上の混合溶媒を用いてもよい。
発電要素体40は、図6に示すように、セパレータ44,負極板43,セパレータ44,正極板42をその順に積層したシート状の積層体を扁平形状に捲回した電極捲回体41から構成されている。
尚、本実施形態では、電極捲回体41として捲回式のものを例に挙げて説明するが、正極板42,負極板43,セパレータ44のそれぞれを矩形状のシートに加工して、それらを何層にも上記と同様の順番に積層する積層式の電極体を採用しても構わない。
また、本実施形態では、説明の便宜上、電極捲回体41の捲回方向を電極捲回方向、電極捲回体41の扁平捲回面上において電極捲回方向に直交する方向を電極幅方向、電極捲回体41の扁平捲回面を垂直に貫く方向を電極扁平方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
さらに、本実施形態では、説明の便宜上、電極板の電極捲回方向と同じ方向を極板捲回方向、電極板の電極幅方向と同じ方向を極板幅方向、電極板の電極扁平方向と同じ方向を極板垂直方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
正極板42は、極板幅方向一端部に、正極活物質合剤を塗布しない未塗工部45が設けられるように、正極集電箔上に正極活物質合剤を塗布して構成している。正極集電箔は、例えば厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔(アルミニウム板)である。正極活物質合剤は、正極活物質として量論組成のマンガン酸リチウム(化学式LiMnO2)100重量部に対し、導電材として10重量部の鱗片状黒鉛、結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を添加,混練したものであり、アルミニウム箔(アルミニウム板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
負極板43は、極板幅方向他端部に、負極活物質合剤を塗布しない未塗工部46が設けられるように、負極集電箔上に負極活物質合剤を塗布して構成している。負極集電箔は、例えば厚さ10μmの帯状の銅箔(銅板)である。負極活物質合剤は、負極活物質として非晶質炭素粉末100重量部に対して、結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルビロリドン(NMP)を添加,混練したものであり、銅箔(銅板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
尚、正極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムイオンを挿入したリチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶中のリチウムや遷移金属の一部をそれら以外の元素で置換あるいはドープした材料などを用いてもよい。例えばスピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウム(例えば、Li1+xMn2−xO4)、マンガン酸リチウムの一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物(例えば、Li1+xMyMn2−x−yO4、MはCo,Ni,Fe,Cu、Al,Cr,Mg,Zn,V,Ga,B,Fの少なくとも1種)、層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、これらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム−金属複合酸化物などがある。また、結晶構造については、スピネル系,層状系,オリビン系のいずれの結晶構造を有していてもよい。
また、負極活物質としては、リチウムイオンを脱挿入可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材,コークスなどの炭素質材料などを用いてもよい。また、粒子形状としては、鱗片状,球状,繊維状,塊などを用いてもよい。
さらに、結着材(バインダ)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリスチレン,ポリブタジエン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレン/ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ニトロセルロース,シアノエチルセルロース,各種ラテックス,アクリロニトリル,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,フッ化プロピレン,フッ化クロロプレン,アクリル系樹脂などの重合体及びこれらの混合体などを用いてもよい。
セパレータ44は、正極板42及び負極板43が直接接触しないようにする、すなわち正極板42と負極板43との間を電気的に絶縁するための微多孔性部材であり、例えばポリエチレンの素材を一軸延伸機で厚さ30μmに延伸したポリエチレン製の帯状部材である。セパレータ44の極板幅方向寸法は正極板42及び負極板43の極板幅方向寸法よりも小さくなるように形成されている。
電極捲回体41において、正極板42の未塗工部45と負極板43の未塗工部46は互いに反対側に位置している。すなわち電極捲回体41の電極幅方向一方側に正極板42の未塗工部45が配置され、その他方側に負極板43の未塗工部46が配置されるように、正極板42と負極板43とを電極捲回体41の電極幅方向において相反する方向にずらして積層している。このような構成によれば、電極捲回体41の本体部分(正極板42及び負極板43の活物質合剤塗工部位とセパレータ44との積層部分)から、後述する集電箔となる未塗工部45,46がはみ出す(露出する)ように、電極捲回体41を形成することができる。
セパレータ44は、その素材の延伸方向が電極捲回体41の捲回方向になっている。
尚、正極板42及び負極板43を含む積層体を捲回するにあたっては、正極板42及び負極板43を含む積層体の捲き始め及び捲き終わりにおいて、セパレータ44のみを2〜3周程度、余分に捲回している。また、正極板42及び負極板43を捲回するにあたっては、負極板43の長さを正極板42の長さよりも長くし、電極捲回体41の最内周及び最外周において、正極板42が負極板43に対して捲回方向にはみ出すことがないようにしている。
このように形成された電極捲回体41は、未塗工部45,46の電極捲回方向の中央部が、電極扁平方向両側(電極捲回体の外径側)から電極捲回中心(電極捲回体の内径側)に向かって平坦状にプレス加工される。これにより、発電要素体40が製作される。
電極捲回体41の電極幅方向一方側端部には、電極捲回方向の中央部に形成された矩形状の平坦部(電極捲回方向が長手方向、電極捲回幅方向が短手方向となるように形成された平坦部)、電極捲回方向一方側(折り返し部分の一方側)からその他方側に向かうにしたがって徐々に電極捲回体41の内径側に傾斜して平坦部の電極捲回方向一方側端部に至る第1傾斜部、電極捲回方向他方側(折り返し部分の他方側)からその他方側に向かうにしたがって徐々に電極捲回体41の内径側に傾斜して平坦部の電極捲回方向他方側端部に至る第2傾斜部、電極捲回体41の活物質が塗工された部位における電極幅方向一方側端部から平坦部の電極幅方向他方側端部に向かうにしたがって徐々に電極捲回体41の内径側に傾斜して平坦部の電極幅方向他方側端部に至る第3傾斜部からなる窪みが電極扁平方向両側に形成される。これにより、電極捲回体41の電極幅方向一方側端部には正極集電部が形成される。
電極捲回体41の電極幅方向他方側端部には、正極集電部と同様に形成された平坦部、正極集電部と同様に形成された第1傾斜部、正極集電部と同様に形成された第2傾斜部、電極捲回体41の活物質が塗工された部位における電極幅方向他方側端部から平坦部の電極幅方向一方側端部に向かうにしたがって徐々に電極捲回体41の内径側に傾斜して平坦部の電極幅方向一方側端部に至る第4傾斜部からなる窪みが電極扁平方向両側に形成される。これにより、電極捲回体41の電極幅方向他方側端部には負極集電部が形成される。正極集電部及び負極集電部は左右対称の関係にあり、どちらも同様の構成になっている。
以上のようにして製作された発電要素体40は、電池蓋22,正極外部端子30及び負極外部端子31,正極シール材32及び負極シール材33,正極接続板34及び負極接続板が予め機械的に一体化するように組み立てられた電池蓋アセンブリに対して、発電要素体40の電極捲回方向両端部に発電要素体40の電極幅方向に渡って形成された捲回折り返し部の一方側が電池蓋22の長手方向に沿って、電池蓋22の内面と対向するように、組み付けられる。この後、正極接続板34が正極集電部に、負極接続板が負極集電部に、それぞれ超音波溶接により接合される。これにより、発電要素体40の正極板42と正極外部端子30とが、発電要素体40の負極板43と負極外部端子31とが、それぞれ、電気的に接続される。
正極接続板34及び負極接続板は材質が異なるが、構成要素及び形状が同じである。このようなことから、以下では、正極接続板34を代表に挙げて、その構成を説明する。
正極接続板34は、端子接続部34a,側面部34b及び接続片部34cの三つの要素が一体成形された成形体であり、平板が所定の形状に成型された成型品である。このように、複数の要素が一体成形された成形体を接続板として用いることにより、正極接続板34の強度及び剛性を高くすることができる。
端子接続部34aは、正極外部端子31に機械的に接続された矩形状の金属片(平板)である。端子接続部34aは、その平面が電池蓋22の内面及び発電要素体40の捲回折り返し部の一方側と対向するように、かつ電池蓋22の内面及び発電要素体40の捲回折り返し部の一方側に沿って、電池蓋22の長手方向及び発電要素体40の電極幅方向と同じ方向に延びるように、さらには長手方向が電池蓋22の長手方向及び発電要素体40の電極幅方向と同じ方向になるように配置され、正極シール材32を介して電池蓋22に取り付けられている。
側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側(負極外部端子31側とは反対側)端部から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側端部から電池缶21の底面側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、電池缶21の第2側面の内面及び発電要素体40の電極幅方向正極側端部に対向するように、かつ電池缶21の第2側面の内面及び発電要素体40の電極幅方向正極側端部に沿って、電池缶21の底面側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び発電要素体40の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部は、発電要素体40の正極集電部の長手方向他方側(発電要素体40の捲回折り返し部の他方側)端部に対応する位置まで延びている。
接続片34cは、側面部34bの短手方向一方側端部の縁から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。接続片34cは、側面部34bの短手方向一方側端部、かつ側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部から発電要素体40の正極集電部の長手方向一方側(発電要素体40の捲回折り返し部の一方側)端部に対応する位置に至る部位の縁から発電要素体40側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、発電要素体40の正極集電部と対向するように、かつ発電要素体40側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び発電要素体40の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。接続片34cの長手方向両端部の2箇所には、接続片34cを正極集電部に超音波溶接するための溶接部34dが形成されている。溶接部34dは、接続片34cの平面を窪ませ、他の部位よりも肉厚を薄くした薄肉部である。
発電要素体40に正極接続板34及び負極接続板がそれぞれ超音波溶接により接合された後、発電要素体40と電池蓋アセンブリとの組立体は、発電要素体40が電池蓋22によって機械的に支持された状態で、発電要素体40の捲回折り返し部の他方側が挿入側となって、電池缶21の内部に電池缶21の開口部から挿入される。これにより、発電要素体40は電池缶21の内部に収容され、電池蓋22にぶら下がった状態になる。この時、セパレータ44の素材の延伸方向は電池缶21の主面の短手方向と同じ方向になっている。
電池缶21に電池蓋22が接合された後、電池蓋22の長手方向中央部よりも正極外部端子30寄りに設けられた注液孔22aから電解液が電槽20内に注入される。電解液を注入後、注液孔22aはレーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
電池セル111の内部にはガス排出弁が設けられている。ガス排出弁は、電池セル111に何らかの異常が生じ、電解液が気化して内圧が上昇した場合、所定の内圧で作動して、電池セル111の外部にミスト状態のガスを放出し、電池セル111を保護するための安全弁である。電池蓋22の長手方向中央部にはガス排出弁が開放した場合、電槽20内部に発生したガスを電槽20の内部から外部に導くためのガス排出管60が設けられている。
《サブ角型電池モジュールの構成》
次に、図2乃至図4を用いて、サブ角型電池モジュール150について説明する。
尚、図2においては、図示の簡略化を図るため、正極外部端子30,負極外部端子31及びガス排出管60や注液孔22aの図示を省略している。
サブ角型電池モジュール150は、その主要構成要素として、6個の電池セル111、一対の端板151、5個のセルホルダ152、及び二対の接続板153を備えた組立体である。電池セル111及びセルホルダ152は交互に配置されて1列に並べられている。電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両外側には端板151が配置されている。これにより、電池セル111及びセルホルダ152の配列体が配列方向両外側から端板151によって挟み込まれている。一対の端板151は二対の接続板153によって固定されている。これにより、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体はその配列方向両外側から固縛される。
6個の電池セル111は、正極外部端子30,負極外部端子31,ガス排出管60及び注液孔22a(これらは図2では図示を省略)が設けられた電池蓋22が上面となり、その電池蓋22と対向する電池缶21の底面が載置面となるように縦置きされると共に、電池缶21の主面が電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向を向くように配置され、さらには、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向にセルホルダ152を介して一定間隔で配置されている。また、6個の電池セル111は、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向一方側端部に配置された電池セル111からその他方側端部に配置された電池セル111に向かって順番に電気的に直列に接続されている。セルホルダ152を介して、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向に隣接する電池セル111同士は、電池セル111の電池蓋22と電池缶21の底面との対向方向に延びる中心軸を回転軸として180度回転させた回転対称の関係となるように配置されている。これにより、セルホルダ152を介して、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向に隣接する電池セル111同士の間では、一方の電池セル111の正極外部端子30及び負極外部端子31と、他方の電池セル111の正極外部端子30及び負極外部端子31との配置位置が異なる。この時、セルホルダ152を介して、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向に隣接する電池セル111の一方の正極外部端子30(又は負極外部端子31)と他方の負極外部端子31(又は正極外部端子30)とが、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向に対向配置される。従って、セルホルダ152を介して、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向に隣接する電池セル111同士を電気的に接続するとき、バスバーと呼ばれる平板状の導電部材(図示省略)によって簡単かつ容易にその接続を行うことができる。また、導電部材の長さを最短とすることができ、サブ角型電池モジュール150の材料費を低く抑えることができる。
セルホルダ152は、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体が、その配列方向両端部から与えられた力によって固縛されたとき、その力を各電池セル111の配列面(電槽20の主面)に伝達して電池セル111を保持固定するものであると共に、電池セル111の配列方向の膨らみを抑えるものであり、さらには、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体の配列方向に隣接する電池セル111の間に、冷却媒体が流れる流路を形成するものである。
セルホルダ152の材質には繊維強化プラスチック(FRP)、すなわち不飽和ポリエステル,エポキシ樹脂,ポリアミド樹脂,フェノール樹脂などの熱硬化性及び電気絶縁性を有する樹脂に、ガラス繊維などの繊維を補強材として混合した複合材を用いている。セルホルダ152は、その複合材を型に流し込んで硬化させて製作した成型体である。
セルホルダ152は、図3に示すように、平面部152a及び突部(畝部)152bを備えている。平面部152aは、電池セル111の電池缶21の主面(冷却媒体が流れる扁平面或いは配列面)と対向する面体部位であり、電池セル111の電池缶21の主面と同じ大きさ及び同じ形状(矩形状)の平面を備えている。突部152bは、平面部152aの短手方向の一端から他端まで直線状に延びている部位であり、平面部152aの表裏面上の3箇所、すなわち平面部152aの長手方向中央部、平面部152aの長手方向一方側端部から中央部までの間の1箇所、及び平面部152aの長手方向他方側端部から中央部までの間の1箇所の計3箇所からそれぞれ、電池セル111に向かって垂直に突出するように形成されている。
尚、本実施例では、平面部152aの一面当たりの突部152bの数を三つとした場合を例に挙げて説明するが、それ以上あっても構わない。
三つの突部152bの突出高さは同じであり、数ミリ程度の高さである。平面部152aの長手方向における突部152bの間隔は一定である。平面部152aの長手方向中央部の突部152bは、電池セル111の電池缶21の主面の長手方向中央部を対向方向から押さえ付け、電池セル111の電池缶21の主面の長手方向中央部に生じる膨らみを抑制する抑制機構としても機能する。このように、本実施形態では、電池セル111の膨張を抑えることができるので、電池セル111の膨張による電池セル111の性能への影響を小さくすることができる。
セルホルダ152と電池セル111との間には、電池セル111を冷却する冷却媒体、例えば冷却空気を流通させるための複数の冷却流路152cが形成されている。冷却流路152cは、電池セル111の電池缶21の主面の短手方向一方側端部側(電池缶21の底面側)から他方側端部側(電池蓋22側)に直線状に延びて、冷却媒体(例えばファンによって送風されてきた冷却空気)を電池セル111の電池缶21の主面の短手方向一方側端部側から他方側端部側に向かって電池缶21の主面の表面を冷却しながら流通させるように、かつ電池セル111の電池缶21の主面の長手方向に4分割されるように、セルホルダ152の平面部152a,突部152b及び電池セル1の電池缶21の主面によって囲まれることにより形成されている。
このように、本実施形態では、電池缶21の主面の短手方向に冷却媒体を流通させている。すなわち冷却媒体の流通方向とセパレータ44の素材の延伸方向が同一方向になっている。これにより、本実施形態では、電池缶21の主面の中央部分からセパレータ44の素材の延伸方向に向かって生じる温度むら(温度差)に沿って電池セル111を冷却することができる。電池缶21の主面における温度分布は、セパレータ44の素材の延伸方向に向かって生じる温度むら(温度差)が、セパレータ44の素材の延伸方向に直交する方向に向かって生じる温度むら(温度差)よりも大きい。このため、本実施形態では、電池セル111の温度を低減することができると共に、電池缶21の主面の中央部分からセパレータ44の素材の延伸方向に直交する方向に向かって生じる温度むら(温度差)に沿って電池セル111を冷却する場合よりも、温度むら(温度差)を小さくすることができる。従って、本実施形態では、電池セル111の冷却性能を向上させることができ、電池セル111の性能及び寿命を向上させることができるバッテリ装置100を提供することができる。
また、本実施形態では、冷却媒体の流通方向とセパレータ44の素材の延伸方向とを同一方向にしているので、セパレータ44の素材の延伸方向に直交する方向の熱収縮を略一定にすることができる。セパレータ44の素材の延伸方向はセパレータ44の素材の延伸方向に直交する方向よりも強度が大きく、熱収縮の影響を受け難い。従って、本実施形態では、セパレータ44に対する熱歪が小さくなり、熱歪に対するセパレータ44の耐力を向上させることができる。
尚、本実施形態では、冷却媒体として空気を用いた場合を例に挙げて説明したが、冷却媒体としては不活性気体や不凍液などの液体を用いても構わない。液体の場合は、電池缶21の表面に直接媒体を当てることはせず、媒体が流れる熱伝導性の高い流路構造体を電池缶21の表面に当てて電池セル111を間接的に冷却する。この場合も、媒体の流れる方向は電池缶21の主面の短手方向、すなわちセパレータ44の素材の延伸方向と同じ方向にする。
また、本実施形態では、冷却媒体の流れ方向を、電池缶21の底面から電池蓋22に向かう方向としたが、その逆の方向であっても構わない。
さらに、本実施形態では、電池缶21の主面の短手方向に冷却媒体を流通させた場合を例に挙げて説明したが、電池缶21の主面の長手方向に冷却媒体を流通させてもよい。
端板151は、セルホルダ152と同じ複合材を型に流し込んで硬化させて製作した成型体、或いは金属、例えば放熱性がよくて軽いアルミニウム又はそれを主成分とする合金を溶融して金型に圧入して製作した金型鋳造体(アルミダイカスト又はアルミダイキャストにより製作された成型体)であり、外形寸法が電池セル111の電池缶21の主面及びセルホルダ152の平面部152aよりも大きい扁平直方体(高さ寸法が縦及び横の寸法よりも小さい直方体)形状の構造体である。端板151は、最も面積が大きい二つの主面(表裏面)が、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向を向くように、電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端部に配置されている。
端板151の電池セル111側の主面は電池缶21の主面と対向して面接触する平面形状になっている。端板151の電池セル111側とは反対側の主面の中央部分には、図4に示すように、矩形状に切り欠かれて、電池セル111側とは反対側から電池セル111側に向かって窪んだ凹部151aが形成されている。凹部151aの外形寸法は電池セル111の電池缶21の主面の外形寸法とほぼ同じ大きさになっている。
端板151の凹部151aの中央部には歪みゲージ(センサ)160が接着部材(例えば接着剤或いは接着テープ)によって貼り付けられている。歪みゲージ(センサ)160は、電池セル111の内圧増大に伴う形状変化(膨らみ)による応力によって端板151に生じる歪み(変形)を測定し、この測定結果から、電池セル111の形状変化(内圧増大)を検出し、電池セル111が異常であるか否かを診断するために設けられている。このため、歪みゲージ160から延びる配線(信号線)はバッテリ制御装置130まで延び、バッテリ制御装置130に接続されている。これにより、歪みゲージ160から出力された信号は、バッテリ制御装置130のMCUに入力される。
端板151の凹部151aの底部の肉厚は、端板151の主面の対向方向における周縁部分の肉厚よりも薄い(凹部151aの底部の肉厚<周縁部の肉厚の関係にある)。このため、端板151の凹部151aの底部の硬さは周縁部分よりも軟らかくなっている。これにより、電池セル111の内圧増大に伴う形状変化(膨らみ)による応力によって端板151に生じる歪みは、端板151の凹部151aの底部において増幅されるようになる。従って、電池セル111の内圧増大に伴う形状変化(膨らみ)による応力によって端板151に生じる歪みを歪みゲージ160によって感度よく測定するためには、歪みゲージ160を端板151の凹部151aの底部に取り付けることが好ましい。また、端板151の凹部151aの底部のうち、端板151に生じる歪みを歪みゲージ160によって最も感度よく測定できるのは中央部である。このようなことから、本実施形態では、歪みゲージ160を端板151の凹部151aの底部の中央部に取り付けて、歪みケージ160による歪み測定感度を向上させ、電池セル111の内圧増大に伴う形状変化(膨らみ)を精度よく検知することができる。
ここで、数値計算によって、部材の薄肉化による歪みの増幅効果を検証してみた。検証にあたっては、歪みが生じる部材として、厚みの異なる複数の円板を用いた。そして、各円板の周辺を固定し、同心円内に等分布に荷重を与えた。この結果、円板に生じる歪みは厚みの二乗に反比例して大きくなることが判った。例えば、部材の厚みを、10mmから2mmに薄肉化した場合、2mmの厚みの部材に生じる歪みは、10mmの厚みの部材に生じる歪みに対して25倍の値になった。これは、薄肉化によって部材が軟化し、部材による歪みの増幅率が大きくなったことに起因すると考えられる。本実施形態においても、端板151に生じる歪みが凹部151aの底部(薄肉部)によって大きく増幅され、歪みゲージ160による歪み測定感度が大幅に良くなり、電池セル111の内部における小さな内圧変化まで検知することができるようになった。
接続板153は金属製の細長い平板形状の梁であり、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体の配列方向に直交する4面のうち、電池セル111の電池蓋22及び電池缶21の底面と対向する2面とは異なる2面(電池缶21の主面、セルホルダ152の平面部152a及び端板151の主面の長手方向に面する2面)側にそれぞれ二つ、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体の配列方向に、しかもお互いに平行に延びるように配置されると共に、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体が圧縮された状態で一対の端板151の主面の長手方向両端の側面に、溶接或いはボルトなどの締結部材によって接続されている。これにより、電池セル111,セルホルダ152及び端板151の配列体は、端板151と接続板153との締結力によって、電池セル111とセルホルダ152とが接触して常に圧縮された状態で保持(固縛)される。
以上の固縛状態において、電池セル111の内圧が増大し、その圧力によって電池缶21の主面が形状変化、すなわち膨らもうとすると、電池缶21の主面を形状変化させようとする圧力(膨張力)は応力となって、内圧が増大した電池セル111の他の部位、他の電池セル111,セルホルダ152,端板151、及び接続板153に、直接或いは他の構成部品を介して作用する。これにより、それらの構成部品の各々には歪みが生じる。従って、それらの構成部品のうち、サブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼさない構成部品に歪みゲージ160を取り付け、その構成部品に生じる歪みを計測することにより、電池セル111の内圧の増大(形状変化である膨らみ)を検知することができる。前述のように、本実施形態では、端板151の凹部151aの底部(薄肉部)に歪みゲージ160を取り付けている。端板151の凹部151aの底部(薄肉部)への歪みゲージ160の取り付けは、サブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがなく、しかも歪みゲージ160による歪み計測感度を向上させることができる。
《電池セルの異常検出方法》
次に、歪みゲージ160から出力された計測信号に基づく、バッテリ制御装置130のMCUによる電池セル111の異常検出方法について説明する。
バッテリ制御装置130のMCUには、歪みゲージ160から出力された計測信号に基づいて、電池セル111に異常があるか否かを判断するための異常検出部が設けられている。電池セル111は充放電時にも内圧が増加して膨張するし、電極間の内部短絡,外部短絡,過充電などの異常時にも内圧が増加して膨張する。しかし、充放電時と異常時とでは、電池セル111の充電状態(SOC)と内圧(膨張力)との関係を示す特性の時間的変化率が異なり、しかも異常時の時間的変化率が充放電時の時間的変化率よりも速い。また、電池セル111の内圧(膨張力)によってサブ角型電池モジュール150の構成部品に生じる歪みは電池セル111の内圧(膨張力)に比例する。従って、歪みゲージ160から出力された計測信号に基づいて得られた歪みの時間変化率を求め、この求めた時間変化率と、予め試験結果に基づいて設定した、歪みの時間変化率に対する閾値(電池セル111の異常及び正常を判定するための判定値)とを比較し、この比較結果から、求められた歪みの時間変化率が閾値よりも大きいか否かを判断することにより、サブ角型電池モジュール150を構成する6個の電池セル111の異常を検出することができる。
歪みの時間変化率に対する閾値は予め、図2と同じ構成のサブ角型電池モジュール150のサンプルを製作して試験的に求める。具体的には、作成したサンプルのサブ角型電池モジュール150を構成する6個の電池セル111のうちの一つの内圧を意図的に、例えば0.1MPa/min程度で圧力を上昇させ、このときの、端板111の凹部151aの底部(薄肉部)に取り付けた歪みゲージ160によって測定された歪みの時間変化率、例えば1秒変化したときの歪みの変化率を求め、これを歪み時間変化率の閾値とする。歪み時間変化率の閾値は、バッテリ装置100を製造する段階において、バッテリ制御装置130のMCUのメモリに書き込み記憶させる。
歪みにより電池セル111の異常を検出する方法としては、まず、バッテリ装置100の充放電(負荷運転)時に、電池モジュール110を構成するサブ角型電池モジュール150の端板151の凹部151aの底部(薄肉部)に取り付けられた歪みセンサ160の出力信号から周期的に歪みを検知する。次に、歪みセンサ160の出力信号から周期的に得られた歪み情報から、歪みの時間変化率(例えば1秒変化したときの歪みの変化率)を求める。次に、前のステップにおいて求めた歪みの時間変化率と、予め閾値として記憶された時間変化率の閾値とを比較(求めた歪みの時間変化率−閾値、又は、閾値−求めた歪みの時間変化率)し、求められた歪みの時間変化率が閾値よりも大きい(求めた歪みの時間変化率−閾値>0、又は、閾値−求めた歪みの時間変化率<0)か否かを判断する。この判断結果、肯定の場合には、サブ角型電池モジュール150を構成する6個の電池セル111のいずれかに異常があるとして、異常処理を実行する。一方、否定の場合には、最初のステップに戻り、上述した一連の処理を繰り返し実行する。
異常処理としては、バッテリ制御装置130或いは車両制御装置8若しくはモータ制御装置340から、第1及び第2正極側リレー410,430及び第1及び第2負極側リレー420,440のうち、投入されているリレーに対してリレー開放の指令信号を出力し、投入されているリレーを開放させる。これにより、電池モジュール110とインバータ装置300のパワーモジュール310との間或いは充電器500の昇圧回路520との間の電気的な接続が遮断され、電池モジュール110に入力される或いは電池モジュール110から出力される電流が遮断される。この結果、異常が生じた電池セル111の内圧の上昇を抑制した状態で、バッテリ装置100の動作を安全に停止させることができる。このように、本実施形態では、電池セル111の膨張力により生じる歪みを検知して電池セル111の異常を検出することができるので、バッテリ装置100の信頼性を向上させることができる。
〔実施形態2〕
第2実施形態を図7に基づいて説明する。
図7は、サブ角型電池モジュール150の一つの構成部品である端板151の全体構成を示す。
第1実施形態では、端板151の中央部分のみに凹部151aを設けた。これに対して、本実施形態では、周縁部にも10個の凹(窪み)部151bを設けている。
10個の凹部151bの形状は凹部151aと同様の矩形状であるが、外形寸法が3種類ある。3種類の外形寸法からなる10個の凹部151bは端板151(凹部151aの底部)の中心を貫く中心軸に直行する長手方向及び短手方向の軸線に対して線対称になるように、或いは中心軸を回転軸として180度回転したとき回転対象となるように配置されている。10個の凹部151bは、深さが凹部151aと同様の深さになるように、電池セル111側とは反対側から電池セル111側に向かって窪んでいる。
尚、本実施形態によれば、10個の凹部151bの形状を矩形状としたが、他の形状を採用してもよい。また、凹部151bの数も異なる数としてもよい。さらに、本実施形態によれば、凹部151bの深さを凹部151aと同じ深さとしたが、異なる深さとしてもよい。
これ以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成には第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、端板151の凹部151aの底部に取り付けた歪みゲージ160によって、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みを感度よく測定し、この測定結果に基づいて、電池セル111の異常を検出することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
しかも、以上説明した本実施形態によれば、歪みゲージ160の取り付けがサブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがない。
また、以上説明した本実施形態によれば、端板151の周縁部に凹部151bを形成したので、端板151の軽量化,材料使用量削減による低コスト化を図ることができる。さらに、以上説明した本実施形態によれば、凹部151bを複数個形成し、隣り合う凹部151b間の間仕切壁、凹部151bと凹部151aとの間の間仕切壁(凹部151aの外壁)、及び端板151の最外壁による格子を形成したので、端板151の強度を確保することができる。
〔実施形態3〕
第3実施形態を図8に基づいて説明する。
図8は、サブ角型電池モジュール150の一つの構成部品である端板151の全体構成を示す。
第1実施形態では、端板151の電池セル111側の主面は平面であった。これに対して、本実施形態では、セルホルダ152の突部(畝部)152bと同様の形状,寸法,配置の三つの突部(畝部)151cを、端板151の電池セル111側の主面に一体形成している。これにより、端板151に面接触していた電池セル111(電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端の電池セル111)と端板151との間には、セルホルダ152及び電池セル111によって形成される冷却流路152cと同様の形状,寸法,配置の冷却流路が形成される。
また、本実施形態では、端板151の凹部151aの深さを第1実施形態よりも深く、すなわち端板151の凹部151aの底部の肉厚を第1実施形態よりも薄くしている。これは、端板151に設けた突部(畝部)151cによって端板151の凹部151aの底部の硬度が大きくなり、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪み(変形)量が減少(歪みが減衰)し、歪みゲージ160による歪みの測定感度が小さくなるからである。このため、本実施形態では、端板151の凹部151aの深さを第1実施形態よりも深くして、端板151の凹部151aの底部の硬度を第1実施形態よりも軟らかくし、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みの増幅率が第1実施形態と同等になるようにしている。
これ以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成には第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、端板151の凹部151aの底部に取り付けた歪みゲージ160によって、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みを感度よく測定し、この測定結果に基づいて、電池セル111の異常を検出することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
しかも、以上説明した本実施形態によれば、歪みゲージ160の取り付けがサブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがない。
また、以上説明した本実施形態によれば、端板151に面接触していた電池セル111(電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端の電池セル111)と端板151との間に冷却流路を形成したので、端板151に面接触していた電池セル111(電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端の電池セル111)の電池缶21の両主面を、他の電池セル111と同様に冷却することができ、サブ角型電池モジュール150を構成する複数の電池セル111の温度が均一化されるようにサブ角型電池モジュール150の温度を制御することができる。これにより、以上説明した本実施形態によれば、バッテリ装置100の性能を向上させることができる。
さらに、以上説明した本実施形態によれば、端板151の凹部151aの深さを第1実施形態よりも深くして、端板151の凹部151aの底部の硬度を第1実施形態よりも軟らかくし、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みの増幅率が第1実施形態と同等になるようにしているので、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みの歪みゲージ160による測定感度を第1実施形態と同等にすることができる。
尚、以上説明した本実施形態では、第1実施形態の端板151を前提として、その端板151に突部(畝部)151cを設けた場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態の端板151を前提として、その端板151に突部(畝部)151cを設けるようにしてもよい。この場合、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
〔実施形態4〕
第4実施形態を図9及び図10に基づいて説明する。
図9は、サブ角型電池モジュール150の全体構成を示す。図10は、サブ角型電池モジュール150の一つの構成部品である端板151の全体構成を示す。
第3実施形態では、端板151の電池セル111側の主面(平面)に突部(畝部)151cを一体形成した。これに対して、本実施形態では、第3実施形態の端板151の凹部151aを、その底部まで切欠いて矩形状の貫通孔154aとした端板154とし、この端板154の電池セル111側に、セルホルダ152の片側の突部(畝部)152bを取り除いたセルホルダ155を配置し、セルホルダ155の平面部155aの突部(畝部)155b側とは反対側の平面によって、端板154の電池セル111側の主面を覆って貫通孔154aの電池セル111側の開口部を塞いでいる。セルホルダ155の平面部155aの突部(畝部)155b側とは反対側の平面の、端板154の貫通孔154aの電池セル111側の開口部を塞いでいる部位の中央部には歪みゲージ160が取り付けられている。この場合、歪みゲージ160は、セルホルダ155によって押圧された電池セル111を介してセルホルダ155に伝達された、電池セル111の膨張力によってセルホルダ155に生じる歪み(変形)を測定する。
これ以外の構成は第3実施形態と同様である。第3実施形態と同様の構成には第3実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、セルホルダ155の平面部155aの突部(畝部)155b側とは反対側の平面に取り付けられた歪みゲージ160によって、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みを感度よく測定し、この測定結果に基づいて、電池セル111の異常を検出することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
しかも、以上説明した本実施形態によれば、歪みゲージ160の取り付けがサブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがない。
また、以上説明した本実施形態によれば、セルホルダ155によって押圧される電池セル111(電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端の電池セル111)とセルホルダ155との間に冷却流路を形成し、セルホルダ155によって押圧される電池セル111(電池セル111及びセルホルダ152の配列体の配列方向両端の電池セル111)の電池缶21の両主面を、他の電池セル111と同様に冷却することができるので、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
尚、以上説明した本実施形態では、第1実施形態を前提とした第3実施形態の端板151を、端板154及びセルホルダ155からなるものに置換した場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態を前提とした第3実施形態の端板151を、端板154及びセルホルダ155からなるものに置換してもよい。この場合、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
〔実施形態5〕
第5実施形態を図11に基づいて説明する。
図9は、サブ角型電池モジュール150の全体構成を示す。
第1実施形態では、端板151に歪みゲージ160を取り付けた。本実施形態では、第1実施形態の接続板153よりも幅(短手方向の長さ)が大きい接続板157(平板形状の金属製の梁)によって、第1実施形態の端板151の凹部151aを埋めた一対の端板156(高さ寸法が縦及び横の寸法よりも小さい扁平直方体)間を接続すると共に、接続板157の長手方向中央部に楕円形状(長軸の延びる方向が接続板157の長手方向、長軸に直交する短軸の延びる方向が接続板157の短手方向になるように設けられた楕円形状)の貫通孔157aを形成し、貫通孔157aの短軸方向における貫通孔157aよりも外側にある接続板157の中実部分、具体的には接続板157の中実部分のうち、貫通孔157aの外周と接続板157の縁との間の距離が最も短い部位の一方に歪みゲージ160を取り付けている。
接続板157は、電池セル111,セルホルダ152及び端板156の配列体の配列方向に直交する4面のうち、電池セル111の電池蓋22及び電池缶21の底面と対向する2面とは異なる2面(電池缶21の主面、セルホルダ152の平面部152a及び端板156の主面の長手方向に面する2面)側にそれぞれ一つ、電池セル111,セルホルダ152及び端板156の配列体の配列方向に延びるように配置されると共に、電池セル111,セルホルダ152及び端板156の配列体が圧縮された状態で一対の端板156の主面の長手方向両端の側面に、溶接或いはボルトなどの締結部材によって接続されている。これにより、電池セル111,セルホルダ152及び端板156の配列体は、端板156と接続板157との締結力によって、電池セル111とセルホルダ152とが接触して常に圧縮された状態で保持(固縛)される。
以上の固縛状態において、電池セル111の内圧が増大し、その圧力によって電池缶21の主面が形状変化、すなわち膨らもうとすると、電池缶21の主面を形状変化させようとする圧力(膨張力)は応力となって、内圧が増大した電池セル111から直接、或いは他の電池セル111及びセルホルダ152を介して端板156に作用し、この後、端板156から接続板157に作用する。これにより、接続板157には歪み(変形)が生じる。この歪みは、接続板157の貫通孔157a近傍に取り付けられた歪みゲージ160によって測定される。
ここで、歪みゲージ160が取り付けられた接続板157の中実部位は、貫通孔157aの外周と接続板157の縁との間の距離が最も短い部位である。このため、接続板157の中実部位のうち、貫通孔157aの外周と接続板157の縁との間の距離が最も短い部位では、接続板157に生じた歪みが最も集中し、他の部位よりも歪みが増幅される。従って、接続板157に生じた歪みは歪みゲージ160によって感度よく測定される。以上のことから、貫通孔157aは、接続板157に生じた歪みを集中させて増幅させるための増幅機構を構成するための構成要素ということができる。
これ以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成には第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、接続板157の中実部位のうち、貫通孔157aの外周と接続板157の縁との間の距離が最も短い部位に取り付けた歪みゲージ160によって、電池セル111の形状変化である膨らみによって生じる歪みを感度よく測定し、この測定結果に基づいて、電池セル111の異常を検出することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
しかも、以上説明した本実施形態によれば、歪みゲージ160の取り付けがサブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがない。
尚、以上説明した本実施形態では、第1実施形態の端板151の凹部151aを埋めた端板156を用いた場合を例に挙げて説明したが、第1乃至第3実施形態のいずれかの端板151、或いは第4実施形態の端板154及びセルホルダ155の組み合わせたものを用いても構わない。この場合、第1乃至第4実施形態のいずれかと同様の作用効果を奏することができる。
〔実施形態6〕
第6実施形態を図12に基づいて説明する。
図12は、サブ角型電池モジュール150の全体構成を示す。
第1実施形態では、端板151に歪みゲージ160を取り付けた。本実施形態では、サブ角型電池モジュール150を構成する六つの電池セル111のうちの一つの電池セル111に歪みゲージ160を取り付けている。具体的には、一つの電池セル111の電池缶21を構成する四つの側面(二つの主面を除く残りの4面)のうち、電池缶21の主面の長手方向における側面(電池蓋22及び電池缶21の底面を除く残りの2面)の一方側の長手方向(電池缶21の主面の短手方向と同方向)及び短手方向(電池セル111の配列方向と同方向)の中央部に歪みゲージ160を貼り付けている。
電池セル111の内圧が増大し、その圧力によって電池缶21の主面が形状変化、すなわち膨らもうとすると、電池缶21の主面を形状変化させようとする圧力(膨張力)は応力となって、内圧が増大した電池セル111から直接、或いは他の電池セル111及びセルホルダ152を介して、歪みゲージ160が取り付けられた電池セル111の電池缶21の側面に作用する。これにより、歪みゲージ160が取り付けられた電池セル111の電池缶21の側面には歪み(変形)が生じる。この歪みは、その側面の中央部に貼り付けられた歪みゲージ160によって測定される。
ここで、歪みゲージ160によって測定する歪み方向は複数の電池セル111の積層(配列)方向である。これは、長方形状の平板に等分布荷重の負荷をかけた時、短辺方向の歪みが長辺方向の歪みに対して辺の長さ比程度の割合で増幅されるためである。この作用効果は、アスペクト比の大きい角型形状の電池セル111である程大きい。従って、本実施形態では、増幅度の大きい歪みを歪みゲージ160によって感度よく測定することができる。
端板156は、第5実施形態と同様に、第1実施形態の端板151の凹部151aを埋めたもの(高さ寸法が縦及び横の寸法よりも小さい扁平直方体)を採用している。
これ以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成には第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、複数の電池セル111のうちの一つの電池セル111を構成する電池缶21の一つの側面において、複数の電池セル111の積層(配列)方向における歪みを、歪みゲージ160によって感度よく測定し、この測定結果に基づいて、電池セル111の異常を検出することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
しかも、以上説明した本実施形態によれば、歪みゲージ160の取り付けがサブ角型電池モジュール150の設計や組み立てなどに影響を及ぼすことがない。
尚、以上説明した本実施形態では、第1実施形態の端板151の凹部151aを埋めた端板156を用いた場合を例に挙げて説明したが、第1乃至第3実施形態のいずれかの端板151、或いは第4実施形態の端板154及びセルホルダ155の組み合わせたものを用いても構わない。この場合、第1乃至第4実施形態のいずれかと同様の作用効果を奏することができる。