JP2012229330A - タッキファイヤー、ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents

タッキファイヤー、ゴム組成物およびタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】植物由来率の向上と優れた粘着付与性能とを両立できるタッキファイヤー、該タッキファイヤーを配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いたタイヤの提供。
【解決手段】ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)と、水またはメチルエチルケトンに25℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)と、を含有する組成物、または前記(A)成分を含む第一剤と、前記(B)成分を含む第二剤とを備えるキットであり、植物由来率が10質量%以上であるタッキファイヤー。
【選択図】なし

Description

本発明は、タッキファイヤー、該タッキファイヤーを配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
タイヤを始めとした多くのゴム製品の製造工程には、未加硫ゴム組成物を貼り合わせて成形する工程が含まれている。この未加硫ゴム組成物に粘着性(タック性)を付与する目的で、ゴム組成物にタッキファイヤー(粘着付与剤)が配合されている。タッキファイヤーとしては、通常、ゴムに比べて分子量ははるかに小さく、ガラス転移点が室温以上で、ゴム弾性を示さない樹脂類が用いられており、該樹脂類としては、パラターシャリーブチルフェノール・アセチレン樹脂、パラオクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂といったアルキルフェノール樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂等の石油系樹脂が一般的に使用されている(非特許文献1)。
一方、石油を始めとした化石資源には枯渇の問題がある。また、化石資源由来原料を使用した材料は、製品の廃棄焼却時に二酸化炭素を排出し、大気中の二酸化炭素総量を増加させる問題がある。このような資源問題、環境問題に対する国際的な関心の高まりに従い、植物由来原料を使用したバイオマス樹脂等のバイオマス材料への関心が高まっている。バイオマス材料は、原料が石油や鉱物より短時間で再生される資源である植物に由来しており、大気中の二酸化炭素総量を増加させない、いわゆるカーボンニュートラル材料である。
バイオマス材料としては、ポリ乳酸が広く知られている。また、フェノール原料および/またはアルデヒド原料に植物由来原料を用いたバイオマスフェノール樹脂も提案されている。たとえば特許文献1には、フェノール類と糖質類とを反応させて得たフェノール樹脂が開示されている。
タッキファイヤーとして、バイオマス材料を用いることも提案されている。たとえば特許文献2には、バイオマスから回収された、双極子又は水素結合効果により生じる粘着付与性を有するリグニンを含有する粘着付与剤組成物が開示されている。該リグニンとしては、水への溶解性が1質量%以下で、炭水化物量が50質量%以下のものが有効とされている。
「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品 最新版」、(株)ラバーダイジェスト社発行(1989年)、第132−146頁
特開2010−090297号公報 特開平5−98082号公報
化石資源由来原料から植物由来原料への転換の要求が高まるなか、従来タッキファイヤーとして用いられている石油系樹脂に換えてバイオマスフェノール樹脂を用いることが考えられる。
しかし、バイオマスフェノール樹脂は、石油系樹脂に比べて粘着付与性能が低く、ゴム組成物に充分な粘着性を付与できない問題がある。この問題は、バイオマスフェノール樹脂の植物由来率が高くなるほど顕著になる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、植物由来率の向上と優れた粘着付与性能とを両立できるタッキファイヤー、該タッキファイヤーを配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂に特定の両親媒性化合物を組み合わせることにより、優れた粘着付与効果が発現することを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第一の態様は、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)と、水またはメチルエチルケトンに25℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)と、を含有する組成物であり、植物由来率が10質量%以上であるタッキファイヤーである。
本発明の第二の態様は、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)を含む第一剤と、25℃の水またはメチルエチルケトンに固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)を含む第二剤とを備えるキットであり、植物由来率が10質量%以上であるタッキファイヤーである。
本発明の第三の態様は、ゴムと、前記第一の態様または第二の態様のタッキファイヤーとを含有するゴム組成物である。
本発明の第四の態様は、前記第三の態様のゴム組成物を用いたタイヤである。
なお、特許文献2には、前記リグニンを、フェノール粘着付与樹脂、炭化水素粘着付与樹脂等の第二粘着付与樹脂とブレンドすることが記載されている。しかし、それらをブレンドしたものの粘着付与効果は、第二粘着付与樹脂単独の場合の粘着付与効果とほぼ同等である。また、後述する[実施例]に示すように、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂にリグニンを配合しても、粘着付与効果は向上せず、逆に低下してしまう。
本発明によれば、植物由来率の向上と優れた粘着付与性能とを両立できるタッキファイヤー、該タッキファイヤーを配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いたタイヤを提供できる。
<タッキファイヤー>
本発明のタッキファイヤーは、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)(以下、(A)成分ということがある。)と、水またはメチルエチルケトンに25℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)(以下、(B)成分ということがある。)と、を必須の構成成分とする。
[(A)成分]
(A)成分は、ノボラック型バイオマスフェノール樹脂である。
「ノボラック型バイオマスフェノール樹脂」とは、植物由来原料を用いて得られるノボラック型フェノール樹脂を示す。つまり、フェノール成分と架橋成分とを酸触媒の存在下で反応させて得られ、かつ前記フェノール成分および架橋成分のいずれか一方または両方が、植物由来原料を含むフェノール樹脂を示す。
(A)成分は、さらに、石油、天然ガス等の化石資源由来原料を含んでもよい。
フェノール成分としては、植物由来フェノール成分(植物由来原料)、化石資源由来フェノール成分(化石資源由来原料)、それらの混合物等が挙げられる。
植物由来フェノール成分としては、カルダノール、カシューナットシェル油、ウルシオール、オイゲノール等が挙げられる。これらは、ベンゼン環に結合する置換基として直鎖状の不飽和炭化水素基を有するフェノール化合物、または該フェノール化合物を含む複数の化合物の混合物である。
化石資源由来フェノール成分としては、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
架橋成分が植物由来原料を含む場合、フェノール成分としては、植物由来フェノール成分のみを用いても、化石資源由来フェノール成分のみを用いても、それらの混合物を用いてもよい。
架橋成分が植物由来原料を含まない場合、フェノール成分としては、植物由来フェノール成分、または植物由来フェノール成分と化石資源由来フェノール成分との混合物が用いられる。
架橋成分としては、植物由来架橋成分(植物由来原料)、化石資源由来架橋成分(化石資源由来原料)、それらの混合物等が挙げられる。
植物由来架橋成分としては、糖質類、澱粉誘導体類等が挙げられ、具体例としては、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、デキストリン、オリゴ糖、フラクタン、フラクオリゴ糖、ショ糖、澱粉、化工澱粉、アミロース、アミロペクチン、廃棄糖蜜等が挙げられる。
化石資源由来架橋成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキザール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
フェノール成分が植物由来原料を含む場合、架橋成分としては、植物由来架橋成分のみを用いても、化石資源由来架橋成分のみを用いても、それらの混合物を用いてもよい。
フェノール成分が植物由来原料を含まない場合、架橋成分としては、植物由来架橋成分、または植物由来架橋成分と化石資源由来架橋成分との混合物が用いられる。
(A)成分を製造する際のフェノール成分と架橋成分との使用量の比率(質量比)は、架橋成分を1とした場合にフェノール成分が2〜20倍であることが好ましく、3〜6倍であることがより好ましい。フェノール成分が架橋成分の2倍以上であれば、反応率を高くして収率を高くできる上に分子量を高くできる。フェノール成分が架橋成分の20倍以下であれば、経済的にも安価にバイオマスフェノール樹脂が得られる。
酸触媒としては、従来ノボラック型フェノール樹脂の製造に用いられているものが利用でき、例えば、鉱酸類(例えば、塩酸、硫酸等)、有機酸類(例えば、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等)などが挙げられる。
酸触媒の使用量は、フェノール成分と架橋成分との合計(100質量%)に対し、0.1〜50質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば、反応が良好に進行する。50質量%以下であれば、反応生成物の酸分解やゲル化を抑制できる。
フェノール成分と架橋成分とを反応させる際の反応温度は、20〜200℃が好ましく、80〜160℃がより好ましい。20℃以上であれば、充分に反応させることができる。200℃以下であれば、反応生成物の分解を抑制できる。
反応時間は、反応温度によっても異なるが、0.5〜20時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。0.5時間以上であれば、高い収率でノボラック型バイオマスフェノール樹脂を得ることができる。20時間以下であれば、生産性が良好である。
本発明において、(A)成分は、植物由来率が15質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。これにより、タッキファイヤーの植物由来率を容易に10質量%以上とすることができる。
(A)成分の植物由来率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。樹脂の生産性の点からは、95質量%以下が好ましい。
ここで、(A)成分の植物由来率とは、当該ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)を構成するフェノール成分および架橋成分の合計に対する植物由来原料(植物由来フェノール成分、植物由来架橋成分)の比率(質量%)である。
タッキファイヤーに含まれる(A)成分は1種でも2種以上でもよい。
[(B)成分]
(B)成分は、水またはメチルエチルケトンに25℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物である。
「両親媒性化合物」とは、一分子中に親油基と親水基の両方をもった化合物である。
「極性溶媒に固形分で30質量%以上溶解する」とは、固形分濃度30質量%以上の溶液(水溶液またはメチルエチルケトン溶液)とすることができることを意味する。
(B)成分としては、上記溶解性を有するものであれば特に限定されずに使用できる。たとえば、植物、動物、微生物等の生物由来化合物またはそれを原料とした化合物を用いてもよく、石油、天然ガス等の化石資源由来化合物またはそれを原料とした化合物を用いてもよく、それらを併用してもよい。
上記のなかでも、生物由来化合物またはそれを原料とした化合物が好ましく、特に、タッキファイヤーの植物由来率が向上する点から、植物由来化合物またはそれを原料とした化合物が好ましい。
生物由来化合物またはそれを原料とした化合物としては、例えば、レシチン、アルキルグルコシド、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
レシチンは、動植物より取り出された、リン脂質を含む混合物を意味する。
リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称であり、脂肪酸残基を含み、該脂肪酸残基が親油基として機能する。リン脂質は脂肪酸、アルコール、リン酸、その他の物質が化合して構成され、脂肪酸としては、炭素数11〜20の脂肪酸が好ましく、例えばステアリン酸、パルミチン酸等が挙げられる。アルコールとしてはグリセリン等が挙げられる。その他の物質としては、コリン、エタノールアミン、イノシトール等が挙げられる。
レシチンとしては、ホスファチジン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。主成分とは、全成分の合計に対する割合が50質量%以上であることを示す。ホスファチジン酸は、グリセロリン酸のOHに脂肪酸2分子がエステル結合した化合物である。該脂肪酸としては前記と同様のものが挙げられる。ホスファチジン酸の誘導体としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール等が挙げられる。これらのリン脂質は、動植物界では卵黄、大豆、穀物、レバー、うなぎ等に多く含まれている。
レシチンは、工業的には、大豆や卵黄等より採取されたものが大豆レシチン、卵黄レシチン等の形で広く流通しており、本発明においてもこれらレシチンを使用することができる。これらのレシチンには、リン脂質のほか、ホスファチジン酸、トリグリセリド、脂肪酸、炭水化物等が含まれている。
アルキルグルコシドは、グルコースにアルキル基がエーテル結合した化合物である。
該アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数は1〜30が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基などが挙げられる。
このようなアルキルグルコシドは、化粧品、香粧品、洗剤等の用途向けに広く流通している。
アルキルグルコシドとして具体的には、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。式中、Rのアルキル基は前記と同様である。
Figure 2012229330
[式中、Rはアルキル基である。]
リグニンスルホン酸塩は、木材、竹、ワラ等の木化植物を亜硫酸、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩で処理することにより木化植物から分離されるリグニン誘導体である。
リグニンは、木化植物の主成分の一つで、フェニルプロパンを基本骨格とする構成単位が結合してできた網状高分子化合物である。木化植物に存在するリグニンをそのままの形で取り出すことは難しく、木化植物からの分離操作の際に分解や化学変化を起こす。そのため、市販されているリグニン製品は、その分離方法により区別され、木化植物を水酸化ナトリウム水溶液で加圧加熱抽出し、その抽出液を中和することにより得られるアルカリリグニン、木化植物を亜硫酸、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩で処理して得られるリグニンスルホン酸塩、木化植物を硫化ナトリウム等で処理して得られるチオリグニン、酸含有アルコールで抽出して得られるアルコールリグニン、フェノールで抽出して得られるフェノールリグニン等がある。
リグニンスルホン酸塩は、複数のフェニルプロパンが結合した骨格(フェニルプロパン骨格)を有するスルホン酸塩で、該フェニルプロパン骨格が親油基として機能する。
塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、ナトリウム塩またはカルシウム塩が好ましい。
リグニンスルホン酸塩の一例として、下記一般式(II)で表される化合物、該式(II)中のベンゼン環の−OHのオルト位に結合した水素原子を−OCHで置換した化合物、該式(II)中のベンゼン環の−OHのオルト位に結合した−OCHを水素原子で置換した化合物、等が挙げられる。
Figure 2012229330
[式中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子であり、Rは水素原子または下記式(1)で表される基である。]
Figure 2012229330
[式中、Mは前記と同じであり、nは0〜10の整数である。]
なお、リグニンスルホン酸塩の植物由来率は、分子構造中、塩を形成している金属(カルシウム等)および亜硫酸基を除いた部分の割合(質量%)を示し、以下の手順で求められる。
試料としてリグニンスルホン酸塩を約1g磁製るつぼに精秤し、極めて小さい炎で加熱して試料を炭化させたのち、硫黄の沸点以上、塩を形成している金属の沸点未満の温度で、電気炉中で強熱灰化し、デシケーター中に30分間放冷した後、秤量する。秤量は1回で止めず、強熱以下の操作を繰り返し、恒量になるまで行い、塩を形成している金属量(強熱残分)から次式を用いて植物由来率を算出する。
植物由来率(%)=[1−(強熱残分(g)/塩を形成している金属の原子量)×(塩を形成している金属の原子量+硫黄の原子量×塩を形成している金属の原子価数+酸素の原子量×塩を形成している金属の原子価数×3)/試料量(g)]×100
タッキファイヤーに含まれる(B)成分は1種でも2種以上でもよい。
タッキファイヤー中、(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜25質量部がより好ましい。0.1質量部以上であると、タッキファイヤーが充分な粘着付与性能を有するものとなる。50部を超えて配合しても、その増分に応じた粘着付与性能の向上が見られない場合がある。
本発明のタッキファイヤーは、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分および(B)成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、たとえば、アルキルフェノール樹脂をはじめとしたノボラック型化石資源由来フェノール樹脂(化石資源由来原料のみを用いて得られるノボラック型フェノール樹脂)、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂等の石油系樹脂等が挙げられる。
ただし、本発明の効果の点では、タッキファイヤーが、(A)成分および(B)成分からなるものであることが最も好ましい。
本発明のタッキファイヤーは、植物由来率が10質量%以上である。該植物由来率は、バイオマス材料としての有用性の点からは、20質量%以上が好ましい。
タッキファイヤーの植物由来率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。(A)成分の生産性の点からは、95質量%以下が好ましい。
ここで、タッキファイヤーの植物由来率とは、当該タッキファイヤー中の全成分に占める植物由来原料の比率(質量%)であり、各成分の配合量および植物由来率から求められる。
たとえばタッキファイヤーが(A)成分と(B)成分とからなる場合、その植物由来率は、下記式により算出される。
植物由来率(%)={((A)成分の配合量)×((A)成分の植物由来率(質量%))×0.01+((B)成分の配合量)×((B)成分の植物由来率)×0.01}/{((A)成分使用量)+((B)成分使用量)}
本発明のタッキファイヤーは、ゴムに対する優れた粘着付与効果を有している。
上記(A)成分と(B)成分との組み合わせにより優れた粘着付与効果が発揮される理由は明らかではないが以下のように推測される。
パラターシャリーブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂やパラオクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂といったゴム配合用タッキファイヤーとして通常使用されるフェノール樹脂は、その分子内にフェノール性水酸基と、分岐状アルキル基、長鎖アルキル基等の親油性の高いアルキル基が付加した芳香族炭化水素基の両者を併せ持つ。前記芳香族炭化水素基は、親油基としてゴム成分に相溶させる機能を持ち、フェノール性水酸基は、親水基としてゴム分子鎖間の分子間力を弱める機能を持ち、これら親油基と親水基両者の働きによりゴムに粘着性を付与していると考えられる。
これに対し、(A)成分は、フェノール性水酸基を持つものの、親油基としては、通常、フェニル基のみであったり、またはその一部に直鎖状の不飽和炭化水素基が付加しているのみであるため、単独ではゴムとの相溶性に劣り、充分な粘着性付与効果が期待できなかったと考えられる。
本発明において用いられる(B)成分は、一分子中に親水基と親油基を併せ持ち、界面活性剤としての機能を持つため、(A)成分をゴムに対して均一に相溶させる。またゴム中では、(A)成分の不飽和炭化水素基と(B)成分の親油基、および(A)成分のフェノール性水酸基と(B)成分の親水基がそれぞれ同一方向に配列する。それらの相乗効果により、ゴム分子鎖間の分子間力がさらに弱まり、ゴムに対する粘着性付与効果が飛躍的に向上したと考えられる。
本発明のタッキファイヤーは、(A)成分と(B)成分とを含有する組成物であってもよく、(A)成分を含む第一剤と(B)成分を含む第二剤とを備えるキットであってもよい。すなわち、(A)成分および(B)成分を、組成物としてゴムに配合してもよく、別々にゴムに配合してもよい。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴムと、前記本発明のタッキファイヤーとを含有する。
ゴムとしては、特に限定されず、天然ゴム(NB)でも合成ゴムでもよい。合成ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
本発明のタッキファイヤーの含有量は、ゴム100質量部に対し、0.5〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。0.5質量部以上であると、粘着付与効果が充分に得られる。50質量部を超えても、その増分に応じた粘着付与効果が見られない上、引張り強度等、他の必要特性の物性値低下が起こるおそれがある。
ゴム組成物は、さらに、任意成分として、ゴムおよび本発明のタッキファイヤー以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、従来、ゴム工業界で通常使用される添加剤が利用でき、たとえばカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、マイカ、クレーなどの無機フィラー、補強用フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の硬化剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、各種オイル、ワックス等が挙げられる。
本発明のゴム組成物には、未加硫状態のものも、加硫状態のものも含まれる。
未加硫状態のゴム組成物(未加硫ゴム組成物)は、ゴムと、本発明のタッキファイヤーと、任意成分とを、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどで混練することにより製造できる。このとき、タッキファイヤーは、上述したように、(A)成分と(B)成分とを含有する組成物としてゴムに配合してもよく、(A)成分と(B)成分を別々にゴムに配合してもよい。
加硫状態のゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、上記未加硫ゴム組成物を加硫することにより製造できる。加硫は常法により実施できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤ、ベルト、ゴムクローラ、防振ゴム、靴等の用途に利用できる。なかでもタイヤ用として有用である。
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、たとえば、タイヤの各部材向けに調製されたゴム組成物と本発明のゴム組成物を、それぞれ未加硫の状態にて所定形状に加工し、それらをタイヤ成形機により貼り合わせて生タイヤ(未加硫状態)を形成し、これを加硫機中で加熱、加圧することにより製造できる。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下の各例で使用した原料を以下に示す。
[タッキファイヤーの製造に用いた原料]
{1.樹脂}
バイオマスフェノール樹脂1:群栄化学工業社製、バイオ★スター(登録商標)BPS−2101(フェノール−糖質類樹脂、軟化点96℃、植物由来率20%)。
バイオマスフェノール樹脂2:群栄化学工業社製、バイオ★スター(登録商標)BPS−4508(カルダノール−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、軟化点89℃、植物由来率50%)。
バイオマスフェノール樹脂3:群栄化学工業社製、バイオ★スター(登録商標)BPS−6503(カルダノール−フェノール−化工澱粉樹脂、軟化点95℃、植物由来率38%)。
バイオマスフェノール樹脂4:群栄化学工業社製、バイオ★スター(登録商標)BPL−4505(カルダノール−ホルムアルデヒド樹脂、室温で液状、植物由来率95%)。
バイオマスフェノール樹脂5:群栄化学工業社製、バイオ★スター(登録商標)BPS−4301(カシューナットシェル油−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、軟化点85℃、植物由来率30%)。
化石資源由来フェノール樹脂(比較品):群栄化学工業社製、PS−2851(パラオクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、融点77℃、植物由来率0%)。
変性アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合体(比較品):田岡化学工業社製、タッキロール130(変性アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、軟化点95℃、植物由来率0%)。
上記のうち、バイオマスフェノール樹脂1〜5、化石資源由来フェノール樹脂はいずれもノボラック型である。
表1に、使用した樹脂の軟化点、植物由来率を示した。また、フェノール樹脂については原料(フェノール成分、架橋成分)も示した。
Figure 2012229330
{2.両親媒性化合物}
レシチン:昭和産業社製、レシチン(大豆由来レシチン、植物由来率100%、25℃のメチルエチルケトンに固形分50質量%で溶解)。
アルキルグルコシド:群栄化学工業社製、GS−AG12(植物由来率100%、アルキル基の炭素数12、25℃のメチルエチルケトンに固形分50質量%で溶解)
リグニンスルホン酸カルシウム:日本製紙ケミカル社製、サンエキスP201(植物由来率92%、25℃の水に固形分30質量%で溶解)。
リグニン(比較品):Sigma−Aldrich社製、Lignin,organosolv(天然由来率100%、25℃において水にもメチルエチルケトンにも溶解しない)。
[ゴム組成物の製造に用いた原料]
天然ゴム:RSS♯3。
カーボンブラック:キャボットジャパン社製、N−330。
ワックス:大内新興化学社製、サンノック。
老化防止剤:大内新興化学社製、ノクラック6C。
亜鉛華:堺化学社製、酸化亜鉛。
硫黄:鶴見化学工業社製、硫黄。
加硫促進剤:大内新興化学社製、ノクセラーNS−P。
<タッキファイヤーの調製>
[製造例1]
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた1L3口フラスコに、バイオマスフェノール樹脂1を500.0g仕込み、内温150℃まで昇温し樹脂を融解した。ここにレシチンを50.0g添加し、150℃にて30分間混合後、バットに取り出し、冷却後、粗砕することによりタッキファイヤー1を得た。
[製造例2]
バイオマスフェノール樹脂1をノボラック型バイオマス樹脂2に換えた以外は製造例1と同様の操作を行い、タッキファイヤー2を得た。
[製造例3]
レシチンをアルキルグルコシドに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー3を得た。
[製造例4]
レシチンをリグニンスルホン酸カルシウムに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー4を得た。
[製造例5]
バイオマスフェノール樹脂1をバイオマスフェノール樹脂3に換えた以外は製造例1と同様の操作を行い、タッキファイヤー5を得た。
[製造例6]
バイオマスフェノール樹脂1をバイオマスフェノール樹脂4に換えた以外は製造例1と同様の操作を行い、タッキファイヤー6を得た。
[製造例7]
バイオマスフェノール樹脂1をバイオマスフェノール樹脂5に換えた以外は製造例1と同様の操作を行い、タッキファイヤー7を得た。
[製造例8]
レシチン50.0gを2.5gに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー8を得た。
[製造例9]
レシチン50.0gを25.0gに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー9を得た。
[製造例10]
レシチン50.0gを100.0gに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー10を得た。
[製造例11(比較)]
レシチンをリグニンに換えた以外は製造例2と同様の操作を行い、タッキファイヤー11を得た。
[製造例12(比較)]
バイオマスフェノール樹脂1を化石資源由来フェノール樹脂に換えた以外は製造例1と同様の操作を行い、タッキファイヤー12を得た。
表2に、製造例1〜12で調製したタッキファイヤー1〜12の組成(単位:質量部)を示した。
Figure 2012229330
<ゴム組成物の調製>
[実施例1]
天然ゴムを100質量部、カーボンブラックを60質量部、ワックスを2質量部、老化防止剤を2質量部、ステアリン酸を4質量部、酸化亜鉛を5質量部、タッキファイヤー1を10質量部、加圧ニーダーにて150℃で5分間混練した。これに硫黄を2.5質量部、加硫促進剤を1.5質量部添加し、2軸ロールにて95℃5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物の一部を150mm×150mm×2mmの型内に入れ、150℃で40分間加熱することにより加硫ゴム組成物を得た。
[実施例2〜10]
タッキファイヤー1の代わりにタッキファイヤー2〜10を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得、同様の評価を行った。結果を表3に示した。
[実施例11(両親媒性化合物を別添加)]
天然ゴムを100質量部、カーボンブラックを60質量部、ワックスを2質量部、老化防止剤を2質量部、ステアリン酸を4質量部、酸化亜鉛を5質量部、バイオマスフェノール樹脂2を9.1質量部、レシチンを0.9質量部、加圧ニーダーにて150℃で5分間混練した。これに硫黄を2.5質量部、加硫促進剤を1.5質量部添加し、2軸ロールにて95℃5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物の一部を150mm×150mm×2mmの型内に入れ、150℃40分間加熱することにより加硫ゴム組成物を得た。
[比較例1]
タッキファイヤー1の代わりに変性アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合体を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
[比較例2]
タッキファイヤー1の代わりに化石資源由来フェノール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
[比較例3]
タッキファイヤー1の代わりにバイオマスフェノール樹脂2を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
[比較例4]
タッキファイヤー1の代わりにレシチンを用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
[比較例5]
タッキファイヤー1の代わりに、タッキファイヤー11を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
[比較例6]
タッキファイヤー1の代わりに、タッキファイヤー12を用いた以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
<ゴム組成物の評価>
実施例1〜11および比較例1〜6で得られた未加硫ゴム組成物の一部を用いて、下記タックの評価を行った。また、各例で得られた加硫ゴム組成物を用いて、下記破断強度の測定を行った。それらの結果を表3に示した。
[タック性]
JIS K6854−2に準じ、未加硫ゴム組成物から幅12.5mm、長さ150mmの切断片を切り出し、この切断片2枚について、長さ50mmの部分を引張り試験機つかみ治具のつかみ部とし、残り100mmの部分を50kgf/cmの圧力で張り合わせ試験片を作製した。
この試験片について、東洋精機製ストログラフV10−Cにより、つかみ移動速度100mm/分にて180度剥離接着強さを測定した。この測定値について、比較例1の値を100とした場合の指数表示にて表し、タック性の指標とした。この値が大きいほどタック性に優れている。
[破断強度]
加硫ゴム組成物について、JIS K6251に準じ、東洋精機製ストログラフV10−Cにて、ダンベル状3号とした試験片の破断強度を測定した。この破断強度の値が高いほど引張り強度に優れている。
Figure 2012229330
表3中、タッキファイヤーの植物由来率は、下記式により算出した。この植物由来率が高いほど、化石資源に対する依存が低い。また植物由来成分は、大気中の二酸化炭素を用いた光合成により得られるため、廃棄焼却時に排出される二酸化炭素はカーボンニュートラルの考えにより、大気中の二酸化炭素増加に影響を与えないと考えられる。したがって、植物由来率が高いほど、大気中の二酸化炭素増量を抑制する効果が高くなる。
植物由来率(%)={(樹脂使用量)×(樹脂の植物由来率)×0.01+(両親媒性化合物使用量)×(両親媒性化合物の植物由来率)×0.01}/{(樹脂使用量)+(両親媒性化合物使用量)}
上記結果に示すとおり、実施例1〜11では、植物由来率が10%以上のタッキファイヤーを用いて、従来タッキファイヤーとして用いられている変性アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合体を配合した比較例1よりも優れたタック性を付与することができた。また、得られた加硫ゴム組成物は、タイヤ等に適用するゴム材料として充分な破断強度を有していた。
一方、タッキファイヤーとしてバイオマスフェノール樹脂2のみを配合し、(B)成分を配合しなかった比較例3は、タック性が悪かった。
タッキファイヤーとしてレシチンのみを配合し、バイオマスフェノール樹脂を配合しなかった比較例4は、タック性が悪く、破断強度も悪かった。
タッキファイヤーとしてタッキファイヤー11(両親媒性化合物が極性溶媒に溶解しないリグニン)を配合した比較例5は、タック性が悪かった。
タッキファイヤーに従来タッキファイヤーとして用いられている化石資源由来フェノール樹脂を用いた比較例2、6は、タック性は向上したものの、タッキファイヤーの植物由来率が10質量%未満であり、バイオマス材料としての要求を満たしていなかった。

Claims (6)

  1. ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)と、水またはメチルエチルケトンに25 ℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)と、を含有する組成物であり、植物由来率が10質量%以上であるタッキファイヤー。
  2. ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)を含む第一剤と、水またはメチルエチルケトンに25℃にて固形分で30質量%以上溶解する両親媒性化合物(B)を含む第二剤とを備えるキットであり、植物由来率が10質量%以上であるタッキファイヤー。
  3. 前記ノボラック型バイオマスフェノール樹脂(A)の植物由来率が15質量%以上である、請求項1または2に記載のタッキファイヤー。
  4. 前記両親媒性化合物(B)が、レシチン、アルキルグルコシドおよびリグニンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッキファイヤー。
  5. ゴムと、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッキファイヤーとを含有するゴム組成物。
  6. 請求項5に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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