実施の形態1.
図1〜図6は、本発明の実施の形態1にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、図1はオゾン発生装置の放電電極部を示す断面図、図2〜図4は本発明者が見出した従来のオゾン発生装置における性能特性を説明するためのグラフであり、図2では原料ガス流量あたりの投入電力とオゾン濃度の関係を示し、図3ではオゾン濃度と電力源単位の関係を示し、図4では図3における注目すべき濃度域部分Rngでの特性を拡大して示したものである。そして、図5と図6は本実施の形態1にかかるオゾン発生装置における性能特性を説明するためのグラフであり、図5はオゾン濃度と電力源単位の関係を示し、図6は図5における注目すべき濃度域部分での特性を拡大して示したものである。
本発明の実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成について説明する。
実施の形態1にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、図1に示すように、平行平板式であり、接地電極1と、接地電極1の平坦面に対して所定の間隔を隔てて対向するように配置した高電圧電極2と、を備え、接地電極1と高電圧電極2間に形成された放電空間DS3に酸素(O2)を含む原料ガスを矢印のように導入し、放電空間DS3に交流高電圧(HV)を印加することにより無声放電を発生させてオゾン(O3)を生成するものである。高電圧電極2は、交流電圧を印加するための金属製の導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23が設置され、誘電体23の表面のうちのガス流れ方向における原料ガス入口側に近い領域である、例えば、入口から2/3の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を均一に分散した放電境界層25が形成されている。また、接地電極1は、交流電圧を印加するための金属製の導電部11の表面のうちのガス流れ方向における原料ガス入口側に近い領域である、例えば、入口側から2/3の領域に、貴金属微粒子を均一に分散した放電境界層15が形成されている。また接地電極1と高電圧電極2との間隔、すなわち放電空間DS3の空隙長(放電空隙長)dは0.3mm以下に設定されている。放電空隙長dは基本的に導電部11と導電部21の間隔と誘電体23の厚みで規定され、5μm以下の厚みの放電境界層15、25の有無による放電空隙長dの変化は無視できる程度であり、放電空隙長dは入口側から出口側まで一定とみなせる。なお、接地電極1の導電部11内には冷却水を流すための流路CP1が設けられている。
放電境界層15、25においては、基体としてイットリウム、チタン、インジウム、タングステン、ユウロビウム、エルビウム、ジルコニウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、アルミニウムのいずれかの酸化物が主成分として使用される。金属酸化物の基体に均一に分散される貴金属微粒子としては、パラジウム、ロジウム、プラチナ、ルテニウム、オスミウム、金、アンチモンのいずれか、またはこれらのうちの2つ以上の物質を含んだ混合物が用いられている。誘電体23はガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられている。
そして、実際のオゾン発生装置としては、上記放電電極部3を複数個並列に接続したものを圧力容器内に設置し、各放電空間DS3内に原料ガスを流すためのガス供給系統(図示せず)や交流電圧の印加装置を備えている。放電空間DS3内のガス圧力Pは大気圧以上となっており、放電空間DS3の冷却は冷却流路CP1に温度コントロールした冷却水を流すことにより実現している。
つぎに、本発明者が発見した酸化物基体に貴金属触媒を担持した放電境界層を有するオゾン発生装置のオゾン発生特性とオゾン濃度との関係について説明する。図2〜図4は、本実施の形態のように電極表面のうちの一部の領域(入口側)のみに放電境界層を設けたものではなく、接地電極および高電圧電極の表面に一律に放電境界層を形成した場合、あるいは全く形成しなかった場合の特性を示す。つまり、従来のオゾン発生装置の構成における放電境界層の有無による特性変化を示したものである。
図2は、接地電極と高電圧電極の表面の全域に放電境界層を貴金属微粒子重量比6wt%で設けた場合(S6:破線)と、全域に放電境界層を全く設けない場合(NC:実線)のオゾン発生特性として、供給ガス流量あたりの放電電力(比電力)と出口のオゾン濃度との関係を表すものである。なお、貴金属微粒子重量比とは、単位面積当たりの酸化物基体の重量に対する貴金属微粒子の重量を示す。比電力は、数10kHz以下の駆動周波数で放電電力(厳密には放電を発生させるためにオゾン発生装置に投入した投入電力)Wを一定(W0)に保ち原料ガス流量Qを変化させることで調整した。図において、横軸は原料ガス流量あたりの放電電力(比電力)、縦軸は出口ガスのオゾン濃度である。図に示すように、比電力W/Qを増加させるにつれ、出口でのオゾン濃度が高まるが、その挙動が放電境界層の有無によって異なることがわかる。放電電界層は特許文献に示されるように、基本的にオゾンを効率よく生成するために形成するものであり、放電電界層が期待通りに機能すれば、同じ比電力に対する出口オゾン濃度は高くなるはずである。
たしかに、比電力がW0/Q1のときは、期待通り、放電電界層を形成した場合(S6)のオゾン濃度CC1の方が、放電電界層のない場合(NC)のオゾン濃度CN1より高くなっていた。しかし、比電力W/Qによっては、その状態が異なり、比電力がW0/Q2のときは、期待に反して、放電電界層を形成した場合(S6)のオゾン濃度CC2の方が、放電電界層のない場合(NC)のオゾン濃度CN2より低くなることが分かった。そして、出口オゾン濃度が265g/Nm3以上になるような条件では、放電境界層を設けない場合(NC)の方が、オゾン発生効率が高くなることが分かった。つまり、所定のオゾン濃度(265g/Nm3)より出口オゾン濃度が低くなる運転条件では、放電境界層を設ける方が、効率を高くすることができるが、所定のオゾン濃度より出口オゾン濃度が高くなる運転条件では、逆に放電境界層を設けない方が効率を高くすることができることがわかった。
このようにオゾン発生特性からオゾン発生効率が議論できる。そして、オゾン発生のエネルギー効率を議論する指標に次式(1)で表されるオゾン電力源単位(収率の逆数)がある。
η=W/Q×(C×60×0.001)−1 ・・・(1)
ここでηはオゾン電力源単位[kWh/kg]、Wは投入電力[W]、Qは原料ガス流量[NL/min]、Cはオゾン濃度[g/Nm3]である。なお、オゾン電力源単位の値が小さいほど、オゾン発生効率が高いことを示す。
このように式(1)に示す電力源単位ηを用いて図2の結果を整理すると、比電力W0/Q1のとき、同一投入電力W0かつ同一原料ガス流量Q1に対するそれぞれのオゾン濃度(CC1、CN1)からそれぞれのオゾン電力源単位(ηS6、ηNC)が計算される。このときオゾン電力源単位は放電境界層を設けた方がオゾン電力源単位は小さく(ηS6<ηNC)なる。また、同特性中の比電力W0/Q2におけるオゾン電力源単位も同様に得られ、このときは放電境界層を設けない場合の方が、オゾン電力源単位は小さく(ηNC<ηS6)なる。
これらオゾン電力源単位ηをオゾン濃度Cに関してプロットし、貴金属微粒子の重量比が3wt%の放電境界層を形成した場合のオゾン電力源単位も併記したものが図3と図4である。図中、貴金属微粒子重量比が6wt%の結果S6を破線で、貴金属微粒子重量比が3wt%の結果S3を点線で、放電境界層を設けない結果NCを実線で示す。図に示すように、あるオゾン電力源単位、すなわちオゾン発生効率でオゾンを発生させる場合の発生オゾン濃度や、あるいは、所定のオゾン濃度を得る際のオゾン発生効率に関する議論ができる。図3、4の各オゾン電力源単位は、それぞれ連続運転時間200hr以上後に得られた安定したオゾン発生特性から得た。なお、酸化物基体にはチタンの酸化物、貴金属微粒子にプラチナを用い、原料ガスとして純度99.5%以上の酸素ガスに微量窒素(酸素ガス流量に対し0.1%)を添加したもの使用した。
図に示すように、放電空間に接する面全域に貴金属微粒子を分散した放電境界層を設置した場合、その貴金属微粒子重量比の増大とともに、低濃度のオゾンを発生する場合においてはオゾン発生効率が向上するが、逆に、高濃度のオゾンを発生する場合においては、貴金属微粒子重量比の増大に伴いオゾン発生効率が低下することを見出した。さらに、全域に放電境界層を設けない場合と比較すると、貴金属微粒子を分散した放電境界層を形成したいずれの場合においても、高濃度オゾンの発生効率が低下することも、新たに見出した。
なお、放電空間に接する電極表面に放電境界層を形成する場合、放電境界層の厚みのばらつきなどにより、放電空間の平均静電容量が変化、すなわち放電の状態を規定するパラメータである平均ギャップ長が変化し、オゾン電力源単位に影響を与えることが考えられる。しかしながら、放電境界層の厚みは、放電空隙長dに影響しない厚みであり、実際、今回使用した3種類の電極構造、すなわち全域に放電境界層を貴金属微粒子重量比6wt%、3wt%として設けた場合、および全域に放電境界層を設けない場合のいずれの場合も放電空間平均静電容量ならびに誘電体平均静電容量が一致した。すなわち、放電境界層を形成することにより放電空隙長(ギャップ長)dに差が生じたわけではない。よって、圧力、温度などその他の条件も同一である中で見出された上記オゾン電力源単位の差異は、貴金属微粒子重量比の違いに起因していると判断される。さらに、金属微粒子重量比を0.05wt%から10wt%の範囲で変化させた場合でも、同様に、高オゾン濃度では、放電境界層を形成しない場合のオゾン発生効率を下回ることを確認した。
貴金属微粒子を含む放電境界層は、貴金属微粒子の酸素解離効果により、酸素原子生成効率が向上する。また、基体に酸化チタンなどの光触媒である金属酸化物を適用した場合においては、貴金属微粒子によりその光触媒活性が向上し、放電光により励起された正孔ならびに電子により酸素原子の生成効率が向上すると考えられる。一方、発生した高濃度オゾンに対しては、放電境界層中の貴金属微粒子が増加するほど、逆に貴金属微粒子による分解反応が促進されるものと考えられる。
つまり、従来、貴金属微粒子を光触媒活性のある酸化物基体などにドーピングすることにより、その触媒活性を向上させることが可能となることから、貴金属微粒子重量比の増大によりオゾン発生効率は向上するとされ、その技術が提案されてきた。しかし、実際には、貴金属微粒子重量比の増大によって、必ずしもオゾン発生効率の向上が実現できるわけではなく、むしろ、高濃度オゾンを発生させる場合、貴金属微粒子を分散した放電境界層を形成した方が、オゾン分解を促進し、オゾン発生効率が低下する。すなわち、貴金属微粒子を含む放電境界層は、高濃度オゾンを生成する場合には、オゾンを分解する反応が促進され、むしろ不利であることを発見した。
そこで、本発明の実施の形態1にかかるオゾン発生装置では、接地電極1、高電圧電極2の表面のうち、原料ガスの流れ方向に沿って、入口側の2/3の領域に放電境界層15、25を設けるようにし、出口側には放電境界層を設けないようにした。つまり、ガス流れ方向に沿って、オゾン濃度が相対的に低くなる入口側の領域に放電境界層を設け、オゾン濃度が相対的に高くなる出口側には放電境界層を設けないようにした。なお、放電境界層15、25部分は、それぞれ、上述した従来例のS6と同様に酸化物基体にチタンの酸化物、貴金属微粒子にプラチナを用い、貴金属微粒子重量比6wt%に調整して形成した。こうして作成した実施の形態1にかかるオゾン発生装置に対し、同様の試験を行い、その結果を従来のオゾン発生装置による結果とあわせて図5、図6に示す。
図に示すように、発見したオゾン濃度特性による放電境界層の効果の違いに着目して、発明したオゾン発生装置の実施の形態1の特性(Emb1:一点鎖線)は、たとえば150g/Nm3といった低濃度(265g/Nm3以下)のオゾンを発生させる場合においても、300g/Nm3といった高濃度(265g/Nm3以上)のオゾンを発生させる場合においても、従来例よりオゾン発生効率が高い(低オゾン電力源単位)ことを示した。つまり、生成したオゾン濃度によらず、従来(全面に放電境界層形成、あるいは全く放電境界層を形成しない)よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。
なお、本実施の形態1にかかるオゾン発生装置において、放電境界層15、25における金属微粒子重量比を0.05wt%から10wt%の範囲に調整して特性を評価したが同様に、低濃度から高濃度の範囲において高いオゾン発生効率を得ることができた。
つまり、本実施の形態1にかかるオゾン発生装置では、低濃度オゾンを発生させる場合においては、貴金属微粒子を含む放電境界層15、25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進される結果、オゾン発生効率が向上する。一方、高濃度オゾンを取り出す場合においても、入口側では相対的に濃度が低いため、オゾン生成反応が促進され、濃度が高くなる出口側でのオゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上するものと考えられる。
そのため、高濃度オゾンの分解反応抑制と酸素原子の生成効率の向上を同時に実現することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生が実現できる。すなわち、本発明においては、放電空間に接する面に形成する貴金属微粒子を含む放電境界層によるオゾンの分解、ならびに、貴金属微粒子の重量比増大に伴いその効果が顕著になることを新たに見出した上で、その分解を抑制する方法として放電境界層を放電空間に接する面のうち、出口側の領域には設けない構造を採用することにより、高濃度オゾンの高効率オゾン発生を実現した。
以上の現象は、酸化物基体がチタン酸化物、貴金属微粒子がプラチナである組合せのみにかかわらず上述した材料のあらゆる組合せにおいても同様の効果が発現している。本発明は、貴金属微粒子を担持する酸化物基体が光触媒活性を持つものに限定するものではないが、特に、基体がチタン酸酸化物やタングステン酸化物などのように光触媒性を持つ材料の場合、貴金属微粒子を分散することにより、酸素原子生成効率の向上と高濃度オゾンの分解抑制を両立させる本発明の効果は大きくなると考えられる。
なお、本実施の形態においては、貴金属微粒子には、粒子径が100nm未満のものを用いている。100nmを超える粒子径の場合、基体への分散性が低く、貴金属微粒子の凝集などが発生しやすくなるため、放電境界層15、25の均一な形成が困難となる。不均一な放電境界層15、25は放電状態やオゾン発生特性に悪影響をおよぼすので、上述した高いオゾン発生効率が得られなくなる。また、貴金属微粒子の粒子径をより小さくし、基体中に均一に高分散させることで均一な放電境界層が得られ、酸素原子生成効率の向上が実現する。したがって、好ましくは10nm以下の貴金属微粒子を用いるのが良い。また、放電境界層15、25の膜厚は5μm以下としているが、当然ながら厚膜のほうが放電によるダメージを受けにくく、放電境界層の損傷可能性を低減できる。しかしながら、膜厚が5μmを超えるような過度の厚膜化は基材である誘電体23との密着性が損なわれ剥離が発生する場合があり、また、貴金属微粒子の使用量が増大するなど製造コストの増大を招くため、放電境界層は薄いほうが好ましい。
これらの観点から本実施の形態1では膜厚5μm以下、好ましくは2μm以下の放電境界層15、25を用いている。この場合、放電境界層15、25は厚み方向に凝集したりせず、安定な放電を阻害することなく、オゾン発生場へ触媒として効果的に作用することができる。さらに放電境界層15、25は、接地電極1(導電部11)および高電圧電極2(誘電体23)への密着性がきわめて優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15、25がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。なお、放電境界層15、25はディップコート法やスピンコート法などの一般的なコーティング方法により形成される。一方、放電空間DS3に接する接地電極1の表面のうち、オゾン化ガス出口側に近い領域には放電境界層15がなく、スパッタリングにより導電部11の金属電極材料および酸化物などが飛散する場合があるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層15、25の触媒活性を阻害することはない。
なお、上記の例では入口から2/3の領域に放電電界層15、25を設置した例で説明したが、所望のオゾン濃度により、その設置領域を調整するようにしてもよい。ガス流れ方向でオゾン濃度プロフィールが明らかな場合、特性が逆転する濃度(例えば、図2なら265g/Nm3)に達すると想定される位置より手前側には放電境界層を設け、下流側には放電境界層を設けないようにする。あるいは、特性が逆転する濃度(同265g/Nm3)に達すると想定される位置が、放電境界層を設置する部分と設置しない部分との境界になるように酸素供給量等の運転条件を調整するようにしてもよい。
なお、図2においては、投入電力Wを一定値WOに保ち、原料ガス流量Qを変化させることにより比電力W/Qを変化させる場合で説明したが、逆に原料ガス流量Qを一定に保ち、投入電力Wを変化させることにより比電力W/Qを変化させる場合でも、ほぼ同様のオゾン発生特性(ある濃度で放電境界層の有無での特性が逆転する)が得られる。また、一般的にオゾン発生特性は、原料ガス供給量あたりの投入電力の割合(比電力)に対する発生オゾン濃度で表され議論される。したがって、特性が逆転する濃度に達すると想定される位置が、放電境界層を設置する部分と設置しない部分との境界になるように比電力W/Qを調整すればよいということになる。
また、上記例では、原料酸素ガスに対し0.1%の微量窒素を添加したものについて説明したが、微量窒素を添加せずとも、また、微量窒素添加量を増減させても同様の効果が得られる。ただし、多量の窒素添加は発生オゾン濃度の低下を招くため好ましくない。
実施の形態1の変形例.
なお、上記実施の形態1では、放電電極部が平行平板式構造のオゾン発生装置について説明したが、本変形例においては放電電極部を円筒管式構造で製作した。図7は本変形例にかかるオゾン発生装置の放電電極部の構造を説明するための断面図であり、図7(a)は略円筒状の装置の側面断面図、図7(b)は図7(a)のA−A線における断面図である。なお、図において、実施の形態1の図1で説明したオゾン発生装置の構成部材と同様もしくは対応する部材については同じ番号で記載している。また、図7を含め、以降の各実施の形態における円筒管式構造の断面図では、側面図における接地電極の外周側の部分についての記載、A−A線の断面図における管板11ep部分や給電部材については、記載を省略している。
ここで、管板11epについて説明する。
実際の円筒管式のオゾン発生装置においては、多数の放電電極部3が、多数の円形穴の開いた金属フランジに固定されており、本発明の各実施の形態においては、この金属フランジを管板と称する。そして、本実施の形態および以降の各実施の形態においては、放電電極部3の一本分について記載し、管板11epについては、一本の放電電極部3に付随する領域についてのみ記載する。
図に示すように、円筒状の接地電極1と、円筒状で、接地電極1の内面に対して外面が所定の間隔を隔てて対向するように、接地電極1に対して同心同軸上に配置した高電圧電極2と、を備え、接地電極1と高電圧電極2間に形成された放電空間DS3に酸素(O2)を含む原料ガスを矢印のように導入し、放電空間DS3に交流高電圧(HV)を印加することにより無声放電を発生させてオゾン(O3)を生成するものである。高電圧電極2は、金属製の導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23が設置され、誘電体23の表面のうちのガス流れ方向における原料ガス入口側に近い領域である、例えば、入口から2/3の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を均一に分散した放電境界層25が形成されている。また、接地電極1は、金属製の導電部11の表面のうちのガス流れ方向における原料ガス入口側に近い領域である、例えば、入口側から2/3の領域に、貴金属微粒子を均一に分散した放電境界層15が形成されている。
また接地電極1と高電圧電極2との間隔、すなわち放電空間DS3の空隙長(放電空隙帳)dは0.3mm以下に設定されている。放電空隙長dは基本的に導電部11と導電部21の間隔と誘電体23の厚みで規定され、5μm以下の厚みの放電境界層15、25の有無による放電空隙長dの変化は無視できる程度であり、放電空隙長dは入口側から出口側まで一定とみなせる。なお、導電部11の外周側に冷却水を流すための流路CP1が設けられている。また、導電部11の内側には、ガス透過可能な隙間を多数有する構造の給電部材27(A−A部断面を示す図7(b)では記載を省略)が接触しており、高電圧電極2に対して給電部材27を介して電流を供給できるようにしている。さらに、導電部21のオゾン化ガス出口側端部には沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。
このように、放電電極部の構造が円筒状のものにおいても、オゾン生成試験を行ったが、従来のように全面に放電境界層を設ける場合と、全く放電境界層を設けない場合でのオゾン発生特性は平行平板式と同様であった。そのため、本変形例にかかるオゾン発生装置でも、平行平板式と同様に、生成したオゾン濃度によらず、従来(全面に放電境界層を形成、あるいは全く放電境界層を形成しない)よりもオゾン発生効率を向上させることが確認できた。
以上のように、本発明の実施の形態1にかかるオゾン発生装置によれば、間隔(d)を隔てて対向し、放電を発生するための放電空間DS3を形成する一対の電極となる接地電極1と高電圧電極2と、放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを流すための図示しないガス供給系統と、を備え、一対の電極1、2は、それぞれ電圧を印加するための導電部11、21を有し、高電圧電極2の導電部21には、放電空間側DS3の面に誘電体23が設置され、接地電極1と高電圧電極2の放電空間DS3側の表面には、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、金属酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15、25が形成されている、ように構成したので、オゾン濃度の低い入口側では、貴金属微粒子を含む放電境界層15、25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態2にかかるオゾン発生装置は、放電境界層の貴金属微粒子の重量比をガス流れ方向に沿って変化させたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じである。なお、本実施の形態2については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図8と図9は、本発明の実施の形態2にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、図8はオゾン発生装置の放電電極部の構造を示す断面図であり、図9はオゾン発生装置の特性を説明するための、オゾン濃度と電力源単位との関係を示すグラフである。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図8に示すように、本発明の実施の形態2にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。高電圧電極2は、導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23を設置している。なお、誘電体23はガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられ、オゾン化ガス出口側(図7において紙面右側)の端部を閉じている。また、接地電極1および高電圧電極2の表面のうち、原料ガスの流れ方向(図中矢印)に沿って、入口側に近い領域から、酸化物基体に貴金属微粒子を均一に分散させた放電境界層15a、15b(まとめて15)、および25a、25b(まとめて25)を形成している。
さらに放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比はガス流れ方向に沿って、原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定されている。すなわち放電境界層15aおよび25aの貴金属微粒子重量比は放電境界層15bおよび25bに比して大きく、ここでは放電境界層15a、25aでは重量比6wt%、放電境界層15b、25bでは3wt%とした。対向して配置される接地電極1および高電圧電極2の間隔、すなわち放電空隙長dは0.3mm以下に設定されている。放電境界層15、25の厚みは5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1に設けた流路CP1内に冷却水を流すことにより放電空間DS3が冷却されており、電流は給電部材27より高電圧電極2へ供給されている。さらに、高電圧電極2では、導電部21のオゾン化ガス出口側端部に沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。
すなわち、本実施の形態においては、上流側の放電境界層15a、25aの貴金属微粒子重量比が下流側の放電境界層15b、25bの貴金属微粒子重量比よりも大きい点で実施の形態1とは異なる。そして、実施の形態1と同様にオゾン生成試験を行った結果を、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の結果と合わせて図9に示す。図に示すように、本実施の形態2にかかるオゾン発生装置の特性(Emb2:実線)と実施の形態1にかかるオゾン発生装置の特性(Emb1:一点鎖線)とを比較すると、すべての濃度域においてEmb2の方がEmb1よりオゾン電力源単位が同等か低くなっている。とくに、濃度258g/Nm3以下の領域ではEmb2の方がEmb1よりオゾン電力源単位が低く、効率が高いことがわかる。
本実施の形態2にかかるオゾン発生装置では、ガス流れ方向に沿って、上流側の領域(例えば入口から2/3)に放電境界層15、25を設けるとともに、放電境界層15、25内の貴金属微粒子重量比が、入口側から出口へ向かうにつれ、小さくなるように調整したため、所定の貴金属微粒子重量比の放電境界層に接するガスのオゾン濃度の幅を狭くすることができる。つまり、重量比を単一にした実施の形態1に比して、放電空間内のオゾン濃度の差異に応じて貴金属微粒子重量比をよりきめ細かく対応させることになり、オゾン生成の向上と、オゾンの分解反応の抑制をより両立させることができ、オゾンの発生効率がさらに向上した。
本実施の形態では、放電境界層15、25内を2種類の貴金属微粒子重量比で分けた場合について説明したが、さらに多種類に分けるようにすれば、さらに広範囲のオゾン濃度領域でそのオゾン電力源単位が向上すると考えられる。また、貴金属微粒子重量比を原料ガス入口からガス流れ方向に沿って連続的に減少するような放電境界層を設置すれば極めて広範囲のオゾン濃度領域で高効率なオゾン発生が実現できると考えられる。また、実施の形態1と同様に、所望のオゾン濃度に応じて、放電境界層を設ける領域を適宜調整することができるほか、貴金属微粒子重量比の変化についても適宜調整することでさらに特性を向上させることができる。
なお、ここで用いた放電境界層15、25の膜厚ならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1と同様である。つまり、本実施の形態2においても放電境界層15、25は、接地電極1(導電部11)および高電圧電極2(誘電体23)への密着性に優れているため、長時間の装置運転においてもスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどない。また、上記例では、円筒管式の構造についてのみ示したが、実施の形態1で示したように平行平板電極構造においても、生成したオゾン濃度によらず、実施の形態1と同等以上のオゾン発生効率を得ることができることがわかった。
以上のように、本発明の実施の形態2にかかるオゾン発生装置によれば、放電境界層15、25中の金属酸化物の基体に対する貴金属微粒子の重量比を、供給ガスの流れ方向に沿って、下流(出口側)へ向かうにつれ、小さくなるように構成したので、放電空間DS3内のオゾン濃度の差異に応じて貴金属微粒子重量比(担持量)をよりきめ細かく対応させることになり、酸素原子生成効率の向上と、オゾンの分解反応の抑制をより両立させることができ、オゾンの発生効率がさらに向上した。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態3にかかるオゾン発生装置は、接地電極および高電圧電極の両方に誘電体を設けたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、実施の形態2で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。なお、本実施の形態3については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図10は、本発明の実施の形態3にかかるオゾン発生装置の放電電極部の構造を示す断面図である。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図10に示すように、本実施の形態3にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極間に形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。接地電極1と高電圧電極2の導電部11と導電部21の放電空間DS3側の面に、それぞれ誘電体13、23を設置している。なお、誘電体13、23はガラスやセラミクスなどのバルク材料のほかに、溶射、スパッタリングおよびガラスライニングなどのコーティングなどにより誘電体を形成しても良い。なお、ここでは誘電体13、23にはガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられ、オゾン化ガス出口側(図10において紙面右側)の端部を閉じている。また、接地電極1(誘電体13)および高電圧電極2(誘電体23)の表面のうち、原料ガスの流れ方向(図中矢印)に沿って、入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を均一に分散させた放電境界層15、および25を形成している。
対向して配置される誘電体13、23の間隔、すなわち放電空隙長dは0.3mm以下に設定されている。放電境界層の厚みは5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1内に形成した冷却水流路CP1に冷却水を流すことにより放電空間DS3が冷却されており、電流は給電部材27を介して導電部21へ供給されている。また導電部21のオゾン化ガス出口側端部には沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。すなわち、本実施の形態3においては、接地電極1側も誘電体13を介している点で実施の形態1とは異なる。
そして、本実施の形態3にかかるオゾン発生装置でも実施の形態1と同様に、生成したオゾン濃度によらず、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。また、図10においては円筒管式電極構造についてのみ示したが、実施の形態1で示したように平行平板式電極構造においても同然ながら同様の効果を実現することができる。
すなわち、放電境界層を流れ方向の全領域に設ける場合の高濃度オゾンの発生効率低下を招くことはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現できることが確認された。本実施の形態3における放電境界層15、25の厚みならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1で用いたものと同様であり、放電境界層15、25はそれぞれ誘電体13、23への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15、25がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。
また、実施の形態1と同様に、所望のオゾン濃度に応じて、放電境界層を設ける領域を適宜調整することができるほか、貴金属微粒子重量比の変化についても適宜調整することでさらに特性を向上させることができる。
さらには、実施の形態2で示したように、放電境界層の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても実施の形態1のオゾン発生装置に対する実施の形態2のオゾン発生装置の優位性と同様の効果が得られる。
以上のように、本実施の形態3にかかるオゾン発生装置によれば、放電電極部3の各電極1、2は、それぞれ電圧を印加するための導電部11、21を有し、導電部11、21には、放電空間DS3側の面に誘電体13、23が設置され、接地電極1と高電圧電極2の放電空間DS3側の表面(本実施形態では、誘電体13、23の表面)には、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、金属酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15、25が形成されている、ように構成したので、オゾン濃度の低い入口側では、貴金属微粒子を含む放電境界層15、25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態4にかかるオゾン発生装置は、高電圧電極側にも冷却機能を設け、接地電極と高電圧電極両側から冷却を行うものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、実施の形態1〜3で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。図11と図12は、本発明の実施の形態4および変形例にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、図11は本実施の形態4にかかる平板電極式の放電電極部の構造を示す断面図であり、図12は変形例にかかる円筒管式の放電電極部の構造を示す断面図である。図中、上記各実施の形態にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図11、12に示すように、本実施の形態4にかかるオゾン発生装置あるいは変形例にかかるオゾン発生装置の放電電極部3も、接地電極1と高電圧電極2を所定の間隙をあけて配置し、両電極間に形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。そして、双方ともに接地電極1と高電圧電極2の両方に冷却機構を設けたものであるが、平板式と円筒管式では、高電圧電極2の配置が異なるため、冷却機構の形態が異なっている。なお、図11では接地電極1と高電圧電極2の両方に、それぞれ誘電体13、23を設置する形態で示し、図12では、接地電極1のみに誘電体13を設置する形態で示しているが、これは、平板式と円筒管式の構造に起因するものではなく、いずれの形態になっても構わない。
平行平板式の場合、図11に示すように、電極部3は、実施の形態1で示した図1とほぼ同様の構造を示し、高電圧電極2の放電空間DS3とは反対側に、高電圧電極2から絶縁された冷却部4を設置している。冷却部4は、冷却水流路CP4を内蔵した冷却板41と、絶縁板42と、を備えたもので、冷却板41は絶縁板42を介して高電圧電極2の導電部21に密着配置されている。導電部11の冷却水流路CP1ならびに冷却板41の冷却水流路CP4には、同電位の冷却水を流すことができ、双方に同じ(温度の)冷却水を流すことによって、放電空間DS3を接地電極1側および高電圧電極2側の両側から冷却できる。
ここでは絶縁板42によって冷却板41と高電圧電極2が電気的に絶縁されているので、冷却水流路CP4に流れる冷却水の導電性に起因した電気的な短絡が発生することなく、純水やイオン交換水だけでなく、一般の水道水を冷却水として使用することが出来る。なお、上述したように誘電体13は設置されなくても問題はない。誘電体13や23はガラスやセラミクスなどのバルク材料または電極表面への溶射、スパッタリングおよびガラスライニングなどのコーティングにより形成された誘電体皮膜でもよい。
円筒管式の場合、図12に示すように、高電圧電極2が接地電極1の内側に位置するため、冷却機構を高電圧電極2の部材内に設けることとし、高電圧電極2の導電部21の内部に冷却水流路CP2を設けた。これにより、平行平板式と同様に放電空間DS3の両面から冷却することができるが、冷却水には、無視できる程度に導電性を抑えたイオン交換水または純水を使用する。冷却水の導電性を抑制することにより、導電部11の冷却水流路CP1内と導電部21内の冷却水流路CP2内を循環させることができる。接地電極1の放電空間DS3側表面の入口側領域には誘電体13を介して放電境界層15が形成され、高電圧電極2の放電空間側DS3表面の入口側領域には、導電部21に直接、放電境界層25が形成されている。なお、図12において、給電部材17は、密閉容器となった高導電部21の外側に接続するものであり、他の実施の形態のようにガス透過性を有する必要はなく、棒状や、線状のものでよい。誘電体13はガラスやセラミクスなどのコーティングにより形成された誘電体皮膜でも良い。
両方式ともに、放電空間DS3の空隙長dは0.3mm以下に設定されている。ここで用いた放電境界層15、25の膜厚は5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。さらに、接地電極1側および高電圧電極2側が両方とも冷却機構を設けているので、放電空間DS3が冷却されている。すなわち実施の形態1で示した構成よりも放電空間DS3の冷却効率が向上しており、放電空間DS3の温度上昇をより抑制することができる。したがって、単位放電面積あたりに投入できる電力を増加することができるため、装置の小型化に貢献することができる。
そして、このような冷却機構の違いはあっても、いずれのオゾン濃度域でも、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。すなわち、放電境界層を流れ方向の全領域に設ける場合の高濃度オゾンの発生効率低下を招くことはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現できることが確認された。つまり、本実施の形態4においても、放電空間の境界面の一部に貴金属微粒子を分散担持させた酸化物基体を放電境界層として設けることで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解の抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。
本実施の形態における放電境界層15、25の厚みならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1で用いたものと同様であり、放電境界層15、25は各電極1、2への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15、25がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。これは、図11において、誘電体13を設置せず、放電境界層15を直接導電部11の表面に形成しても同様である。
そして、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。また、図11、12においては、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比が均一であるものについてのみ示したが、実施の形態2で示したように同重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても実施の形態2と同様にさらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られた。
以上のように、本実施の形態4にかかるオゾン発生装置においては、両電極1、2から放電空間DS3を冷却することにより、放電空間DS3の冷却効率が向上する。そのため、オゾン生成量を増大させても、放電空間DS3の温度上昇を抑えることができ、高いオゾン発生効率を維持して装置を小型化することができる。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態5にかかるオゾン発生装置は、放電境界層を接地電極側だけに設けたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、上記各実施の形態で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。なお、本実施の形態5については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図13は、本発明の実施の形態5にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、放電電極部の構造を示す断面図である。図中、上記各実施の形態にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図13に示すように、本実施の形態5にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。接地電極1は、導電部11の放電空間DS3側の面に放電境界層15を直接形成している。一方、高電圧電極2は、導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23を設置しているが、放電境界層は形成していない。なお、誘電体23はガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられ、オゾン化ガス出口側(図13において紙面右側)の端部を閉じている。
放電空間DS3の空隙長dは0.3mm以下に設定されている。ここで用いた放電境界層15の膜厚も5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1側が導電部11に設けた冷却水流路CP1に冷却水を流すことによって、放電空間DS3が冷却されており、電流は給電部材27を介して高電圧電極2へ供給されている。給電部材27は実施の形態1で記載したものと同様である。また高電圧電極2の導電部21のオゾン化ガス出口側端部には沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。すなわち本実施の形態においては、実施の形態1で示した放電境界層が放電空間DS3の一方の境界面である接地電極11の表面にのみ形成される点で実施の形態1と異なる。
本実施の形態5に示すように接地電極1にのみ放電境界層15を形成した電極構造においても、実施の形態1と同様に、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。さらに、高電圧電極2にのみ放電境界層25を形成した電極構造においても、同様に、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、接地電極1と高電圧電極2のうち、少なくとも一方の電極にのみ放電境界層を形成した電極構造においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。すなわち、放電境界層を流れ方向の全領域に形成する場合の高濃度オゾンの発生効率低下を招くことはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現できることが確認された。この結果は、放電境界層を高電圧電極側に形成した場合でも同様である。
ただし、放電境界層を一方の電極にのみ形成するようにしたことで、放電空間DS3に接する放電境界層の表面積は、実施の形態1〜4のように両側に形成した場合に比べて減少している。そのため、本実施の形態5に示したオゾン発生装置のオゾン発生効率は、各実施の形態で示したオゾン発生効率よりも低い値となる。しかしながら、放電境界層を片側全域に形成した場合のオゾン発生効率と比較すると、高濃度オゾンの発生効率が悪化することはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現することが確認された。あるいは、まったく形成しなかった場合のオゾン発生効率と比較すると、低濃度オゾンの発生効率は上昇している。つまり、少なくとも一方の電極表面の放電空間側の面のガス入口側部分の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立させることが可能となり、高濃度オゾンを高効率で生成し、いずれの濃度域においても、オゾン発生効率が向上する。
本実施の形態で用いた、放電境界層15の厚みならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1で用いたものと同様であり、放電境界層15が接地電極11への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。また、放電空間DS3に接する接地電極1の表面のうち、オゾン化ガス出口側に近い領域には放電境界層15がない。そのため、導電部11が露出しており、スパッタリングにより、その金属電極および酸化物などが飛散することもあるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層の触媒活性を阻害することはない。つまり、放電境界層を片側にのみ設置する場合は、誘電体を備えていない電極側に形成するようにすれば、電極の導電部の少なくとも上流側が放電空間に露出することがなくなる。そのため、導電部のスパッタリングに起因した飛散物による触媒活性の阻害を回避できるため、なお良い。
なお、本実施の形態5のように、片側の電極にのみ放電境界層を形成する場合でも、放電境界層15あるいは25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。また、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られた。また、上記例では、円筒管式の構造についてのみ示したが、平行平板電極構造においても、円筒管式と同様に、従来の放電境界層の構成を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。
以上のように本実施の形態5にかかるオゾン発生装置によれば、放電電極部3の各電極1、2は、それぞれ電圧を印加するための導電部11、21を有し、高電圧電極2の導電部21には、放電空間側DS3側の面に誘電体23が設置され、両電極のうち少なくとも一方の電極として、接地電極1の放電空間DS3側の表面、あるいは高電圧電極2の放電空間DS3側の表面には、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、金属酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15、あるいは25が形成されている、ように構成したので、オゾン濃度の低い入口側では、貴金属微粒子を含む放電境界層15あるいは25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。
とくに、接地電極1、高電圧電極2のそれぞれの導電部11、21のうち、放電空間DS3側の面に誘電体が設置されていない方には、放電空間DS3側の表面の、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、放電境界層が形成されている、ように構成すれば、誘電体により保護されていない導電部の少なくとも上流側は放電境界層に覆われることにより放電空間DS3に露出することがなくなる。そのため、導電部のスパッタリングに起因した飛散物による触媒活性の阻害を回避できるため、なお良い。
本実施の形態においては、さらに、放電境界層を一方の電極にのみ形成するため、実施の形態1に比して若干のオゾン発生効率の低下はあるものの、放電境界層の設置面積が減少するため製造コストを低減することができる。
また、上記実施の形態1、3、5にかかるオゾン発生装置によれば、所定の間隔dを隔てて対向し、放電を発生するための放電空間を形成する一対の電極となる接地電極1と高電圧電極2と、放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを流すための図示しないガス供給系統と、を備え、一対の電極1、2は、それぞれ、電圧を印加するための導電部11、21を有し、導電部11、21の少なくとも一方には、放電空間DS3側の面に誘電体13あるいは23が設置され、少なくとも一方の電極の放電空間DS3側の表面には、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、金属酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15あるいは25が形成されている、ように構成したので、オゾン濃度の低い入口側では、貴金属微粒子を含む放電境界層15あるいは25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。
また、間隔を隔てて対向する一対の電極1、2間に電圧を印加して、電極1、2間に放電を発生させるとともに、放電が発生する放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを流してオゾンを発生させるオゾン発生方法として、一対の電極1、2のうちの少なくとも一方の電極の放電空間DS側の表面には、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に、光触媒物質である酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15あるいは25が形成されており、放電境界層15あるいは25が形成された領域における原料ガス中のオゾン濃度が所定濃度(例えば265g/m3)以下となるように、比電力W/Q(原料ガスの供給量に対する放電を発生させるための投入電力)を調整するようにすれば、オゾン濃度の低い入口側では、貴金属微粒子を含む放電境界層15あるいは25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。
実施の形態6.
本発明の実施の形態6にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態6にかかるオゾン発生装置は、円筒状の外側の管の一端側を閉じて、ガスの流れを内部で逆転させるようにしたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明した円筒管式のオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、上記各実施の形態で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。図14と図15は、本発明の実施の形態6にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、図14は両電極に放電境界層を形成した放電電極部の構造を示す断面図であり、図15は、実施の形態5のように一方の電極のみに放電境界層を形成した放電電極部の構造を示す断面図である。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図14に示すように、本実施の形態6にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。ただし、接地電極1の一端(図中右側端部)を閉じ、高電圧電極2の両端を開放することにより、ガスが高電圧電極2の内部を通って、接地電極1の閉められた端部で折り返して、放電空間に入る構造としている。
具体的には、接地電極1の誘電体13を、一端(図中右側端部)を閉じた筒状となし、誘電体13の外周側に導電層となる導電部11を設置する。このとき、誘電体13の外周部分の一部も冷却水流路CP1を形成している。そして、高電圧電極2は両端が開放された筒状をなし、筒状の導電部11に直接放電境界層15が形成されている。そして、導電部21の内部に挿入した給電部材27がガス透過性であることを利用して、給電部材27の挿入口を原料ガスの入口となし、導電部21の内部をガス導入流路FP2にすることにより、接地電極1の閉められた端部で原料ガスが折り返すようになる。そのため、上記各実施の形態1〜5とは逆の図中右側が放電空間DS3に対するガス入口(上流側)となり、放電境界層15、25はそれぞれ放電空間DS3内のガス入口側の所定領域に設けられている。なお、接地電極1の導電部11は、端部位置が、放電空間DS3における流れ方向における高電圧電極2の入口側端部よりも下流側になるようにしている。
そして、放電により生成したオゾンガスは、上記各実施の形態1〜5では原料ガス入口であった部分(図中左側の接地電極と高電圧電極との間隔)から排出される。また、図14には示していないが、放電電極部3の左端部は原料ガスと生成したオゾンガスを混合せず取り出せるような、ガス配管構造が形成されている。
なお、本実施の形態6のような筒状の誘電体23も、ガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられている。そして、放電空間DS3の空隙長dは0.3mm以下に設定されている。ここで用いた放電境界層15、25の膜厚も5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1側に設けた冷却水流路CP1に冷却水を流すことによって、放電空間DS3が冷却されている。また、本実施の形態6における接地電極1の導電部11は、誘電体13の外表面に形成した層状体であるが、冷却水CP1に対する保護膜を導電層表面に設置する場合もある。
このような放電電極部3の構造においても上記各実施の形態と同様に、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。すなわち、貴金属微粒子を分散した薄膜を放電に接する面全域に設ける場合の高濃度オゾンの発生効率低下を招くことはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現できることが確認された。本実施の形態で用いた、放電境界層の厚みならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1で用いたものと同様であり、放電境界層15、25は誘電体13ならびに高電圧電極21への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15、25がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。
また、本実施の形態の変形例として図15に示したオゾン発生装置は、図14で説明したオゾン発生装置の誘電体13の表面から放電境界層15を除いたものである。この構造においては、実施の形態5で説明したように、放電境界層を放電空間DS3に接する少なくとも一方の電極に設けたものである。管形状の部材に放電境界層を形成する場合、管の内表面に形成するよりも外表面に形成するほうが極めて容易かつ低コストであり、とくに、本実施の形態6のように一端が閉じた場合はその傾向はさらに顕著となる。そのため、本変形例では、管の外表面にあたる高電圧電極2の表面にのみ放電境界層25を設けたのである。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。ただし、実施の形態5で説明したように、本変形例の構造においては、放電空間DS3に接する放電境界層の表面積が両面に形成した場合よりも減少しているため、オゾン発生効率は相対的に低下する。しかしながら、放電境界層を片側全域に形成した場合のオゾン発生効率と比較すると、高濃度オゾンの発生効率低下を招くことはなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現することが確認された。
つまり、本実施の形態あるいは変形例でも、電極の放電空間DS3との境界面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。
また、本実施の形態やその変形例のような構成でも、放電境界層15あるいは25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。また、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られた。
また、放電境界層25の対向面となる誘電体13はバルク材料から構成されており、誘電体13が放電によりスパッタリングされ、誘電体13の構成材料が放電境界層25の表面に付着堆積することは極めて少ない。よって長時間運転しても安定したオゾン発生が実現できる。なお、放電空間DS3に接する接地電極1の表面のうち、オゾン化ガス出口側の部分には放電境界層がなく、スパッタリングにより導電部11の金属材料および酸化物などが飛散することもあるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層の触媒活性を阻害することはない。つまり、本実施の形態6にかかる流路構成を持つオゾン発生装置においても、放電境界層を片側にのみ設置する場合に、誘電体を備えていない電極側に形成するようにすれば、電極の導電部の少なくとも上流側が放電空間に露出することがなくなる。そのため、導電部のスパッタリングに起因した飛散物による触媒活性の阻害を回避できるため、なお良い。
実施の形態7.
本発明の実施の形態7にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態7にかかるオゾン発生装置は、放電空間内に導電性でガスを透過する繊維材を充填したものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、上記各実施の形態で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。なお、本実施の形態7については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図16と図17は、本発明の実施の形態7にかかるオゾン発生装置を説明するためのもので、図16は放電空間内にワイヤニットを充填した放電電極部の構造を示す断面図であり、図17は、ワイヤニットを高電圧電極の導電部に用いた放電電極部の構造を示す断面図である。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図16に示すように、本実施の形態7にかかるオゾン発生装置の放電電極部3も、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。そして、最大の特徴は、放電空間DS3内に、電気伝導性および熱伝導性が高いガス透過性のワイヤニット34が充填されていることである。接地電極1は、放電空間DS3の境界に該当する導電部11の放電空間DS3側の面のうち、入口側領域に放電境界層15が直接形成されている。一方、高電圧電極2は、放電空間DS3の境界に該当する導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23を設置しており、その表面のうち、入口側の領域に放電境界層25を形成している。なお、誘電体23はガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられ、オゾン化ガス出口側(図16において紙面右側)の端部を閉じている。
放電空間DS3の空隙長dは0.3mm以下に設定されている。ここで用いた放電境界層15、25の膜厚も5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1側が導電部11に設けた冷却水流路CP1に冷却水を流すことによって、放電空間DS3が冷却されており、電流は給電部材17を介して高電圧電極2へ供給されている。給電部材17は実施の形態1で記載したものと同様である。また高電圧電極2の導電部21のオゾン化ガス出口側端部には沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。すなわち本実施の形態においては、実施の形態1で示したオゾン発生装置に対して、放電空間DS3内にワイヤニット34を充填したことのみが異なる。
このような電極構造においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。すなわち、貴金属微粒子を分散した薄膜を放電に接する面全域に設ける場合における高濃度オゾンの発生効率の悪化を生ずることなく、高濃度オゾンの高効率発生が実現できることが確認された。
実施の形態7の変形例.
本変形例では、ワイヤニットを高電圧電極2の導電部21に用いたものであり、さらに、誘電体の内側の空間にも放電空間を形成したものである。図17に示すように、高電圧電極2は、両端が開放された筒状の誘電体23の内部に棒状の導電体21iを同心同軸に挿入し、その間に生じた空隙にワイヤニット24を充填し、ワイヤニット24と導電体21iとで高電圧電極2の導電部21を構成する。そして、高電圧電極2と接地電極1間に形成された放電空間DS3および放電空間DS3に面する部分の放電境界層15、25の構成は図16と同様である。
本変形例では、高電圧電極2の内部の空間も放電空間DS2として機能する。また、誘電体23の内周面と導電体21iの外周面にそれぞれ、放電境界層15iと25iを形成した。そして、両端が開放された誘電体23の内部に充填したワイヤニット24の通気性を利用して図中左端部を原料ガス入口とし、酸素が左から右に向かって流れるようにした。放電境界層15i、25iは、ともに原料ガス入口側から、放電境界層15、25を形成した領域の出口側端部までの範囲に形成した。
本変形例において、例えば、放電空間DS3のみに原料ガスを流し、導電体21iと接地電極1の導電部11間に電圧をかけた場合の特性は、図16で示した電極構造における特性と同様に、いずれのオゾン濃度においても従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。
一方、本変形例において、放電空間DS3だけでなく、DS2にも原料ガスを流し、導電体21iと接地電極1の導電部11間に電圧をかけると、放電空間DS3においては、図16で示した電極構造と同様にオゾンを生じるとともに、放電空間DS2においても放電が発生してオゾンが生成される。そして、放電空間DS2に面する放電境界層15i、25iを原料ガスの入口側の所定領域に限定して形成することにより、全面に形成する、あるいはまったく形成しない場合に対して、いずれのオゾン濃度においてもオゾン発生効率を向上させることがわかった。なお、放電空間DS2に面する放電境界層15i、25iは厳密には放電空間DS3が存在する部分に限定して形成すればよいが、放電空間DS3に対応する部分より入口側の部分では、放電が生じがたいので、出口側の端部を同じにすることで、同じ流路長さ部分に形成したのと実質同じ効果が得られる。
本実施の形態で用いた、放電境界層15、25、15i、25iの厚みならびに貴金属微粒子の粒子径は実施の形態1で用いたものと同様であり、放電境界層15、25、15i、25iは、誘電体23、導電部11および導電体21iへの密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。また、接地電極1の放電空間DS3側の表面のうち、オゾン化ガス出口側に近い領域に放電境界層がなく、スパッタリングによりその金属電極材料および酸化物などが飛散することもあるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層の触媒活性を阻害することは皆無である。
なお、本実施の形態および変形例では、放電空間内にワイヤニット34、24を充てんすることにより、ガス温度を良好に放散することができる。なお、入口側から所定領域部分のワイヤニット24、34にも放電境界層を形成しておくとなお効果的である。
また、本実施の形態やその変形例のような構成でも、放電境界層15、25、15i、25iの設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。また、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25、15i、25iの貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られた。
本実施の形態においても、放電空間DS3との境界面となる電極表面のうち、入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生が実現される。また、ワイヤニット24による空隙長の微調整機能、ガス温度の冷却強化ならびにホロー陰極効果により、オゾン発生効率をさらに向上させることができる。
実施の形態8.
本発明の実施の形態8にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態8にかかるオゾン発生装置は、放電空間の放電空隙長をガス流れ方向に沿って変化させたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、上記各実施の形態で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。なお、本実施の形態8については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図18〜図21は、本発明の実施の形態8にかかるオゾン発生装置の各種形態例の放電電極部の構造を示す断面図である。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
本実施の形態8にかかるオゾン発生装置の放電電極部3は、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。ただし、放電空間DS3の放電空隙長dがガス流れ方向に沿って変化するように、高電圧電極2の外径をガス流れ方向に沿って変化させたものである。そのため、本実施の形態8では、高電圧電極2の外径を変化させる4つの例について、それぞれ、図18〜図21に示した。なお、接地電極1については、誘電体のない第2例〜第4例では実施の形態1と同様で、誘電体13を設けた第1例では実施の形態3と同様であるので、説明を省略する。
第1例は、図18に示すように、高電圧電極2のガス出口側の誘電体の厚みを厚くすることで、外径を大きくしている。具体的には、実施の形態3の図10で説明した高電圧電極の誘電体と同様に形成した第1誘電体23aの外周部のうち、ガス出口側の所定領域部分にさらに第2誘電体23bを重ねるように形成したものである。つまり、本第1例のオゾン発生装置では、高圧電極2の誘電体23(23aと23b)は、ガス入口側は第1誘電体23aの1層のみで、出口側が第1誘電体23aとその外周側に形成した第2誘電体23bの2層でできており、放電空間DS3は流れ方向に沿って2種類の放電空隙長を有することになる。なお、誘電体23a、23bともに、ガラスやセラミクスなどスパッタリングされにくいバルク材料が選択されており、誘電体23bは溶射、スパッタリング、ガラスライニングなどにより誘電体23a上に形成されている。ここで、接地電極1と誘電体23a、誘電体23bとの間に形成される放電空間は各々放電空間DS3a、DS3bと称する。接地電極1は実施の形態3の図10で説明したオゾン発生装置の接地電極と同様である。
そして、放電空間DS3aに面する表面には実施の形態3で示したような放電境界層15、25が接地電極1(誘電体13)のガス入口側の所定領域、高電圧電極2のガス入口側領域である誘電体23aの露出部分に形成されている。接地電極11に設けた冷却水流路CP1内に冷却水を流すことで、放電空間DS3aとDS3bは冷却される。つまり、図18で示す電極構造は、実施の形態3で示した電極構造とほぼ同様であるが、ガス流れ方向に沿って放電空間DS3a、DS3bが直列に配置される点で異なっている。原料ガス入口側(図18において左側)の放電空間DS3aでは酸素原子生成効率を最適化するために、その空隙長dを0.3〜1.2mmと、一定の空隙長を有する他の実施の形態よりも長くしている。他方、オゾン出口側(同右側)の放電空間DS3bでは電子衝突および熱による生成オゾンの分解を抑制するために、他の実施の形態と同様に0.3mm以下の空隙長となるように、誘電体23bが設置されている。放電境界層15、25の厚みは5μm以下であり、この厚みは放電空隙長dに影響しない。つまり、放電空間DS3は2種類の放電空隙長を有することになる。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、この電極構造でも、放電空間DS3との境界面となる電極表面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。また、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。さらに、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られる。
このとき、図18においては放電空間DS3aとDS3bの境界と放電境界層15、25の有無の境界を一致させた例で示したが、これに限定する必要はなく、例えば、放電空間DS3bに接する面の入口領域部分にも放電境界層15,25を設けた場合においても同様の効果が得られる。
第2例は、図19に示すように、導電部21の外径を入口側より出口側を大きくすることで、高電圧電極2の外径を大きくしている。具体的には、導電部21は、第1管部21aと第1管部21aより径の大きな第2管部21bとが長さ方向に連なった形態となっている。そして、径が長さ方向で変化している管状の導電部21の表面に溶射、スパッタリング、ガラスライニングなどにより誘電体23をコーティングしている。そして、誘電体23の表面および接地電極11の表面のうち、入口側の所定領域に、実施の形態1で示したように放電境界層15、25を配置している。このとき、接地電極1と高電圧電極2の導電部21aに対応する部分との間に形成される放電空間をDS3a、接地電極1と高電圧電極2の導電部21bに対応する部分との間に形成される放電空間をDS3bと称する。接地電極1は実施の形態1の図7で説明したオゾン発生装置の接地電極と同様である。
原料ガス入口側(図19において左側)の放電空間DS3aでは酸素原子生成効率を最適化するために、その空隙長dを0.3〜1.2mmと、一定の空隙長を有する他の実施の形態よりも長くしている。他方、オゾン出口側(同右側)の放電空間DS3bでは電子衝突および熱による生成オゾンの分解を抑制するために、他の実施の形態と同様に0.3mm以下の空隙長となっている。放電境界層15、25の厚みは5μm以下であり、この厚みは放電空隙長dに影響しない。つまり、放電空間DS3は2種類の放電空隙長を有することになる。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、この電極構造でも、放電空間DS3との境界面となる電極表面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。また、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。さらに、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られる。
このとき、図19においては放電空間DS3aとDS3bの境界と放電境界層15、25の有無の境界を一致させた例で示したが、これに限定する必要はなく、例えば、放電空間DS3bに接する面の入口領域部分にも放電境界層15,25を設けた場合においても同様の効果が得られる。
第3例は、図20に示すように、高電圧電極2のガス出口側の誘電体の厚みを厚くすることで、外径を大きくしている。具体的には、高電圧電極2に誘電体23を形成する際、ガス入口側部分(23a)と出口側部分(23b)とで厚みが異なるように形成したものである。また、導電部21を両端が閉じた形態とするのに応じて、誘電体23は、導電部21よりも径方向の外側のみに設置した。また、給電部材27も実施の形態4の図12に示したようなものを使用している。その他の構成については実施の形態1の図7で説明したオゾン発生装置と同様である。つまり、本第3例のオゾン発生装置では、高圧電極2の誘電体23は、ガス入口側部分23aは薄く、出口側部分23bがガス入口側部分23aより厚く形成され、放電空間DS3は流れ方向に沿って2種類の放電空隙長を有することになる。なお、誘電体23は、ガラスやセラミクスなどスパッタリングされにくいバルク材料が選択されており、溶射、スパッタリング、ガラスライニングなどにより導電部21上に形成されている。ここで、接地電極1と誘電体23の入口側部分23a、出口側部分23bとの間に形成される放電空間は各々放電空間DS3a、DS3bと称する。接地電極1は実施の形態1の図7で説明したオゾン発生装置の接地電極と同様である。
本第3例でも、原料ガス入口側(図20において左側)の放電空間DS3aでは酸素原子生成効率を最適化するために、その空隙長dを0.3〜1.2mmと、一定の空隙長を有する他の実施の形態よりも長くしている。他方、オゾン出口側(同右側)の放電空間DS3bでは電子衝突および熱による生成オゾンの分解を抑制するために、他の実施の形態と同様に0.3mm以下の空隙長となっている。放電境界層15、25の厚みは5μm以下であり、この厚みは放電空隙長dに影響しない。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、この電極構造でも、放電空間DS3との境界面となる電極表面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。また、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。さらに、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られる。
このとき、図20においては放電空間DS3aとDS3bの境界と放電境界層15、25の有無の境界を一致させた例で示したが、これに限定する必要はなく、例えば、放電空間DS3bに接する面の入口領域部分にも放電境界層15、25を設けた場合においても同様の効果が得られる。
第4例は、図21に示すように、外径の異なる導電部21a〜21cをガス流れ方向に連結することで、高電圧電極2の外径をガス流れ方向に沿って大きくなるように3段階に変化させている。具体的には、導電部21は、第1管21aと第1管21aより径の大きな第2管21bと、第2管21bよりさらに径の大きな第3管21cとを、中心を揃えて連結部材28で長さ方向に連結している。そして、第1管21a〜第3管21cのそれぞれの表面に、溶射、スパッタリング、ガラスライニングなどにより誘電体23a〜23cをコーティングしている。そして、接地電極11の表面の入口側の所定領域および、誘電体23のうち、入口側領域となる23aと23bの表面に、実施の形態1で示したように放電境界層15、25(25a、25b)を配置している。このとき、接地電極1と高電圧電極2の第1管21aに対応する部分2aとの間に形成される放電空間をDS3a、接地電極1と高電圧電極2の第2管21bに対応する部分2bとの間に形成される放電空間をDS3b、接地電極1と高電圧電極2の第3管21cに対応する部分2cとの間に形成される放電空間をDS3cと称する。接地電極1は実施の形態1の図7で説明したオゾン発生装置の接地電極と同様である。
放電空間DS3aの空隙長dを1.2mm以下、放電空間DS3bでは0.6mm以下、放電空間DS3cでは0.3mm以下というように、原料ガスの流れ方向に沿って、3段階に空隙長が短くなるように形成した。この場合も放電境界層15、25の厚みは5μm以下であり、この厚みは放電空隙長dに影響しない。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、この電極構造でも、放電空間DS3との境界面となる電極表面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。また、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。さらに、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られる。
このとき、図21においては放電空間DS3bとDS3cの境界と放電境界層15、25の有無の境界を一致させた例で示したが、これに限定する必要はなく、例えば、放電空間DS3cに接する面の入口領域部分にも放電境界層15、25を設けた場合においても同様の効果が得られる。
上記第1例から第4例のオゾン発生装置において、放電境界層15、25は誘電体13、23、導電部11および導電部21への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。また、図18〜図21に示すように、接地電極1の表面のうち、オゾン化ガス出口側に近い領域には放電境界層15がなく、スパッタリングにより導電部11の金属材料および酸化物などが飛散することもあるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層15あるいは25の触媒活性を阻害することは皆無である。
また、上記第1例〜第4例では、放電空間DS3における放電空隙長dを流れ方向に沿って段階的に小さくする例を示したが、連続的に変化させるようにしてもよい。連続的に変化するように構成することにより、例えば、間隔が変化する部分での集中放電等の発生を抑制することができる。また、上記例では、円筒管式の構造についてのみ示したが、実施の形態1で示したように平行平板電極構造においても、生成したオゾン濃度によらず、実施の形態1と同等以上のオゾン発生効率を得ることができることがわかった。
以上のように、本実施の形態8にかかるオゾン発生装置によれば、放電空間DS3の放電空隙長dである電極1、2間の間隔が、原料ガスの流れ方向に沿って、出口側の方が入口側より狭くなるように構成した。つまり、酸素原子生成、オゾン生成といった各オゾン発生過程に適した空隙長の放電空間の形成を個別に実現し、上流側ではオゾン発生の効率が向上し、下流側ではオゾンの分解を抑制できるので、高効率にオゾンを生成することができる。また、酸素原子発生に寄与する入口側の部分は比較的長い空隙長、言い換えればラフに形成し、オゾン分解を抑制し高濃度オゾンを生成する出口側の部分のみ、高精度に空隙長を形成すればよいため、オゾン発生装置の低コスト化にも効果的である。
実施の形態9.
本発明の実施の形態9にかかるオゾン発生装置について説明する。本実施の形態9にかかるオゾン発生装置は、原料ガス入口部分に放電抑制部材を設けたものである。その他の構成については、実施の形態1で説明したオゾン発生装置と基本的に同じであり、さらに、上記各実施の形態で説明したオゾン発生装置にも適用できるものである。なお、本実施の形態9については、放電電極部が円筒管式構造の例で説明する。図22は、本発明の実施の形態9にかかるオゾン発生装置を説明するための放電電極部の構造を示す断面図である。図中、実施の形態1にかかるオゾン発生装置の構成部材と同様あるいは対応する部材には、同じ符号を付し、特に必要のない限り説明を省略する。
図22に示すように、本実施の形態9にかかるオゾン発生装置の放電電極部3も、管状の接地電極1と高電圧電極2を同心同軸上に配置し、両電極1、2により形成された放電空間DS3に酸素を含む原料ガスを導入し、放電空間DS3に交流高電圧を印加することにより無声放電を発生させ、オゾンを生成するものである。接地電極1は、導電部11の放電空間DS3側の面のうちの入口側領域に放電境界層15を直接形成している。一方、高電圧電極2は、導電部21の放電空間DS3側の面に誘電体23を設置し、さらに誘電体23の表面のうち、入口側の領域に放電境界層25を形成している。誘電体23はガラスやセラミクスなどのバルク材料が用いられ、オゾン化ガス出口側(図22において紙面右側)の端部を閉じている。
放電空間DS3の空隙長dは0.3mm以下に設定されている。ここで用いた放電境界層15の膜厚も5μm以下であり、この厚みが放電空隙長dに大きく影響することはない。また接地電極1側が導電部11に設けた冷却水流路CP1に冷却水を流すことによって、放電空間DS3が冷却されており、電流は給電部材17を介して高電圧電極2へ供給されている。給電部材17は実施の形態1で記載したものと同様である。また高電圧電極2の導電部21のオゾン化ガス出口側端部には沿面放電によるエネルギーロスを防止するため、電界緩和層26が設けられている。そして、放電空間DS3の原料ガス入口部(図22において紙面左側)に放電反応を抑制する放電抑制部材33を設置している。すなわち本実施の形態においては、実施の形態1で示した放電電極部のガス入口側にガス透過性の放電抑制部材を設けた点で実施の形態1と異なる。
導電部11内に冷却水流路CP1を設置する構造では、接地電極1を冷却水で直接冷却することで放電空間DS3が冷却される。しかし、図22に示すように、接地電極1のうち、冷却水流路CP1を形成するための管板11epに接する端部には冷却水が流れていないので、その部分の冷却効率は低下する。そのため、この端部近傍は、中間領域に比してガス温度または電極1、2の温度が上昇しやすくなる。しかし、本実施の形態9のように、放電抑制部材33を放電空間DS3のガス入口側部分に設置することで、ガス入口側部分の放電量を抑え、放電による発熱を低減できる。なお、ガス出口側の端部も入口側と同様に冷却効率が低下するが、高電圧電極2の導電部21の端が出口側より手前部分に位置しているので、もともと放電量が少なく、発熱量が低いため放電抑制部材を設置するようにはしていない。
また、放電抑制部材33は、ガス透過性の材料で形成しており、設置長さや、材料の通気性等により圧力損失を調整することにより、放電空間DS3に流入するガス流速・流量を変化させることができる。すなわち、多数の放電電極部3のガス供給系統が並列に接続されている場合でも、各放電電極部3に原料ガスを均等に流すように調整することができる。さらに、放電抑制部材33に放電空間DS3での径方向の寸法(厚み)を規定するスペーサとしての機能を持たせることにより、放電空間DS3の放電空隙長dを容易に精度よく再現することができる。
この電極構造においても、いずれのオゾン濃度においても、従来の放電境界層の構成(全面に放電境界層設置、or全く放電境界層なし)を用いたオゾン発生装置よりもオゾン発生効率を向上させることがわかった。つまり、この電極構造でも、電極の放電空間DSとの境界面となる表面のうち、ガス入口側の領域に、酸化物基体に貴金属微粒子を分散担持させた放電境界層を形成することで、酸素原子生成効率の向上と発生オゾンの分解抑制を両立することが可能となり、高濃度オゾンの高効率発生を実現できる。また、放電境界層15、25の設置範囲を所望のオゾン濃度に応じて調整すればさらにオゾン発生効率を向上させることができる。さらに、実施の形態2で示したように、放電境界層15、25の貴金属微粒子重量比を原料ガス入口側に近い位置ほど大きくなるように設定した場合においても、さらに広いオゾン濃度域でオゾン生成効率が向上する効果が得られる。
また、放電境界層15、25は誘電体23および接地電極1の導電部21への密着性に優れているため、長時間の装置運転においても放電境界層15、25がスパッタリングなどにより剥離や減量することはほとんどなかった。また、接地電極1の放電空間DS3側の表面のうち、オゾン化ガス出口側に近い領域には放電境界層がなく、スパッタリングによりその金属電極材料および酸化物などが飛散することもあるが、オゾン化ガス取り出し口、すなわちガスの流れの下流部であるため、これら飛散物により放電境界層15、25の触媒活性を阻害することもない。
本実施の形態9においても、原料ガスの流れ方向における入口側からはじまり、出口側に達しない領域に形成された、金属酸化物の基体に貴金属微粒子を担持した放電境界層15、25を有している、ように構成したので、オゾン濃度の低い入口側領域では、貴金属微粒子を含む放電境界層15、25による酸素原子生成効率が向上することによって放電空間DS3中のオゾン生成反応が促進され、オゾン濃度が高くなる出口側領域では、オゾン分解反応の進行を抑制して、オゾン発生効率が向上する。また、原料ガス入口部に放電抑制部材33を配置したため、直接水冷されていない管板11ep部分に対応する部分のガス温度または電極温度を低減することができる。さらに、放電抑制部材33のガス透過性(抵抗係数の逆数)を調整することにより、原料ガスを均等分配させて、多数の放電電極部3を並列接続した場合でも均等にガスを供給することができ、オゾン発生装置の高効率化および高信頼性化にも効果的である。