JP2012224766A - 懸濁グラウト薬液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スラグ粒子、セメント粒子、SiO2/Na2Oのモル比が2.5〜4.5であり、かつSiO2の濃度が20質量%以上である珪酸ナトリウム水溶液、および水を混合する懸濁グラウト薬液の製造方法であって、前記珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2とセメント粒子の質量比(SiO2/セメント粒子)が3.0以下であり、水にスラグ粒子およびセメント粒子を分散して分散液とした後に、該分散液と珪酸ナトリウム水溶液とを混合する懸濁グラウト薬液の製造方法。
【選択図】なし
Description
グラウト薬液は、主材に珪酸ナトリウム水溶液を使用した溶液型と、セメントやスラグを使用した懸濁型に大別できる。
一方、懸濁型のグラウト薬液は、硬化体の強度が高く、耐久性にも優れるものの、地盤への浸透性に乏しかった。
例えば特許文献1には、グラウト材中の水分100mlに対して水ガラス(珪酸ナトリウム水溶液)中のSiO2量(S)が1.6〜5.8g、セメント量(C)が1.5〜3.2gで、かつC/Sが0.42以上である懸濁型のグラウト材が開示されている。該グラウト材によれば、水ガラス(珪酸ナトリウム水溶液)とセメント量を規定することで、浸透性に優れるとともに、硬化発現が早く、ゲルタイムが長くなるとしている。
[1] スラグ粒子、セメント粒子、SiO2/Na2Oのモル比が2.5〜4.5であり、かつSiO2の濃度が20質量%以上である珪酸ナトリウム水溶液、および水を混合する懸濁グラウト薬液の製造方法であって、前記珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2とセメント粒子の質量比(SiO2/セメント粒子)が3.0以下であり、水にスラグ粒子およびセメント粒子を分散して分散液とした後に、該分散液と珪酸ナトリウム水溶液とを混合する懸濁グラウト薬液の製造方法。
本発明の懸濁グラウト薬液の製造方法は、スラグ粒子、セメント粒子、珪酸ナトリウム水溶液、および水を混合する懸濁グラウト薬液の製造方法である。
ここで、まず各成分について説明する。
スラグ粒子は、例えば高炉セメント等の製造用原料に用いられる高炉水砕スラグを、好ましくは後述するブレーン値に粉砕調製したものである。
なお、高炉水砕スラグは、銑鉄を作るときに生じる溶融状態のスラグをガラス状態となるように急冷して作製される。
ここで、「ブレーン値」は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」の比表面積試験に準拠し、ブレーン空気透過装置により測定した値である。
セメント粒子は、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント類や、アルミナセメントを、好ましくは後述するブレーン値に粉砕調製したものである。
珪酸ナトリウム水溶液は、SiO2/Na2Oのモル比が2.5〜4.5である。モル比が2.5以上であれば、懸濁グラウト薬液のブリージング(硬化体の表面に水が浮いてくる現象)を抑制できるとともに、初期ゲルの強度が高くなる。一方、モル比が4.5以下であれば、セメント粒子のアルカリ刺激によるスラグ粒子の硬化が発現しやすく、硬化体の強度が向上する。モル比は2.8以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。
なお、SiO2の濃度が高くなると粘度が上昇し、流動性が低下する傾向にある。従って、充分な流動性を確保するには、SiO2の濃度の上限値は、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
このような珪酸ナトリウム水溶液としては、JIS K 1408で定められる3号水ガラス(SiO2の濃度:28〜30質量%)などが挙げられる。
従って、スラグ粒子の硬化を充分に進行させるには、セメント粒子に対する珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2の量が重要となる。
なお、質量比が小さいほど、ゲル化時間が短くなる傾向にある。従って、充分なゲル化時間を確保するには、質量比の下限値は1.0以上が好ましい。
水としては、例えば上水、工業用水、地下水、河川水、海水などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を充分発揮させるためには、上水や工業用水が好ましい。
本発明の懸濁グラウト薬液の製造方法は、水にスラグ粒子およびセメント粒子を分散して分散液とした後に、該分散液と珪酸ナトリウム水溶液とを混合することを特徴とする。
スラグ粒子とセメント粒子を水に分散させた後で、得られた分散液と珪酸ナトリウム水溶液を混合することで、地盤に対する浸透性に優れた懸濁グラウト薬液が得られる。かかる理由は以下のように考えられる。
しかし、本発明であれば、予めスラグ粒子とセメント粒子を水に分散させておくので、珪酸ナトリウム水溶液と混合したときに凝集物が生成しにくい。よって、凝集物による目詰まりが生じにくく、浸透性に優れた懸濁グラウト薬液が得られるものと考えられる。
スラグ粒子とセメント粒子の混合物の平均粒子径は2μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましい。また、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が特に好ましい。
混合物の水への分散が充分である場合には、混合物の平均粒子径が小さいほど得られる懸濁グラウト薬液の浸透性が向上する傾向にある。また、混合物の平均粒子径が大きいほど粒子間の凝集が起こりにくく、凝集物による目詰まりを抑制する傾向にある。
なお、混合物の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定される値である。
特に、スラグ粒子とセメント粒子の分散液と珪酸ナトリウム水溶液とを混合する前に、分散液に分散剤を添加しておくのが好ましい。分散液に分散剤を添加しておくことで、スラグ粒子やセメント粒子が水中でより分散しやすくなり、珪酸ナトリウム水溶液と混合したときに凝集物がより生じにくくなる。よって、得られる懸濁グラウト薬液の浸透性がより向上する。
中でも、浸透性を向上させる点で、リグニンスルホン酸塩が好ましく、特に、リグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
消泡剤としては、例えば高級アルコール系、アルキルフェノール系、ジエチレングリコール系、ジブチルフタレート系、非水溶性アルコール系、トリブチルホスフェート系、ポリグリコール系、シリコーン系、酸化エチレン−酸化プロピレン共重合体系などが挙げられる。
消泡剤の添加のタイミングは、分散剤と同時でもよいし、分散剤の添加の前でもよいし、分散剤の添加の後でもよい。ただし、消泡効果を充分に得るためには、分散剤と同時または分散剤の添加の前が好ましい。
また、本発明では、特定の珪酸ナトリウム水溶液を用い、かつセメント粒子に対する珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2の量を規定しているので、スラグ粒子の硬化が進行し、硬化体の強度が高い懸濁グラウト薬液が得られる。
ただし、懸濁グラウト薬液の製造に用いる水(ただし、珪酸ナトリウム水溶液由来の水を除く)の全部を分散液の調製に用いれば、分散液の濃度を低くできるので、スラグ粒子およびセメント粒子の分散性がより向上し、且つ、スラグ粒子およびセメント粒子濃度の低い分散液へ珪酸ナトリウム水溶液を添加することが可能となることから、浸透性に特に優れた懸濁グラウト薬液が得られる。この方法は、一つの釜で懸濁グラウト薬液を製造する場合に特に有利である。
地盤への注入方法には特に制限はなく、従来行われている地盤改良工法の中から、地盤条件、施工の目的、作業性などの現場条件に応じて適宜選択して採用できる。
実施例、比較例で用いた材料、および各種測定・評価方法は以下の通りである。
・混合物A:高炉水砕スラグを粉砕したスラグ粒子と、普通ポルトランドセメントを粉砕したセメント粒子との混合物(平均粒子径:4μm、ブレーン値:9500cm2/g、混合物A100質量%中のセメント粒子の含有量:5.1質量%)。
・混合物B:高炉水砕スラグを粉砕したスラグ粒子と、普通ポルトランドセメントを粉砕したセメント粒子との混合物(平均粒子径:4μm、ブレーン値:9500cm2/g、混合物A100質量%中のセメント粒子の含有量:4.1質量%)。
・混合物C:高炉水砕スラグを粉砕したスラグ粒子と、普通ポルトランドセメントを粉砕したセメント粒子との混合物(平均粒子径:4μm、ブレーン値:9500cm2/g、混合物A100質量%中のセメント粒子の含有量:3.4質量%)。
・混合物D:高炉水砕スラグを粉砕したスラグ粒子と、普通ポルトランドセメントを粉砕したセメント粒子との混合物(平均粒子径:3μm、ブレーン値:12000cm2/g、混合物A100質量%中のセメント粒子の含有量:5.1質量%)。
なお、混合物A〜Dの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、「SALD−2100」)を用い、溶媒としてエタノールを使用して測定した。
・水:水道水
・分散剤A:リグニンスルホン酸ナトリウム粉末(消泡剤として、サンノプコ株式会社製の「SNデフォーマ14HP」を1質量%含む)。
・分散剤B:ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物粉末(花王株式会社製、「マイティー100」)。
・分散剤C:ポリカルボン酸系高性能減水剤粉末(メタクリル酸ナトリウム−メトキシポリオキシエチレンメタクリレート共重合物、花王株式会社製、「マイティー21P」)。
・分散剤D:アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(C:14〜18)粉末(ライオン株式会社製、「リポラン2800」)。
図1に示す評価装置を用意した。この評価装置10は、内径50mmのアクリル製のパイプ11と、該パイプ11の上端および下端を封じる、貫通孔が設けられたゴム栓12a,12bと、パイプ11内を真空にするための真空ポンプ13と、懸濁グラウト薬液を貯留する容器14と、パイプ11と真空ポンプ13とを連結する第一の連結管15と、パイプ11と容器14とを連結する第二の連結管16とを具備して概略構成されるものである。なお、第二の連結管16には途中にバルブ16aが設けられている。
ついで、3号硅砂S1上にポリエチレン製の網(図示略)を載せて、さらにその上からバイブレーターを用いて5号硅砂S2を振動させながら充填した(充填長さ:450mm)。
ついで、5号硅砂S2の上端S2aにポリエチレン製の網(図示略)を載せて、パイプ11の上端をゴム栓12aで封じた。
さらに、第一の連結管15の一端をゴム栓12aの貫通孔に挿入し、他端を真空ポンプ13のホース13aに接続し、パイプ11と真空ポンプ13を連結した。また、第二の連結管16の一端をゴム栓12bの貫通孔に挿入した。
ついで、攪拌子14aの入った容器14に懸濁グラウト薬液Lを入れ、第二の連結管16の他端を容器14内の懸濁グラウト薬液Lに浸け、マグネチックスターラー17にて懸濁グラウト薬液Lを攪拌した。
第二の連結管16のバルブ16aを開けるのと同時に時間を計り始め、5号硅砂S2中を浸透する懸濁グラウト薬液Lの液面が5号硅砂S2の上端S2aに到達するまでの時間を計測した。
なお、計測開始から5分経過しても懸濁グラウト薬液Lの液面が5号硅砂S2の上端S2aに到達しない場合は、5号硅砂S2の下端S2bから5号硅砂S2中の懸濁グラウト薬液Lの液面までの距離を測定した。
円柱型枠(内径5cm×高さ10cm)内に、懸濁グラウト薬液を入れた後、直ちに豊浦砂を振動締固しながら充填し、7日間20℃で密閉養生した。その後、脱型し、ポリ塩化ビニリデンのフィルムで水が蒸発しないように包んだ状態(密閉養生)で、作製から28日経過まで20℃で養生し、得られた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。
なお、28日経過後の硬化体の一軸圧縮強度が0.2N/mm2以下の場合、養生期間を2ヶ月に延長して、硬化体の一軸圧縮強度を測定した。
また、硬化体の硬化の促進については、試験体が濃い緑色に変化することからも確認できた。
20℃で攪拌している水342mLに、混合物A82gを添加し、2分間攪拌して分散液を得た。得られた分散液に珪酸ナトリウム水溶液38gを添加し、さらに2分間攪拌して懸濁グラウト薬液を調製した。
得られた懸濁グラウト薬液について、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
混合物A82gに表1に示す量の分散剤Aを加えた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
混合物A82gに表1に示す量の分散剤B、分散剤C、または分散剤Dを加えた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
混合物Aの代わりに、混合物B82gに分散剤Aを0.2g添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
20℃で攪拌している水342mLに、珪酸ナトリウム水溶液38gを添加、攪拌した後に、混合物A82gを添加し、4分間攪拌して懸濁グラウト薬液を調製した。
得られた懸濁グラウト薬液について、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
混合物Aの代わりに、混合物C82gに分散剤Aを0.2g添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価および硬化体の強度測定を行った。結果を表1に示す。
特に、分散剤としてリグニンスルホン酸ナトリウム粉末を混合物Aに添加した実施例2,3は、浸透性が飛躍的に向上した。なお、リグニンスルホン酸ナトリウムを分散剤として用いる場合、通常は添加量が少ないと充分な効果が得られにくい傾向にあるが、実施例2,3の結果より、リグニンスルホン酸ナトリウムの添加量が少量の方が、より優れた浸透性の向上効果が得られた。
これに対し、実施例7と比較例2の場合、いずれも28日経過後の硬化体の一軸圧縮強度は0.2N/mm2であった。ただし、珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2とセメント粒子の質量比(SiO2/セメント粒子)が2.8である実施例7では、養生期間を2ヶ月に延長したときの硬化体の一軸圧縮強度は2.0N/mm2に上がり、濃い緑色の発色が認められた。一方、質量比(SiO2/セメント粒子)が3.4である比較例2では、養生期間を2ヶ月に延長しても、硬化体の一軸圧縮強度、色に変化はなかった。
混合物A82gに分散剤Aを0.2g加えた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価を行った。なお、浸透性の評価では、5号硅砂の代わりに6号硅砂をパイプに充填した。結果を表2に示す。
混合物Aの代わりに、混合物D82gに分散剤Aを0.2g添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価を行った。なお、浸透性の評価では、5号硅砂の代わりに6号硅砂をパイプに充填した。結果を表2に示す。
比較例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価を行った。なお、浸透性の評価では、5号硅砂の代わりに6号硅砂をパイプに充填した。結果を表2に示す。
混合物A82gに分散剤Aを0.2g加えた以外は、比較例1と同様にして懸濁グラウト薬液を調製し、浸透性の評価を行った。なお、浸透性の評価では、5号硅砂の代わりに6号硅砂をパイプに充填した。結果を表2に示す。
特に、スラグ粒子とセメント粒子の混合物の平均粒子径が4μmである混合物Aを用いた実施例8の方が、平均粒子径が3μmである混合物Dを用いた実施例9よりも、浸透性の結果が良好であった。これは、混合物Dよりも混合物Aの方が粒子間の凝集が起こりにくく、目詰まりしにくいことによるものと考えられる。
また、比較例3,4の結果より、水と珪酸ナトリウム水溶液の混合液にスラグ粒子とセメント粒子の混合物を分散させる場合、分散剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムを混合物に添加しても、浸透性の向上効果は得られないことが分かった。
11 パイプ
12a,12b ゴム栓
13 真空ポンプ
13a ホース
14 容器
14a 攪拌子
15 第一の連結管
16 第二の連結管
16a バルブ
17 マグネチックスターラー
L 懸濁グラウト薬液
S1 3号硅砂
S2 5号硅砂
S2a 上端
S2b 下端
Claims (1)
- スラグ粒子、セメント粒子、SiO2/Na2Oのモル比が2.5〜4.5であり、かつSiO2の濃度が20質量%以上である珪酸ナトリウム水溶液、および水を混合する懸濁グラウト薬液の製造方法であって、
前記珪酸ナトリウム水溶液中のSiO2とセメント粒子の質量比(SiO2/セメント粒子)が3.0以下であり、
水にスラグ粒子およびセメント粒子を分散して分散液とした後に、該分散液と珪酸ナトリウム水溶液とを混合する懸濁グラウト薬液の製造方法。
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