以下、バルーンカテーテルについての一実施の形態を図面に基づいて説明する。先ず図3を参照しながらバルーンカテーテル10の概略構成を説明する。図3はバルーンカテーテル10の構成を示す概略全体側面図である。
図3に示すように、バルーンカテーテル10は、カテーテルチューブ11と、当該カテーテルチューブ11の近位端部(基端部)に取り付けられたハブ12と、カテーテルチューブ11の遠位端側(先端側)に取り付けられたバルーン13と、を備えている。なお、バルーンカテーテル10の長さ寸法は、1m〜2mとなっている。
カテーテルチューブ11は、複数のチューブにより構成されており、少なくとも軸線方向(長手方向)の途中位置からバルーン13の位置まで内外複数管構造となっている。具体的には、カテーテルチューブ11は、外側チューブ15と、当該外側チューブ15よりも細径化された内側チューブ16と、を備えており、外側チューブ15に内側チューブ16が内挿されていることで内外2重管構造となっている。なお、内側チューブ16がチューブ体に相当する。
外側チューブ15は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された外側管孔21(図1参照)を有する管状に形成されている。また、外側チューブ15は、Ni―Ti合金やステンレスなどの金属により形成された外側近位チューブ22と、当該外側近位チューブ22に対して遠位側にて連続し外側近位チューブ22よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側中間チューブ23と、当該外側中間チューブ23に対して遠位側にて連続し外側中間チューブ23よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側遠位チューブ24と、を備えている。
なお、外側近位チューブ22を合成樹脂により形成してもよい。また、外側中間チューブ23及び外側遠位チューブ24の形成材料は、熱可塑性のポリアミドエラストマに限定されることはなく、他の合成樹脂により形成されていてもよく、金属製の編組チューブや金属製のコイルが合成樹脂製の壁部に埋設された構成であってもよい。また、本明細書において剛性とは、カテーテルを軸線方向に対して直交する方向に曲げようとするときに作用するモーメントの大きさのことをいう。
内側チューブ16は、図1に示すように、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された内側管孔31を有する管状に形成されている。また、内側チューブ16は、図3に示すように、その近位端部が外側チューブ15における軸線方向の途中位置、具体的には外側中間チューブ23と外側遠位チューブ24との境界に対して接合され、さらに外側チューブ15よりも遠位側に延出するように設けられている。そして、この延出している領域を外側から覆うようにしてバルーン13が設けられている。
なお、外側管孔21は、バルーン13を膨張又は収縮させる際に圧縮流体が流通することとなる流体用ルーメンとして機能する。また、内側管孔31は、ガイドワイヤGが挿通されるガイドワイヤ用ルーメンとして機能する。また、図3に示すように、内側管孔31の近位端開口31aがバルーンカテーテル10の軸線方向の途中位置に存在した所謂RX型のカテーテルとなっているが、これに限定されることはなく、内側管孔31の近位端開口31aがバルーンカテーテル10の近位端部に存在する所謂オーバー・ザ・ワイヤ型のカテーテルであってもよい。
次に、バルーン13及び内側チューブ16の構成について、図1を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)はバルーン13及び外側チューブ15を縦断面の状態で示す、膨張状態のバルーン13及びその周辺を示す側面図である。図1(a1)は縦断面の状態のバルーン13について一部を拡大して示す図であり、図1(a2)は内側チューブ16の一部を拡大して示す縦断面図であり、図1(a3)はバルーン13及び内側チューブ16の一部を拡大して示す縦断面図である。図1(b)はバルーン13が収縮状態である場合における当該バルーン13及びその周辺を示す側面図である。
バルーン13は、熱可塑性のポリアミドにより形成されている。但し、これに限定されることはなく、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマ、ポリエステル、ポリエステルエラストマ、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリエチレンテレフタレート、シリコンゴム、スチレンオレフィンゴムなどといった他の合成樹脂により形成されていてもよい。また、このように列挙した合成樹脂や上記ポリアミドエラストマのうち、2種類以上を混合させた材料により形成してもよく、この場合、単層構造としてもよく、多層構造としてもよい。
バルーン13の製造方法としては特に限定されることはなく、ブロー成形、ディッピング成形、押出成形などによる製造方法が挙げられる。但し、心臓の冠状動脈に生じた狭窄部を拡張治療する場合、バルーン13が十分な耐圧強度を有することが好ましく、この場合、ブロー成形が好ましい。
当該ブロー成形によりバルーン13を製造する方法の一例は以下のとおりである。先ず、押出成形により、バルーン13の元となる管状パリソンを作製する。次に、当該管状パリソンを長さ方向に延伸させた後、バルーン13の形状に対応した型が形成された金型を用いて、所定の条件下でブロー成形を行う。これにより、管状パリソンが2軸延伸された状態となる。その後、延伸された管状パリソンの両端を切断することでバルーン13の製造が完了する。なお、上記ブロー成形は、室温条件下で行ってもよく、加熱条件下で行ってもよい。また、当該ブロー成形を複数回行ってもよい。さらにまた、軸方向の延伸とラジアル方向の延伸とを同時に行うようにしてもよい。さらに、2軸延伸後などにおいてアニーリングを行ってもよい。
バルーン13は、図1(a)に示すように、膨張状態において内径及び外径が複数段階で代わるように形成されている。つまり、バルーン13は、外側チューブ15に接合される近位側レッグ領域(近位側接合領域)13aと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に拡径されるようにテーパ状をなす近位側コーン領域(近位側の遷移領域)13bと、長さ方向の全体に亘って内径及び外径が同一でありバルーン13の最大外径領域をなす直管領域(膨張用領域)13cと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に縮径されるようにテーパ状をなす遠位側コーン領域(遠位側の遷移領域)13dと、内側チューブ16に接合される遠位側レッグ領域(遠位側接合領域)13eとを、近位側からこの順で有している。
近位側レッグ領域13aの軸線方向の長さ寸法は0.5mm〜5.0mmであり、近位側コーン領域13bの軸線方向の長さ寸法は0.5mm〜10.0mmであり、直管領域13cの軸線方向の長さ寸法は5mm〜50mmであり、遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法は2.5mm〜15.0mmであり、遠位側レッグ領域13eの軸線方向の長さ寸法は0.5mm〜2.0mmである。また、バルーン13が膨張した際の直管領域13cの外径は1.0mm〜5.0mmであり、バルーン13の膨張させる前の収縮時(すなわち、バルーン13が折り畳まれている状態)における直管領域13cの外径は0.5mm〜1.5mmである。また、直管領域13cの肉厚は0.01mm〜0.3mmであり、遠位側コーン領域13dにおける遠位端の肉厚は0.03mm〜0.5mmである。
遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法として好ましくは、4.0mm〜13.0mmであり、より好ましくは、5.0mm〜11.0mmである。これにより、当該遠位側コーン領域13dの傾斜を極力緩やかなものとすることが可能となる。よって、図1(b)に示すように、バルーン13が収縮し、バルーン13における近位側コーン領域13b、直管領域13c及び遠位側コーン領域13dが内側チューブ16の外周面に巻きついた状態では、遠位端側から直管領域13cに至る部分において外径の変化が緩やかなものとなり、バルーンカテーテル10を体内に挿入する際の通過性が向上する。
なお、バルーン13が複数羽式(例えば、3枚羽式)で形成された構成においては、バルーン13の収縮状態では、それら各羽が個別に内側チューブ16に巻きついた状態となる。詳細には、バルーン13が膨張状態から収縮状態となる場合、軸線方向に対して垂直に起立する羽が等間隔で複数形成されるようにバルーン13の膨張及び収縮領域(近位側コーン領域13b、直管領域13c及び遠位側コーン領域13d)が折りたたまれ、その後、各羽が内側チューブ16に巻きつき収縮状態となる。
内側チューブ16は、複数のチューブ32〜34を同一軸線上となるように並べて連結させることで形成されている。具体的には、内側チューブ16の近位端部から外側チューブ15よりも遠位側の途中位置までを構成する内側近位チューブ32と、当該内側近位チューブ32に対して遠位側にて連続する内側中間チューブ33と、当該内側中間チューブ33に対して遠位側にて連続するとともに内側チューブ16の遠位端部を構成する内側遠位チューブ34と、を備えている。なお、内側近位チューブ32が第3チューブに相当し、内側中間チューブ33が第1チューブに相当し、内側遠位チューブ34が第2チューブに相当する。
内側近位チューブ32は合成樹脂により形成されており、具体的には複数種類の合成樹脂が積層されてなる3層構造をなしている。詳細には、外層がショア硬度70D相当の熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成されており、中間層が低密度ポリエチレンにより形成されており、内層が高密度ポリエチレンにより形成されている。なお、図1(a2)では、説明の便宜上、内側近位チューブ32を単一の層として示している。
内側中間チューブ33は合成樹脂により形成されており、単一層構造をなしている。内側中間チューブ33は、内側近位チューブ32において利用されている熱可塑性のポリアミドエラストマよりもショア硬度が低い樹脂材料を用いて形成されている。詳細には、内側近位チューブ32において利用されている熱可塑性のポリアミドエラストマよりもショア硬度が低い熱可塑性のポリアミドエラストマ、具体的には、ショア硬度63D相当のポリアミドエラストマにより形成されている。
内側遠位チューブ34は合成樹脂により形成されており、単一層構造をなしている。内側遠位チューブ34は、内側中間チューブ33において利用されている熱可塑性のポリアミドエラストマよりもショア硬度が低い樹脂材料を用いて形成されている。詳細には、内側中間チューブ33において利用されている熱可塑性のポリアミドエラストマよりもショア硬度が低い熱可塑性のポリアミドエラストマ、具体的には、ショア硬度55D相当のポリアミドエラストマにより形成されている。
なお、内側近位チューブ32、内側中間チューブ33及び内側遠位チューブ34の形成材料は、上記のものに限定されない。
例えば、内側近位チューブ32を、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、シリコンゴムなどといった合成樹脂を用いて、上記のものとは異なる多層構造として形成してもよい。また、多層構造とするのではなく、上記のように列挙した合成樹脂などを用いて単層構造としてもよい。この場合に、1種単独の合成樹脂により形成してもよく、2種類以上を混合させた材料により形成してもよい。
また、内側中間チューブ33及び内側遠位チューブ34を、それぞれ独立に、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、シリコンゴムなどといった合成樹脂を用いて形成してもよい。この場合、上記のものと同様に単層構造としてもよく、さらに当該単層構造を1種単独の合成樹脂により形成してもよく、2種以上を混合させた材料により形成してもよい。また、上記のように列挙した合成樹脂などを用いて多層構造としてもよい。
当該多層構造としては、上記内側近位チューブ32と同様に、外層がポリアミドエラストマにより形成されており、中間層が低密度ポリエチレンにより形成されており、内層が高密度ポリエチレンにより形成されている構成としてもよい。この場合、内側近位チューブ32、内側中間チューブ33及び内側遠位チューブ34は同一の多層構造をなすものの、外層を生じさせる合成樹脂(具体的にはポリアミドエラストマ)のショア硬度を、内側近位チューブ32>内側中間チューブ33>内側遠位チューブ34の関係となるように設定してもよい。
内側近位チューブ32において外側チューブ15よりも遠位側に延出した領域は、遠位側に向けて段階的に細くなるように形成されている。具体的には、この延出した領域には、軸線方向の途中位置に、当該途中位置よりも遠位側の方が近位側よりも細くなるように段差部32aが形成されている。したがって、内側近位チューブ32は、段差部32aよりも近位側の大径領域32bと、段差部32aよりも遠位側の小径領域32cとを有している。また、これら大径領域32b及び小径領域32cは内径が同一となっている。したがって、小径領域32cは大径領域32bよりも肉厚が薄肉化されている。
ここで、上記小径領域32cは、押出成形などにより一定の外径及び一定の内径となるように形成されたチューブの遠位側を軸線方向に延伸させることにより形成されている。これにより、小径領域32cの強度が高められている。つまり、内側近位チューブ32は、外径及び内径が一定のチューブを形成するためのチューブ形成工程と、当該チューブ形成工程により形成されたチューブを、その軸線方向の途中位置から延伸させる延伸工程とを、行うことにより形成されている。なお、延伸工程を複数回行うようにしてもよく、延伸工程の後に小径領域32cの長さ寸法を所定の寸法とするためにチューブを切断する工程を行うようにしてもよい。
内側近位チューブ32の小径領域32cには、X線投影下でのバルーン13の視認性を向上させ、且つ目的とする治療箇所へのバルーン13の位置決めを容易に行うために、その外周面に、金属製であって筒状をなす造影環35が取り付けられている。造影環35は、ステンレス鋼により形成されているが、これに限定されることはなく、金、白金、イリジウム、コバルトクロム合金、チタンなどを用いてもよい。造影環35は、その近位端側の端面を遠位側から段差部32aに当接させて設けられている。これにより、バルーンカテーテル10の体内への挿入時や、血管の狭窄部位をバルーン13周辺が通過する際に、造影環35に対して近位側に向けて負荷が掛かったとしても、その負荷が段差部32aにて受けられ、造影環35の位置ずれが防止される。なお、造影環35は軸線方向において直管領域13cの中央位置を含むように配置されている。
小径領域32cは、外径及び内径が軸線方向において一定となるように形成されており、当該小径領域32cの遠位端部に内側中間チューブ33が接合されている。内側中間チューブ33は、外径及び内径が軸線方向において一定となっており、その外径及び内径は小径領域32cの外径及び内径と同一となっている。また、内側遠位チューブ34は、軸線方向の途中位置までは外径及び内径が一定となるように形成されており、その外径及び内径は小径領域32cの外径及び内径と同一となっており、軸線方向の途中位置からは内径を一定としながら先細りさせることでテーパ状に形成されている。
このように小径領域32c、内側中間チューブ33及び内側遠位チューブ34の外径及び内径が設定されている構成において、既に説明したとおり、内側中間チューブ33は内側近位チューブ32よりもショア硬度の低い材料により形成されているとともに、内側遠位チューブ34は内側中間チューブ33よりもショア硬度の低い材料により形成されている。したがって、内側中間チューブ33は小径領域32cよりも剛性が低く設定されており、内側遠位チューブ34は内側中間チューブ33よりも剛性が低く設定されている。
以上のように内側チューブ16が形成されていることにより、当該内側チューブ16の剛性は遠位側に向けて段階的に低くなる。これにより、屈曲した血管への追随性、近位側からの力の伝達性、及び耐キンク性の向上が図られる。
次に、内側中間チューブ33と内側遠位チューブ34との接合箇所について説明する。
内側中間チューブ33と内側遠位チューブ34との接合箇所(以下、第1接合箇所36とも言う)は、図1(a3)に示すように、バルーン13の遠位側レッグ領域13eよりも遠位側に存在している。つまり、内側中間チューブ33は、バルーン13の遠位側レッグ領域13eよりも遠位側に延在しており、その延在した箇所に内側遠位チューブ34が接合されている。これにより、バルーンカテーテル10の遠位端部の柔軟性を高めることが可能となり、当該遠位端部が血管の狭窄箇所の形状に合わせて変形し易くなる。よって、狭窄箇所の通過性を向上させることが可能となる。
第1接合箇所36について詳細には、当該第1接合箇所36は、内側中間チューブ33の遠位端開口側に内側遠位チューブ34の近位端部を挿入し、その挿入箇所を外側から加熱して両チューブ33,34を熱溶着させることで形成されている。この熱溶着は、第1接合箇所36を含めて内側チューブ16の内径が同一又は略同一となるようにマンドレルを挿入した状態で行われるとともに、第1接合箇所36に段差が生じずに当該第1接合箇所36及びその周辺において外周面が面一となるように熱収縮チューブなどを利用して外側から加熱圧縮することで行われる。
第1接合箇所36は、内側中間チューブ33を形成する材料と、内側遠位チューブ34を形成する材料との両方を含む領域となっている。詳細には、第1接合箇所36は、内側中間チューブ33を形成する材料による層と、内側遠位チューブ34を形成する材料による層とが内外に積層された領域であり、この積層された領域が軸線方向の所定範囲に延在した状態となっている。この場合、第1接合箇所36では、内側中間チューブ33を形成する材料による層及び内側遠位チューブ34を形成する材料による層のうち硬度が高い側である、内側中間チューブ33を形成する材料による層が内側チューブ16の外周面を生じさせている。なお、接合方法は熱溶着に限定されることはなく、接着剤を利用してもよい。
第1接合箇所36は、内側中間チューブ33を形成する材料による層と、内側遠位チューブ34を形成する材料による層とが積層されている構成に限定されることはなく、これら各材料の混合割合が肉厚方向に変化する構成であってもよい。具体的には、内側中間チューブ33を形成する材料の混合割合が、内側チューブ16の外周面側が高く、内周面に向かうほど低くなるように、各材料が分散していてもよい。この場合、内側チューブ16の外周面では、内側中間チューブ33を形成する材料が単独で存在し、内側遠位チューブ34を形成する材料が存在していない構成としてもよく、内側中間チューブ33を形成する材料の割合が内側遠位チューブ34を形成する材料よりも高いものの内側遠位チューブ34を形成する材料も存在している構成としてもよい。
上記のように第1接合箇所36では、内側中間チューブ33を形成する材料が外周面を生じさせている又は外周面において内側中間チューブ33を形成する材料の混合割合が高くなっていることにより、第1接合箇所36における外周面側の硬度を高めることが可能となる。これにより、上記のように狭窄箇所の通過性を向上させた構成において、狭窄箇所を通過する際の外力などにより、バルーン13よりも遠位側に延在している部分の外周面が極端に変形してしまうことが抑制される。
なお、内側チューブ16に挿通されるガイドワイヤGの摺動抵抗を低減する上では、第1接合箇所36において内周面の硬度が高いことが好ましい。したがって、当該摺動抵抗の低減を図る場合には、第1接合箇所36では、内側中間チューブ33を形成する材料が内周面を生じさせている又は内周面において内側中間チューブ33を形成する材料の混合割合が高いことが好ましい。
第1接合箇所36はその全体が、バルーン13の遠位側レッグ領域13eよりも遠位側に存在している。これにより、バルーン13の遠位側レッグ領域13eは、内側遠位チューブ34や第1接合箇所36ではなく、内側中間チューブ33に接合された状態となっている。バルーンカテーテル10の遠位端部の柔軟性を高めるべく内側遠位チューブ34を設けた構成においては、遠位側レッグ領域13eを内側遠位チューブ34や第1接合箇所36に接合する構成が考えられるが、これらに比べて剛性が高い内側中間チューブ33に遠位側レッグ領域13eを接合することで、内側チューブ16におけるバルーン13の支持の安定性が高められる。
既に説明したとおり、内側チューブ16においてバルーン13よりも遠位側に延在した領域は、軸線方向の途中位置から遠位端部に向けて先細りしているが、第1接合箇所36はこの先細り領域37よりも近位側に存在している。このように第1接合箇所36が先細り領域37と重ならないようにすることにより、第1接合箇所36の薄肉化が抑制され、第1接合箇所36の接合強度が高められる。但し、狭窄箇所の通過性の更なる向上を図る上では、第1接合箇所36が生じている箇所の少なくとも一部を含めて先細り領域37が形成されている構成としてもよい。
以上のとおり、バルーンカテーテル10の遠位側の剛性を低くすべく内側近位チューブ32の遠位側に、当該内側近位チューブ32よりも剛性が低いチューブを設ける構成において、当該剛性が低いチューブとして、内側中間チューブ33と内側遠位チューブ34とを設け、さらにこれらチューブ33,34の接合箇所36がバルーン13よりも遠位側に存在するようにした。これにより、内側チューブ16におけるバルーン13の支持の安定性の向上を図りながら、狭窄箇所の通過性の向上を図ることが可能となる。
但し、当該構成は、後述する耐キンク性の向上とガイドワイヤGへの追随性の向上との両立を図る構成との関係では、任意の構成であり、例えば第1接合箇所36に対してバルーン13の遠位側レッグ領域13eが接合されている構成としてもよく、内側遠位チューブ34が不具備であってもよく、当該内側遠位チューブ34が内側中間チューブ33よりも硬度の高い材料により形成されていてもよい。
次に、内側近位チューブ32と内側中間チューブ33との接合箇所について説明する。
内側近位チューブ32と内側中間チューブ33との接合箇所(以下、第2接合箇所38とも言う)は、図1(a2)に示すように、内側中間チューブ33の近位端開口側に内側近位チューブ32の遠位端部を挿入し、その挿入箇所を外側から加熱して両チューブ32,33を熱溶着させることで形成されている。この熱溶着は、第2接合箇所38を含めて内側チューブ16の内径が同一又は略同一となるようにマンドレルを挿入した状態で行われるとともに、第2接合箇所38に段差が生じずに当該第2接合箇所38及びその周辺において外周面が面一となるように熱収縮チューブなどを利用して外側から加熱圧縮することで行われる。
第2接合箇所38は、内側近位チューブ32を形成する材料と、内側中間チューブ33を形成する材料との両方を含む領域となっている。詳細には、第2接合箇所38は、内側近位チューブ32を形成する材料による層と、内側中間チューブ33を形成する材料による層とが内外に積層された領域であり、この積層された領域が軸線方向の所定範囲に延在した状態となっている。この場合、第2接合箇所38では、内側近位チューブ32を形成する材料による層及び内側中間チューブ33を形成する材料による層のうち硬度が高い側である、内側近位チューブ32を形成する材料による層が内側チューブ16の内周面を生じさせている。なお、接合方法は熱溶着に限定されることはなく、接着剤を使用してもよい。
第2接合箇所38は、内側近位チューブ32を形成する材料による層と、内側中間チューブ33を形成する材料による層とが積層されている構成に限定されることはなく、これら各材料の混合割合が肉厚方向に変化する構成であってもよい。具体的には、内側近位チューブ32を形成する材料の混合割合が、内側チューブ16の内周面側が高く、外周面に向かうほど低くなるように、各材料が分散していてもよい。この場合、内側チューブ16の内周面では、内側近位チューブ32を形成する材料が単独で存在し、内側中間チューブ33を形成する材料が存在していない構成としてもよく、内側近位チューブ32を形成する材料の割合が内側中間チューブ33を形成する材料よりも高いものの内側中間チューブ33を形成する材料も存在している構成としてもよい。
上記のように第2接合箇所38では、内側近位チューブ32を形成する材料が内周面を生じさせている又は内周面において内側近位チューブ32を形成する材料の混合割合が高くなっていることにより、第2接合箇所38における内周面側の硬度を高めることが可能となる。これにより、ガイドワイヤGの摺動抵抗を低減させることが可能となる。なお、第2接合箇所38において外周面側の硬度を高める上では、内側近位チューブ32を形成する材料が外周面を生じさせている又は外周面において内側近位チューブ32を形成する材料の混合割合が高いことが好ましい。
第2接合箇所38の位置は、図1(a)に示すように、内側近位チューブ32の遠位端部(すなわち内側近位チューブ32と第2接合箇所38との境界)が軸線方向においてバルーン13の直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界よりも遠位側であってバルーン13の遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界よりも近位側に存在するように設定されている。以下、内側近位チューブ32の遠位側への入り込み量について、図2を参照しながら詳細に説明する。
図2(a)〜(d)はバルーン13が膨張状態である場合における当該バルーン13及びその周辺を示す側面図であり、図2(a)〜(d)のそれぞれは上記入り込み量が相違している。なお、図2(a)〜(d)においてバルーン13及び外側チューブ15は縦断面の状態で示す。
図2(a)に示す形態は、図1(a)に示す形態と上記入り込み量が同一となっている。この場合、遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法をL1、直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界部分から、内側近位チューブ32の遠位端部までの軸線方向の長さ寸法をL2とした場合に、L1は9.0mmであり、L2は4.5mmとなっている。この場合、L2/L1が0.5となる。つまり、内側近位チューブ32の遠位端部は、軸線方向において遠位側コーン領域13dの中間位置に存在している。
図2(b)に示す形態は、L1が9.0mmであり、L2が2.5mmとなっている。この場合、L2/L1が0.28となる。つまり、内側近位チューブ32の遠位端部は、軸線方向において、直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界よりも遠位側であって遠位側コーン領域13dの中間位置よりも近位側に存在している。
図2(c)に示す形態は、L1が9.0mmであり、L2が6.5mmとなっている。この場合、L2/L1が0.72となる。また、図2(d)に示す形態は、L1が9.0mmであり、L2が8.5mmとなっている。この場合、L2/L1が0.94となる。つまり、これら図2(c)及び図2(d)に示す形態では、内側近位チューブ32の遠位端部は、軸線方向において、遠位側コーン領域13dの中間位置よりも遠位側であって遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界よりも近位側に存在している。
ここで、バルーン13は、図1(a1)に示すように軸線方向の両端から直管領域13cに向けて除々に肉厚が小さくなるように形成されているのが一般的である。この傾向は、上述したブロー成形によりバルーン13が形成される場合に顕著となる。そうすると、バルーン13単体で見た場合に、直管領域13c側の方が遠位端側に比べて剛性が低くなってしまう。この場合に、当該範囲の全体に内側中間チューブ33といった柔軟性を高めるためのチューブが存在していると仮定した場合、上記バルーン13の剛性変化の影響を内側チューブ16側において吸収することができなくなり、キンクの発生が懸念される。
これに対して、図2(a)〜(d)に示す形態のように、外側チューブ15側から遠位側へと延在している内側近位チューブ32が、軸線方向において遠位側コーン領域13dに覆われた空間に入り込んでいることにより、上記キンクの発生を抑制することが可能となる。また、図2(a)〜(d)に示す形態のように、内側近位チューブ32の遠位端部は、軸線方向において遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界よりも近位側に存在している。これにより、バルーンカテーテル10の遠位側の柔軟性が確保され、バルーンカテーテル10のガイドワイヤGに対する追随性を高めながら、上記キンクの発生を抑制することが可能となる。
上記キンクの発生を好適に抑制する上では、上記L2/L1は0.28以上が好ましく、0.35以上がより好ましい。また、L2の値としては、L1が9.0mm以上である場合において、2.5mm以上が好ましく、3.2mm以上がより好ましい。
上記ガイドワイヤGに対する追随性を好適に高める上では、上記L2/L1は0.72以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。また、(L1−L2)の値としては、L1が9.0mm以上である場合において、2.5mm以上が好ましく、3.6mm以上がより好ましい。
また、上記キンクの発生を抑制する上では、遠位側を延出させて内側チューブ16を支持台上に水平に保持した状態で、当該水平台から1mm離れた箇所をプローブスピード0.5mm/minにてプローブ(先端の接触面が10mm×0.2mmの長方形の平面)により鉛直方向下向きに0.5mm変位させる片持ち試験を実施した場合の測定荷重が、内側チューブ16においてバルーン13の遠位側レッグ領域13eと遠位側コーン領域13dとの境界が存在することとなる位置から近位側に向かうほど大きくなる傾向を示し、且つ遠位側コーン領域13dの軸線方向の寸法L1に対して5/6の距離分、当該境界が存在することとなる位置から近位側に入り込んだ位置の測定荷重が1gf以上となることが好ましい。また、上記寸法L1に対して11/18の距離分、上記境界が存在することとなる位置から近位側に入り込んだ位置の測定荷重が1gf以上となることがより好ましい。一方、上記ガイドワイヤGに対する追随性を高める上では、上記測定荷重が、内側チューブ16において遠位側レッグ領域13eと遠位側コーン領域13dとの境界が存在することとなる位置にて1.1gf以下となることが好ましく、0.8gf以下となることがより好ましい。
ちなみに、上記のような荷重バランスとした場合、耐キンク性の向上及びガイドワイヤGの追随性の向上を図る上で内側近位チューブ32の遠位端部の位置は任意となるが、上記のような荷重バランスの設定を容易に実現する上では、内側近位チューブ32の遠位端部の位置を調整することが好ましい。
以上のとおり、内側近位チューブ32の遠位端部の位置を上記のように設定したこと、又は上記片持ち試験の測定荷重が上記のものとなるように内側チューブ16を形成したことにより、バルーン13において直管領域13c側の方が遠位側よりも剛性が低くなる構成であったとしても、その剛性変化を内側チューブ16において適切に吸収することが可能となる。また、バルーンカテーテル10の遠位側の柔軟性も好適に高めることが可能となる。したがって、ガイドワイヤ追随性を良好なものとしながら、バルーン13の遠位側コーン領域13dが存在する箇所におけるキンクの発生を抑制することが可能となる。
但し、当該構成は、内側遠位チューブ34により狭窄箇所の通過性の向上を図る構成との関係では、任意の構成であり、例えば内側近位チューブ32の遠位端部がバルーン13の遠位側レッグ領域13eにより覆われる箇所に入り込む構成としてもよく、当該遠位端部がバルーン13の直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界よりも近位側に存在している構成としてもよい。
次に、バルーンカテーテル10の使用方法について簡単に説明する。
まず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、押引操作して冠動脈入口部まで導入する。次いで、ガイドワイヤGをバルーンカテーテル10の内側管孔31に挿通し、冠動脈入口部から狭窄箇所を経て末梢部位まで導入する。続いて、ガイドワイヤGに沿ってバルーンカテーテル10を、押引操作を加えながら狭窄箇所まで挿入する。
この場合に、既に説明したとおり内側遠位チューブ34が設けられていることにより、狭窄箇所の通過性を向上させることが可能となる。また、内側近位チューブ32の遠位端部が、軸線方向において、直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界よりも遠位側であって遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界よりも近位側に存在していることにより、ガイドワイヤGへの追随性を高めつつ、バルーン13の遠位側コーン領域13dが設けられた箇所におけるキンクの発生を抑制することが可能となる。また、このような構成であることにより、力の伝達性を高めることができるとともに、ガイドワイヤGへの追随性が高められることに起因して、ガイディングカテーテルの配置の安定性が高められる。
その後、加圧器を用いてハブ12側からバルーン13内に圧縮流体を注入することにより、バルーン13を膨張させて閉塞箇所や狭窄箇所を拡張させる。当該拡張治療が完了した場合、バルーン13内に注入された圧縮流体を抜き取ることによりバルーン13を収縮させ、バルーンカテーテル10の体内からの抜き取り作業を行う。
なお、バルーンカテーテル10は上記のように主として血管内を通されて、例えば冠状動脈、大腿動脈、肺動脈などの血管を治療するために用いられるが、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や、「体腔」にも適用可能である。
ガイドワイヤGへの追随性を高めつつ、バルーン13の遠位側コーン領域13dが設けられた箇所におけるキンクの発生を抑制することを可能とする構成を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1)
高密度ポリエチレン(M.holland社 Petrothene LR7340)により形成された厚み0.016mmの内層、低密度ポリエチレン(Equistar社 Plexar PX 3080)により形成された厚み0.004mmの中間層、ポリアミドエラストマ(ARKEMA社 Pebax 7033)により形成された厚み0.06mmの外層を有する、内径0.42mm、外径0.58mm、長さ300mmの中空チューブを、押出成形により作製した。
この中空チューブにおける一方の端部から10mmの範囲を、内側に内径固定用のマンドレルを挿入した状態で、内径0.52mmの円形の孔が形成された延伸用の治具に通すことで延伸させた。その後に、その延伸させた側の端部を切断することで、内径0.41mm、外径0.55mm、長さ290mmの大径領域32b、及び内径0.41mm、外径0.52mm、長さ10mmの小径領域32cを有する内側近位チューブ32を作製した。この内側近位チューブ32の小径領域32cに、ステンレス鋼からなる内径0.55mm、外径0.60mm、長さ1mmの造影環35を加締めにより取り付けた。
ポリアミドエラストマ(ARKEMA社 Pebax 6333)を用いて押出成形により、内径0.42mm、外径0.55mm、長さ9mmの内側中間チューブ33を作製した。上記内側近位チューブ32の小径領域32c側の端部を拡径し、その拡径させた領域に上記内側中間チューブ33を挿入し、両チューブ32,33を加熱溶着した。この際、内側に内径固定用のマンドレルを挿入するとともに、熱収縮チューブを利用して外側から加熱圧縮することにより、接合箇所38の内径及び外径のそれぞれが、小径領域32cの他の部位及び内側中間チューブ33の他の部位と同一となるようにした。
ポリアミドエラストマ(ARKEMA社 Pebax 5533)を用いて押出成形により、内径0.42mm、外径0.55mm、長さ1mmの内側遠位チューブ34を作製した。上記内側中間チューブ33の遠位端部を拡径し、その拡径させた領域に上記内側遠位チューブ34を挿入し、両チューブ33,34を加熱溶着した。この際、内側に内径固定用のマンドレルを挿入するとともに、熱収縮チューブを利用して外側から加熱圧縮することにより、接合箇所36の内径及び外径のそれぞれが、内側中間チューブ33の他の部位及び内側遠位チューブ34の他の部位と同一となるようにした。これにより、内側近位チューブ32における小径領域32cと大径領域32bとの段差部32aから当該内側近位チューブ32の遠位端部(すなわち内側近位チューブ32と内側中間チューブ33との接合箇所38の近位端部)までの長さが8mm、内側近位チューブ32の遠位端部から内側中間チューブ33の遠位端部(すなわち内側中間チューブ33と内側遠位チューブ34との接合箇所36の遠位端部)までの長さが9mm、内側中間チューブ33の遠位端部から内側遠位チューブ34の遠位端部までの長さが1mmの内側チューブ16を得た。
(実施例2)
上記段差部32aから上記内側近位チューブ32の遠位端部までの長さが10mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、内側チューブ16を作製した。
(実施例3)
上記段差部32aから上記内側近位チューブ32の遠位端部までの長さが12mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、内側チューブ16を作製した。
(実施例4)
上記段差部32aから上記内側近位チューブ32の遠位端部までの長さが14mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、内側チューブ16を作製した。
(硬度バランスの評価)
図4(a)に示すように、遠位端側を1mm以上突き出した状態で内側チューブ16を支持台D1上に水平状態となるようにして保持し、支持台D1から1mm突き出した箇所に、先端の接触面が10mm×0.2mmの長方形の平面であるプローブD2により、プローブスピード0.5mm/minにて鉛直方向下向きに荷重を加える片持ち曲げ試験を実施し、プローブD2で0.5mm押し込んだときの曲げ荷重(gf)を測定した。また、当該片持ち曲げ試験による曲げ荷重の測定を、支持台D1からの内側チューブ16の突き出し量を変化させながら、内側チューブ16の遠位端部から1mm〜25mmの範囲において2mmずつ変位させた各箇所について行った。上記実施例1〜4についての当該評価結果を、図4(b)に示す。
なお、図4(b)において、境界1(内側チューブ16の遠位端部から3.5mm近位側の位置)は、上記内側チューブ16を用いてバルーンカテーテル10を作製した場合に、バルーン13の遠位側レッグ領域13eと遠位側コーン領域13dとの境界が存在することとなる軸線方向の位置であり、境界2(内側チューブ16の遠位端部から12.5mm近位側の位置)は、上記内側チューブ16を用いてバルーンカテーテル10を作製した場合に、バルーン13の遠位側コーン領域13dと直管領域13cとの境界が存在することとなる軸線方向の位置である。
図4(b)に示すように、境界1における荷重は、実施例1では約0.6gf、実施例2では約0.5gf、実施例3では約0.8gf、実施例4では約1.0gfであった。つまり、実施例1〜4のいずれも、境界1における荷重は、1.1gf以下であり、実施例1〜3では境界1における荷重は、0.8gf以下であった。
また、境界2における荷重は、実施例1では約1.6gf、実施例2では約1.2gf、実施例3では約1.3gf、実施例4では約1.5gfであった。つまり、実施例1〜4のいずれも、境界2における荷重は、1.2gf以上であった。
また、実施例2〜4では、内側チューブ16の遠位端部から9mmの位置、すなわち遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法に対して11/18の距離分、遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界が存在することとなる位置から近位側に入り込んだ位置にて、荷重が1gf以上となり、実施例1では、内側チューブ16の遠位端部から11mmの位置、すなわち遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法に対して5/6の距離分、遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界が存在することとなる位置から近位側に入り込んだ位置にて、荷重が1gf以上となった。
なお、図示は省略するが、後述する比較例1における内側チューブの場合、内側チューブ16の遠位端部から11mmの位置、すなわち遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法に対して5/6の距離分、遠位側コーン領域13dと遠位側レッグ領域13eとの境界が存在することとなる位置から近位側に入り込んだ位置にて、荷重は1gfを大きく下回った。
(実施例5)
Ni−Ti合金により内径0.5mm、外径0.7mm、長さ250mmの外側近位チューブ22を作製し、ポリアミドエラストマ(ARKEMA社 Pebax 7233)を用いて押出成形により、内径0.70mm、外径0.85mm、長さ150mmの外側中間チューブ23を作製し、ポリアミドエラストマ(ARKEMA社 Pebax 7233)を用いて押出成形により、内径0.70mm、外径0.85mm、長さ240mmの外側遠位チューブ24を作製した。また、外側近位チューブ22の近位端部にポリカーボネート製のハブ12を取り付けた。
ポリアミド(ARKEMA社 Rilsan TL)を用いて、押出成形により管状パリソンを作製し、さらに当該管状パリソンをブロー成形により2軸延伸し、その延伸された管状パリソンの両端を切断することでバルーン13を作製した。
上記外側遠位チューブ24の遠位端部にバルーン13の近位端部を熱溶着により接合した後、上記実施例1で作製した内側チューブ16を上記外側遠位チューブ24に内挿して二重管構造とした。さらに上記バルーン13を内側チューブ16において外側遠位チューブ24から遠位側に延出している領域を覆うように配置するとともにバルーン13の遠位端部を内側チューブ16に熱溶着した後に、内側チューブ16においてバルーン13よりも遠位側に延出している箇所を物理的に研磨して先細り領域37を形成することで、図2(b)に示す構造を有する組立体を作製した。
その後、内側チューブ16の近位端部が外側遠位チューブ24と外側中間チューブ23とで挟み込まれた状態となるように、内側チューブ16の近位端部、外側遠位チューブ24及び外側中間チューブ23を熱溶着するとともに、上記外側近位チューブ22を外側中間チューブ23に内挿した状態で両者を固定した。そして、上記バルーン13を折り畳み、熱処理によりその折り畳み性を保持させることにより、バルーンカテーテル10を得た。なお、上記各熱溶着に際しては、内径固定用のマンドレルを適宜使用した。
この場合、内側チューブ16においてバルーン13よりも遠位側に延出している領域の長さは2mmであり、バルーン13における遠位側レッグ領域13eの軸線方向の長さは1.5mmであり、遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さは9mmであり、直管領域13cの軸線方向の長さは10mmであり、近位側コーン領域13bの軸線方向の長さは5mmであり、近位側レッグ領域13aの軸線方向の長さは4mmであった。また、遠位側コーン領域13dの遠位側レッグ領域13eとの境界寄りの肉厚は0.06mmであり、バルーン13が膨張状態である場合において直管領域13cは外径1.3mm、内径1.26mmであり、バルーン13が収縮状態である場合において当該バルーン13が設けられた箇所の最大外径は0.7mmであった。
また、直管領域13cと遠位側コーン領域13dとの境界部分から、内側近位チューブ32の遠位端部までの軸線方向の長さ寸法L2は2.5mmであり、遠位側コーン領域13dの軸線方向の長さ寸法L1に対する比(L2/L1)は0.28であった。
(実施例6〜8)
内側チューブ16として実施例2〜4のものを用いたこと以外は実施例5と同様にして、図2(a),(c),(d)に示す構造をそれぞれ有するバルーンカテーテル10を作製した。この場合、実施例6では、L2が4.5mmであり、L2/L1は0.5であった。実施例7では、L2が6.5mmであり、L2/L1は0.72であった。実施例8では、L2が8.5mmであり、L2/L1は0.94であった。
(比較例1)
内側近位チューブにおける小径領域と大径領域との段差部から当該内側近位チューブの遠位端部(すなわち内側近位チューブと内側中間チューブとの接合箇所の近位端部)までの長さが5mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、内側チューブを作製した。また、当該内側チューブを用いたこと以外は実施例5と同様にして、バルーンカテーテルを作製した。この場合、L2が0mmであり、L2/L1は0であった。
(耐キンク性、ガイドワイヤ追随性の評価)
上記実施例5〜8及び上記比較例1で得られた各バルーンカテーテル10について、図5に示す試験装置D3((株)メジカルセンス製、PTCAトレーナ)を利用して、模擬的な心臓冠動脈に対する耐キンク性及びガイドワイヤ追随性の評価を行った。
具体的には、当該試験装置D3の内部に37℃の生理食塩水を満たした状態において、模擬大動脈を通り且つ模擬心臓冠動脈の入口部分に先端部が配置されるようにガイディングカテーテルGCを挿入し、さらにガイディングカテーテルGCの内部に外径0.014インチの市販のガイドワイヤGを挿通した。この状態で、上記実施例5〜8及び上記比較例1で得られた各バルーンカテーテル10をガイドワイヤGに沿って模擬心臓冠動脈に挿入した。なお、図5では、理解の容易のため、ガイディングカテーテルGCにハッチングを付している。
この挿入した状態を図6に示す。図6(a)は上記比較例1のバルーンカテーテルを示し、図6(b)は上記実施例5のバルーンカテーテル10を示し、図6(c)は上記実施例6のバルーンカテーテル10を示し、図6(d)は上記実施例7のバルーンカテーテル10を示し、図6(e)は上記実施例8のバルーンカテーテル10を示す。また、耐キンク性及びガイドワイヤ追随性の評価結果を表1に示す。
図6(a)に示すように、比較例1では、遠位側コーン領域が存在している箇所にて折れ曲がりが発生しており、それに伴ってガイドワイヤ追随性も悪いものとなった。これに対して、実施例5〜8では、図6(b)〜(e)に示すように、遠位側コーン領域13dが存在している箇所での折れ曲がりは発生しづらくなっており、特に実施例6〜8では当該折れ曲がりが全く発生しなかった。また、実施例6及び実施例7では、ガイドワイヤ追随性も特に良好なものとなった。