JP2012217909A - 光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置 - Google Patents

光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、光学ガラスの洗浄時に生じるダメージを定量的に評価し、硝材に対して好適な洗浄条件の調査に有用な光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置を提供する。
【解決手段】評価対象の光学ガラスの表面に潜傷を付与する潜傷付与手段2と、潜傷付与手段2により付与された潜傷の形状を測定する第1の形状測定手段3と、第1の形状測定手段3により潜傷の形状を測定された光学ガラスの表面に洗浄液を接触させ、潜傷を拡大させる洗浄手段4と、洗浄手段4による洗浄後に、潜傷の形状を測定する第2の形状測定手段5と、第1の形状測定手段3及び第2の形状測定手段5で得られた結果から光学ガラスの洗浄前後の潜傷の状態を対比する対比手段6と、を有する光学ガラスの潜傷評価装置1。
【選択図】図1

Description

本発明は、洗浄液を用いた洗浄による光学ガラスのダメージ性を評価できる潜傷評価方法及び潜傷評価装置に係り、特に、光学ガラスを形成する様々な硝材の洗浄時の洗浄条件を定量的に評価できる光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置に関する。
光学素子を製造する際に、プレス成形用のプリフォームの作成やプレス成形後において表面形状を整えるために光学ガラスを化学的機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)による研磨工程に付す場合があるが、この研磨操作により得られた光学ガラスの表面には、研磨材や研磨の際に生じたガラスの微粉等が付着又は埋め込まれて存在する。この付着した研磨材やガラスの微粉は、光学素子の性能を低下させるため、十分に洗浄によって除去してから次の工程に送らなければならない。
このとき光学素子の洗浄は、一般に、光学素子を洗浄液と接触させたり、それに加えて超音波を与えたりして表面を清浄にしている。具体的には、各洗浄槽に収納されたアルカリ洗浄液や市水、純水や溶剤等の洗浄液への浸漬や、さらに超音波を印加して、光学素子をその洗浄液への浸漬と超音波の物理力を併用して汚れを除去している。
このとき用いる洗浄液としては、ガラスの表面を侵食し、ガラスの表面に食い付いて付着している酸化セリウム等の研磨材までも除去するアルカリ洗浄液が知られており、このアルカリ洗浄液は、汚れの除去性能が高いため光学素子のように精密な部材の製造工程によく用いられている。
また、他にも塩素系洗浄液や炭化水素系溶剤に代表される非水系洗浄液、アルコール類に代表される準水系洗浄液、脂肪酸及びポリカルボン酸の少なくとも一方を含有する洗浄液(例えば、特許文献1参照)等の種々の洗浄液が知られている。
特開2009−21377号公報
しかしながら、上記した従来の洗浄方法のうちアルカリ洗浄液は、ガラス表面を侵食するものであるため、耐水性、耐洗剤性が小さな硝材からなる光学ガラスの洗浄に用いると、研磨工程中に形成された光学ガラス表面の微細な傷(潜傷)が拡大して顕在化してしまい、製品歩留まりを低下させる問題があった。この潜傷は、より高い洗浄度を得るために、超音波洗浄を併用した場合には、超音波の物理力により、さらに拡大する場合がある。
従来、洗浄操作を行った際に、洗浄によるダメージの評価は、目視による外観検査により製品としての良・不良を判断していた。しかしながら、この評価方法は、汚れ残りと洗剤による潜傷の拡大の判別が困難な上、感度による定性評価であった。
そこで、本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、光学ガラスの洗浄時に生じるダメージを定量的に評価し、硝材に対して好適な洗浄条件の調査に有用な光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置の提供を目的とする。
本発明の光学ガラスの潜傷評価方法は、評価対象の光学ガラスの表面に潜傷を付与する潜傷付与工程と、前記潜傷付与工程により付与された前記潜傷の形状を測定する第1の形状測定工程と、前記第1の形状測定工程後、前記光学ガラスを洗浄液と接触させ、前記潜傷を拡大させる洗浄工程と、前記潜傷の洗浄工程後の形状を測定する第2の形状測定工程と、前記第1の形状測定工程及び第2の形状測定工程で得られた結果を対比する対比工程と、を有することを特徴とする。
本発明の光学ガラスの潜傷評価装置は、評価対象の光学ガラスの表面に潜傷を付与する潜傷付与手段と、前記潜傷付与手段により付与された潜傷の形状を測定する第1の形状測定手段と、前記第1の形状測定手段により潜傷の形状を測定された前記光学ガラスの表面に洗浄液を接触させ、前記潜傷を拡大させる洗浄手段と、前記潜傷の洗浄後の形状を測定する第2の形状測定手段と、前記第1の形状測定手段及び第2の形状測定手段で得られた結果を対比する対比手段と、を有することを特徴とする。
本発明の光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置は、硝材の洗浄液による洗浄時に生じるダメージを定量的に評価し、硝材に対して好適な洗浄液、洗浄方法を調査する際に使用できる。このようにして評価した結果により、硝材ごとに洗浄条件を比較し、最適な条件を決定できる。
本発明の光学ガラスの潜傷評価装置の概略構成を示した図である。 光学ガラス表面に潜傷を付与する一例を示した図である。 光学ガラス表面に潜傷を複数本付与する例を示した図である。
以下、本発明の光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である光学ガラスの潜傷評価装置の構成図である。ここで、この光学ガラスの潜傷評価装置1は、潜傷付与手段2と、第1の形状測定手段3と、洗浄液貯留槽4と、第2の形状測定手段5と、対比手段6と、から構成されている。
ここで、本発明の潜傷付与手段2は、光学ガラスの表面に所定の大きさの潜傷を付与できるものであればよく、例えば、光学ガラス表面に所定の荷重をかけられる圧子を有する装置、例えば、摩擦摩耗試験装置、硬度測定装置、表面形状測定装置等が挙げられる。このような装置は、使用する圧子を、引っ掻いて使用するもの、押込んで使用するもの等があるが、引っ掻きによる装置が所望の大きさの傷を安定して付与できる点で好ましい。ここで使用できる潜傷付与手段2の具体例としては、荷重変動型摩擦摩耗試験機であるトライボギア(新東科学株式会社製、商品名)が挙げられる。
また、これら潜傷付与手段で用いられる圧子は、ダイヤモンド圧子、サファイア圧子、三角錐圧子、ビッカース圧子、ヌープ圧子等が挙げられる。引っ掻きによる場合には、先端角度が90度、先端の曲率半径Rが1〜10μmで形成されているダイヤモンド圧子で、1g〜10gの荷重を付与できる引っ掻き針が、所望の大きさの潜傷を安定して形成できる点で好ましい。
本発明の第1の形状測定手段3は、光学ガラス表面の形状を観察できるものであって、ここでは、潜傷が後述するように微細な形状であることから、これを測定できる機能を有するものでなければならない。このようにミクロンオーダーの微細な傷を測定できるものとしては、例えば、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡等が例示できる。
この第1の形状測定手段3の具体例としては、レーザー顕微鏡 VK−9700(株式会社キーエンス、商品名)、サーフテスト(株式会社ミツトヨ製、商品名)、サーフコム(東京精密株式会社製、商品名)等が挙げられる。
本発明の洗浄液貯留槽4は、洗浄液を安定して貯留できるものであればよく、使用する洗浄液に対して耐性を有する素材で形成すればよく、例えば、ガラス製、ステンレス、チタン等の金属製、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスチロール、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製の容器が例示できる。
また、この洗浄液貯留槽4は、上記した潜傷付与手段2で潜傷が付与された光学ガラスを浸漬するため、光学ガラスを保持し、洗浄液貯留槽4への浸漬が可能なトレーを付加的に有していると好ましい。
ここで、製品製造における光学ガラスの洗浄が、洗浄液を加温したり、超音波を印加したりする場合には、同一の条件とできるように、この光学ガラスの潜傷評価装置1の洗浄液貯留槽4においても、加温手段や超音波印加手段を設ければよい。したがって、製品製造と同一の洗浄装置をこの洗浄液貯留手段4として用いると、同条件の試験条件での操作が容易で好ましい。
なお、ここでは洗浄液貯留槽4として説明したが、この洗浄液貯留槽4の代わりに他の洗浄方法を実施できるものでもよく、これは、実際の洗浄に合わせた洗浄手段を適宜設定すればよい。ここで、他の洗浄手段としては、洗浄液射出洗浄手段(シャワー洗浄、ジェット洗浄、スプレー洗浄)、ブラシ洗浄等が挙げられる。
本発明の第2の形状測定手段5は、上記した第1の形状測定手段3と同一のものが例示でき、第1及び第2の形状測定手段には同一機種を使用する。同一機種による同一の測定手法により測定することで、光学ガラス表面の傷の変化を適正に評価できる。このとき、第1の形状測定手段3と第2の形状測定手段5とを共通の(一台の)形状測定手段とすれば、すなわち形状測定手段を一台設け、それを用いて洗浄前後の形状を測定すれば、装置構成をより簡便にでき、コストの低減、省スペース化が図れる。
この第2の形状測定手段5で測定するのは、光学ガラスを洗浄して拡大した潜傷を測定するものであり、光学ガラスの硝材と洗浄液の組み合わせによっては、傷が顕在化し目視で確認できる大きさにまでなる。
本発明の対比手段6は、第1の形状測定手段3と第2の形状測定手段5とで、それぞれ測定された傷の形状から、洗浄前後の傷形状を対比することで、光学ガラスの洗浄液、洗浄条件による耐性を評価可能とするものである。すなわち、この対比により傷が変化していなければ、その評価対象の光学ガラスは、試験した洗浄条件において耐性が高いと言え、傷が大きく変化している場合には、その評価対象の光学ガラスは、試験した洗浄条件において耐性が低いと言える。
そして、この対比手段6としては、より具体的には、傷拡大率を算出するものとして数値化による定量評価可能なものとすることが好ましい。ここで、傷の拡大率は[洗浄前の傷形状]/[洗浄後の傷形状]により計算して算出できる。このとき、洗浄前後の傷形状としては、傷の幅又は傷の深さを使用できるが、潜傷の顕在化は深さ方向に傷が拡大していくことが大きな原因であるため、傷の深さ方向の測定値から傷拡大率を算出することが好ましい。さらに、傷の幅及び深さを組み合わせることや、傷形状を総合的に勘案してこれを数値化することで傷拡大率を算出してもよい。
上記のような計算は、第1の形状測定手段3及び第2の形状測定手段5とで測定された傷形状のデータを記憶手段にそれぞれ格納し、これら傷形状のデータを演算手段により上記式により傷拡大率を算出すればよい。
次に、本発明の光学ガラスの潜傷評価方法について、図1の光学ガラスの潜傷評価装置1を用いた場合を例に、以下説明する。
本発明においては、まず、円板状又は平板状の試験用の光学ガラスを用意する。ここで用意する光学ガラスは、製品製造に用いる光学ガラスと同じ硝材からなるものとし、この硝材としては公知のものであればその種類は問わない。ただし、多くの洗浄液に対して高い耐性を有するもの(潜傷があまり拡大しないもの)は、もともと洗浄液の選択肢が多く、本発明のような検討をしなくても問題とならないため、ここで用いる硝材は、一般に、比較的、洗浄液に対する耐性が低いと認められるもの、例えば、燐酸ビスマス系ガラス、燐酸バリウム系ガラス、ホウ酸ランタン系ガラス等が好適である。
この試験用の光学ガラスの大きさは、潜傷付与手段2や第1の形状測定手段3及び第2の形状測定手段5等に適用できる範囲であれば特に限定されず、例えば、直径0.5〜15cm、厚さ0.05〜5cmの円板状又は0.5×0.5×0.05〜15×15×5cmの板状の光学ガラスが例示できる。
なお、本明細書で洗浄液に対する耐性とは、硝材が洗浄液に接触したときの侵食に抗する性質をいう。例えば、ある洗浄液に対して耐性が低い硝材は、製品製造の過程において、その洗浄液での洗浄を行うと潜傷が顕在化し易いため、光学ガラスにクモリが生じる等、製品として不具合が生じるおそれが高い。
次に、用意した光学ガラスを、潜傷付与手段2にセットし、光学ガラスの表面に潜傷を付与する。潜傷の付与の仕方にはいくつかあるが、ここでは、引っ掻きによる潜傷付与の場合を例に説明する。
まず、図2に示したように潜傷付与手段にセットした光学ガラス50の表面に、潜傷付与手段2に備えられている引っ掻き針2aを所定の荷重をかけて接触させる。そのまま、水平方向に移動させて光学ガラス50の表面に、引っ掻き針2aの接触部分が移動した分だけ傷が付与される(図2)。
このとき、引っ掻き針2aが光学ガラスへ付与する傷は潜傷であり、目視できない程度のものとし、実際の製品製造の際に問題となる傷と同程度の傷とする。ここで潜傷とは、幅が0.5〜2.0μm、好ましくは0.6〜1.6μm、より好ましくは0.8〜1.4μmであり、深さが5〜70nm、好ましくは10〜50nm、より好ましくは15〜35nmの傷である。ただし、許容できる傷の大きさは、各製品の規格や検査方法によるものであり、当該数値範囲に限るものでない。
このような潜傷を付与するには、引っ掻き針2aにより光学ガラスにかける荷重は、硝材の種類(硬度)、引っ掻き針2aの形状及び大きさ等により異なるが、多くの硝材に適用でき、所望の潜傷を付与できる点から、垂直荷重が1〜10gの範囲であればよく、好ましくは1〜5gの範囲である。
このように潜傷を付与した光学ガラス50を、洗浄操作を行う前に、その表面形状を測定する第1の形状測定工程を行う。このとき、上記引っ掻き針2aで付与した潜傷部分の形状の測定をするが、潜傷は目視できないため、確実に潜傷部分を測定するために、引っ掻いて付与した潜傷に対して垂直方向に走査して測定するのが好ましい。また、この垂直方向に走査する測定を異なる場所で、複数回行うと、付与した潜傷か否かの判断が容易となり好ましい。
さらに、本発明の潜傷評価方法を行う前に、既に潜傷が存在していた場合には、付与したものとは異なる潜傷を測定したり、2つの潜傷が測定された場合、どちらが潜傷付与工程で付けたものか不明となったり、することがある。このようなイレギュラーな測定を回避するためには、図3に示したように、上記潜傷付与工程で光学ガラス50の表面に所定の間隔で平行に2本の潜傷を付与し、本工程では、その2本の引っ掻きによる潜傷に対して垂直方向に走査して測定すればよい。このように形状測定を行うと、潜傷間の間隔が潜傷付与工程で付与した間隔と一致するか否かを見れば、測定すべき潜傷かそうでないかが容易に判断できる。
形状測定を行った後、洗浄液が貯留された洗浄液貯留槽4に、潜傷を付与した光学ガラスを浸漬して洗浄液と接触させ、光学ガラス表面の洗浄を行う。この洗浄操作においては、製品製造における条件と同様の洗浄操作を行うことが好ましい。したがって、洗浄に用いる洗浄液を加温している場合には同程度の温度にまで加温し、洗浄と同時に超音波洗浄を行っている場合には超音波の印加を行う。
ここで用いる洗浄液としては、光学ガラスを洗浄するためのものであればよく、例えば、ActosW−AD5(アイケミテクノ株式会社製、商品名)、JCB−2315(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名)、CSクリーン(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名)等が挙げられる。
ここで、洗浄操作は、上記説明では洗浄液貯留槽4に洗浄液を貯留し、光学ガラスを洗浄液中に浸漬することにより洗浄しているが、これに限られるわけではなく、洗浄液を光学ガラス表面に噴射させたり、洗浄液を含んだブラシスポンジを光学ガラス表面にこすりつけたりする等、公知の洗浄方法により洗浄してもよい。
ただし、洗浄による光学ガラスのダメージ性を評価するため、評価すべき洗浄条件と同一又は同一視できる程度に近い条件での洗浄操作とすることが好ましい。
そして、洗浄操作を終えた光学ガラスについては、第1の形状測定と同様に、潜傷付与工程で付与した潜傷の幅、深さについて測定する第2の形状測定工程を行う。ここでの測定方法は第1の形状測定工程と同様に測定する。
このとき、光学ガラス表面の潜傷が、洗浄操作により影響を受けている場合には潜傷が拡大し、第1の形状測定工程よりも幅及び深さが大きくなっている。一方、洗浄操作により影響を受けていない場合には潜傷の変化がほとんどない。
そして、第1の形状測定工程及び第2の形状測定工程が終了したところで、それぞれの測定結果から、光学ガラス50表面の潜傷について、対比工程を行う。
この対比工程は、第1の形状測定工程と第2の形状測定工程とで、それぞれ測定された洗浄前後の傷形状を対比することで、光学ガラスの洗浄液、洗浄条件による耐性を評価できる。すなわち、この対比により傷が変化していなければ、その評価対象の光学ガラスは、試験した洗浄条件において耐性が高いと言え、傷が大きく変化している場合には、その評価対象の光学ガラスは、試験した洗浄条件において耐性が低いと言える。
そして、この対比工程は、第1の形状測定工程と第2の形状測定工程とで、それぞれ測定された傷の形状から、傷拡大率を算出するものとして数値化による定量評価可能なものとすることが好ましい。傷の拡大率は[洗浄前の傷形状]/[洗浄後の傷形状]により計算して算出できる。このとき、洗浄前後の傷形状としては、傷の幅又は傷の深さを使用できるが、潜傷の顕在化は深さ方向に傷が拡大していくことが大きな原因であるため、傷の深さ方向の測定値から傷拡大率を算出することが好ましい。さらに、傷の幅及び深さを組み合わせて傷拡大率を算出してもよい。
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。
(荷重の検討)
燐酸バリウム系ガラス、ホウ酸ランタン系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラスの各光学ガラスからなる、直径15mm×厚さ3mmの円板状の試験用ガラスを用意し、これらの光学ガラスについて、荷重変動型摩擦摩耗試験システム(新東科学株式会社製、商品名:トライボギア HHS2000)にセットした。
この光学ガラスの表面に、90度で曲率半径Rが5.0μmの先端形状を有するダイヤモンド圧子(引っ掻き針)を接触させ、バリウム系ガラスは5g、10g、15gの荷重を、ホウ酸ランタン系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラスは5g、10g、15g、20gの垂直荷重をそれぞれかけたまま、ダイヤモンド圧子を0.1mm/sの速度で水平方向に移動させて、光学ガラス表面に引っ掻き傷を付与した。
このとき、荷重とそのときに得られた傷について、表面形状測定手段であるレーザー顕微鏡 VK−9700(株式会社キーエンス、商品名)を用いて対物レンズ150倍の条件で測定し、それらの関係を調べた。測定は、3次元データの取得、画像傾き補正、プロファイル計測による幅と深さ計測の手順で実施した。なお、幅と深さは、1条件につき6点を計測した。その結果を表1に示した。
Figure 2012217909
この結果から、いずれの光学ガラスにおいても、5g程度であれば潜傷として用いる程度の傷の大きさとでき、10gの場合は、ガラスの種類によっては少し大きい傷となる場合がある。そこで、潜傷を付与するには5g程度の荷重であることが好ましいことがわかった。
(実施例1)
上記荷重の検討の結果から、本実施例において、光学ガラス表面へのダイヤモンド圧子の接触による荷重は5gとした。また、荷重の検討と同様の操作により、燐酸ビスマス系ガラス、燐酸バリウム系ガラス、ホウ酸ランタン系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラスについて、各試験用の表面に潜傷を付与し、その潜傷について形状(幅及び深さ)を測定し、第1の形状測定を行った。
次に、潜傷を付与された光学ガラスについて、次の表2に示した条件で洗浄操作を行った。ここで使用した洗浄液は、ActosW−AD5(アイケミテクノ株式会社製、商品名;中性)、JCB−2315(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名;強アルカリ性)、純水(比抵抗:10MΩ・cm;中性)、CSクリーン(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名;弱アルカリ性)を用いた。なお、US有りの際は、超音波発生器(シャープマニュファクチャリングシステム株式会社製、商品名:UT−206H)を用い、200W、37kHzで70%出力の超音波を印加した。
Figure 2012217909
なお、洗剤濃度は、体積比率で規定した。
そして、洗浄後の各光学ガラスを、再度、表面の潜傷の形状(幅及び深さ)を測定し、第2の形状測定を行った。
上記第1の形状測定及び第2の形状測定の測定結果から、深さ方向のデータを用いたときの、傷拡大率を算出し、その結果を、第1及び第2の形状測定で得られたデータと共に表3に示した。
Figure 2012217909
この結果から、潜傷が洗浄によってどの程度拡大するかが分かり、傷の顕在化について定量的に評価が可能となった。このようにして算出した傷拡大率は、光学ガラスの硝材の洗浄液によるダメージ性を評価するもので、用途にもよるが、例えば、傷拡大率は、2.0倍未満であれば製品化可能で、その光学特性が厳しいものを要求されるほど、このダメージ性の優れたものが求められ、その際には、傷拡大率が、1.4倍未満が好ましいものとされ、さらに優れたものとして、1.2倍未満がより好ましいとされる。
本発明の光学ガラスの潜傷評価方法及び潜傷評価装置は、光学ガラスの洗浄液に対するダメージ性の評価に用いられ、光学ガラスのダメージを受けにくい最適な洗浄条件を決定するのに有用である。すなわち、実際の製品製造のライン化の前に、最適な洗浄条件の調査、評価に広く用いられる。
1…潜傷評価装置、2…潜傷付与手段、2a…引っ掻き針、3…第1の形状測定手段、4…洗浄手段、5…第2の形状測定手段、6…対比手段、50…光学ガラス

Claims (16)

  1. 評価対象の光学ガラスの表面に潜傷を付与する潜傷付与工程と、
    前記潜傷付与工程により付与された前記潜傷の形状を測定する第1の形状測定工程と、
    前記第1の形状測定工程後、前記光学ガラスを洗浄液と接触させ、前記潜傷を拡大させる洗浄工程と、
    前記潜傷の洗浄工程後の形状を測定する第2の形状測定工程と、
    前記第1の形状測定工程及び第2の形状測定工程で得られた結果を対比する対比工程と、
    を有することを特徴とする光学ガラスの潜傷評価方法。
  2. 前記対比工程が、前記第1の形状測定工程及び第2の形状測定工程で得られたデータに基づいて傷拡大率を算出する請求項1記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  3. 前記対比工程が、前記潜傷の深さから傷拡大率を算出する請求項2記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  4. 前記洗浄工程を、光学ガラスの洗浄条件と同一条件とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  5. 前記潜傷付与工程が、引っ掻き試験機により前記光学ガラスの表面に潜傷を付与する請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  6. 前記引っ掻き試験機により、先端形状のRが1〜10μmの引っ掻き針を用い、垂直荷重1〜10g、引っ掻き速度0.01〜1mm/sで前記潜傷を光学ガラスに付与する請求項5記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  7. 前記潜傷付与工程において、前記潜傷を、互いに平行になるように複数本付与する請求項1乃至6のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  8. 前記第1の形状測定工程及び第2の形状測定工程において、レーザー顕微鏡により傷形状を測定する請求項1乃至7のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価方法。
  9. 評価対象の光学ガラスの表面に潜傷を付与する潜傷付与手段と、
    前記潜傷付与手段により付与された潜傷の形状を測定する第1の形状測定手段と、
    前記第1の形状測定手段により潜傷の形状を測定された前記光学ガラスの表面に洗浄液を接触させ、前記潜傷を拡大させる洗浄手段と、
    前記潜傷の洗浄後の形状を測定する第2の形状測定手段と、
    前記第1の形状測定手段及び第2の形状測定手段で得られた結果を対比する対比手段と、
    を有することを特徴とする光学ガラスの潜傷評価装置。
  10. 前記対比手段が、前記第1の形状測定手段及び第2の形状測定手段で得られた測定データに基づいて傷拡大率を算出する請求項9記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  11. 前記対比手段が、前記潜傷の深さから傷拡大率を算出する請求項9又は10記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  12. 前記潜傷付与手段が、引っ掻き試験機である請求項9乃至11のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  13. 前記引っ掻き試験機が、先端形状が90度、曲率半径Rが1〜10μmの引っ掻き針を有する請求項12記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  14. 前記洗浄手段が、洗浄液貯留槽を有し、前記光学ガラスを浸漬により洗浄可能としている請求項9乃至13のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  15. 前記洗浄手段が、前記光学ガラスに洗浄液を噴射する洗浄ノズルを有する請求項9乃至14のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
  16. 前記形状測定手段が、レーザー顕微鏡である請求項9乃至15のいずれか1項記載の光学ガラスの潜傷評価装置。
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