本発明の粘着型光学フィルムを、以下に図面を参照しながら説明する。図1に示すように、粘着型光学フィルムは、光学フィルム1と、前記光学フィルム1に設けられた粘着剤層2を有する。前記粘着剤層2は、厚み(μm)の標準偏差値が0.12μm以下である。光学フィルム1としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムや、反射防止フィルム等の表面処理フィルム等の各種の光学フィルムを用いることができる。図2乃至図10では、各種光学フィルムの態様を例示する。
図2および図3は、本発明の粘着型光学フィルムが粘着型偏光板の場合である。当該粘着型偏光板は、光学フィルム1である偏光板A1またはA2と当該偏光板A1またはA2に設けられた粘着剤層2を有する。当該粘着型偏光板は、液晶表示装置においては、液晶セルに対して視認側に粘着剤層2を介して配置される。偏光板A1またはA2は、偏光子aと、偏光子aの片側に第一透明保護フィルムb1または両側に第一透明保護フィルムb1および第二透明保護フィルムb2を有する。図2の偏光板A1は、偏光子aの片側にのみ第一透明保護フィルムb1を有する場合であり、図3の偏光板A2は、偏光子aの両側に第一透明保護フィルムb1および第二透明保護フィルムb2を有する場合である。また、当該偏光板A1またはA2は、少なくとも第一透明保護フィルムb1を有しており、第一透明保護フィルムb1の側が、液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示装置において最表面になる。図2および図3における前記粘着剤層2は、前記偏光板A1またはA2の第一透明保護フィルムb1を有しない側に設けられている。即ち、図2のように、偏光子aの片側にのみ第一透明保護フィルム1bを有する場合には偏光子aに粘着剤層1bが設けられ、偏光子aの両側に第一透明保護フィルムb1および第二透明保護フィルムb2を有する場合には第二透明保護フィルムb2に粘着剤層2が設けられる。
図4乃至図7は、少なくとも2つの光学フィルム1と、少なくとも2つの粘着剤層2が、それぞれ交互に積層されている積層粘着型光学フィルムを示す。図4乃至図7では、図2または図3の粘着型偏光板における粘着剤層2に、光学フィルム1として位相差板Bが積層され、当該位相差板Bに粘着剤層2が設けられている。図4では、図2の偏光板A1における第二透明保護フィルムb2に第一粘着剤層21、第一位相差板B1、第二粘着剤層22が、この順で設けられている。図6では、さらに第二粘着剤層22に、第二位相差板B2、第三粘着剤層23が、この順で設けられている。図5では、図3の偏光板A2における偏光子aに第一粘着剤層21、第一位相差板B1、第二粘着剤層22が、この順で設けられている。図6では、さらに第二粘着剤層22に、第二位相差板B2、第三粘着剤層23が、この順で設けられている。なお、積層粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤層2は、いずれか少なくとも1つが、厚み(μm)の標準偏差値が0.12μm以下である。好ましくは、全ての粘着剤層2が厚み(μm)の標準偏差値が0.12μm以下である。
図8乃至図10は、本発明の粘着型光学フィルムにおける光学フィルム1として、表面処理フィルムCを用いた粘着型表面処理フィルムの使用態様を示す。なお、表面処理フィルムCは、基材フィルムの片側に表面処理が施されている。粘着型表面処理フィルムにおいて、粘着剤層2は、表面処理が施されていない側の基材フィルムに設けられる。図8は、粘着型表面処理フィルムの粘着剤層2を前面板Fに貼り合わせた態様である。図9は、図8の態様において、さらに前面板FをタッチパネルTに設けた場合である。図10は、粘着型表面処理フィルムの粘着剤層2をタッチパネルTに貼り合わせた態様である。図10ではさらにタッチパネルTに前面板Fが設けられている。図8乃至図10に記載の粘着型表面処理フィルムCを適用した前面板FまたはタッチパネルT等は、いずれも表面処理フィルムCが片側の表面にある。粘着型表面処理フィルムCを適用した前面板FまたはタッチパネルT等は、液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示装置に対して視認側に設置されるが、その適用は、表面処理フィルムCの側を画像表示装置の側に設けてもよく、画像表示装置に対して反対側の最表になるように設けてもよい。
本発明の偏光板に適用される偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚みは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。当該厚みは10〜50μmであるのが好ましく、さらには15〜30μmであるのが好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
また偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1〜7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光板としての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51−069644号公報や特開2000−338329号公報や、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
上記のPCT/JP2010/001460の明細書に記載の薄型高機能偏光膜は、樹脂基材に一体に製膜される、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる厚みが7μm以下の薄型高機能偏光膜であって、単体透過率が42.0%以上および偏光度が99.95%以上の光学特性を有する。
上記の薄型の偏光子としては、PCT/JP2010/001460の明細書に記載の、薄型高機能偏光膜が好適に用いられる。
上記薄型高機能偏光膜は、樹脂基材に一体に製膜される、二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)からなる厚みが7μm以下の薄型高機能偏光膜であって、単体透過率が42.0%以上および偏光度が99.95%以上の光学特性を有する。前記厚みは2〜6μmであるのが好ましい。
上記薄型高機能偏光膜は、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材に、ポリビニルアルコール系樹脂の塗布および乾燥によってポリビニルアルコール系樹脂層を生成し、生成されたポリビニルアルコール系樹脂層を二色性物質の染色液に浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性物質を吸着させ、二色性物質を吸着させたポリビニルアルコール系樹脂層を、ホウ酸水溶液中において、樹脂基材と一体に総延伸倍率を元長の5倍以上となるように延伸することによって、製造することができる。
また、二色性物質を配向させた薄型高機能偏光膜を含む積層体フィルムを製造する方法であって、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材と、樹脂基材の片面にポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液を塗布および乾燥することによって形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを含む積層体フィルムを生成する工程と、樹脂基材と樹脂基材の片面に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを含む前記積層体フィルムを、二色性物質を含む染色液中に浸漬することによって、積層体フィルムに含まれるポリビニルアルコール系樹脂層に二色性物質を吸着させる工程と、二色性物質を吸着させたポリビニルアルコール系樹脂層を含む前記積層体フィルムを、ホウ酸水溶液中において、総延伸倍率が元長の5倍以上となるように延伸する工程と、二色性物質を吸着させたポリビニルアルコール系樹脂層が樹脂基材と一体に延伸されたことにより、樹脂基材の片面に、二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂層からなる、厚みが7μm以下、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を製膜させた積層体フィルムを製造する工程を含むことで、上記薄型高機能偏光膜を製造することができる。
背景技術として光学特性に関する整理が必要である。大型表示素子に用いることができる偏光膜の光学特性は、端的には、偏光度Pと単体透過率Tとで示すことができる。偏光膜の性能は、一般に、トレード・オフ関係にある偏光度Pと単体透過率Tとの2つの光学特性値をプロットしたT−Pグラフで表される。
図16の模式図を参照されたい。T=50%で、P=100%が理想特性である。T値が低ければP値を上げやすく、T値が高いほどP値を上げにくいことになる。したがって、薄型偏光膜では実現していない偏光度Pが99.95%以上、単体透過率Tが42.0%以上であることは、現在または将来、大型表示素子などの偏光膜性能として求められる光学特性である。ここで、理想特性はT=50%で、P=100%であるが、光が偏光膜を透過していく際には、偏光膜と空気との界面で一部の光が反射する現象が起こる。この反射現象を考慮すると、反射の分は透過率が減少するので、現実的に達成できるT値の最大値は45〜46%程度となる。
偏光度Pは、偏光膜またはディスプレイのコントラスト比(CR)を表すことができる。99.95%の偏光度Pは、偏光膜のCRでは2000:1に相当し、これを一般に市販されている液晶テレビ用セルに用いたときのディスプレイのCRでは1050:1に相当する。いずれのCRも大きいほど表示のコントラストが優れ、見やすいということになる。偏光膜のCRは、後述されるように、平行透過率を直交透過率で除した値である。ディスプレイのCRは、最大輝度を最小輝度で除した値である。最小輝度は黒表示時の輝度であり、一般的な視聴環境を想定した液晶テレビでは0.5cd/m2以下が求められている。これを越える値では色再現性が低下する。また最大輝度は白表示時の輝度であり、一般的な視聴環境を想定した液晶テレビでは450〜550cd/m2の範囲で使用される。これを下回ると視認性が低下する。
以上のことから一般的に液晶テレビには1000:1以上のCRが必要とされている。一方で、液晶セルにおける偏光解消を考慮すると、偏光膜では2000:1以上のCRを必要とする。これは、99.95%以上の偏光度Pに相当する。
また、液晶テレビ用の偏光膜として一般的には単体透過率Tが42.0%以上のものが用いられている。偏光膜の単体透過率Tが42.0%を下回ると、ディスプレイの輝度Lが下がる。例えば、T=42.0%の偏光膜を用いたディスプレイ輝度L=100とした場合に比べ、T=40.0%の偏光膜のディスプレイ輝度は、L=90である。このことは、T=42.0%のディスプレイ輝度L=100を確保するためには、T=40.0%の偏光膜を用いるディスプレイの光源や使用時の点灯エネルギーを10%増加させる必要がある。表示素子に用いる光源を考慮すると、偏光膜の単体透過率Tが42.0%に相当するディスプレイとするには、光源自体を高輝度化することによってディスプレイ輝度Lを上げなければならないことになる。
上記薄型高機能偏光膜およびその製造方法によれば、光学特性の高い薄い偏光膜を提供することができる。
これまでの薄型偏光膜の製法は、いずれもオーブンなどの加熱装置において、延伸機を用いて乾式で延伸しなければならない。乾式で延伸することは、樹脂基材およびそれに形成されるPVA系樹脂層の結晶化が進むため、積層体自体を元長の5倍以上に延伸することは難しい。この結晶化現象は、単層体を乾式で延伸した厚型偏光膜を製造する場合も同様である。PVA系樹脂層の結晶化と延伸倍率の限界とによって、二色性物質を十分に配向させることができない。これが第1の技術的課題であった。
当然のことであるが、湿式で延伸された厚型偏光膜の光学特性に匹敵する薄型偏光膜は、これまで開発されていない。PVA系樹脂は親水性高分子組成物であり、水に溶けやすい。薄いPVA系樹脂層を、水溶液中において、いかに不溶化させるか、高倍率の延伸によって吸着させた二色性物質をいかに高次に配向させるか、その結果として、いかに光学特性の高い薄型偏光膜を実現するかの課題があった。
PVA系樹脂の水溶液を塗布および乾燥して樹脂基材に形成した薄いPVA系樹脂層を、低温(65℃以下)のホウ酸水溶液中で、樹脂基材と一体に高倍率(5倍以上)に延伸できる。より詳細には、低温(65℃以下)のホウ酸水溶液中において、樹脂基材に形成した薄いPVA系樹脂層を架橋作用によって不溶化し、そのことにより不溶化された薄いPVA系樹脂層を樹脂基材と一体に5倍以上の倍率で延伸することができるということである。
さらに特記すべきは、水分子の可塑剤としての働きによって樹脂基材自体のガラス転移温度より低いホウ酸水溶液中でも、樹脂基材と一体に薄いPVA系樹脂層を高倍率に延伸できるというおどろくべき知見を得たことである。このことによって、図14または図15の薄型高機能偏光膜の参考製造例1および2に見られるように、PVA系樹脂の結晶化を抑えた高倍率の延伸によって二色性物質を十分に吸着および配向させた大型表示素子に用いることができる光学特性の高い薄型偏光膜、いわゆる薄型高機能偏光膜が得られる。薄型高機能偏光膜およびその製造方法に用いられる工程および作用について、以下、説明する。
(a)低温(65℃以下)のホウ酸水溶液中の延伸作用
厚みが十数μm以下の薄いPVA系樹脂フィルムを水溶液中で高倍率に延伸するためには、厚みが20μm以上の樹脂基材に形成されていたとしても、PVA系樹脂フィルム自体に延伸時にかかる張力に耐え、延伸中に水に溶解しない耐水性が付与されていなければならない。すなわち不溶化されたPVA系樹脂フィルムでなければならない。
ホウ酸は、次式に示すように、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成する。
H3BO3+H2O ←→ H++[B(OH)4]−
このテトラヒドロキシホウ酸アニオンは、ビニルアルコール系ポリマーのヒドロキシ基と水素結合し、ビニルアルコール系ポリマーを架橋させると推察される。この架橋状態として化学式(1)のような状態が推定モデルのひとつとして考えられる(化学式(1)の点線のボンドが架橋結合)。この架橋により、ビニルアルコール系ポリマーが不溶化する。
PVA系樹脂をホウ酸水溶液中で延伸すれば、PVA系樹脂層を不溶化できるので、5倍以上の高倍率に延伸することが可能になる。
(b)高倍率の延伸による作用
図12の薄型高機能偏光膜の参考比較例1および2に提示される、樹脂基材と一体に薄いPVA系樹脂を乾式で延伸する従来製法によっては、例えば単体透過率が42.0%以上で偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型偏光膜を得ることは難しい。その要因は、「乾式延伸」と云われる延伸方法を用いていることに起因する。乾式延伸は、延伸対象の樹脂基材のガラス転移温度より低い温度で延伸することが難しい。通常は延伸対象の樹脂基材が破断する。それを延伸できたとしても均一延伸にはならない。そのため、乾式延伸は、一般的に延伸対象の樹脂基材のガラス転移温度より高い温度で延伸することになる。65℃以下の低温で延伸する場合には、必然的に、ガラス転移温度が65℃以下の延伸対象の樹脂基材が選択されることになる。
ガラス転移温度と延伸温度の関係はPVA系樹脂層についても同様である。一般的なPVA系樹脂のガラス転移温度は80℃程度であり、乾式延伸による場合、この温度よりも低温で均一に高倍率に延伸することは難しい。また、温度に関わらず乾式延伸による場合、延伸によってPVA系樹脂の結晶化が進み、延伸対象の樹脂基材を含めて総延伸倍率を元長の5倍以上にすることは難しい。かつ、PVA系樹脂にラメラ構造や球晶のように配向に寄与しない高次構造(大きな構造)が形成されることによって、二色性物質を十分に吸着させ、かつ高次に配向させることができなくなるものと推論される。これが従来製法による薄型偏光膜の光学特性が低い要因と考えている。
図12に示す薄型高機能偏光膜の製造方法を想定する。例えば65℃以下のホウ酸水溶液中で樹脂基材に形成された薄いPVA系樹脂を延伸する。樹脂基材は65℃以上のガラス転移温度を有する組成物であって、好ましくは非晶質のエステル系またはオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる樹脂基材とする。樹脂基材のガラス転移温度が65℃以上であっても、水分子の可塑剤としての機能により、その樹脂基材は65℃以下であっても延伸可能である。PVA系樹脂についても水分子が可塑剤として機能する。そのため、樹脂基材と一体に薄いPVA系樹脂を65℃以下のホウ酸水溶液中で延伸することができる。
そのことにより、PVA系樹脂の結晶化を防ぎながら、薄いPVA系樹脂を5倍以上の高倍率に延伸することができる。その結果が、薄いPVA系樹脂の非晶質部分の配向性が高まることになるという推論に至る。また高倍率に延伸することによって、PVA系樹脂中に存在するポリヨウ素イオン錯体などの二色性物質が高次に一方向に並ぶことになる。その結果として光学特性の高い薄型偏光膜、いわゆる薄型高機能偏光膜が得られる。
薄型高機能偏光膜の実施態様は、以下のとおりである。
薄型高機能偏光膜の第1の態様は、樹脂基材に一体に製膜される、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる厚みが7μm以下の薄型高機能偏光膜であって、単体透過率が42.0%以上および偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜に関するものである。図13の表を参照されたい。これにより、表示素子の薄型化、表示ムラの解消、エネルギー消費量の低減を可能にする、これまで難しいと考えられていた図16のT−Pグラフに表された理想特性に近い薄型高機能偏光膜の開発に成功した。これは厚型偏光膜で実現している光学特性に匹敵するものである。
第1実施態様において、樹脂基材は、吸水率が0.50%以上の、ガラス転移温度が25℃から85℃の範囲にあるエステル系又はオレフィン系の熱可塑性樹脂であり、具体例としては、エステル系樹脂フィルムの非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルム(アモルファスポリエチレンテレフタレートフィルム、A−PETフィルム)である。また薄型高機能偏光膜の一面を保護する光学機能フィルムにする場合には、樹脂基材は透明樹脂であることが好ましい。さらにまた薄型高機能偏光膜に吸着および配向させた二色性物質は、ヨウ素、有機染料またはそれらの混合物のいずれでもよい。
薄型高機能偏光膜の第2の態様は、樹脂基材に、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる厚みが7μm以下の薄型高機能偏光膜であって、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を製造する方法に関するものである。具体的には、まず、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材に、PVA系樹脂水溶液の塗布および乾燥によってPVA系樹脂層を生成する工程を含む。第2の態様の樹脂基材も、第1実施態様と同様に、吸水率が0.50%以上の、ガラス転移温度が25℃から85℃の範囲にあるエステル系又はオレフィン系の熱可塑性樹脂であり、また薄型高機能偏光膜の一面を保護する光学機能フィルムにする場合には透明樹脂であることが好ましい。
次に、生成されたPVA系樹脂層を二色性物質の染色液中に浸漬して、PVA系樹脂層に二色性物質を吸着させる工程を含む。二色性物質は、第1実施態様と同様に、ヨウ素、有機染料またはそれらの混合物のいずれでもよい。また染色液において、二色性物質は0.1wt%以上4.5wt%以下の水溶液で5〜60秒間浸漬することによってPVA系樹脂層内に吸着させられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、ヨウ素の溶解を促進し染色効率をより一層向上できることから、更にヨウ化物を添加することが、より好ましい。
ところで、染色工程において、親水性のPVA系樹脂が水溶液に溶け出すことによる影響は、厚型偏光膜の製造の場合には問題にならないが、薄型偏光膜の製造においては無視できない技術的課題の一つである。問題は、染色中の水溶液へのPVA系樹脂の溶出防止である。染色工程が短時間であれば問題とならないが、場合によっては偏光膜の仕上がりにも影響する。樹脂基材に生成されたPVA系樹脂層を染色液に浸漬する前に、予め、PVA系樹脂層に不溶化処理を施しておくことが有効であり、その方法として、常温のホウ酸水溶液中に浸漬することによって、PVA系樹脂層の不溶化が可能である。
さらに二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層を、ホウ酸水溶液中において、樹脂基材と一体に延伸する工程を含む。水溶液中においては、延伸中に薄くなるPVA系樹脂層が溶け出すため、PVA系樹脂層を総延伸倍率を元長の5倍以上となるように、すなわち、PVA系樹脂層の元長の5倍以上の長さに延伸することは難しい。ホウ酸による架橋効果と不溶化とが同時に可能とするホウ酸水溶液中で、二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層の高倍率延伸を実現し、配向性能を高めることができたのである。
既に指摘したことであるが、薄型偏光膜の製造において、「乾式延伸」では、総延伸倍率を元長の5倍以上にすることはできない。また延伸中にPVA系樹脂層の結晶化を防止する観点から、樹脂基材自体のガラス転移温度より低い温度であっても高倍率延伸が可能な樹脂基材を選択することによって、65℃以下の低い温度のホウ酸水溶液を用いることが好ましい。
図13の表に示されるように、こうした工程を経て、樹脂基材に、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる、厚さ厚みが7μm以下、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を製膜することができる。
樹脂基材と一体に製造された薄型高機能偏光膜の樹脂基材に製膜されていない面に接着剤を介して他の樹脂膜を積層すると同時に、樹脂基材を薄型高機能偏光膜から剥離することによって、薄型高機能偏光膜を他の樹脂膜に転写するようにしてもよい。転写された樹脂膜に光学機能フィルムを用いることにより、製造された薄型高機能偏光膜の片面に光学機能フィルムを形成することができる。また片面に光学機能フィルムが形成された薄型高機能偏光膜の他面に接着剤を介して第2光学機能フィルムを積層するようにしてもよい。そのことにより、両面に光学機能フィルムが形成された薄型高機能偏光膜を製造することができる。
薄型高機能偏光膜の第3の態様は、二色性物質を配向させた薄型高機能偏光膜を含む積層体フィルムを製造する方法に関する。具体的には、二色性物質を配向させたPVA系樹脂層からなる、厚みが7μm以下、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を樹脂基材の片面に製膜させた積層体フィルムを製造する方法に関するものであり、以下の工程を含む。
少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材と、樹脂基材の片面にPVA系樹脂を含む水溶液を塗布および乾燥することによって形成されたPVA系樹脂層とを含む積層体フィルムを生成する工程を含む。第3の態様の樹脂基材も、第1および第2実施態様と同様に、吸水率が0.50%以上の、ガラス転移温度が25℃から85℃の範囲にあるエステル系又はオレフィン系の熱可塑性樹脂であり、また薄型高機能偏光膜の一面を保護する光学機能フィルムにする場合には透明樹脂であることが好ましい。
樹脂基材と樹脂基材の片面に形成されたPVA系樹脂層とを含む積層体フィルムを、二色性物質を含む染色液中に浸漬することによって、積層体フィルムに含まれるPVA系樹脂層に二色性物質を吸着させる工程を含む。二色性物質は、第1および第2実施態様と同様に、ヨウ素、有機染料またはそれらの混合物のいずれでもよい。また染色液において、第2実施態様と同様に、二色性物質は0.1wt%以上4.5wt%以下の水溶液で、5〜60秒間浸漬することによってPVA系樹脂層内に吸着させられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、ヨウ素の溶解を促進し染色効率をより一層向上できることから、更にヨウ化物を添加することが、より好ましい。また積層体フィルムに含まれるPVA系樹脂層を二色性物質を含む染色液中に浸漬する前に、予め、積層体フィルムを常温のホウ酸水溶液中に浸漬することによって、PVA系樹脂層に不溶化処理を施しておくことが、より好ましい。
さらに二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層を含む前記積層体フィルムを、ホウ酸水溶液中において、延伸する工程を含む。第2実施態様に関連して指摘したように、水溶液中においては、延伸中に樹脂基材とともに薄くなるPVA系樹脂層が溶け出すため、積層体フィルムに含まれるPVA系樹脂層を総延伸倍率が元長の5倍以上となるように、すなわち、PVA系樹脂層の元長の5倍以上の長さに延伸することは難しい。ホウ酸による架橋効果と不溶化とが同時に可能とするホウ酸水溶液中で、二色性物質を吸着させたPVA系樹脂層が樹脂基材と一体に高倍率延伸されるようにしたことにより、二色性物質の配向性能を高めることができたのである。
また積層体フィルムの延伸中にPVA系樹脂層の結晶化を防止する観点から、積層体フィルムに含まれる樹脂基材自体のガラス転移温度より低い温度であっても高倍率延伸が可能な樹脂基材を選択することによって、65℃以下の低い温度のホウ酸水溶液中で積層体フィルムを延伸することが、より好ましい。
図13の表に示されるように、こうした工程を経て、樹脂基材の片面に、二色性物質を配向させたPVA系樹脂層からなる、厚さ厚みが7μm以下、単体透過率が42.0%以上かつ偏光度が99.95%以上の光学特性を有する薄型高機能偏光膜を製膜させた積層体フィルムを製造する。
製造された、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる薄型高機能偏光膜を含む積層体フィルムを、積層体フィルムに含まれる樹脂基材のガラス転移温度より低い温度のヨウ化物塩を含む水溶液で洗浄する工程を含むようにしてもよい。さらに洗浄された積層体フィルムを50℃以上100℃以下の温度で乾燥する工程をさらに含むようにしてもよい。
さらにまた乾燥された積層体フィルムに含まれる樹脂基材フィルムの片面に製膜された薄型高機能偏光膜の他面に接着剤を介して光学機能フィルムを積層する工程により、両面に光学機能フィルムが形成された薄型高機能偏光膜を製造することもできる。或いは、乾燥された積層体フィルムに含まれる、薄型高機能偏光膜の樹脂基材に製膜されていない面に接着剤を介して他の樹脂膜を積層すると同時に、樹脂基材を薄型高機能偏光膜から剥離することによって、薄型高機能偏光膜を他の樹脂膜に転写し、片面に転写された樹脂膜からなる光学機能フィルムを形成した薄型高機能偏光膜を製造することもできる。
[薄型高機能偏光膜の製造工程の概要]
薄型高機能偏光膜10の製造は、参考製造例1に基づき説明することとする。図11に示すように、樹脂基材11は、例えば、ガラス転移温度が80℃の非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。樹脂基材11は、薄型高機能偏光膜10の片面を支持することができる。延伸される前の樹脂基材11の厚みは、好ましくは20μm〜500μmの範囲にあればよい。樹脂基材11は、二色性物質14´による染色を防ぐため、水に不溶で、かつ、膨潤しない疎水性樹脂を用いるようにしてもよい。具体的には、分子構造中にカルボキシル基、スルホン酸基、第4アミノ基などの解離基や、水酸基、アミド基のような非イオン性の親水基を有しない樹脂をいう。
樹脂基材11は、例えばエステル系樹脂フィルムやオレフィン系樹脂フィルムであり、好ましくは、非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルムである。結晶化したポリエチレンテレフタレートフィルムは、一般的に弾性率が高いため、低温での延伸が困難である。一方、非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルムは、低温でも延伸することができる。これらの表面には、PVA系樹脂層12との密着性を向上させるため、コロナ処理を含む表面改質処理が施されていてもよい。また接着層が設けられてもよい。また樹脂基材11の吸水率(JIS K 7209)は、好ましくは0.3%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。樹脂基材のガラス転移温度(JIS K 7121 DSC法)は、好ましくは85℃以下であり、さらに好ましくは25℃〜85℃である。このような物性の樹脂フィルムであれば、65℃以下のホウ酸水溶液中でも高倍率に延伸することができる。
樹脂基材11およびPVA系樹脂層12からなる積層体フィルム13は、工程(A)により作製される。
作製工程(A)は、まず、厚みが100μmの樹脂基材11からなるフィルムロールを準備する。次に、溶媒100重量部に対して3〜10量部のPVA系樹脂の水溶液を準備する。そのように準備して、フィルムロールから樹脂基材11を繰り出し、樹脂基材上にPVA系樹脂の水溶液を塗布して、60℃のオーブン内で乾燥しながら、厚みが10μmのPVA系樹脂層12を樹脂基材11に製膜する。このように作製された積層体フィルム13の連続ウェブを巻き取るようにしてもよい。積層体フィルム13は、次に、以下の連続工程で処理される。
まず、染色工程(B)である。これは、積層体フィルム13を染色液14に浸漬し、PVA系樹脂層12に二色性物質14´を吸着させる工程である。染色液14の溶媒は、水が一般的に使用される。二色性物質14´は、水を主成分とする溶媒100重量部に対して、通常、0.1〜4.3重量部(0.1〜4.5wt%)の割合で用いられる。二色性物質14´としては、例えば、ヨウ素、有機染料、それらの混合物等が挙げられる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
二色性物質14´としてヨウ素を用いる場合は、ヨウ素の溶解を促進し染色効率をより一層向上できることから、更にヨウ化物を添加することが好ましい。ヨウ化物は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらのなかでも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。染色液14への浸漬時間は、特に限定されないが、通常、5秒〜5分間程度である。染色液14の温度は、通常、20〜50℃程度である。
染色工程(B)においては、積層体フィルム13を、液温が30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液14に、30秒間、浸漬した。このことにより、PVA系層12にヨウ素を吸着させた。染色液14のヨウ素含有量は水100重量部に対して0.1重量部とし、ヨウ化カリウム含有量は水100重量部に対して0.7重量部とした。
次に、架橋工程(C)と一体の延伸工程(D)である。架橋工程(C)は、積層体フィルム13をホウ酸水溶液15中に浸漬し、二色性物質14´を吸着させたPVA系樹脂層12を架橋する工程である。この架橋工程(C)は、膨潤化したPVA系樹脂を水に溶解しないようにする不溶化工程でもある。
ホウ酸水溶液15は溶媒である水にホウ酸またはホウ酸塩を溶解して得られる。ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を用いることができる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、通常、1〜10重量部の割合で用いられる。ホウ酸水溶液15には、PVA系樹脂層12に吸着させたヨウ素の溶出を抑制する目的からヨウ化物を添加することが望ましい。ヨウ化物の濃度は好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程(A)の場合と同様である。ホウ酸水溶液16への浸漬時間は、特に限定されないが、通常、15秒間〜5分間程度である。ホウ酸水溶液15の温度は、通常、20〜70℃程度である。
ヨウ素を吸着させたPVA系樹脂層12は、液温が60℃のヨウ化カリウムを含むホウ酸水溶液15中で架橋されながら、周速の異なる複数セットのロールを有するロール延伸機16によって樹脂基材11と一体に延伸された。これが架橋工程(C)と一体の延伸工程(D)である。延伸工程(D)において、積層体フィルム13は、縦一軸に延伸倍率5.0倍まで延伸された。このときのホウ酸水溶液15のホウ酸含有量は水100重量部に対して4重量部とし、ヨウ化カリウム含有量は水100重量部に対して5重量部とした。
ホウ酸水溶液15の温度は、好ましくは85℃以下である。85℃を超えると、PVA系樹脂に吸着させたヨウ素の溶出が進みやすく、かつ、PVA系樹脂も溶出される場合もあり、製造される薄型高機能偏光膜10の光学特性が低下する。また、PVA系樹脂層12の厚みが薄い場合は、PVA系樹脂層12が溶解して、得られる薄型高機能偏光薄10の光学特性がさらに低下する。ホウ酸水溶液15の温度は、より好ましくは、30℃〜65℃である。ホウ酸水溶液15の温度が30℃未満である場合には、水の可塑剤としても機能が十分に発揮されないため、樹脂基材11およびPVA系樹脂層12の軟化が十分に得られず、積層体フィルム13の総延伸倍率を元長の5倍以上に延伸することが難しい。
ホウ酸水溶液15において延伸された積層体フィルムの延伸倍率は、積層体フィルム13の元長の、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは5.5倍以上である。延伸倍率が5倍未満であると、二色性物質14´が十分に配向せず、得られた薄型高機能偏光膜10の光学特性が低くなる。延伸倍率が6.5倍を超えると、積層体フィルム13が破断しやすく、安定的に製造することが難しくなる。「延伸倍率」とは、延伸処理が一段階である場合、その処理における延伸倍率をいう。複数の延伸機を水溶液中に設けて多段階に延伸する場合、各工程の延伸倍率の合計(総延伸倍率)をいう。
ホウ酸水溶液による架橋工程は、図11に示すように、染色工程(B)の前工程に設けることができる。この架橋工程(E)は、厚型偏光膜の製造においては、PVA系樹脂の溶解が問題とならないので必要とされない。しかしながら、樹脂基材11に薄いPVA樹脂層12を製膜した積層体フィルム13を用いた薄型高機能偏光膜10の製造においては、染色液14へのPVA系樹脂の溶解は無視できない問題である。したがって、染色工程(B)の前工程に架橋工程(E)を設けることは、光学特性の高い薄型高機能偏光膜の製造においては効果的である。さらにホウ酸水溶液中の延伸工程(D)の前工程に、染色工程中に抜けたホウ酸を補強する観点から、別途ホウ酸水溶液による架橋工程(F)を設けるようにしてもよい。
5.0倍に延伸された積層体フィルム13は、ホウ酸水溶液15から取り出され、次に、洗浄工程(G)に送られた。洗浄工程(G)は、各種処理が施された薄型高機能偏光膜10を含む積層体フィルムの不要残存物を洗い流す工程である。この処理が不十分であると積層体フィルムの乾燥後に薄型高機能偏光膜10からホウ酸が析出することもある。また洗浄は、PVA樹脂が溶解しないようにヨウ化カリウムを含む洗浄液において、処理される。洗浄液中のヨウ化カリウム濃度は、0.5〜10重量%程度である。洗浄液の温度は、10〜50℃程度である。浸漬時間は、通常、1秒間〜1分間程度である。
最終工程は、乾燥工程(H)である。乾燥工程(H)として、任意の適切な方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥を採用することができる。参考製造例1は、60℃の温風で、30秒間、乾燥した。
仕上がった積層体フィルムに含まれる樹脂基材11と一体に延伸されたPVA系樹脂層12の厚みは3μmであった。ヨウ素を配向させた3μm厚のPVA樹脂からなる薄型高機能偏光膜10が樹脂基材11上に製膜された。これが図13の表に特性を示した参考製造例1の薄型高機能偏光膜10である。
薄型高機能偏光膜10が樹脂基材11上に製膜された積層体フィルムは、図11に示す転写工程(I)によって、さらに樹脂基材11を薄型高機能偏光膜10から剥離すると同時に、薄型高機能偏光膜10を他の光学機能フィルムに転写するようにしてもよい。
薄型高機能偏光膜に用いられるPVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化することにより得られる。鹸化度は、通常、85モル%〜100モル%であり、重合度が1,000〜10,000である。このPVA系樹脂は、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
製造された薄型高機能偏光膜10は、好ましくは、可視光領域(波長380nm〜780nm)のいずれかの波長で吸収二色性を示す。厚みは7μm以下であり、好ましくは、0.5μm〜5μmである。この薄型高機能偏光膜10は、収縮応力が小さいため、高温環境下でも寸法安定性に優れ、また単体透過率42.0%以上で偏光度99.95%以上の光学特性を示す。
[参考製造例1]
(積層体の作製工程)
樹脂基材は、ガラス転移温度が80℃の非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製ノバクリアー)を用いた。樹脂基材とポリビニルアルコール層とを含む積層体フィルムは以下のように作製した。まず、厚みが100μmの樹脂基材を準備した。次に、その樹脂基材上にポリビニルアルコール(日本合成化学社製NH26)の水溶液を塗布して、60℃の温度で乾燥しながら、厚みが12μmのポリビニルアルコール層を製膜した。このようにして積層体フィルムを作製した。
(不溶化工程)
得られた積層体フィルムを、液温30℃のホウ酸水溶液中に30秒間浸漬させた。ホウ酸水溶液のホウ酸含有量は水100重量部に対して4重量部とした。
(染色工程)
作製された積層体フィルムを液温が30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的な偏光膜の単体透過率が40〜44%となるように任意の時間、浸漬した。そのことによりポリビニルアルコール層にヨウ素を吸着させた。染色液のヨウ素含有量は水100重量部に対して0.1重量部とし、ヨウ化カリウム含有量は水100重量部に対して0.7重量部とした。
(架橋工程)
次いで、液温30℃のホウ酸およびヨウ化カリウムを含むホウ酸水溶液中に30秒間浸漬させた。ホウ酸水溶液のホン酸含有量は水100重量部に対して3重量部とし、ヨウ化カリウム含有量は水100重量部に対して3重量部とした。
樹脂基材にヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール層を含む積層体フィルムを、液温が60℃のホウ酸およびヨウ化カリウムを含むホウ酸水溶液中で、周速の異なる複数セットのロール間を通して、その積層体フィルムを縦一軸に破断する直前まで延伸した。このときの延伸倍率(最大延伸倍率)は5.0倍であった。ホウ酸水溶液のホウ酸含有量は水100重量部に対して4重量部とし、ヨウ化カリウム含有量は水100重量部に対して5重量部とした。ここでいう「破断する直前」および「最大延伸倍率」とは、事前に破断してしまう延伸倍率を確認した上で決定している。具体的には事前に確認した破断した延伸倍率よりも0.2倍程度低い倍率の延伸を意味する。
(洗浄工程)
その後、積層体フィルムを液温30℃のヨウ化カリウム水溶液中に30秒間浸漬させ、表面に付着したホウ酸を洗浄した。ヨウ化カリウム水溶液のヨウ化カリウム含有量は、水100重量部に対してヨウ化カリウムを3重量部とした。
5.0倍に延伸された積層体フィルムをホウ酸水溶液から取り出し、次に、60℃の温風で乾燥した。樹脂基材と一体に延伸されたポリビニルアルコール層の厚みは5μmであった。このようにしてヨウ素を配向させた5μm厚のポリビニルアルコール樹脂層が樹脂基材上に製膜された。これが図13の表に特性を示した参考製造例1の薄型高機能偏光膜である。
[参考製造例2]
樹脂基材はガラス転移温度が30℃のポリメチルペンテンフィルム(三井化学社製TPX、)を用いた。参考製造例2は、参考製造例1と同様の方法で、樹脂基材にヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール層(但し、厚みは7μm)を含む積層体フィルムを、液温が60℃のホウ酸およびヨウ化カリウムを含むホウ酸水溶液中で、周速の異なる複数セットのロール間を通して、その積層体フィルムを縦一軸に破断する直前まで延伸した。そのときの延伸倍率(最大延伸倍率)は5.5倍であった。
ここでいう「破断する直前」および「最大延伸倍率」は、参考製造例1の場合と同様に、事前に確認した破断した延伸倍率よりも0.2倍程度低い倍率の延伸を意味する。このようにしてヨウ素を配向させた3μm厚のポリビニルアルコール樹脂層が樹脂基材上に製膜された。これが図13の表に特性を示した参考製造例2の薄型高機能偏光膜である。
[参考比較例1]
樹脂基材は、ガラス転移温度が80℃の非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製ノバクリアー)を用いた。参考製造例1と同様の方法で、厚みが100μmの樹脂基材上に厚みが10μmのポリビニルアルコール樹脂層を製膜した積層体フィルムを作製した。次に110℃のオーブン内で、作製された積層体フィルムを縦一軸に破断する直前まで延伸した。そのときの延伸倍率(最大延伸倍率)は4.0倍であった。ここでいう「破断する直前」および「最大延伸倍率」は、参考製造例1の場合と同様に、事前に確認した破断した延伸倍率よりも0.2倍程度低い倍率の延伸を意味する。
さらに、延伸した積層フィルムを参考製造例1と同様に染色液に、最終的な偏光膜の透過率が40〜44%となるように任意の時間、浸漬した。染色液から取り出した積層体フィルムを60℃の温風で乾燥した。樹脂基材と一体に延伸されたポリビニルアルコール樹脂層の厚みは4μmであった。このようにしてヨウ素を配向させた4μm厚のポリビニルアルコール樹脂層が樹脂基材上に製膜された。これが図13の表に特性を示した参考比較例1の薄型偏光膜である。
[参考比較例2]
厚みが100μmの樹脂基材上に厚みが10μmのポリビニルアルコール樹脂層を製膜した積層体フィルムを、参考製造例1と同様に、作製した。作製された積層体フィルムを参考製造例1と同様に染色液に、最終的な偏光膜の透過率が40〜44%となるように任意の時間、浸漬した。染色液から取り出した積層体フィルムを60℃の温風で乾燥した。次に90℃のオーブン内で、ヨウ素を吸着させた積層体フィルムを縦一軸に破断する直前まで延伸した。そのときの延伸倍率(最大延伸倍率)は4.5倍であった。ここでいう「破断する直前」および「最大延伸倍率」は、参考製造例1の場合と同様に、事前に確認した破断した延伸倍率よりも0.2倍程度低い倍率の延伸を意味する。
樹脂基材と一体に延伸されたポリビニルアルコール層の厚みは4μmであった。このようにしてヨウ素を配向させた4μm厚のポリビニルアルコール樹脂層が樹脂基材上に製膜された。これが図13の表に特性を示した参考比較例2の薄型偏光膜である。
[測定方法]
[厚みの測定]
樹脂基材および薄型偏光膜の厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC−351C)を用いて測定した。
[透過率および偏光度の測定]
薄型偏光膜の単体透過率T、平行透過率Tp、直交透過率Tcは、紫外可視分光光度計(日本分光社製V7100)を用いて測定した。これらの透過率T、Tp、Tcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度Pを上記の透過率を用い、次式により求めた。
偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
偏光膜のコントラスト比(CR)は、次式により求めた。
CR=Tp/Tc
ディスプレイのコントラスト比(CR)は、次式により求めた。
CR=最大輝度/最小輝度
上記の特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書の薄型偏光膜は、二色性物質を配向させたPVA系樹脂からなる連続ウェブの偏光膜であって、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層を含む積層体が空中補助延伸とホウ酸水中延伸とからなる2段延伸工程で延伸されることにより、10μm以下の厚みにされたものである。かかる薄型偏光膜は、単体透過率をT、偏光度をPとしたとき、P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、およびP≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足する光学特性を有するようにされたものであることが好ましい。
具体的には、前記薄型偏光膜は、連続ウェブの非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層に対する空中高温延伸によって、配向されたPVA系樹脂層からなる延伸中間生成物を生成する工程と、延伸中間生成物に対する二色性物質の吸着によって、二色性物質(ヨウ素またはヨウ素と有機染料の混合物が好ましい)を配向させたPVA系樹脂層からなる着色中間生成物を生成する工程と、着色中間生成物に対するホウ酸水中延伸によって、二色性物質を配向させたPVA系樹脂層からなる厚さが10μm以下の偏光膜を生成する工程とを含む薄型偏光膜の製造方法により製造することができる。
この製造方法において、空中高温延伸とホウ酸水中延伸とによる非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上になるようにするのが望ましい。ホウ酸水中延伸のためのホウ酸水溶液の液温は、60℃以上とすることができる。ホウ酸水溶液中で着色中間生成物を延伸する前に、着色中間生成物に対して不溶化処理を施すのが望ましく、その場合、液温が40℃を超えないホウ酸水溶液に前記着色中間生成物を浸漬することにより行うのが望ましい。上記非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材は、イソフタル酸を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールを共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートまたは他の共重合ポリエチレンテレフタレートを含む非晶性ポリエチレンテレフタレートとすることができ、透明樹脂からなるものであることが好ましく、その厚みは、製膜されるPVA系樹脂層の厚みの7倍以上とすることができる。また、空中高温延伸の延伸倍率は3.5倍以下が好ましく、空中高温延伸の延伸温度はPVA系樹脂のガラス転移温度以上、具体的には95℃〜150℃の範囲であるのが好ましい。空中高温延伸を自由端一軸延伸で行う場合、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上7.5倍以下であるのが好ましい。また、空中高温延伸を固定端一軸延伸で行う場合、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材に製膜されたPVA系樹脂層の総延伸倍率が、5倍以上8.5倍以下であるのが好ましい。
更に具体的には、次のような方法により、薄型偏光膜を製造することができる。
イソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)の連続ウェブの基材を作製する。非晶性PETのガラス転移温度は75℃である。連続ウェブの非晶性PET基材とポリビニルアルコール(PVA)層からなる積層体を、以下のように作製する。ちなみにPVAのガラス転移温度は80℃である。
200μm厚の非晶性PET基材と、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA粉末を水に溶解した4〜5%濃度のPVA水溶液とを準備する。次に、200μm厚の非晶性PET基材にPVA水溶液を塗布し、50〜60℃の温度で乾燥し、非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を得る。
7μm厚のPVA層を含む積層体を、空中補助延伸およびホウ酸水中延伸の2段延伸工程を含む以下の工程を経て、3μm厚の薄型高機能偏光膜を製造する。第1段の空中補助延伸工程によって、7μm厚のPVA層を含む積層体を非晶性PET基材と一体に延伸し、5μm厚のPVA層を含む延伸積層体を生成する。具体的には、この延伸積層体は、7μm厚のPVA層を含む積層体を130℃の延伸温度環境に設定されたオーブンに配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が1.8倍になるように自由端一軸に延伸したものである。この延伸処理によって、延伸積層体に含まれるPVA層を、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層へと変化させる。
次に、染色工程によって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成する。具体的には、この着色積層体は、延伸積層体を液温30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に生成される高機能偏光膜を構成するPVA層の単体透過率が40〜44%になるように任意の時間、浸漬することによって、延伸積層体に含まれるPVA層にヨウ素を吸着させたものである。本工程において、染色液は、水を溶媒として、ヨウ素濃度を0.12〜0.30重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.7〜2.1重量%の範囲内とする。ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1対7である。ちなみに、ヨウ素を水に溶解するにはヨウ化カリウムを必要とする。より詳細には、ヨウ素濃度0.30重量%、ヨウ化カリウム濃度2.1重量%の染色液に延伸積層体を60秒間浸漬することによって、PVA分子が配向された5μm厚のPVA層にヨウ素を吸着させた着色積層体を生成する。
さらに、第2段のホウ酸水中延伸工程によって、着色積層体を非晶性PET基材と一体にさらに延伸し、3μm厚の高機能偏光膜を構成するPVA層を含む光学フィルム積層体を生成する。具体的には、この光学フィルム積層体は、着色積層体をホウ酸とヨウ化カリウムを含む液温範囲60〜85℃のホウ酸水溶液に設定された処理装置に配備された延伸装置にかけ、延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸したものである。より詳細には、ホウ酸水溶液の液温は65℃である。それはまた、ホウ酸含有量を水100重量部に対して4重量部とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量部に対して5重量部とする。本工程においては、ヨウ素吸着量を調整した着色積層体をまず5〜10秒間ホウ酸水溶液に浸漬する。しかる後に、その着色積層体をそのまま処理装置に配備された延伸装置である周速の異なる複数の組のロール間に通し、30〜90秒かけて延伸倍率が3.3倍になるように自由端一軸に延伸する。この延伸処理によって、着色積層体に含まれるPVA層を、吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向した3μm厚のPVA層へと変化させる。このPVA層が光学フィルム積層体の高機能偏光膜を構成する。
光学フィルム積層体の製造に必須の工程ではないが、洗浄工程によって、光学フィルム積層体をホウ酸水溶液から取り出し、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム水溶液で洗浄するのが好ましい。しかる後に、洗浄された光学フィルム積層体を60℃の温風による乾燥工程によって乾燥する。なお洗浄工程は、ホウ酸析出などの外観不良を解消するための工程である。
同じく光学フィルム積層体の製造に必須の工程というわけではないが、貼合せおよび/または転写工程によって、非晶性PET基材に製膜された3μm厚のPVA層の表面に接着剤を塗布しながら、80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離し、3μm厚のPVA層を80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムに転写することもできる。
[その他の工程]
上記の薄型偏光膜の製造方法は、上記工程以外に、その他の工程を含み得る。その他の工程としては、例えば、不溶化工程、架橋工程、乾燥(水分率の調節)工程等が挙げられる。その他の工程は、任意の適切なタイミングで行い得る。
上記不溶化工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化工程は、積層体作製後、染色工程や水中延伸工程の前に行う。
上記架橋工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色工程後に架橋工程を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋工程は上記第2のホウ酸水中延伸工程の前に行う。好ましい実施形態においては、染色工程、架橋工程および第2のホウ酸水中延伸工程をこの順で行う。
第一および第二透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、透明保護フィルムとしては、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジオールを、それぞれ1種を重縮合してなるホモポリマー、又はジカルボン酸1種以上とジオール2種以上を重縮合してなる共重合体、あるいはジカルボン酸2種以上とジオールを1種以上重縮合してなる共重合体、及びこれらのホモポリマーや共重合体を2種以上ブレンドしてなるブレンド樹脂のいずれかを挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく用いられる。特に、非晶質化したポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
第一透明保護フィルムの厚みは適宜に決定しうる。一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜80μmであるの好ましく、偏光板に基づく凹凸を小さく抑えることができることから、第一透明保護フィルムの厚みは60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。
また第一透明保護フィルムは、ヘイズ値が15%以下のものが好ましく用いられる。通常、上記材料から形成される透明保護フィルムのヘイズ値は1%以下であり、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%である。従って、上記材料から形成される透明保護フィルムは、そのまま第一透明保護フィルムとして用いることができる。
一方、第一透明保護フィルムとしては、当該上記材料から形成される透明保護フィルムの偏光子を接着させない面に、ヘイズ値が15%以下になる範囲で、ハードコート層や反射防止処理、拡散ないしアンチグレアを目的とした機能層を施したものを用いることができる。ヘイズ値が15%以下であれば、クリアな高級感を満足することができる。第一透明保護フィルムが機能層を有する場合もヘイズ値は小さいのが好ましく、ヘイズ値は10%以下であるのが好ましく、さらには5%以下であるのが好ましい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、拡散層やアンチグレア層等の機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。なお、前記機能層の厚みは、通常、10μm以下であり、好ましくは1〜10μmであり、さらに好ましくは3〜7μmであり、これら機能層の厚みは、機能層を形成する材料の種類、組成に応じて、第一透明保護フィルムのヘイズ値が15%以下になるように設計される。第一透明保護フィルムが、前記機能層を有する場合にも、第一透明保護フィルムの厚みは、前記範囲であるのが好ましい。
上記偏光子の片側には、上記第一透明保護フィルムが設けられるが、他の片側には第二透明保護フィルムを設けることができる。この場合、第一および第二透明保護フィルムは同じポリマー材料であってもよく、異なるポリマー材料等であってもよい。
第二透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜80μmであるのが好ましく、偏光板に基づく凹凸を小さく抑えることができることから、第一および第二透明保護フィルムを設ける場合には、第一および第二透明保護フィルムのいずれか少なくとも一方の厚みが60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。
第一および第二透明保護フィルムは、いずれも、厚みが60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。
また第二透明保護フィルムのヘイズ値は、通常、1%以下であり、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%であり、上記材料から形成される透明保護フィルムをそのまま、第二透明保護フィルムとして用いることができる。
前記偏光子と第一および/または第二透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
また偏光板以外の光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム、表面処理フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
本発明の粘着型光学フィルムにおいて粘着型偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置の形成において視認側に配置されて用いられるが、画像表示装置の形成にあたっては、他の光学フィルムを組み合わせて用いることができる。本発明の粘着型偏光板は、液晶表示装置においては、液晶セルに対して視認側の偏光板として用いられる。液晶セルに対して反対側の偏光板は特に制限はない。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、10〜150μm程度が一般的である。偏光板に基づく凹凸を小さく抑えることができることから、位相差板の厚みは60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどが挙げられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどが挙げられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどが挙げられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
また光学フィルムとしては、ヘイズ値が15%以下のものが好適に用いられる。当該光学フィルムとしては、例えば、透明保護フィルムにおいて例示したものと同様のものを例示できる。ヘイズ値が15%以下の光学フィルムは、前面板またはタッチパネルに貼り合わせることを目的とした基材フィルムとして好適である。ヘイズ値が15%以下であれば、前記光学フィルムとして、表面処理フィルムを用いることができる。表面処理フィルムは、前記基材フィルムの表面処理をすることにより得られる。
前記ヘイズ値は好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%である。また、ヘイズ値が15%以下の光学フィルムの厚みは、一般的には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜80μmであるの好ましく、光学フィルムの凹凸を小さく抑えることができることから、その厚みは60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。
表面処理フィルムとしては、表面の耐擦傷性を付与するために用いられるハードコートフィルム、画像表示装置に対する写り込みを防止するためのアンチグレア処理フィルム、アンチリフレクティブフィルム、ローリフレクティブフィルムなどの反射防止フィルム等が挙げられる。前面板は、液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を保護したり、高級感を付与したり、デザインにより差別化したりするために、前記画像表示装置の表面に貼り合せて設けられる。また前面板は、3D−TVにおけるλ/4板の支持体として用いられる。例えば、液晶表示装置では、視認側の偏光板の上側に設けられる。本発明の粘着剤層を用いた場合には、前面板として、ガラス基材の他に、ポリカーボネート基材、ポリメチルメタクリレート基材等のプラスチック基材においてもガラス基材と同様の効果を発揮する。
前記光学フィルムに設けられる粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。
前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とする(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
また、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、これを重合したポリマーを前記例示の(メタ)アクリル系ポリマーに混合して用いることができるが、透明性の観点から、芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合して用いるのが好ましい。
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例として挙げられる。
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどが挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
これら共重合モノマーの中でも、接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。これら共重合モノマーは、粘着剤が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。
共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、これら共重合モノマーは、前記共重合モノマーの割合で用いられるが、カルボキシル基含有モノマー0.1〜10重量%およびヒドロキシル基含有モノマー0.01〜2重量%を含有することが好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、0.2〜8重量%がより好ましく、さらには0.6〜6重量%が好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーは、0.03〜1.5重量%がより好ましく、さらには0.05〜1重量%が好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、通常、重量平均分子量が30万〜300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は80万〜300万であるものを用いることが好ましい。さらには140万〜270万であることが好ましく、さらには170万〜250万であることがより好ましく、180万〜240万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が30万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると貼り合せ性、接着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。分散比(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.8〜10であるのが好ましく、さらには2〜7であるのが好ましく、さらには2〜5であるのが好ましい。
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2´,2´´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩基酸、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾーリン−2−イル)プロパン]二塩基酸、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。前記還元剤としては、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどのナトリウム塩等の金属塩等の還元性有機化合物や、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
乳化重合に用いられる界面活性剤(乳化剤)は、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等を例示することができる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
また、上記非反応性界面活性剤の他に、界面活性剤としては、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤としては、前記アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤は、適宜、単独または併用して用いられる。これらの界面活性剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性界面活性剤は、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
アニオン系反応性界面活性の具体例としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、BC−05、BC−10、BC−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
前記界面活性剤の配合割合は、前記モノマー成分100重量部に対して、0.6〜5重量部であるのが好ましい。界面活性剤の配合割合により粘着特性、さらには重合安定性、機械的安定性などの向上を図ることができる。前記界面活性剤の配合割合は、0.6〜4重量部がより好ましい。
さらに、粘着剤層を形成する粘着剤には、上記(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマーに加えて架橋剤を含有することできる。架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などが挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤および/または過酸化物形架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤に係る化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。特に好ましくは、ポリイソシアネート化合物であり、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物である。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリオール変性水添キシリレンジイソシアネート、トリマー型水添キシリレンジイソシアネート、およびポリオール変性イソホロンジイソシアネートなどが含まれる。例示したポリイソシアネート化合物は、水酸基との反応が、特にポリマーに含まれる酸、塩基を触媒のようにして、迅速に進む為、特に架橋の早さに寄与し、好ましい。
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などが挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、さらには0.03〜10重量部が好ましい。なお、架橋剤が0.01重量部未満では、粘着剤の凝集力が不足する傾向があり、加熱時に発泡が生じるおそれがあり、一方、20重量部より多いと、耐湿性が十分ではなく、信頼性試験等で剥がれが生じやすくなる。
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記ポリイソシアネート化合物架橋剤を0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜2重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.01〜2重量部であり、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
さらに、本発明の粘着剤には、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001〜5重量部が好ましく、さらには0.01〜1重量部が好ましく、さらには0.02〜1重量部がより好ましく、さらには0.05〜0.6重量部が好ましい。耐久性を向上させ、液晶セル等の光学部材への接着力を適度に保持する量である。
さらに本発明の粘着剤には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
上記粘着剤により粘着剤層が形成される。粘着剤は、通常、ベースポリマーの調製の形態に従って、有機溶剤系、水系、水分散系(エマルション系)等の各種の形態の粘着剤塗工液として用いられる。粘着剤塗工液は各形態に応じて、固形分濃度を制御することができる。例えば、有機溶剤系の粘着剤塗工液は、通常、固形分濃度5〜50重量%であるのが好ましく、さらには8〜40重量%であるのが好ましく、さらには20〜35重量%であるのが好ましい。また水系または水分散系の粘着剤塗工液は、通常、固形分濃度が、20〜70重量%であるのが好ましく、さらには30〜65重量%であるのが好ましい。なお、各例の粘着剤塗工液の調製にあたっては、有機溶剤系の粘着剤の場合は各種有機溶剤を用いて、水系または水分散系の粘着剤の場合には水を用いて、それぞれの粘着剤の希釈を行い、粘着剤塗工液の固形分濃度、粘度を調整することができる。
粘着剤層の厚みは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度であり、好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
また、前記粘着剤層の厚み(μm)は標準偏差値が0.12μm以下になるように制御されている。標準偏差値を0.12μm以下に制御することで、クリアな外観を有する場合にも粘着型光学フィルムに基づく視認性に係るムラの問題を低減することができる。標準偏差値は0.08μm以下であるのが好ましく、さらには0.06μm以下であるのが好ましい。
上記標準偏差値0.12μm以下を満足する粘着剤層を有する、本発明の粘着剤型光学フィルムは、例えば、
製法(A):光学フィルムに、粘度Y(P)の粘着剤塗工液を塗工厚みX(μm)で塗工する工程(1A)、および、
塗工された粘着剤塗工液を乾燥して、粘着剤層を形成する工程(2A)を施す方法、または、
製法(B):離型フィルムに、粘度Y(P)の粘着剤塗工液を塗工厚みX(μm)で塗工する工程(1B)、
塗工された粘着剤塗工液を乾燥して、粘着剤層を形成する工程(2B)および、
離型フィルムに形成された粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(3)を施す方法、により製造することができる。
但し、上記製法(A)の塗工工程(1A)、上記製法(B)の塗工工程(1B)では、いずれの場合にも、前記粘着剤塗工液の粘度Yと塗工厚みXが、0.8X−Y≦68、を満足するように、制御して行なう。0.8X−Y≦68を満足するように、粘着剤塗工液の粘度Yと塗工厚みXを制御することで、粘着剤層の厚みに係る凹凸のバラツキが非常に小さく平滑性がよい粘着剤層を形成することができる。上記製法(A)、製法(B)によれば、標準偏差値0.12μm以下を満足する粘着剤層を形成することができる。(0.8X−Y)の値が、68を超える場合には、粘着型光学フィルムに基づく視認性に係るムラの問題を低減することができない。(0.8X−Y)の値は、60以下であるのが好ましく、さらには50以下であるのが好ましい。一方、粘着剤塗工液の塗工性の観点から、(0.8X−Y)の値は−144以上を満足することが好ましい。
また、粘着剤塗工液の粘度Yは、粘着剤塗工液を均一に塗工する観点から、2〜160Pの範囲になるように制御することが好ましい。有機溶剤系粘着剤の場合には、前記粘着剤塗工液の粘度Yは5〜160Pが好ましく、さらには10〜150Pが好ましく、さらには20〜140Pが好ましく、さらには40〜140Pが好ましい。水系または水分散系粘着剤の場合には、前記粘着剤塗工液の粘度Yは2〜100Pが好ましく、さらには5〜50Pが好ましく、さらには10〜40Pが好ましい。粘着剤塗工液の粘度Yが低すぎると塗工した粘着剤の外観が損なわれるおそれがあり、粘着剤塗工液の粘度Yが高すぎると塗工外観が低下する上に、送液が困難になるなど作業性が低下するため好ましくない。
また、前記粘着剤塗工液の塗工厚みXは、粘着剤塗工液を均一に塗工する観点から、20〜250μmの範囲になるように制御することが好ましい。塗工厚みXは30〜230μmが好ましく、さらには50〜200μmであるのが好ましい。なお、塗工厚みXは、形成される粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)を考慮して決定される。塗工厚みXが薄すぎても厚すぎても塗工外観が損なわれるおそれがある。
上記塗工工程(1A)、(1B)には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。これらのなかでもダイコーターが好ましく、特に、ファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターが好ましい。なお、製法(A)では光学フィルムに塗工工程(1A)が、製法(B)では離型フィルムに塗工工程(1B)が施される。
次いで、製法(A)、(B)において、粘着剤層の形成工程(2A)、(2B)が施される。形成工程(2A)、(2B)では、塗工された粘着剤塗工液に対して、通常、乾燥が施される。乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒間〜20分間、さらに好ましくは5秒間〜10分間、特に好ましくは10秒間〜5分間である。
粘着剤が架橋剤を含有する場合には、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
製法(A)では、上記粘着剤層の形成工程(2A)により、直接、光学フィルムに粘着剤層が形成されて、粘着型光学フィルムが得られる。一方、製法(B)では、上記粘着剤層の形成工程(2B)により、離型フィルム上に、粘着剤層が形成され、次いで、当該粘着剤層を光学フィルムに貼り合せる工程(3)により、当該粘着剤層が光学フィルムに転写されて、粘着型光学フィルムが得られる。なお、図2または図3に記載の粘着型偏光板の作成にあたっては、光学フィルム1として偏光板A1またはA2を用い、製法(A)、(B)のいずれにおいても、粘着剤層2は、偏光板A1またはA2の第一透明保護フィルムb1を有しない側に設けられる。
離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
前記離型フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗工型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の剥離フィルムは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
また、光学フィルム(光学フィルムが偏光板の場合には第一透明保護フィルムを有していない側)の表面には、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基、オキサゾリニル基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
本発明の粘着型偏光板等の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着型偏光板、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。本発明においては本発明による粘着型偏光板を用いる場合には、液晶セルに対し視認側に用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着型偏光板を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。本発明による粘着型偏光板は液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に本発明による粘着型偏光板を設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置:OLED)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
上記のように有機EL表示装置では、鏡面反射を遮るために、有機ELパネルに、位相差板および偏光板を組み合わせた楕円偏光板または円偏光板を粘着剤層を介して用いることができるが、その他に、楕円偏光板または円偏光板を有機ELパネルに直接貼り合わせずに、楕円偏光板または円偏光板をタッチパネルに粘着剤層を介して貼り合わせたものを、有機ELパネルに適用することができる。
本発明において適用される、タッチパネルとしては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種の方式を採用できる。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるものである。他方、静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムがディスプレイ表示部の全面に形成されている。本発明の粘着型光学フィルムは、タッチ側、ディスプレイ側のいずれの側にも適用される。
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
[(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定]
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量および分散比(重量平均分子量/数平均分子量)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー(株)製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
[ヘイズ]
透明保護フィルムのヘイズ(%)の測定は、ヘイズメーター(HM−150型,(株)村上色彩技術研究所社製)を用いて行なった。
[粘着剤塗工液の粘度Y]
粘着剤塗工液の粘度Y(P)は、東機産業(株)製のVISCOMETER modelBHを用いて下記の条件で測定した。
ローター:No.4
回転数:20rpm
測定温度:30℃
[粘着剤塗工液の厚みX]
粘着剤塗工液の厚みX(μm)は、塗工後、乾燥により形成された粘着剤層の厚み(μm)と粘着剤塗工液の固形分濃度(%)から下記式により算出した値である。
粘着剤塗工液の厚みX(μm)={(粘着剤層の厚み(μm))/(粘着剤塗工液の固形分濃度(%))}×100
<アクリル系粘着剤(1)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル1部、及び2,2−アゾビスイソブチロニトリルを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量170万、分散比4.1のアクリル系ポリマー(A)を含有する溶液を得た(固形分濃度30%)。前記アクリル系ポリマー(A)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.15部のトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株):タケネートD110N)と、0.2部のシランカップリング剤(綜研化学(株)製:A−100,アセトアセチル基含有シランカップリング剤)を配合して、アクリル系粘着剤(1)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(2)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、及びジベンゾイルパーオキサイドを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万、分散比3.9のアクリル系ポリマー(B)を含有する溶液を得た(固形分濃度30%)。前記アクリル系ポリマー(B)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL)と、0.075部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)を配合して、アクリル系粘着剤(2)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(3)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、及びジベンゾイルパーオキサイドを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルとトルエンの重量比5:5の混合溶媒に加えて、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量50万、分散比5のアクリル系ポリマー(C)を含有する溶液を得た(固形分濃度50%)。前記アクリル系ポリマー(C)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL)と、0.075部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)を配合して、アクリル系粘着剤(3)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(4)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、及びジベンゾイルパーオキサイドを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルとトルエンの重量比8:2の混合溶媒に加えて、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量100万、分散比4のアクリル系ポリマー(D)を含有する溶液を得た(固形分濃度50%)。前記アクリル系ポリマー(D)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL)と、0.075部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)を配合して、アクリル系粘着剤(4)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(5)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、及びジベンゾイルパーオキサイドを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルとトルエンの重量比6:4の混合溶媒に加えて、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量70万、分散比4.8のアクリル系ポリマー(E)を含有する溶液を得た(固形分濃度50%)。前記アクリル系ポリマー(E)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL)と、0.075部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)を配合して、アクリル系粘着剤(5)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(6)の調製>
容器に、アクリル酸ブチル980部およびアクリル酸20部を加えて混合して、モノマー混合物を調製した。次いで、上記割合で調製したモノマー混合物1000部に対して、反応性界面活性剤であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)20部およびイオン交換水635部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し強制乳化して、モノマーエマルションを調製した。上記で調製したモノマーエマルション200部およびイオン交換水330部を、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.6部を添加して、撹拌しながら60℃で1時間重合した。次いで、残りのモノマーエマルション800部を、反応容器を60℃に保ったまま、これに3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、固形分濃度46.2%の(メタ)アクリル系ポリマー(F)のエマルション粒子を含有する水分散液を得た。次いで、この水分散液を室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8にし、かつ、固形分45.9%に調整した水分散液を得た。当該分散液を、アクリル系粘着剤(6)として用いた。
<アクリル系粘着剤(7)の調製>
アクリル系粘着剤(1)において調製したアクリル系ポリマー(A)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.3部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂(株)製:ナイパーBMT)と、0.02部のトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株):タケネートD110N)と、0.2部のシランカップリング剤(綜研化学(株)製:A−100,アセトアセチル基含有シランカップリング剤)を配合して、アクリル系粘着剤(7)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(8)の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル81.9部、ベンジルアクリレート13.0部、アクリル酸5.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリルを前記モノマー合計(固形分)100部に対して0.1部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、55℃で8時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量200万、分散比3のアクリル系ポリマー(G)を含有する溶液を得た(固形分濃度30%)。前記アクリル系ポリマー(G)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.09部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂(株)製:ナイパーBMT)と、0.45部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL)と、0.2部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)と、0.25部のポリエーテル化合物((株)カネカ製:サイリルSAT10)を配合して、アクリル系粘着剤(8)の溶液を得た。
<アクリル系粘着剤(9)の調製>
アクリル系粘着剤(1)において調製したアクリル系ポリマー(A)を含有する溶液の固形分100部あたり、0.3部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂(株)製:ナイパーBMT)と、0.1部のトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株):タケネートD110N)と、0.2部のシランカップリング剤(綜研化学(株)製:A−100,アセトアセチル基含有シランカップリング剤)を配合して、アクリル系粘着剤(9)の溶液を得た。
<偏光子(1)の作製>
厚み80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚み20μmの偏光子を得た。
<偏光子(2)の作製>
上記参考製造例1で得られた薄型高機能偏光膜(厚み5μm)を用いた。
<偏光子(3)の作製>
上記参考製造例2で得られた薄型高機能偏光膜(厚み3μm)を用いた。
<偏光子(4)の作製>
薄型偏光膜を作製するため、まず、非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ4μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成することができた。
(透明保護フィルム)
下記透明保護フィルムを用いた。表1、表2中の符号は、下記内容を示す。
40TAC:厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,コニカミノルタ社製のKC4UY)。
80TAC:厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,富士フィルム社製のTD80UL)。
20アクリル:厚み20μmのアクリル系樹脂フィルム(ヘイズ値0.2%)。
22ゼオノア:厚み22μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(ヘイズ値0.1%,日本ゼオン(株)製のゼオノアZD12)。
40APET:厚み40μmの非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘイズ値0.2%,三菱樹脂(株)製のノバクリアー)。
(位相差板)
下記位相差板を用いた。表2中の符号は、下記内容を示す。
50ポリカ:厚み50μmのポリカーボネートフィルム(位相差147nm,帝人(株)製のピュアエースWR)。
34オレフィン:厚み34μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(位相差140nm,(株)カネカ(株)製のフィルム)。
33オレフィン:厚み33μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(位相差270nm,(株)カネカ(株)製のフィルム)。
(光学フィルム)
下記光学フィルムを用いた。表3中の符号は、下記内容を示す。
40TAC:厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,コニカミノルタ社製のKC4UY)。
60TAC:厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,富士フィルム社製のTD60UL)。
80TAC:厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,富士フィルム社製のTD80UL)。
30アクリル:厚み30μmのアクリル系樹脂フィルム(ヘイズ値0.2%)。
なお、表3中、40TAC:*1は、下記方法により作成した防眩性ハードコートフィルムを用いた。40TAC:*2は、反射防止フィルム(大日本印刷(株)製の商品名「DSG−03」)を用いた。
(防眩性ハードコートフィルムの作製)
無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなるナノシリカ粒子を分散させたハードコート層形成材料(JSR(株)製,商品名「オプスターZ7540」,固形分:56重量%,溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比))を準備した。前記ハードコート層形成材料は、(A)成分:ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、(B)成分:表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径100nm以下)を、(A)成分合計:(B)成分=2:3の重量比で含有する。前記ハードコート層形成材料の樹脂固形分100重量部あたり、微粒子としてアクリルとスチレンの架橋粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX80AA」、重量平均粒径:5.5μm、屈折率:1.515)を5重量部、レベリング剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「GRANDIC PC−4100」)を0.1重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)を0.5重量部混合した。この混合物を、固形分濃度が45重量%、酢酸ブチル/MEK比率が2/1(重量比)となるように希釈して、防眩性ハードコート層形成材料を調製した。
透明プラスチックフィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ(株)製,商品名「KC4UY」,厚さ40μm)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。次いで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み9μmの防眩性ハードコート層を形成し、防眩性ハードコートフィルムを得た。
実施例1
(偏光板の作製)
偏光子(1)の両側に、第一および第二透明保護フィルムとして厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,コニカミノルタ社製のKC4UY)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光板を作製した。
(粘着剤塗工液の調製)
上記製造例1で調製したアクリル系粘着剤(1)の溶液を、固形分濃度が15%になるように、酢酸エチルで希釈して粘着剤塗工液を調製した。当該粘着剤塗工液の粘度は65Pであった。
(粘着型偏光板の作製)
シリコーン処理を施した、38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、上記で調製した粘着剤塗工液を、塗工厚みが134.0μmになるように、ファウンテンダイコーターを用いて塗工した。次いで、155℃で1分間乾燥を行い、厚み20μmの粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、上記で作製した偏光板の第二透明保護フィルムの側に転写し、粘着型偏光板を作製した。
実施例2〜29および比較例1〜4
実施例1において、粘着型偏光板の作製にあたって、偏光板として表1に示す偏光子、第一、第二透明保護フィルムを用いた作製した偏光板を用いたこと、粘着剤塗工液として表1に示す粘着剤塗工液を用いたこと、粘着剤塗工液の塗工厚みを表1に示すように変えたこと、粘着剤層の厚みを表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。なお、偏光子(2)、(3)、(4)については、得られた積層体フィルムまたは光学フィルム積層体の偏光膜の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、第一透明保護フィルムを貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離してから、ポリビニルアルコール系接着剤により第二透明保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。第二透明保護フィルムを用いていない偏光板では、粘着剤層は、偏光膜に転写して粘着型偏光板を作製した。
実施例30〜37および比較例5〜8
実施例1において、粘着型偏光板の作製にあたって、偏光板として表2に示す偏光子、第一、第二透明保護フィルムを用いた作製した偏光板を用いたこと、粘着剤塗工液として表2に示す粘着剤塗工液を用いたこと、粘着剤塗工液の塗工厚みを表2に示すように変えたこと、粘着剤層の厚みを表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型偏光板を作製した。なお、偏光板に貼り合わせた粘着剤層が、表2における第一粘着剤層に対応する。
さらに、得られた粘着型偏光板に対して、図4乃至図7に示すような構造になるように、第一位相差板を第二粘着剤層により、第二位相差板を第三粘着剤層により貼り合わせて積層粘着型偏光板を得た。なお、第二粘着剤層、第三粘着剤層の形成は、シリコーン処理を施した、38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、表2に示す粘着剤塗工液を、表2に示す塗工厚みで、ファウンテンダイコーターを用いて塗工した。次いで、155℃で1分間乾燥を行い、表2に示す厚みの粘着剤層を形成した。当該第二粘着剤層、第三粘着剤層を、第一位相差板、第二位相差板に転写して粘着型位相差板を作製し、前記積層粘着型偏光板の作製に用いた。
実施例38〜52、比較例9〜13
実施例1の(粘着型偏光板の作製)において、偏光板の代わり表3に示す光学フィルムを用いたこと、粘着剤塗工液として表3に示す粘着剤塗工液を用いたこと、粘着剤塗工液の塗工厚みを表3に示すように変えたこと、粘着剤層の厚みを表3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
なお、各例の粘着剤塗工液の調製にあたっては、アクリル系粘着剤が溶液の場合は酢酸エチルを用いて、アクリル系粘着剤が水分散液の場合には水を用いて希釈を行い、粘着剤塗工液の固形分濃度、粘度を調整した。また、粘着剤層の偏光板への転写にあたって、偏光板が第二透明保護フィルムを有していない場合には、偏光板において第一透明保護フィルムを有しない側(偏光子に直接)に粘着剤層を転写した。
上記実施例および比較例で得られた、粘着型偏光板、積層粘着型偏光板および粘着型光学フィルム(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1乃至表3に示す。
<粘着剤層の厚みと標準偏差値>
大塚電子(株)製の分光光度計MCPD−3700を用いて、波長700〜900nmの光干渉法により、5cm四方の粘着型偏光板、積層粘着型偏光板または粘着型光学フィルム(サンプル)の各粘着剤層の厚みを1mm間隔で2061点測定し、その値から、粘着剤層の厚みと標準偏差値を求めた。
<ISCの測定>
(株)アイ・システム製のEyeScale−4Wを用いて、当該装置の仕様に基づいて、3CCDイメージセンサーのISC測定モードにて、粘着型偏光板、積層粘着型偏光板または粘着型光学フィルムの面内のムラのレベルをISC値として算出した。
(測定条件)
粘着型偏光板、積層粘着型偏光板および粘着型光学フィルムは、無アルカリガラス板(コーニング社製,1737)に貼り付けた状態で用いたものをサンプルとして用いた。光源、サンプル、スクリーンをこの順で設置して、スクリーンに投影された、サンプルの透過画像をCCDカメラにより測定した。光源およびCCDカメラからサンプル(無アルカリガラス板に貼り付けた粘着剤層)までの距離は30cmになるように配置した。また光源およびCCDカメラからスクリーンまで距離は100cmになるように配置した。光源およびCCDカメラは、サンプル、スクリーンからの距離が同じになるように20cm離して設置した。
ISC値は、ムラの評価に係わり、ISC値が100以下であればムラを小さく制御できていると判断できる。ISC値は小さいほどムラがないと判断でき、ISC値は70以下が好ましく、50以下がより好ましい。
<目視評価:粘着型偏光板および積層粘着型偏光板について>
粘着型偏光板または積層粘着型偏光板(サンプル)を、黒いアクリル板に貼り付けて、その外観を蛍光灯下で、下記基準で目視にて評価した。積層粘着型偏光板に関しては、第一粘着剤層については粘着型偏光板、第二粘着剤層については第一位相差板を用いた粘着型位相差板、第三粘着剤層については第二位相差板を用いた粘着型位相差板をサンプルとした。
○○○:ムラが全く見えない。
○○:ムラがほとんど見えない。
○:ムラはあるが、気にならない。
×:ムラがある。
<目視評価:粘着型光学フィルムについて>
粘着型光学フィルム(サンプル)を、表面が平滑な透明アクリル板に貼り付けて、前面板の視認側に光学フィルムが貼り合わせられる構成を想定し、その外観を蛍光灯下で、下記基準で目視にて評価した。評価は、光学フィルム側から観察したとき、アクリル板側から観察したとき、のそれぞれについて行った。
○○○:表面凹凸が全く見られない。
○○:表面凹凸がほとんど見られない。
○:表面凹凸が見られるものの、視認性にはあまり影響していない。
×:表面凹凸が大きく、視認性に大きな影響を与えている。