JP2012214098A - サスペンション構造、サスペンション特性調整方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車高に比べてトレッドが狭い車両で、車輪2を回転可能に支持するアップライト3と車体1とを、上側のアッパリンク4及び下側のロアリンク5によって揺動可能に連結する。そして、車両静止状態でロールセンタが地面よりも低くなるように設定してある場合には、旋回走行時に前記ロールセンタが旋回外側へ移動するように、アッパリンク4及びロアリンク5を配置する。また、アッパリンク4の長さをロアリンク5以下とし、アッパリンク4の長さ及びトレッドに応じて、ロアリンク5の長さを決定するか、又はロアリンク5の長さ及びトレッドに応じて、アッパリンク4の長さを決定する。
【選択図】図2
Description
本発明の課題は、車高に比べてトレッドが狭い車両において、より旋回性能を高めることである。
《第1実施形態》
《構成》
図1は、車高に比べて車幅が狭い車両の一例を示す図である。
車高に比べて車幅が狭い車両としては、例えばシティコミュータとして提案されているタンデム式の2シータ車両がある。このように、車両前面視で車高に比べて車幅が狭い車両ほど、スタティック・スタビリティ・ファクタ(SSF:ここではトレッド幅の半分/重心高の比であり、静的安定限界を表す)が小さいので、ロールオーバ限界が低く、旋回時に横転する可能性が高くなる。そのため、このSSFが小さい車両ほど、旋回時にロールセンタを移動させて、ジャッキダウン特性を得ることが特に望まれる。
左右輪のサスペンション構造は、左右対称の同一構造なので、右輪を基準として説明する。なお、左右輪を区別する際には、右輪に関わる符号に添え字“R”を付し、左輪に関わる符号に添え字“L”を付して説明する。
車体1は、ダブルウィッシュボーン式のサスペンション構造によって、車輪2に懸架してある。車輪2を回転自在に支持するアップライト3は、アッパリンク4及びロアリンク5を介して揺動可能な状態で車体1に連結してある。
右輪においては、アッパリンク4の軸線を車体内側へと延長した延長線43と、ロアリンク5の軸線を車体内側へと延長した延長線53と、の交点が瞬間回転中心6Rとなり、瞬間回転中心6Rとタイヤ接地中心61とを結ぶ線分がスイングリンク62Rとなる。同様に、左輪においても、瞬間回転中心6Lとスイングリンク62Lとが決まる。そして、右輪のスイングリンク62Rと、左輪のスイングリンク62Lとの交点が、ロールセンタ7となる。
アッパリンク4とロアリンク5とは、旋回走行時にロールセンタ7が旋回外側へ移動するようにレイアウトしてある。
先ずは、長さについて説明する。
ここでは、アッパリンク4の長さをロアリンク5以下とする。具体的には、アッパリンク4の長さ及びトレッドに応じて、ロアリンク5の長さを決定するか、又はロアリンク5の長さ及びトレッドに応じて、アッパリンク4の長さを決定する。
先ず、アッパリンク4の長さ及びトレッドに応じて、ロアリンク5の長さを決定する場合、アッパリンク4が長いほど、且つトレッドが広いほど、ロアリンク5の長さを大きくする。例えば、アッパリンク4の長さが100mm程度で、トレッドが1000mm程度のときには、ロアリンク5の長さを120mm程度とし、アッパリンク4の長さが100mm程度で、トレッドが800mm程度のときには、ロアリンク5の長さを100mm程度とする。
ここでは、車両静止状態で、水平面に対するアッパリンク4の取付け角度(下反角)が、水平面に対するロアリンク5の取付け角度(下反角)よりも大きくなり、且つアッパリンク4の取付け角度をロアリンク5の取付け角度で割った角度比が1よりも大きくなるように、アッパリンク4及びロアリンク5を配置している。具体的には、トレッドに応じて、アッパリンク4の取付け角度とロアリンク5の取付け角度との角度差(=アッパリンク取付け角度−ロアリンク取付け角度)、及び角度比(=アッパリンク取付け角度/ロアリンク取付け角度)を決定する。
先ず、トレッドが広いほど単調増加関数的に角度差を大きくする。例えば、トレッドが650mm程度のときには、角度差を4°程度とし、トレッドが1300mm程度のときには、角度差を10°程度とする。
また、トレッドに応じて角度比を単調増加関数的に変化させる。例えば、トレッドが650mm程度のときには、角度比を1.15程度とし、トレッドが1300mm程度のときには、角度比を1.7程度とする。
車両静止状態で、アッパリンク4における車輪側(アップライト側)の取付け点から瞬間回転中心までの距離を仮想アッパリンクとし、ロアリンク5における車輪側(アップライト側)の取付け点から瞬間回転中心までの距離を仮想ロアリンクとする。そして、仮想アッパリンクの長さを仮想ロアリンクよりも短くする。
なお、サスペンションストロークに伴うアッパリンク4の揺動角を、仮想アッパリンクの長さと、アッパリンク4及びロアリンク5における夫々の車輪側(アップライト側)の取付け点間距離と、サスペンションストロークに伴うロアリンク5の揺動角に応じて決定する。
一般に、ダブルウィッシュボーン式のサスペンション構造では、車両を後方から見て、アッパリンクを車体側が高くなるように配置すると、ロールセンタを低くすることができるが、車輪の瞬間回転中心が車輪よりも外側に位置することになる。そのため、バンプ時にキャンバ角がポジティブ方向に変化するので、旋回外輪側で対地キャンバ角が大きくなることで、コーナリングフォースが低下する可能性がある。
車高に比べてトレッドが狭い車両ほど、スタティック・スタビリティ・ファクタ(SSF:トレッドの半分/重心高の比であり、静的安定限界を表す)が小さいので、ロールオーバ限界が低く、旋回時の横転を招く可能性もある。そのため、このSSFが小さい車両ほど、旋回時にロールセンタを移動させて、ジャッキダウン特性を得ることが特に望まれる。
先ず、車両が直進走行している場合は、車幅方向中心に対して左右対称となる位置に、左右輪の瞬間回転中心6R及び6Lが存在し、ロールセンタ7は車両中心に位置する。
この状態から、車両が例えば左旋回を行うと、左右輪にサスペンションストロークが生じ、旋回内輪である左輪はリバウンドストロークし、旋回外輪である右輪はバウンドストロークとする。
このとき、アッパリンク4及びロアリンク5の夫々の揺動(変位)によって、ロールセンタ7は、旋回外側(右輪側)へ移動する。
バウンドストロークする旋回外輪(右輪)では、車体1の旋回外側が下方に下がることで、アッパリンク4の車体側取付け点41、及びロアリンク5の車体側取付け点51が下方に下がり、仮想リンクの旋回内側が下方に下がってゆく。すなわち、旋回外輪の瞬間回転中心6Rが下方に変位してゆく。
そして、左右輪で、瞬間回転中心と接地点を結んだ直線の交点を求めると、ある旋回における瞬間のロールセンタ7が求まり、結果として、ロールセンタ7は旋回外側へと移動する。
すなわち、ロールセンタ7が地面より下方にあり、旋回時に旋回外側に移動するよう設定してあると、旋回外輪の上下力は下向きに作用し、旋回内輪の上下力は、旋回内輪の角度を増やすことで、よりジャッキダウン力を働かせる方向とするため、重心点を鉛直下方へ引き下げる力が発生する。つまり、ロールセンタ7の位置が旋回外側に移動することで上記Fj=Fyintanθin−FyouttanθoutのFyouttanθout項を大きくすることができ、ジャッキダウン力を増加させることができる。
このようにすることで、より高い横加速度での旋回であっても横転限界が向上し、車体の安定性を上げることが可能となる。
ここで、ジャッキ力の負値がジャッキダウン力を表す。このように、ロール角が予め定められた範囲内(例えば0〜4.5程度の範囲)で大きくなるほど、ジャッキダウン特性を得ることができる。
上記のように、車体1とアップライト3とを連結するアッパリンク4及びロアリンク5の長さと角度が、サスペンションストロークに伴う揺動変化によってサスペンションの瞬間回転中心の移動を改善するよう設定してあり、左右輪での瞬間回転中心の移動を、横加速度変化に対応して旋回外側へと移動させることでロールセンタ位置を旋回外側に移動ができる。これは、バンプ時にネガティブキャンバとなるように設定したとしても、ジャッキダウン特性を得ることができる。つまり、ネガティブキャンバとジャッキダウン特性とを両立させることができるので、走行安定性の面で、従来技術よりも有利である。
さらに、アッパリンク4及びロアリンク5の角度比を1よりも大きく、且つトレッド幅に応じて変えることとしたことで、幅方向の大きさに合わせて角度を設定することができるため、ジャッキダウン力を得られる。
以上より、アップライト3が「支持部材」に対応している。
(1)このサスペンション構造では、車両静止状態でロールセンタが地面よりも低くなるように設定してある場合には、旋回走行時に前記ロールセンタが旋回外側へ移動するように、アッパリンク4及びロアリンク5を配置する。
このように、車両静止状態でロールセンタが地面よりも低くなるように設定してある場合に、旋回走行時にロールセンタが旋回外側へ移動するようにアッパリンク及びロアリンクを配置することで、車高に比べてトレッドが狭い車両において、ジャッキダウン特性を得ることができる。
このように、アッパリンク4の長さをロアリンク5以下としたことで、ロアリンク5の揺動角の方が大きくなり、旋回外輪側(バウンド側)の瞬間回転中心を下方に、且つ旋回外側へと移動させやすくなり、上記の効果を得ることができる。
このように、アッパリンク4の取付け角度をロアリンク5の取付け角度よりも大きくすることで、旋回外輪(バウンド側)の瞬間回転中心を下方に、且つ旋回外側へと移動させやすくなり、上記の効果を得ることができる。
このように、仮想アッパリンクの長さを仮想ロアリンクよりも短くしたことで、仮想ロアリンクの揺動角の方が大きくなり、旋回外輪側(バウンド側)の瞬間回転中心を下方に、且つ旋回外側へと移動させやすくなり、上記の効果を得ることができる。
このように、車両静止状態でロールセンタが地面よりも低くなるように設定してある場合に、旋回走行時にロールセンタが旋回外側へ移動するようにアッパリンク及びロアリンクを配置することで、車高に比べてトレッドが狭い車両において、ジャッキダウン特性を得ることができる。
2 車輪
3 アップライト
4 アッパリンク
5 ロアリンク
6L 瞬間回転中心
6R 瞬間回転中心
7 ロールセンタ
41 車体側取付け点
42 アップライト側取付け点
43 延長線
51 車体側取付け点
52 アップライト側取付け点
53 延長線
61 タイヤ接地中心
62L スイングリンク
62R スイングリンク
Claims (5)
- 車輪を回転可能に支持する支持部材と車体とを、揺動可能に連結する上側のアッパリンク及び下側のロアリンクを有し、
前記アッパリンク及び前記ロアリンクは、トレッドを車高よりも狭くした状態で前記支持部材と前記車体とを連結し、車両静止状態でロールセンタを地面よりも低く設定した場合には、旋回走行時に前記ロールセンタを旋回外側へ移動させる前記アッパリンク及び前記ロアリンクの配置に設定することを特徴とするサスペンション構造。 - 前記アッパリンクの長さを前記ロアリンク以下とし、
前記アッパリンクの長さ及びトレッドに応じて、前記ロアリンクの長さを決定するか、又は前記ロアリンクの長さ及びトレッドに応じて、前記アッパリンクの長さを決定することを特徴とする請求項1に記載のサスペンション構造。 - 車両静止状態で、水平面に対する前記アッパリンクの取付け角度を、水平面に対する前記ロアリンクの取付け角度よりも大きくし、且つ前記アッパリンクの取付け角度を前記ロアリンクの取付け角度で割った角度比を1よりも大きくする前記アッパリンク及び前記ロアリンクを配置し、
トレッドに応じて、前記アッパリンクの取付け角度と前記ロアリンクの取付け角度との角度差、及び前記角度比を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション構造。 - 車両静止状態で、前記アッパリンクにおける前記支持部材側の取付け点から瞬間回転中心までの距離を仮想アッパリンクとし、前記ロアリンクにおける前記支持部材側の取付け点から瞬間回転中心までの距離を仮想ロアリンクとし、前記仮想アッパリンクの長さを前記仮想ロアリンクよりも短くし、
サスペンションストロークに伴う前記アッパリンクの揺動角を、前記仮想アッパリンクの長さと、前記アッパリンク及び前記ロアリンクにおける夫々の前記支持部材側の取付け点間距離と、サスペンションストロークに伴う前記ロアリンクの揺動角に応じて決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のサスペンション構造。 - 車輪を回転可能に支持する支持部材と車体とを、上側のアッパリンク及び下側のロアリンクを介して揺動可能に連結し、前記アッパリンク及び前記ロアリンクによって、トレッドを車高よりも狭くした状態で前記支持部材と前記車体とを連結し、車両静止状態でロールセンタを地面よりも低く設定した場合には、旋回走行時に前記ロールセンタを旋回外側へ移動させる前記アッパリンク及び前記ロアリンクの配置に設定することを特徴とするサスペンション特性調整方法。
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