<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置Aの全体構成について、図1及び図2により説明する。加工装置Aは、加工対象物W(図2)を固定する加工台1と、ドリルなどの工具を取り付けて、不図示のモータにより工具を回転させる主軸5と主軸5先端に工具Tを支持する支持部51を備える。これら加工台1と主軸5とをx軸、y軸、z軸の各方向に相対移動可能に構成されている。
本実施形態では、加工台1をy軸方向(所定方向)に、工具Tを把持した主軸5をx軸方向とz軸方向とに、それぞれ移動させる。主軸5は、加工時の冷却用の流体放出手段としてエアーブロー部41を備える。このために、加工台1をy軸方向(所定方向)に移動させる加工台移動手段としてy軸駆動部20yと、主軸5をx軸方向とz軸方向とにそれぞれ移動させる工具Tの支持部移動手段としてx軸駆動部20x及びz軸駆動部20zとを備える。エアーブロー部41の流体放出口は、主軸5の内部に設けられている。主軸5本体または主軸5の支持部51に設けられた工具Tを回転させるモータを冷却し、主軸5の外にエアーを放出する。また、エアーは、工具Tが加工対象Wに対して加工を行っている面に対して吹きつけを行い、加工時における工具Tの冷却とともに、堆積物dとなる切粉の吹き集めを行う。そして、加工対象W(ワーク)の工具Tに対する加工面の状態を切粉の少ない加工を行い易い状態に保つ。流体としては、圧縮ガスや装置外部に設置したエアーコンプレッサーによる空気など各種の流体を適応することができる。油受けや収集装置、循環装置を用いれば、流体として加工油などを適応することもできる。またエアーブロー部41は、主軸5に備え切粉を除去する目的であればその設置位置は各種変形可能である。
まず、これら各駆動部20x、20y、20zの共通する構造について説明する。なお、共通する構造については、それぞれの駆動部の構成であることを示す添え字を省略して、総括的に説明する。駆動部20は、モータ21と、送りねじ22と、移動部材23(x軸駆動部に関しては不図示)を備える。
モータ21は、加工装置Aの躯体Bに固定され、例えば、外部端末などの指令に基づいて駆動される。送りねじ22は、外周面に雄ねじ部を有し、各軸方向とそれぞれ平行に配置され、モータ21の駆動により回転する。移動部材23は、送りねじ22の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有し、送りねじ22の回転に伴い、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合に基づいて送りねじ22に沿って移動する。
次に、各駆動部のそれぞれの構成について説明する。y軸駆動部20yの移動部材23yには、加工台1が固定されており、移動部材23yと共に加工台1が、送りねじ22yの配設方向であるy軸方向に移動する。このようなy軸駆動部20yは、加工台1の下方に配置される。
x軸駆動部20xの移動部材23xには、主軸5をz軸方向の移動自在に支持しており、移動部材23xと共に主軸5が、送りねじ22xの配設方向であるx軸方向に移動する。なお、z軸駆動部20zは、移動部材23xに支持されており、x軸駆動部20xの駆動により主軸5と共にx軸方向に移動する。
z軸駆動部20zの移動部材23zには、主軸5が固定されており、移動部材23zと共に主軸5が、送りねじ22zの配設方向であるz軸方向に移動する。
x軸駆動部20xとz軸駆動部20zは、躯体Bと一体又は躯体Bに固定の覆い部材Cに覆われている。覆い部材Cは、工具による加工領域Sを確保できるように、段付き形状を有し、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zと加工領域Sとの間に配置される。これにより、加工時に生じる切粉などの堆積物が、x軸駆動部20x及びz軸駆動部20zに侵入しにくくしている。即ち、加工領域Sは、不図示の前面の開閉材、上面の覆い部材C、と不図示の左右側板または覆い部材と、底面となるカバー部材2と加工台1などで区画された加工した堆積物dが飛散してしまう領域である。
また、y軸駆動部20yを設置した空間を有する収納部9の上方を覆うように、シート状のカバー部材2を配置している。カバー部材2は加工領域Sを区画し底面の一部を構成している。即ち、収納部9は、y軸駆動部20yを設置した空間の周囲を囲むようにそれぞれ配置された、前側フレーム9a、後側フレーム9b、側方フレーム9c(不図示)から構成されている。そして、これら各フレーム9a、9bらの上面にカバー部材2を配置している。
なお、y軸駆動部20yのモータ21yを収納部9の外に配置しても良い。したがって、収納部9内に配置される駆動部は、少なくとも加工台1を移動させる機構の一部であれば良い。また、駆動部の構成は、上述したような送りねじ機構に限らず、例えばラックアンドピニオンのような他の機構であっても良い。
このようなカバー部材2は、例えば、ゴムベルトやスチールベルトなどのある程度のコシがあり弾性変形可能な部材で、ベルト状の形状を有し、表面(上面)が段差や凹凸がない単一の面により構成される。なお、単一の面とは、加工装置Aによる加工時に生じる切粉などの堆積物が入り込んだり引っ掛かったりするような、段差や凹凸がない面を指す。スチールベルトであれば、より滑らかで堆積物の分離及び回収が行い易い。
カバー部材2は、加工台1に固定され、y軸駆動部20yの駆動により加工台1と共に移動する。言い換えれば、カバー部材2は、加工台1を介してy軸駆動部20yによりy軸方向に駆動され加工台1とカバー部材2はともに移動しカバー付加工台として機能する。加工台1の上面は、カバー部材2の表面に露出するように固定されている。このために、カバー部材2の一部に開口部を設け、この開口部内に加工台1の上半部を挿入した状態で、加工台1とカバー部材2とを例えば接着などにより固定している。
また、カバー部材2は、所定方向一端部である前側(図1の左側)の端部2aが収納部9の下方に回り込むように案内されている。一方、カバー部材2の後側(図1の右側)の端部2bは、躯体Bの後側に配置された第2のカバー収納部94に収納される。第2のカバー収納部94は、後側フレーム9bと一体に形成され、カバー部材2の厚さよりも僅かに大きな隙間を有する空間が、後側フレーム9bから上方に延出されるように構成されている。
カバー部材2の後側の端部2bは、カバー部材2が後側に移動すると、第2のカバー収納部94の入り口に構成されたフレームによる立ち上がり部との間に案内されて、上述のように構成される第2のカバー収納部94に収納される。カバー部材2は第1のカバー収納部93と第2カバー収納部94との間を移動しても加工領域Sに完全に露出しない構造となっており、弾性変形の撓みにより前側ワイパー6、後側ワイパー7と摺接する押圧力を得て堆積物が除去されやすくなっている。またカバー部材2の加工領域Sに露出しない部分には、目印となる段差等を設けることも可能である。
本実施形態の場合、このように、カバー部材2の前側の端部2aが収納部9の下方に配置された第1のカバー収納部93に、カバー部材2の後側の端部2bが躯体Bの後側にz軸方向に配置された第2のカバー収納部94にそれぞれ収納される。このため、加工装置Aの前後方向の寸法を小さくでき、小型化を図れる。
また、摺接部材である前側ワイパー6、後側ワイパー7を、それぞれ固定しカバー部材2の表面に摺接させている。これにより、カバー部材2が前側に移動した場合には、カバー部材2上の堆積物dが、前側ワイパー6によりカバー部材2から分離され、カバー部材2が後側に移動した場合には、カバー部材2上の堆積物dが、後側ワイパー7により堰き止められる。そして、カバー部材2上の堆積物dが各収納部93、94に入り込むことを防止している。後側ワイパー7は、立ち上がって収納されているカバー部材2に対して、堆積物dの除去を行っているため、カバー部材2の弾性変形による復元力と後側ワイパー7による分離作用で堆積物dを除去しやすい。また、前側ワイパー6は、カバー部材2の構成する曲面に接しているため堆積物dの自重と前側ワイパー6の分離作用により除去が行い易い。
図3から図5は、本発明の実施形態に係る回収動作の横断面図である。図3がエアーブロー部41からエアーを放出している状態である。主軸5内を通過したエアー41aが工具Tを回転させるモータを冷却する。エアー41aは工具Tを支持している支持部51内の把持部が工具Tを把持している隙間もしくは、z軸方向下方に吹き出すように設けられた放出口から支持部51の外に放出されエアー41bが加工空間Sに放出される。
また、カバー部材2の前側の下方には、回収部である回収ボックス4が、躯体Bと着脱自在に配置されている。そして、図4に示すように、カバー部材2が前側(所定方向一端部側)に移動して収納部9の下方に回り込む際に、前側ワイパー6により分離された堆積物dが回収ボックス4内に落下するようにしている。図5は、加工対象物Wの取り外し位置まで移動させた図である。また、堆積物の回収部は、カバー付加工台の移動方向一方側に設けられていれば、その形状等は各種変形可能である。
このように構成される本実施形態の場合、図1に示すように、加工台1上に加工対象物Wを固定した状態で、主軸5の先端に設けたドリルなどの工具により加工対象物Wに所定の加工を施す。この際、主軸5をx軸駆動部20xとz軸駆動部20zによりx軸とz軸とに移動させ、加工台1をy軸駆動部20yによりy軸に移動させる。この加工の際に生じた切粉などの堆積物dは、カバー部材2上に溜まる。また、図2に示すように、カバー部材2はy軸方向と直交する幅方向から落下することを防止する摺接部材3a、3bを備える。摺接部材3a、3bは堆積物落下防止手段として機能し、駆動部20yに堆積物dが落下しないようになっている。摺接部材3a、3bは、後側ワイパー7に向かって幅方向に狭くなるように傾斜を持って設置されている。加工台1の移動方向両側にそれぞれ配置され、対向する一対の摺接部材3a、3bの間隔は他方側に沿って除々に小さくなっている。
加工対象物Wを加工する際に生じた切粉などの堆積物dは、図6(a)に示すように、カバー部材2上に溜まる。加工が終了してカバー部材2上の堆積物dを回収する場合には、まず、カバー部材2を、図6(b)(図3の状態)に示すように、y軸方向一方(図6の上方、矢印イ方向)に移動させる。この際、カバー部材2の幅方向両端側に存在する異物dは、サイドワイパー3a、3bと摺接して、カバー部材2から落下することを防止されると共に、サイドワイパー3a、3bの傾斜に基づいて、カバー部材2の幅方向中央寄りにかき集められる。なお、カバー部材2のy軸方向一方に存在する堆積物dは、前述したように、後側ワイパー7により堰き止められ、かき集められる。
そして、この状態から、図6(c)(図4の状態)に示すように、カバー部材2をy軸方向他方(図6の下方、矢印ロ方向)に移動させると、堆積物dがカバー部材2の幅方向中央側に集まったまま、装置の前側に運ばれる。この際、カバー部材2のy軸方向他方に存在する堆積物dは、前述したように、前側ワイパー6によりカバー部材2の表面に前側ワイパー6によりかき集められ、堆積量が前側ワイパー6の高さを超えるとカバー部材2上から分離され、回収ボックス4により回収される。前側ワイパー6は、カバー部材2の屈曲面に接しているため、サイドワイパー3a、3bと同様にカバー部材2との摺接位置を通る接線に直角な方向から傾斜して接している。そのため、カバー部材2からの堆積物dの分離性が良い。
カバー部材2は、加工台1の移動範囲を超えて移動できないため、カバー部材2の移動だけでは、堆積物全部を取り除くことはできない。このため、カバー部材2に残った堆積物dをエアーで所定の領域に吹き集めることによって、回収ボックス4で回収でき、堆積物回収作業の簡易化を図ることができる。本実施形態の場合、上述したように、カバー部材2上の堆積物dは幅方向中央寄りに集まっているため、残った堆積物dをエアーで回収し易い。また、カバー部材2はシート状であるため堆積物dが段差などに引っ掛かることがなく、カバー部材2に存在する堆積物dを取り除き易い。回収ボックス4は、前述したように、躯体Bに着脱自在としているため、堆積物dが溜まったら、回収ボックス4を取り外して溜まった堆積物dを外部に容易に捨てることができる。また、作業台1は三次元加工を行うため加工中も移動しており、上述したカバー部材2と摺接部材(3a、3b、6、7)によるの堆積物dの回収は、加工中にも実行することができる。そのため、堆積物dが集積されすぎて、加工終了時の回収動作で堆積物dが動きにくくなるといったことを防止することができる。
加工対象物Wが取り付けられる加工台1の周囲をカバー部材2で覆ったカバー付加工台は、y軸駆動部20yにより、水平方向に移動させる加工台移動手段として機能する。
加工台1に対向して配置されて加工対象物Wを加工する工具Tを支持する支持部51は、カバー付加工台に向けて流体を放出する流体放出手段となるエアーブロー部41が装着されている。また、加工装置1は、カバー付加工台の移動方向一方側に設けられてカバー付加工台上の堆積物dを回収する堆積物回収部となる回収ボックス4を備える。そして、流体放出手段であるエアーブロー部41は、堆積物回収部に向けて移動する加工台1が支持部51に対向する領域を通過又は通過後のタイミングで流体を放出する。
本実施形態では、図4(図6(c)の状態)に示すように、z軸駆動部20zにより、主軸5をz軸方向に移動させて、加工台1に接近させる。そして、エアーブロー部41付の主軸5から、加工台1が主軸5に対向する領域を通過又は通過後のタイミングで、エアーブロー部41から、エアー41bを主軸5の下方に向けて放出し、加工台1の上面やその近傍に堆積している切粉の吹き集めを行う。
この際、エアー41bを、加工対象W、加工台1、または、カバー部材2に衝突させて、エアー41bの進行方向をy軸方向へ変化させる。エアー41cが堆積物dに与える推進力の方向と、堆積物dの下面にある部材をy軸方向へ移動させて堆積物dが運搬される方向が同一方向となる。なお、y軸方向へ進行方向が変化したエアーをエアー41cとしています。
このとき、加工台1、カバー部材2や加工対象物W上の堆積物dは下方にある部材の移動に伴って回収ボックス4側に運搬され、このタイミングでエアー41bを放出すると、y軸方向へ向かうエアー41cが堆積物dに作用し、回収ボックス4の方向へ堆積物dが移動する推進力が強まる。その結果、堆積物dは、y軸方向へ移動しやすくなり、回収ボックス4への堆積物dの吹き集めが効率的に行われる。
<加工コードによる回収動作の指定>
回収動作において、加工台1をy軸駆動部20yによりy軸に移動させながら、主軸5をx軸駆動部20xにより移動させるとジグザグにカバー部材2の上をエアーブロー部41付主軸5を移動させた場合と同様な軌跡が描かれる。このときのx軸駆動部20x、y軸駆動部20y、z軸駆動部20zの動作を以下の加工用のデータであるMコードで定義する。M400とM401は堆積物飛ばし動作用の特殊なMコードである。Mコードを加工コードと呼ぶ。図7(a)にM400の動作によるカバー部材2の上に対して主軸5を投影した移動軌跡を示し、図7(b)にM401による主軸5の移動軌跡を示す。
加工コードは、x軸、y軸、z軸の移動範囲と一回の回収動作におけるx軸方向または、y軸方向の移動量を指定することができる。
M400をX50Y100Z−30Q10とした場合は、主軸5を30mm下げて、x軸50mmでy軸100mmの範囲で一回の繰り替えし動作におけるx軸移動量が10mmで主軸5を移動させるという意味となる。これら各指定データは各種設定可能である。
また、M401をX40Y90Z−50Q10とした場合は、主軸5を50mm下げて、x軸方向40mmでy軸方向90mmの範囲で一回の繰り替えし動作における移動量がy軸方向に10mmでカバー部材2上で、主軸5を相対的に移動させるという意味となる。
M400の演算方法を示すと、
繰返し回数 = X指定データ / Q指定データ
一回の動作におけるXの移動量 =Q
Yの移動量=Y指定データ
Z 高さ =Z指定データ
であり、カバー部材2の移動による主軸5の相対的な移動の繰り返し回数は、必ず整数とする。繰返し回数分回収動作を行い、余ったXの移動分は動作しないと設定する。図7において、点線の移動軌跡は、エアーブロー部41の吹き集めを停止している。これによって、y軸方向回収部のない方向に、エアーで堆積物dが再度飛散することを防止するとともに、エアーを節約することができる。Qが一回のエアー放出動作における主軸5の移動動作の繰り返し単位となる。
M401の演算方法を示すと、
繰返し回数 = Y指定データ / Q指定データ
一回の動作におけるYの移動量 =Q
Xの移動量=X指定データ
Z 高さ =Z指定データ
であり、主軸5のx軸方向への移動の繰り返し回数は、必ず整数とする。繰返し回数分回収動作を行い、余ったYの移動分は動作しないと設定する。カバー部材2の後方からx軸方向にも移動する際に吹き集めを行うことで、カバー部材の移動を低減させて吹き集めを行うことができる。
このとき、加工装置Aは、カバー部材2が後側に移動した場合には、カバー部材2上の堆積物dが、後側ワイパー7により堰き止められる。そのため、カバー部材2上で堆積物dが吹き集められた領域がy軸方向ある領域より後ろに存在する。そのため、加工装置Aの設計データにより、回収動作が必要でない領域はエアーを使用しない領域を設けることが可能である。必要のない領域にエアーを使用しない設定とすることで、エアーのムダ使いを防止することができる。
<加工装置の制御構成>
図8は、本発明の一実施形態に係わる切削加工装置の構成を示すブロック図である。上述の加工装置Aの制御手段である制御部30について、図8を用いて説明する。図8に示すように、加工装置Aは、制御部30と加工装置本体40とを備える。このうちの制御部30は、演算手段であるCPU31、入出力ポート(I/O)32、各モータドライバ33x、33y、33z、主軸コントローラ34、データ入力部35などを備える。CPU31は、入力されたデータや信号に基づいて各種の演算を行う。
I/O32は、加工装置本体40のエアーブロー部41に接続される。制御部30に設けた各モータドライバ33x、33y、33zは、CPU31からの指令に基づいて各モータ21x、21y、21zを駆動するためのプログラムである。各モータ21x、21y、21zには、それぞれ検知手段であるエンコーダ45x、45y、45zを設けている。エンコーダ45x、45y、45zは、例えば、各モータ21x、21y、21zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータ21x、21y、21zの駆動により各ステージ(移動部材)23x、23y、23zが実際に移動した量(実際の位置)を検知する。
主軸コントローラ34は、主軸5を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)5の回転速度を制御するためのプログラムである。また、データ入力部35は、加工対象である被加工物の形状データ入力部35aと、加工データ読み込み部35bと、データ記憶部とを有する。そして、データ入力部35aで入力されたデータ及び読み込み部35bで読み込んだデータをデータ記憶部35cに記憶する。CPU31は、データ記憶部35cに記憶されたデータに基づいて各種の演算を行い、各モータドライバ33x、33y、33zなどに指令を送る。
各モータ21x、21y、21zは、上述のように、データ入力部35で入力されたデータに基づいてCPU31が演算した指令により、各モータドライバ33x、33y、33zにより駆動される。この時、CPU31は、各モータドライバ33x、33y、33zに指令した各ステージ23x、23y、23zの移動量(位置)をデータ記憶部35cに記憶させる。これと同時に、各エンコーダ45x、45y、45zにより検知した検知結果も、データ記憶部35cに記憶される。
このように制御部30により加工装置本体40の各部を制御することにより、工具を回転させつつ主軸5又は加工台1を移動させながら、加工台1上に固定した加工対象物Wに所定の加工を施す。また、加工は、連続して行う場合と、所定量加工する毎に主軸5及び加工台1を停止させる場合がある。何れにしても、各ステージ23x、23y、23zは、各モータ21x、21y、21zが指令に基づいて駆動されることにより移動する。
<回収動作フローチャート>
図9に、加工装置Aにおける切粉回収動作のフローチャートを示す。加工装置Aは、加工装置A内の内部データや不図示のLANポートなどのデータ入出力部からネットワーク経由で加工指示データを受けると、以下のフローで堆積物回収動作を実行する。主軸5の動作による堆積物回収方法はM400やM401などのコードで決定され、各種Mコードを設定または受信することによって変更可能である。
例えば、M400の規定データをX50Y100Z−30Q10とする。M400xyzqは、M400の主軸の相対的な移動動作のパラメータを4変数設定することができるコードとなる。変数の数の設定は任意である。堆積物が飛散する領域は、XYで決定されるため、XYの2変数は、加工装置Aの設計データなどによって固定されるとよい。また、当接部材3a、3bは、後側ワイパー7に向かって幅方向に狭くなるようになっているため、当接部材3a、3bの端部が回収可能な領域がある。その回収可能な領域の幅に合わせてQを設定すると、回収不要な領域を規定値とすることで無駄なく掃除を行える。
Sは各工程のステップを示す。S101で加工装置Aは切粉回収動作を行うための加工指示データを受信し加工を行う。S102でCPU31は回収用の加工コードがあるかを判定する。堆積物の回収を行う回収用のコードがなければ、S101にもどり、加工対象物Wを主軸5に取り付けられた工具Tで加工する加工モードを継続する。回収用の加工コードがあるとCPU31が判定するとS103へ進みCPU31は、I/O32を介して、エアーブロー部41にエアー放出指令をおくる。エアーブロー部41からエアーを放出し、堆積物dの回収を行う回収モード用の加工コードを取得する。これによって、CPU31は、加工対象物Wを加工する加工モードから、堆積物dの除去を行う回収モードへ各ステージ23の動作を切り替え、CPU31が切り替え手段として機能する。
S104においてS103で取得した堆積物回収方法に指定があるかを確認する。加工コードがM400やM401で指定するパラメータがない場合は、S105へ進む。このとき、M400であれば、回収を行うステップで主軸5が移動しないことを示す。また、M401であれば、主軸5が移動して、堆積物dの回収が行われる。このときどのような加工コードを受け取るかで、主軸5の支持部51が移動するかが決定される。S105で規定の回収動作データを設定する。M400xyzqなどパラメータを指定できる加工コードである場合は、S106へ進む。S106では、データ記憶部35cで記憶されている加工装置Aの設計データなどをもとに、設定されているパラメータが設定され、外部から入力されたデータや不図示の入力部等から指定可能な回収用のパラメータを指定する。M400xyzqである場合は、XYZQを指定する。エアーブロー部41が回収ボックス4に向けて移動する加工台1が支持部41に対向する領域を通過又は通過後のタイミングで流体を放出する回収ステップの実行回数をXとQの値を入力することで指定する。
S107において、CPU31は、設定された回収動作を作成し、S108で、設定された回収動作を実行する。そして、S108の動作が回収ステップとなり設定された繰り返し単位の回数、主軸5及びカバー部材2付加工台1を回収ステップで回収動作を繰り返す。回収動作を終えると、図5に示すように、S109で加工対象物Wを加工対象物Wの着脱位置までy軸方向一方に移動させ、カバー部材2の端部に飛散している堆積物dを回収ボックス4に落として回収する。
カバー部材2のy軸方向他方に存在する堆積物dは、前述したように、加工対象物Wの着脱位置まで移動され前側ワイパー6によりカバー部材2の表面から分離され、回収ボックス4により回収される。動作が完了したのを確認して、操作者は、回収ボックス4を前側から取り出して捨てることで、堆積物dを工具Tの冷却に使用するエアーブロー部41の加工装置Aの構成を利用して効率的に回収することができる。
また、本実施形態における主軸5は、工具を支持または把持し加工対象に加工を行うものであれば、回転切削に限らず、ピストン運動等で加工するものも用いることができる。
本発明は、上述の加工装置Aの構造において好適に用いられ、主軸5とカバー部材2が相対的に移動し平面2軸上を移動可能とすることで、カバー付加工台上広範囲の堆積物の回収が行える。また、z軸方向へ動作する場合、堆積物との距離を短くすることができるため、堆積物のエアーによる吹き集めを効率的にすることができる。また、工具Tを支持部51から取り外して、回収動作を行うと、エアーの吹き出し口をカバー付加工台により接近させることができ効率的の吹き集めを行うことができる。
一方、本実施例のように、工具Tを取り付けたままエアーブロー部41から吹き集めを行うことで、工具からの切粉の除去と堆積物の回収動作を合わせて行うことができ効率的な堆積物回収方法を行うことができる。本実施形態においては、加工が完了した後で且つ加工対象物Wを取り出す前に堆積物の回収を行うことを示したが、これに限らず、加工動作中に堆積物回収を実行してもよい。また、加工が完了した後で、且つ加工対象物の取り出し前に実行することで、加工対象物の取り出しにおいて堆積物でアームや手などが汚れる可能性を減少させることができる。
<第2の実施形態>
次に図10を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。装置の構成や動作などは、第1の実施形態と同様であり、回収モードへの切り替えを行う制御等が異なる。
図10に、第2の実施形態についてのフローチャートを示す。第2の実施形態は、加工を行っている状態でコードを回収モードへの切り替えを監視している。S201において、CPU31によって、加工中に回収動作の監視が開始される。
S202で回収用の加工コードが入力されたかを判定し、回収用の加工コードがある場合は、S205へ進み、回収用の加工コードがない場合は、S203へ進む。S203にでは、一連の加工を行う加工コードであっても、加工コード中に回収用の動作があるかを判定する。この判定により回収用の動作があればS205へすすみ、加工コード中にも回収用の動作がない場合は、S204へ進む。S204において、CPU31は加工コードが送られてきているかを判定する。この判定で加工コードが送られていないと判定し、加工動作を終了する場合は、S205へ進む。加工コードによって加工が継続される場合は、S202へもどり加工コードの監視を継続する。
S205において、回収のジグザグ移動の方法やパラメータが設定されているかを判定し、パラメータが設定されている場合は、S207へ進み、回収動作のパラメータが設定されていない場合は、S106と同様な方法を用いて、回収動作パラメータデータを設定する。S207において設定された回収動作を実行する。
S208では、加工データが継続して受信されない場合や、加工データが回収のみや回収動作で終了した場合に加工完了とCPU31は判断し加工を終了する。次の加工コードがCPU31に読み込まれた場合は、S202へ戻り回収動作の監視を継続する。
上述したように、加工コードを監視した場合、加工が完了した加工対象物Wの取り出し前に実行される。自動加工を行って動作が終わる際には、堆積物dの回収を行って、快適に加工対象物Wの取り出しが行える。また、加工完了前に少なくとも一回は、堆積物dの回収ステップを行っているため、加工中に堆積物dがカバー部材2上に溜まり過ぎて、加工の障害となることを防止することができる。
<他の実施形態>
図11は、本発明に係る他の実施形態の加工装置概略構成を示す斜視図である。また、図12は、他の実施形態に係る加工装置が工具取り付け開始位置にあるときの斜視図である。
図11に示すように、本実施形態における加工装置1Aは、加工台111を固定する固定台112と、この固定台112の両端部に垂直に立設された一対の支持体(側壁)113a,113bと、これら対向する各枠体113a,113bを上部側で連結する2本のX軸シャフト114とを備えている。ここで、X軸方向は、X軸シャフト114の軸方向である。
また、加工装置1Aは、X軸シャフト114に沿って移動可能に設けられた可動スライダ120を有する。具体的には、可動スライダ120は、支持体113bの一方に設けられたX軸駆動モータ130からの動力を受けて、X軸シャフト114に沿ってスライド移動可能に設けられている。例えば、本実施形態では、一対のX軸シャフト114の間には、支持体113a,113bを繋ぐようにボールねじ等からなるX軸駆動案内軸131が設けられている。このX軸駆動案内軸131は、一対のX軸シャフト114と平行に設けられている。そして、X軸駆動モータ130は、このX軸駆動案内軸131の一端部(支持体113b側の端部)に連結され、X軸駆動案内軸131を回転させる。これにより、本実施形態では、回転するX軸駆動案内軸131に螺合された可動スライダ120が一対のX軸シャフト114に沿ってスライド移動できる。
このような可動スライダ120は、加工台111に装着される加工対象物Aを加工する工具Tが着脱可能な主軸140を保持している。この主軸140は、加工台111に対向する側の先端部141で工具Tを着脱自在に把持する。なお、図11では、主軸140に工具Tを装着していない状態を図示している。
また、主軸140は、加工台111に接近又は退避する方向(鉛直方向であるZ軸方向)に単独で移動可能に保持されている。詳細には、Z軸駆動モータ150が可動スライダ120の鉛直方向上部側の端部に設けられている。そして、このZ軸駆動モータ150の駆動力は、不図示の駆動軸及び連結部によって主軸140に伝達され、これによって、主軸140は、Z軸方向に単独で移動できる。なお、主軸140は、可動スライダ120を介して一対のX軸シャフト122に支えられているため、安定した工作動作を実現し得る。
一方、上述した主軸140に対向する加工台111は、加工台111の下部に設けられた不図示の加工台駆動手段(Y軸駆動モータ)上に設けられている。すなわち、加工台111は、上面側に加工対象物Aが取り付けられた状態で、不図示の加工台駆動手段により、主軸140の移動方向と交差するY軸方向に移動可能に設けられている。ここで、Y軸方向とは、X軸シャフト114と直交する水平方向である。
そして、上述した構成の加工装置1Aにおいては、可動スライダ120自体がX軸シャフト114に沿って主軸140と一体的にX軸方向に移動可能である。また、主軸140は、Z軸駆動モータ150によって単独でZ軸方向に移動可能である。さらに、加工台111は、可動スライダ120及び主軸140とは別に、独立してY軸方向に移動可能である。
したがって、本実施形態の加工装置1Aは、主軸140を備えた可動スライダ120及びその移動機構(X軸駆動モータ130及びZ軸駆動モータ150)を含む加工手段側でのXZ方向への移動と、加工台111側でのY軸方向への移動とを相対的に制御できる三次元加工装置となる。つまり、X軸駆動モータ130やZ軸駆動モータ150は、加工台111に対して主軸140を移動させる主軸移動手段として機能する。一方、Y軸駆動モータ130は、主軸140に対して加工台111を移動させる加工台移動手段として機能する。なお、加工手段側と加工台111とでXYZ軸の移動方向の組み合わせは、上述したものに特に限定されず、例えば、加工台111をZ軸方向、あるいはX軸方向に移動させ、これに対応させて加工手段側を所定の方向に移動させるようにしてもよい。以下の説明では、図1に示すX軸シャフト114の軸方向(X軸シャフト114に平行な方向)をX軸とし、加工装置1Aの載置面に対して水平方向でX軸に直角な(直交する)方向をY軸、X軸及びY軸に対して垂直な方向(鉛直方向)をZ軸と呼ぶ。これらの三次元移動のための構成は、本発明の第1の実施形態にも適用可能な概念である。
なお、上述した構成の加工装置1Aの各支持体113a、113bの下端部には、装置安定化のために、床面(装置設置面)に接地する複数の脚部113cが装置の四隅に対応して設けられる。これにより、加工装置1Aは、加工対象物Aを加工している状態であっても、各脚部13cによって装置全体が安定した状態で加工動作を実現し得る。
ここで、上述した本実施形態の加工装置1Aは、主軸140に対する工具Tの取り付けが自動化されている。以下、図11〜図13を参照して、本実施形態の加工装置1Aにおける工具取り付け構造について説明する。なお、図13は、実施形態2に係る加工装置の要部拡大図を示す(図13(a)は主軸の先端部を示し、図13(b)は主軸のA−A断面図を示す)。
具体的には、図11、図12、図13(a)及び図13(b)に示すように、主軸140の先端部141には、工具Tを着脱自在に把持する把持部142が設けられている。この把持部142には、工具Tを把持するための開口部を開閉するための開閉レバー143が連結されている。すなわち、把持部142は、開閉レバー143の動作に連動して、工具Tが装着される開口部を開状態又は閉状態に変形させる。開閉レバー143の主軸140の上方側にエアーブロー部141aが設けられ、エアーは開閉レバー143、工具Tの回転のためのモータ、及び、工具と加工対象物Aの加工面の吹き飛ばしと、堆積物の吹き飛ばしを行うように構成することもできる。一方、主軸140の移動経路(又はその近傍)、すなわち、主軸140の可動範囲又はその近傍には、開閉部となる開閉レバー43を衝突させるための被衝突部材160が配置されている(図1及び図2参照)。例えば、本実施形態では、この被衝突部材160は、主軸140に対向する側の支持体113bの内側面に固定されている。
そして、図11に示すように、被衝突部材160には、開閉レバー143が挿入されて主軸140の移動に伴って摺動するカム溝161が設けられている。具体的には、被衝突部材160には、主軸140に対向する端面にカム溝161が設けられている。このカム溝61は、例えば、本実施形態では湾曲した長穴形状に設けたが、これに限定されず、開閉レバー143の移動経路に合わせて螺旋形状等、適宜整合させればよい。一方、主軸140は、図13(b)に示すように、その軸中心周りに円筒部140aを有し、その円筒部140aの内方には開閉レバー143の胴体部143aが回動可能に保持されている。また、開閉レバー143の胴体部143aからは、主軸140の円筒部140aに設けられたスリット140bからレバー部143bが突設されている。
そして、このような構成の開閉レバー143は、主軸140と一体的に設けられている。つまり、開閉レバー143は、主軸140と共に一体的に移動する際、主軸140の移動経路内において、レバー部143bが被衝突部材160のカム溝161に挿入され、その状態で当該カム溝161に沿って摺動される。例えば、本実施形態では、図14に示すように、開閉レバー143は、カム溝161に沿った摺動により、主軸140の円筒部140a内で回動する。これにより、把持部142の開口部は、開閉レバー142の動作に連動して開状態又は閉状態に変形する。詳細には、本実施形態では、把持部142の開口部は、回動する開閉レバー142の一部で開口が小さく塞がれるようにした。このため、このような把持部142の開閉動作にあわせて工具Tを把持部142の開口部に挿入することで、把持部142と開閉レバー143との間で工具Tを挟んで、主軸140への工具Tの取り付けを自動で行うことができる。
なお、本発明において開閉レバー143を被衝突部材160に衝突させるとは、開閉レバー143を被衝突部材160に接触させることで開閉レバー143に衝撃等の動力を与え、その動力によって開閉レバー143自体を動作させることを意味する。また、開閉レバー143を動作させるとは、主軸140の開口部(工具を保持する部分)の開閉動作をさせるために必要な間接動作をいう。この間接動作においては、本実施形態で示したように、開閉レバー143をカム溝161に摺動させ、主軸140の軸中心周りに回転させる以外にも各種の構成を適用可能である。
すなわち、加工装置の主軸が加工台の移動機構(XYZ方向の少なくともいずれか一つの移動機構)を用いて、主軸にある開閉部と被衝突部材とを相互に作用させて、主軸による工具の着脱を行うようにすればよい。
開閉部と被衝突部材とを相互作用させるためには、開閉部の把持部の開閉構造に合わせて、被衝突部材の構成を適宜変形させればよい。
例えば、主軸140の移動方向として本実施形態では、XZ軸方向を示したが、移動手段の構成によっては、主軸140の移動可能な方向として、XYZ軸方向の三次元方向とすることもできる。主軸の移動方向として、XYZ軸方向の複数もしくは少なくとも一方向の移動を行い、開閉部を被衝突部材に衝突させ、把持部を開状態または閉状態に変化させればよい。また、被衝突部材を移動可能な構成とすることもできる。例えば、被衝突部材をX軸方向に移動させることによって、カム溝から開閉部を出し入れするように構成することもできる。この場合、主軸に対して、被衝突部材を移動させて、カム溝に開閉部が挿入された後に、開閉部により把持部を開閉させるように主軸をZ軸方向へ移動させればよい。
また、被衝突部材の開閉部を摺動する構成として、カム溝に限らず被衝突部材を棒状とすることもできる。開閉部を案内するスリットも各種変形可能であり主軸に主軸方向に形成されたスリットに被衝突部材の棒状部を嵌合させ主軸の移動に伴って、開閉部を押し上げ、押し下げする構造など各種の構成を適用可能である。例えば、開閉部を押し上げるには、開閉部の下側のスリットに被衝突部材を挿入して、主軸をZ軸方向下方に移動させればよく、開閉部を押し下げるには、開閉部の上側のスリットに被衝突部材を挿入して、主軸をZ軸方向上方に移動させればよい。
ここで、このような主軸140の把持部142に対して、工具Tを自動的に供給するための機構について詳細に説明する。
詳細には、上述した本実施形態の加工装置1Aは、図12に示すように、主軸40に装着させるための複数の工具Tを収容する工具マガジン170と、工具を保持するアーム171と、このアーム171を鉛直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降装置172とが加工台111の外側であって、且つ被衝突部材160の鉛直方向下方側に配置されている。
アーム171の駆動手段となる昇降装置172は、アーム171を水平方向にも旋回可能に保持している。すなわち、アーム171は、主軸140への工具Tの取り付け位置と、工具マガジン170で工具Tを掴む位置との間を相互に移動できるようになっている。
また、このようなアーム171は、図示しない工具固定板ばねが組付けられ、この工具固定板ばねの弾性変形を利用して工具Tを保持できる状態としている。すなわち、アーム171は、工具マガジン170に収納された工具Tを保持することができる工具保持手段として機能する。昇降装置172は、アーム171で保持した工具Tの工具移動手段として機能する。
なお、これら工具マガジン170、アーム171、昇降装置172等の工具供給機構の周囲には、加工作業に伴って発生する切粉が舞い散る領域を仕切る隔壁(カバー)を設け、工具Tの加工による加工対象物Aの切粉による悪影響を排除するのが好ましい。
次に、本実施形態における加工装置1への工具の取り付け方法及びその際の動作について説明する。
まず、図11の状態から工具取付プログラムの実行により、加工装置1Aに対して工具Tの取り付けが指示されると、加工装置1A(実際には加工装置の制御部)は、X軸駆動モータ130の駆動により可動スライダ120をX軸方向、すなわち、支持体113b側に移動させる。これにより、主軸140は、可動スライダ120と共に被衝突部材160に向かって移動する。そして、主軸140は、所定の工具取付開始位置(具体的には被衝突部材160が設置された位置)に移動する。ここでいう工具取付開始位置とは、主軸140の開閉レバー143(レバー部143b)が被衝突部材160のカム溝161に挿入された位置のことをいう。ここでは、カム溝161の上端部に開閉レバー143のレバー部143bを挿入した位置を工具取付開始位置としている。
次に、加工装置1Aは、Z軸駆動モータ150を駆動して主軸140の位置をZ軸方向、すなわち、加工台11側に向けて降下させる。このとき、主軸140の開閉レバー143は、上述したようにカム溝61に挿入されているので、主軸140の降下移動に伴って、カム溝61の内部に沿って摺動、本実施形態では主軸140の中心軸周りに約90度回動する。このときの状態を図15に示す。これにより、開閉レバー143の回動に連動して主軸140の把持部142(開口部)が全開し、主軸140の先端部側から工具Tが挿入できる状態になる。
続いて、加工装置1Aは、主軸110が降下すると、その位置でアーム171に保持された工具Tが把持部142内に挿入される。このときの状態を図14(a)に示す。
次に、加工装置1Aは、主軸140をZ軸方向に工具取付開始位置まで上昇させる。この際、工具Tを保持したアーム171を昇降装置172によって主軸140の移動方向に追従させる。そして、主軸40を工具取付開始位置まで上昇させ、主軸140の開閉レバー143を回動させることにより、主軸140の把持部142と開閉レバー143とで工具Tを挟み、把持部142を閉状態として工具Tを主軸140に取り付ける。この状態を図14(b)及び図16に示す。なお、その後は、アーム171での工具Tの保持状態を解除(開放)し、昇降装置133を上昇前の規定位置へ下降させる。これにより、工具Tの取り付けが完了する。なお、工具Tの把持部142を移動させる機構としては、公知の様々な機構を組み合わせて用いることができる。
一方、主軸140から工具Tを取り外す場合には、工具Tを備えた主軸110を工具取付開始位置に移動させ、開閉レバー143を衝突部材160のカム溝161の下端部に挿入させる。次に、昇降装置172を上昇させアーム171で工具Tを把持する。その状態から、主軸140を下降させるのと連動(または同期)、すなわち、追従させて昇降装置172も下降させる。これにより、開閉レバー143は、被衝突部材160のカム溝161に沿って摺動し、把持部142での工具把持状態を開放する。これにより、アーム171のみが工具Tを保持した状態になる。なお、この状態から、主軸140を上昇させる、もしくは昇降装置172を下降させて主軸140から工具Tを取り外す。
以上説明したように、本実施形態の加工装置1Aは、加工対象物Aを加工する工具Tを把持する把持部142及び当該把持部142を開閉する開閉レバー143を有する主軸1140と、主軸140を移動させる可動スライダ120等の移動手段と、主軸140の移動経路(又はその近傍)に設けられて主軸140の移動に伴って開閉レバー143を衝突させる被衝突部材60とを備えるようにした。そして、本実施形態では、開閉レバー143を被衝突部材160に衝突(具体的にはカム溝161に摺動)させることで、把持部142を開状態又は閉状態に切り替えられるようにした。これにより、比較的簡単な構成で工具Tの取替え等が可能であり、生産性を向上することができ、低コスト化を図ることができる。特に、主軸140の先端部への工具Tの供給についても自動化したことで、工具Tを保持する主軸140の構造を簡略化することができる。このように、油圧等を設けずに工具Tの自動交換を行う加工装置においては、主軸内の機構は、機械部品によって簡素化されている。そのため、主軸内にエアーブロー部を設けることで、油分を主軸外に飛ばす等の不具合を減らして、構成することができる。また、このような自動工具交換を行う前にエアーブロー部141aからエアーで吹き集めを行うことで、切粉などが詰まることなく自動工具交換を円滑に行うことができる。
また、本実施形態において、工具移動手段として昇降装置172と工具保持手段としてアーム171を用いたが、主軸に対して工具の供給を行う構成であれば各種の構成を適用可能である。例えば、工具交換取り付け位置に工具マガジンを配置し、工具マガジンの工具保持部下方に貫通口を設けて、保持部に保持された工具先端下方から昇降動作を行う押し上げピンを工具先端に押し当て、工具を移動させる構成としてもよい。