JP2012212662A - 転写用ドナー基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】転写用材料の劣化を防ぎ、性能の高いデバイスを提供すること。
【解決手段】基板と、基板上に形成された光熱変換層と、前記光熱変換層上に形成された転写層を含む転写用ドナー基板であって、前記光熱変換層中に、第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上である元素を含み、かつ前記転写層中に特定のアントラセン誘導体または特定のアントラセン前駆体化合物を含有することを特徴とする転写用ドナー基板。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機EL素子をはじめとするデバイスのパターニングに用いる転写用ドナー基板に関する。
有機EL素子は陰極と陽極の間に有機発光材料を挟んだ構造の発光素子であり、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が有機層で再結合することで生じるエネルギーを発光エネルギーとして外部に取り出す原理の素子である。
現在、有機EL素子に代表される有機デバイスに含まれる有機層の作製方法は、真空蒸着などのドライプロセスによる成膜が一般的であり、画素のパターニングにはシャドーマスクなどが用いられている。しかしこのような手法は、材料の利用効率が低いことや、大面積デバイスの作製が困難であることなどの問題があった。
一方で、低コスト・大面積化が可能なフォトリソ法、インクジェット法や印刷法などのウェットプロセスも検討されている。しかし有機EL素子などの有機薄膜の多層構造からなるデバイスでは、上層を塗布した際に下地層が膜質変化する懸念があり、また膜厚均一性などを制御することが難しいことから、ディスプレイとしての性能が低下するという課題がある。
そこで、材料をまずドナー基板上に用意してからデバイス基板に転写する方法が開発されている。ドナー基板上への有機薄膜の形成方法としては、有機EL素子においてホスト材料として用いられるナフタセン誘導体やルブレン誘導体をウェットプロセスで直接成膜する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、一般に有機EL材料等に用いられる有機材料は難溶性のものが多く、直接成膜できないものが多いため、可溶性の前駆体の状態でドナー基板へ塗布し、その後にドナー基板上で変換処理を加えて目的とする有機EL材料として用いる方法などが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−49094号公報 国際公開第2010/16331号パンフレット
上述のようなドナー基板を用いた有機薄膜の作製方法において、安定性の低い有機材料を転写用材料に用いる場合、ドナー基板を経由するプロセスを経ることにより有機材料が部分的に劣化する可能性がある。このため、劣化した有機材料が転写によってデバイス中に混入し、デバイス性能が低下する懸念がある。
本発明はかかる問題を解決し、転写用材料の劣化を防ぎ、性能の高いデバイスを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、基板と、基板上に形成された光熱変換層と、前記光熱変換層上に形成された転写層を含む転写用ドナー基板であって、前記光熱変換層中に、第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上である元素を含み、かつ前記転写層中に下記一般式(1)で表されるアントラセン誘導体または下記一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を含有することを特徴とする転写用ドナー基板である。
Figure 2012212662
(一般式(1)および(2)中、R〜R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、ホスフィンオキサイド基、並びに隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。一般式(2)中、XはC=O、CH、OまたはCHR11から選ばれる原子または原子団である。R11はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアシル基から選ばれる置換基であり、互いに結合を有して環を形成しても良い。)
本発明によれば、転写法によって作製された有機EL素子をはじめとするデバイスにおいて、転写層材料にアントラセン誘導体を用いた場合の有機薄膜中の不純物濃度を低減でき、デバイス性能の低下を抑制することができる。
本発明によるドナー基板の一例を示す断面図 本発明における転写補助層の一例を説明する断面図 本発明における区画パターンの別の一例を示す断面図 撥液処理層を有する場合の本発明のドナー基板の一例を示す断面図 撥液処理層を有する場合の本発明のドナー基板の一例を示す斜視図 本発明によるドナー基板の別の一例を示す断面図 本発明によるパターニング方法の一例を示す断面図 本発明による有機EL素子の発光層パターニング方法の一例を示す断面図 図8における光照射方法の一例を示す平面図 本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図 本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図 本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図 本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図 本発明におけるオーバーラップ光照射方法の一例を示す断面図 本発明による一括転写のパターニング方法の別の一例を示す断面図 本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図 本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図 本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図 本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図
本発明のドナー基板は、転写層としてアントラセン誘導体またはアントラセン前駆体、もしくはその両方を有し、かつ、基板作製時に生成する不純物が少ないことが特徴である。
これは、光熱変換層中に、第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上の元素が含まれていることによる。これらの元素が、光を効率よく熱に変換し、発生した熱に対して安定である点と、酸素や水、イオン性物質などとの結合がほとんどない点から、ドナー基板上に成膜された有機材料を変質させる可能性が低減される点を利用するものである。
なお、本発明における第一イオン化エネルギーは、化学便覧基礎編II改訂第4版(日本化学会編)618ページに掲載された値である。
図1に本発明のドナー基板の構成の一例を示す。図1を参照して、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34および転写層37からなる。
支持体31は、光の吸収率が小さく、その上に光熱変換層と転写材料を安定に形成できる材料であれば特に限定されない。樹脂フィルムを使用することも可能である。具体的な樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエポキシ、ポリプロピレン、ポリオレフィン、アラミド樹脂、シリコーン樹脂などを利用することができる。
化学的・熱的安定性、寸法安定性、機械的強度、透明性の面で、好ましい支持体としては、ガラス板を挙げることができる。ソーダライムガラス、無アルカリガラス、含鉛ガス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、低膨張ガラス、石英ガラスなどから適宜選択することができる。本発明の転写プロセスを真空中で実施する場合には、支持体からのガス放出が少ないことが要求されるので、ガラス板は特に好ましい支持体である。
光熱変換層33が高温に加熱されても、支持体自体の温度上昇(熱膨張)を許容範囲内に収める必要があるので、支持体の熱容量は光熱変換層のそれより十分大きいことが好ましい。従って、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの10倍以上であることが好ましい。熱膨張の許容範囲は転写領域の大きさやパターニングの要求精度などに依存するために一概には示せないが、例えば、光熱変換層が室温から300℃上昇し、支持体の温度上昇をその1/100である3℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの
100倍以上であることが好ましく、支持体の温度上昇を300℃の1/300である1
℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの300倍以上であることが好ましい。このようにすることで、大型化しても熱膨張による寸法変位量が少なく、
高精度のパターニングが可能になる。
光熱変換層33は、支持体31上に形成された層であり、本発明において、第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上の元素が含まれるものである。上記の元素は、効率よく光を吸収して熱を発生し、発生した熱に対して安定である点で光熱変換材料として優れている。また、イオン化エネルギーが8.0eV以上のものであることで、酸素や水、イオン性物質などとの結合がほとんどなく、ドナー基板上に成膜された有機材料を変質させる可能性が低減される。
なお、光熱変換層に上記の元素が含まれるとは、上記元素の中の一種類から構成される場合以外に、上記元素を複数含む合金や、上記元素とそれ以外の元素からなる合金、これらの単体または合金の薄膜を積層したもの、これらの単体または合金からなる薄膜と上述の元素以外の元素からなる薄膜を積層したものを用いる場合も指す。
本発明における第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上の元素としては、具体的には、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金などが挙げられる。中でも利用のしやすさや、成膜性の点から白金や金を好ましく用いることができる。
上述の元素とともに積層膜や合金として用いることができる材料としては特に制限されないが、効率よく光を吸収して熱を発生し、発生した熱に対して安定である材料であれば特に限定されない。例として、カーボンブラック、黒鉛、チタンブラック、有機顔料または金属粒子などを樹脂に分散させた材料、もしくは金属などの無機材料を利用することができる。本発明では、光熱変換層が300℃程度に加熱されることがあるので、光熱変換層は耐熱性に優れた無機材料からなることが好ましく、光吸収や成膜性の面で、金属材料からなることが特に好ましい。金属材料としては、タングステン、タンタル、モリブデン、チタン、クロム、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、ジルコニウム、シリコン、カーボンなどが挙げられる。
光熱変換層は単層でも複数層でもよく、複数層の場合、有機物質と接する最表面の層が本発明の第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上の元素を含む層であることが好ましく、上述の元素以外の元素からなる層の上に上述の元素を含む層を積層したものでもかまわない。上述の元素以外の元素からなる層としては、上述の元素以外の元素一種類から構成されていても、上述の元素以外の元素を複数含有する合金でもかまわない。アントラセン誘導体は酸素や水分との反応性が比較的高いことから、アントラセン誘導体と接する面全体が上述の元素もしくは上述の元素の合金で構成されていることで、より安定に取り扱うことができるため好ましいが、上述の元素と上述の元素以外の元素からなる合金でもかまわない。
単層・複数層どちらの場合においても、アントラセン誘導体と接する層は上述の元素を多く含むことが好ましい。上述の元素以外の元素を含む合金の場合、光熱変換層が単層の場合は該光熱変換層中の上述の元素の含有割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。また、光熱変換層が複数層の場合は、ナフタセン誘導体と接する層中の上述の元素の含有割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。光熱変換層の元素の含有割合は蛍光X線分析計などで分析することができる。
また、光熱変換層の形状は平滑でなくてもよく、図2に示すようなスパイク状であったり、多孔質状であってもかまわない。このような形状をとることで、転写材料を塗布法により成膜する際の表面改質を行うことができ、また、転写層37が比較的厚い場合でも均一に加熱することができる。
光熱変換層の形成方法としては、真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど、材料に応じて公知技術を利用できる。パターニングする場合にはレーザーアブレーション法など公知の方法を利用できる。
また、光熱変換層上には区画パターン34を設けてもかまわない。区画パターンを設けることで、ドナー基板上でパターニングされた転写材料が転写時に混合することを防ぐことができる。区画パターンを形成する材料としては、転写材料の境界を規定し、光熱変換層33で発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。無機物では酸化ケイ素や窒化ケイ素をはじめとする酸化物・窒化物、ガラス、セラミックスなどを、有機物ではポリビニル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリスチレン、アクリル、ノボラック、シリコーンなどの樹脂を利用することができる。プラズマテレビにおける隔壁をガラスペースト法により製造する公知技術を使用することもできる。区画パターンの熱導電性は特に限定されないが、区画パターンを介して対向するデバイス基板に熱が拡散するのを防ぐ観点から、熱伝導率が小さい方が好ましい。
区画パターン34の成膜方法は特に限定されず、無機物を用いる場合には真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、レーザーアブレーションなどの公知技術を、有機物を用いる場合には、スピンコート、スリットコート、ディップコートなどの公知技術を利用できる。区画パターンのパターニング方法は特に限定されず、公知のフォトリソ法が利用できる。フォトレジストを使用したエッチング(あるいはリフトオフ)法によって区画パターンをパターニングしてもよいし、例示した上記樹脂材料に感光性を付加させた材料を用いて、区画パターンを直接露光、現像することでパターニングしてもよい。さらに、全面形成した区画パターン層に型を押しつけるスタンプ法やインプリント法、樹脂材料を直接パターニング形成するインクジェット法やノズルジェット法、各種印刷法などを利用することもできる。
区画パターン34の形状としては、格子状(マトリクス状)構造に限定されるのではなく、例えば、後述の図6で例示するように、ドナー基板30上に3種類の転写層37R、37G、37Bが形成されている場合には、区画パターン34の平面形状がy方向に伸びるストライプであってもよい。
また、図3に示すように、転写層37よりも幅の広い区画パターン34を形成することもできる。R、G、Bの3色に対して1色ずつ転写するためである。この場合は、3種類の転写層37R、37G、37Bがそれぞれ形成された3枚のドナー基板30を用意して、1枚のデバイス基板にそれぞれを対向させて本発明により転写する工程を3回繰り返すことで、転写層37R、37G、37Bを1枚のデバイス基板上にパターニングすることができる。転写層37R、37G、37Bのピッチあるいは間隙を小さくする必要がある高精細パターニングにおいて有効な形状の一例である。
区画パターンの厚さについては特に限定されない。例えば、区画パターン34が転写層37と同じ厚さであるか、あるいはより薄いとしても、ドナー基板30とデバイス基板20との間隙を保持すれば、転写時に蒸発した転写材料がやや広がって堆積する程度なので、転写層37R、37G、37B間の混合を起こさずに転写することができる。転写材料はデバイス基板の被転写面に直接接しない方が好ましく、また、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙は、1〜100μm、さらに2〜20μmの範囲に保つことが好ましいので、区画パターンの厚さは転写材料の厚さより厚く、また、1〜100μm、さらに2〜20μmの厚さであることが好ましい。このような厚さの区画パターンをデバイス基板に対向ざせることで、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙を一定値に保つことが容易になり、また、蒸発した転写材料が他の区画へ侵入する可能性を低減できる。
区画パターンの断面形状は、蒸発した転写材料がデバイス基板に均一に堆積することを容易にするために、順テーパー形状であることが好ましい。ここで「順テーパー形状」とは区画パターンの光熱変換層側での断面幅が上面側の幅より長い形状をいう。後述の図8で例示するように、デバイス基板10に絶縁層14のようなパターンが存在する場合には区画パターン34の幅よりも絶縁層14の幅の方が広いことが好ましい。また、位置合わせの際には、区画パターン34の幅が絶縁層14の幅に収まるように配置することが好ましい。この場合には、区画パターン34が薄くても、絶縁層14を厚くすることで、ドナー基板30とデバイス基板10とを所望の間隙に保持することができる。区画パターンの典型的な幅は5〜50μm、ピッチは25〜300μmであるが、用途に応じて最適な値に設計すればよく、特に限定はされない。
区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、溶液が他の区画へ混入したり、区画パターンの上面に乗りあげたりすることを防ぐために、区画パターン上面に撥液処理(表面エネルギー制御)を施すことができる。撥液処理としては、区画パターンを形成する樹脂材料へフッ素系材料などの撥液性材料を混合する方法や、さらに撥液性材料の高濃度領域を表面あるいは上面へ選択形成する方法などがある。
後者の場合の一例を図4に示す。(a)は区画パターンよりも広く撥液処理層35を設計した場合であり、塗布後の溶剤が区画パターン内でとどまり区画パターン上には塗られないため転写材料を有効に使うことができる。(b)は区画パターンよりも狭く撥液処理層35を設計した場合であり、区画パターン上のエッジ部にも転写材料がぬれ広がるため転写材料を多めに使用するが、区画パターン内のぬれの均一性を上げることができるため転写後の膜厚均一性が向上できる。これらのどちらの場合も状況により選択できる。
また、図5では撥液層を斜線で表し、パターン上面の一部に撥液処理層35を形成する様子を示したが、パターン上面全体にわたって撥液処理層35を形成してもよい。
光熱変換層33の支持体31側には必要に応じて反射防止層を形成することができる。さらに、支持体31の光入射側の表面にも反射防止層を形成してもよい。これらの反射防止層は屈折率差を利用した光学干渉薄膜が好適に使用され、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの単体や混合薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
転写層37は、下記一般式(1)で表されるアントラセン誘導体、または一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を含有する有機薄膜層である。
Figure 2012212662
ここで、一般式(1)および(2)中、R-〜R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、ホスフィンオキサイド基、並びに隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。一般式(2)中、XはC=O、CH、O、CHR11から選ばれる原子または原子団である。R11はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基から選ばれる置換基であり、互いに結合を有して環を形成しても良い。
これらの置換基のうち、水素は重水素であってもよい。アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
アリールエーテル基とは例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
アリールチオエーテル基とはアリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
アリール基とは、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、アントラセニル基およびピレニル基などの芳香族炭化水素基、もしくはこれらが複数連結した基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。このようなアリール基が有していても良い置換基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アルキルチオ基、ハロゲン、シアノ基、アミノ基(アミノ基はさらにアリール基やヘテロアリール基で置換されていてもよい)、シリル基およびボリル基などである。
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を環内に有する芳香族基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上30以下の範囲である。このようなヘテロアリール基が有していても良い置換基は、アリール基が有していても良い置換基と同様である。
ハロゲンとはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
カルボニル基とはアシル基やホルミル基など炭素−酸素二重結合を含む置換基を示す。アシル基はホルミル基の水素がアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基に置換した置換基を示す。オキシカルボニル基とはt−ブチルオキシカルボニル基やベンジルオキシカルボニル基のようにカルボニル基の炭素上にエーテル結合を含む置換基を示す。
カルバモイル基とはカルバミン酸の水酸基を外した置換基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アミノ基とは、例えばジメチルアミノ基などの窒素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。ホスフィンオキサイド基とはリン−酸素二重結合を含む置換基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、前記一般式(1)で説明すると、R〜R10の中から選ばれる任意の隣接2置換基(例えばRとR)が互いに結合して共役または非供役の縮合環を形成するものである。このような縮合環の一例として例えばRとRが共役系の縮合環を形成したナフタセン、RとRおよびRとRが共役系の縮合環を形成したペンタセンなどのポリアセン系化合物や、RとRが縮合環を形成したベンゾ[a]アントラセンなどのようなオルト縮合型化合物も挙げられる。これら縮合環は環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と結合していてもよい。この説明から分かるように、本明細書において「一般式(1)で表されるアントラセン誘導体」「一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物」というときには、それぞれ、ナフタセン誘導体、ペンタセン誘導体などのポリアセン誘導体、ナフタセン前駆体化合物、ペンタセン前駆体化合物などのポリアセン前駆体化合物などを含む概念である。
例えば上記ナフタセン誘導体は下記一般式(3)で表される構造であり、同様に、ナフタセン前駆体化合物の場合は下記一般式(4)で表される。
Figure 2012212662
ここで、一般式(3)および(4)中、R12〜R23はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、ホスフィンオキサイド基、並びに隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。一般式(4)中、YはC=O、CH、O、CHR24から選ばれる原子または原子団である。R24はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基から選ばれる置換基であり、互いに結合を有して環を形成しても良い。
これらの置換基の説明は上記R〜R11の説明と同様である。
なお、一般式(1)で表されるアントラセン誘導体の例としては、以下のようなものが挙げられる。
Figure 2012212662
Figure 2012212662
Figure 2012212662
Figure 2012212662
Figure 2012212662
一般式(1)で表されるアントラセン誘導体の例は上記に限られず、特許第4308317号(特に0033〜0057)、国際公開第2007/097178号パンフレット(特に0015〜0024)、特許第3712760号(特に0011〜0039)等に挙げられる上記以外のアントラセン誘導体も好ましく用いることができる。また、そのようなアントラセン誘導体の中でもナフタセン、ペンタセンなどの場合は、構造異性体を有するものをより好ましく用いることができる。その中でも特に2置換ナフタセン、4置換ナフタセン、2置換ペンタセンなどが特に好ましい。ここで、2置換ナフタセンはナフタセン骨格の5位と12位が置換されたものであることが好ましい。また、4置換ナフタセンはナフタセン骨格の5位、6位、11位および12位が置換されたものであることが好ましい。また、2置換ペンタセンはペンタセン骨格の6位と13位が置換されたものであることが好ましい。
また、一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物の例としては、以下のようなものが挙げられる。
Figure 2012212662
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また、本発明で用いられるアントラセン誘導体およびアントラセン前駆体化合物は公知の方法により合成することができる。アントラセン誘導体を合成するには、例えば、アントラセン誘導体を合成するには、例えば、アントラセンのハロゲン化物にアリールボロン酸を、パラジウム触媒などを用いてクロスカップリングさせる方法などが挙げられる。また、ナフタセンの5位および12位をアリール基と連結する方法として、ハロゲン化アリールと5,12−ナフタセンキノンをn−ブチルリチウムを用いて連結した後、スズ触媒で還元する方法などが挙げられる。また、アントラセン前駆体化合物を合成するには、対応するアントラセン誘導体を利用する方法が挙げられる。例えば、前述の2位および6位にアリール基を連結したアントラセン誘導体の9位および10位にDiels−Alder反応で炭酸ビニレンを付加させた後、加水分解を行い、さらにこれをSwern酸化することでジケト架橋構造を形成することができる。また、Journal of The American Chemical Society、1965年、87巻、20号、4649−4651頁等に挙げられる方法により、エチレン架橋構造を形成することができる。
本発明で用いられるアントラセン誘導体およびアントラセン前駆体化合物は、これらの合成過程で使用した原料や副生成物などの不純物を除去しておくことが好ましい。不純物の除去方法として、例えば、シリカゲルカラムグラフィー法、再結晶法、再沈澱法、ろ過法、昇華精製法などを用いることができる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
転写層37の厚さは、それらの機能や転写回数により調整することができる。本発明の好適なパターニング薄膜である有機EL発光層の場合は、1回転写分の転写材料の厚さは10〜100nmが好ましく、より好ましくは20〜50nmである。
転写層の形成方法は特に限定されず、真空蒸着やスパッタリングなどのドライプロセスを利用して、ドナー基板上に全面形成する方法が挙げられる。大型化に対応が容易な方法として、転写材料と溶媒を含有する溶液をドナー基板上に塗布し、前記溶媒を乾燥させて転写層を形成することが好ましい。塗布法としては、インクジェット、ノズル塗布、電界重合や電着、オフセットやフレキソ、平版、凸版、グラビア、スクリーンなどの各種印刷などを例示できる。
転写材料と溶媒とからなる溶液を塗布法で用いる場合、溶媒としては、アルコール、炭化水素、芳香族化合物、複素環化合物、エステル、エーテル、ケトンなど公知の材料を使用することができ、具体的には、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トリメチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、n−メチルピロリドン、テトラリン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、安息香酸エチル、シクロヘキサンノンなどの汎用溶媒が挙げられ、使用する塗布方法に見合った沸点、粘性のものを選択することができる。また、これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数の溶媒を混合して用いてもよい。また、超音波照射や加熱処理を加えて溶解してもよく、溶解後、ろ過の工程を加えてもかまわない。
特に、一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物は、一般式(1)で表されるアントラセン誘導体よりも一般的に溶解性が高いため、塗布法による転写層の形成に好適に用いることができる。
また、転写材料は一般式(1)で表されるアントラセン誘導体や一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を複数含有していてもよい。また、作製するデバイスの種類に応じてそれ以外の化合物を含有していてもよく、例えば、転写層を有機EL素子の発光層として用いる場合は、ドーパントとしての性能を示す材料を含有していてもかまわない。ドーパント材料としては公知のものを用いることができ、例えば、インデノペリレン、ピロメテンおよびそれらの誘導体などが挙げられる。
図1では、ドナー基板上の転写層が1種類である場合を例示したが、本発明は、図6に示すように転写層37がR、G、Bのように複数種類である場合にも適用できる。図6においては3種類だが、もちろん、2種類でも4種類以上でもよい。このような場合、少なくとも1種類の転写層に一般式(1)で表されるアントラセン誘導体や一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物が含まれていればよい。
一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物は変換処理を施すことで、一般式(1)で表されるアントラセン誘導体へと構造変換することができる。有機EL素子をはじめとするデバイスにおいては、アントラセンン誘導体の状態で高い性能を示すことから、アントラセン前駆体化合物を成膜した場合は、次いで変換処理を施すことが好ましい。
ここで述べる変換処理とは、加熱や光照射、薬液との接触などによってアントラセン前駆体化合物の構造変化を引き起こし、アントラセン誘導体へと変換する処理である。この場合、構造変化を引き起こす因子としては、デバイスの特性を低下させないために、デバイスの構成材料の内部に残存しないものが好ましい。したがって、加熱や光照射などの処理や、揮発性化合物による処理などが好ましい。揮発性化合物とは、塩酸エーテル錯体、アンモニアガスなど、処理後に残らない酸やアルカリなどを言う。
加熱にはホットプレートやイナートオーブン、赤外線ヒーターなどを用いることができる。また、光照射により構造を変換させる場合には、紫外光〜可視光を用いるのが好ましい。ただし、用いる前駆体化合物によっては紫外光による望まない光反応が生じる場合もあるため、可視光を用いることがより好ましい。
また、薬液との接触により構造を変換させる場合には、薬液を溜めた貯蔵層に基板を浸漬する方法や薬液をスプレー塗布する方法などを例示できる。いずれの場合も薬液と接触させた後に加熱して変換を促進しても良い。また変換後に薬液を洗浄する工程を導入しても良い。
本発明で用いるアントラセン誘導体は劣化しやすいことから、アントラセン前駆体化合物に変換処理を施す場合は、変換後のアントラセン誘導体に他の物質が接触する要因が少ない、光照射及び/または加熱処理による構造変化が特に好ましい。さらに、これらの反応を行う際には、アントラセン誘導体の劣化を抑えるために、真空中もしくは不活性条件下にて行なうことが好ましい。
前記変換反応の具体例としてRetro Diels−Alder反応、キレトロピー反応、脱炭酸反応、カルボニル化合物からの脱カルボニル反応、脱酸素反応などが挙げられる。このような反応ごとに最適な変換処理を選択することができる。例えば、一般式(2)においてXがC=Oの場合は光照射による脱カルボニル反応、XがCHの場合は加熱によるエチレンの脱離反応などが挙げられ、脱カルボニル反応やエチレンの脱離反応は脱離基が気体であり、転写層中に残らないことから好ましく用いることができる。例えば、前述の化合物[79]、化合物[81]、化合物[83]は、光照射によって一酸化炭素が2分子脱離し、それぞれ化合物[32]、化合物[33]、化合物[34]へと変換される。
ドナー基板上のナフタセン誘導体の劣化の程度は、高速液体クロマトグラフィー−紫外吸光光度計法にて分析することで判断することができる。
この分析方法における具体的な分析条件を述べる。充填材にはシリカゲルを用い、中でもオクタデシル基結合型シリカゲル、オクチル基結合型シリカゲル、フェニル基結合型シリカゲルが好適に用いられ、これらはナフタセン誘導体およびナフタセン前駆体化合物の種類によって選択することができる。移動相にはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、蒸留水、リン酸水溶液、メタノールなどを用いることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。中でも、アセトニトリルのみ、もしくはアセトニトリル―リン酸水溶液混合溶媒を用いることで、高い分離能にて検出することができる。またこのときの移動相の送液圧力は35MPaから50MPa程度とすることが好ましい。
なお、本発明のアントラセン誘導体およびアントラセン前駆体化合物を含有する転写用ドナー基板は、有機EL素子の発光材料の転写基板として好適に用いられるが、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜を形成する材料として用いてもかまわない。
次に、本発明のドナー基板を用いて転写層をデバイス基板に転写する方法について説明する。図7は本発明におけるドナー基板への光照射方法の一例を示す断面図である。図7(a)において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する1種類の転写層37からなり、デバイス基板20は支持体21のみからなる。転写層37が存在する部分のみを狙ってレーザーに代表される光を照射しても良いが、図7(b)に示すように、ドナー基板30の支持体31側から光を入射して、転写層37の少なくとも一部と区画パターン34の少なくとも一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射することができる。このような配置をとることで、区画パターン34と転写層37との境界での温度低下が抑制されるので、境界に存在する転写材料を十分に加熱して転写し、均一な転写膜27を得ることができる。
図7(b)では、転写層37が加熱されて蒸発し、デバイス基板20の支持体21に転写膜27として堆積している課程を模式的に示している。この時点で光照射を止める(光照射部分の移動により、この部分の光照射を終了する)こともできるし、このまま光照射を継続して、転写層37の右側部分全てを転写し、その後、左側部分を転写することもできる。本発明では、材料や光照射条件を選べば、転写層37が膜形状を保持した状態でデバイス基板20の支持体21に到達するアブレーションモードを使用することもできる。しかし、材料へのダメージを低減する観点からは、転写層37が1〜100個の分子(原子)にほぐれた状態で蒸発し、転写される蒸着モードを使用する方が好ましい。
図7(c)は、転写層37の幅よりも広い光を、転写層37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射する、本発明の好ましい態様の1つを示すものである。この配置によれば目的とする転写膜27のパターンを1回の転写で効率よく得ることができる。あるいは、1回目の光照射で転写層37の膜厚の半分を転写し、2回目の光照射で残りの半分を転写することで、転写層37への負荷をより低減することもできる。
1枚のドナー基板30に対して光を光熱変換層33に複数回に分けて照射することで、転写層37を膜厚方向に複数回に分割して転写することは、本発明の特に好ましい転写方法である。これにより、転写層37だけでなく区画パターン34やデバイス基板20上に成膜された下地層などの最高到達温度を低下させられるので、ドナー基板の損傷やデバイスの性能低下を防止することができる。分割する場合、その回数nは限定されないが、少なすぎると上記の低温下効果が十分に発揮されず、多すぎると累積の加熱時間が長くなることによる弊害が生じるので、5回以上50回以下の範囲が好ましい。
1画素に対応する転写材料のみを部分的に転写する従来方式において、膜厚方向にn回に分割して転写しても、材料劣化を抑制する効果は得られるが、基板1枚あたりの処理時間が概略n倍になるために、生産性が大きく低下するという問題があった。しかし、本発明では、m個(mは2以上の整数)の転写材料を一括して転写することもできるから、生産性を維持することができる。特に、m≧nの条件を満たす幅の広い光を用いると、従来方式と同等以上の高い生産性を確保できるため好ましい。ディスプレイの製造では大型基板でも1枚あたり2分前後で処理する必要がある。レーザーのスキャン速度を標準的な0.6m/s、基板の一辺が3mと仮定した場合には、24回(12往復)のスキャンで2分を要することを考慮すると、分割回数nは15回以上30回以下の範囲が特に好ましい
転写層37R、37G、37Bは、それぞれ異なる蒸発速度の温度特性をもつことが珍しくない。したがって、例えば後述する図8に示すように幅の広い均一光を照射した場合に、転写層37Bは1回目の照射で全膜厚が転写されるが、37Rと37Gはそれぞれ半分の膜厚だけが転写されることがある。この場合には、2回目の照射によって37Rと37Gの残りの転写を完了させることが可能である。このとき、1回目の照射後にはドナー基板30上に転写層37Bは存在しないが、1回目と同じ配置で2回目の照射をすることができる。同様の考え方で、例えば、37Rを10回、37Gを7回、37Bを5回などに分割して転写することができる。また、初めから転写層37Bが形成されておらず、37Rと37Gのみが形成されたドナー基板を用いることもできる。
転写層37R、37G、37Bが有機EL素子の発光材料である場合には、転写材料がホスト材料とドーパント材料との混合物であり、それらが異なる蒸発速度の温度特性をもつことが珍しくない。例えば、ホスト材料と比較してドーパント材料の蒸発温度が低い場合に、低温かつ長時間の加熱ではドーパント材料が先に全て蒸発してしまうという現象が起こりやすい。一方、ある程度以上の高温加熱では、ホスト材料とドーパント材料が実質的に同じ比率のまま蒸発するフラッシュ蒸発と呼ばれる現象を利用できるようになる。本発明では、光照射時間と光照射強度だけでなく転写回数も制御することができるので、材料劣化を抑制しつつ、フラッシュ蒸発に準ずる適度な高速蒸発条件を探し出すことが比較的容易になる。したがって、転写前後でホスト材料とドーパント材料比率の変わらない転写を実現することが可能である。
また、1回の光照射で転写層37の膜厚の約半分をあるデバイス基板に転写し、残りの約半分を別のデバイス基板に転写するなど、1枚のドナー基板30を用いて2枚のデバイス基板20への転写を行うこともできる。各デバイス基板へ転写する転写材料の膜厚を調整すれば、1枚のドナー基板から3枚以上のデバイス基板への転写も可能である。
図7(c)で例示した光照射の配置において、図7(d)に示すように光照射の位置がδだけ変位したとても、転写層37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されることに変わりないので、同様に均一な転写膜27を得ることができる。
次に、本発明のドナー基板を用いてデバイスを製造する方法について説明する。本発明において、デバイスとは有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどをいう。有機TFTでは有機半導体層や絶縁層、ソース、ドレイン、ゲートの各種電極などを、有機太陽電池では電極などを、センサーではセンシング層や電極などを本発明によりパターニングすることができる。以下では、有機EL素子を例に挙げてその製造方法について説明する。
図8および図9は、本発明の薄膜パターニング方法の一例を示す断面図および平面図である。なお、本明細書中で使用する図は、カラーディスプレイにおける多数の画素を構成するRGB副画素の最小単位を抜き出して説明している。また、理解を助けるために、横方向(基板面内方向)に比較して縦方向(基板垂直方向)の倍率を拡大している。
図8において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する転写層37(有機ELのRGB各発光材料の塗布膜)からなる。有機EL素子(デバイス基板)10は、支持体11、その上に形成されたTFT(取出電極込み)12と平坦化膜13、絶縁層14、第一電極15、正孔輸送層16からなる。なお、これらは例示であるため、後述のように各基板の構成はこれらに限定されない。
ドナー基板30の区画パターン34と、デバイス基板10の絶縁層14との位置を合わせた状態で、両基板は対向するように配置される。ドナー基板30の支持体31側からレーザーを入射して光熱変換層33に吸収させ、そこで発生する熱により転写層37R、37G、37Bを同時に加熱・蒸発させ、それらをデバイス基板10の正孔輸送層16上に堆積させることで、発光層17R、17G、17Bを一括して転写、形成するものである。転写層37R、37G、37Bに挟まれる区画パターン34の全域と、転写層37R、37Bの外側に位置する区画パターン34の一部の領域が転写層37と同時に加熱されるようにレーザーを照射することが可能である。
さらに、本発明の好ましい形態の1つとして、区画パターンの厚さを転写材料より厚くする場合には、区画パターンのうち転写層より厚い部分の温度はそれほど上昇しない。区画パターンは下から加熱されるので、上の方は距離があるので暖まりにくいからである。そのため、区画パターンを通じてデバイス基板が高温に加熱されることもなく、区画パターンからの脱ガスの影響などもほとんどなく、デバイス性能が悪化しない。
また、本発明によれば、区画パターンに隔てられて存在する異なる転写材料に対して、区画パターンを跨ぐようにして同時に光を照射して加熱できるので、異なる転写材料を一括して転写できる。例えば、有機ELディスプレイにおけるRGB各発光層を本発明によりパターニングする場合は、RGB各発光層を一組としてまとめて転写することができるので、RGB各発光層に順次光を照射する必要があった従来法と比べてパターニング時間の短縮が可能になる。
光は光熱変換層で十分に吸収されるために、異なる光吸収スペクトルをもつRGB各発光層でも同一の光源を用いて同程度の温度に加熱することができ、透過光によりデバイス基板が加熱される心配もない。区画パターンが存在することで、隣接する異なる転写材料同士が混合したり、その境界位置の揺らぎがある部分の転写を排除できるので、一括転写してもデバイス性能を損なうことがない。
また、区画パターンはフォトリソグラフィ法などにより高精度にパターニングすることができるために、異なる転写材料の転写パターンの隙間を最小にすることができる。これは、より開口率を高めて耐久性に優れた有機ELディスプレイを作製できるという効果につながる。
図9は、図8におけるレーザー照射の様子をドナー基板30の支持体31側から見た模式図である。全面に形成された光熱変換層33があるために、支持体31(ガラス板)側から区画パターン34や転写層37R、37G、37Bは実際には見えないが、レーザーとの位置関係を説明するために点線にて図示した。レーザービームは矩形をしており、転写層37R、37G、37Bを跨ぐようにして照射され、かつ、転写層37R、37G、37Bの並びに対して垂直方向にスキャンされる。なお、レーザービームは相対的にスキャンされればよく、レーザーを移動させても、ドナー基板30とデバイス基板20とのセットを移動させても、その両方でもよい。
ディスプレイ用途でよく見られるように、転写層37R、37G、37Bの組がその並びのx方向にk回、その垂直のy方向にh回繰り返し形成されている場合は、例えば、m組(mは2以上k以下の数)の転写層37R、37G、37Bに光を同時照射しながら、y方向に光をスキャンすることで、転写時間を1/m程度に短縮することができる。
m=kの場合には、図10(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全幅を覆うような光を照射することで、1回のスキャンで全転写材料を一括転写することもできる。この配置では、ドナー基板30に対する光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。図10(b)に示すように、基板上に転写領域38が複数存在する場合には、それらを一括転写することも可能である。デルタ配列と呼ばれるように、RGBの各副画素が一直線に並んでいない場合でも、照射光を直線的にスキャンできるために、容易に転写を実施できる。
m<kの場合は、例えば図11(a)に示すようにドナー基板30の転写領域38の半分程度の幅を覆うような光を照射し、図11(b)に示すように次のスキャンで残りの半分に光を照射し、2回のスキャンで全転写材料を転写することができる(m≒k/2の場合)。さらに、図12に示すように、スキャン方向に段違いの位置関係にある2つの光を同時にスキャンすることで、上記2回のスキャンと同様に前転写材料層37を転写することもできる。光源の最大出力や光の均一性などの制約から転写領域38の全幅を覆う1つの光を得ることが難しい場合でも、このようにすることで、擬似的に1回のスキャン(m=k)と同様に全転写材料を一括転写することができる。もちろん、図13に示すように、光の幅をさらに狭くして、数を増やすことでも同様の効果を得ることができる。
複数の光は、図14に示すように、オーバーラップさせることもできる。光が全転写領域を最終的に照射すればよく、照射光の幅や、照射の順番、オーバーラップの度合いなどは、多様な転写条件から最適なもの選択することができる。中でも、2種類以上の転写層37のうち特定の転写材料層の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。図14に模式的に示したように、光の境界位置では不可避的に温度勾配が生じて、その影響は転写層37の種類によって少しずつ異なる。ランダムな位置で光をオーバーラップさせると、異なるムラの状態をもつ転写膜17が2種類以上生じることになるので、それらを同時に抑制することが難しくなる。一方、温度勾配の影響が特定の転写膜に限定されれば、ムラが発生しにくい転写材料層を選択し、さらにそのムラを最小限にする光照射条件を選択することができるので、影響を最小限に抑制することが可能になる。
特定の転写材料層の選択方法は特に限定されない。最終的に得られるデバイスにおいてムラが最小化されるように、転写層37の中で転写温度が最低(または最高)のものや、熱分解温度が最高(または最低)のもの、あるいは膜厚が最も薄い(または最も厚い)ものなど、目的に応じて選択すればよい。
2種類以上の異なる転写材料がそれぞれ、ホスト材料とドーパント材料のような2種類以上の材料の混合物からなる場合は、該2種類以上の材料の昇華温度の差が最も小さい組み合わせの転写材料の転写層37(例えば、37G)の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。有機EL素子では特にホスト材料とドーパント材料との組成比が発光性能に大きく影響することが知られているが、上記の方法によれば、オーバーラップ位置における温度勾配の影響で転写膜17の組成比が変化する割合を最も小さくして、転写膜17に生じるムラを抑制し、良好な発光特性を保つことができる。
また、2種類以上の異なる転写層の中に1種類の材料からなる転写層が含まれている場合は、該1種類の材料からなる転写層37の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。この場合、この転写材料層では組成比の変化を考慮しなくてもよいので、オーバーラップ位置における温度勾配の影響が極めて小さくなる。
上記の一括転写の例において、転写層37R、37G、37Bが異なる蒸発温度(蒸気圧の温度依存性)を有する場合は、最高の蒸発温度をもつ転写材料に合わせて、1回の光照射で一括転写をしてもよい。逆に、例えば、転写層37Rが最低の蒸発温度をもつ場合には、1回の光照射で転写層37Rは全部、37G、37Bは一部を転写しておき、再度の光照射により37G、37Bの残りを転写してもよく、さらに、3回以上の転写に分けてもよい。転写時間を1/m程度に短縮できるので、同じ時間をかけてm回の転写に分けることで、転写層37へのダメージをより軽減することが可能になる。転写プロセスに割ける時間と転写材料へのダメージを考慮しながら、多様な転写条件から最適なもの選択することができる。
図15は、本発明の一括転写の別の例を示すものである。転写層37Gの幅と区画パターン34の幅との合計に相当する幅の光を、転写層37R、37Gに跨るように照射することで、転写層37Rおよび37Gのそれぞれ一部を一括転写する。照射光の幅の分だけ次の照射光の位置をシフトさせながら、この転写方法を何回も繰り返すことによって、最終的に全転写層37R、37G、37Bの転写を完了する。この方法では、照射光とドナー基板との位置関係を厳密に制御する必要がない。さらに、次の照射光の位置を厳密に前の照射光の幅の分だけずらす必要はなく、オーバーラップさせてもよい。光が全転写領域を最終的に照射すればよく、照射光の幅や、照射の順番、オーバーラップの度合いなどは特に限定されるものではない。前述のデルタ配列でも照射光を直線的にスキャンすることができる。
上記一括転写の大きな効果は、既に述べたとおり、光を照射する位置を従来法ほど厳密に制御する必要がなくなる点である。例えば、大気中に置かれた光源から真空中に置かれたドナー基板30に光を照射する場合には、従来法では、大気と真空とを隔てる透明窓によって生じる微小な光路変化が無視できないので、光源や光のスキャン機構を全て真空中に入れる必要があり、大きな装置上の負担を強いるという問題があった。一方、本発明の方法では上記の光路変化は無視でき得るので、光照射装置だけでなく、転写プロセス装置全体の機構も簡素化できる。
また、上記一括転写には別の効果がある。幅の広い光の照射範囲内では、レーザー転写で問題となってきた横方向の熱拡散が起きないので、レーザーを比較的低速でスキャンするなどして、光を比較的長時間照射することが可能になる。そのため、転写材料の最高到達温度の制御がより容易となり、転写時に転写材料にダメージを与えることなく高精度パターニングできるので、デバイス性能の低下を最小限に抑制できる。また、転写材料へのダメージが低減されることは、同時に区画パターンへのダメージも低減されることになり、区画パターンを有機材料で形成しても劣化が起こりにくくなる。そのため、ドナー基板を複数回に渡って再利用でき、パターニングに掛かるコストを低減できる。
上記では、矩形の光をy方向にスキャンする例を挙げたが、図16に示すように、転写層37R、37G、37Bの並びのx方向にスキャンすることもできる。また、スキャン速度や光強度は一定である必要はなく、x方向へのスキャンでは、例えば、転写層37R、37G、37Bの各蒸発温度に最適な条件になるように、スキャン速度や光強度をスキャン中に変調することもできる。スキャン方向は、x方向あるいはy方向の区画パターン34に沿う方向が好ましいが、特に限定されるものではなく、斜め方向にスキャンすることもできる。
スキャン速度は特に限定されないが、0.01〜2m/sの範囲が一般的に好ましく使用される。光の照射強度が比較的小さく、より低速でスキャンすることで転写材料へのダメージを低減する場合には、スキャン速度は0.6m/s以下、さらに0.3m/s以下であることが好ましい。上記の分割転写のように、分割回数を増やすことで全体の低温下を図る場合には、1回のスキャン当たりの投入熱量を減らすために、スキャン速度は比較的高速の0.3m/s以上であることが好ましい。
照射光の光源としては、容易に高強度が得られ、照射光の形状制御に優れるレーザーを好ましい光源として例示できるが、赤外線ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプなどの光源を利用することもできる。レーザーでは、半導体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなど公知のレーザーが利用できる。本発明における目的の1つは、転写材料へのダメージを低減することであるから、短時間に高強度の光が照射される間欠発振モード(パルス)レーザーより、連続発信モード(CW)レーザーの方が好ましい。
照射光の波長は、照射雰囲気とドナー基板の支持体における吸収が小さく、かつ、光熱変換層において効率よく吸収されれば特に限定されない。従って、可視光領域だけでなく紫外光から赤外光まで利用できる。ドナー基板の好適な支持体の材料を考慮すると、好ましい波長領域として、300nm〜5μmを、更に好ましい波長領域として、380nm〜2μmを例示することができる。
照射光の形状は上記で例示した矩形に限定されるものではない。線状、楕円形、正方形、多角形など転写条件に応じて最適な形状を選択できる。複数の光源から重ね合わせにより照射光を形成してもよいし、逆に、単一の光源から複数の照射光に分割することもできる。図17に示すように、スキャン方向の幅が階段状の光をスキャンすることで転写層37R、37G、37Bへの各照射時間(加熱時間)を調整し、転写層37R、37G、37Bの各蒸発温度に最適化した一括転写を実施することができる。照射光の強度ムラに対応して光のスキャン方向の幅を変調して、照射エネルギー密度(照射強度×照射時間)を一定にすることもできる。また、図18に示すように、矩形の光を斜めに照射する配置でy方向にスキャンしてもよい。照射光の形状(幅)が固定されている場合に、光学系の大きな変更を必要とせずに、多様なピッチを有する転写に対応することができる。
また、図19(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全領域を覆う光を照射することもできる。この場合には、照射光をスキャンさせることなく全転写材料を一括転写することができる。さらに、図19(b)に示すように、ドナー基板30の転写領域38を部分的に覆う光を照射し、次に未照射の部分を照射するステップ照射を使用してもよい。この場合も、照射光の前後の位置をオーバーラップさせてもよいので、光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。
照射強度や転写材料の加熱温度の好ましい範囲は、照射光の均一性、照射時間(スキャン速度)、ドナー基板の支持体や光熱変換層の材質や厚さ、反射率、区画パターンの材質や形状、転写材料の材質や厚さなど様々な条件に影響される。本発明では、光熱変換層に吸収されるエネルギー密度が0.01〜10J/cmの範囲となり、転写材料が220〜400℃の範囲に加熱される程度の照射条件を整えることが目安となる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定され
るものではない。
HPLC((株)島津製作所製)の充填材にはオクチル基結合型シリカゲル、移動相にアセトニトリルを用いて測定を行った。
実施例1
ドナー基板を以下のとおり作製した。支持体として無アルカリガラス基板を用い、洗浄
/UVオゾン処理後に、光熱変換層として厚さ0.2μmの金(第6周期元素、第一イオン化エネルギー:9.21eV)をスパッタリング法により全面形成した。次に、前記光熱変換層をUVオゾン処理した後に、上にポジ型ポリイミド系感光性コーティング剤(東レ株式会社製、DL−1000)をスピンコート塗布し、プリベーキング、UV露光した後に、現像液(東レ株式会社製、ELM−D)により露光部を溶解・除去した。
このようにパターニングしたポリイミド前駆体膜をホットプレートで350℃、10分
間ベーキングして、ポリイミド系の区画パターンを形成した。この区画パターンの高さは
2μmで、断面は順テーパー形状であった。区画パターン内部には幅80μm、長さ28
0μmの光熱変換層を露出する開口部が、それぞれ100、300μmのピッチで配置さ
れていた。この基板上に、化合物[34]を0.4%含むクロロホルム溶液をインクジェット塗布・乾燥し、区画パターン内(開口部)に化合物[34]からなる平均厚さ40nmの転写材料を形成した。このとき使用した化合物[34]のクロロホルム溶液の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.05であった。
また、ドナー基板上の転写材料の純度を同様に分析、比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.15であった。
実施例2
光熱変換層として支持基板上にチタン(第4周期元素、第一イオン化エネルギー:6.83eV)を0.2μm、金を0.05μmの順に全面形成した以外は実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.20であった。
実施例3
光熱変換層として支持基板上にタンタル(第6周期元素、第一イオン化エネルギー:7.70eV)を0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.18であった。
実施例4
光熱変換層として支持基板上にクロム(第4周期元素、第一イオン化エネルギー:6.76eV)を0.2μm、白金(第6周期元素、第一イオン化エネルギー:8.96eV)を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.25であった。
実施例5
光熱変換層として支持基板上にタンタルを0.2μm、イリジウム(第6周期元素、第一イオン化エネルギー:9.20eV)を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.18であった。
実施例6
光熱変換層として支持基板上に金とタンタルの合金(重量比で金:タンタル=80:20)からなる薄膜をスパッタリングによって全面形成した以外は、実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.32であった。
実施例7
転写材料として化合物[34]の代わりに化合物[32]を用いた以外は実施例1と同様にドナー基板を作製した。用いた化合物[32]の溶液の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.12であった。また、ドナー基板上の転写材料の純度を同様に分析、比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.40であった。
実施例8
光熱変換層として支持基板上にチタンを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は実施例7と同様にしてドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.44であった。
実施例9
光熱変換層として支持基板上にニオブ(第5周期元素、第一イオン化エネルギー:6.88eV)を0.2μm、白金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例7と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.50であった。
実施例10
光熱変換層として支持基板上に白金とイリジウムの合金(重量比で白金:イリジウム=50:50)からなる薄膜をスパッタリングによって全面形成した以外は、実施例7と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.40であった。
実施例11
化合物[34]の代わりに化合物[33]を用いた以外は実施例1と同様にしてドナー基板を作製した。用いた化合物[33]の溶液の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.15であった。また、ドナー基板上の転写材料の純度を同様に分析、比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.31であった。
実施例12
光熱変換層として支持基板上にモリブデン(第5周期元素、第一イオン化エネルギー:7.13eV)を0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例11と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.28であった。
実施例13
光熱変換層として支持基板上にタンタルを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例11と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.28であった。
実施例14
光熱変換層として支持基板上にモリブデンを0.2μm、パラジウム(第5周期元素、第一イオン化エネルギー:8.33eV)を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例11と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.35であった。
実施例15
光熱変換層として支持基板上に金とタングステン(第6周期元素、第一イオン化エネルギー:7.98eV)の合金(重量比で金:タングステン=80:20)からなる薄膜をスパッタリングによって全面形成した以外は、実施例11と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは0.42であった。
実施例16
化合物[34]の代わりに化合物[87]を用い、実施例1と同様にドナー基板に薄膜を作製した。このとき、用いた化合物[87]の溶液の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[87]100に対して化合物[83]以外のピークは0.20であった。続けて、真空中にて、ドナー基板に青色発光ダイオード(中心波長460nm、半値幅5nm)を1時間照射して化合物[34]へと構造変換したものをドナー基板とした。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.40であった。
実施例17
光熱変換層として支持基板上にチタンを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.38であった。
実施例18
光熱変換層として支持基板上にモリブデンを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.44であった。
実施例19
光熱変換層として支持基板上にニオブを0.2μm、白金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.50であった。
実施例20
光熱変換層として支持基板上にタンタルを0.2μm、イリジウムを0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.45であった。
実施例21
光熱変換層として支持基板上に白金とイリジウムの合金(重量比で白金:イリジウム=50:50)からなる薄膜をスパッタリングによって全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.38であった。
実施例22
光熱変換層として支持基板上に金とタンタルの合金(重量比で金:タンタル=80:20)からなる薄膜をスパッタリングによって全面形成した以外は、実施例16と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは0.69であった。
実施例23
化合物[34]の代わりに化合物[83]を用い、光熱変換層として支持基板上にモリブデンを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例1と同様にドナー基板に薄膜を作製した。このとき、用いた化合物[83]の溶液の純度をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[83]100に対して化合物[83]以外のピークは0.20であった。続けて、真空中にて、ドナー基板に青色発光ダイオード(中心波長460nm、半値幅5nm)を1時間照射して化合物[32]へと構造変換したものをドナー基板とした。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.53であった。
実施例24
光熱変換層として支持基板上にタンタルを0.2μm、金を0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例23と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.63であった。
実施例25
光熱変換層として支持基板上にモリブデンを0.2μm、パラジウムを0.05μmの順にスパッタリングによって薄膜を全面形成した以外は、実施例23と同様にドナー基板に薄膜を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは0.71であった。
比較例1
光熱変換層としてチタンを全面形成した以外は実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは4.02であった。
比較例2
光熱変換層としてモリブデンを全面形成した以外は実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、HPCLでの検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは3.68であった。
比較例3
光熱変換層としてタンタルを全面形成した以外は実施例1と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは1.90であった。
比較例4
光熱変換層としてタンタルを全面形成した以外は実施例7と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[32]100に対して化合物[32]以外のピークは2.33であった。
比較例5
光熱変換層としてタンタルを全面形成した以外は実施例11と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[33]100に対して化合物[33]以外のピークは2.00であった。
比較例6
光熱変換層としてチタンを全面形成した以外は実施例16と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは4.38であった。
比較例7
光熱変換層としてモリブデンを全面形成した以外は実施例16と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは4.00であった。
比較例8
光熱変換層としてタンタルを全面形成した以外は実施例16と同様にドナー基板を作製した。ドナー基板上の転写材料をHPLCにて分析し、検出ピークの面積を比較したところ、化合物[34]100に対して化合物[34]以外のピークは2.30であった。
上記結果を表1にまとめた。
Figure 2012212662
10 有機EL素子(デバイス基板)
11 支持体
12 TFT(取り出し電極含む)
13 平坦化層
14 絶縁層
15 第一電極
16 正孔輸送層
17 発光層
20 デバイス基板
21 支持体
27 転写膜
30 ドナー基板
31 支持体
33 光熱変換層
34 区画パターン
35 撥液処理層
37 転写層

Claims (4)

  1. 基板と、基板上に形成された光熱変換層と、前記光熱変換層上に形成された転写層を含む転写用ドナー基板であって、前記光熱変換層中に、第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上である元素を含み、かつ前記転写層中に下記一般式(1)で表されるアントラセン誘導体または下記一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を含有することを特徴とする転写用ドナー基板。
    Figure 2012212662
    一般式(1)および(2)中、R〜R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、ホスフィンオキサイド基、並びに隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。一般式(2)中、XはC=O、CH、OまたはCHR11から選ばれる原子または原子団である。R11はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアシル基から選ばれる置換基であり、互いに結合を有して環を形成しても良い。)
  2. 前記光熱変換層が複数層であって、前記複数層のうち少なくとも前記転写層と接する層が第5または第6周期に属し第一イオン化エネルギーが8.0eV以上である元素を含有する請求項1記載の転写用ドナー基板。
  3. 請求項1または2記載の転写用ドナー基板をデバイス基板と対向させる工程と、前記光熱変換層に光を照射する工程を有するデバイスの製造方法。
  4. 前記転写層が一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を含有し、前記一般式(2)で表されるアントラセン前駆体化合物を前記一般式(1)で表されるアントラセン誘導体に変換する工程を有する請求項3記載のデバイスの製造方法。
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