JP2010170708A - パターニング方法およびこれを用いたデバイスの製造方法 - Google Patents

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卓哉 西山
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Abstract

【課題】有機EL材料をはじめとした薄膜の特性を劣化させることなく、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能とするパターニング方法、および、かかるパターニング方法を使用するデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に光熱変換層と転写材料が形成されたドナー基板をデバイス基板と対向配置し、光を光熱変換層に照射することで転写材料をデバイス基板に転写するパターニング方法であって、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とするパターニング方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜のパターニング方法、および、かかるパターニング方法を使用するデバイスの製造方法に関する。
有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが両極に挟まれた有機発光層内で再結合するものである。コダック社のC.W.Tangらによって有機EL素子が高輝度に発光することが示されて以来(非特許文献1参照)、多くの研究機関で検討が行われてきた。
この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光層に種々の有機材料を用いることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色をはじめとした多様な発光色を得ることが可能であることから、カラーディスプレイとしての実用化が進んでいる。例えば、図1に示すアクティブマトリクス型カラーディスプレイにおいては、少なくとも発光層17R、17G、17Bを高精度にパターニングする技術が要求される。また、高性能有機EL素子を実現するためには多層構造が必要であり、典型的な膜厚が0.1μm以下である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順に積層する必要がある。
従来、薄膜の微細パターニングにはフォトリソ法、インクジェット法や印刷法などのウェットプロセスが用いられてきた。しかしながら、ウェットプロセスでは、先に形成した下地層の上にフォトレジストやインクなどを塗布した際に、極薄である下地層の形態変化や望ましくない混合などを完全に防止することが困難であり、使用できる材料が限定される。また、溶液から乾燥させることで形成した薄膜の画素内での膜厚均一性、および、基板内の画素間均一性を達成することが難しく、膜厚ムラに伴う電流集中や素子劣化が起きるために、ディスプレイとしての性能が低下するという問題があった。
ウェットプロセスを用いないドライプロセスによるパターニング方法としてマスク蒸着法が検討されている。実際に実用化されている小型有機ELディスプレイの発光層は専ら本方式でパターニングされている。しかしながら、蒸着マスクは金属板に精密な穴を開ける必要があるために、大型化と精度の両立が困難であり、また、大型化するほど基板と蒸着マスクとの密着性が損なわれる傾向にあるために、大型有機ELディスプレイへの適用が難しかった。
ドライプロセスで大型化を実現するために、あらかじめドナーフィルム上の有機EL材料をパターニングしておき、デバイス基板とドナーフィルム上の有機EL材料を密着させた状態で、ドナーフィルム全体を加熱することで有機EL材料を転写させる方法が開示されている(特許文献1参照)。さらに、区画パターン(隔壁)内にパターニングされた有機EL材料をデバイス基板に接しない配置で対向させ、ホットプレートによりドナー基板全体を加熱することで有機EL材料を蒸発させ、デバイス基板に堆積させる蒸着転写法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、上記手法ではドナー基板全体が加熱されて熱膨張するために、ドナー基板上にパターニングされた有機EL材料のデバイス基板に対する相対位置が変位し、しかも大型化するほど変位量が大きくなるために高精度パターニングが難しいという問題があった。さらに、近距離で対向させたデバイス基板が輻射により加熱されたり、区画パターンがある場合には、区画パターンからの脱ガスの影響などを受けたりするために、デバイス性能が悪化するという問題があった。
ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ方法として、ドナー基板上に光熱変換層を形成し、その上に有機EL材料を熱蒸着により全面成膜し、光熱変換層に高強度レーザーを部分照射することにより発生した熱を利用して、全面に形成された、または区画パターンを用いずにR、G、Bを塗り分けた有機EL材料の一部分をデバイス基板にパターン転写する選択転写方式が開発されている(特許文献3〜4参照)。しかしながら、発生した熱は横方向にも拡散するので、レーザー光の幅方向で温度ムラが生じ、レーザー照射範囲より広い領域の有機EL材料が転写され、その境界も明確ではない。これを防ぐためには、極めて短時間に高強度のレーザーを照射する方法が考えられる。また、レーザー光の幅方向(スキャンと垂直方向)の強度を変化させる技術も開示されている(特許文献5〜6)。
特開2002−260854号公報 特開2000−195665号公報 特許第3789991号公報 特開2005−149823号公報 特許第4052852号公報 特開2008−288143号公報
"Applied Physics Letters"、(米国)、 1987年、51巻、12号、913−915頁
しかし、極めて短時間に高強度のレーザーを照射すると、有機EL材料は極めて短時間内により高温に加熱されることになる。したがって、有機EL材料が分解温度以上に達する確率が高くなり、結果としてデバイス性能が低下するという問題があった。また、特許文献5〜6記載の方法はいずれも幅方向の温度ムラを低減するのが目的であり、転写材料の最高到達温度自体を正確に制御するものではない。
このように、従来技術においては、転写材料の温度をコントロールすることが難しく、結果として、大型化と高精度を両立させながら、有機EL材料に損傷を与えることなく安定に微細パターニングを実現することは困難であった。
本発明はかかる課題を解決し、有機EL材料をはじめとした薄膜の特性を劣化させることなく、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能とするパターニング方法、および、かかるパターニング方法を使用するデバイスの製造方法を提供することが目的である。
すなわち、本発明は、基板上に光熱変換層と転写材料が形成されたドナー基板をデバイス基板と対向配置し、光を光熱変換層に照射することで転写材料をデバイス基板に転写するパターニング方法であって、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とするパターニング方法である。
本発明によれば、有機EL材料をはじめとした転写材料が目標温度近傍でより長時間加熱されるようになるため、転写材料への熱的負荷を軽減しつつ、転写に必要な熱量を与えることができ、薄膜の特性を劣化させることなく大型化かつ高精度の微細パターニングが可能となる。
有機EL素子が形成されたデバイス基板の構造の一例を示す断面図。 ドナー基板を用いてデバイス基板に転写膜を形成する本発明の実施形態の例を示す断面図。 図2における平面図。 本発明の実施形態とは異なる光の照射強度と転写材料温度の時間変化を説明する概念図。 本発明の実施形態における光の照射強度と転写材料温度の時間変化を説明する概念図。 本発明の実施形態における光照射方法の別の一例を示す斜視図。 転写法によるパターニング方法の一例を示す断面図。 転写法による一括転写のパターニング方法の一例を示す断面図。 転写法における光照射方法の一例を示す斜視図。 転写法における光照射方法の別の一例を示す平面図。 転写法における照射光の成形方法の一例を示す斜視図。 転写補助層の一例を説明する断面図。 ドナー基板の別の一例を説明する断面図。 実施例および比較例で用いた照射光の強度変化を示すグラフ。 実施例および比較例で計算した光熱変換層の温度変化を示すグラフ。
図2および図3は、本発明の薄膜パターニング方法の一例を示す断面図および平面図である。なお、本明細書中で使用する多くの図は、カラーディスプレイにおける多数の画素を構成するRGB副画素の最小単位を抜き出して説明している。また、理解を助けるために、横方向(基板面内方向)に比較して縦方向(基板垂直方向)の倍率を拡大している。
図2および図3において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する転写材料37(有機ELのRGB各発光材料の塗布膜)からなる。有機EL素子(デバイス基板)10は、支持体11、その上に形成されたTFT(取出電極込み)12と平坦化膜13、絶縁層14、第一電極15、正孔輸送層16からなる。なお、これらは例示であるため、後述のように各基板の構成はこれらに限定されない。ドナー基板30の区画パターン34と、デバイス基板10の絶縁層14との位置を合わせた状態で、両基板は対向するように配置される。ドナー基板30の支持体31側からレーザーを入射して光熱変換層33に吸収させ、そこで発生する熱により転写材料37R、37G、37Bを同時に加熱・蒸発させ、それらをデバイス基板10の正孔輸送層16上に堆積させることで、発光層17R、17G、17Bを一括して転写、形成する例である。ここでは、転写材料37R、37G、37Bに挟まれる区画パターン34の全域と、転写材料37R、37Bの外側に位置する区画パターン34の一部の領域が転写材料37と同時に加熱されるようにレーザーを照射している。
図3は、図2におけるレーザー照射の様子をドナー基板30の支持体31側から見た模式図である。全面に形成された光熱変換層33があるために、支持体31(ガラス板)側から区画パターン34や転写材料37R、37G、37Bは実際には見えないが、レーザーとの位置関係を説明するために点線にて図示した。レーザービームは矩形をしており、転写材料37R、37G、37Bを跨ぐようにして照射され、かつ、転写材料37R、37G、37Bの並びに対して垂直方向にスキャンされる。なお、レーザービームは相対的にスキャンされればよく、レーザーを移動させても、ドナー基板30とデバイス基板20とのセットを移動させても、その両方でもよい。
本発明では、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とする。ここで、照射領域において照射される光の強度が経時的に非対称に変化するとは以下のように定義される。すなわち、照射領域のある一点において、照射される光の強度を照射開始時から終了時まで観測して、照射光強度を縦軸に、時間を横軸にしてグラフを描いたときに、左右対称となる軸が存在しない場合を、強度変化が経時的に非対称であると定義する。
このように光を照射すると、転写材料(あるいは光熱変換層)の温度を目標温度近傍でほぼ一定となるよう調整することができるため、転写材料への熱的負荷を軽減しつつ、転写に必要な熱量を与えることができる。この点については後に詳しく説明する。
照射される光の強度を経時的に非対称に変化させるための具体的態様について説明する。図3に示すように、照射光をスキャン照射する場合を考える。照射光はスキャン方向(y方向)に一定の長さをもつため、その長さの範囲で照射強度(パワー密度)を空間的に調整することが可能である。そこで、強度分布がスキャン方向について非対称である光を用い、そのような光をスキャン照射すれば、そのように照射された領域のある一点に着目すると、その一点での照射強度の経時変化は非対称となる。なお、強度分布がスキャン方向について非対称であるとは、照射光の幅方向に垂直な断面の強度プロファイルに左右対称軸が存在しない場合と定義する。
次に、本発明のパターニング方法により転写材料(あるいは光熱変換層)の温度を目標温度近傍でほぼ一定となるよう調整することができる点について説明する。まず、図4は、強度分布がスキャン方向に対して一定である光を一定速度で照射した従来方式の場合に、(a)照射領域のある一点での照射強度の時間変化について示した概念図と、(b)その場合の転写材料(あるいは光熱変換層)の温度変化を示す概念図である。照射中は温度が徐々に上昇し、照射が終了すると直ちに温度が下降を始める。照射時間内に目標量の蒸発を終了させるのに必要な蒸発速度を得るための目標温度(転写温度)近傍またはそれ以上が得られる期間は照射時間のうちのごく一部の期間であることがわかる。この短い期間内に温度を正確に調整することは難しい。また、図4(c)のようにより高い照射強度の光を用いて目標温度近傍またはそれ以上が得られる期間を長くすると、図4(d)のように目標温度とピーク温度との差が大きくなるので、転写材料が目標温度よりも高温にさらされ、分解する可能性が高くなる。
これに対し、図5は、強度分布がスキャン方向について非対称である光を一定速度で照射した場合の、(a)照射領域のある一点での照射強度の時間変化について示した概念図と、(b)その場合の転写材料(あるいは光熱変換層)の温度変化を示す、本発明の好適な一例を示す概念図である。このような方法であると、転写材料(あるいは光熱変換層)の温度が目標温度近傍でほぼ一定となるよう調整することができる。図5の場合は、スキャンの初期において強度を急激に立ち上げるよう、スキャン方向の先頭側に強度ピークを有するような強度分布の光を用いることで、温度をより速やかに上昇させ、目標温度近傍で一定に近づけている。かつ、スキャンの後半では強度を緩やかに(非対称に)下げていき、転写材料(あるいは光熱変換層)の温度が目標温度近傍である期間が長くなるように設計している。これにより、強度の強い光を照射する期間を短くしつつ転写に十分な温度を長期間保つことができるようになり、転写材料への熱的負担を軽減させることができ、さらに転写に必要な処理時間を短縮することも期待できる。転写材料へのダメージを低減できることは、図2および図3に例示した配置では、同時に区画パターンへのダメージも低減できることを意味するので、区画パターンを有機材料により形成した場合でも、区画パターンが劣化せず、ドナー基板の再利用回数を増大できる。
転写材料(あるいは光熱変換層)が目標温度近傍で、より長時間加熱されるようにするためには、照射される光の強度変化の1次微分が正またはゼロである領域より、負である領域の方が長いことが好ましい。ここで強度変化の1次微分とは、照射強度を縦軸に、時間を横軸にして描いたグラフにおける時間の1次微分と考えることができる。図5(a)の例では、照射強度のピーク位置が波形の中心位置よりも左側(初期側)に偏っていることに対応する。このようにすると、目標温度への到達時間をより早めることができ、より長時間の目標温度近傍での加熱が可能になる。
さらに、照射される光の強度変化の1次微分が負である領域において、その2次微分が正であることがより好ましい。2次微分の考え方も1次微分と同様である。図5の例では、照射強度のピーク位置よりも右側の波形を、下に凸に調整することに対応する。このようにすると、目標温度へ到達した後も、目標温度近傍に温度を維持することが容易になる。
このような波形は関数を用いて自由に設計することができる。関数は、多項式関数(一次関数、二次関数など)、三角関数、無理関数、分数関数、指数関数、対数関数、ガウス関数などや、それらの複合系を用いてもよい。関数は複数組み合わせることもでき、例えば、照射開始地点から強度がピークに達するまでの「立ち上がり区間」と、ピーク位置から照射終了地点までの「立ち下がり区間」を別々の関数で表現することができる。「立ち上がり区間」では、1次関数やレーザーが本質的に有するガウス関数、あるいはそれらの組み合わせが実現容易性の点で好ましい。また、光の強度変化の1次微分が負である「立ち下がり区間」の領域において、その2次微分を正とするには、指数関数や分数関数を用いることが好ましい。指数関数や分数関数などでは変数である時間のべき乗数を調整することで、より詳細な調整が可能になる。
次に、照射される光の強度を経時的に非対称に変化させるための別の具体的態様について説明する。図6(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全領域を覆う光を照射する場合や、図6(b)に示すように、ドナー基板30の転写領域38を部分的に覆う光を照射し、次に未照射の部分を照射するステップ照射する場合を考える。図6(a)の場合には、照射光をスキャンさせることなく全転写材料を一括転写することができる。また、図6(b)の場合も、照射光の前後の位置をオーバーラップさせてもよいので、光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。
これらの例では、光の照射強度を空間的に変化させるのではなく時間的に変化させる、すなわち、照射する光自体の強度を経時的に非対称に変化させることで、同様の効果を得ることができる。具体的には、照射する全領域について強度が一様な光を用いて、その経時的変化をちょうど図5(a)に示されるような強度変化とすることにより、照射領域のある一点での照射強度の経時変化についても図5(a)のようにすることができる。
なお、本発明のパターニング方法を利用して有機EL素子のようなデバイスを製造する場合に、すべての転写材料を本発明の方法で転写させるのが好ましいことはもちろんであるが、図4のような従来方式との併用を否定するものではない。例えば、耐熱性に優れた転写材料や、短時間の照射でも十分に転写させられる材料が含まれている場合は、その部分については従来方式を利用することも可能である。
ところで、ドナー基板上に転写材料以外の異物である区画パターンを形成することは、区画パターン自体が剥離して転写されたり、区画パターンから転写材料に不純物が混入する恐れがあるために、本来は好ましくない。まして、ドナー基板上に光熱変換層を設置して光を吸収させ、発生した熱により転写材料を転写させる方式のように、転写材料が比較的高温に加熱される方式において、異物である区画パターンを積極的に加熱するように光を照射することは、デバイスの性能を悪化させる可能性が高かった。しかし、本発明の光照射方法によれば、区画パターンに対しても不必要な加熱を防止できるので、あえて転写材料と同時に区画パターンを加熱するように光を照射することもできる。そのようにすれば、区画パターンの境界に存在する転写材料をも十分に加熱して転写することで、より均一な転写が実現できる。さらに、区画パターンの剥離や区画パターンからの脱ガスなどに起因するデバイス性能への悪影響を最小限に抑制できる。
また、区画パターンに隔てられて存在する異なる転写材料に対して、区画パターンを跨ぐようにして同時に光を照射して加熱すると、異なる転写材料を一括して転写できるため好ましい。例えば、図1に示した有機ELディスプレイにおけるRGB各発光層を本発明によりパターニングする場合は、RGB各発光層を一組としてまとめて転写することができるので、RGB各発光層に順次光を照射する必要があった従来法と比べてパターニング時間の短縮が可能になる。区画パターンが存在することで、隣接する異なる転写材料同士が混合したり、その境界位置の揺らぎがある部分の転写を排除できるので、一括転写してもデバイス性能を損なうことがない。また、区画パターンはフォトリソグラフィ法などにより高精度にパターニングすることができるために、異なる転写材料の転写パターンの隙間を最小にすることができる。これは、より開口率を高めて耐久性に優れた有機ELディスプレイを作製できるという効果につながる。
以下では、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)照射光
図7は区画パターンが形成されたドナー基板を例にした、好ましい光照射方法の一例を示す断面図である。図7(a)において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する1種類の転写材料37からなり、転写基板20は支持体21のみからなる。図7(b)に示すように、ドナー基板30の支持体31側からレーザーに代表される光を入射して、転写材料37の少なくとも一部と区画パターン34の少なくとも一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射すると、区画パターン34と転写材料37との境界での温度低下が抑制されるので、境界に存在する転写材料を十分に加熱して転写し、均一な転写膜27を得ることができる。
図7(b)では、転写材料37が加熱されて蒸発し、転写基板20の支持体21に転写膜27として堆積している課程を模式的に示している。この時点で光照射を止める(光照射部分の移動により、この部分の光照射を終了する)こともできるし、このまま光照射を継続して、転写材料37の右側部分全てを転写し、その後、左側部分を転写することもできる。本発明では、光照射条件の改良により転写材料へのダメージを低減する観点から、転写材料37が1〜100単位の分子(原子)にほぐれた状態で蒸発し、転写される蒸着モードを使用する方が好ましい。
図7(c)は、転写材料37の幅よりも広い光を、転写材料37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射する別の好ましい形態を示すものである。この配置によれば目的とする転写膜27のパターンを1回の転写で効率よく得ることができる。あるいは、1回目の光照射で転写材料37の膜厚の半分を転写し、2回目の光照射で残りの半分を転写することで、転写材料37への負荷をより低減することもできる。また、1回の光照射で転写材料37の膜厚の約半分をあるデバイス基板に転写し、残りの約半分については別のデバイス基板に転写するなど、1枚のドナー基板30を用いて2枚のデバイス基板20への転写を行うこともできる。各デバイス基板へ転写する転写材料の膜厚を調整すれば、1枚のドナー基板から3枚以上のデバイス基板への転写も可能である。
この配置において、図7(d)に示すように、光照射の位置がδだけ変位したとても、転写材料37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されることに変わりないので、同様に均一な転写膜27を得ることができる。転写材料37のみを加熱する配置では、光照射位置がずれると転写膜27の均一性が極端に損なわれ、大型化において基板の全領域に渡って光照射を高精度に位置合わせする難易度が高いという問題があったので、図7に示した配置の方が光照射装置の負担が著しく軽減される。
図8は、区画パターン34に対応して2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)が存在し、2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)の各々の幅と区画パターン34(この例では37Rと37G、37Gと37Bに挟まれた区画パターン2つ分)の幅との合計よりも広い光を光熱変換層33に照射することで、2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)を一括して転写する、本発明の好ましい形態の1つを示す図である。
ここでは、図2および図3で示したのと同様に、37R、37G、37Bの1組を一括で転写する例を示したが、ディスプレイ用途でよく見られるように、転写材料37R、37G、37Bの組がその並びのx方向にk回、その垂直のy方向にl回繰り返し形成されている場合は、例えば、m組(mは2以上k以下の整数)の転写材料37R、37G、37Bに光を同時照射しながら、y方向に光をスキャンすることで、転写時間を1/m程度に短縮することができる。その際に、照射光の幅の分だけ次の照射光の位置をシフトさせながら、この転写方法を何回も繰り返すことによって、最終的に全転写材料37R、37G、37Bの転写を完了できる。また、照射光とドナー基板との位置関係を厳密に制御せずに、例えば、幅方向に部分的にオーバーラップさせながら、全転写領域を最終的に照射されるようにすることもできる。照射光の幅や、照射の順番、オーバーラップの度合いなどは特に限定されるものではない。
m=kの場合には、図9(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全幅を覆うような光を照射することで、1回のスキャンで全転写材料を一括転写することもできる。この配置では、ドナー基板30に対する光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。図9(b)に示すように、基板上に転写領域38が複数存在する場合には、それらを一括転写することも可能である。
上記の一括転写の例において、転写材料37R、37G、37Bが異なる蒸発温度(蒸気圧の温度依存性)を有する場合は、最高の蒸発温度をもつ転写材料に合わせて、1回の光照射で一括転写をしてもよい。逆に、例えば、転写材料37Rが最低の蒸発温度をもつ場合には、1回の光照射で転写材料37Rは全部、37G、37Bは一部を転写しておき、再度の光照射により37G、37Bの残りを転写してもよく、さらに、3回以上の転写に分けてもよい。転写時間を1/m程度に短縮できるので、同じ時間をかけてm回の転写に分けることで、転写材料37へのダメージをより軽減することが可能になる。転写プロセスに割ける時間と転写材料へのダメージを考慮しながら、多様な転写条件から最適なもの選択することができる。
また、上記一括転写には別の効果がある。幅の広い光の照射範囲内では、レーザー転写で問題となってきた横方向の熱拡散が起きないので、レーザーを比較的低速でスキャンするなどして、光を比較的長時間照射することが可能になる。そのため、転写材料の最高到達温度の制御がより容易となり、転写時に転写材料にダメージを与えることなく高精度パターニングできるので、強度変化が非対称である光照射と組み合わせることで、デバイス性能の低下を最小限に抑制できる。また、転写材料へのダメージが低減されることは、同時に区画パターンへのダメージも低減されることになり、区画パターンを有機材料で形成しても劣化が起こりにくくなる。そのため、ドナー基板を複数回に渡って再利用できる、パターニングに掛かるコストを低減できる。また、光を照射する位置を従来法ほど厳密に制御する必要がなくなることがから、光を照射する装置の機構も簡素化できる。
上記では、矩形の光をy方向にスキャンする例を挙げたが、図10に示すように、転写材料37R、37G、37Bの並びのx方向にスキャンすることもできる。スキャン方向は、x方向あるいはy方向の区画パターン34に沿う方向が好ましいが、特に限定されるものではなく、斜め方向にスキャンすることもできる。
スキャン速度は特に限定されないが、0.01〜2m/sの範囲が一般的に使用される。本発明では、光照射のエネルギー密度が比較的小さい条件で、より低速でスキャンすることで、転写材料へのダメージを低減することを目的の1つとしているので、この観点からは、スキャン速度は1.0m/s以下、さらに0.5m/s以下であることが好ましい。
照射光の光源としては、容易に高強度が得られ、照射光の形状制御に優れるレーザーを好ましい光源として例示できるが、赤外線ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプなどの光源を利用することもできる。レーザーでは、半導体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、アルゴンレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなど公知のレーザーが利用できる。本発明における目的の1つは、転写材料へのダメージを低減することであるから、短時間に高強度の光が照射される間欠発振モード(パルス)レーザーより、連続発信モード(CW)レーザーの方が好ましい。
照射光の波長は、照射雰囲気とドナー基板の支持体における吸収が小さく、かつ、光熱変換層において効率よく吸収されれば特に限定されない。従って、可視光領域だけでなく紫外光から赤外光まで利用できる。ドナー基板の好適な支持体の材料を考慮すると、好ましい波長領域として、300nm〜5μmを、更に好ましい波長領域として、380nm〜2μmを例示することができる。
照射光の形状は上記で例示した矩形に限定されるものではない。線状、楕円形、正方形、多角形など転写条件に応じて最適な形状を選択できる。複数の光源から重ね合わせにより照射光を形成してもよいし、逆に、単一の光源から複数の照射光に分割することもできる。
照射光の強度や転写材料の加熱温度の好ましい範囲を一概に例示するのは難しい。これらは、照射時間(スキャン速度)、ドナー基板の支持体や光熱変換層の材質や厚さ、反射率、区画パターンの材質や形状、転写材料の材質や厚さなど様々な条件に左右されるからである。光熱変換層に吸収されるエネルギー密度の典型値としては0.01〜10J/cmの範囲が、転写材料の加熱温度(目標温度)は250〜450℃の範囲が目安となる。
図11は、照射光の成形方法を示す斜視図である。図11(a)に示すように、光学マスク41によって、既に非対称の強度分布をもつ円形の光束から矩形の照射光を切り出すことができる。光学マスク41の他にナイフエッジや光学干渉パターンなどを利用してもよい。図11(b)、(c)に示すように、レンズ42やミラー43により、光源44からの光を集光あるいは拡張することで、非対称の強度分布をもつ照射光を成形することができる。また、上記の光学マスク41、レンズ42、ミラー43などを適宜組み合わせることで、任意の形状の照射光に成形することができる。図11(d)に示すように、ドナー基板30の面に対して、均一な強度分布をもつ照射光をレンズ42を介して斜めに集光する。破線で示した仮想焦点面45の手前側がドナー基板30の光熱変換層(図示せず)に略一致するように配置すると、手前側はレンズ42の焦点距離と一致するオンフォーカス条件になるため照射密度が大きくなり、奥側は焦点距離から外れるオフフォーカス条件になるため、光がぼけることで照射密度が低減する。このような配置で照射光を奥から手前に向けてスキャンすると、図5に概念的に示した照射強度の強度分布を再現することができる。
(2)ドナー基板
ドナー基板の支持体は、光の吸収率が小さく、その上に光熱変換層や区画パターン、転写材料を安定に形成できる材料であれば特に限定されない。条件によっては樹脂フィルムを使用することが可能であり、樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエポキシ、ポリプロピレン、ポリオレフィン、アラミド樹脂、シリコーン樹脂などを例示できる。
化学的・熱的安定性、寸法安定性、機械的強度、透明性の面で、好ましい支持体としてガラス板を挙げることができる。ソーダライムガラス、無アルカリガラス、含鉛ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、低膨張ガラス、石英ガラスなどから条件に応じて選択することができる。本発明の転写プロセスを真空中で実施する場合には、支持体からのガス放出が少ないことが要求されるので、ガラス板は特に好ましい支持体である。
光熱変換層が高温に加熱されても、支持体自体の温度上昇(熱膨張)を許容範囲内に収める必要があるので、支持体の熱容量は光熱変換層のそれより十分大きいことが好ましい。従って、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの10倍以上であることが好ましい。許容範囲は転写領域の大きさやパターニングの要求精度などに依存するために一概には示せないが、例えば、光熱変換層が室温から300℃上昇し、支持体の温度上昇を1/100の3℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの100倍以上であることが好ましく、支持体の温度上昇を1/300の1℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの300倍以上であることが更に好ましい。このようにすることで、大型化しても熱膨張による寸法変位量が少なく、高精度パターニングが可能になる。
光熱変換層は、効率よく光を吸収して熱を発生し、発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。カーボンブラックや黒鉛、チタンブラック、有機顔料、金属粒子などを樹脂に分散させた薄膜を利用することができる。本発明では、光熱変換層が300℃程度に加熱されることがあるので、光熱変換層は耐熱性に優れた無機薄膜からなることが好ましく、光吸収や成膜性の面で、金属薄膜からなることが特に好ましい。金属材料としては、タングステン、タンタル、モリブデン、チタン、クロム、金、銀、銅、白金、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、ジルコニウム、シリコン、カーボンなどの単体や合金の薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
光熱変換層の支持体側には必要に応じて反射防止層を形成することができる。さらに、支持体の光入射側の表面にも反射防止層を形成してもよい。これらの反射防止層は屈折率差を利用した光学干渉薄膜が好適に使用され、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの単体や混合薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
光熱変換層の転写材料側には必要に応じて転写補助層を形成することができる。転写補助層の機能の一例は、加熱された光熱変換層の触媒効果により転写材料が劣化することを防止する機能であり、タングステンやタンタル、モリブデン、シリコンや酸化物・窒化物など不活性な無機薄膜を使用することができる。転写補助層の機能の別の一例は、転写材料を塗布法により成膜する際の表面改質機能であり、例示した不活性な無機薄膜の粗表面薄膜や金属酸化物の多孔質膜などを使用することができる。転写補助層の機能の別の一例は、転写材料の加熱均一化であり、例えば、図12(a)に示すように、比較的厚い転写材料37を均一に加熱するために、熱伝導性に優れた金属などの材料によりスパイク状の(もしくは多孔質状の)構造をもつ転写補助層39を形成し、その間隙に転写材料37を担持するように配置することができる。この機能を有する転写補助層は、図12(b)に示すように、光熱変換層37と一体化してもよい。
光熱変換層は転写材料の蒸発に十分な熱を与える必要があるので、光熱変換層の熱容量は転写材料のそれより大きいことが好ましい。従って、光熱変換層の厚さは転写材料より厚いことが好ましく、転写材料の厚さの5倍以上であることが更に好ましい。数値としては0.02〜2μmが好ましく、さらに0.1〜1μmが更に好ましい。光熱変換層は光の90%以上、更に95%以上を吸収することが好ましいので、これらの条件を満たすように光熱変換層の厚さを設計することが好ましい。転写補助層は光熱変換層にて発生した熱を効率よく転写材料に伝える妨げにならないように、要求される機能を満たす範囲内で薄くなるように設計することが好ましい。
光熱変換層は転写材料が存在する部分に形成されていれば、その平面形状は特に限定されず、上記において例示したようにドナー基板全面に形成されていても、例えば、区画パターンの下部で不連続となるようにパターニングされていてもよい。区画パターンが光熱変換層との密着性に乏しい場合には、このようにして支持体との密着性を利用することで密着性を改善することができる。光熱変換層がパターニングされる場合には、区画パターンと同種の形状となる必要はなく、区画パターンが格子状で、光熱変換層はストライプ状であってもよい。光熱変換層は光吸収率が大きいことから、光熱変換層を利用して転写領域内外の適切な位置にドナー基板の位置マークを形成することが好ましい。
光熱変換層や転写補助層の形成方法としては、スピンコートやスリットコート、真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど、材料に応じて公知技術を利用できる。パターニングする場合には公知のフォトリソ法やレーザーアブレーションなどを利用できる。
本発明において区画パターンは必須ではなく、区画パターンが形成されずに、全面に同一の転写材料が成膜された従来の転写法にも適用できるが、より好ましい形態として区画パターンを形成する場合には、転写材料の境界を規定し、光熱変換層で発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。無機物では酸化ケイ素や窒化ケイ素をはじめとする酸化物・窒化物、ガラス、セラミックスなどを、有機物ではポリビニル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリスチレン、アクリル、ノボラック、シリコーンなどの樹脂を例として挙げることができる。プラズマテレビにおける隔壁をガラスペースト法により製造する公知技術を使用することもできる。区画パターンの熱導電性は特に限定されないが、区画パターンを介して対向するデバイス基板に熱が拡散するのを防ぐ観点から、有機物のように熱伝導率が小さい方が好ましく、さらに、パターニング特性と耐熱性の面でも優れた材料としては、ポリイミドとポリベンゾオキサゾールを好ましい材料として例示できる。
区画パターンの成膜方法は特に限定されず、無機物を用いる場合には真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、レーザーアブレーションなどの公知技術を、有機物を用いる場合には、スピンコート、スリットコート、ディップコートなどの公知技術を利用できる。区画パターンのパターニング方法は特に限定されず、公知のフォトリソ法が利用できる。フォトレジストを使用したエッチング(あるいはリフトオフ)法によって区画パターンをパターニングしてもよいし、例示した上記樹脂材料に感光性を付加させた材料を用いて、区画パターンを直接露光、現像することでパターニングすることもできる。さらに、全面形成した区画パターン層に型を押しつけるスタンプ法やインプリント法、樹脂材料を直接パターニング形成するインクジェット法やノズルジェット法、各種印刷法などを利用することもできる。
区画パターンの形状としては、既に例示した格子状(マトリクス状)構造に限定されるのではなく、例えば、図8で例示したように、ドナー基板30上に3種類の転写材料37R、37G、37Bが形成されている場合には、区画パターン34の平面形状がy方向に伸びるストライプであってもよい。また、図13に示すように、転写材料37よりも幅の広い区画パターン34を形成することもできる。この場合は、3種類の転写材料37R、37G、37Bがそれぞれ形成された3枚のドナー基板30を用意して、1枚のデバイス基板にそれぞれを対向させて本発明により転写する工程を3回繰り返すことで、転写材料37R、37G、37Bを1枚のデバイス基板上にパターニングすることができる。転写材料37R、37G、37Bのピッチあるいは間隙を小さくする必要がある高精細パターニングにおいて有効な形状の一例である。
区画パターンの厚さについては特に限定されない。区画パターン34が転写材料37と同じ厚さ、あるいは薄いとしても、ドナー基板30とデバイス基板20との間隙を保持すれば、転写時に蒸発した転写材料がやや広がって堆積する程度なので、転写材料37R、37G、37B間の混合を起こさずに転写することができる。転写材料はデバイス基板に直接接しない方が好ましく、また、ドナー基板とデバイス基板との間隙は、1〜100μm、さらに2〜20μmの範囲に保つことが好ましいので、区画パターンは転写材料の厚さより厚く、また、1〜100μm、さらに2〜20μmの厚さであることが好ましい。このような厚さの区画パターンをデバイス基板に対向ざせることで、ドナー基板とデバイス基板との間隙を一定値に保つことが容易になり、また、蒸発した転写材料が他の区画へ侵入する可能性を低減できる。
区画パターンの断面形状は、蒸発した転写材料がデバイス基板に均一に堆積することを容易にするために、順テーパー形状であることが好ましい。図2で例示したように、デバイス基板10の上に絶縁層14のようなパターンが存在する場合には区画パターン34の幅(特に上部の幅)よりも絶縁層14の幅(特に上部の幅)の方が広いことが好ましい。また、位置合わせの際には、区画パターン34の上部の幅の中に絶縁層14の上部の幅が収まるように配置することが好ましい。この場合には、区画パターン34が薄くても、絶縁層14を厚くすることで、ドナー基板30とデバイス基板10とを所望の間隙に保持することができる。区画パターンの典型的な幅は5〜50μm、ピッチは25〜300μmであるが、用途に応じて最適な値に設計すればよく、特に限定はされない。
区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、溶液が他の区画へ混入したり、区画パターンの上面に乗りあげたりすることを防ぐために、区画パターン上面に撥液処理(表面エネルギー制御)を施すことができる。撥液処理としては、区画パターンを形成する樹脂材料へフッ素系材料などの撥液性材料を混合したり、さらに撥液性材料の高濃度領域を表面あるいは上面へ選択形成することができる。区画パターンを表面エネルギーの異なる材料の多層構造とすることもでき、また、区画パターン形成後に光照射やフッ素系材料含有ガスによるプラズマ処理やUVオゾン処理を施すことで、表面エネルギー状態を制御するなど、公知技術を利用することができる。
(3)転写材料
転写材料は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜を形成する材料である。有機材料、金属を含む無機材料いずれでも、加熱された際に、蒸発、昇華、あるいはアブレーション昇華するか、あるいは、接着性変化や体積変化を利用して、ドナー基板からデバイス基板へと転写されればよい。また、転写材料が薄膜形成の前駆体であり、転写前あるいは転写中に熱や光によって薄膜形成材料に変換されて転写膜が形成されてもよい。
転写材料の厚さは、それらの機能や転写回数により一概に示すことは難しい。例えば、フッ化リチウムなどのドナー材料(電子注入材料)の1回転写分の転写材料は、典型的な厚さは1nm以下である。また、電極材料の転写材料の膜厚は100nm以上になる場合もある。本発明の好適なパターニング薄膜である発光層の場合は、1回転写分の転写材料の厚さは10〜100nmが、さらに20〜50nmであることが好ましい。
転写材料の形成方法は特に限定されず、真空蒸着やスパッタリングなどのドライプロセスを利用することもできるが、大型化に対応が容易な方法として、少なくとも転写材料と溶媒からなる溶液を区画パターン内に塗布し、前記溶媒を乾燥させた後に転写することが好ましい。塗布法としては、インクジェット、ノズル塗布、電界重合や電着、オフセットやフレキソ、平版、凸版、グラビア、スクリーンなどの各種印刷などを例示できる。特に、本発明では各区画パターン内に定量の転写材料を正確に形成することが重要であり、この観点から、インクジェットを特に好ましい方法として例示できる。
前記の通り、本発明において区画パターンは必須ではない。しかし、区画パターンがないと、塗液から形成されるRGB有機EL材料層は互いに接することになり、その境界は一様ではなく、少なからず混合層が形成される。これを防ぐために、互いに接しないように隙間を空けて形成した場合には、境界領域の膜厚を中央と同一にすることが困難である。いずれの場合も、この境界領域はデバイスの性能低下を招くために転写することができないので、ドナー基板上の有機EL材料パターンよりも幅の狭い領域を選択的に転写する必要がある。従って、実際に使用可能な有機EL材料の幅が狭くなり、有機ELディスプレイを作製した際には、開口率の小さな(非発光領域の面積が大きな)画素となってしまう。また、境界領域を除いて転写しなければならない都合上、一括転写ができないので、R、G、Bを順次にレーザー照射して、それぞれ独立に転写する必要があり、高強度レーザー照射の高精度位置合わせが必要となる。このような問題を解決する観点から、区画パターンと塗液から形成された転写材料を有するドナー基板を用いて、前記の方法で一括転写する方法を、本発明の特に好ましい形態として例示できる。
転写材料と溶媒とからなる溶液を塗布法に適用する場合には、一般的には界面活性剤や分散剤などを添加することで溶液の粘度や表面張力、分散性などを調整してインク化することが多い。しかしながら、本発明では、それらの添加物が転写材料に残留物として存在すると、転写時にも転写膜内に取り込まれて、デバイス性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。従って、乾燥後の転写材料の純度が95%以上、さらに98%以上となるように溶液を調製することが好ましい。
溶媒としては、水、アルコール、炭化水素、芳香族化合物、複素環化合物、エステル、エーテル、ケトンなど公知の材料を使用することができる。本発明において好適に使用されるインクジェット法では、100℃以上、さらに150℃以上の比較的高沸点の溶媒が使用されること、さらに、有機EL材料の溶解性に優れていることから、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、γ−ブチルラクトン(γBL)、シクロヘキサノン、安息香酸エチル、テトラヒドロナフタレン(THN)などを好適な溶媒として例示できる。
転写材料が溶解性と転写耐性、転写後のデバイス性能を全て満たす場合には、転写材料の原型を溶媒に溶解させることが好ましい。転写材料が溶解性に乏しい場合には、転写材料に、アルキル基などの溶媒に対する可溶性基を導入することで、可溶性を改良することができる。デバイス性能面で優れる転写材料の原型に可溶性基を導入した場合には、性能が低下することがある。その場合には、例えば転写時の熱において、この可溶性基を脱離させて原型材料をデバイス基板に堆積させることもできる。
可溶性基を導入した転写材料を転写する際に、ガスの発生や転写膜への脱離物の混入を防止するためには、転写材料が塗布時に溶媒に対する可溶性基をもち、塗布後に熱または光によって可溶性基を変換または脱離させた後に、転写材料を転写することが好ましい。例えば、ベンゼン環を有する材料を例に挙げると、式(1)に示すように、可溶性基としてアセチル基をもつ材料に光を照射してメチル基に変換することができる。また、式(2)および式(3)に示すように、可溶性基としてエチレン基やジケト基などの分子内架橋構造を導入し、そこからエチレンや一酸化炭素を脱離するプロセスによって原型材料に復帰させることもできる。可溶性基の変換または脱離は乾燥前の溶液状態でも、乾燥後の固体状態でもよいが、プロセス安定性を考慮すると、乾燥後の固体状態で実施することが好ましい。転写材料の原型分子は非極性的であることが多いために、固体状態にて可溶性基を脱離する際に脱離物を転写材料内に残留させないためには、脱離物の分子量は小さく極性的(非極性的な原型分子に対して反発的)であることが好ましい。また、転写材料内に吸着されている酸素や水を脱離物と一緒に除去するためには、脱離物がこれらの分子と反応しやすいことが好ましい。これらの観点からは一酸化炭素を脱離するプロセスで可溶化基を変換または脱離することが特に好ましい。
ベンゼン環を有する材料としては、ベンゼン自体の他に、縮合多環化合物が挙げられる。縮合多環化合物としては、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、ペリレンなどの縮合多環炭化水素化合物の他、縮合多環複素化合物が挙げられる。もちろん、これらは置換されていても無置換であっても良い。これらの化合物の有する1または2以上のベンゼン環に対し、前記変換や脱離を行うことができる。
Figure 2010170708
(4)デバイス基板
デバイス基板の支持体は特に限定されず、ドナー基板で例示した材料を用いることができる。両者を対向させて転写材料を転写させる際に、温度変化による熱膨張の違いによりパターニング精度が悪化するのを防ぐためには、デバイス基板とドナー基板の支持体の熱膨張率の差は10ppm/℃以下であることが好ましく、またこれらの基板が同一材料からなることが更に好ましい。ドナー基板の特に好ましい支持体として例示したガラス板は、デバイス基板の特に好ましい支持体としても例示できる。なお、両者の厚さの違いは特に限定されない。
デバイス基板は転写時には支持体のみから構成されていてもよいが、デバイスの構成に必要な構造物をあらかじめ支持体上に形成しておくほうが一般的である。例えば、図1に示した有機EL素子では、絶縁層14や正孔輸送層16までを従来技術によって形成しておき、それをデバイス基板として使用することができる。
上記絶縁層のような構造物は必須ではないが、デバイス基板とドナー基板とを対向させる際に、ドナー基板の区画パターンがデバイス基板に形成済みの下地層に接触し、傷つけることを防止する観点から、デバイス基板にあらかじめ形成されているのが好ましい。絶縁層の形成には、ドナー基板の区画パターンとして例示した材料や成膜方法、パターニング方法を利用することができる。絶縁層の形状や厚さ、幅、ピッチについても、ドナー基板の区画パターンで例示した形状や数値を例示することができる。
(5)転写プロセス
ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、転写空間をそのまま真空に保持した状態で大気中に取り出し、転写を実施することができる。例えば、ドナー基板の区画パターンおよび/またはデバイス基板の絶縁層を利用して、これらに囲まれた領域を真空に保持することができる。この場合には、ドナー基板および/またはデバイス基板の周辺部に真空シール機能を設けてもよい。デバイス基板の下地層、例えば正孔輸送層が真空プロセスで形成され、発光層を本発明によってパターニングし、電子輸送層も真空プロセスで形成する場合は、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、真空中で転写を実行することが好ましい。この場合に、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で高精度に位置合わせし、対向状態を維持する方法には、例えば、液晶ディスプレイの製造プロセスにおいて使用されている、液晶材料の真空滴下・貼り合わせ工程などの公知技術を利用することができる。真空中(減圧雰囲気下)での転写は、実効的な転写温度を低下できる効果も期待できる。また、転写雰囲気によらず、転写時にドナー基板を放熱あるいは冷却することもできるし、ドナー基板を再利用する場合には、ドナー基板をエンドレスベルトとして利用することも可能である。金属などの良導体で形成した光熱変換層を利用することで、ドナー基板を静電方式により容易に保持することができる。
本発明においては蒸着モードの転写が好ましいために、1回の転写において単層の転写膜をパターニングすることが好ましい。しかしながら、剥離モードやアブレーションモードを利用することで、例えば、ドナー基板上に電子輸送層/発光層の積層構造を形成しておき、その積層状態を維持した状態でデバイス基板に転写することで、発光層/電子輸送層の転写膜を1回でパターニングすることもできる。
転写雰囲気は大気圧でも減圧下でもよい。例えば、反応性転写の場合には、酸素などの活性ガスの存在下で転写を実施することもできる。本発明では転写材料の転写ダメージの低減が課題の1つであるので、窒素ガスなどの不活性ガス中、あるいは真空下であることが好ましい。圧力を適度に制御することで、転写時に膜厚ムラの均一化を促進することが可能である。転写材料へのダメージ低減や転写膜への不純物混入の低減、蒸発温度の低温下の観点では、真空化であることが特に好ましい。
塗布法により形成した薄膜を有機EL素子の機能層として直接利用する従来法の問題の1つは膜厚ムラであった。本発明においても塗布法によって転写材料を形成した場合にも同等の膜厚ムラが発生しうるが、本発明における好ましい転写方式である蒸着モードでは、転写時に転写材料が分子(原子)レベルにほぐれた状態で蒸発した後に、デバイス基板に堆積するために、転写膜の膜厚ムラが軽減される方向にある。従って、例えば、塗布時には転写材料が顔料のように分子集合体からなる粒子であり、たとえ転写材料がドナー基板上において連続膜ではなくても、それを転写時に分子レベルにほぐして蒸発させ、堆積させることで、デバイス基板上においては膜厚均一性にすぐれた転写膜を得ることができる。
次に、本発明のパターニング方法を用いてデバイスを製造する方法について説明する。本発明において、デバイスとは有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどをいう。有機TFTでは有機半導体層や絶縁層、ソース、ドレイン、ゲートの各種電極などを、有機太陽電池では電極などを、センサーではセンシング層や電極などを本発明によりパターニングすることができる。以下では、有機EL素子を例に挙げてその製造方法について説明する。
図1は、有機EL素子10(ディスプレイ)の典型的な構造の例を示す断面図である。支持体11上にTFT12や平坦化層13などで構成されるアクティブマトリクス回路が構成されている。素子部分は、その上に形成された第一電極15/正孔輸送層16/発光層17/電子輸送層18/第二電極19である。第一電極の端部には、電極端における短絡発生を防止し、発光領域を規定する絶縁層14が形成される。素子構成はこの例に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極との間に正孔輸送機能と電子輸送機能とを合わせもつ発光層が一層だけ形成されていてもよく、正孔輸送層は正孔注入層と正孔輸送層との、電子輸送層は電子輸送層と電子注入層との複数層の積層構造であってもよく、発光層が電子輸送機能をもつ場合には電子輸送層が省略されてもよい。また、第一電極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/第二電極の順に積層されていてもよい。また、これらの層はいずれも単層であっても複数層であってもよい。なお、図示されていないが、第二電極の形成後に、公知技術あるいは本発明のパターニング方法を利用して、保護層の形成やカラーフィルターの形成、封止などが行われてもよい。
カラーディスプレイでは少なくとも発光層がパターニングされる必要があり、発光層は本発明において好適にパターニングされる薄膜である。絶縁層や第一電極、TFTなどは公知のフォトリソ法によりパターニングされることが多いが、本発明によりパターニングしてもよい。また、正孔輸送層や電子輸送層、第二電極などの少なくとも一層をパターニングする必要がある場合には、本発明によりパターニングしてもよい。また、発光層のうちR、Gのみを本発明によりパターニングして、その上にBの発光層とR、Gの電子輸送層を兼ねる層を全面形成することもできる。
図1に示した有機EL素子の作製例としては、第一電極15まではフォトリソ法を、絶縁層14は感光性ポリイミド前駆体材料を利用した公知技術によりパターニングし、その後、正孔輸送層16を真空蒸着法を利用した公知技術によって全面形成する。この正孔輸送層16を下地層として、その上に、図2に示した本発明により、発光層17R、17G、17Bをパターニングする。その上に、電子輸送層18、第二電極19を真空蒸着法などを利用した公知技術によって全面形成すれば、有機EL素子を完成することができる。
発光層は単層でも複数層でもよく、各層の発光材料は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。発光効率、色純度、耐久性の観点から、発光層はホスト材料とドーパント材料との混合物の単層構造であることが好ましい。従って、発光層を成膜する転写材料はホスト材料とドーパント材料との混合物であることが好ましい。
区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、ホスト材料とドーパント材料との混合溶液を塗布、乾燥させて転写材料を形成することができる。ホスト材料とドーパント材料との溶液を別に塗布してもよい。転写材料を形成した段階でホスト材料とドーパント材料とが均一に混合されていなくても、転写時に両者が均一に混合されればよい。また、転写時にホスト材料とドーパント材料との蒸発温度の違いを利用して、発光層中のドーパント材料の濃度を膜厚方向に変化させることもできる。
発光材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq)などのキノリノール錯体やベンゾチアゾリルフェノール亜鉛錯体などの各種金属錯体、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、リン光材料と呼ばれるイリジウム錯体系材料などの低分子材料や、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体などの高分子材料を例示することができる。特に、発光性能に優れ、本発明のパターニング方法に好適な材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、各種リン光材料を例示できる。
正孔輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔注入層と呼ばれる層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、正孔輸送層には正孔輸送性を助長するアクセプタ材料が混合されていてもよい。従って、正孔輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
正孔輸送材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)やN,N’−ビフェニル−N,N’−ビフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(N−フェニルカルバゾリル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミンなどに代表される芳香族アミン類、N−イソプロピルカルバゾール、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体に代表される複素環化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの高分子材料を例示できる。アクセプタ材料としては、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ヘキサアザトリフェニレン(HAT)やそのシアノ基誘導体(HAT−CN6)などの低分子材料を例示することができる。また、第一電極表面に薄く形成される酸化モリブデンや酸化ケイ素などの金属酸化物も正孔輸送材料やアクセプタ材料として例示できる。
電子輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔阻止層や電子注入層と呼ばれる層も電子輸送層に含まれる。電子輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、電子輸送層には電子輸送性を助長するドナー材料が混合されていてもよい。電子注入層と呼ばれる層は、このドナー材料として論じられることも多い。電子輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
電子輸送材料としては、Alqや8−キノリノラートリチウム(Liq)などのキノリノール錯体、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有する高分子材料を例示できる。
ドナー材料としては、リチウムやセシウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属、それらのキノリノール錯体などの各種金属錯体、フッ化リチウムや酸化セシウムなどのそれらの酸化物やフッ化物、テトラチアフバレン(TTF)などの電子供与性低分子材料を例示することができる。電子輸送材料やドナー材料は各RGB発光層との組み合わせによる性能変化が起こりやすい材料の1つであり、本発明によりパターニングされる別の好ましい例として例示される。
第一電極および第二電極は、発光層からの発光を取り出すために少なくとも一方が透明であることが好ましい。第一電極から光を取り出すボトムエミッションの場合には第一電極が、第二電極から光を取り出すトップエミッションの場合には第二電極が透明である。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。また、転写の際に、例えば転写材料と酸素を反応させるなど、反応性転写を実施することもできる。透明電極材料およびもう一方の電極には、例えば、特開平11−214154号公報記載の如く、従来公知の材料を用いることができる。
本発明における有機EL素子は、一般的に第二電極が共通電極として形成されるアクティブマトリクス型に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極とが互いに交差するストライプ状電極からなる単純マトリクス型や、予め定められた情報を表示するように表示部がパターニングされるセグメント型であってもよい。これらの用途としては、テレビ、パソコン、モニター、時計、温度計、オーディオ機器、自動車用表示パネルなどを例示することができる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜5および比較例1〜3
光の強度変化による光熱変換層の温度変化をシミュレーションソフト(ABACUS)を用いて以下のように計算した。ドナー基板の支持体には厚さ0.7mmのガラス板を、光熱変換層には厚さ1μmのクロム膜を仮定した。縦50μm、幅150μmの長方形の光をガラス板を通して光熱変換層に入射させ、光熱変換層のある定点を光の幅方向中央が通過するように、光を縦方向に一定速度でスキャンするものとした。定点への光照射は100μsまたは250μsの一定時間とした。光の強度は幅方向には一定であるが、縦方向には図14に示す種々の分布をもつものとした。なお、図14では、光の縦方向の空間的な強度変化を、定点に入射する光の経時的な強度変化に変換して表示している。このような条件下での定点における光熱変換層の温度変化をシミュレーションソフト(ABACUS)を用いて5μs刻みで計算した。
計算結果を図15に示す。光の照射時間内に光熱変換層が到達する最高温度(Tmax)の95%以上の目標温度(Tt)が得られる時間を目標温度維持時間として定義し、照射光の強度変化との関係を表1にまとめた。
Figure 2010170708
比較例1〜3のように照射光の強度変化が対称である場合には、比較例1、2では約100μsの光照射時間のうち目標温度維持時間は高々10μs、比較例3では250μsの光照射時間のうち40μsであるが、実施例1、2のように照射光の強度変化を非対称にすることで、目標温度維持時間を大幅に長くすることが可能である。また、実施例3〜5のように、照射光の立ち下がり区間の2次微分が正になるような強度変化をつけることで、目標温度維持時間を更に長くすることが可能である。
上記の実施例および比較例は、ドナー基板が支持体と1層の光熱変換層からなる単純なモデルを規格化して計算した例である。同じ厚さの転写材料を転写するためには目標温度維持時間を長く取れる方が蒸発速度を遅くできる、すなわち、目標温度を低くできるので、転写材料への負担を軽減できることがわかる。実際に照射する光強度の絶対値は、例えばガラス/光熱変換層界面での光の反射ロスなどを考慮に入れて、目標温度が得られるように設計することができる。
有機EL発光材料からなる転写材料の典型的な厚さは20〜50nm、体積比熱は1〜2J/cmKであり、金属からなる光熱変換層の典型的な厚さは0.2〜1μm、体積比熱は2〜3.5J/cmKであるので、両者の積に比例する熱容量は転写材料よりも光熱変換層の方が十分に大きい。従って、転写材料の有無によって上記の実施例および比較例で計算した温度変化が大きく影響を受けることはなく、転写材料が存在する実際の系においても、光の強度を経時的に非対称に変化させることで目標温度近傍で長時間加熱できること自体に変わりはない。区画パターンの存在などによって温度が上がりにくい場合でも、立ち上がり区間を長めに設計したり、光の強度の絶対値を少し強めることで容易に調整できる。
10 有機EL素子(デバイス基板)
11 支持体
12 TFT(取り出し電極含む)
13 平坦化層
14 絶縁層
15 第一電極
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 第二電極
20 デバイス基板
21 支持体
27 転写膜
30 ドナー基板
31 支持体
33 光熱変換層
34 区画パターン
37 転写材料
38 転写領域
39 転写補助層
41 光学マスク
42 レンズ
43 ミラー
44 光源
45 仮想焦点面

Claims (7)

  1. 基板上に光熱変換層と転写材料が形成されたドナー基板をデバイス基板と対向配置し、光を光熱変換層に照射することで転写材料をデバイス基板に転写するパターニング方法であって、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とするパターニング方法。
  2. 光照射がスキャン照射によるものであり、強度分布がスキャン方向について非対称である光をスキャン照射させることにより、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とする請求項1記載のパターニング方法。
  3. 照射する光自体の強度を経時的に非対称に変化させることにより、照射領域において照射される光の強度を経時的に非対称に変化させることを特徴とする請求項1記載のパターニング方法。
  4. 光の強度変化の1次微分が正またはゼロである領域より、負である領域の方が長いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のパターニング方法。
  5. 光の強度変化の1次微分が負である領域において、その2次微分が正であることを特徴とする請求項4記載のパターニング方法。
  6. 光熱変換層上に区画パターンが形成され、区画パターン内に2種類以上の異なる転写材料が存在し、2種類以上の異なる転写材料の各々の幅とそれらの転写材料の間に存在する区画パターンの幅との合計よりも広い光を光熱変換層に照射することで、前記2種類以上の異なる転写材料を一括して転写することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパターニング方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の方法により、デバイスを構成する層の少なくとも1層をパターニングすることを特徴とするデバイスの製造方法。
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