JP2012210226A - Vwfプロペプチドから成熟vwfを産生するための方法。 - Google Patents
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Abstract
【課題】VWFプロペプチドから成熟VWFを産生するための方法の提供。
【解決手段】本発明は、成熟フォンビルブラント因子(VWF)をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法に関し、この方法は、VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドとフリンとをインキュベートするステップと、成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップとを含む。一実施形態において、上記VWFプロペプチドは、組み換え起源である。別の実施形態において、上記イオン交換樹脂は、トリメチルアミノエチル基(TMAE)を含む。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、成熟フォンビルブラント因子(VWF)をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法に関し、この方法は、VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドとフリンとをインキュベートするステップと、成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップとを含む。一実施形態において、上記VWFプロペプチドは、組み換え起源である。別の実施形態において、上記イオン交換樹脂は、トリメチルアミノエチル基(TMAE)を含む。
【選択図】なし
Description
この出願は、2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/930,891号(これは、参考としてその全体が本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、成熟フォンビルブラント因子をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法に関する。
本発明は、成熟フォンビルブラント因子をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法に関する。
細胞内でのタンパク質成熟の間に、成熟させられるタンパク質は翻訳後修飾を受ける。これらの修飾としては、とりわけ、アセチル化、メチル化、グリコシル化およびタンパク質切断が含まれる。これらの修飾は多くの場合、タンパク質機能および活性にとって必要であり、これらの修飾はまた、タンパク質、特に酵素の効率に影響することがある。
プロタンパク質(またはタンパク質前駆物質)は、これらの翻訳後修飾のうちの1つ以上によって、特にプロタンパク質からのプロペプチドの切断によって活性型に変えられる不活性タンパク質である。プロタンパク質の例としては、例えば、プロインスリン、プロトロンビン等が含まれる。
活性化タンパク質の産生は、臨床面および診断面での重要性が高い。例えば、活性化または成熟タンパク質は、血液凝固を制御するために用いることができる。
活性タンパク質は通常、生きた生物体において非常に低い量で利用可能である。従って、それらのプロタンパク質およびプロ酵素は、好ましくは、それらを活性化酵素(例えば、プロテアーゼ)と接触させることによってin vitroで活性化される。
プロタンパク質から成熟タンパク質を産生する現行の方法は、固定化プロテアーゼを用いるか、または遊離溶液中で実行される。両方の方法とも欠点がある。これらの欠点の中には、処理の後でプロテアーゼが固定されるという要件がある。
フォンビルブラント因子(VWF:Von Willebrand Factor)は、サイズが約500〜20,000kDの範囲の一連の多量体として血漿中を循環する糖タンパク質である。VWFの多量体型は、ジスルフィド結合により一緒に連結された250kDポリペプチドサブユニットで構成されている。VWFは、損傷血管壁の内皮下層への初期血小板付着を仲介し;より大きな多量体だけが止血活性も示すと考えられている。大きな分子量を有する多量体は、内皮細胞のバイベル・パラーデ小体中に保存され、刺激を受けて放出される。放出されたVWFは次に、血漿プロテアーゼによってさらに処理されて、VWFの低分子量型という結果になる。
VWFは、内皮細胞および巨核球によって、大部分が繰り返しドメインからなるプレプロペプチド−VWF(「pp−VWF」)として合成される。シグナルペプチドの開裂時に、VWFプロペプチドは、そのC−末端領域においてジスルフィド結合を介して二量化する。二量体は、遊離末端間のジスルフィド結合により支配される多量体化のためのプロトマーとして働く。多量体への組み立てに続き、プロペプチドのタンパク質分解除去が行われる(非特許文献1)。
VWFプロペプチドの生理学的役割は、VWFプロペプチド分子からの切断の前か後における、VWF多量体の組み立ての支配にあると仮定される。(非特許文献2)。ヒトにおいてプロペプチドの除去がほとんど完全なのに対して、このプロセスは、哺乳動物細胞株におけるVWFの組み換え高レベル発現の場合にはあまり効率的ではない。そのような改変された細胞株由来の細胞培養上清は一般に、成熟VWFおよびVWFプロペプチドのようなVWF前駆物質の混合物を含む。成熟VWFを得るために、従って、VWF前駆物質、特にVWFプロペプチドを成熟VWFに変換することが必要である。例えば、特許文献1において、この成熟は、フリンと達成される。特に、特許文献1において、VWFの成熟がin situで生じるようにフリンおよびVWFを組み換え的に同時発現させることが提案されている。特許文献2においては、トロンビンを用いて成熟VWFを産生する方法が記載されており、成熟は、溶液中でまたは固体支持体上に結合されたトロンビンを用いて実行される。
Leyteら、Biochem.J.274(1991),257−261
Takagiら、JBC 264(18)(1989),10425−10430
本発明は、成熟フォンビルブラント因子(VWF)をVWFプロペプチドから産生するための効率的な方法を提供する。本発明は、VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定し、続いて、固定されたVWFプロペプチドをフリンと成熟させ、成熟VWFをイオン交換樹脂から溶出させることにより、成熟VWFを産生する新規な方法を提供する。本発明の方法は、VWFプロペプチドからのVWFのin vitro成熟に特に適している。この方法により、高い比活性および純度を有する成熟VWFの産生が可能になる。
本発明は、成熟VWFをVWFプロペプチドから産生する方法に関し、この方法は、
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドとフリンを含む溶液とをインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップとを含む。
本発明は、例えば以下を提供する:
(項目1)
成熟フォンビルブラント因子(VWF)をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法であって、該方法は:
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために該固定されたVWFプロペプチドとフリンとをインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出により該イオン交換樹脂から単離するステップと、
を含む、方法。
(項目2)
前記VWFプロペプチドが、組み換え起源である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記イオン交換樹脂が、トリメチルアミノエチル基(TMAE)を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記イオン交換樹脂が、クロマトグラフィーカラムに充填される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記VWFプロペプチドが、前記イオン交換樹脂上に固定され、フリンと、25℃で測定される25mS/cm未満の導電率でインキュベートされる、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記導電率が、20mS/cm未満である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記導電率が、16mS/cm未満である、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記VWFが、前記イオン交換樹脂から25℃で測定される少なくとも40mS/cmの導電率で溶出される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記導電率が、少なくとも60mS/cmである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記導電率が、少なくとも80mS/cmである、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記フリンが、CaCl2を0.01〜10mMの濃度でさらに含む溶液中に含まれる、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記CaCl2が、0.1〜5mMの濃度である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記CaCl2が、0.2〜2mMの濃度である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記インキュベーションが、1分間〜48時間実行される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記インキュベーションが、10分間〜42時間実行される、項目14に記載の方法。(項目16)
前記インキュベーションが、20分間〜36時間実行される、項目15に記載の方法。(項目17)
前記インキュベーションが、30分間〜24時間実行される、項目16に記載の方法。(項目18)
前記インキュベーションが、2〜40℃の温度で実行される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記インキュベーションが、4〜37℃の温度で実行される、項目18に記載の方法。(項目20)
フォンビルブラント疾患(VWD)の処置用の医薬の製造のための、項目1に従って調製された成熟フォンビルブラント因子(VWF)の使用。
(項目21)
哺乳動物におけるフォンビルブラント疾患を処置するための方法であって、項目1に従って調製された成熟フォンビルブラント因子(VWF)を該哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
(項目22)
前記フリンが、組み換え起源である、項目1に記載の方法。
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドとフリンを含む溶液とをインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップとを含む。
本発明は、例えば以下を提供する:
(項目1)
成熟フォンビルブラント因子(VWF)をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法であって、該方法は:
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために該固定されたVWFプロペプチドとフリンとをインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出により該イオン交換樹脂から単離するステップと、
を含む、方法。
(項目2)
前記VWFプロペプチドが、組み換え起源である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記イオン交換樹脂が、トリメチルアミノエチル基(TMAE)を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記イオン交換樹脂が、クロマトグラフィーカラムに充填される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記VWFプロペプチドが、前記イオン交換樹脂上に固定され、フリンと、25℃で測定される25mS/cm未満の導電率でインキュベートされる、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記導電率が、20mS/cm未満である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記導電率が、16mS/cm未満である、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記VWFが、前記イオン交換樹脂から25℃で測定される少なくとも40mS/cmの導電率で溶出される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記導電率が、少なくとも60mS/cmである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記導電率が、少なくとも80mS/cmである、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記フリンが、CaCl2を0.01〜10mMの濃度でさらに含む溶液中に含まれる、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記CaCl2が、0.1〜5mMの濃度である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記CaCl2が、0.2〜2mMの濃度である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記インキュベーションが、1分間〜48時間実行される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記インキュベーションが、10分間〜42時間実行される、項目14に記載の方法。(項目16)
前記インキュベーションが、20分間〜36時間実行される、項目15に記載の方法。(項目17)
前記インキュベーションが、30分間〜24時間実行される、項目16に記載の方法。(項目18)
前記インキュベーションが、2〜40℃の温度で実行される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記インキュベーションが、4〜37℃の温度で実行される、項目18に記載の方法。(項目20)
フォンビルブラント疾患(VWD)の処置用の医薬の製造のための、項目1に従って調製された成熟フォンビルブラント因子(VWF)の使用。
(項目21)
哺乳動物におけるフォンビルブラント疾患を処置するための方法であって、項目1に従って調製された成熟フォンビルブラント因子(VWF)を該哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
(項目22)
前記フリンが、組み換え起源である、項目1に記載の方法。
本発明は、成熟フォンビルブラント因子(VWF)をフォンビルブラント因子プロペプチドから産生する方法であって、
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドをフリンを含む溶液を用いてインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップと、を含む方法に関する。
− VWFプロペプチドをイオン交換樹脂上に固定するステップと、
− 固定された成熟VWFを得るために固定されたVWFプロペプチドをフリンを含む溶液を用いてインキュベートするステップと、
− 成熟VWFを溶出によりイオン交換樹脂から単離するステップと、を含む方法に関する。
本発明の方法は、VWFのそのVWFプロペプチド型からのin vitro成熟に特に適している。現行の従来方法は、VWFのプロペプチド型を液相中でプロテアーゼを用いてインキュベートし、それによって成熟それ自体(すなわち、プロタンパク質からのプロペプチドの切断)が遊離溶液中で非結合状態で生じるようにするか、または例えば国際公開第00/49047号に記載されるように、プロテアーゼを固体担体上に固定し、これをVWFプロペプチドを含む調製物(例えば、国際公開第00/49047号参照)と接触させかつこれを用いてインキュベートすることによって成熟VWFを産生する。しかしながら、これらの方法には、本発明による方法と比較して様々な短所がある。
産業的には、VWF、特に組み換えVWF(rVWF)は、遺伝子改変されたCHO細胞株中のrFVIIIと共に合成および発現される。同時発現されたrVWFの機能は、細胞培養プロセスにおいてrFVIIIを安定させることである。rVWFは、N−末端に付着された大きいプロペプチドを含有するプロ型として細胞中で合成される。小胞体およびゴルジ体中での成熟時、プロペプチドは、細胞プロテアーゼフリンの作用によって切断され、発現されたタンパク質の二量体からなる同一のサブユニットのホモポリマーとして分泌される。しかしながら、成熟は不完全であり、プロペプチドおよび成熟VWFの混合物を含む産生物をもたらす。
本発明の方法の高い効力のため、組み換え合成プロセスの間に発現された未成熟VWFプロペプチドは、成熟したVWFに実質的に完全に変換される。この方法によって入手可能な調製物は、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、なお一層好ましくは少なくとも99%の成熟VWFをそのVWFプロペプチド型に対して含み得る。
VWFプロペプチドが、フリンまたはフリン様プロテアーゼを用いたin vitro処理により成熟型に変換され得ることが以前の刊行物において示されている(Schlokat U.ら(1996)Biotechnol.Appl.Biochem.24:257−267;Preininger A.ら(1999)Cytotechnology 30:1−15)。フリンはプロタンパク質転換酵素のファミリーに属し、Ca++に依存する。この酵素は、位置−1および−4にアルギニンを含有する特定の配列内のアルギニンのC−末端ペプチド結合を特異的に切断する。この配列は、多くのヒトタンパク質において見出すことができ、フリンが多くのヒトプロペプチド−タンパク質の成熟において主要な役割を果たすことを示している。
本発明の方法において用いられるフリンは、好ましくは、組み換え起源である。組み換え的に産生されるプロテアーゼは、大量に産生され得るので、有利に用いられる。
従来方法とは対照的に、VWFプロペプチドは、固体支持体(すなわち、イオン交換樹脂)上に、成熟タンパク質がその成熟反応後に前記支持体上に固定されたままになるように固定される。これは、当該技術分野において知られている方法と比較していくつかの利点を有する。
本発明の方法は、精製ステップ、好ましくはクロマトグラフィー精製ステップを、VWFプロペプチドの成熟反応と組み合わせる。従って、プロペプチドまたはプロテアーゼを除去するための別個のプロセスステップは、まったく必要とされない。それとは対照的に、当該技術分野において知られている方法は、成熟タンパク質が、タンパク質/プロテアーゼ/プロペプチド混合物からか、またはタンパク質/プロペプチド混合物からさらに精製されることを常に必要とした。本発明の方法におけるVWFプロペプチドは好ましくは、フロースルー中に含まれる、または少なくとも1つの洗浄ステップにより固体支持体から除去されるのに対し、成熟タンパク質は、このプロセス全体を通して固体支持体に結合されたままである。それゆえ、本発明の方法は、従来技術の方法と比較してプロセス経済性を向上させ、そのプロペプチド型からの成熟タンパク質の産生を促進する。
本発明による方法のさらなる利点は、フリンが、前記プロテアーゼまたは細胞抽出物を分泌する細胞株の粗製細胞培養上清から得ることができることである。従って、イオン交換樹脂上に結合されたプロタンパク質を成熟させるために、プロタンパク質転換酵素の精製は、まったく必要とされない、または部分的精製しか必要とされない。
成熟VWFへのVWFプロペプチドの成熟後、イオン交換樹脂上に固定された成熟タンパク質は、望ましくない分子を樹脂から除去するために洗浄されてもよい。これらの分子としては、VWFプロペプチドまたは他のタンパク質およびインキュベーションの間に前記樹脂に付加された化合物が含まれる。
成熟VWFタンパク質がイオン交換樹脂から溶出されると、本発明の方法は終了される。これにより、さらなるプロセスステップの必要なしで、イオン交換樹脂上の成熟VWFの精製が可能になるので、このことは特に有利である。また、これにより、例えば、溶出前にVWFプロペプチドを除去するための洗浄ステップの付加も考慮される。従って、本発明の方法における溶出は、VWFプロペプチドを活性化するために必要とされる緩衝液または溶液によってではなく、所望の特性を有する溶出緩衝液を用いて達成され得る。
VWFプロペプチドは、組み換え的に大量に産生され得るので、これは、本発明の方法におけるVWFプロペプチドの好ましい供給源である。しかしながら、本発明において用いられるVWFプロペプチドは、組み換え的に得られたものだけに限定されない。本発明の方法は、血漿、血漿画分およびそれらから誘導された溶液を含むがそれらに限定されない任意の供給源から得られたVWFプロペプチドを用いて使用することができる。本発明に従って成熟されるVWFプロペプチドは、様々な供給源を起源とすることができ、それによって、VWFは、精製された形態、部分的に精製された形態または未精製の形態でさえも提供され得る。もしVWFプロペプチドが部分的に精製された形態または未精製の形態で提供されれば、いくつかの構成要素(不純物)が、成熟プロセスを阻害または部分的に阻害し得ることが考慮されるべきである。
本発明の方法において組み換え起源のVWFプロペプチドを使用することが好ましいので、VWFプロペプチド含有溶液は、組み換え細胞培養物から調製された培地上清であってもよい。当然、本発明のVWFプロペプチドの供給源が、成熟のために使用され得る部分的に精製された、組み換え的に産生されたVWFプロペプチドを含むことも可能である。
本発明の好ましい実施形態によれば、イオン交換樹脂は、トリメチルアミノエチル基(TMAE)を含む。VWFプロペプチドと結合することができる当該技術分野において知られている他のイオン交換樹脂も適している。
成熟プロセスを促進しかつ樹脂上で高濃度に固定されたVWFプロペプチドを提供するために、本発明の1つの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂がクロマトグラフィーカラム中に充填される。VWFプロペプチドのin vitro成熟の間のVWFプロペプチド濃度が成熟効率に影響を及ぼすので、クロマトグラフィー樹脂をカラムに充填することが有利である。さらに、クロマトグラフィーカラムの使用により、より再現性のあるやり方で成熟のパラメータを効率的に制御することが可能になり、in vitroでVWFの成熟を実行することがより簡単になる。
もしVWFプロペプチドが陰イオン交換樹脂上に固定され、VWFプロペプチド転換酵素活性を示す溶液によってインキュベートされれば、25℃で測定される導電率は、本発明の1つの実施形態においては25mS/cm未満、本発明の別の実施形態においては20mS/cm未満、および本発明の別の実施形態においては16mS/cm未満である。
VWFプロペプチドならびにVWFは、これらの導電率レベルにおいて陰イオン交換樹脂上に効率的に固定され得る。その結果、本発明の方法の間に適用される緩衝液は、それに応じて適合される必要がある。
成熟VWFは陰イオン交換樹脂から、本発明の1つの実施形態においては少なくとも40mS/cm、本発明の別の実施形態においては少なくとも60mS/cm、および本発明の別の実施形態においては少なくとも80mS/cmの、25℃で測定される導電率において溶出される。
当然、成熟VWFが陰イオン交換樹脂から溶出される前に、さらなる洗浄ステップを適用することが可能である。
本発明の1つの実施形態によれば、フリンは、CaCl2を0.01〜10mMの濃度で、別の実施形態によれば、0.1〜5mMの濃度で、そして別の実施形態によれば、0.2〜2mMの濃度でさらに含む。
それらのタンパク質分解活性のために、多くのプロテアーゼは、二価金属イオンのような補因子を必要とする。フリンはその活性のために、カルシウムイオンを必要とする。従って、VWFをin vitroで活性化するためにフリンが使用されるのであれば、カルシウム塩が使用される。最も好ましいカルシウム塩は、塩化カルシウムである。
固定されたVWFプロペプチドを用いたフリンのインキュベーション時間は、用いるシステムに応じて変わり得る。また、温度、緩衝液等の要因は、成熟プロセスの効率に影響を及ぼす。しかしながら、当業者は、最も適切なインキュベート時間を識別し、これを選ぶことができる。一般に、成熟プロセスは、48時間未満で終了され、すでに1分以下が成熟VWFをそのプロフォームから産生するのに十分であり得る。フリンの高い特異性のため、VWFの「過活性化」(さらなるタンパク質分解)は、長期のインキュベーション時間の後でさえも生じない。
本発明の1つの実施形態によれば、インキュベーションは、1分間未満〜48時間、別の実施形態においては10分間〜42時間、別の実施形態においては20分間〜36時間、さらに別の実施形態においては30分間〜24時間にわたり実行される。
成熟プロセスはまた、インキュベーションの間に選ばれる温度に依存する。フリンの最適酵素活性は、温度によって変わる。
本発明の1つの実施形態によれば、インキュベーションは、2〜40℃の温度で実行され、別の実施形態においては4〜37℃で実行される。フリンは、2℃のような低温ですでに効率的に活性であり得る。非特異的なタンパク質分解がまったくまたは実質的にまったく生じないように、最高温度を選ぶように注意が払われるべきである。本発明の1つの実施形態において、使用される最高温度が50℃より低い場合、別の実施形態おいて45℃より低い場合に、これは一般に達成される。
本発明のさらに別の態様は、本発明による方法によってVWFプロペプチドから入手可能なVWF調製物に関する。本発明の方法は、高いプロセス効率のためにVWFプロペプチドを実質的に含まないVWFを提供する。
本発明の別の態様は、本発明によるVWF調製物を含む薬学的調製物に関する。この薬学的調製物は、特に血液凝固疾患を処置するために使用することができ、他の血液凝固因子のような他の活性成分と組み合わせることができる。さらに、この調製物は、薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤も含み得る。
本発明のさらなる態様は、フォンビルブラント疾患(VWD:von Willebrand disease)の処置のための医薬を製造するために本発明によるVWF調製物を使用することに関する。
実施例1
フリンのカルシウム依存性
フリンに関する酵素的研究(Molloy S.E.ら(1992)J.Biol.Chem.267:16396−16402)は、その活性がCa2+に依存することを明らかにしており、結晶構造の評価(Than ら(2005)Acta Cryst.D61:505−512)は、分子がCa2+のための2つの結合部位を有することを示している。Cameronら(Cameron A.ら(2000)J.Biol.Chem.275:36741−367499)は、Ca2+濃度が50mMに増大された場合に、活性において差がない全活性について少なくとも1mMのカルシウム濃度をフリンが必要とすることを記載した。第1の一連の実験において、社内開発された組み換えフリンのカルシウム依存性を試験および定量化した。フリンを、実験用CHOクローンCHO257/1 638−25から発現させ、C−末端にHis−標識を含有する可溶性酵素として細胞培地中に分泌した。Ni−キレートクロマトグラフィーによって事前精製したフリンの調製物を、合成ペプチドBoc−Arg−Val−Arg−Arg−AMCを基質として用いて活性決定にかけた。VWFプロペプチド成熟反応を、Ca2+を0〜40mMの範囲で含有するアッセイ緩衝液中で実行した。図1に示される結果は、CHO細胞株から発現された組み換え可溶性フリンが、明らかなカルシウム依存性を示し、0.5〜1mMのCa2+濃度において最大活性が見られるだけでなく、5mMより高い濃度においてカルシウムによる有意な阻害も見られるという文献データを立証している。rVWFの原料がかなりの量のCa2+を含有する場合、カルシウムのこの阻害可能性を考慮に入れる必要がある。
フリンのカルシウム依存性
フリンに関する酵素的研究(Molloy S.E.ら(1992)J.Biol.Chem.267:16396−16402)は、その活性がCa2+に依存することを明らかにしており、結晶構造の評価(Than ら(2005)Acta Cryst.D61:505−512)は、分子がCa2+のための2つの結合部位を有することを示している。Cameronら(Cameron A.ら(2000)J.Biol.Chem.275:36741−367499)は、Ca2+濃度が50mMに増大された場合に、活性において差がない全活性について少なくとも1mMのカルシウム濃度をフリンが必要とすることを記載した。第1の一連の実験において、社内開発された組み換えフリンのカルシウム依存性を試験および定量化した。フリンを、実験用CHOクローンCHO257/1 638−25から発現させ、C−末端にHis−標識を含有する可溶性酵素として細胞培地中に分泌した。Ni−キレートクロマトグラフィーによって事前精製したフリンの調製物を、合成ペプチドBoc−Arg−Val−Arg−Arg−AMCを基質として用いて活性決定にかけた。VWFプロペプチド成熟反応を、Ca2+を0〜40mMの範囲で含有するアッセイ緩衝液中で実行した。図1に示される結果は、CHO細胞株から発現された組み換え可溶性フリンが、明らかなカルシウム依存性を示し、0.5〜1mMのCa2+濃度において最大活性が見られるだけでなく、5mMより高い濃度においてカルシウムによる有意な阻害も見られるという文献データを立証している。rVWFの原料がかなりの量のCa2+を含有する場合、カルシウムのこの阻害可能性を考慮に入れる必要がある。
実施例2
VWF濃度に対する依存性
古典的な酵素動態から推論されるように、より高い基質濃度によって、より少ないフリン消費量またはより短い成熟時間でのVWF成熟を可能にする酵素のより高い代謝回転速度がもたらされる可能性があることが考慮された。従って、VWF成熟実験は、基準化インキュベート容量中で5単位フリン/U VWF Agを用いて、1、5および10単位/mlのVWF濃度において実施した。37℃での0、6および24時間のインキュベーションの時点で抜き取ったサンプルを、SDS−PAGEにより分析した。図2に示される結果は、VWF濃度がより高いほどVWF成熟がより速くなり、この酵素ステップのためのインキュベーション時間の低減を可能にするであろうことを立証している。
VWF濃度に対する依存性
古典的な酵素動態から推論されるように、より高い基質濃度によって、より少ないフリン消費量またはより短い成熟時間でのVWF成熟を可能にする酵素のより高い代謝回転速度がもたらされる可能性があることが考慮された。従って、VWF成熟実験は、基準化インキュベート容量中で5単位フリン/U VWF Agを用いて、1、5および10単位/mlのVWF濃度において実施した。37℃での0、6および24時間のインキュベーションの時点で抜き取ったサンプルを、SDS−PAGEにより分析した。図2に示される結果は、VWF濃度がより高いほどVWF成熟がより速くなり、この酵素ステップのためのインキュベーション時間の低減を可能にするであろうことを立証している。
同様に、濃縮したVWF調製物を使用し、0.5〜4.0単位フリン/単位VWF Agによって37℃で成熟反応を行った場合、結果は、95%超のVWF成熟グレードが、5単位未満のフリン/単位VWF Agによって24時間以内のインキュベーションで達成され得ることを示している(図3参照)。
この実施例によって示されるように、本発明は、カラム上の基質VWFプロペプチドの局所的濃度が非常に高い場合に、フリン成熟効力をさらに向上させる。VWFプロペプチドのより高い濃度も、成熟速度を増大させることが示された。
実施例3
VWF成熟
この実施例では、フリンを用いたVWFプロペプチド成熟を示す。フリンを、クロマトグラフィーカラム上に結合されたVWFプロペプチドと接触させる。クロマトグラフィーステップは、TMAE陰イオン交換樹脂上で実行した。TMAE精製ステップの詳細は表1に記載してあり、緩衝液処方は表2にまとめてある。この設定を適用して、結合VWFプロペプチドのオンカラム成熟のための種々の手順を調べたが、これには、パラメータ、すなわち温度、接触時間、NaCl含有量および比フリン量を同時に変えての、フリンの循環ポンピングまたは順流ポンピングが含まれる。溶出液プール中で見出されるVWFを、SDS−PAGEおよびVWFプロペプチド/VWF比の目視評価(例えば、図4参照)により成熟グレードについて調べた。
VWF成熟
この実施例では、フリンを用いたVWFプロペプチド成熟を示す。フリンを、クロマトグラフィーカラム上に結合されたVWFプロペプチドと接触させる。クロマトグラフィーステップは、TMAE陰イオン交換樹脂上で実行した。TMAE精製ステップの詳細は表1に記載してあり、緩衝液処方は表2にまとめてある。この設定を適用して、結合VWFプロペプチドのオンカラム成熟のための種々の手順を調べたが、これには、パラメータ、すなわち温度、接触時間、NaCl含有量および比フリン量を同時に変えての、フリンの循環ポンピングまたは順流ポンピングが含まれる。溶出液プール中で見出されるVWFを、SDS−PAGEおよびVWFプロペプチド/VWF比の目視評価(例えば、図4参照)により成熟グレードについて調べた。
成熟効力に影響を及ぼすさらなるパラメータは、フリン試薬の品質であった。フリンは、His−標識フリン(実験用CHO257/1 638−25)を低発現レベルで発現するクローンおよび/または標識のない可溶性フリンを高発現レベルで発現するクローンの細胞培養上清から調達された。表3にまとめてある結果は、37℃(1時間の接触時間)での効率的な成熟が、2.4単位フリン/単位VWF Ag(カラム上に結合)と同じくらい低い比フリン量で達成できるかもしれないことを示している。2〜8℃で、95%超の成熟が、4時間の接触時間で3.3単位/単位VWF Agの比フリン量で得られるかもしれない。150mM NaClのイオン強度において、オンカラム成熟の全効力は、これらの条件でフリンをイオン交換樹脂に結合されないままにしておくことによって、90mM NaClと比較して良好であった。
表4aおよび表4bに、溶出液プール中のCHOタンパク質およびフリンプロテアーゼ活性についての不純物プロフィールが、TMAE上でのVWF成熟ステップに適用されたパラメータと関連して示してある。結果は、成熟の間に最も多量の付加的なCHO細胞培養上清がカラム上にポンピングされた「His−標識」実験用クローン(低発現レベル)由来のフリン濃縮物が、最も高いCHO不純物レベルという結果になったことを示す。GMPクローン由来のフリンを用いた成熟ステップからのデータは、溶出液プール中の比較的低いCHO汚染レベルという結果になり、カラム上にポンピングされた付加的なCHO細胞培養物容量は、VWF産物ロードの間にカラム上にロードされた容量の2%未満であった。VWFプロペプチド成熟のために必要とされる低いフリン細胞培養物容量は、溶出液プール中のCHO不純物レベルがフリン試薬によって有意に影響されるべきではなくかつ主としてVWF供給源により引き起こされるはずであることを示唆しているであろう。同様な汚染プロフィールが、「CHO不純物」のように振る舞うフリンプロテアーゼ活性について検出できるかもしれない。
溶出液プールはまた、付加的なタンパク質分解の観点からVWF品質についてアガロースゲル電気泳動により調べた。付加的なタンパク質分解は、VWF多量体構造体の主バンドの側面に「サテライト」バンドと呼ばれる微弱な付加的なバンドが配置される2.5%ゲル上でのアガロースゲル電気泳動によりうまく視覚化され得る。いくつかのロットのウェスタンブロット結果は、適用された条件にかかわらず、オンカラム成熟後のVWF TMAE溶出液プール上での顕著なサテライトバンド形成が皆無であることを示す。
オンカラム成熟の条件下でフリンが正しい切断部位を使っているかどうかをチェックするために、溶出液プール中に見られる成熟VWFをN−末端配列について分析した。バッチCR33、CR35およびCR36からのVWFを配列決定し、見出されたN−末端配列は、成熟VWFについての予想される未変性の配列(N−termSLSCRPPMV...)と一致し、in vitro処理ステップの品質をさらに裏付けている。
実施例4
オンカラム成熟−パイロット規模実施
フリンを用いたVWFプロペプチドのオンカラム成熟を、1バッチあたり約16gVWFの総ロードを適用して、30cm直径の9リットルカラムにおいてパイロット規模で実施した。プロセスを、実験室規模のランCR35に従って、2〜8℃で、8時間のフリン成熟時間で実行した。パイロット規模用の計画されたTMAE捕獲/成熟手順が表5にまとめてある。成熟のため、洗浄2、活性化および洗浄3を、ローディング後、ただし溶出前に導入した。成熟VWFの溶出のため、段階溶出を適用した。
オンカラム成熟−パイロット規模実施
フリンを用いたVWFプロペプチドのオンカラム成熟を、1バッチあたり約16gVWFの総ロードを適用して、30cm直径の9リットルカラムにおいてパイロット規模で実施した。プロセスを、実験室規模のランCR35に従って、2〜8℃で、8時間のフリン成熟時間で実行した。パイロット規模用の計画されたTMAE捕獲/成熟手順が表5にまとめてある。成熟のため、洗浄2、活性化および洗浄3を、ローディング後、ただし溶出前に導入した。成熟VWFの溶出のため、段階溶出を適用した。
パイロット規模での13の捕獲/オンカラム成熟ステップについてのデータが表6にまとめてある。
表6のデータは、オンカラムでのフリン成熟が効果的であり、VWFプロペプチド含有量を、ロード材料中の平均55.4%VWFプロペプチド抗原から溶出液プール中の総VWF Agの平均1.3%のVWFプロペプチド抗原に低減され得ることを示している。平均98.7%成熟VWF Ag/総VWF Agという溶出液プール中のVWF産物の成熟レベルは、表に示される条件下でカラム上にロードされた平均0.9単位フリン/単位VWF抗原のフリン使用により達成され得る。非常に低濃度のrフリン(0.1単位/単位rVWF)において、成熟プロセスは、より多量の残留VWFプロペプチドという結果になった。
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