JP2012210020A - 車体振動制御装置、および車体振動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK1(>0)を乗算する。また、上下力Fzf、Fzrに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK2(>0)を乗算する。さらに、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK3(<0)を乗算する。これにより、当該変動を助長する方向の駆動トルクとする。そして、これらの乗算結果を合計し、合計値を基にドライバ要求トルクを補正する。
【選択図】図12
Description
この特許文献1に記載の技術では、操舵速度、横G、およびヨー角加速度等に基づいて運転者の操舵状態を推定し、推定した操舵状態に応じて車体の振動(例えば、車体のバウンスやピッチ挙動)を抑制する制振制御に用いるフィードバックゲインを増大させる。これにより、フィードバック値の絶対値を増大し、車体のバウンスやピッチ挙動をより確実に抑制し、車両の操縦安定性の向上を図るようになっている。
本発明は、上記のような点に着目し、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることを課題としている。
(第1実施形態)
本実施形態の車体振動制御装置は、前輪駆動式の4輪電気自動車に搭載し、動力源である制駆動モータが発生するトルクを制御することで、車体のばね上挙動を制御するものである。具体的には、本実施形態の車体振動制御装置は、輪荷重変動の抑制、操舵応答性の向上、およびロール挙動の抑制を可能とするためのものである。
図1は、第1実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
図1に示すように、車両1は、操舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキペダル踏力センサ4、および車輪速センサ5を備える。
操舵角センサ2は、ステアリングコラムに配設し、ステアリングホイール6による操舵角δoを検出する。そして、操舵角センサ2は、ステアリングホイール6による操舵角δoの検出結果を表す検出信号を後述する制駆動モータECU12に出力する。
ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルに配設し、ブレーキペダルの踏力を検出する。そして、ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルの踏力の検出結果を表す検出信号を制駆動モータECU12に出力する。
また、車両1は、インバータ7、制駆動モータ8および変速機9を備える。ここで、インバータ7、制駆動モータ8、変速機9は、後述するトルク付加手段100を構成する。
制駆動モータ8は、インバータ7が供給する電力に応じてトルクを発生する。そして、制駆動モータ8は、発生したトルクを変速機9に出力する。
さらに、車両1は制駆動モータECU12を備える。ここで、制駆動モータECU12は、後述する挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップを構成する。
制駆動モータECU12は、マイクロプロセッサが実行するプログラムにより、図3の制御ブロックを構成する。この制御ブロックは、ドライバ要求トルク演算部13、加算器14、トルク指令値演算部15および駆動力車体制振制御部16を備える。ここで、ドライバ要求トルク演算部13は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。また、加算器14は、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段102、助長トルク制御ステップを構成する。さらに、駆動力車体制振制御部16は、挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップを構成する。
加算器14は、ドライバ要求トルク演算部13が出力したドライバ要求トルクに、駆動力車体制振制御部16が出力したドライバトルク補正値を加算する。これにより、ドライバ要求トルクを補正する。ドライバトルク補正値とは、ドライバ要求トルク、車輪速VwFL〜VwRR、および操舵角δoに基づき、後述するように駆動力車体制振制御部16が算出する補正値である。そして、ドライバ要求トルク演算部13は、補正したドライバ要求トルクを補正後要求トルクとしてトルク指令値演算部15に出力する。
図2に示すように、このブロック図は、トルク付加手段100、挙動推定手段101、抑制トルク制御手段102、および助長トルク制御手段103を備える。
トルク付加手段100は、車輪に駆動トルクを付加する。また、トルク付加手段100は、後述する抑制乗算値算出手段105が算出した乗算結果と後述する助長乗算値算出手段107が算出した乗算結果との合計値を算出し、算出した合計値に基づいて、このトルク付加手段100が付加する駆動トルクを制御する。
挙動推定手段101は、運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する。そして、挙動推定手段101は、車体のばね上挙動の推定結果を抑制トルク制御手段102および助長トルク制御手段103に出力する。
図5は、駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
図4に示すように、駆動力車体制振制御部16は、入力変換部17、車体振動推定部18およびトルク指令値算出部19を備える。ここで、入力変換部17は、挙動推定手段101、挙動推定ステップを構成する。また、車体振動推定部18は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。さらに、トルク指令値算出部19は、助長トルク制御手段103、およびトルク制御ステップを構成する。
図7は、サスストローク算出部21の動作を表すフローチャートである。
サスストローク算出部21は、車輪速センサ5が出力した検出信号、つまり、車輪速VwFL〜VwRRを表す検出信号に基づいて、前後輪5FL〜5RRのサスペンションのストローク量Zf、Zrおよびストローク速度dZf、dZrを算出する。具体的には、図6に示すように、サスストローク算出部21は、平均前輪速演算部34、平均後輪速演算部35、前輪用バンドパスフィルタ処理部36、後輪用バンドパスフィルタ処理部37、前輪サスストローク算出部38および後輪サスストローク算出部39を備える。
このように、本実施形態では、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分fVwF、fVwRのみを抽出するようにした。それゆえ、車両1全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから除去でき、車体振動を表す車輪速成分のみを抽出することができる。
図9は、前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
図10は、後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
前輪サスストローク算出部38は、前輪用バンドパスフィルタ処理部36が抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFに基づいて、前輪5FL、5FRの前後方向変位Xtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部38は、算出した前後方向変位Xtfに時間微分を行って時間微分値dXtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部38は、算出した前後方向変位Xtfおよび時間微分値dXtfに基づき、下記(1)(2)式に従ってサスペンションのストローク量Zfおよびストローク速度dZfを算出する(図7のステップS204)。そして、前輪サスストローク算出部38は、算出結果を上下力変換部22に出力する。
Zf=KgeoF・Xtf ・・・(1)
dZf=KgeoF・dXtf ・・・(2)
Zr=KgeoR・Xtr ・・・(3)
dZr=KgeoR・dXtr ・・・(4)
旋回挙動推定部24は、車体速度推定部23が出力した検出信号、および操舵角センサ2が出力した検出信号に基づき、下記(5)(6)式に従ってヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを算出する。そして、旋回挙動推定部24は、算出したヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを旋回抵抗推定部25に出力する。また、旋回挙動推定部24は、これら算出結果とともに、操舵角センサ2の検出信号が表す操舵角δoも出力する
Fcf=βf・Fyf ・・・(7)
βf=βv+Lf・γ/V−δ
Fyf=βf・Cpf
ここで、βfは前輪5FL、5FRのスリップ角、Fyfは前輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
Fcr=βr・Fyr ・・・(8)
βr=βv−Lr・γ/V
Fyr=βr・Cpr
ここで、βrは後輪5FL、5FRのスリップ角、Fyrは後輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
挙動推定手段101を構成する車体振動推定部18は、入力変換部17が出力した駆動トルクTw、上下力Fzf、Fzrおよび旋回抵抗Fcf、Fcrに基づいて、車体のばね上挙動を構成する成分を算出する。具体的には、車体振動推定部18は、車両モデル26を備える。ここで、車両モデル26は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。
挙動推定手段101を構成する車両モデル26は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分、上下力Fzf、Fzrに起因する成分、および旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分を算出する。すなわち、車体のばね上挙動は種々の物理量で表すことができ、また、これら種々の物理量のそれぞれが種々の成分を含んでなるところ、車両モデル26は、これら種々の成分のうち、上記した3つの成分を個別に算出する。ここで、車体のばね上挙動としては、車体のピッチ軸回りの回転運動、およびバウンス方向の上下運動を採用できる。また、車体のばね上挙動を表す物理量としては、車体のバウンス速度dZv、バウンス量Zv、ピッチ角速度dSp、ピッチ角Spを採用できる。これら物理量dZv、Zv、dSp、Spは、下記(9)(10)式に示すように、前輪荷重Wf、および後輪荷重Wrを定義するうえで必要となるパラメータである。
Wf=−2Kf(Zv+Lf・θp)−2Cf(dZv+Lf・dθp/dt) ・・・(9)
Wr=−2Kr(Zv+Lr・θp)−2Cr(dZv−Lr・dθp/dt) ・・・(10)
また、車両モデル26は、上下力変換部22が出力した上下力Fzf、Fzrに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を算出する。上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2の算出は、Tw、Fcf、Fcrを「0」とし、上記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2をトルク指令値算出部19に出力する。
図13は、チューニングゲインの設定方向を説明するための説明図である。
助長トルク制御手段103を構成するトルク指令値算出部19は、車体振動推定部18が出力した車体のばね上挙動を構成する成分に基づいて、ドライバトルク補正値を算出する。具体的には、トルク指令値算出部19は、第1レギュレータ27、第2レギュレータ28、第3レギュレータ29、第1チューニングゲイン乗算部30、第2チューニングゲイン乗算部31、第3チューニングゲイン乗算部32、およびモータトルク変換部33を備える。ここで、第1レギュレータ27および第2レギュレータ28は、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104を構成する。また、第3レギュレータ29は、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長トルク算出手段106を構成する。さらに、第1チューニングゲイン乗算部30および第2チューニングゲイン乗算部31は抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105を構成する。また、第3チューニングゲイン乗算部32は助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長乗算値算出手段107を構成する。さらに、モータトルク変換部33は、トルク付加手段100を構成する。
F1=R-1BTP ・・・(13)
F3=R-1BTP ・・・(15)
このように、本実施形態では、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
このように、本実施形態では、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
ロール挙動は、操舵操作にともなう横Gによって発生する。すなわち、図14(a)に示すように、運転者が操舵操作を行うと、前輪5FL、5FRに横力が発生する。前輪5FL、5FRに横力が発生すると、車体に横Gが発生する。車体に横Gが発生すると、ロール角速度が発生する。それゆえ、ロール角速度の時間波形は、横Gの時間微分値の時間波形と相関を持つ。そのため、横Gの時間微分値を低減することができれば、ロール角速度のピーク値の絶対値を低減できる。その際、単に横Gの時間微分値を低減させると、横Gが低減し、ヨー角速度が低減するため、操舵応答性が低減する。それゆえ、横Gの時間微分値を低減させるとともに、横Gが増大を始めるタイミング、つまり、横Gの立ち上がりを早めることができれば、ロール角速度のピーク値の絶対値を低減しつつ、操舵応答性を向上することができる。そして、このような横Gは、運転者が操舵操作を開始した場合に、操舵操作を開始した後、操舵操作によって発生するロール角速度がピークに達する前に駆動トルクを低減する理想トルクを前輪5FL、5RRに付加することで実現できる。このようにすれば、駆動トルクが低減することで、前輪荷重Wfが増大し、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpが増大する。それゆえ、ヨー角速度γの応答性が増大し、前輪5FL、5FRに加わる横力が早いタイミングで増大する。また、横力が早いタイミングで増大することで、横Gの時間微分値を低減することができる。
図15は、第1実施形態の車体振動制御装置の動作を説明するための説明図である。図15(a)では、第1実施形態の動作を表す物理量の時系列データの波形を表す。また、図15(b)では、比較例の動作を表す物理量の時系列データの波形を表す。
まず、高速道路を走行中、運転者が、車両1を定速で直進走行させるために、アクセル開度を一定とし、ステアリングホイール6を原点位置に保持し、図15(a)の時刻t0に示すように、操舵入力を「0」にしていたとする。すると、図3に示すように、制駆動モータECU12のドライバ要求トルク演算部13が、アクセル開度センサ3が出力する検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力する検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する。そして、ドライバ要求トルク演算部13が、算出したドライバ要求トルクを加算器14および入力変換部17に出力する。ドライバ要求トルク演算部13がドライバ要求トルクを出力すると、図4に示すように、入力変換部17の駆動トルク変換部20が、ドライバ要求トルクに変速機9のギア比を乗算し、乗算結果を駆動トルクTwとして車両モデル26に出力する。駆動トルク変換部20が駆動トルクTwを出力すると、車両モデル26が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を算出する。そして、車両モデル26が、算出結果dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を第1レギュレータ27に出力する。車両モデル26が成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を出力すると、第1レギュレータ27が、成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1に基づいて駆動トルクの制御指令値Aを算出し、算出した制御指令値Aを第1チューニングゲイン乗算部30に出力する。これにより、第1レギュレータ27が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する制御指令値Aを算出する。第1レギュレータ27が制御指令値Aを出力すると、第1チューニングゲイン乗算部30が、制御指令値AにチューニングゲインK1を乗算し、乗算結果を修正制御指令値K1・Aとしてモータトルク変換部33に出力する。これにより、第1チューニングゲイン乗算部30が、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動、つまり、輪荷重の変動を抑制しつつ、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止する方向に駆動トルクの制御指令値Aを調整する。
さらに、ステアリングホイール6による操舵操作の開始後、ヨー角速度γが一定値に収束しつつあるとする。すると、ヨー角速度γの時間微分値が低減することで、ヨー角速度γが増大して、車両1が回転する動きが大きくなる所謂巻き込み現象を抑制できる。また、ヨー角速度γが収束するときに、ヨー角速度γが増大して巻き込み現象が悪化する。
(1)本実施形態では、抑制トルク制御手段102は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。また、助長トルク制御手段103は、旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御する。
このような構成によれば、操舵操作の開始前には、運転者の要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御することで、輪荷重の変動を抑制することができる。また、操舵操作を開始したときには、車輪に加わる旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御することで、ノーズダウン挙動を助長でき、前輪の輪荷重を増大でき、操舵応答性を向上できる。そして、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制することができる。これにより、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることができる。
このような構成によれば、駆動トルクを比較的容易な構成で算出できる。
このような構成によれば、車体のばね上挙動として、輪荷重と一定の関係を有し、かつ駆動トルクで制御可能な物理量を推定できる。
このような構成によれば、車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、およびピッチ角等の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御できる。
このような構成によれば、操舵操作を開始したときに、前輪荷重の変動成分、前輪荷重、ピッチ角速度およびピッチ角等の変動を助長する方向に駆動トルクを制御できる。
(6)挙動推定手段101は、操舵角および車体速度に基づいて、旋回抵抗を推定する。
このような構成によれば、旋回抵抗を比較的容易な構成で算出できる。
(7)挙動推定手段101は、車輪速度に基づいて、路面外乱を推定する。
このような構成によれば、路面外乱を比較的容易な構成で算出できる。
このような構成によれば、路面外乱をより容易な構成で算出できる。
このような構成によれば、操舵操作の開始前には、運転者の要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御することで、輪荷重の変動を抑制することができる。また、操舵操作を開始したときには、車輪に加わる旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御することで、ノーズダウン挙動を助長でき、前輪の輪荷重を増大でき、操舵応答性を向上できる。そして、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制することができる。これにより、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることができる。
図16は、第1実施形態の車体振動制御装置の応用例を説明するための説明図である。
なお、本実施形態では、制駆動ECU12が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向に駆動トルクを補正する例を示したが、他の構成も採用できる。例えば、図16に示すように、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向に駆動トルクを補正するとともに、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である、後輪荷重Wr3および後輪荷重の変動速度dWr3を抑制する方向に駆動トルクを補正する構成としてもよい。また、後輪荷重Wr3、後輪荷重の変動速度dWr3、後輪荷重の変動加速度等、後輪荷重に関する物理量の少なくともいずれかの変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する構成としてもよい。
(1)本応用例では、旋回抵抗に起因する成分として、後輪荷重に関する物理量を推定し、推定した後輪荷重に関する物理量の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。
このような構成によれば、旋回抵抗に起因する成分のうち、特に変動を助長したい成分(例えば、前輪荷重、前輪荷重の変動速度、ピッチ角速度、およびピッチ角度のいずれか、もしくはこれらの合成値)に制御効果を集中できる。
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な構成等については同一の符号を使用する。
本実施形態は、後輪駆動式で、かつマニュアル変速式の4輪内燃機関自動車(つまり、FR・MT車)に搭載し、動力源であるエンジンが発生するトルクを制御することで、車体のばね上挙動を制御する点が前記第1実施形態と異なる。
具体的には、図17に示すように、本実施形態では、インバータ7、制駆動モータ8、変速機9、バッテリ10、ドライブシャフト11および制駆動モータECUに代えて、エンジン50、MT変速機51およびECM52を備える。ここで、エンジン50およびMT変速機51がトルク付加手段100を構成する。また、ECM52が挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、および助長トルク制御ステップを構成する。
MT変速機51は、エンジン50が出力するトルクをシャフト53、ディファレンシャルギア54およびドライブシャフト55を介して後輪5RL、5RRに付加する。
ECM52は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等から構成した集積回路を備える。そして、ECM52は、メモリが格納するプログラムに従って、センサ類2〜5が出力する検出信号に基づき、エンジン50に出力させるトルクを算出し、算出したトルクを出力させる指令をエンジン50に出力する。
また、図18に示すように、本実施形態では、トルク指令値演算部15がエンジン50にトルク指令値を出力する点が前記第1実施形態と異なる。
図19は、駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
図20は、駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
第1レギュレータ27は、車両モデル26が出力した駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を状態量x(=[dZv1、Zv1、dSp1、Sp1])としてレギュレータゲインF1および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF1とは、状態量xを乗じることで、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。レギュレータゲインF1は、例えば、下記(17)(18)式に従って設定する。
F1=R-1BTP ・・・(17)
このように、本実施形態では、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1およびバウンス速度dZv1の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
また、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vに応じてチューニングゲインK1、K4を可変とする(図20のステップS301)。具体的には、図22に示すように、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値以下の範囲にある場合には、チューニングゲインK1、K4を比較的大きい一定値(例えば、1)に設定する。また、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値より大きい第2閾値以上の範囲にある場合には、チューニングゲインK1、K4を比較的小さい一定値a(例えば、1以下の正値)に設定する。さらに、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合には、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1、K4が直線的に増大するように設定する。これにより、低速域では、修正制御指令値K1・A、K4・Dの絶対値を増大でき、輪荷重の変動を抑制できる。また、高速域では、修正制御指令値K1・A、K4・Dの絶対値を低減でき、輪荷重の変動の抑制効果を低減でき、操舵応答性を低下させてしまうことを防止できる。
このように、本実施形態では、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2およびバウンス量Zv2の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
なお、本実施形態では、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合に、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1〜K5を直線的に変化させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、図23に示すように、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合に、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1〜K5を3次関数的に緩やかに変化させる構成を採用してもよい。このような構成によれば、修正制御指令値K1・A、K2・B、K3・C、K4・D、K5・Eを緩やかに変化させることができ、後輪5RL、5RRに付加する駆動トルクの変化を緩やかなものにすることができる。
エンジントルク変換部56は、修正制御指令値K1・A、K4・D、修正制御指令値K2・B、K5・E、および修正制御指令値K3・Cの合計値にギア比を乗算する。これにより、合計値を駆動軸端値からエンジン端値に変換する。そして、エンジントルク変換部56は、乗算結果をドライバトルク補正値として加算器14に出力する(図20のステップS305)。
(1)本実施形態では、助長乗算算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が設定速度以上である場合に比べ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくする。
このような構成によれば、低速域では操舵角が増大するところ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくすることで、制御量の絶対値が過大となることを防止できる。また、高速域では操舵角が低減するところ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を大きくすることで、制御量の絶対値が過小となることを防止できる。
このような構成によれば、低速域では要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値が大きくなることで、輪荷重の変動、つまり、車体の振動を抑制でき、乗り心地を向上できる。また、高速域では要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値が小さくなることで、輪荷重の変動を抑制する効果、つまり、ノーズダイブ挙動を抑制する効果を低減することができる。それゆえ、操舵操作を開始したときに、操舵応答性が低下することを防止できる。
8は制駆動モータ(トルク付加手段100)
9は変速機(トルク付加手段100)
12は制駆動モータECU(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
13はドライバ要求トルク演算部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
14は加算器(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段102、助長トルク制御ステップ)
16は駆動力車体制振制御部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
17は入力変換部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
18は車体振動推定部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
19はトルク指令値算出部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
22は上下力変換部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
25は旋回抵抗推定部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
26は車両モデル(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
27は第1レギュレータ(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104)
28は第2レギュレータ(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104)
29は第3レギュレータ(助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長トルク算出手段106)
30は第1チューニングゲイン乗算部(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105)
31は第2チューニングゲイン乗算部(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105)
32は第3チューニングゲイン乗算部(助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長乗算値算出手段107)
33はモータトルク変換部(トルク付加手段100)
50はエンジン(トルク付加手段100)
51はMT変速機(トルク付加手段100)
52はECM(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
Claims (12)
- 車輪に駆動トルクを付加するトルク付加手段と、
運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する挙動推定手段と、
前記挙動推定手段が推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記要求駆動トルクに起因する成分の変動および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御する抑制トルク制御手段と、
前記挙動推定手段が推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御する助長トルク制御手段と、を備えたことを特徴とする車体振動制御装置。 - 前記抑制トルク制御手段は、
前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する抑制トルク算出手段と、
前記抑制トルク算出手段が算出した前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを抑制する駆動トルクのそれぞれに正値であるチューニングゲインを乗算する抑制乗算値算出手段と、を備え、
前記助長トルク制御手段は、
前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する助長トルク算出手段と、
前記助長トルク算出手段が算出した前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに負値であるチューニングゲインを乗算する助長乗算値算出手段と、を備え、
前記トルク付加手段は、前記抑制乗算値算出手段が算出した乗算結果と前記助長乗算値算出手段が算出した乗算結果との合計値を算出し、算出した合計値に基づいて、前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御し、
前記抑制乗算値算出手段は、前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインを正値とし、
前記助長乗算値算出手段は、前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインを負値とすることを特徴とする請求項1に記載の車体振動制御装置。 - 前記助長乗算値算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が当該設定速度以上である場合に比べ、前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の車体振動制御装置。
- 前記抑制乗算値算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が当該設定速度以上である場合に比べ、前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値を大きくすることを特徴とする請求項2または3に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、前記要求駆動トルク、前記路面外乱、および前記旋回抵抗に基づき、前記車体のばね上挙動として、車体のピッチ軸回りの回転運動、およびバウンス方向の上下運動を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、前記要求駆動トルクに起因する成分および前記路面外乱に起因する成分として、車体のピッチ角速度、ピッチ角、バウンス速度、およびバウンス量の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を推定することを特徴とする請求項5に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、前記旋回抵抗に起因する成分として、前輪荷重の変動速度、前輪荷重、ピッチ角速度、およびピッチ角の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を推定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、前記旋回抵抗に起因する成分として、後輪荷重に関する物理量を推定し、
前記助長トルク制御手段は、前記挙動推定手段が推定した前記後輪荷重に関する物理量の変動を抑制する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御することを特徴とする請求項7に記載の車体振動制御装置。 - 前記挙動推定手段は、操舵角および車体速度に基づいて、前記旋回抵抗を推定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、車輪速度に基づいて、前記路面外乱を推定することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
- 前記挙動推定手段は、車輪速に基づいて、サスペンションのストローク速度およびストローク量を推定し、推定した前記ストローク速度とサスペンションの減衰係数を乗算し、推定した前記ストローク量とサスペンションのばね定数を乗算し、これらの乗算結果の合計値を前記路面外乱の推定値とすることを特徴とする請求項10に記載の車体振動制御装置。
- 運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する挙動推定ステップと、
前記挙動推定ステップが推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記要求駆動トルクに起因する成分の変動および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に車輪に付加する駆動トルクを制御する抑制トルク制御ステップと、
前記挙動推定ステップが推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に車輪に付加する駆動トルクを制御する助長トルク制御ステップと、を実行することを特徴とする車体振動制御方法。
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