JP2012207261A - 電気電子部品用銅合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気電子部品用銅合金板は、Fe:2.5乃至3.5質量%及びP:0.001乃至0.050質量%を含有し、Mg、Sn及びZnが適量添加されており、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、Cu母相中に第二相が析出した二相組織を有する。そして、圧延方向及び板厚方向からなる断面において、母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnが2乃至15μmであり、母相の圧延方向における平均結晶粒径をDLとして、板厚方向における平均結晶粒径Dnに対する比DL/Dnが1.5以上であり、第二相粒子の圧延方向における平均結晶粒径をDL2、第二相粒子の板厚方向における平均結晶粒径をDn2として、比DL2/Dn2が5以下である。
【選択図】なし
Description
Feは銅合金板の製造工程において、熱処理により、Pと結びついてFe−P系化合物を生成し、銅合金組織内にFe−P系化合物が析出して第二相粒子が形成されることにより、強度特性及び導電性が向上する。また、Feの添加により、銅合金の耐熱性も改善される。更に、Cu合金中にFe単体を分散させることによっても、強度特性が向上する。Feの含有量が2.5質量%を下回ると、銅合金材料の強度特性を向上させる効果を十分に得られなくなる。一方、Feの含有量が3.5質量%を超えると、銅合金板の曲げ加工性が低下しやすくなる。よって、本発明においては、電気電子部品用銅合金に必要な強度特性を得るために、Feの添加量を2.5乃至3.5質量%とする。Feの添加量は、望ましくは2.6乃至3.0質量%である。
Pは銅合金板の製造工程において、熱処理により、Feと結びついてFe−P系化合物を生成し、銅合金組織内にFe−P系の第二相粒子が析出することにより、強度特性及び導電性が向上する。また、Pの添加により、銅合金の耐熱性も改善される。更に、Cu合金に固溶したPは耐応力緩和特性を向上させる。Pの含有量が0.001質量%を下回ると、Fe−P系化合物の生成が不十分となり、銅合金材料の強度特性を向上させる効果を十分に得られなくなり、Pの含有量が0.050質量%を上回ると、銅合金板の導電性、曲げ加工性が低下しやすくなる。よって、本発明においては、電気・電子部品用銅合金に必要な強度特性を得るために、Pの添加量を0.001乃至0.050質量%とする。
端子等の電気電子部品用銅合金に要求される曲げ加工性は、一般的には、平均結晶粒径が小さく、かつ結晶粒径のばらつきが小さいほど良好となる。平均結晶粒径を小さくするためには、再結晶を伴う焼鈍温度を比較的低温に制御する方法があるが、Cu−Fe−P系合金の結晶粒成長は局部的に不均一になることが多く、そのため、ある程度結晶粒を成長させた組織の方が、曲げ加工性の確保には好適である。圧延方向及び板厚方向を含む断面において、母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnが2μm未満であると、組織中に再結晶前の圧延組織が残留し、曲げ加工性及び耐応力緩和特性が劣化する。また、再結晶後の冷間加工量が大きいことにより、母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnが2μm未満となる場合においても、組織中に過剰な歪みが蓄積されて曲げ加工性が劣化する。一方、母相の平均結晶粒径Dnが15μmを超えると、結晶粒界への応力集中が顕著となり、曲げ加工性が劣化する。よって、本発明においては、母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnを2乃至15μmとする。母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnは、望ましくは5乃至10μmである。
銅合金板において、結晶粒の形状は曲げ加工性に大きな影響を与える。即ち、一般的には、圧延が施された銅合金板は、曲げ加工の際に、圧延方向に平行方向の曲げ軸を中心とした曲げ加工(B.W.(Bad Way)曲げ)が施されるが、近時の電気電子部品への小型化への要求から、圧延方向に垂直な(板厚)方向の曲げ軸を中心とした曲げ加工(G.W.(Good Way)曲げ)における加工性の向上も望まれている。よって、本発明においては、特に、G.W.曲げ加工性に優れた銅合金板を得るために、圧延方向及び板厚方向を含む断面において、母相の圧延方向における平均結晶粒径DLを、母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnに対する比DL/Dnで1.5以上に制御する。この比DL/Dnが1.5未満であると、G.W曲げ加工性が低下し、例えば曲げ加工後の銅合金材料の外表面に割れが発生する。
Cu−Fe−P系合金においては、Fe−P化合物又はFeが母相中に析出して第二相粒子が形成され、これがCu母相中に分散することによって高い強度特性が得られる。この第二相中のFe−P化合物及びFeに起因する第二相粒子は、銅合金の曲げ加工性に大きく影響を及ぼす。本発明においては、圧延方向及び板厚方向を含む断面において、第二相粒子の圧延方向における平均結晶粒径DL2を板厚方向における平均結晶粒径Dn2に対する比DL2/Dn2で最適化することにより、電気電子部品用材料として使用される銅合金板において、特に、G.W.曲げの際に有用な曲げ加工性が得られる。即ち、第二相粒子の圧延方向における平均結晶粒径DL2は、第二相粒子の板厚方向における平均結晶粒径Dn2に対する比DL2/Dn2が5以下であり、望ましくはDL2/Dn2が4以下、更に望ましくはDL2/Dn2が2以下である。この比DL2/Dn2が5を超えると、例えば曲げ加工後の銅合金材料の外表面に割れが発生する。
本発明の銅合金材料を電気電子部品に加工した際には、例えばその表面には、Snめっきが施されるが、Znを添加することによって、Snめっきの耐熱剥離性が向上する。このSnめっきの耐熱剥離性を向上させるために、Znを添加する場合には、0.5質量%以上添加することが好ましい。一方、Znの含有量が2.0質量%を超えると、銅合金板の曲げ加工性及び導電率が低下しやすくなるため、Znの含有量は0質量%以上2.0質量%以下とする。
Mgは組織中に固溶することによって、銅合金板の強度特性及び耐応力緩和特性を向上させる。その効果を得るために、Mgを添加する場合には、0.01質量%以上添加することが好ましい。一方、Mgの添加量が0.40質量%を超えると、曲げ加工性及び導電率が低下しやすくなるため、Mgの含有量は0質量%以上0.40質量%以下とする。また、Mgの添加量は0.05乃至0.40質量%であることが好ましい。
Snは、Mgと同様に、組織中に固溶することによって、銅合金板の強度特性及び耐応力緩和特性を向上させる。その効果を得るために、Snを添加する場合には、0.03質量%以上添加することが好ましい。一方、Snの添加量が1.50質量%を超えると、曲げ加工性及び導電率が低下しやすくなるため、Snの含有量は0質量%以上1.50質量%以下とする。また、Snの添加量は0.1乃至1.0質量%であることがより好ましく、更に好ましくは0.2乃至0.7質量%である。
Crは、銅合金板の熱間加工性を向上させる。その効果を得るために、本発明においては、Crを0.001質量%以上添加することが好ましい。一方、0.300質量%を超えるCrは、銅合金組織中に晶出物を生成させて、銅合金板の曲げ加工性が低下しやすくなる。従って、Crの含有量は0.001乃至0.300質量%であり、更に0.001乃至0.100質量%であることが好ましい。
Mnは、銅合金板の熱間加工性を向上させる。その効果を得るために、本発明においては、Mnを0.01質量%以上添加することが好ましい。一方、Mnの添加量が0.50質量%を超えると、銅合金板の導電率が低下しやすくなる。従って、Mnの含有量は0.01乃至0.50質量%であり、更に0.01乃至0.30質量%であることが好ましい。
Siは、銅合金板の強度特性及び耐応力緩和特性を改善させる。その効果を得るために、本発明においては、Siを0.01質量%以上添加することが好ましい。一方、Siの添加量が0.10質量%を超えると、銅合金板の導電性が低下しやすくなる。従って、Siの含有量は0.01乃至0.10質量%であることが好ましい。
Niは、強度特性を改善させるために、0.01質量%以上添加することが好ましい。一方、Niの添加量が0.50質量%を超えると、銅合金板の導電性が低下しやすくなる。従って、Niの含有量は0.01乃至0.50質量%であることが好ましい。
Sは、他の固溶元素との間で化合物を形成することにより、銅合金板の耐応力緩和特性及び曲げ加工性を低下させやすくする。そのためSの含有量は0.005質量%以下に規制することが好ましく、更に好ましくは0.002質量%以下に規制する。
B、C、P、Ca、V、Ga、Ge、Nb、Mo、Hf、Ta、Bi及びPbの各元素は、プレス打ち抜き性を向上させる作用を有する。その効果を得るために、本発明においては、これらの元素を添加する場合には、1種以上の元素を夫々0.0001質量%以上添加することが好ましい。一方、これらの元素の添加量が総量で0.1質量%を超えると、銅合金板の熱間加工性が低下しやすくなる。従って、上記元素を添加する場合には、1種以上を夫々0.0001質量%以上、総量で0.1質量%以下含有させることが好ましい。
Be、Al、Ti、Fe、Co、Zr、Ag、Cd、In、Sb、Te、Au及びNiの各元素は、プレス打ち抜き性を向上させる作用を有する。また、Ti及びZrについては、更に熱間加工性を向上させる効果がある。その効果を得るために、本発明においては、これらの元素を添加する場合には、1種以上の元素を夫々0.001質量%以上添加することが好ましい。一方、これらの元素の添加量が総量で0.9質量%を超えると、熱間及び冷間加工性が低下しやすくなる。従って、上記元素を添加する場合は、1種以上の元素を夫々0.001質量%以上、総量で0.9質量%以下含有させることが好ましい。なお、Be、Al、Ti、Fe、Co、Zr、Ag、Cd、In、Sb、Te、Au及びNiからなる群から選択された1種以上の元素に加えて、B、C、P、Ca、V、Ga、Ge、Nb、Mo、Hf、Ta、Bi及びPbからなる群から選択された1種以上の元素を添加する場合には、これらの元素の添加量は、総量で1.0質量以下とする。
第1実施例においては、同一の製造条件により製造された電気電子部品用銅合金について、組成又は結晶粒径を変化させた実施例である。先ず、表1−1及び表1−2に示す組成を有する銅合金をクリプトル炉に投入し、大気中、木炭被覆下で溶解・鋳造を行った。次に、鋳塊に950℃の温度で1時間均熱処理を行い、続いて熱間圧延加工を施した。このとき、熱間圧延終了温度を700℃とし、その後、速やかに水冷を行い、厚さ20mmの銅合金板を得た。次に板の両面を1mmずつ面削加工した後、1次冷間圧延加工により、銅合金板の厚さを0.5mmまで圧延した。その後、550℃の温度で240分間焼鈍処理を行い、焼鈍処理後の銅合金板の表面を研磨して酸化物を除去した。引き続き、加工率50%の条件で2次冷間圧延加工を施すことにより、板厚が0.25mmの薄板を得た。この薄板に対して、350℃の温度で60秒の歪取焼鈍を行い、実施例及び比較例の供試材とした。
各試験片を、圧延方向及び板厚方向を含む断面が観察面となるように冷間埋め込み樹脂に埋め込み、2400番の耐水研磨紙で研磨後、1μmのダイヤモンドスプレーを塗布したバフにて仕上げ研磨を行った。そして、研磨後の各試験片をクロム酸及び塩化第二鉄により結晶粒界を腐食させて観察試料を得た。各実施例及び比較例の観察試料について、光学顕微鏡を用いて400倍の倍率の組織写真を得、組織写真から結晶粒径を測定した。板厚方向の結晶粒径は、切断法により、1000μmの範囲における結晶粒径を測定し、その平均値を算出して母相の板厚方向における平均結晶粒径Dnとした。また、圧延方向についても、同様の方法により平均結晶粒径DLを算出し、この算出結果を基に、比DL/Dnを算出した。第二相粒子については、100μm四方の範囲内で観察される直径が1μm以上の結晶粒子について、夫々板厚方向及び圧延方向の粒径を測定し、その平均値を算出して板厚方向における平均結晶粒径Dn2及び圧延方向における平均結晶粒径DL2とし、この算出結果を基に、比DL2/Dn2を算出した。各実施例及び比較例について、母相の圧延方向における平均結晶粒径Dn及び平均結晶粒径比DL/Dnと、第二相粒子の平均結晶粒径比DL2/Dn2を表1−2にあわせて示す。
上記板厚が0.25mmの薄板を、夫々圧延方向に垂直の方向が長手方向となるように、JIS Z2201に規定された5号試験片に加工し、各実施例及び比較例の試験片に対してJIS Z2241に規定された引張試験を行い、各試験片の0.2%耐力を測定した。そして、0.2%耐力が450N/mm2であった場合を合格(○)とした。
上記板厚が0.25mmの薄板を、夫々圧延方向が長手方向となるように幅10mm、長さ30mmの試験片に加工し、各実施例及び比較例の試験片に対してJIS H0505に規定された非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジ式電気抵抗測定装置により電気抵抗を測定し、平均断面積法により導電率を算出した。そして、導電率が45%IACS以上であった場合を合格(○)とした。
各実施例及び比較例の薄板を、夫々圧延方向が長手方向となるようにL.D.(Longitudinal Direction)試験片、及び圧延方向に垂直の方向が長手方向となるようにT.D.(Transverse Direction)試験片に切り出し、幅10mm、長さ30mmの各試験片に対して、JCBA T307に規定されたW曲げ試験を行った。この際、曲げ試験に使用した治具のR部の半径は、0.25mmとした。そして、W曲げ試験後のL.D.試験片及びT.D.試験片について、曲げ部外側の表面を光学顕微鏡(倍率50倍)で観察した。そして、いずれの試験片にも割れが発生しなかった場合を合格(○)と判定し、いずれか一方でも割れが発生した場合を不合格(×)と判定した。
各実施例及び比較例の薄板を、夫々圧延方向に垂直の方向が長手方向となるように幅10mm、長さ60mmの短冊状の試験片を切り出し、日本電子材料工業会標準規格EMAS 1011に規定されている片持ち梁方式による応力緩和率の測定を行った。即ち、各試験片について、下記数式1により算出される負荷応力が0.2%耐力の80%の大きさとなるようにスパン長さを設定し、試験片をジグに固定した。
第2実施例においては、同一の組成を有する銅合金から製造される銅合金板について、1次冷間圧延後に行う熱処理(1次焼鈍)条件及び2次冷間加工率の変化が、製造される銅合金板の結晶粒径及び各特性に及ぼす影響を調査した。即ち、表3に示すように、本実施例においては、Cu−2.8Fe−0.03P−1.0Zn−0.10Mg−0.10Snの組成を有する銅合金から、第1実施例と同様に、板厚が0.25mmの試験片を製造した。本実施例においては、水冷工程後の面削加工までの加工条件は、第1実施例と同様であり、2次冷間圧延における加工率を変化させるが、最終的な銅合金板の板厚を0.25mmとするために、1次冷間圧延における加工率を95乃至98%の範囲で変化させた。そして、表3に示すように、1次焼鈍における焼鈍条件及び2次冷間圧延における加工率を種々変化させた。そして、製造された各試験片について、第1実施例と同様に結晶粒径を測定し、また、引張試験(0.2%耐力測定)、導電率測定、W曲げ試験及び応力緩和特性試験に供した。結晶粒径の測定値及び各試験結果を表4に示す。なお、評価方法については、第1実施例と同一である。
Claims (6)
- Fe:2.5乃至3.5質量%及びP:0.001乃至0.050質量%を含有し、更に、Mg:0質量%以上0.40質量%以下、Sn:0質量%以上1.50質量%以下及びZn:0質量%以上2.0質量%以下であり、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、Cu母相中に第二相粒子が析出した二相組織を有する電気電子部品用銅合金板であって、
圧延方向及び板厚方向を含む断面において、前記母相の前記板厚方向における平均結晶粒径Dnが2乃至15μmであり、前記母相の前記圧延方向における平均結晶粒径をDLとして、前記板厚方向における平均結晶粒径をDnに対する比DL/Dnが1.5以上であり、前記第二相粒子の前記圧延方向における平均結晶粒径をDL2、前記第二相粒子の前記板厚方向における平均結晶粒径をDn2として、比DL2/Dn2が5以下であることを特徴とする電気電子部品用銅合金板。 - 更に、Si:0.01乃至0.10質量%及びNi:0.01乃至0.50質量%からなる群から選択された1種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項1に記載の電気電子部品用銅合金板。
- 更に、Cr:0.001乃至0.300質量%及びMn:0.01乃至0.50質量%からなる群から選択された1種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気電子部品用銅合金板。
- 更に、Sの含有量を0.005質量%以下に規制した組成を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
- 更に、B、C、P、Ca、V、Ga、Ge、Nb、Mo、Hf、Ta、Bi及びPbからなる群から選択された1種以上を夫々0.0001質量%以上含有し、総量で0.1質量%以下含有する組成を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
- 更に、Be、Al、Ti、Fe、Co、Zr、Ag、Cd、In、Sb、Te、Au及びNiからなる群から選択された1種以上を夫々0.001質量%以上含有し、総量で0.900質量%以下含有する組成を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気電子部品用銅合金板。
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