JP2012204770A - 積層型圧電素子およびこれを備えた圧電アクチュエータ、噴射装置、燃料噴射システム - Google Patents

積層型圧電素子およびこれを備えた圧電アクチュエータ、噴射装置、燃料噴射システム Download PDF

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Abstract

【課題】 高電界かつ高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも、外部電極が外れることなく安定して駆動する積層型圧電素子およびこれを備えた圧電アクチュエータ、噴射装置、燃料噴射システムを提供する。
【解決手段】 本発明の積層型圧電素子1は、圧電体層2および内部電極3が積層された積層体4と、この積層体4の側面に設けられて内部電極3と電気的に接続されたメタライズ電極5と、このメタライズ電極5に導電性接合材6で接合されたリード部材7とを含み、リード部材7の一部は導電性接合材6に埋設されており、導電性接合材6とリード部材7との間の一部に開口する隙間8があることを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、例えば圧電駆動素子(圧電アクチュエータ),圧力センサ素子および圧電回路素子等として用いられる積層型圧電素子およびこれを備えた圧電アクチュエータ、噴射装置、燃料噴射システムに関する。
従来の積層型圧電素子は、例えば、圧電体層および内部電極が積層された積層体と、該積層体の側面に設けられて内部電極と電気的に接続されたメタライズ電極と、該メタライズ電極に導電性接合材で接合されたリード部材とを含む構成になっている(例えば、特許文献1を参照)。
特開平04−151884号公報
ここで、特許文献1に記載された積層型圧電素子においては、自動車の内燃機関等の燃料噴射装置(インジェクタ)に用いられる場合、すなわち、高電界および高圧力が長時間加わった状態で連続駆動されるような過酷な条件下で使用される場合、駆動時に積層体、メタライズ電極およびリード部材は発熱して熱膨張差による応力(熱応力)が生じる。また、積層体の振動によりリード部材が共振する。さらに、リード部材の一端が外部に固定されているので、リード部材が振動することで、導電性接合材を介してメタライズ電極に応力が加わる。これらのことにより、リード部材がメタライズ電極からはずれたり、界面強度の弱いメタライズ電極が積層体から剥がれたりするという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、高電界かつ高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも、リード部材がメタライズ電極からはずれたりメタライズ電極が積層体から剥がれたりすることなく安定して駆動する積層型圧電素子およびこれを備えた圧電アクチュエータ、噴射装置、燃料噴射システムを提供することである。
本発明の積層型圧電素子は、圧電体層および内部電極が積層された積層体と、該積層体の側面に設けられて前記内部電極と電気的に接続されたメタライズ電極と、該メタライズ電極に導電性接合材で接合されたリード部材とを含み、該リード部材の一部は前記導電性接合材に埋設されており、前記導電性接合材と前記リード部材との間の一部に開口する隙間があることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記隙間の内側の端部がメタライズ電極の端部より内側に位置していることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記隙間が少なくとも前記リード部材と前記メタライズ電極との間にあることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記隙間が少なくとも前記リ
ード部材の側方にあることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記隙間が前記リード部材を取り囲むように前記リード部材の周囲にあることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記リード部材の表面には、前記隙間までの領域にかけて被覆層が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記導電性接合材の内部にボイドがあることを特徴とする。
本発明の製造方法は、圧電体層および内部電極が積層された積層体の側面に設けられたメタライズ電極に、端部を除いて被覆層が設けられたリード部材を半田で接合する積層型圧電素子の製造方法であって、前記リード部材の前記端部および前記被覆層の一部を前記導電性接合材に埋設するようにしてレーザ照射することで前記メタライズ電極と前記リード部材とを導電性接合材で接合することを特徴とする。
また、本発明の圧電アクチュエータは、上記の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子を内部に収容するケースとを備えたことを特徴とするものである。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する容器と、上記の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とするものである。
また、本発明の燃料噴射システムは、高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する上記の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えたことを特徴とするものである。
本発明の積層型圧電素子によれば、導電性接合材とリード部材との間の一部に開口する隙間があることで、導電性接合材の表面積が大きくなって放熱性がよくなり、熱応力を小さくできる。さらに、導電性接合材にくびれができるので、リード部材が振動してもメタライズ電極に加わる応力が低減される。
したがって、積層型圧電素子を高電界かつ高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、リード部材がメタライズ電極からはずれたりメタライズ電極が積層体から剥がれたりするのを抑制することができる。
また、本発明の噴射装置によれば、積層型圧電素子におけるリード部材がメタライズ電極からはずれたりメタライズ電極が積層体から剥がれたりするのを抑制することができるので、流体の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
また、本発明の燃料噴射システムによれば、積層型圧電素子におけるリード部材がメタライズ電極からはずれたりメタライズ電極が積層体から剥がれたりするのを抑制することができるので、高圧燃料の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す概略斜視図である。 図1に示すA−A線概略断面図である。 本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す概略断面図である。 本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す概略断面図である。 本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の噴射装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の燃料噴射システムの実施の形態の一例を示す概略的なブロック図である。
以下、本発明の積層型圧電素子の実施の形態の例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す概略斜視図であり、図2は図1に示すA−A線概略断面図である。
図1および図2に示すように、本実施の形態の積層型圧電素子1は、圧電体層2および内部電極3が積層された積層体4と、この積層体4の側面に設けられて内部電極3と電気的に接続されたメタライズ電極5と、このメタライズ電極5に導電性接合材6で接合されたリード部材7とを含み、リード部材7の一部は導電性接合材6に埋設されており、導電性接合材6とリード部材7との間の一部に開口する隙間8がある。
積層型圧電素子1を構成する積層体4は、圧電体層2と内部電極3とが積層されたもので、例えば圧電体層2および内部電極3が交互に複数積層されてなる活性部と、活性部の積層方向両端に設けられた圧電体層2からなる不活性部とを有し、例えば縦0.5〜50mm、横0.5〜30mm、高さ1〜200mmの直方体状に形成されている。
積層体4を構成する圧電体層2は、圧電特性を有する圧電セラミックスからなり、例えばPbZrO−PbTiO(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)などのペロブスカイト型酸化物を用いることができる。この圧電体層2の厚みは、例えば1〜250μmとされる。
積層体4を構成する内部電極3は、圧電体層2と交互に積層されて圧電体層2を上下から挟んでおり、例えば積層順に正極および負極が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層2に駆動電圧を印加するものである。内部電極3は、例えば銀、銀−パラジウム合金、銀−白金、銅などを含む導体からなるものであり、本例では正極および負極(もしくはグランド極)の内部電極3の端面の一部がそれぞれ積層体4の対向する側面に達して互い違いに導出され、積層体4の側面に設けられたメタライズ電極8と電気的に接続されている。この内部電極3の厚みは、例えば0.1μm〜5μmとされる。
なお、積層体4において、複数の内部電極3のうちの一部に代えて、例えば複数の気孔を有する導体層(多孔質層)が配置されていてもよい。この多孔質層は、内部電極3よりも強度が低く、応力によって内部にクラックが発生しやすいことから、駆動に伴って積層体4に発生する応力によって内部電極3よりも先にクラック等による破壊が生じるものであり、それによって積層体4内において応力を緩和する層として機能するものである。
積層体4の側面に設けられて内部電極3と電気的に接続されたメタライズ電極5は、例えば銀とガラスとからなるペーストを塗布して焼き付けて形成されたもので、積層体4の対向する側面にそれぞれ接合されて、積層体4の対向する側面に互い違いに導出された内部電極3とそれぞれ電気的に接続されている。このメタライズ電極5の厚みは、例えば0.1μm〜500μmとされる。なお、図1において、メタライズ電極5の幅はこのメタライズ電極5が形成された面の幅よりも狭く形成されているが、これらの幅は同一であってもよく、例えば、積層体4の形状を六角柱や八角柱とした場合には、同一の幅に形成す
るのがよい。
メタライズ電極8に導電性接合材6で接合されたリード部材7は、メタライズ電極5と外部回路とを電気的に接続するためのもので、リード部材7を介して一対のメタライズ電極5に電圧が印加されるようになっている。リード部材7は、例えば銅、コバルト、ニッケルなどの金属からなり、導電性接合材6としては、例えば銀−銅−スズはんだが用いられる。
そして、リード部材7の一部は導電性接合材6に埋設されており、導電性接合材6とリード部材7との間の一部には開口する隙間8がある。ここで、図1および図2に示すように、リード部材7は例えば長軸方向がメタライズ電極5の主面と平行となるように配置される。そして、リード部材7の一部が導電性接合材6に埋設されているとは、図2に示すように、リード部材7の一部の上面が導電性接合材6によって覆われている状態のことを意味する。
開口する隙間8とは、リード部材7が導電性接合材6から延出した側に向かって開口する隙間のことであり、一定厚みの領域および段差のある形状であってもよく、内側に向かって徐々に狭くなるような形状であってもよい。例えば、導電性接合材6とリード部材7との間隔Tの最大値は1〜150μmであり、導電性接合材6に埋設されているリード部材7の長さL1に対する隙間8のリード部材7に沿った長さL2の比(L2/L1)は1〜50%である。これらは、例えば導電性接合材6とリード部材7とを含むA−A’線に沿って積層型圧電素子1を切断して、その断面の走査型電子顕微鏡(SEM)によるSEM像から求めることができる。
このように、導電性接合材6とリード部材7との間の一部に開口する隙間8があることで、導電性接合材6の表面積が大きくなって放熱性がよくなり、導電性接合材6とリード部材7の熱応力を小さくできる。さらに、導電性接合材6にくびれができるので、リード部材7が振動してもメタライズ電極に加わる応力が低減されるので、駆動時にメタライズ電極5が外れるのを抑制することができる。
ここで、隙間8の内側の端部がメタライズ電極5の端部より内側に位置しているのが好ましい。隙間8の内側の端部がメタライズ電極5の端部より内側に位置していることで、隙間8の内側の端部にかかる応力集中がメタライズ電極5の端部より内側でおきて、メタライズ電極5の端部にかかる応力(メタライズ電極5が剥がれるように作用する応力)が低減される。したがって、メタライズ電極5の端部が剥れず、積層型圧電素子1が長期間安定して駆動することができる。
また、導電性接合材6とリード部材7との間の一部に設けられた隙間8が、少なくともリード部材7とメタライズ電極5との間にあるのが好ましい。隙間8が少なくともリード部材7とメタライズ電極5との間にあることで、導電性接合材6におけるメタライズ電極5に近い側での応力を低減させることができ、リード部材7がメタライズ電極5からはずれたりメタライズ電極5が積層体4から剥がれたりするのを抑制する効果を高めることができる。
また、開口する隙間8は、図3に示すように、少なくともリード部材7の側方にあってもよい。なお、リード部材7の側方とは、リード部材7の長軸方向がメタライズ電極5の主面と平行となるようにリード部材7が配置された場合において、長軸方向に垂直な断面で見たときのリード部材7から見てメタライズ電極5の主面と平行な方向の位置のことである。隙間8が少なくともリード部材の側方にあることで、駆動時に積層体4の伸縮による振動で発生する応力を低減させることができ、共振によりリード部材7がメタライズ電
極5からはずれたりメタライズ電極5が積層体4から剥がれたりするのをより抑制することができる。
また、図4に示すように、隙間8がリード部材7を取り囲むようにリード部材7の周囲にあってもよい。なお、リード部材7の周囲とは、リード部材7の長軸方向がメタライズ電極5の主面と平行となるようにリード部材7が配置された場合において、長軸方向に垂直な断面で見たときのリード部材7の周囲のことである。隙間8がリード部材7を取り囲むようにリード部材7の周囲にあることで、駆動時に積層体4が積層方向だけでなく積層方向に垂直な方向にも伸縮することによりリード部材7が引っ張られても、リード部材7がメタライズ電極5からはずれたりメタライズ電極5が積層体4から剥がれたりするのをより抑制することができる。
また、リード部材7の表面には、隙間8までの領域にかけて被覆層9が設けられているのが好ましく、これにより、被覆層9がリード部材7にかかる振動を吸収でき、共振によりリード部材7がメタライズ電極5からはずれたりメタライズ電極5が積層体4から剥がれたりするのをより抑制することができる。なお、被覆層9は、樹脂からなるのがよく、例えば、ウレタン、エポキシ、ビニル、ナイロン、シリコーン系の材質があげられる。被覆層9の厚みは、振動を吸収する効果の点で0.1〜100μmであるのがよい。
また、導電性接合材6の内部にボイド61があることで、積層体4の伸縮による振動で発生する応力がボイド61の変形により低減されるため、共振によりリード部材7がメタライズ電極5からはずれたりメタライズ電極5が積層体4から剥がれたりするのをより抑制することができる。ボイド61は、球形や、半球形、楕円形状であることが好ましく、応力をボイドの変形により低減できるためである。例えば、球形の場合のボイド径としては0.05〜2μmのものであり、この値はセラミックコート層6の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡や金属顕微鏡により観察し、任意の線分間に含まれるボイドの個数およびボイドに含まれる線分の長さを測定し、このボイドに含まれる線分の長さの合計距離をボイドの個数で割ることによって求めることができる。また、任意の断面における面積比率は1〜20%であるのがよく、この値も断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡や金属顕微鏡により観察することによって求めることができる。
また、導電性接合材6の内部において複数のボイド61がメタライズ電極5とリード部材7との間に偏って設けられているのが好ましく、これにより、メタライズ電極5とリード部材7との間で確実に振動を吸収でき、駆動時にメタライズ電極5から導電性接合材6が外れるのを抑制することができる。なお、メタライズ電極5とリード部材7との間におけるボイドの占める面積比率が他の部分の1.3倍以上であるのが好ましく、全ボイドの2/3以上がメタライズ電極5とリード部材7との間に偏って設けられているのが好ましい。
なお、本発明は、上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。例えば、メタライズ電極5は、上記の例では積層体4の対向する2つの側面に1つずつ形成したが、2つのメタライズ電極5を積層体4の隣り合う側面に形成してもよいし、積層体4の同一の側面に形成してもよい。また、積層体4の積層方向に直交する方向における断面の形状は、上記の実施の形態の例である四角形状以外に、六角形状や八角形状等の多角形状、円形状、あるいは直線と円弧とを組み合わせた形状であっても構わない。
本実施の形態の積層型圧電素子1は、例えば、圧電駆動素子(圧電アクチュエータ),圧力センサ素子および圧電回路素子等に用いられる。駆動素子としては、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置,インクジェットのような液体噴射装置,光学装置のような精密
位置決め装置,振動防止装置が挙げられる。センサ素子としては、例えば、燃焼圧センサ,ノックセンサ,加速度センサ,荷重センサ,超音波センサ,感圧センサおよびヨーレートセンサが挙げられる。また、回路素子としては、例えば、圧電ジャイロ,圧電スイッチ,圧電トランスおよび圧電ブレーカーが挙げられる。
次に、本実施の形態の積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
まず、圧電体層2となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrO−PbTiO)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
次に、内部電極3となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム合金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極3のパターンで塗布する。さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、例えば900〜1200℃の温度で焼成することによって、例えば交互に積層された圧電体層2および内部電極3を備えた積層体4を作製する。
なお、積層体4は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、圧電体層2と内部電極3とを交互に複数積層してなる積層体4を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
次に、焼成して得られた積層体4に、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施す。
その後、銀を主成分とする導電性粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、メタライズ電極8のパターンで積層体4の側面にスクリーン印刷法等によって印刷後、乾燥させた後、例えば650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、メタライズ電極5を形成する。
なお、積層体4の側面にシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の外装樹脂でコートしてもよい。
次に、メタライズ電極5とリード部材7とを導電性接合材6で接合する。ここで、リード部材7がメタライズ電極5と平行になるように配置して、リード部材7とメタライズ電極5とを導電性接合材6にて接続して固定するのがよい。接合方法としては、リード部材7の端部および被覆層13の一部を導電性接合材6に埋設するようにしてレーザ照射するのがよく、これにより被覆層13の一部が溶接の熱によって燃えて飛散し、飛散した部分に隙間8を形成することができる。
なお、被覆層13の端部の形状を所望の隙間8の形成位置にあわせた形状とすることで、隙間8の形成位置を調整することができる。
その後、一対のメタライズ電極5にそれぞれ接続したリード部材7に0.1〜3kV/
mmの直流電界を印加し、積層体4を構成する圧電体層2を分極することによって、積層型圧電素子1が完成する。この積層型圧電素子1は、リード部材7を介してメタライズ電極5と外部の電源とを接続して、圧電体層2に電圧を印加することにより、各圧電体層2を逆圧電効果によって大きく変位させることができる。
本実施の形態の積層型圧電素子は、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置等として用いられる。
次に、本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の例について説明する。
図5は、本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例を示す概略断面図であり、図5に示す例の圧電アクチュエータ11は、積層型圧電素子1をケース13に収容してなるものである。
具体的には、ケース13は、上端が塞がれ下端が開口したケース本体15と、ケース本体15の開口を塞ぐようにケース本体15に取り付けられた蓋部材17とで構成され、積層型圧電素子1の両端面をケース13の上端内壁および下端内壁にそれぞれ当接させるようにして積層型圧電素子1がケース13の内部に例えば不活性ガスとともに封入され収容されている。
ケース本体15および蓋部材17は、SUS304やSUS316Lなどの金属材料で形成されたものである。
ケース本体15は、上端が塞がれ下端が開口した筒状体であり、積層体4の積層方向に伸縮可能に例えばベローズ(蛇腹)形状となっている。また、蓋部材17は、ケース本体15の開口を塞ぐように例えば板状に形成されていて、ケース本体15に下端にレーザ溶接などにより溶接されている。蓋部材17にはリード部材8を挿通可能な貫通孔が2つ形成されており、リード部材8を貫通孔に挿通させてメタライズ層5と外部とを電気的に導通させている。そして、貫通孔の隙間には軟質ガラス等を充填していて、このリード部材8を固定するとともに、外気の侵入を防いでいる。
本例の圧電アクチュエータ11によれば、長期間安定して駆動することができる。
次に、本発明の噴射装置の実施の形態の例について説明する。図6は、本発明の噴射装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
図6に示すように、本実施の形態の噴射装置19は、一端に噴射孔21を有する収納容器(容器)23の内部に上記の本実施の形態の積層型圧電素子1が収納されている。
収納容器23内には、噴射孔21を開閉することができるニードルバルブ25が配設されている。噴射孔21には流体通路27がニードルバルブ25の動きに応じて連通可能になるように配設されている。この流体通路27は外部の流体供給源に連結され、流体通路27に常時高圧で流体が供給されている。従って、ニードルバルブ25が噴射孔21を開放すると、流体通路27に供給されていた流体が外部または隣接する容器、例えば内燃機関の燃料室(不図示)に、噴射孔21から吐出されるように構成されている。
また、ニードルバルブ25の上端部は内径が大きくなっており、収納容器23に形成されたシリンダ29と摺動可能なピストン31になっている。そして、収納容器23内には、上述した本実施の形態の積層型圧電素子1がピストン31に接して収納されている。
このような噴射装置19では、積層型圧電素子1が電圧を印加されて伸長すると、ピストン31が押圧され、ニードルバルブ25が噴射孔21に通じる流体通路27を閉塞し、流体の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると積層型圧電素子1が収縮し、皿バネ33がピストン31を押し返し、流体通路27が開放され噴射孔21が流体通路27と連通して、噴射孔21から流体の噴射が行なわれるようになっている。
なお、積層型圧電素子1に電圧を印加することによって流体通路27を開放し、電圧の印加を停止することによって流体通路27を閉鎖するように構成してもよい。
また、本実施の形態の噴射装置19は、噴射孔を有する容器23と、本実施の形態の積層型圧電素子1とを備え、容器23内に充填された流体を積層型圧電素子1の駆動により噴射孔21から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、積層型圧電素子1が必ずしも容器23の内部にある必要はなく、積層型圧電素子1の駆動によって容器23の内部に流体の噴射を制御するための圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本実施の形態の噴射装置19において、流体とは、燃料,インク等の他、導電性ペースト等の種々の液体および気体が含まれる。本実施の形態の噴射装置19を用いることによって、流体の流量および噴出タイミングを長期にわたって安定して制御することができる。
本実施の形態の積層型圧電素子1を採用した本実施の形態の噴射装置19を内燃機関に用いれば、従来の噴射装置に比べてエンジン等の内燃機関の燃焼室に燃料をより長い期間にわたって精度よく噴射させることができる。
次に、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の例について説明する。図7は、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の一例を示す概略的なブロック図である。
図7に示すように、本実施の形態の燃料噴射システム35は、高圧流体としての高圧燃料を蓄えるコモンレール37と、このコモンレール37に蓄えられた高圧流体を噴射する複数の本実施の形態の噴射装置19と、コモンレール37に高圧流体を供給する圧力ポンプ39と、噴射装置19に駆動信号を与える噴射制御ユニット41とを備えている。
噴射制御ユニット41は、外部情報または外部からの信号に基づいて高圧流体の噴射の量およびタイミングを制御する。例えば、エンジンの燃料噴射に噴射制御ユニット41を用いた場合であれば、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量およびタイミングを制御することができる。圧力ポンプ39は、燃料タンク43から流体燃料を高圧でコモンレール37に供給する役割を果たす。例えばエンジンの燃料噴射システム35の場合には1000〜2000気圧(約101MPa〜約203MPa)程度、好ましくは1500〜1700気圧(約152MPa〜約172MPa)程度の高圧にしてコモンレール37に流体燃料を送り込む。コモンレール37では、圧力ポンプ39から送られてきた高圧燃料を蓄え、噴射装置19に適宜送り込む。噴射装置19は、前述したように噴射孔21から一定の流体を外部または隣接する容器に噴射する。例えば、燃料を噴射供給する対象がエンジンの場合には、高圧燃料を噴射孔21からエンジンの燃焼室内に霧状に噴射する。
本例の燃料噴射システム35によれば、高圧燃料の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
本発明の積層型圧電素子の実施例について、以下に説明する。
本発明の積層型圧電素子を以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrO−PbTiO)を主成分とする圧電セラミックスの仮焼粉末、バインダーおよび可塑剤を混合したセラミックスラリーを作製した。このセラミックスラリーを用いてドクターブレード法により厚み50μmの圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製した。
また、銀−パラジウム合金にバインダーを加えて、内部電極となる導電性ペーストを作製した。
次に、セラミックグリーンシートの片面に、内部電極となる導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを200枚積層した。次に、内部電極となる導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシート200枚を中心にして、その上下の層に、内部電極となる導電性ペーストが印刷されていない圧電セラミックグリーンシート合計15枚を積層した。
そして、1000℃で焼成することにより積層体を得た。得られた積層体を平面研削盤を用いて直方体状に研削した。その大きさは、端面が縦5mm、横5mmであり、高さが40mmであった。
次に、積層体の側面のメタライズ電極の形成部に、銀とガラスにバインダーを混合した導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、700℃で焼き付け処理を行なって、メタライズ電極を形成した。
次に、積層体の側面にエポキシ樹脂をスクリーン印刷法により印刷し140℃で硬化させた。
次に、メタライズ電極に、導電性接合材を介してリード部材を積層体表面と平行になるように接続して固定した。ここで、リード部材は、被覆層を有し、先端に予備半田を形成しているものを使用し、導電性接合材の内部に隙間を設けるには、次の様な方法を用いた。
導電性接合材が溶融したときに球形になるように、導電性接合材塗布部以外のメタライズ電極表面を樹脂で被覆してパッド面積を小さくしてから半田ペーストを塗布し、レーザーで溶融させて、略球形とした。このとき、導電性接合材の融点近傍の温度に制御することで、導電性接合材が流動しないようにした。また、導電性接合材を介してリード部材をセットする際に、予備半田を有する部分を導電性接合材に位置合わせして、被覆層の一部を導電性接合材に入れておくことで、導電性接合材が溶融したときに、被覆層は完全に飛散せずに残渣部分が隙間を形成するようにした。
このようにして、本発明の実施例の積層型圧電素子(試料1)を作った。
また比較として、被覆層のないリード部材を使用し、パッドの面積を2倍に大きくして、半田ペーストを同量塗布した後、半田ペーストが流動できるようにリフロー炉で半田付けして、隙間を形成していない比較例の積層型圧電素子(試料2)を作った。
そして、試料1、2の各積層型圧電素子について、リード部材を介してメタライズ電極に3kV/mmの直流電界を15分間印加して、分極処理を行なった。これらの積層型圧電素子に160Vの直流電圧を印加したところ、積層体の積層方向に30μmの変位量が得られた。さらに、室温で0V〜+50Vの交流電圧を10kHzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した耐久性試験を行なった。
その結果、本発明の実施例の積層型圧電素子(試料1)は、1×10回連続駆動しても、メタライズ電極が外れず異常は見られなかった。
これに対し、比較例の積層型圧電素子(試料2)は隙間がないので、積層体が振動した際にリード部材が共振してメタライズ電極が外れて、駆動が停止した。
以上のことから、本発明の積層型圧電素子は、駆動時にメタライズ電極が外れるのを抑制することができることがわかる。
1・・・積層型圧電素子
2・・・圧電体層
3・・・内部電極
4・・・積層体
5・・・メタライズ電極
6・・・導電性接合材
61・・・ボイド
7・・・リード部材
8・・・隙間
9・・・被覆層
11・・・圧電アクチュエータ
13・・・ケース
15・・・ケース本体
17・・・蓋部材
19・・・噴射装置
23・・・収納容器
21・・・噴射孔
25・・・ニードルバルブ
27・・・流体通路
29・・・シリンダ
31・・・ピストン
33・・・皿バネ
35・・・燃料噴射システム
37・・・コモンレール
39・・・圧力ポンプ
41・・・噴射制御ユニット
43・・・燃料タンク

Claims (11)

  1. 圧電体層および内部電極が積層された積層体と、該積層体の側面に設けられて前記内部電極と電気的に接続されたメタライズ電極と、該メタライズ電極に導電性接合材で接合されたリード部材とを含み、
    該リード部材の一部は前記導電性接合材に埋設されており、前記導電性接合材と前記リード部材との間の一部に開口する隙間があることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 前記隙間の内側の端部は、メタライズ電極の端部より内側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  3. 前記隙間が少なくとも前記リード部材と前記メタライズ電極との間にあることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  4. 前記隙間が少なくとも前記リード部材の側方にあることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  5. 前記隙間が前記リード部材を取り囲むように前記リード部材の周囲にあることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  6. 前記リード部材の表面には、前記隙間までの領域にかけて被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  7. 前記導電性接合材の内部にボイドがあることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  8. 圧電体層および内部電極が積層された積層体の側面に設けられたメタライズ電極に、端部を除いて被覆層が設けられたリード部材を半田で接合する積層型圧電素子の製造方法であって、前記リード部材の前記端部および前記被覆層の一部を前記導電性接合材に埋設するようにしてレーザ照射することで前記メタライズ電極と前記リード部材とを導電性接合材で接合することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子を内部に収容するケースとを備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ。
  10. 噴射孔を有する容器と、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とする噴射装置。
  11. 高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する請求項9に記載の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
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