以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
図1ないし図16は、本発明に係るフローセンサの一実施形態を示すためのものである。図1は、本発明に係るフローセンサの一例を説明する側方断面図である。図1に示すように、フローセンサ10は、第1基板20aと第2基板20bとを含む基板20と、基板20の上に設置された上部流路形成部材30と、基板20の下に設置された下部流路形成部材40と、を備える。なお、本実施形態における上部流路形成部材30および下部流路形成部材40は、本発明のフローセンサにおける「流路形成部材」の一例に相当する。
図2は、図1に示した上部流路形成部材30の下面図である。図2に示すように、上部流路形成部材30の下面には、矩形状の凹部31が設けられている。凹部31は、基板20における対向する面、すなわち、図1に示す第2基板20bの一方の面(図1において上面)との間に第2流路31aを形成する。図1に示すように、凹部31には、左端面に流入口32が設けられ、右端面に流出口33が設けられている。また、上部流路形成部材30には、後述する基板20の電極部26,27に対応する位置に切欠部34,35が形成されており、上部流路形成部材30を基板20の上に設置したときに、電極部26,27が露出するようになっている。
図3は、図1に示した下部流路形成部材40の上面図である。図3に示すように、下部流路形成部材40の上面には、矩形状の凹部41が設けられている。凹部41は、基板20における対向する面、すなわち、図1に示す第1基板20aの一方の面(図1において下面)との間に第1流路41aを形成する。図1に示すように、凹部41には、左端面に流入口42が設けられ、右端面に流出口43が設けられている。また、凹部41の中央から右寄りには、段差部45が設けられている。段差部45は、凹部41よりさらに深く(低く)へこんでおり、凹部41との境界には段差をなす端面45aが形成されている。
図4は、図1に示した基板20を説明する上面図である。図4に示すように、基板20の中央部には、検出部21が設けられている。検出部21は、例えば、抵抗素子であって、流体を加熱するヒータ22と、ヒータ22によって生ずる流体の温度差を測定するように構成された一組の抵抗素子23,24と、を含んで構成される。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサ10を容易に実現(構成)することができる。なお、本実施形態における抵抗素子23,24は、本発明のフローセンサにおける「測温ユニット」の一例に相当する。
抵抗素子23,24は、基板20においてヒータ22を挟んでヒータ22の左側と右側との両側に、それぞれ設けられる。また、基板20には、例えば、抵抗素子であって、流体の温度を検出する周囲温度センサ25と、平面視において基板20の上辺側と下辺側とに設けられ、複数の電極26a,26b,26c,27a,27b,27cを有する一組の電極部26,27と、がさらに設けられている。電極部26,27の各電極26a,26b,26c,27a,27b,27cと、ヒータ22、抵抗素子23,24、および周囲温度センサ25とは、基板20に形成された配線によって電気的に接続されている。
このような構成を備えるフローセンサ10は、例えば図1中にブロック矢印で示すように、測定対象である流体、例えばガスの流通する方向に沿って、抵抗素子23、ヒータ22、抵抗素子24が順に並ぶように配置される。この場合、抵抗素子23は、ヒータ22よりも上流側(図1において左側)に設けられた上流側温度センサとして機能し、抵抗素子24は、ヒータ22よりも下流側(図1において右側)に設けられた下流側温度センサとして機能する。このように、ヒータ22に対して上流側に抵抗素子23を配置し、下流側に抵抗素子24を配置することにより、ヒータ22に対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータ22によって生ずる後述する流体の温度差を、容易に測定することができる。
基板20において検出部21が設けられる部分は、後述するように、熱容量が小さいダイアフラムをなす。周囲温度センサ25は、フローセンサ10が設置された管路(図示省略)を流通するガスの温度を測定する。ヒータ22は、例示的に、基板20の中心に配置されており、周囲温度センサ25が計測した温度よりも一定温度高くなるように、加熱される。上流側温度センサ23は、ヒータ22よりも上流側の温度を検出するのに用いられ、下流側温度センサ24は、ヒータ22よりも下流側の温度を検出するのに用いられる。
ここで、管路内の流体が停止している(流れていない)場合、ヒータ21で加えられた熱は、上流方向および下流方向へ対称的に分布する。従って、上流側温度センサ23および下流側温度センサ24の温度は等しくなり、上流側温度センサ23および下流側温度センサ24の抵抗値は等しくなる。これに対し、管路内のガスが上流から下流に流れている場合、ヒータ22で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。従って、上流側温度センサ23の温度よりも、下流側温度センサ24の温度が高くなる。
このような温度差は、上流側温度センサ23の抵抗値と下流側温度センサ24の抵抗値との間に差を生じさせる。下流側温度センサ24の抵抗値と上流側温度センサ23の抵抗値との差は、管路内のガスの速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側温度センサ24の抵抗値と上流側温度センサ23の抵抗値との差を基に、管路を流通する流体の速度(流速)や流量を算出することができる。抵抗素子22、23および24の抵抗値の情報は、図4に示す電極部26,27を通じて電気信号として取り出すことができる。
次に、図5ないし図9を参照して基板20の製造方法の一例を説明する。
図5ないし図9は、図1に示した基板20の製造方法の一例を説明する側方断面図である。なお、図5ないし図9は、図4に示したI−I線矢視方向断面図である。最初に、図5に示すように、図1に示す第1基板20aの基となる部材として、板状のウエハAを用意する。ウエハAは、例えば、250[μm]程度の厚さを有している。
次に、図6に示すように、ウエハAの下面の中央部に、ドリル・サンドブラストなどを用いた機械加工により座ぐりのような凹みを形成する。次に、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法などの方法により、凹みを形成した部分の反対の面(上面)に、白金などの金属を付着させ、検出部21を構成する各要素を形成(パターニング)する。また、同様の方法により、検出部21を挟んだ両側(右側と左側)に、電極部26,27を構成する各電極を形成(パターニング)するとともに、検出部と電極部26,27とを接続する配線を形成(パターニング)する。
次に、図1に示した第2基板20aの元となる部材として、図5に示したウエハAと同様の板状のウエハBを用意し、図7に示すように、ウエハBの上面の中央部に、ドリル・サンドブラストなどを用いた機械加工により座ぐりのような凹みを形成する。また、後述するウエハAとウエハBとの接合の前に、ウエハBにおいて、ウエハAの上面に形成された電極部26,27に対応する位置に、それぞれ貫通孔を形成する。同様に、ウエハAとウエハBとの接合の前に、ウエハBの下面において、ウエハAの上面に形成された検出部21および配線に対応する位置に、それぞれ座ぐりのような所定の深さの凹みを形成する。これにより、ウエハAとウエハBとを接合したときに、ウエハAに設けられた検出部21および配線によって段差が生じて接合不良となるのを防止することができる。
次に、図8に示すように、図6に示したウエハAの上面に、図7に示したウエハBの下面を載置し、ウエハAの上面とウエハBの下面とを接合する。これにより、ウエハAの上面に設けられた検出部21は、ウエハAおよびウエハBによって被覆される。
接合方法としては、例えば、拡散接合、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを用いたイオンビームを接合する両面に照射して活性化してから接合する表面活性化接合(常温接合)、金や銀などのろう材を接合する両面に付けてから接合するろう付け、陽極接合などが挙げられる。
なお、本明細書における「接合」という用語は、物と物とをつなぎ合わせる広義の接合を意味し、ろう付けなどを含む概念である。また、「接合」という用語は、接着剤を用いる方法を除外する意味であることが好ましい。
最後に、図9に示すように、ウエハAの凹みを形成した部分とウエハBの凹みを形成した部分に、図9中にブロック矢印で示すエッチングを施して当該部分の厚さをそれぞれ制御する。これにより、第1基板20aと第2基板20bとを含む基板20が製造される。
この基板20では、エッチングを施した結果、第1基板20aの一方の面(図9において上面)に第1凹部201aが形成され、第2基板20bの一方の面(図9において下面)における第1凹部201aに対向する位置に、第2凹部201bが形成されている。また、検出部21は、第1凹部201aと第2凹部201bとの間に配置されている。これにより、検出部21は、第1基板20aおよび第2基板20bによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。また、第1基板20aと第2基板20bとが接合されているので、第1基板20aと第2基板20bとの間から流体が浸食(侵入)するのを防止することが可能となる。
第1凹部201aおよび第2凹部201bは、熱容量が小さいダイアフラム201を成しており、ダイアフラム201は、例えば、10〜100[μm]程度の厚さを有している。このように、第1基板20aの一方の面(図9において上面)に第1凹部201aが形成され、第2基板20bの一方の面(図9において下面)における第1凹部201aに対向する位置に、第2凹部201bが形成することにより、第1凹部201aおよび第2凹部201bは、第1基板20aおよび第2基板20bの他の部分と比較して、厚さの薄いダイアフラム201を形成することが可能となる。
第1基板20aおよび第2基板20bとしては、例えば、ガラス、セラミックス、ステンレス鋼(SUS)、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングしたもの、アルミナセラミックス、サファイア、インコネル、アルミナ、アルミニウム合金、銅などが挙げられる。
また、第1基板20aおよび第2基板20bの材料は、所定の腐食性物質、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などに対して耐食性を有するものが好ましい。具体的には、腐食性物質がCl2、BCl3などの塩素(Cl)を含む場合、シリコン(Si)は、この腐食性物質に対して耐食性を有さない(耐食性が低い)ため、第1基板20aおよび第2基板20bの材料として用いるのは適切ではない。一方、腐食性物質が塩素(Cl)を含まないSOx、NOxなどである場合、シリコン(Si)はこの腐食性物質に対して耐食性を有する(耐食性が高い)ので、第1基板20aおよび第2基板20bの材料として好適に用いることができる。これにより、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質に対するフローセンサ10の耐食性を高めることができる。また、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。なお、第1基板20aおよび第2基板20bは、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
図1に示すように、フローセンサ10は、図1中にブロック矢印で示す流体の流通する方向に対し、流入口32および流入口42を向けて配置される。第2流路31aは、流入口32および流出口33を介して、フローセンサ10の外部と連通されているので、図1中に矢印で示すように、流体は流入口32および流出口33を通って第2流路31aを流通する。同様に、第1流路41aは、流入口42および流出口43を介して、フローセンサ10の外部と連通されているので、図1中に矢印で示すように、流体は流入口42および流出口43を通って第1流路41aを流通する。このように、下部流路形成部材40が、第1基板20aの一方の面(図1において下面)側に流体が流通する第1流路41aを形成し、上部流路形成部材30が、第2基板20bの一方の面(図1において上面)側に流体が流通する第2流路31aを形成することにより、第1流路41aと第2流路31aとの両方に流体が流通するので、第1流路41aと第2流路31aとのいずれか一方を流体が流通する場合と比較して、流体の流通によってヒータ22による熱分布が変化しやすくなる。また、このとき、検出部21が第1流路41aと第2流路31aとの間に宙吊りの状態で配置される。
図10は、図1に示した上流側温度センサ23および下流側温度センサ24の温度と流速との関係を説明するグラフであり、図11は図1に示したフローセンサ10の出力と流速との関係を説明するグラフである。なお、図10および図11において、横軸はヒータ22における流体の平均速度(平均流速)[m/s]である。また、図10において、縦軸は流速0(ゼロ)[m/s]における基準温度t0を基準とする相対温度である。
ここで、従来のフローセンサのように、基板の材料として、例えばガラスを使用する場合、ヒータの熱は流体により下流側に拡散されるので、図11において実線で示すように、上流側温度センサの温度は、流速の増加に応じて、基準温度t0から低下する。一方、図11において実線で示すように、下流側温度センサは流体を介してヒータの熱が与えられるので、下流側温度センサの温度は基準温度t0から一時的に上昇する。しかしながら、ガラス製の基板は熱伝導率が低いため、ヒータと下流側温度センサの熱結合が弱く、ある程度の流速に達すると、下流側温度センサが流体から熱を受け取ることができなくなるため、流速の増加に応じて、下流側温度センサの温度も上流側温度センサとほぼ同等の割合で低下していた。この結果、上流側温度センサと下流側温度センサとの温度差が生じなくなり、図11において実線で示すように、従来のフローセンサでは、平均流速が10[m/s]程度で出力が飽和してしまい、平均流速が10[m/s]以上の高流速範囲の流速を検出することができなかった。
これに対し、本発明のフローセンサ10では、図1に示すように、第1流路41aにおいて、図1中に矢印で示す流体が流通する方向に垂直な断面積は、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きくなっている。これにより、ヒータ22の下流側で流速が低下する(遅くなる)ので、図10において太線で示すように、ヒータ22の下流側に配置された下流側温度センサ24の温度は、従来のフローセンサと比較して、流速が増加しても低下しにくくなる。この結果、図11において太線で示すように、フローセンサ10の出力は平均流速が20[m/s]以上まで飽和せず、検出可能となる。
具体的には、図1に示すように、下部流路形成部材40に形成された段差部45が、基板20に設けられたヒータ22に対して下流側に配置されている。このため、第1流路41aは、ヒータ22の上流側が径(高さ)d1であるのに対し、ヒータ22の下流側が径(高さ)d2に拡大される(d1<d2)。このように、第1流路41aにおいて、ヒータ22に対して下流側に、段差を形成する段差部45を有することにより、図1中に矢印で示す流体が流通する方向に垂直な断面積が、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きい流路を、容易に実現(構成)することができる。
なお、段差部45の端面45aは、下流側温度センサ24よりも上流側に形成されていることが好ましい。これにより、下流側温度センサ24の手前で確実に流速が低下する(遅くなる)ので、流速が増加しても、下流側温度センサ24の温度はさらに低下しにくくなる。
上部流路形成部材30および下部流路形成部材40の材料としては、例えば、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングしたもの、アルミナセラミックス、ガラス、サファイア、ステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)、インコネル、ステライト(登録商標)などが挙げられる。
また、上部流路形成部材30および下部流路形成部材40の材料は、所定の腐食性物質、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などに対して耐食性を有するものが好ましい。具体的には、腐食性物質がCl2、BCl3などの塩素(Cl)を含む場合、シリコン(Si)は、この腐食性物質に対して耐食性を有さない(耐食性が低い)ため、上部流路形成部材30および下部流路形成部材40の材料として用いるのは適切ではない。一方、腐食性物質が塩素(Cl)を含まないSOx、NOxなどである場合、シリコン(Si)はこの腐食性物質に対して耐食性を有する(耐食性が高い)ので、上部流路形成部材30および下部流路形成部材40の材料として好適に用いることができる。これにより、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質に対するフローセンサ10の耐食性を高めることができる。また、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。なお、上部流路形成部材30および下部流路形成部材40は、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
図12は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図である。図1ないし図11に示したフローセンサ10は、本発明に係るフローセンサの一例に過ぎない。第1流路41aおよび第2流路31aのうち少なくとも一方において、流体が流通する方向に垂直な断面積がヒータ22に対して下流側が上流側より大きくなっていればよい。例えば、図12に示すように、フローセンサ10Aは、下部流路形成部材40の段差部45に加え、上部流路形成部材30にも段差部36が形成されている。
段差部36は、図2に示す凹部31よりさらに深くへこんでおり、凹部31との境界には段差をなす端面36aを有する。このため、第2流路31aは、ヒータ22の上流側が径(高さ)d3であるのに対し、ヒータ22の下流側が径(高さ)d4に拡大される(d3<d4)。
この場合、フローセンサ10Aは、第1流路41aおよび第2流路31aの両方において、図12中に矢印で示す流体が流通する方向に垂直な断面積は、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きくなっている。これにより、ヒータ22の下流側で流速が低下する(遅くなる)ので、ヒータ22の下流側に配置された下流側温度センサ24の温度は、従来のフローセンサと比較して、流速が増加しても低下しにくくなる。この結果、図11において太線で示した場合と同様に、フローセンサ10Aの出力は平均流速が20[m/s]以上まで飽和せず、検出可能となることが実験などで分かっている。
なお、後述するように、下部流路形成部材40に段差部45が形成されず、上部流路形成部材30に段差部36を有する場合も、図11において太線で示した場合と同様に、フローセンサの出力は平均流速が20[m/s]以上まで飽和せず、検出可能となることが実験などで分かっている。
図13は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図である。また、流体は、流入口32および流出口33を通って第1流路41aを流通し、流入口32および流出口33を通って第2流路31aを流通する場合に限定されない。例えば、図13に示すように、フローセンサ10Bは、上部流路形成部材30の上面に、流入口32および流出口33が設けられている。流入口32および流出口33は、上部流路形成部材30の上面から図2に示す凹部31の底面まで貫通しており、フローセンサ10の外部と第2流路31aとを連通している。
また、基板20には、検出部21を挟んで検出部21の左側と右側の両側に一組の貫通孔28,29が設けられている。貫通孔28,29は、基板20の上面から下面まで貫通しており、貫通孔28は検出部21に対して上流側(図13において左側)に配置されて上流側貫通孔として機能し、貫通孔29は検出部21に対して下流側(図13において右側)に配置されて下流側貫通孔として機能する。これにより、流体が第2流路31aを流通する場合、当該流体は上流側貫通孔28を通って第1流路41aを流通し、下流側貫通孔29を通って再び第2流路31aに戻ることが可能となる。
この場合、図13中に矢印で示すように、流入口32から流入した流体が、上部流路形成部材30によって形成された第2流路31aを流通するとともに、上流側貫通孔28を通って下部流路形成部材40によって形成された第1流路41aを流通する。また、第2流路31aを流通した流体は流出口33から流出し、第1流路41aを流通した流体は、下流側貫通孔29を通って流出口33から流出する。
図14は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図である。また、流体が流通する方向に垂直な断面の面積は、ヒータに対して下流側が上流側より大きくなっていれば、流路形成部材が段差部を有する場合に限定されない。例えば、フローセンサ10Cは、図13に示す基板20を上下逆さまに配置し、第1基板20aの上に上部流路形成部材30が設置され、第2基板20bの下に下部流路形成部材40が設置されている。また、下部流路形成部材40の下面には、流入口42および流出口43が設けられている。流入口42および流出口43は、下部流路形成部材30の下面から図3に示す凹部41の底面まで貫通しており、フローセンサ10Cの外部と第2流路31aとを連通している。
流出口43の開口は、流入口42の開口よりも大きくなっており、流出口43の上流側(図14において左側)の端面43aは、基板20に設けられた下流側温度センサ24よりも上流側に形成されている。このため、第2流路31aにおいて、流体が流通する方向に垂直な断面積は、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きくなっている。これにより、ヒータ22の下流側で流速が低下する(遅くなる)ので、ヒータ22の下流側に配置された下流側温度センサ24の温度は、従来のフローセンサと比較して、流速が増加しても低下しにくくなる。この結果、図11において太線で示した場合と同様に、フローセンサ10Cの出力は平均流速が20[m/s]以上まで飽和せず、検出可能となることが実験などで分かっている。
図15は、本発明に係るフローセンサの他の例を説明する側方断面図であり、図16は、図15に示したフローセンサ10Dの設置例を説明する側方断面図である。流路形成部材は、第1基板20aの一方の面側および第2基板20bの一方の面側に、流路を形成するように設けられていればよく、流路形成部材自体が流路を形成する場合に限定されない。例えば、図15に示すように、フローセンサ10Dは、図13に示す基板20を上下逆さまに配置し、第1基板20aの上に上部流路形成部材30が設置されている。
上部流路形成部材30には段差部36が形成されており、段差部36は、図2に示す凹部31との境界に端面36aを有する。このため、第1流路41aは、ヒータ22の上流側の径(高さ)に対し、ヒータ22の下流側が径(高さ)が拡大される。
この場合、フローセンサ10Dは、図16に示すように、流体が所定方向(図16において左側から右側方向)に流れ、上面の一部が開口した本体Wに、当該開口を覆うように設置される。これにより、本体Wと図15に示す第2基板20bの一方の面(図16において下面)との間に、第2流路31aが形成される。
このように、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dによれば、基板20の一方の面側(図1、図12、および図13において下面側、図14および図15において上面側)に流体の流通する第1流路41aが形成され、基板20の他方の面側(図1、図12、および図13において上面側、図14および図15において下面側)に流体の流通する第2流路31aが形成される。これにより、第1流路41aと第2流路31aとの両方に流体が流通するので、第1流路41aと第2流路31aとのいずれか一方を流体が流通する場合と比較して、流体の流通によってヒータ22による熱分布が変化しやすくなる。これにより、流速に対する検出部21の感度を高めることができる。
また、このとき、検出部21は、第1流路41aと第2流路31aとの間に宙吊りの状態で配置される。これにより、基板20の一方の面側(図1、図12、および図13において下面側、図14および図15において上面側)と基板20の他方の面側(図1、図12、および図13において上面側、図14および図15において下面側)とに流体から圧力を受けるので、基板20の両面において、流体から受ける圧力の差(差圧)が小さくなり、基板20の内部に発生する応力を低減することができるとともに、応力による検出信号のノイズを低減することができる。
さらに、第1流路41aおよび第2流路31aのうち少なくとも一方において、流体が流通する方向に垂直な断面の面積は、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きい。これにより、ヒータ22の下流側で流速が低下する(遅くなる)ので、図10において太線で示すように、ヒータ22の下流側に配置された下流側温度センサ24の温度は、従来のフローセンサと比較して、流速が増加しても低下しにくくなる。これにより、高い流速域(高流速域)でも流速に対する感度が飽和しにくくなり、検出可能範囲(レンジアビリティ)を広げることができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10Dによれば、第1流路41aおよび第2流路31aのうち少なくとも一方において、ヒータ22に対して下流側に段差が形成される。これにより、流体が流通する方向に垂直な断面積が、ヒータ22に対して下流側が上流側より大きい流路を、容易に実現(構成)することができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dによれば、測温ユニットが、ヒータ22に対して上流側と下流側とにそれぞれ配置される上流側温度センサ23および下流側温度センサ24を有する。これにより、ヒータ22に対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータによって生ずる流体の温度差を容易に測定することができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10Dによれば、段差部36,45の上流側の端面36a,45aが、ヒータ22に対して下流側に配置される下流側温度センサ24よりも上流側に形成されている。これにより、下流側温度センサ24の手前で確実に流速が低下する(遅くなる)ので、流速が増加しても、下流側温度センサ24の温度はさらに低下しにくくなる。これにより、高い流速域(高流速域)でも流速に対する感度がさらに飽和しにくくなり、検出可能範囲(レンジアビリティ)をさらに広げることができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dによれば、基板20、上部流路形成部材30、および下部流路形成部材40のそれぞれが、所定の腐食性物質に対して耐食性を有する。これにより、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質に対するフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dの耐食性を高めることができる。また、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dによれば、第1基板20aの他方の面(図1、図12、および図13において上面、図14および図15において下面)と第2基板20bの他方の面(図1、図12、および図13において下面、図14および図15において上面)とが接合されており、検出部21が第1基板20aと第2基板20bとの間に配置される。これにより、検出部21は、第1基板20aおよび第2基板20bによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。また、第1基板20aと第2基板20bとが接合されているので、第1基板20aと第2基板20bとの間から流体が浸食(侵入)するのを防止することが可能となる。これにより、第1基板20aおよび第2基板20bが耐食性を有する場合に、所定の腐食性物質に対するフローセンサ10,10A,10B,10C,10Dの耐食性をさらに高めることができる。
なお、前述した実施形態の構成は、組み合わせたり、あるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。