JP2012201985A - 搬送用ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】耐ピックアップ性に優れた搬送用ロールを提供する。
【解決手段】本発明の搬送用ロールは、温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールであって、前記ロールの最表面層は、金属酸化物、純金属、及び合金の少なくとも一方を含有し、前記最表面層は厚さが1μm以上であり、且つ、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素Lの、純金属又は合金として存在する量が、前記最表面層において5質量%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼板を搬送する搬送用ロールに関し、特に600〜1100℃に制御される連続焼鈍炉で鋼板を搬送する際、鋼板に発生するロールピックアップを抑制できる搬送用ロールに関する。
一般に、冷延鋼板を製造する際、スラブに熱間圧延及び冷間圧延を施して所望の製品厚さまで加工した後、鋼板の組織制御のために連続焼鈍ライン(以下、「CAL」と呼ぶことがある)で焼鈍、焼入れ処理が行われる。CAL内で鋼板ストリップを搬送する際、搬送ロール上に何らかの反応物が形成され、それが鋼板に転写されることで押し疵が発生することがある。この反応物の生成現象はロールピックアップ(ビルドアップとも言う)現象と呼ばれ、この現象によって発生する押し疵はピックアップ疵と呼ばれる。ピックアップ疵が発生すると、搬送ロールの交換のためにラインを停止せざるを得ず、生産性が著しく悪化する。
このようなロールピックアップ現象を抑制するため、例えば特許文献1〜3ではロール表面の溶射皮膜を改質することが検討されている。
特開2000−291635号公報 特開2002−256363号公報 特開2006−283105号公報
しかし、特許文献1〜3に開示される技術では、ピックアップ疵の抑制が未だ十分ではなかった。そこで、本発明はピックアップ疵の発生をより高度に抑制できる(すなわち耐ピックアップ性に優れた)搬送用ロールを提供することを目的とする。
上記課題を達成した本発明の搬送用ロールは、温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールであって、前記ロールの最表面層は、金属酸化物、純金属、及び合金から選ばれる少なくとも一種を含有し、前記最表面層は厚さが1μm以上であり、且つ、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素Lの、純金属又は合金として存在する量が、前記最表面層において5質量%以下である点に特徴を有する。
前記元素Lは、例えばLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Hf、Ta、W、及びBiである。
本発明において、前記元素Lが前記最表面層中に酸化物として含まれることにより、前記最表面層において純金属又は合金として存在する元素Lの量が5質量%以下であることが好ましい。
また、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素Mが、前記際表面層に純金属又は合金として含まれることが好ましい。前記元素Mは、Co、Ni、Cu、Ge、Rh、Pd、In、Ir、Pt、Au、Hg、及びPbから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また前記最表面層中の純金属又は合金の比率が、60〜90質量%であることや、前記最表面層と、前記搬送用ロールの基材との間に、Ni、Co、Cr、Alの2種以上を合金成分として合計で50質量%以上含有する層を有することなどが好ましい。
本発明は、温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールの製造方法であって、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素Mと、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素Lとを含む純金属又は合金層を、搬送用ロールの表面に形成し、前記純金属又は合金層を熱処理して、前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させることを特徴とする搬送用ロールの製造方法も包含する。
上記製造方法において、酸素分圧を調整することによって、前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させることが好ましい。
なお、本明細書において「金属」とはSi、Geなどの半金属も含む意味で用いる。
本発明の搬送用ロールによれば、搬送用ロールの最表面層において純金属又は合金として存在する元素L(600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素)の量が抑制されているため、ロールピックアップ現象の発生を抑制できる。
図1は、後記する実施例で中間層を形成した試験片の断面をSEMで観察した際の観察像である。
ロールピックアップ現象の発生メカニズムは、従来明らかにされていなかった。そこで、本発明者らはロールピックアップ現象の発生メカニズムを解明すべく、酸化スケール(FeO)と、従来の搬送ロール表面の溶射皮膜[(Ni,Co)CrAlY]との反応を、熱力学計算ソフト(「HSC Chemistry」,オートテック社製)により検討した。その結果、酸化スケールが溶射皮膜中の金属Alや金属Crなどによって還元されて純Feが生成することが明らかになった。
上記した純Feの生成現象を検証するため、以下の実験を行った。まず、雰囲気を制御して鋼板を熱処理することによって鋼板表面に酸化スケール(Fe34皮膜)を形成し、また別の鋼板上にNi−25wt%Cr−10wt%Al−0.5wt%Yの溶射皮膜を形成した。これらFe34皮膜と溶射皮膜を対面させて、面圧0.15kg/cm2で荷重をかけた状態で900℃のN2雰囲気で2時間保持した。その後、Fe34皮膜と溶射皮膜が接着した部分を切り出し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察するとともに、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)ライン分析した結果、Fe34皮膜と溶射皮膜との反応によって、還元鉄(純Fe)が生成していることが分かった。
上記した熱力学計算ソフトと検証実験の結果から、ピックアップ疵が発生する機構を以下のように推定した。鋼板上のスケール(FeO、Fe34、Fe23など)と搬送ロール表面の溶射皮膜が接触し、高温環境下におかれると、溶射皮膜中に存在するFeよりも酸化しやすい元素(Cr、Alなど)が、スケールを還元してスケール表面側に還元鉄が生成する。還元鉄中は、酸素が拡散しやすいため、還元鉄を介してスケールから溶射皮膜に向かって酸素が拡散することで、Cr、Alなどの元素の酸化反応及びスケールの還元反応が連続して起こり、還元鉄がスケール表面から鋼板基材に向かって成長する。さらに、還元鉄は高温で軟質であり、鋼板上のスケールが、溶融した還元鉄によって搬送用ロールに接着され、該ロール上で硬質の突起物となる。この突起物が鋼板に転写され、ピックアップ疵を形成すると考えられる。
上記の推定により、本発明者らは搬送用ロールと鋼板上のスケールとの間の還元鉄の生成を抑制すればピックアップ疵が抑制できると考えた。具体的には、搬送用ロールの使用温度において、自らが酸化することによって鋼板上のスケール(FeO、Fe34、Fe23など)を還元し、還元鉄を生成し得る元素が、ロールの最表面層において純金属又は合金の状態で極力存在しないことがピックアップ疵の抑制に効果的であると考え、本発明を完成した。
本発明では、温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールを対象とする。600℃未満では、鋼板スケールと搬送用ロール表面の酸化還元反応が起こらず、ピックアップ疵の問題が生じない。また1100℃を超えると、搬送用ロールの表面層が軟質化したり、炉内の微量水蒸気によって腐食するため、表面層の適正化によるピックアップ疵抑制の効果を発揮できない。
600〜1100℃において鋼板上のスケールを還元して還元鉄を生成する元素について以下に説明する。鋼板上のスケールとしては、FeO、Fe34、Fe23が挙げられ、上記温度範囲におけるこれらスケールの還元反応は主に下記式(1)〜(3)で表される。
6Fe23=4Fe34+O2 ・・・(1)
2Fe34=6FeO+O2 ・・・(2)
2FeO=2Fe+O2 ・・・(3)
上記式(1)〜(3)の各反応において還元反応が生じるか否かの指標として平衡酸素分圧を用いることができ、600〜1100℃における平衡酸素分圧は大きいほうから順に式(1)、式(2)、式(3)である。各反応式の平衡酸素分圧よりも、酸化還元反応の平衡酸素分圧の小さい元素が存在すると、平衡酸素分圧の小さな元素は酸化し、上記した各反応式において還元反応が進行する。特に式(3)の平衡酸素分圧よりも、平衡酸素分圧の小さな元素が存在すると、式(1)〜(3)のいずれにおいても還元反応が進行し、最終的に式(3)によって還元鉄が生成する。そこで、本発明では、600〜1100℃の全ての温度において、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間(式(3))の平衡酸素分圧よりも低い元素Lに着目し、該元素Lが搬送用ロールの最表面で純金属又は合金として存在する割合を低減している。
元素Lが、搬送用ロールの最表面層において純金属又は合金として存在する割合は、合計で5質量%以下である。このようにすることによって、還元鉄の生成量を低減できる。前記割合は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に0質量%である。
このような元素Lとしては、例えばLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Hf、Ta、W、Biなどが挙げられる。
元素Lのうち、特にLi、Be、B、Na、Mg、K、Ca、V、Zn、Ga、Sr、Nb、Mo、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Hf、Ta、W、及びBiが最表面層で純金属又は合金として存在する割合(合計量)を低減することが好ましく、その合計量は最表面層において2質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、特に0質量%であることが好ましい。
上記した通り、元素Lが最表面層中に純金属または合金として所定以上存在すると、鋼板スケールを還元してピックアップ疵が発生するが、元素Lが最表面層中で酸化物として存在することは好ましい。最表面層において、前記元素Lが酸化物として含まれても、純金属又は合金として存在する元素Lの合計量が5質量%以下となっていれば良く、この場合、特に、酸化物として含まれるL元素が最表面層中で純金属又は合金として存在する量が合計で5質量%以下となっていることや、酸化物として含まれるL元素以外のL元素は最表面層中に純金属又は合金として含まれていない(0質量%)ことが好ましい。元素Lのうち、特にCr、Al、Zr、Si、Ti、Mn、Yから選ばれる少なくとも1種の酸化物が最表面層に含まれることが好ましい。これら元素の酸化物は安価でリサイクル性に優れる。
搬送用ロールの最表面層は、金属酸化物、及び金属(純金属又は合金)の少なくとも一方を含有する層である。本発明は、最表面層において純金属又は合金として存在する元素Lの量を低減(5質量%以下)する点に特徴を有しており、この構成が実現できる限り、最表面層は金属酸化物のみで構成されていても良いし、金属(純金属又は合金)のみで構成されていても良いし、金属酸化物、及び金属(純金属又は合金)の両方で構成されていても良い。この中でも、特に、最表面層が金属酸化物と、金属(純金属又は合金)とで構成されていることが好ましい。最表面層に金属酸化物を含有することで、搬送用ロール基材との密着性を向上でき、最表面層の剥離を防止でき、且つ、最表面層に金属(純金属又は合金)を含有することで、搬送用ロールと鋼板の接触によって最表面層が破壊されるのを防止できる。このような効果をより有効に発揮するため、最表面層中の金属(純金属又は合金)の比率は60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。また、最表面層中の金属(純金属又は合金)の比率は90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下である。言い換えれば、最表面層中の金属酸化物の比率は10質量%以上、40質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上、35質量%以下である。
最表面層の純金属又は合金には、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素Mが含まれることが好ましい。このような元素Mは、鋼板スケールを還元することがなく、ピックアップ疵の生成を有効に防止できる。このような元素Mとして、例えばCo、Ni、Cu、Ge、Rh、Pd、In、Ir、Pt、Au、Hg、Pbが挙げられ、これらは単独で含まれても良いし、2種以上が含まれていても良い。元素Mとして好ましいのは、Ni、Co、Cu、Ge、Rh、Inである。元素Mが最表面層中で純金属又は合金として存在する割合は、最表面層に対して55質量%以上、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは65質量%以上、85質量%以下である。
元素Lが最表面層中で純金属又は合金として存在する割合が5質量%以下であるという要件を満たす限り、最表面層は元素MとL以外の金属元素Xを含んでいても良い。特に最表面層を構成する金属元素が、元素Mと元素Lのみであることが好ましい。最表面層が元素Mと元素Lのみで構成されている場合、最表面層中の純金属又は合金は、元素Mと最表面層に対して5質量%以下の元素Lで構成されていることが好ましく、元素Mのみで構成されていることがより好ましく、一方最表面層中の金属酸化物は、元素L及び元素Mの酸化物から構成されていることが好ましく、元素Mの酸化物のみから構成されていることがより好ましい。
最表面層の厚みは、1μm以上である。最表面層を1μm以上とすることによって、最表面層よりもロール基材側の層(ロール基材や後述する中間層)から易酸化性元素が外方拡散するのを防止でき、ピックアップ疵の生成を抑制できる。最表面層の厚みは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは15μm以上(特に20μm以上)である。一方、最表面層の厚みは100μm以下が好ましい。最表面層が100μmを超えると、最表面層の内部応力により、ロール基材との密着性が低下する。最表面層の厚みは、90μm以下が好ましく、より好ましくは80μm以下(特に60μm以下)である。
最表面層はロール基材の直上に設けられていても良いし、1層以上の中間層を介して設けられていても良い。本発明では、搬送用ロールの最表面層の組成を適切に制御しているため、ロール基材、及び中間層には如何なる元素(例えば、Cr、AlなどFeよりも酸化しやすい元素)を含んでいても良い。本発明の搬送用ロールは600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送するため、ロール基材は、例えばJIS G4312に挙げられるような耐熱鋼であることが好ましい。また、中間層としては、従来用いられていたM・CrAlY(MはCo及び/又はNi)などの溶射皮膜(Co、Ni、Cr、Al、Yを合金成分として含む他、Al23及び/またはCr23の酸化物を含む)を採用できる。中間層は、Ni、Co、Cr、Alの2種以上を合金成分として合計で50質量%以上含有する層が好ましく、合金成分として更にYを含有していても良い。このような中間層を設けることによって、密着性、耐摩耗性を向上できる。合金成分としてのNi、Co、Cr及びAlの合計量は、60質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上である。中間層がNi、Co、Cr、Alの2種以上を合金成分として合計で50質量%以上含有する場合、さらにAl23及び/またはCr23の酸化物を含んでいることが好ましい。Al23及びCr23の合計含有量は5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上(特に15質量%以上)である。Al23及びCr23の合計含有量は、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。中間層の厚さは特に限定されないが、一層当たり、通常30〜150μm程度(好ましくは50〜120μm)である。
最表面層の組成を適切に制御した本発明の搬送用ロールは、搬送用ロール基材の表面に、純金属又は合金層を形成し、必要に応じて酸化性雰囲気で熱処理することで製造できる。酸化性雰囲気で熱処理することによって、純金属又は合金層中の金属元素の一部又は全部を、金属酸化物にできる。酸化性雰囲気としては、例えばO2、H2O、CO2などの酸化性ガスと、不活性ガス(N2、Arなど)を含む混合ガス雰囲気が挙げられ、具体的にはN2−O2雰囲気、N2−H2O−H2雰囲気、N2−CO2−CO雰囲気などである。純金属又は合金層は、例えば溶射法、スパッタリング法、AIP(アークイオンプレーティング)法などのPVD法、又はCVD法によって成膜できる。
上記した製造方法の中でも、特に上記元素M(600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素)と上記元素L(600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素)とを含む純金属又は合金層を搬送用ロールの表面に形成し、この純金属又は合金層を熱処理して、前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させる方法が好ましい。このようにすれば元素Lが優先的に酸化して酸化物となることによって、元素Lが純金属又は合金として存在する量を低減(最表面層中で5質量%以下)できるとともに、元素Mを純金属又は合金として存在させることができる。
前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させるためには、熱処理時の酸素分圧を調整することが好ましい。具体的には、熱処理時の酸素分圧を、その熱処理温度における元素Mの酸化物生成反応の平衡酸素分圧(Po2(M))より小さく、且つその熱処理温度における元素Lの酸化物生成反応の平衡酸素分圧(Po2(L))以上として熱処理すれば良い。その他、熱処理温度における酸化物生成反応の平衡酸素分圧がPo2(L)以上でありPo2(M)未満である元素Zと、元素Zの酸化物(例えば、FeとFeO)を粉末状或いは顆粒状にして、前記純金属又は合金層をパックセメントして熱処理することもできる。熱処理温度は、例えば600〜1100℃(好ましくは700〜1000℃)である。また熱処理時間は特に限定されないが、通常10〜36時間程度であり、好ましくは20〜30時間である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
耐熱鋼(SCH22)を鋳造し、20mm×20mm×2mmの試験片に加工した。この試験片の表面に、溶射法によってNi−Co−Al−Cr合金と、Al23とCr23の酸化物で構成される中間層(厚さ:約100μm)を形成した。各元素の含有量は、Ni:10質量%、Co:50質量%、Cr:15質量%、Al:5質量%、Al23:10質量%、Cr23:10質量%である。中間層の断面図を図1に示す。図1によれば、中間層にNi−Co−Al−Cr合金の合金部分(白い部分)と、Al23やCr23の酸化物部分(黒い部分)が観察できる。
続いて、元素Mと元素Lの各種金属又は合金のターゲットを用意し、AIP法で中間層の上に純金属又は合金層を均一に成膜した。次に、L元素を優先的に酸化させ、M元素は純金属又は合金状状態で残存させるため、Fe−FeO間の平衡酸素分圧(3.1×10-17atm)とH2−H2O間の平衡酸素分圧が同じとなるようにH2分圧とH2O分圧を調整した雰囲気下(H2:3体積%、H2O(露点22℃):2.4体積%及びN2との混合ガス雰囲気)、900℃で24時間熱処理した。この熱処理によって最表面層は表1、2に示す組成及び厚さとなった。なお、最表面層はXRD(X線回折)とEPMA(電子線マイクロアナリシス)を用いて分析し、各元素の構造(合金又は酸化物)はXRDによって、各元素の組成比はEPMAによって分析した。また、最表面層の厚みは断面のSEM観察により測定した。
次に、予め雰囲気を制御して熱処理することによって生成させたFe34皮膜と、上記した最表面層とを対面させて、面圧0.15kg/cm2となる荷重をかけ、900℃のN2雰囲気で2時間保持した。接触させた部分を切り出し、断面をSEM観察して還元鉄が生成しているか否か確認した。
また、上記最表面層と基材との密着性を調べるため、大きな耐熱鋼板上に上記と同じ要領で最表面層を形成し、搬送用ロールと鋼板ストリップ間の面圧(1.5N/cm2程度)を想定して、最表面層の上から6Nの力を加えて摺動させた。目視により剥離したものを△、剥離はしなかったがクラックがはいったものを○、剥離もクラックもなかったものを◎と判断した。結果を表1、2に示す。
No.1、5は、最表面層の合金中に存在する元素L(No.1はCr、No.5はAl及びZr)の量(合計量)が多かったため、還元鉄が生成していた。No.7は、最表面層の厚さが薄かったため、中間層から拡散した易酸化性元素の影響で還元鉄が生成した。No.26は、最表面がNi−Co−Al−Cr合金と、Al23とCr23の酸化物で構成される層であり、Cr、Alを合金としてCr:15質量%、Al:5質量%を含む層であったため、還元鉄が生成していた。
実施例2
実機の搬送用ロールに、実施例1の表1及び2に示したのと同じ中間層及び最表面層を形成し、最もピックアップ疵が発生しやすいCAL均熱帯(鋼板温度:約900℃、雰囲気:N2と数体積%のH2との混合ガス)に設置し、通板した。
500時間通板後、搬送用ロールの表面を観察したところ、No.1、5、7、26の場合に、還元鉄を含む鋼板由来の酸化物(直径数mm程度)がロール表面に形成(ピックアップ)されていた。さらに500時間通板したところ(計1000時間)、No.12、13、17〜19、23のロール表面では、最表面層の剥離が観察され、剥離した部分(ロール基材の耐熱鋼或いは中間層が露出)と鋼板スケールの反応によって、還元鉄を含む鋼板由来の酸化物がロール表面にピックアップされていた。さらに500時間通板したところ(計1500時間)、No.2〜4、8、11、14、16、20〜22、25の表面に、最表面層の剥離によるピックアップが発生した。No.6、9、10、15、24については、1500時間経過後も最表面層の剥離がなく、ピックアップも発生せず、良好な耐ピックアップ性を示した。
本発明の搬送用ロールは、高温で鋼板ストリップを搬送する際のピックアップ疵の発生を抑えることができるため、搬送用ロールの交換の頻度を低くでき、生産性が向上するため産業上極めて有用である。

Claims (9)

  1. 温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールであって、
    前記ロールの最表面層は、金属酸化物、純金属、及び合金から選ばれる少なくとも一種を含有し、
    前記最表面層は厚さが1μm以上であり、且つ、
    600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素Lの、純金属又は合金として存在する量が、前記最表面層において合計で5質量%以下であることを特徴とする搬送用ロール。
  2. 前記元素Lは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Hf、Ta、W、及びBiである請求項1に記載の搬送用ロール。
  3. 前記元素Lが前記最表面層中に酸化物として含まれることにより、前記最表面層において純金属又は合金として存在する元素Lの量が5質量%以下である請求項1または2に記載の搬送用ロール。
  4. 600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素Mが、前記最表面層に純金属又は合金として含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ロール。
  5. 前記元素Mは、Co、Ni、Cu、Ge、Rh、Pd、In、Ir、Pt、Au、Hg、及びPbから選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の搬送用ロール。
  6. 前記最表面層中の純金属又は合金の比率が、60〜90質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の搬送用ロール。
  7. 前記最表面層と、前記搬送用ロールの基材との間に、Ni、Co、Cr、Alの2種以上を合金成分として合計で50質量%以上含有する層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の搬送用ロール。
  8. 温度600〜1100℃の鋼板ストリップを搬送する搬送用ロールの製造方法であって、
    600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧がFe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に高い元素Mと、600〜1100℃の全ての温度で比べたとき、酸化物生成反応の平衡酸素分圧が、Fe−FeO間の平衡酸素分圧よりも常に低い元素Lとを含む純金属又は合金層を、搬送用ロールの表面に形成し、
    前記純金属又は合金層を熱処理して、前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させることを特徴とする搬送用ロールの製造方法。
  9. 酸素分圧を調整することによって、前記元素Mよりも前記元素Lを優先的に酸化させる請求項8に記載の製造方法。
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