JP2012200128A - 制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電機の応答遅れが伝達トルク振動の周波数に対して無視できない領域においても、十分な制振効果が得られる制御装置が求められる。
【解決手段】伝達トルク振動を打ち消すトルクを回転電機に出力させる制御装置であって、回転速度振動を抽出する回転振動抽出部と、トルク振動周波数を算出する振動周波数算出部と、位相遅れ回転速度振動を算出する位相遅れ回転振動算出部と、回転速度振動及び位相遅れ回転速度振動を固定座標系で表す固定座標系設定部と、回転速度振動及び位相遅れ回転速度振動を回転座標変換する回転座標変換部と、フィードバック値を算出する回転座標系フィードバック制御部と、フィードバック値を固定座標変換する固定座標変換部と、打消トルク振動の指令値を生成する打消トルク制御部と、を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転電機の回転軸に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動に対し、当該伝達トルク振動を打ち消すためのトルクを前記回転電機に出力させる制御装置に関する。
上記のような制御装置に関して、例えば下記の特許文献1には、以下のような技術が開示されている。特許文献1の技術では、回転電機の回転速度の角加速度(回転角速度)に基づき、フィードバック制御を行って、回転電機に指令するトルクを補正する制振制御を行っている。
回転電機の回転角速度は、伝達トルク振動の周波数で変化する。このため、特許文献1の技術では、トルク指令の変化に対する、回転角速度の変化を検出して、フィードバック制御を行う必要があり、伝達トルク振動の周波数より高い周波数で、回転電機の出力トルクを変化させて、回転角速度の変化を検出する必要がある。
しかしながら、トルク指令から回転電機の出力トルクまでの回転電機のトルク出力制御系には、電流フィードバック制御系の応答遅れや、インバータ制御部への通信遅れなどが存在する。このため、特許文献1の技術では、制御系の応答遅れのカットオフ周波数や、通信周波数が無視できない周波数帯の伝達トルク振動では、フィードバック制御により十分な制振効果が得られない恐れがある。
また、特許文献1の技術では、伝達トルク振動の周波数より高い周波数で、トルク指令をフィードバック制御により変化させる必要がある。このため、伝達トルク振動の位相及び振幅が、伝達トルク振動の周波数より低い周波数で変化し、高いフィードバック応答性が求められない場合でも、伝達トルク振動の周波数に応じた高い応答性でフィードバック制御を行う必要がある。このため、制御装置を高性能化する必要があり、制御装置が高コストになる恐れがある。
特開2005−218280号公報
そこで、トルク指令から回転電機の出力トルクまでの回転電機の応答遅れが伝達トルク振動の周波数に対して無視できない領域においても、十分な制振効果が得られる制御装置が求められる。
本発明に係る、回転電機の回転軸に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動に対し、当該伝達トルク振動を打ち消すためのトルクを前記回転電機に出力させる制御装置の特徴構成は、前記回転電機の回転速度から、前記伝達トルク振動の周波数に対応した所定の周波数帯域の振動成分である回転速度振動を抽出する回転振動抽出部と、前記回転電機の回転速度に基づき、前記伝達トルク振動の周波数であるトルク振動周波数を算出する振動周波数算出部と、前記回転速度振動及び前記トルク振動周波数に基づき、当該回転速度振動を前記トルク振動周波数において所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動を算出する位相遅れ回転振動算出部と、前記回転速度振動及び前記位相遅れ回転速度振動を固定座標系で表す固定座標系設定部と、前記固定座標系で表された前記回転速度振動及び前記位相遅れ回転速度振動を、前記トルク振動周波数で回転させた回転座標系の値に変換する回転座標変換を実行する回転座標変換部と、前記回転座標系に変換された前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の値をゼロに近づけるように、前記回転座標系におけるフィードバック値を算出するフィードバック制御を実行する回転座標系フィードバック制御部と、
前記回転座標系における前記フィードバック値を、前記固定座標系の値に変換する固定座標変換を実行する固定座標変換部と、前記固定座標系に変換された前記フィードバック値に基づき、前記伝達トルク振動を打ち消すためのトルク振動である打消トルク振動の指令値を生成し、当該打消トルク振動の指令値を用いて前記回転電機を制御する打消トルク制御部と、を備える点にある。
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
上記の特徴構成によれば、トルク振動周波数で振動している回転速度振動の値を、トルク振動周波数で回転させた回転座標系の値に変換することで、回転速度振動をその振動が停止した状態で観測することができる。そして、上記の特徴構成によれば、この回転座標系に変換された回転速度振動の値を用いて、回転座標系においてフィードバック値を算出しているので、トルク振動周波数に応じた応答性でフィードバック制御を行わなくても、回転速度振動の位相及び振幅の変化速度に応じた応答性でフィードバック制御を行えば、十分な制振効果が得られる。
よって、電流フィードバック制御系の応答遅れや、インバータ制御部への通信遅れなどによる、トルクの指令値から回転電機の出力トルクまでの回転電機のトルク出力制御系の応答遅れが伝達トルク振動の周波数に対して無視できない領域においても、トルク振動周波数及びトルク出力制御系の応答遅れより低い応答性でフィードバック制御を行い、十分な制振効果を得ることができる。また、十分な制振効果を得られるトルク振動周波数の帯域を、高い周波数帯域まで拡大することができる。
また、上記の特徴構成によれば、回転速度振動に加えて、回転速度振動をトルク振動周波数において所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動を固定座標系で表しているので、固定座標系を1次元から2次元に拡張することができている。このように、固定座標系が2次元化されているので、回転座標変換および固定座標変換を行うことが容易になっている。
また、上記の特徴構成によれば、トルク振動周波数で回転させた回転座標系におけるフィードバック値を固定座標変換することにより、自動的に、トルク振動周波数で振動する打消トルク振動の指令値を生成することができる。よって、トルク振動周波数より低い応答性でフィードバック制御を行っても、トルク振動周波数で振動する打消トルク振動の指令値を生成することができ、制振効果を得られる。
ここで、前記位相遅れ回転振動算出部は、前記回転速度振動及び前記トルク振動周波数に基づき、前記回転速度振動を前記トルク振動周波数において90度位相分だけ遅らせた前記位相遅れ回転速度振動を算出し、前記固定座標系設定部は、第一固定軸と、当該第一固定軸を90度分反時計回りに回転した第二固定軸と、を有する直交座標系を前記固定座標系とすると共に、前記回転速度振動を前記第一固定軸の値に設定し、前記位相遅れ回転速度振動を前記第二固定軸の値に設定し、前記回転座標変換部は、前記第一固定軸及び前記第二固定軸の双方を前記トルク振動周波数で回転させた第一回転軸及び第二回転軸を有する直交座標系を前記回転座標系とすると共に、前記固定座標系における前記第一固定軸の値及び前記第二固定軸の値を、前記回転座標系における前記第一回転軸の値及び前記第二回転軸の値に変換する回転座標変換を実行し、前記回転座標系フィードバック制御部は、前記回転座標系における前記第一回転軸の値をゼロに近づけるように、前記第一回転軸における第一フィードバック値を算出すると共に、前記第二回転軸の値をゼロに近づけるように、前記第二回転軸における第二フィードバック値を算出し、前記固定座標変換部は、前記第一回転軸における前記第一フィードバック値及び前記第二回転軸における前記第二フィードバック値を、前記固定座標系の値に変換する固定座標変換を実行し、前記打消トルク制御部は、前記固定座標系に変換された前記第一フィードバック値及び前記第二フィードバック値の少なくとも一方に基づき、前記打消トルク振動の指令値を生成し、当該打消トルク振動の指令値を用いて前記回転電機を制御すると好適である。
この構成によれば、固定座標系及び回転座標系が直交座標系で表せるので、回転座標変換及び固定座標変換を容易に行うことができる。
また、上記の構成によれば、回転速度振動を第一固定軸の値に設定し、当該回転速度振動を90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動を第二固定軸の値に設定しているので、回転速度振動を、直交の固定座標系において、回転速度振動の振幅を半径として、原点を中心にトルク振動周波数で回転する周期関数で表現できる。よって、直交の固定座標系において原点を中心にトルク振動周波数で回転する回転速度振動の値を、同様に、原点を中心にトルク振動周波数で回転された直交の回転座標系の値に変換するので、回転座標系の第一回転軸及び第二回転軸において回転速度振動をその振動が停止した状態で観測することができる。よって、第一及び第二フィードバック値は、回転速度振動の振動が停止された第一回転軸の値及び第二回転軸の値に基づき算出されることができる。よって、トルク振動周波数に応じた応答性でフィードバック制御を行わなくても、回転速度振動の位相及び振幅の変化速度に応じた応答性でフィードバック制御を行えば、十分な制振効果が得られる。
ここで、前記回転電機は、第一動力伝達機構を介して内燃機関に駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構を介して車輪に駆動連結され、前記伝達トルク振動は、前記内燃機関から前記第一動力伝達機構を介して前記回転電機の前記回転軸に伝達されるトルク振動を含み、前記回転振動抽出部は、前記回転電機の回転速度から、前記内燃機関の特性に応じて定めた周波数帯域の振動成分である前記回転速度振動を抽出し、前記振動周波数算出部は、前記回転電機及び前記内燃機関の少なくとも一方の回転速度に基づき、前記トルク振動周波数を算出すると好適である。
また、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
上記の構成によれば、内燃機関から第一動力伝達機構を介して回転電機に伝達される伝達トルク振動が大きい場合でも、伝達トルク振動を打ち消すためのトルクを回転電機に出力させることで、回転電機よりも車輪側に伝達されるトルク振動を低減することができる。よって、車両用駆動装置における回転速度振動を低減することができ、運転者に与える不快感を低減することができる。
また、上記の構成によれば、内燃機関の特性に応じて定めた周波数帯域の振動成分である回転速度振動を抽出するので、内燃機関から伝達される伝達トルク振動に起因する回転速度振動を精度良く抽出することができる。
また、上記の構成によれば、回転電機及び内燃機関の少なくとも一方の回転速度に基づいて、トルク振動周波数を算出するので、内燃機関から伝達される伝達トルク振動と同じ周波数で、回転座標変換及び固定座標変換を行うことができ、当該伝達トルク振動の打ち消し制御を適切に行うことができる。
ここで、前記伝達トルク振動は、前記回転電機の出力トルクに生じるトルクリップルであり、前記回転振動抽出部は、前記回転電機の回転速度から、前記回転電機の特性に応じて前記トルクリップルの周波数に対応するように定めた周波数帯域の振動成分である前記回転速度振動を抽出すると好適である。
この構成によれば、回転電機の特性に応じてトルクリップルの周波数に対応するように定めた周波数帯域の振動成分である回転速度振動を抽出するので、回転電機の出力トルクに生じるトルクリップルに起因する回転速度振動を精度良く抽出することができる。よって、回転電機のトルクリップルも適切に打ち消すことができ、運転者に与える不快感や回転電機からの異音の発生を抑えることができる。
ここで、前記位相遅れ回転振動算出部は、前記回転振動抽出部が今回及び過去に抽出した前記回転速度振動と、当該今回及び過去の前記回転速度振動を抽出した時点の前記トルク振動周波数における位相とに基づいて、前記位相遅れ回転速度振動を算出すると好適である。
この構成によれば、過去に回転速度振動を抽出した時点の中に、今回抽出した回転速度振動をトルク振動周波数において所定位相遅らせた時点がない場合でも、所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動を精度良く算出することができる。よって、回転座標系において回転速度振動を精度良く観測することができ、フィードバック制御精度を向上させることができる。
ここで、前記固定座標変換を行った後の前記フィードバック値の位相が前記回転座標変換を行う前の前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の位相に対して90度進むように座標回転処理を実行する座標回転部を備えると好適である。
回転速度振動は、当該回転速度振動を引き起こしているトルク振動に対して90度位相分だけ遅れている。上記の構成によれば、回転速度振動と位相遅れ回転速度振動の位相に対して、打消トルク制御部で利用されるフィードバック値の位相が90度進められるので、トルク振動に対する回転速度振動の位相遅れを補償することができる。すなわち、トルク振動と逆位相(180度異なる位相)の方向にフィードバック値を変化させることができる。よって、回転速度振動及びトルク振動を直線的にゼロに向かう方向に変化させることができ、回転速度振動の収束性を向上させることができる。
ここで、前記打消トルク振動の指令値に対する前記回転電機の出力トルクの遅れ位相を算出し、前記固定座標変換を行った後の前記フィードバック値の位相が前記回転座標変換を行う前の前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の位相に対して前記遅れ位相分進むように位相進め処理を実行する位相進め部を更に備えると好適である。
回転電機の出力トルクは、電流フィードバック制御系の応答遅れや通信遅れなどにより、打消トルク振動の指令値に対して所定位相分だけ遅れる。上記の構成によれば、回転速度振動と位相遅れ回転速度振動の位相に対して、打消トルク制御部で利用されるフィードバック値の位相が、90度に加えて、更に遅れ位相の絶対値の位相分進められるので、トルク振動に対する回転速度振動の位相遅れに加えて、更にトルク指令値に対する出力トルクの位相遅れを補償することができる。すなわち、トルク振動と逆位相の方向に回転電機の出力トルクを変化させることができる。よって、回転速度振動及びトルク振動を真直ぐゼロに向かう方向に変化させることができ、回転速度振動の収束性を向上させることができる。
ここで、前記位相進め部が、前記回転座標変換部、前記固定座標変換部、及び前記座標回転部のいずれか1つに含まれ、当該1つの座標変換又は座標回転と共に前記位相進め処理が実行されると好適である。
この構成によれば、回転座標変換、固定座標変換、又は90度の座標回転に、トルク指令値に対する出力トルクの位相遅れを補償するための座標回転を含ませることができる。よって、座標回転の回数が増加して演算処理負荷を増加させることなく、遅れ位相φの補償処理を行うことができる。
ここで、前記座標回転部が、前記回転座標変換部及び前記固定座標変換部の一方に含まれ、当該一方の座標変換と共に前記座標回転処理が実行されると好適である。
この構成によれば、回転座標変換、又は固定座標変換に、90度の座標回転を含ませることができる。よって、座標回転の回数が増加して演算処理負荷を増加させることなく、遅れ位相φの補償処理を行うことができる。
本発明の第一の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第一の実施形態に係る動力伝達系のモデル及び制御装置の構成を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明するブロック図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明するタイムチャートである。 本発明の第一の実施形態に係る動力伝達系のボード線図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置の処理を説明する図である。 本発明の第二の実施形態に係る制御装置の処理を説明するブロック図である。 本発明の第二の実施形態に係る制御装置の処理を説明するブロック図である。 本発明の第二の実施形態に係る電流フィードバック制御系のボード線図である。 本発明の第二の実施形態に係る制御装置の処理を説明するブロック図である。
〔第一の実施形態〕
本発明に係る回転電機制御装置32の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、車両用駆動装置1を搭載した車両は、車両の駆動力源として内燃機関であるエンジンEと回転電機MGを備えたハイブリッド車両とされている。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。本実施形態では、回転電機MGは、第一動力伝達機構10を介してエンジンEに駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構11を介して車輪Wに駆動連結される。本実施形態では、第一動力伝達機構10に、回転電機MGとエンジンEとの間の駆動連結を断接するエンジン分離クラッチCLが備えられており、第二動力伝達機構11に、変速機構TMが備えられている。
また、ハイブリッド車両は、エンジンEの制御を行うエンジン制御装置31と、回転電機MGの制御を行う回転電機制御装置32と、変速機構TM及びエンジン分離クラッチCLの制御を行う動力伝達制御装置33と、これらの制御装置を統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御装置34と、を備える。なお、回転電機制御装置32が、本発明における「制御装置」である。
このような構成において、本実施形態に係る回転電機制御装置32は、図2に示すように、回転電機MGの回転軸に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動Teovに対し、当該伝達トルク振動Teovを打ち消すためのトルクを回転電機MGに出力させるトルク振動打消し制御部40を備えている。そして、トルク振動打消し制御部40は、回転振動抽出部41、振動周波数算出部42、位相遅れ回転振動算出部43、固定座標系設定部44、回転座標変換部45、回転座標系フィードバック制御部46、固定座標変換部47、及び打消トルク制御部48の機能部を備えており、各機能部の処理に特徴を有している。以下、本実施形態に係る回転電機制御装置32について、詳細に説明する。
1.車両用駆動装置の構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MGを備え、これらのエンジンEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速機構TMを備えており、当該変速機構TMにより、中間軸Mに伝達されたエンジンE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
エンジンEは、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、エンジンEのクランクシャフト等のエンジン出力軸Eoが、エンジン分離クラッチCLを介して、回転電機MGに駆動連結された入力軸Iと選択的に駆動連結される。すなわち、エンジンEは、摩擦係合要素であるエンジン分離クラッチCLを介して回転電機MGに選択的に駆動連結される。また、エンジン出力軸Eoが、不図示のダンパーを介してエンジン分離クラッチCLの係合部材に駆動連結されている。
回転電機MGは、非回転部材に固定されたステータと、このステータの径方向内側に回転自在に支持された回転軸を備えたロータと、を有している。この回転電機MGのロータの回転軸は、入力軸I及び中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸I及び中間軸MにエンジンE及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、蓄電装置としてのバッテリ(不図示)に電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、バッテリからの電力供給を受けて力行し、或いはエンジンEや車輪Wから伝達される回転駆動力により発電した電力をバッテリに蓄電する。なお、バッテリは蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。なお、以下では回転電機MGによる発電を回生と称し、発電中に回転電機MGが出力する負トルクを回生トルクと称する。回転電機の目標出力トルクが負トルク(回転方向と反対向きのトルク)の場合には、回転電機MGは、エンジンEや車輪Wから伝達される回転駆動力により発電しつつ回生トルクを出力する状態となる。
駆動力源が駆動連結される中間軸Mには、変速機構TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速機構TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速機構TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の摩擦係合要素B1、C1、・・・とを備えている。この変速機構TMは、各変速段の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速機構TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右二つの車軸AXに分配されて伝達され、各車軸AXに駆動連結された車輪Wに伝達される。ここで、変速比は、変速機構TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力軸Oの回転速度に対する中間軸Mの回転速度の比であり、本願では中間軸Mの回転速度を出力軸Oの回転速度で除算した値である。すなわち、中間軸Mの回転速度を変速比で除算した回転速度が、出力軸Oの回転速度になる。また、中間軸Mから変速機構TMに伝達されるトルクに、変速比を乗算したトルクが、変速機構TMから出力軸Oに伝達されるトルクになる。
本例では、エンジン分離クラッチCL、及び複数の摩擦係合要素B1、C1、・・・は、それぞれ摩擦材を有して構成されるクラッチやブレーキ等の係合要素である。これらの摩擦係合要素CL、B1、C1、・・・は、供給される油圧を制御することによりその係合圧を制御して伝達トルク容量の増減を連続的に制御することが可能とされている。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。
摩擦係合要素は、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合要素は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合要素の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合要素が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合要素の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、入力側係合部材(摩擦板)と出力側係合部材(摩擦板)とを相互に押し付け合う圧力である。本実施形態では、係合圧は、供給されている油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合要素に供給されている油圧の大きさに比例して変化する。
各摩擦係合要素は、リターンばねを備えており、ばねの反力により解放側に付勢されている。そして、各摩擦係合要素に供給される油圧により生じる力がばねの反力を上回ると、各摩擦係合要素に伝達トルク容量が生じ始め、各摩擦係合要素は、解放状態から係合状態に変化する。この伝達トルク容量が生じ始めるときの油圧を、ストロークエンド圧と称す。各摩擦係合要素は、供給される油圧がストロークエンド圧を上回った後、油圧の増加に比例して、その伝達トルク容量が増加するように構成されている。
本実施形態において、係合状態とは、摩擦係合要素に伝達トルク容量が生じている状態であり、解放状態とは、摩擦係合要素に伝達トルク容量が生じていない状態である。また、滑り係合状態とは、摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態であり、直結係合状態とは、摩擦係合要素の係合部材間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、非直結係合状態とは、直結係合状態以外の係合状態であり、解放状態と滑り係合状態とが含まれる。
2.油圧制御系の構成
次に、車両用駆動装置1の油圧制御系について説明する。油圧制御系は、油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速機構TMやエンジン分離クラッチCLの各摩擦係合要素等に供給される。
3.制御装置の構成
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置31〜34の構成について説明する。
制御装置31〜34は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、各制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、図2に示すような回転電機制御装置32の各機能部40〜48が構成されている。また、制御装置31〜34は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部40〜48の機能が実現される。
また、車両用駆動装置1は、センサSe1〜Se3を備えており、各センサから出力される電気信号は制御装置31〜34に入力される。制御装置31〜34は、入力された電気信号に基づき各センサの検出情報を算出する。エンジン回転速度センサSe1は、エンジン出力軸Eo(エンジンE)の回転速度及び回転角度を検出するためのセンサである。エンジン制御装置31は、エンジン回転速度センサSe1の入力信号に基づいてエンジンEの回転速度(角速度)ωe及び回転角度θeを検出する。入力軸回転速度センサSe2は、入力軸I及び中間軸Mの回転速度及び回転角度を検出するためのセンサである。入力軸I及び中間軸Mには回転電機MGの回転軸が一体的に駆動連結されているので、回転電機制御装置32は、入力軸回転速度センサSe2の入力信号に基づいて回転電機MGの回転速度(角速度)ωm及び回転角度θm、並びに入力軸I及び中間軸Mの回転速度を検出する。出力軸回転速度センサSe3は、変速機構TM近傍の出力軸Oに取り付けられ、変速機構TM近傍の出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。動力伝達制御装置33は、出力軸回転速度センサSe3の入力信号に基づいて変速機構TM近傍の出力軸Oの回転速度(角速度)ωoを検出する。また、出力軸Oの回転速度は車速に比例するため、動力伝達制御装置33は、出力軸回転速度センサSe3の入力信号に基づいて車速を算出する。
3−1.車両制御装置
車両制御装置34は、エンジンE、回転電機MG、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCL等に対して行われる各種トルク制御、及び各摩擦係合要素の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
車両制御装置34は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、中間軸M側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクを算出するとともに、エンジンE及び回転電機MGの運転モードを決定する。そして、車両制御装置34は、エンジンEに対して要求する出力トルクであるエンジン要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、及びエンジン分離クラッチCLの目標伝達トルク容量を算出し、それらを他の制御装置31〜33に指令して統合制御を行う。
車両制御装置34は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に基づいて、各駆動力源の運転モードを決定する。ここで、バッテリの充電量は、バッテリ状態検出センサにより検出される。本実施形態では、運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源とする電動モードと、少なくともエンジンEを駆動力源とするパラレルモードと、エンジンEの回転駆動力により回転電機MGの回生発電を行うエンジン発電モードと、車輪から伝達される回転駆動力により回転電機MGの回生発電を行う回生発電モードと、回転電機MGの回転駆動力によりエンジンEを始動させるエンジン始動モードと、を有する。ここで、エンジン分離クラッチCLが直結係合状態にされる運転モードは、パラレルモード、エンジン発電モード、及びエンジン始動モードとなる。
3−2.エンジン制御装置
エンジン制御装置31は、エンジンEの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、エンジン制御装置31は、車両制御装置34からエンジン要求トルクが指令されている場合は、車両制御装置34から指令されたエンジン要求トルクを出力トルク指令値に設定し、エンジンEが出力トルク指令値の出力トルクTeを出力するように制御するトルク制御を行う。
また、エンジン制御装置31は、エンジンEの出力トルクTeを推定し、推定したトルクを推定エンジン出力トルクとして他の制御装置に伝達するように構成されている。エンジン制御装置31は、出力トルク指令値に基づき推定エンジン出力トルクを算出して伝達するようにしてもよい。
3−3.動力伝達制御装置
動力伝達制御装置33は、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCLの制御を行う機能部を備えている。動力伝達制御装置33には、出力軸回転速度センサSe3等のセンサの検出情報が入力されている。
3−3−1.変速機構の制御
動力伝達制御装置33は、変速機構TMに変速段を形成する制御を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速機構TMにおける目標変速段を決定する。そして、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCを介して変速機構TMに備えられた各摩擦係合要素C1、B1、・・・に供給される油圧を制御することにより、各摩擦係合要素を係合又は解放して目標とされた変速段を変速機構TMに形成させる。具体的には、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCに各摩擦係合要素B1、C1、・・・の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各摩擦係合要素に供給する。
3−3−2.エンジン分離クラッチの制御
また、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの係合又は解放を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの伝達トルク容量が、車両制御装置34から指令された目標伝達トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介してエンジン分離クラッチCLに供給される油圧を制御する。具体的には、動力伝達制御装置33は、目標伝達トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧をエンジン分離クラッチCLに供給する。なお、本実施形態では、特に断らない限り、エンジン分離クラッチCLは、直結係合状態にあるもとする。
3−4.回転電機制御装置
回転電機制御装置32は、回転電機MGの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、回転電機制御装置32は、図1に示すように、インバータ50、インバータ制御部51、ベーストルク決定部52、及びトルク振動打消し制御部40を備えている。インバータ50は、図示しないバッテリの直流電力を交流電力に変換して、回転電機MGを駆動するための複数のスイッチング素子を備えている。インバータ制御部51は、トルク振動打消し制御部40などから通信で伝達されたトルクの指令値に基づき、インバータ50が備えた複数のスイッチング素子をオンオフ駆動する信号を出力して、インバータ50を駆動制御する。ベーストルク決定部52は、車両制御装置34から指令された回転電機要求トルクなどに基づきベーストルク指令値Tbを設定する。トルク振動打消し制御部40は、伝達トルク振動Teovを打ち消すための打消トルク振動の指令値Tpを算出する。そして、回転電機制御装置32は、図2に示すように、ベーストルク指令値Tbと、後述する打消トルク振動の指令値Tpとに基づき、出力トルク指令値Tmoを設定し、出力トルク指令値Tmoの出力トルクTmを回転電機MGに出力させるように制御する。
3−4−1.トルク振動打消し制御部
図2に示すように、トルク振動打消し制御部40は、回転電機MGの回転軸に伝達される伝達トルク振動Teovに対し、当該伝達トルク振動Teovを打ち消すためのトルク振動である打消トルク振動の指令値Tpを生成し、当該打消トルク振動の指令値Tpを用いて回転電機MGを制御するトルク振動打消し制御を実行する機能部である。本実施形態では、図3及び図4を用いて後述するように、回転電機MGの回転軸に伝達される伝達トルク振動Teovは、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達されるトルク振動を含む。
このようなトルク振動打消し制御を実行するために、トルク振動打消し制御部40は、図2に示すように、回転振動抽出部41、振動周波数算出部42、位相遅れ回転振動算出部43、固定座標系設定部44、回転座標変換部45、回転座標系フィードバック制御部46、固定座標変換部47、及び打消トルク制御部48を備えている。
回転振動抽出部41は、回転電機MGの回転速度ωmから、伝達トルク振動Teovの周波数に対応した所定の周波数帯域の振動成分である回転速度振動ωmvを抽出する。振動周波数算出部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づき、伝達トルク振動Teovの周波数であるトルク振動周波数ωpを算出する。位相遅れ回転振動算出部43は、回転速度振動ωmv及びトルク振動周波数ωpに基づき、当該回転速度振動ωmvをトルク振動周波数ωpにおいて所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出する。
固定座標系設定部44は、回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを固定座標系で表す。回転座標変換部45は、固定座標系で表された回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを、トルク振動周波数ωpで回転させた回転座標系の値に変換する。回転座標系フィードバック制御部46は、回転座標系に変換された回転速度振動ωmvと位相遅れ回転速度振動ωmvdlyの値をゼロに近づけるように、回転座標系におけるフィードバック値を算出する。固定座標変換部47は、回転座標系におけるフィードバック値を、固定座標系の値に変換する。打消トルク制御部48は、固定座標系に変換されたフィードバック値に基づき、伝達トルク振動Teovを打ち消すためのトルク振動である打消トルク振動の指令値Tpを生成し、当該打消トルク振動の指令値Tpを用いて回転電機MGを制御する。
以下で、トルク振動打消し制御部40によって実行されるトルク振動打消し制御の処理について、詳細に説明する。
3−4−2.車両用駆動装置の動力伝達系
まず、車両用駆動装置1の動力伝達系について説明する。図3に、動力伝達系のモデルを示す。動力伝達系を3慣性の軸ねじれ振動系にモデル化している。
エンジンE、回転電機MG、及び負荷(車両)を、それぞれ慣性モーメント(イナーシャ)Je、Jm、Jlを有する剛体としている。
エンジンEと回転電機MGとの間は、弾性を有する第一動力伝達機構10により連結され、回転電機MGと負荷(車両)との間は、弾性を有する第二動力伝達機構11により連結されている。本実施形態では、第一動力伝達機構10は、ダンパー、エンジン出力軸Eo、入力軸Iなどの部材により構成されている。第一動力伝達機構10は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。第二動力伝達機構11は、中間軸M、変速機構TM、出力軸O及び車軸AXなどの部材により構成されている。特に、出力軸Oと車軸AXとの軸ねじれが大きく、出力軸O及び車軸AXをまとめて、出力シャフトと称する。第二動力伝達機構11は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。
ここで、TeはエンジンEが出力する出力トルクであり、当該出力トルクには当該出力トルクの平均値に対する振動成分である出力トルク振動Tevが生じている。ωeはエンジンEの回転速度(角速度)である。
Teoは、振動をしているエンジンEの出力トルクTeが、第一動力伝達機構10を介して、回転電機MGに伝達された伝達トルクであり、当該伝達トルクには当該伝達トルクの平均値に対する振動成分である伝達トルク振動Teovが生じている。Tmは、回転電機MGが出力する出力トルクであり、当該出力トルクには、後述するトルク振動打消し制御により、伝達トルク振動Teovを打ち消すための打消トルク振動の指令値Tpのトルク振動が生じている。ここで、打消トルク振動の指令値Tpは、回転電機MGの出力トルクTmの平均値に対する振動成分となる。
伝達トルクTeoと回転電機MGの出力トルクTmを合計した合計トルクToには、伝達トルク振動Teovと打消トルク振動の指令値Tpとを合計したトルク振動である合計トルク振動Tovが生じる。ここで、合計トルク振動Tovは、合計トルクToの平均値に対する振動成分である。そして、合計トルクToと、第二動力伝達機構11から回転電機MGに伝達されるトルクと合計したトルクを、回転電機MGの慣性モーメントJmで除算し、積分した値が、回転電機MGの回転速度(角速度)となる。回転電機MGの回転速度ωmには、合計トルク振動Tovを慣性モーメントJmで除算して積分した値に相当する回転速度振動ωmvが生じる。ここで、回転速度振動ωmvは、回転電機MGの回転速度ωmの平均値に対する振動成分である。なお、ωlは出力シャフトの負荷側端部の回転速度(角速度)であって、負荷(車輪)の回転速度(角速度)である。
3−4−3.エンジンから伝達されるトルク振動
次に、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達される伝達トルク振動Teovについて、より詳細に説明する。
図4に示すように、エンジンEの出力トルクTeは、エンジンEの燃焼工程における燃焼により生じる。火花点火式エンジンの場合は、点火時期の後に燃焼が開始する。すなわち、燃焼により上昇した燃焼室内の圧力が、ピストン及びコネクティングロッドを介して、クランク角度等の幾何学的関係に従い、クランクシャフト(エンジン出力軸Eo)に伝達され、エンジンEの出力トルクTeに変換される。エンジンEの出力トルクTeは、点火時期の後に増加していき、ピストンが下死点に近づくにつれ減少していく。よって、エンジンEの出力トルクTeは、図4に示すように、回転同期で周期的に振動する。エンジンEの出力トルクTeの振動周波数(角周波数)ωpは、エンジンEの回転速度ωeに応じて変化する。気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp=N/2×ωeとなり、4気筒エンジンでは、ωp=2×ωeとなる。なお、ディーゼルエンジンなどの圧縮自着火エンジンでは、点火時期、すなわち、燃焼開始時期は、燃焼室内への燃料噴射時期とすることができる。
図4に示すように、エンジンEの出力トルクTeを、フーリエ変換すると、振動周波数ωpに対して、0次(周波数=0)、1次(周波数(Hz)=ωp/2π)、2次(周波数(Hz)=2ωp/2π)、3次(周波数(Hz)=3ωp/2π)、4次(周波数(Hz)=4ωp/2π)、...の周波数成分の振幅が得られる。フーリエ変換における0次の周波数成分の振幅は、エンジンEの出力トルクTeの平均値に対応している。フーリエ変換における1次の周波数成分の振幅は、概ね、出力トルク振動のTevの振幅に対応している。フーリエ変換における2次以上の周波数成分の振幅は、1次の周波数成分の振幅より小さく、高次になるに従い、振幅が減少する。
また、エンジンEの出力トルクTeは、ゼロ付近まで変動するため、出力トルク振動Tevの振幅が大きい。この出力トルク振動Tevの振幅は、エンジンEの出力トルクTeの平均値の増加に、概ね比例して増加する。なお、以下で、エンジンEの出力トルクTeは、特に断らない限り、振動をしているトルクの平均値を示すものとする。
この振動をしているエンジンEの出力トルクTeが、第一動力伝達機構10を介して、回転電機MGに伝達され、伝達トルクTeoとなる。第一動力伝達機構10のトルク伝達特性は、エンジンEの回転速度ωeの運転領域に対応する振動周波数ωpの帯域では、図4及び図13の(b)に示す、トルク伝達特性のボード線図の例のように、振動周波数ωpが増加するにつれ、ゲインが0dBより減少していく。例えば、振動周波数ωpの帯域では、ゲインは、約−40dB/decで減少する。よって、図4のボード線図の例に示すように、1次の周波数成分のゲインも0dBより減少しているが、2次以上の周波数成分のゲインの減少は、1次よりも大きい。この2次以上のゲインの減少は、dB単位での減少であるため指数関数的な減少であり、減少量が大きい。なお、0次の周波数成分のゲインは、0dBであるため、エンジンEの出力トルクTeの平均値は、減少せずに、そのまま、出力トルク振動Tevの平均値となる。
よって、出力トルク振動Tevにおける、2次以上の振動成分の振幅は、第一動力伝達機構10の伝達特性により、1次の振動成分における振幅の減少に比べて、大幅に減少され、回転電機MGに伝達される。よって、伝達トルクTeoにおける伝達トルク振動Teovは、図4に示すように、2次以上の振動成分の振幅が大幅に減少され、1次の振動成分に近づいている。なお、1次の振動成分の振幅も減少している。従って、伝達トルク振動Teovを、次式で示すように、振動周波数ωpに対する1次の振動成分で近似できる。
Figure 2012200128
ここで、ΔTeovは、伝達トルク振動Teovの振幅であり、βは、伝達トルク振動Teovの位相である。
また、図4に示すように、出力トルク振動Tevは、第一動力伝達機構10の伝達特性により、位相遅れが生じて、回転電機MGに伝達される。図13の(b)のボード線図の位相曲線の例に示すように、約−180deg〜−160degの位相遅れが生じる。
なお、図13の(b)に第一動力伝達機構10のトルク伝達特性を示すように、エンジンEの運転領域において、エンジンEの回転速度ωeに比例してゲインが低下することがわかる。よって、低い回転速度ωe(例えば、1000pm)では、ゲインの減少が小さくなり、伝達トルク振動の振幅ΔTeovが大きくなる。また、エンジンEの出力トルクTeの平均値が大きいほど、当該出力トルクTeにおける出力トルク振動Tevの振幅が大きくなり、同じゲイン(回転速度)でも、伝達トルク振動の振幅が大きくなる。
よって、図14に示すように、低い回転速度ωeであって、高い出力トルクTeである領域が、伝達トルク振動Teovが、運転者に不快感を与えるレベルまで大きくなる、高振動領域となる。この高振動領域は、図14に示すように、エンジンEの熱効率が高くなる、高効率領域と重複している。本願のような、トルク振動打消し制御を行わない場合は、高振動領域を避けて、エンジンEを運転する必要があり、エンジンEの高効率領域を使用できない場合が生じる。そのため、本実施形態に係る制御装置では、トルク振動打消し制御を行い、伝達トルク振動Teovを打ち消して、高振動領域を使用できるようにしている。
3−4−4.打消トルク振動指令値
振動周波数ωpに対する1次の振動成分で近似できる伝達トルク振動Teovを、打ち消すためには、式(1)の伝達トルク振動Teovと逆位相、すなわち、π(180deg)だけ位相が進み又は遅れたトルク振動を、回転電機MGに出力させればよいことがわかる。
よって、図5及び次式に示すように、トルク振動打消し制御部40は、後述するように、打消トルク振動の指令値Tpを、振動周波数ωpに対する1次の振動成分で形成する。
Figure 2012200128
ここで、ΔTpは、打消トルク振動の指令値Tpの振幅であり、ωpは、打消トルク振動の指令値Tpの振動周波数であり、αは、打消トルク振動の指令値Tpの位相である。打消トルク振動の指令値Tpが、伝達トルク振動Teovを打ち消すためには、打消トルク振動の指令値Tpの振動周波数ωpは、伝達トルク振動Teovと同じ振動周波数ωpに設定され、位相αが、位相βに対してπ(180deg)だけ進み又は遅れた、逆位相に設定され、振幅ΔTpは、振幅ΔTeovに等しく設定されればよいことがわかる。
伝達トルク振動Teovと、打消トルク振動の指令値Tpとの合計トルク振動Tovは、次式に示すように同じ振動周波数ωpを有するトルク振動となる。
Figure 2012200128
ここで、γは、合計トルク振動Tovの位相であり、ΔTovは、合計トルク振動Tovの振幅である。
合計トルク振動Tovにより生じる回転速度振動ωmvは、次式に示すように、式(3)の合計トルク振動Tovを、慣性モーメントJmで除算し、積分した値となる。
Figure 2012200128
ここで、γは、回転速度振動ωmvの位相であり、Δωmvは、回転速度振動ωmvの振幅であって、合計トルク振動Tovの振幅ΔTovに対して次式の関係となる。
Figure 2012200128
また、式(4)の回転速度振動ωmvは、次式に示すように、式(3)の合計トルク振動Tovに対して、90度(π/2)だけ遅れた位相になる。
Figure 2012200128
回転速度振動ωmvの位相及び振幅は、エンジンEの点火時期の変動、或いは第一動力伝達機構10のトルク伝達特性のゲイン及び位相の変動により、変動する。また、エンジン分離クラッチCLが解放及び係合されると、エンジンEの回転速度ωeと回転電機MGの回転速度ωmとの相対位相が変化する。よって、エンジン分離クラッチCLの解放及び係合が行われた後、回転速度振動ωmvの位相が変動する。
よって、図1に示すような車両用駆動装置1の構成では、入力軸回転速度センサSe2により検出した回転電機MGの回転速度ωmに基づき、伝達トルク振動Teovを打ち消せるように、打消トルク振動の指令値Tpの位相及び振幅を変化させるフィードバック制御を行う必要がある。また、上記したように、伝達トルク振動Teovと打消トルク振動の指令値Tpとを合計した合計トルク振動Tovの位相及び振幅と、回転速度振動ωmvの位相及び振幅との間には、式(6)で示した所定の関係がある。よって、回転電機MGの回転速度ωmから回転速度振動ωmvの位相及び振幅を検出し、合計トルク振動Tovの位相及び振幅を制御することが求められる。
しかしながら、回転速度振動ωmvは常に振動しているため、回転電機MGの回転速度ωmから回転速度振動ωmvの位相及び振幅を、応答性良く及び精度良く検出することは容易でない。
そこで、以下で説明するように、本実施形態では、トルク振動周波数ωpで振動している回転速度振動ωmvの値を、トルク振動周波数ωpで回転させた回転座標系の値に変換することで、回転速度振動ωmvをその振動が停止した状態で観測することができるようにしている。
3−4−5.固定座標系の拡張(2次元化)
図6(a)に示すように、式(4)で示した回転速度振動ωmvは、1次元の固定座標系の値で表現されている。本実施形態では、2次元の座標系において回転座標変換を行うために、図6(b)に示すように、固定座標系を1次元から2次元の座標系に拡張する。
具体的には、図6(b)に示すように、2次元の固定座標系を、第一固定軸xと、当該第一固定軸xを90度(π/2)分反時計回りに回転した第二固定軸yと、を有する直交座標系とする。そして、回転速度振動ωmvを、直交の固定座標系において、回転速度振動ωmvの振幅Δωmvを半径として、原点を中心にトルク振動周波数(角速度)ωpで回転する周期関数で表現する。この回転速度振動ωmvを表す周期関数の座標Pは、式(4)で示した回転速度振動ωmvを第一固定軸xの値に設定すると共に、第二固定軸yの値をωmvsとした場合に次式のようになる。
Figure 2012200128
式(7)に示すように、回転速度振動ωmvを表す周期関数の座標Pは、第一固定軸xの値ωmvが、位相(ωp t+γ)の余弦(コサイン)の値に振幅Δωmvを乗算した値であるのに対して、第二固定軸yの値ωmvsが、同じ位相(ωp t+γ)の正弦(サイン)の値に振幅Δωmvを乗算した値となる。
従って、2次元の固定座標系を設定するために、第一固定軸xの値に設定される回転速度振動ωmvに加えて、新たに、第二固定軸yの値ωmvsを設定する必要が生じる。なお、回転速度振動ωmvの値は、後述するように回転電機MGの回転速度ωmから検出できる。
図6(b)のタイムチャートに示すように、第二固定軸yの値ωmvsは、第一固定軸xの値に設定される回転速度振動ωmvを、90度(π/2)だけ位相を遅らせた値に相当する。よって、本実施形態では、第二固定軸yの値ωmvsを、回転速度振動ωmvの値を90度(π/2)だけ位相を遅らせた値により代用させている。すなわち、第二固定軸yの値ωmvsは、90度(π/2)の位相遅れに対応した時間分だけ、過去の回転速度振動ωmvの値に設定される。
3−4−6.回転座標変換
本実施形態では、図7(c)に示すように、固定座標系をトルク振動周波数(角速度)ωpで回転させた回転座標系を設定し、固定座標系で表された第一固定軸xの値ωmv及び第二固定軸yの値ωmvsを、回転座標系の値Qに変換している。
具体的には、第一固定軸x及び第二固定軸yの双方をトルク振動周波数(角速度)ωpで回転させた第一回転軸u及び第二回転軸vを有する直交座標系を、回転座標系に設定している。そして、次式に示すように、固定座標系における第一固定軸の値ωmv及び第二固定軸の値ωmvsを、直交の回転座標系における第一回転軸の値ωmv_uv及び第二回転軸の値ωmvs_uvに変換している。
Figure 2012200128
この回転座標変換により、トルク振動周波数(角速度)ωpで回転(振動)していた固定座標系の値P(ωmv(t),ωmvs(t))は、図7(d)に示すように、回転座標系では、回転(振動)が停止した状態で観測することができる。数式の上でも、次式に示すように、式(8)に式(7)を代入して整理すると、回転座標系の値Q(ωmv_uv(t),ωmvs_uv(t))は定数になり、回転座標系で静止することがわかる。
Figure 2012200128
3−4−7.フィードバック系の設計
回転座標系で表した回転速度振動の値Q(ωmv_uv(t),ωmvs_uv(t))の双方が、ゼロに近づくように打消トルク振動の指令値Tpを変化させるフィードバック制御を行えば、回転速度振動ωmvをゼロに近づけることができる。ここで、フィードバック値は、回転座標系で変化させる。
3−4−8.合計トルク振動
式(3)及び式(6)、並びに図8のタイムチャートで示すように、回転速度振動ωmvは、合計トルク振動Tovに対して、90度の位相δだけ遅れ、振幅が1/(Jm×ωp)倍になる。従って、合計トルク振動Tovは、回転速度振動ωmvに対して、90度の位相δだけ進み、振幅が(Jm×ωp)倍となる。よって、図8に示すように、回転座標系で表した回転速度振動の値Q(ωmv_uv(t),ωmvs_uv(t))を、90度の位相δだけ進め(座標を回転させ)、振幅を(Jm×ωp)倍する変換を行うと、回転座標系で表した合計トルク振動の値R(Tov_uv(t),Tovs_uv(t))となる。この速度からトルクへの変換(速度トルク座標回転)は、次式で表せる。
Figure 2012200128
なお、以下で説明する場合のように、速度トルク座標変換に、振幅を変換する(Jm×ωp)の乗算を含めないようにしてもよい。
3−4−9.打消トルク振動指令値の変化
図8に示すように、回転座標系で表した合計トルク振動の値R(Tov_uv(t),Tovs_uv(t))をゼロに近づけるためには、当該合計トルク振動の値Rとは反対方向(合計トルク振動の値Rからゼロに向かう方向)、言いかえると、回転座標系で表した回転速度振動の値Qを(π+位相δ)だけ座標回転させた方向に、打消トルク振動の指令値Tpを変化させればよい。
より詳細には、図9に示すように、回転座標系で表した合計トルク振動の値R(Tov_uv(t),Tovs_uv(t))は、回転座標系で表した伝達トルク振動の値W(Teov_uv(t),Teovs_uv(t))と、回転座標系で表した打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))との合計からなる。そして、打消トルク振動指令値Sを、合計トルク振動の値Rとは反対方向(合計トルク振動の値Rからゼロに向かう方向)に変化させれば、合計トルク振動の値Rをゼロに近づけることができ、回転座標系で表した回転速度振動の値Qもゼロに近づけることができる。
3−4−10.固定座標変換
図10に示すように、回転座標系で表した打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))を、固定座標変換して、固定座標系で表した打消トルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))を得る。この固定座標変換は、次式で表せる。
Figure 2012200128
図10のタイムチャートで示すように、回転座標系の打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))を、固定座標変換すると、トルク振動周波数ωpで振動する固定座標系の打消トルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))を得ることができる。すなわち、回転座標系においてフィードバック制御により変化させた打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))を、固定座標変換することにより、自動的に、トルク振動周波数ωpで振動する打消トルク振動の指令値Tpを生成することができる。
3−4−11.座標変換のまとめ
以上で説明した本実施形態に係わる座標変換をまとめると、図11(a)に示すようになる。すなわち、固定座標系で表した回転速度振動の値P(ωmv(t),ωmvs(t))を、式(8)で示したように、トルク振動周波数(角速度)ωpで回転している回転座標系の値Q(ωmv_uv(t),ωmvs_uv(t))に変換する。そして、回転座標系で表した回転速度振動の値Q(ωmv_uv(t),ωmvs_uv(t))を、式(10)で示した速度トルク座標回転を行って、回転座標系で表した合計トルク振動の値R(Tov_uv(t),Tovs_uv(t))に変換する。そして、合計トルク振動の値Rがゼロに近づくように、回転座標系において打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))をフィードバック制御により変化させる。回転座標系の打消トルク振動指令値Sを、式(11)で示したように、固定座標変換して、トルク振動周波数ωpで振動する固定座標系の打消トルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))を生成する。
図11(b)及び図11(c)に示すように、回転座標変換又は固定座標変換に、速度トルク座標回転を含ませるようにしてもよい。すなわち、図11(b)に示す場合は、回転座標変換に、速度トルク座標回転を含ませて、次式で示す回転座標変換を行うようにしてもよい。
Figure 2012200128
ここで、回転位相δが90度(π/2)の場合は、式(12)の回転座標変換は次式のようになる。
Figure 2012200128
また、図11(c)に示す場合は、固定座標変換に、速度トルク座標回転を含ませて、次式で示す固定座標変換を行うようにしてもよい。
Figure 2012200128
ここで、回転位相δが90度(π/2)の場合は、式(14)の固定座標変換は次式のようになる。
Figure 2012200128
また、図11(d)に示すように、回転座標変換、フィードバック制御(フィードバック演算)、及び固定座標変換を行った後に、速度トルク座標回転を行うようにしてもよい。
また、図11(e)に示すように、回転座標変換、及びフィードバック制御(フィードバック演算)を行った後に、速度トルク座標回転を行い、その後、固定座標変換行うようにしてもよい。
図11(b)及び図11(c)に示す場合は、回転座標変換における座標回転と、固定座標変換における座標回転との間に、速度トルク座標回転の回転位相δ分の回転位相差が設けられる。よって、回転座標変換における座標回転に対して、回転位相δ分だけ位相を進めて固定座標変換を行えばよい。
図11(a)から(e)に示すように、固定座標変換を行った後のフィードバック値である固定座標系の打消トルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))の位相が回転座標変換を行う前の固定座標系の回転速度振動の値P(ωmv(t),ωmvs(t))の位相に対して回転位相δ(例えば、90度(π/2))分進むように座標回転処理を行えばよい。このような、回転位相δの座標回転処理を行う処理部を座標回転部とする。
図11(a)、(d)、及び(e)に示す場合は、回転位相δ(例えば、90度)進める座標回転処理が、速度トルク座標回転からなる座標回転部により実行される。図11(a)に示す場合は、回転座標変換が実行された後であって、フィードバック制御が実行される前に、速度トルク座標回転の座標回転部の処理が実行される。図11(d)に示す場合は、固定座標変換が実行された後に、速度トルク座標回転の座標回転部の処理が実行される。図11(e)に示す場合は、フィードバック制御が実行された後であって、固定座標変換が実行される前に、速度トルク座標回転の座標回転部の処理が実行される。図11には示していないが、図11(a)において、回転座標変換と、速度トルク座標回転との処理順序を入れ替えて、速度トルク座標回転の座標回転部の処理が実行された後に、回転座標変換が実行され、その後、フィードバック制御及び固定座標変換が実行されるようにしてもよい。
図11(b)、(c)に示す場合は、回転位相δ(例えば、90度)進める座標回転部が、回転座標変換部及び固定座標変換部のいずれか一方に含まれ、当該一方の座標変換と共に座標回転処理が実行される。図11(b)に示す場合は、回転位相δ(例えば、90度)進める座標回転部が回転座標変換部に含まれ、固定座標変換を実行する際に用いる回転位相(ωp×t)を、回転位相δ分(例えば、90度)遅らせた回転位相(ωp×t−δ)を用いて回転座標変換が実行される。図11(c)に示す場合は、回転位相δ(例えば、90度)進める座標回転部が固定座標変換部に含まれ、回転座標変換を実行する際に用いた回転位相(ωp×t)を、回転位相δ分(例えば、90度)進めた回転位相(ωp×t+δ)を用いて固定座標変換が実行される。
3−4−12.回転振動抽出部41
以下で、トルク振動打消し制御部40に備えられた各機能部の詳細を説明する。
回転振動抽出部41は、上記したように、回転電機MGの回転速度ωmから、伝達トルク振動Teovの周波数に対応した所定の周波数帯域の振動成分である回転速度振動ωmvを抽出する。
本実施形態では、伝達トルク振動Teovは、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGの回転軸に伝達されるトルク振動を含んでいる。よって、本実施形態では、回転振動抽出部41は、回転電機MGの回転速度ωmから、エンジンEの特性に応じて定めた周波数帯域の振動成分である回転速度振動ωmvを抽出するように構成されている。この周波数帯域は、図14に示したように、高振動領域となる所定範囲のエンジンEの回転速度ωeに対応して設定される。すなわち、上記したように、エンジンEの出力トルクTeの振動周波数ωpは、エンジンEの回転速度ωeに応じて変化し、気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp=N/2×ωeとなる。また、回転電機MGの回転速度ωmは、エンジンEの回転速度ωeと振動成分を除き概ね等しくなり、伝達トルク振動Teovのトルク振動周波数ωpは、エンジンEの出力トルクTeの振動周波数ωpと等しくなる。よって、エンジンEの特性に応じて定めた周波数帯域は、高振動領域となる所定範囲のエンジンEの回転速度ωeに対応するトルク振動周波数ωpの帯域に設定される。なお、所定の周波数帯域は、回転電機MGの回転速度ωm又はエンジンEの回転速度ωeに応じて変化するトルク振動周波数ωpに基づき設定されるように構成されてもよい。この場合は、所定の周波数帯域は、後述する振動周波数算出部42が算出したトルク振動周波数ωpを中心とした周波数帯域に可変設定される。
本実施形態では、回転振動抽出部41は、回転電機MGの回転速度ωmに対して、所定の周波数帯域をパスするバンドパスフィルタ処理を行って、回転速度振動ωmvを抽出するように構成されている。あるいは、回転振動抽出部41は、例えば、回転電機MGの回転速度ωmに対して、所定の周波数帯より低い周波数をパスするローパスフィルタ処理を行って、回転速度振動ωmvを抽出するように構成されてもよい。この場合、ローパスフィルタ処理として、一次遅れフィルタ処理や、移動平均処理などを用いることができる。
3−4−13.振動周波数算出部42
振動周波数算出部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づき、伝達トルク振動Teovの周波数であるトルク振動周波数ωpを算出する。
上記したように、本実施形態では、伝達トルク振動Teovは、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGの回転軸に伝達されるトルク振動を含んでいる。
よって、振動周波数算出部42は、回転電機MG及びエンジンEの少なくとも一方の回転速度に基づき、トルク振動周波数ωpを算出する。上記したように、伝達トルク振動Teovのトルク振動周波数ωpは、エンジンEの出力トルクTeの振動周波数ωpと等しくなり、回転電機MGの回転速度ωmは、エンジンEの回転速度ωeと振動成分を除き概ね等しくなる。よって、振動周波数算出部42は、エンジンEが気筒数Nの4サイクルエンジンである場合は、回転電機MGの回転速度ωm及びエンジンEの回転速度ωeの少なくとも一方に基づき、次式に示すように、トルク振動周波数ωpを算出する。
Figure 2012200128
3−4−14.位相遅れ回転振動算出部43
位相遅れ回転振動算出部43は、上記したように、回転速度振動ωmv及びトルク振動周波数ωpに基づき、当該回転速度振動ωmvをトルク振動周波数ωpにおいて所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出する。
本実施形態では、位相遅れ回転振動算出部43は、回転速度振動ωmv及びトルク振動周波数ωpに基づき、回転速度振動ωmvをトルク振動周波数ωpにおいて90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出する。
具体的には、位相遅れ回転振動算出部43は、過去に検出した回転速度振動ωmvのデータを、回転速度振動ωmvを検出した時点のトルク振動周波数ωpにおける位相と共に記憶するように構成される。そして、位相遅れ回転振動算出部43は、記憶したデータの中から、今回(現在)より、90度位相分だけ過去に検出した回転速度振動ωmvのデータを抽出し、当該データを位相遅れ回転速度振動ωmvdlyに設定する。
あるいは、位相遅れ回転振動算出部43は、回転振動抽出部41が今回(現在)及び過去に抽出した回転速度振動ωmvと、当該今回及び過去の回転速度振動ωmvを抽出した時点のトルク振動周波数ωpにおける位相とに基づいて、上記の位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出するように構成されてもよい。このように構成すると、回転速度振動ωmvの演算時期の間隔の設定により、90度ちょうどの位相遅れデータがない場合などでも、90度の位相遅れに相当する位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出することができる。
具体的な算出方法を以下で導出する。今回の演算時期nで検出した回転速度振動ωmv(n)と、今回よりもa回前の演算時期(n−a)であって、今回よりb位相分だけ過去に検出した回転速度振動ωmv(n−a)と、を次式で表す。
Figure 2012200128
また、今回の演算時期nで算出され、今回より90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdly(n)は、次式で表せる。
Figure 2012200128
式(17)のa回前の回転速度振動ωmv(n−a)は、式(18)を用いて、次式のように変形できる。
Figure 2012200128
式(17)と式(19)を行列式にまとめると次式を得る。
Figure 2012200128
式(20)を、右辺の(ωmv(n),ωmvdly(n))について整理すると、次式を得る。
Figure 2012200128
よって、位相遅れ回転振動算出部43は、式(21)の演算式に従い、今回の演算時期nで検出した回転速度振動ωmv(n)と、今回よりもa回前の演算時期(n−a)であって、今回よりb位相分だけ過去に検出した回転速度振動ωmv(n−a)とを用いて、今回より90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdly(n)を算出するように構成されてもよい。
3−4−15.固定座標系設定部44
固定座標系設定部44は、回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを固定座標系で表す。
本実施形態では、固定座標系設定部44は、上記したように、第一固定軸xと、当該第一固定軸xを90度分反時計回りに回転した第二固定軸yと、を有する直交座標系を固定座標系とする。そして、固定座標系設定部44は、回転速度振動ωmvを第一固定軸xの値に設定し、90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを第二固定軸yの値ωmvsに設定する。この第二固定軸yの値ωmvsの設定は、図6(b)を参照して上記したように、回転速度振動ωmvを、直交の固定座標系において、振幅Δωmvを半径として、原点を中心にトルク振動周波数(角速度)ωpで回転する周期関数で表現すると共に、第一固定軸xの値ωmv及び第二固定軸yの値ωmvsを式(7)のように設定した場合において、第二固定軸yの値ωmvsを、位相遅れ回転速度振動ωmvdlyで代用することに相当する。すなわち、図6(b)のタイムチャートに示すように、第二固定軸yの値ωmvsは、第一固定軸xの値に設定される回転速度振動ωmvを、90度(π/2)だけ位相を遅らせた値に相当するため、固定座標系設定部44は、第二固定軸yの値ωmvsを、回転速度振動ωmvをトルク振動周波数ωpにおいて90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyで代用している。
3−4−16.回転座標変換部45
回転座標変換部45は、固定座標系で表された回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdly(第二固定軸yの値ωmvs)を、固定座標系をトルク振動周波数ωpで回転させた回転座標系の値に変換する。
本実施形態では、回転座標変換部45は、図7を参照して上記したように、第一固定軸x及び第二固定軸yの双方をトルク振動周波数(角速度)ωpで回転させた第一回転軸u及び第二回転軸vを有する直交座標系を、回転座標系とする。そして、回転座標変換部45は、式(8)で示したように、固定座標系における第一固定軸xの値ωmv及び第二固定軸yの値ωmvsを、回転座標系における第一回転軸uの値ωmv_uv及び第二回転軸vの値ωmvs_uvの値に変換する。
ここで、図11(b)を参照して説明したように、回転座標変換に、速度トルク座標回転を含ませて、式(12)又は式(13)で示した回転座標変換を行うようにしてもよい。
また、トルク振動打消し制御部40は、式(8)、及び式(11)から式(15)で示した回転座標変換及び固定座標変換で用いる回転位相(ωp×t)を、回転電機MGの回転角度θmに基づき設定する。トルク振動打消し制御部40は、例えば、エンジンEが気筒数Nの4サイクルエンジンである場合は、回転電機MGの回転角度θmに基づき、次式に示すように、回転位相(ωp×t)を算出する。
Figure 2012200128
3−4−17.回転座標系フィードバック制御部46
回転座標系フィードバック制御部46は、回転座標系に変換された回転速度振動ωmvと位相遅れ回転速度振動ωmvdly(第二固定軸yの値ωmvs)の値をゼロに近づけるように、回転座標系におけるフィードバック値を算出する。
本実施形態では、回転座標系フィードバック制御部46は、回転座標系における第一回転軸uの値ωmv_uvをゼロに近づけるように、第一回転軸uにおける第一フィードバック値Tp_uvを算出すると共に、第二回転軸の値ωmvs_uvをゼロに近づけるように、第二回転軸vにおける第二フィードバック値Tps_uvを算出する。
また、フィードバック値の算出は、PID制御などの各種のフィードバック制御を用いることができる。本実施施形態では、第一フィードバック値Tp_uvを算出するために、第一回転軸uの値ωmv_uvに乗算される第一フィードバックゲイン(例えば、第一積分ゲインKi)と、第二フィードバック値Tps_uvを算出するために、第二回転軸の値ωmvs_uvに乗算される第二フィードバックゲイン(例えば、第二積分ゲインKis)と、が同じ値に設定されている。これにより、回転座標系で表した回転速度振動の値Qを、真直ぐゼロに向かう方向に変化させることができる第一フィードバック値Tp_uv及び第二フィードバック値Tps_uvを算出することができる。例えば、フィードバック制御としてI制御が用いられる場合は、積分器(1/s)を用いて次式のように構成される。
Figure 2012200128
ここで、図8、図9、及び図11(a)を参照して説明したように、回転座標系フィードバック制御部46は、回転座標系における第一回転軸uの値ωmv_uv及び第二回転軸vの値ωmvs_uvに対して、式(10)で示した速度トルク座標回転を行って、回転座標系で表した合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvを算出した上で、当該合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvをゼロに近づけるように、回転座標系におけるフィードバック値を算出するように構成されてもよい。すなわち、回転座標系フィードバック制御部46は、速度トルク座標回転後の第一回転軸uの値ωmv_uv(Tov_uv)をゼロに近づけるように、第一回転軸uにおける第一フィードバック値Tp_uvを算出すると共に、速度トルク座標回転後の第二回転軸の値ωmvs_uv(Tovs_uv)をゼロに近づけるように、第二回転軸vにおける第二フィードバック値Tps_uvを算出するように構成されてもよい。
3−4−18.固定座標変換部47
固定座標変換部47は、回転座標系におけるフィードバック値を、固定座標系の値に変換する。
本実施形態では、固定座標変換部47は、第一回転軸uにおける第一フィードバック値Tp_uv及び第二回転軸vにおける第二フィードバック値Tps_uvを、式(11)で示したように、固定座標系の値Tp及びTpsに変換する。
ここで、図11(c)を参照して説明したように、固定座標変換に、速度トルク座標回転を含ませて、式(14)又は式(15)で示した固定座標変換を行うようにしてもよい。
3−4−19.打消トルク制御部48
打消トルク制御部48は、固定座標系に変換されたフィードバック値に基づき、伝達トルク振動Teovを打ち消すためのトルク振動である打消トルク振動の指令値Tpを生成し、当該打消トルク振動の指令値Tpを用いて回転電機MGを制御する。
本実施形態では、打消トルク制御部48は、固定座標系に変換された第一フィードバック値Tp及び第二フィードバック値Tpsの少なくとも一方に基づき、打消トルク振動の指令値Tpを生成し、当該打消トルク振動の指令値Tpを用いて前記回転電機MGを制御する。
ここで、図11(a)、(b)、(c)及び(e)に示したように、固定座標変換を実行するまでに、速度トルク座標回転を実行している場合は、打消トルク制御部48は、固定座標系に変換された第一フィードバック値Tpを、そのまま打消トルク振動の指令値Tp(式(24)ではT’p))に設定する。
Figure 2012200128
一方、図11(d)の場合に示したように、固定座標変換を実行してから、速度トルク座標回転を実行する場合は、打消トルク制御部48は、次式で示すように、固定座標系に変換された第一フィードバック値Tp及び第二フィードバック値Tpsに対して、速度トルク座標回転を行って、打消トルク振動の指令値Tp(式(25)ではT’p))を設定する。回転位相δが90度(π/2)の場合は、第二フィードバック値Tpsに−1を乗算した値が、打消トルク振動の指令値Tp(式(25)ではT’p))に設定される。
Figure 2012200128
なお、後述する第二の実施形態において、式(40)及び図18を用いて説明するように、固定座標変換又は速度トルク座標回転の行列演算の内、打消トルク振動の指令値Tpに最終的に反映される行の演算のみを行い、反映されない行の演算を行わないように構成されてもよい。
3−4−20.トルク振動打消し制御の挙動
次に、図12に、トルク振動打消し制御の挙動の例を示す。図12では、トルク振動打消し制御部40が、図11(a)のように構成された場合の制御挙動の例を示している。なお、トルク振動打消し制御部40を、図11(b)、(c)、(d)及び(e)のように構成された場合でも、図12に示す場合と同様の打消トルク振動の指令値Tpの制御挙動、及び回転速度振動ωmvの振動収束挙動が得られる。
トルク振動打消し制御を開始するまでは(時刻t11まで)、伝達トルク振動Teovを打消トルク振動の指令値Tpで十分打ち消すことができておらず、合計トルク振動Tovが生じている。このため、回転電機MGの回転速度ωmに回転速度振動ωmvが生じている。
トルク振動打消し制御部40は、回転電機MGの回転速度ωmから抽出した回転速度振動ωmvをトルク振動周波数ωpにおいて90度位相分だけ遅らせた位相遅れ回転速度振動ωmvdlyを算出している。図12に示されているように、固定座標系で表された回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdly(ωmvs)は、トルク振動周波数ωpで振動している。
トルク振動打消し制御部40は、固定座標系で表された回転速度振動ωmv及び位相遅れ回転速度振動ωmvdly(ωmvs)を、固定座標系をトルク振動周波数ωpで回転させた回転座標系の値ωmv_uv及びωmvs_uvに回転座標変換を行っている。図12に示されているように、回転座標系に変換された回転速度振動の値ωmv_uv及び位相遅れ回転速度振動の値ωmvs_uvは、トルク振動周波数ωpで振動しておらず、図12の右側に示すように、回転座標系において回転速度振動ωmvをその振動が停止した状態で観測することができている。
トルク振動打消し制御部40は、図11(a)で示した場合のように、回転座標系で表した回転速度振動の値ωmv_uv及びωmvs_uvに対して、式(10)で示した速度トルク座標回転を行って、回転座標系で表した合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvを算出している。図12の右側に示すように、回転座標系で表した合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvは、回転座標系で表した回転速度振動の値ωmv_uv及びωmvs_uvに対して、90度(π/2)の位相δだけ進められている。
トルク振動打消し制御部40は、回転座標系で表した合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvをゼロに近づけるように、回転座標系の打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvを変化させるフィードバック制御を行っている。図12の右側に示すように、回転座標系の打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvは、回転座標系で表した合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvをゼロに近づける方向にフィードバック制御により変化されている。これにより、伝達トルク振動と打消トルク振動指令値との合計からなる合計トルク振動の値Tov_uv及びTovs_uvは、ゼロに収束している。そして、回転座標系で表した回転速度振動の値ωmv_uv及びωmvs_uvも、ゼロに収束している。
トルク振動打消し制御部40は、回転座標系の打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvを、式(11)で示した固定座標変換を行って、固定座標系で表した打消トルク振動の指令値Tpを算出している。図12に示すように、この固定座標変換により、回転座標系において振動が停止している打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvから、自動的に、トルク振動周波数ωpで振動している打消トルク振動の指令値Tpを生成することができる。
図12に示すように、回転座標系の打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvのフィードバック変化に伴い、固定座標系で表した打消トルク振動の指令値Tpは、伝達トルク振動Teovを打ち消す方向に変化していき、合計トルク振動Tovの振幅がゼロに収束している。
〔第二の実施形態〕
次に本発明に係る回転電機制御装置32の第二の実施形態について説明する。
上記の第一の実施形態においては、トルク振動打消し制御部40は、式(10)、及び式(12)から式(15)で示した速度トルク座標回転において、90度の位相δだけ進める(座標を回転させる)場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、トルク振動打消し制御部40は、90度以外の位相δだけ進めるように構成されてもよい。この場合は、例えば、回転電機制御装置32における通信遅れや、打消トルク振動の指令値Tpに対する回転電機MGの実際の出力トルクTmの応答遅れなどの各種遅れを、トルク振動周波数ωpにおける遅れ位相φに換算し、次式に示すように、当該各種遅れによる遅れ位相φ(絶対値)を、90度に加算して、位相δに設定するようにしてもよい。
Figure 2012200128
これにより、速度トルク座標回転により、各種遅れを補償することができ、フィードバック制御による収束性を向上させることができる。よって、回転座標系で表した回転速度振動の値Qを、真直ぐゼロに向かう方向に変化させることができる。
このように速度トルク座標変換に遅れ位相φの補償(位相遅れ補償)を含ませる座標変換は、図11と同様に、以下で説明するような数学的に等価な処理に変形することができる。
<フィードバック制御後に速度トルク座標変換及び位相遅れ補償を行う場合>
まず、フィードバック制御後に速度トルク座標変換及び位相遅れ補償を行う場合について説明する。
図11(c)に示したように、速度トルク座標回転を固定座標変換に含ませるようにした場合の式(14)は、式(26)を代入すると、次式及び図15(a)のようになる。
Figure 2012200128
この式(27)の場合は、回転座標変換を実行する際に用いた、トルク振動周波数ωpで変化している回転位相(ωp×t)の固定座標変換と、90度(π/2)の位相進み座標回転と、遅れ位相φの位相進み座標回転と、を1つの固定座標変換(座標回転)で行うように構成されている。すなわち、回転位相(ωp×t)に90度(π/2)と遅れ位相φとを加算した回転位相(ωp×t+π/2+φ)の固定座標変換を行うように構成されている。よって、座標変換(座標回転)の回数が増加して演算処理負荷を増加させることなく、遅れ位相φの補償処理を行うことができる。なお、所定位相の固定座標変換は、所定位相の位相進み座標回転と数学的に同じである。
或いは、この式(27)及び図15(a)の処理を、以下で示すような、数学的に等価な処理に変形することができる。
例えば、式(27)を、回転座標変換を実行する際に用いた回転位相(ωp×t)に遅れ位相φを加算した回転位相(ωp×t+φ)の固定座標変換と、90度(π/2)の位相進み座標回転とに分けると、式(28)及び図15(b1)、又は式(29)及び図15(b2)のように変形できる。
Figure 2012200128
Figure 2012200128
式(28)及び図15(b1)の場合は、90度(π/2)の位相進み座標回転を行った後、回転位相(ωp×t+φ)の固定座標変換を行う場合である。
式(29)及び図15(b2)の場合は、回転位相(ωp×t+φ)の固定座標変換を行った後、90度(π/2)の位相進み座標回転を行う場合である。
式(28)及び図15(b1)の場合は、90度(π/2)の位相進み座標回転である[0 −1,1 0]の行列演算により、式(25)で示したように、第二回転軸vの値に−1を乗算した値が、第一回転軸uの値として設定され、第一回転軸uの値が、第二回転軸vの値として設定される。また同様に、式(29)及び図15(b2)の[0 −1,1 0]の行列演算により、第二固定軸yの値に−1を乗算した値が、第一固定軸xの値として設定され、第一固定軸xの値が、第二固定軸yの値として設定される。よって、式(28)及び式(29)の処理は、軸の値を入れ替える簡単な処理と、1回の固定座標変換(座標回転)の処理と、からなるため、演算処理負荷を増加させることなく、位相遅れ補償の処理を行うことができる。
或いは、式(27)を、回転座標変換を実行する際に用いた、回転座標変換を実行する際に用いた回転位相(ωp×t)の固定座標変換と、90度(π/2)に遅れ位相φを加算した回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転とに分けると、式(30)及び図15(c1)、又は式(31)及び図15(c2)のように変形できる。
Figure 2012200128
Figure 2012200128
式(30)及び図15(c1)の場合は、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転を行った後、回転位相(ωp×t)の固定座標変換を行う場合である。
式(31)及び図15(c2)の場合は、回転位相(ωp×t)の固定座標変換を行った後、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転を行う場合である。
式(30)又は式(31)の場合は、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転において、遅れ位相φの正弦(sin(φ))及び余弦(cos(φ))の演算が必要になるが、式(30)又は式(31)の固定座標変換と、式(8)の回転座標変換との間で、回転位相(ωp×t)の正弦(sin(ωp×t))及び余弦(cos(ωp×t))の演算を共通化できるため、全体として演算処理負荷の増加を抑制できる。
<フィードバック制御前に速度トルク座標変換及び位相遅れ補償を行う場合>
次に、フィードバック制御より前に速度トルク座標変換及び位相遅れ補償を行う場合について説明する。
図11(b)に示したように、速度トルク座標回転を回転座標変換に含ませるようにした場合の式(12)は、式(26)を代入すると、次式及び図16(a)のようになる。
Figure 2012200128
この式(32)の場合は、固定座標変換を実行する際にも用いる、トルク振動周波数ωpで変化している回転位相(ωp×t)の回転座標変換と、90度(π/2)の位相進み座標回転と、遅れ位相φの位相進み座標回転と、を1つの回転座標変換(座標回転)で行うように構成されている。すなわち、回転位相(ωp×t)から90度(π/2)と遅れ位相φとを減算した回転位相(ωp×t−π/2−φ)の回転座標変換を行うように構成されている。よって、座標変換(座標回転)の回数が増加して演算処理負荷を増加させることなく、遅れ位相φの補償処理を行うことができる。なお、所定位相の回転座標変換は、所定位相の位相遅れ座標回転と数学的に同じである。
或いは、この式(32)及び図16(a)の処理を、以下で示すような、数学的に等価な処理に変形することができる。
例えば、式(32)を、固定座標変換を実行する際にも用いる回転位相(ωp×t)から遅れ位相φを減算した回転位相(ωp×t−φ)の回転座標変換と、−90度(−π/2)の位相遅れ座標回転とに分けると、式(33)及び図16(b1)、又は式(34)及び図16(b2)のように変形できる。ここで、−90度(−π/2)の位相遅れ座標回転は、90度(π/2)の位相進み座標回転と等価である。
Figure 2012200128
Figure 2012200128
式(33)及び図16(b1)の場合は、90度(π/2)の位相進み座標回転を行った後、回転位相(ωp×t−φ)の回転座標変換を行う場合である。
式(34)及び図16(b2)の場合は、回転位相(ωp×t−φ)の回転座標変換を行った後、90度(π/2)の位相進み座標回転を行う場合である。
式(33)における、90度(π/2)の位相進み座標回転である[0 −1,1 0]の行列演算により、式(25)で示したように、第二固定軸yの値に−1を乗算した値が、第一固定軸xの値として設定され、第一固定軸xの値が、第二固定軸yの値として設定される。また同様に、式(34)の[0 −1,1 0]の行列演算により、第二回転軸vの値に−1を乗算した値が、第一回転軸uの値として設定され、第一回転軸uの値が、第二回転軸vの値として設定される。よって、式(33)及び式(34)の処理は、軸の値を入れ替える簡単な処理と、1回の回転座標変換(座標回転)の処理と、からなるため、演算処理負荷を増加させることなく、位相遅れ補償の処理を行うことができる。
或いは、式(32)を、固定座標変換を実行する際にも用いる回転位相(ωp×t)の回転座標変換と、−90度(−π/2)から遅れ位相φを減算した回転位相(−π/2−φ)の位相遅れ座標回転(回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転)とに分けると、式(35)及び図16(c1)、又は式(36)及び図16(c2)のように変形できる。
Figure 2012200128
Figure 2012200128
式(35)及び図16(c1)の場合は、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転を行った後、回転位相(ωp×t)の回転座標変換を行う場合である。
式(36)及び図16(c2)の場合は、回転位相(ωp×t)の回転座標変換を行った後、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転を行う場合である。
式(35)又は式(36)の場合は、回転位相(π/2+φ)の位相進み座標回転において、遅れ位相φの正弦(sin(φ))及び余弦(cos(φ))の演算が必要になるが、式(35)又は式(36)の回転座標変換と、式(11)の固定座標変換との間で、回転位相(ωp×t)の正弦(sin(ωp×t))及び余弦(cos(ωp×t))の演算を共通化できるため、全体として演算処理負荷の増加を抑制できる。
<まとめ>
図15(a)から(c2)、及び図16(a)から(c2)に示すように、固定座標変換を行った後のフィードバック値である固定座標系の打消トルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))の位相を、回転座標変換を行う前の固定座標系の回転速度振動の値P(ωmv(t),ωmvs(t))の位相に対して、90度(π/2)進める座標回転処理に加えて、遅れ位相φ(絶対値)分進める位相進め処理が行われればよい。このような、遅れ位相φの位相進め処理を行う処理部を位相進み処理部とする。
図15(c1)、(c2)、図16(c1)、(c2)に示す場合は、遅れ位相φ(絶対値)分進むように位相進め処理を実行する位相進め部が、90度(π/2)進める座標回転処理を行う座標回転部に含まれ、当該座標回転と共に位相進め処理が実行される。図15(c1)に示す場合は、フィードバック制御が実行された後であって、固定座標変換が実行される前に、位相進め部を含む座標回転部の処理が実行される。図15(c2)に示す場合は、固定座標変換が実行された後に、位相進め部を含む座標回転部の処理が実行される。図16(c1)に示す場合は、回転座標変換が実行される前に、位相進め部を含む座標回転部の処理が実行される。図16(c2)に示す場合は、回転座標変換が実行された後であって、フィードバック制御が実行される前に、位相進め部を含む座標回転部の処理が実行される。なお、90度(π/2)進める座標回転処理を実行する座標回転処理部と、遅れ位相φ(絶対値)分進める位相進め部と、が分離して別個の回転座標変換として備えられてもよい。
図15(a)、(b1)、(b2)、図16(a)、(b1)、(b2)に示す場合は、位相進め部が、回転座標変換部及び固定座標変換部の一方に含まれ、当該一方の座標変換と共に位相進め処理が実行される。
図15(b1)(b2)に示す場合は、位相進め部が固定座標変換部に含まれ、回転座標変換を実行する際に用いた回転位相(ωp×t)を、遅れ位相φ(絶対値)分進めた回転位相(ωp×t+φ)を用いて固定座標変換が実行される。また、図15(a)に示す場合は、位相進め部及び座標回転部が固定座標変換部に含まれ、回転座標変換を実行する際に用いた回転位相(ωp×t)を、90度(π/2)及び遅れ位相φ(絶対値)分進めた回転位相(ωp×t+π/2+φ)を用いて固定座標変換が実行される。
図16(b1)(b2)に示す場合は、位相進め部が回転座標変換部に含まれ、固定座標変換を実行する際に用いる回転位相(ωp×t)を、遅れ位相φ(絶対値)分遅らせた回転位相(ωp×t−φ)を用いて回転座標変換が実行される。また、図16(a)に示す場合は、位相進め部及び座標回転部が回転座標変換部に含まれ、固定座標変換を実行する際に用いる回転位相(ωp×t)を、90度(π/2)及び遅れ位相φ(絶対値)分遅らせた回転位相(ωp×t−π/2−φ)を用いて回転座標変換が実行される。
図15(b1)に示す場合は、フィードバック制御が実行された後に、90度(π/2)進める座標回転部の処理が実行され、その後に、位相進め部を含む固定座標変換の処理が実行される。図15(b2)に示す場合は、フィードバック制御が実行された後に、位相進め部を含む固定座標変換の処理が実行され、その後に90度(π/2)進める座標回転部の処理が実行される。図16(b1)に示す場合は、位相進め部を含む回転座標変換が実行される前に、90度(π/2)進める座標回転部の処理が実行される。図16(b2)に示す場合は、位相進め部を含む回転座標変換が実行された後であって、フィードバック制御が実行される前に、90度(π/2)進める座標回転部の処理が実行される。
<遅れ位相φの算出>
本実施形態では、トルク振動打消し制御部40は、遅れ位相φを算出する位相遅れ算出部を備えている。
位相遅れ算出部は、打消トルク振動の指令値Tpに対する回転電機MGの出力トルクTmの遅れ位相φを算出する。この遅れ位相φは、回転電機制御装置32における通信遅れ(通信周期)や演算周期などにより生じる演算処理遅れや、電流フィードバック制御系の応答遅れなどにより生じる。
演算処理遅れ及び電流フィードバック制御系の応答遅れについて以下で詳細に説明する。
<演算処理遅れ>
出力トルク指令値Tmoは、トルク振動打消し制御部40からインバータ制御部51に通信により伝達されており、当該通信周期により演算処理遅れが生じる。また、インバータ制御部51は、伝達された出力トルク指令値Tmoに基づいて電流指令を設定する電流指令設定制御部、回転電機MGを流れる実電流が電流指令に近づくように電圧指令を変化させる電流フィードバック制御部、及び電圧指令に基づいてパルス幅変調方式によりスイッチング素子をオンオフ駆動するパルス幅変調制御部などの、複数の制御部により構成されており、各制御部の演算周期、又は制御部間の通信周期により演算処理遅れが生じる。
これらの演算処理遅れにより、出力トルク指令値Tmoの変化に対して、回転電機MGに印加される電圧が、むだ時間遅れ的に変化する。よって、出力トルク指令値Tmoに対する回転電機MGの出力トルクの位相遅れが生じる。
<電流フィードバック制御系の応答遅れ>
コイルのインダクタンス及び抵抗などにより、印加電圧の変化に対して実電流が一次遅れ的に変化する。この制御対象の応答遅れと、積分演算及び比例演算などからなる電流フィードバック制御部の応答特性と、により電流フィードバック制御系には、出力トルク指令値Tmoに基づいて設定された電流指令に対する実電流の位相遅れが生じる。この電流指令に対する実電流の位相遅れに応じて、出力トルク指令値Tmoに対する回転電機MGの出力トルクの位相遅れが生じる。
本実施形態では、位相遅れ算出部は、次式に示すように、演算処理遅れにより生じる遅れ位相φである演算処理遅れ位相φ1と、電流フィードバック制御系の応答遅れにより生じる遅れ位相φである電流制御系遅れ位相φ2と、を足し合わせて遅れ位相φを算出するように構成されている。
Figure 2012200128
<演算処理遅れ位相φ1の算出>
位相遅れ算出部は、トルク振動周波数ωpと演算処理遅れ時間T1とに基づいて、演算処理遅れ位相φ1を算出するように構成されている。
本実施形態では、位相遅れ算出部は、式(38)に示すように、トルク振動周波数ωp(角周波数、角速度)と演算処理遅れ時間T1とを乗算した値を、演算処理遅れ位相φ1として設定するように構成されている。
Figure 2012200128
ここで、トルク振動周波数ωpは、式(16)に示したように、回転電機MGの回転速度ωm又はエンジンEの回転速度ωeに応じて算出される。演算処理遅れ時間T1は、上記したように、演算処理遅れによって出力トルク指令値Tmoが変化してから回転電機MGに印加される電圧が変化するまでのむだ時間に対応して、予め設定されている。ここで、むだ時間が、ランダムに高周波で変動する場合は、むだ時間の平均値が演算処理遅れ時間T1に予め設定される。また、むだ時間が、運転条件又は制御モードによって変化する場合は、演算処理遅れ時間T1は、運転条件又は制御モードに応じて、予め個別に設定された値に設定される。
このように、むだ時間に対応する演算処理遅れ時間T1にトルク振動周波数ωpを乗算することで、演算処理遅れによる遅れ位相φ1を算出することができる。
<電流制御系遅れ位相φ2の算出>
位相遅れ算出部は、トルク振動周波数ωpと、電流フィードバック制御系の応答特性とに基づいて、電流制御系遅れ位相φ2を算出するように構成されている。
図17に電流フィードバック制御系の応答特性の例を示す。図17は、電流フィードバック制御系における、電流指令に対する実電流の応答特性を、周波数領域におけるゲイン及び位相で表したボード線図である。図17には、電流フィードバック制御系の応答特性が一次遅れになるように、電流フィードバック制御部が構成され、電流フィードバック制御部の制御ゲインが設定されている場合の例を示している。一次遅れの場合は、図17に示すように、一次遅れの時定数Tfの逆数(2π/Tf)となる一次遅れのカットオフ周波数ωf(角周波数)において、位相が45度(π/4)遅れる。
本実施形態では、位相遅れ算出部は、電流フィードバック制御系の応答特性におけるカットオフ周波数ωfに対するトルク振動周波数ωpの相対周波数に基づいて、電流制御系遅れ位相φ2を算出するように構成されている。例えば、位相遅れ算出部は、トルク振動周波数ωpをカットオフ周波数ωfで除算した相対周波数と電流制御系遅れ位相φ2との関係特性が予め設定されたマップを備えている。そして、位相遅れ算出部は、トルク振動周波数ωpをカットオフ周波数ωfで除算して算出した相対周波数に基づいて、当該マップを用い、電流制御系遅れ位相φ2を算出するように構成される。運転条件に応じてカットオフ周波数ωfが変化する場合は、運転条件に応じてカットオフ周波数ωfが変更される。
なお、電流フィードバック制御系の応答特性が一次遅れでない場合も、当該応答特性のカットオフ周波数ωfに対するトルク振動周波数ωpの相対周波数に基づいて、電流制御系遅れ位相φ2を算出することができる。ここで、カットオフ周波数は、ボード線図において、ゲインが−3dBとなる周波数と定義される。
或いは、相対周波数を用いずに、位相遅れ算出部は、電流フィードバック制御系の応答特性に基づいて、トルク振動周波数ωpと電流制御系遅れ位相φ2との関係特性が予め設定されたマップを備えており、トルク振動周波数ωpに基づいて、当該マップを用い、電流制御系遅れ位相φ2を算出するように構成されてもよい。
<演算例>
以下で、式(28)及び図15(b1)のように構成された場合の例について説明する。
フィードバック制御により算出された回転座標系の打消トルク振動指令値S(Tp_uv(t),Tps_uv(t))に対して、式(28)及び図15(b1)に示す固定座標変換と座標回転を行って、固定座標系の打消しトルク振動指令値T(Tp(t),Tps(t))を算出する演算は、次式となる。
Figure 2012200128
ここで、式(39)において、第一固定軸xにおける第一フィードバック値Tp(t)が、最終的に打消トルク振動の指令値Tpとして設定されるので、第二固定軸yにおける第二フィードバック値Tps(t)を算出する必要がない。よって、本実施形態では、次式及び図18に示すように、第二固定軸yにおける第二フィードバック値Tps(t)を算出せずに、第一固定軸xにおける第一フィードバック値Tp(t)のみを算出するように構成されている。
Figure 2012200128
すなわち、90度(π/2)の位相進み座標回転により、フィードバック制御により算出された第二回転軸vの第二フィードバック値Tps_uvに−1を乗算した値が、第一回転軸uの値として設定され、第一回転軸uの第一フィードバック値Tp_uvが、第二回転軸vの値として設定される。すなわち、第一回転軸uの値と、第二回転軸vの値とが入れ替えられる。そして、固定座標変換により、第一回転軸uの値(符号を反転した第二フィードバック値Tps_uv)に、回転座標変換を実行する際に用いた、トルク振動周波数ωpで変化している回転位相(ωp×t)に遅れ位相φを加算した回転位相(ωp×t+φ)の余弦(cos(ωp×t+φ))の値を乗算した値と、第二回転軸vの値(第一フィードバック値Tp_uv)に、符号を反転した回転位相(ωp×t+φ)の正弦(sin(ωp×t+φ))を乗算した値と、を加算した値を、打消トルク振動の指令値Tpとして設定するように構成されている。
この演算は、結局は、式(40)に示したように、第二回転軸vの第二フィードバック値Tps_uvに、符号を反転した回転位相(ωp×t+φ)の余弦(cos(ωp×t+φ))の値を乗算した値と、第一回転軸uの第一フィードバック値Tp_uvに、符号を反転した回転位相(ωp×t+φ)の正弦(sin(ωp×t+φ))の値を乗算した値と、加算した値を、打消トルク振動の指令値Tpとして設定するように構成される。
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の各実施形態において、ハイブリッド車両に、制御装置31から34が備えられ、回転電機制御装置32が、トルク振動打消し制御部40を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機制御装置32は、複数の制御装置31、33、34との任意の組み合わせで統合された制御装置として備えるようにしてもよく、制御装置31から34が備える機能部の分担も任意に設定することができる。
(2)上記の各実施形態において、変速機構TMとは別に、回転電機MGと車輪Wとの間の駆動連結を断接する摩擦係合要素、或いはトルクコンバータ及びトルクコンバータの入出力部材間を直結係合状態にする摩擦係合要素が備えられる構成も本発明の好適な実施形態の一つである。
(3)上記の各実施形態においては、変速機構TMが有段の自動変速装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速機構TMが、連続的に変速比を変更可能な無段の自動変速装置など、有段の自動変速装置以外の変速装置である構成も本発明の好適な実施形態の一つである。
(4)上記の各実施形態においては、第一動力伝達機構10は、ダンパー、エンジン出力軸Eo、入力軸Iなどの部材により構成されており、第二動力伝達機構11は、中間軸M、変速機構TM、出力軸O及び車軸AXなどの部材により構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一動力伝達機構10及び第二動力伝達機構11は、少なくとも動力を伝達可能に連結する機構であればよく、例えば、軸だけでもよい。また、第一動力伝達機構10及び第二動力伝達機構11は、軸、クラッチ、ダンパー、ギヤ、及び変速機構などの中から選択される1つ又は複数の構成要素を有してもよい。
(5)上記の各実施形態においては、トルク振動打消し制御部40は、90度の位相δ又は90度に遅れ位相φを加えた位相δだけ進める(座標を回転させる)速度トルク座標回転に相当する座標回転を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、トルク振動打消し制御部40は、速度トルク座標回転に相当する座標回転を行わず、回転座標系で表した回転速度振動の値ωmv_uv及びωmvs_uvがゼロに近づくようにフィードバック制御を行って、回転座標系の打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvを算出し、当該打消トルク振動指令値Tp_uv及びTps_uvの固定座標変換を行って、固定座標系で表した打消トルク振動指令値Tpを算出するように構成されてもよい。この場合でも、適切なフィードバックゲイン、或いはフィードバック制御方法を設定することにより、回転速度振動ωmvをゼロに近づけることができる。
(6)上記の各実施形態においては、トルク振動打消し制御部40は、90度の位相δ又は90度に遅れ位相φを加えた位相δだけ進める(座標を回転させる)速度トルク座標回転に相当する座標回転を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。第一フィードバックゲインと第二フィードバックゲインとの間の設定差がある場合は、当該設定差による回転座標系で表した回転速度振動の値Qの変化方向を考慮して、例えば、回転速度振動の値Qを、真直ぐゼロに向かう方向に変化させるように、位相δを調整してもよい。
(7)上記の各実施形態においては、第一フィードバックゲインと第二フィードバックゲインとが同じ値に設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一フィードバックゲインと第二フィードバックゲインとが異なる値に設定されていてもよい。この場合でも、回転座標系で表した回転速度振動の値Qを、ゼロに向かう方向に変化させることができる第一フィードバック値Tp_uv及び第二フィードバック値Tps_uvを算出することができる。また、この場合、例えば、回転電機制御装置32における通信遅れや、打消トルク振動の指令値Tpに対する回転電機MGの実際の出力トルクTmの応答遅れなどの各種遅れ、並びに位相δの設定を、考慮して、例えば、回転座標系で表した回転速度振動の値Qを、真直ぐゼロに向かう方向に変化させるように、第一フィードバックゲインの値と第二フィードバックゲインの値を異なる値に設定するようにしてもよい。この場合は、トルク振動打消し制御部40は、90度の位相δ分進める速度トルク座標回転に相当する座標回転を行うと共に、第一フィードバックゲインと第二フィードバックゲインとの間に設定差を設けて(異なる値に設定して)、遅れ位相φを補償するように構成されてもよい。例えば、同じ値に設定された第一及び第二フィードバックゲインKbに対して、次式に示すように、遅れ位相φの位相進み座標回転を行った値を、最終的な第一フィードバックゲインK1と第二フィードバックゲインK2として設定するように構成される。
Figure 2012200128
この場合は、遅れ位相φ(絶対値)分進める位相進め処理が、フィードバック制御の制御ゲインの設定に含まれ、当該フィードバック制御と共に位相進め処理が実行される。
これにより、遅れ位相φがある場合でも、回転速度振動の値Qを、真直ぐゼロに向かう方向に変化させることができる。また、遅れ位相φの変化に応じて、第一フィードバックゲインと第二フィードバックゲインとの間の設定差が調整されるように構成されてもよい。
また、第一フィードバックゲイン及び第二フィードバックゲインを、トルク振動周波数ωpに応じて(例えば、比例して)、変化させるように構成されてもよい。上記したように、合計トルク振動Tovの振幅に対して回転速度振動ωmvの振幅が1/(Jm×ωp)倍になる。よって、上記のように構成することで、トルク振動周波数ωpに比例して低下する、回転速度振動ωmvにおける合計トルク振動Tovの検出感度を補償することができる。
(8)上記の各実施形態においては、伝達トルク振動Teovは、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGの回転軸に伝達されるトルク振動を含む場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機MGの回転軸に伝達される伝達トルク振動Teovは、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGの回転軸に伝達されるトルク振動以外のトルク振動であってもよい。すなわち、トルク振動打消し制御部40は、エンジンEから伝達されるトルク振動以外の伝達トルク振動Teovに対して、トルク振動打消し制御を行うように構成されてもよい。トルク振動打消し制御の対象となる伝達トルク振動Teovは、単数又は複数であってもよく。回転電機制御装置32は、各伝達トルク振動Teovに対応した単数又は複数のトルク振動打消し制御部40を備え、各トルク振動打消し制御部40は、制御対象とする伝達トルク振動Teovのトルク振動周波数ωpに応じたトルク振動打消し制御を行うように構成されてもよい。この場合、回転電機制御装置32は、各トルク振動打消し制御部40により算出された打消トルク振動の指令値Tpを合計したトルク指令値を回転電機MGに出力させる。
例えば、伝達トルク振動Teovは、回転電機MGの出力トルクTmに生じるトルクリップルであり、回転振動抽出部41は、回転電機MGの回転速度ωmから、回転電機MGの特性に応じてトルクリップルの周波数ωpに対応するように定めた周波数帯域の振動成分である回転速度振動ωmvを抽出するように構成されてもよい。この場合、トルクリップルに対応するトルク振動周波数ωpは、例えば、6次の高調波に対応したトルクリップの周波数に設定され、回転位相(ωp×t)は、式(22)に代えて次式で算出されるように構成されてもよい。
Figure 2012200128
あるいは、伝達トルク振動Teovは、車両用駆動装置1の動力伝達機構の軸ねじれ振動の共振点の周波数で振動するトルク振動であり、回転振動抽出部41は、回転電機MGの回転速度ωmから、車両用駆動装置1の動力伝達機構の軸ねじれ振動の共振点の周波数ωpに対応するように定めた周波数帯域の振動成分である回転速度振動ωmvを抽出するように構成されてもよい。また、振動周波数算出部42は、車両用駆動装置1の動力伝達機構の軸ねじれ振動の共振点の周波数を、トルク振動周波数ωpに設定する。
本発明は、回転電機の回転軸に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動に対し、当該伝達トルク振動を打ち消すためのトルクを前記回転電機に出力させる制御装置に好適に利用することができる。
θm :回転電機の回転角度
ωe :エンジンの回転速度
ωm :回転電機の回転速度
ωmv :回転速度振動
ωmvdly:位相遅れ回転速度振動
ωp :トルク振動周波数
1 :車両用駆動装置
10 :第一動力伝達機構
11 :第二動力伝達機構
31 :エンジン制御装置
32 :回転電機制御装置(制御装置)
33 :動力伝達制御装置
34 :車両制御装置
41 :回転振動抽出部
42 :振動周波数算出部
43 :位相遅れ回転振動算出部
44 :固定座標系設定部
45 :回転座標変換部
46 :回転座標系フィードバック制御部
47 :固定座標変換部
48 :打消トルク制御部
50 :インバータ
51 :インバータ制御部
52 :ベーストルク決定部
CL :エンジン分離クラッチ
E :エンジン(内燃機関)
I :入力軸
Jm :回転電機の慣性モーメント
M :中間軸
MG :回転電機
N :エンジンの気筒数
O :出力軸
PC :油圧制御装置
Se1 :エンジン回転速度センサ
Se2 :入力軸回転速度センサ
Se3 :出力軸回転速度センサ
TM :変速機構
Tb :ベーストルク指令値
Te :エンジンの出力トルク
Teo :伝達トルク
Teov :伝達トルク振動
Tev :出力トルク振動
Tm :回転電機の出力トルク
Tmo :回転電機の出力トルク指令値
To :合計トルク
Tov :合計トルク振動
Tp :打消トルク振動の指令値
W :車輪
u :第一回転軸
v :第二回転軸
x :第一固定軸
y :第二固定軸

Claims (9)

  1. 回転電機の回転軸に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動に対し、当該伝達トルク振動を打ち消すためのトルクを前記回転電機に出力させる制御装置であって、
    前記回転電機の回転速度から、前記伝達トルク振動の周波数に対応した所定の周波数帯域の振動成分である回転速度振動を抽出する回転振動抽出部と、
    前記回転電機の回転速度に基づき、前記伝達トルク振動の周波数であるトルク振動周波数を算出する振動周波数算出部と、
    前記回転速度振動及び前記トルク振動周波数に基づき、当該回転速度振動を前記トルク振動周波数において所定位相遅らせた位相遅れ回転速度振動を算出する位相遅れ回転振動算出部と、
    前記回転速度振動及び前記位相遅れ回転速度振動を固定座標系で表す固定座標系設定部と、
    前記固定座標系で表された前記回転速度振動及び前記位相遅れ回転速度振動を、前記トルク振動周波数で回転させた回転座標系の値に変換する回転座標変換を実行する回転座標変換部と、
    前記回転座標系に変換された前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の値をゼロに近づけるように、前記回転座標系におけるフィードバック値を算出するフィードバック制御を実行する回転座標系フィードバック制御部と、
    前記回転座標系における前記フィードバック値を、前記固定座標系の値に変換する固定座標変換を実行する固定座標変換部と、
    前記固定座標系に変換された前記フィードバック値に基づき、前記伝達トルク振動を打ち消すためのトルク振動である打消トルク振動の指令値を生成し、当該打消トルク振動の指令値を用いて前記回転電機を制御する打消トルク制御部と、
    を備える制御装置。
  2. 前記位相遅れ回転振動算出部は、前記回転速度振動及び前記トルク振動周波数に基づき、前記回転速度振動を前記トルク振動周波数において90度位相分だけ遅らせた前記位相遅れ回転速度振動を算出し、
    前記固定座標系設定部は、第一固定軸と、当該第一固定軸を90度分反時計回りに回転した第二固定軸と、を有する直交座標系を前記固定座標系とすると共に、前記回転速度振動を前記第一固定軸の値に設定し、前記位相遅れ回転速度振動を前記第二固定軸の値に設定し、
    前記回転座標変換部は、前記第一固定軸及び前記第二固定軸の双方を前記トルク振動周波数で回転させた第一回転軸及び第二回転軸を有する直交座標系を前記回転座標系とすると共に、前記固定座標系における前記第一固定軸の値及び前記第二固定軸の値を、前記回転座標系における前記第一回転軸の値及び前記第二回転軸の値に変換する回転座標変換を実行し、
    前記回転座標系フィードバック制御部は、前記回転座標系における前記第一回転軸の値をゼロに近づけるように、前記第一回転軸における第一フィードバック値を算出すると共に、前記第二回転軸の値をゼロに近づけるように、前記第二回転軸における第二フィードバック値を算出し、
    前記固定座標変換部は、前記第一回転軸における前記第一フィードバック値及び前記第二回転軸における前記第二フィードバック値を、前記固定座標系の値に変換する固定座標変換を実行し、
    前記打消トルク制御部は、前記固定座標系に変換された前記第一フィードバック値及び前記第二フィードバック値の少なくとも一方に基づき、前記打消トルク振動の指令値を生成し、当該打消トルク振動の指令値を用いて前記回転電機を制御する請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記回転電機は、第一動力伝達機構を介して内燃機関に駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構を介して車輪に駆動連結され、
    前記伝達トルク振動は、前記内燃機関から前記第一動力伝達機構を介して前記回転電機の前記回転軸に伝達されるトルク振動を含み、
    前記回転振動抽出部は、前記回転電機の回転速度から、前記内燃機関の特性に応じて定めた周波数帯域の振動成分である前記回転速度振動を抽出し、
    前記振動周波数算出部は、前記回転電機及び前記内燃機関の少なくとも一方の回転速度に基づき、前記トルク振動周波数を算出する請求項1又は2に記載の制御装置。
  4. 前記伝達トルク振動は、前記回転電機の出力トルクに生じるトルクリップルであり、
    前記回転振動抽出部は、前記回転電機の回転速度から、前記回転電機の特性に応じて前記トルクリップルの周波数に対応するように定めた周波数帯域の振動成分である前記回転速度振動を抽出する請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
  5. 前記位相遅れ回転振動算出部は、前記回転振動抽出部が今回及び過去に抽出した前記回転速度振動と、当該今回及び過去の前記回転速度振動を抽出した時点の前記トルク振動周波数における位相とに基づいて、前記位相遅れ回転速度振動を算出する請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
  6. 前記固定座標変換を行った後の前記フィードバック値の位相が前記回転座標変換を行う前の前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の位相に対して90度進むように座標回転処理を実行する座標回転部を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
  7. 前記打消トルク振動の指令値に対する前記回転電機の出力トルクの遅れ位相を算出し、前記固定座標変換を行った後の前記フィードバック値の位相が前記回転座標変換を行う前の前記回転速度振動と前記位相遅れ回転速度振動の位相に対して前記遅れ位相分進むように位相進め処理を実行する位相進め部を更に備える請求項6に記載の制御装置。
  8. 前記位相進め部が、前記回転座標変換部、前記固定座標変換部、及び前記座標回転部のいずれか1つに含まれ、当該1つの座標変換又は座標回転と共に前記位相進め処理が実行される請求項7に記載の制御装置。
  9. 前記座標回転部が、前記回転座標変換部及び前記固定座標変換部の一方に含まれ、当該一方の座標変換と共に前記座標回転処理が実行される請求項6から8のいずれか一項に記載の制御装置。
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