以下に、本発明の各実施の形態に係るロータリソレノイドを図面に基づいて説明する。なお、各実施の形態ではハブ側に負荷となる装置の接続部があり、シャフトをハブ側に突出させた構造を前提として説明するが、本発明の各実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、ベース側に負荷となる装置の接続部があり、シャフトをベース側に突出させた構造や、アーマチュアプレートに負荷となる装置の接続部を直接接続するなど、様々なトルク出力の構造を適用することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドの断面図であり、(A)は可動磁極が固定磁極から離隔した状態、(B)は可動磁極が固定磁極に吸着された状態を示す図1において、10はロータリソレノイド、11はシャフト、12はボビン、13はコイル、14bはリード線、15はスプリング、16はスペーサ、17はeリング、18は軸受、20はハブ、22は凸部、31はケース、37はアーマチュアプレート、38a及び38bはボールレース溝、39は金属ボール、40はベース、42は凹陥部、46は凸部、49は縁辺部である。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドの説明図であり、(A)は正面図、(B)は右側面図である。図2において、14aはリード線、38cはボールレース溝であり、その他の符号は図1と同じものを示す。なお、以下の説明においては、シャフト11の先端側をロータリソレノイド10の前面側とし、アーマチュアプレート37側をロータリソレノイド10の背面側として説明する。
まず、この実施の形態に係るロータリソレノイドの全体構造の概略について述べる。図1及び図2に示すように、ロータリソレノイド10は、シャフト11が約1mm直動しつつ約45度回転するように構成されている。また、図3に示すように、シャフト11と同様に可動的な構成品として、ハブ20、アーマチュアプレート37、金属ボール39、スペーサ16、eリング17が設けられている。これらのうち、ハブ20とアーマチュアプレート37とが可動磁極を構成している。また、固定的な構成品として、ケース31、ベース40、ボビン12、コイル13などが設けられている。これらのうち、ベース40が固定磁極を構成している。なお、シャフト11の直動距離と回転角度は、スペーサ16やアーマチュアプレート37などの構造によって適宜変更することが可能であるが、ロータリソレノイドではシャフトの直動が負荷となる装置に対して振動などの無用な負担を与えることがあるので、この直動距離を大きくすることは好ましくない。
以下に各構成品について詳しく説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドの分解断面図である。図3において、23は凹陥部、32は開口部、33は対向部、34はボールレース溝、35は開口部、36aは周回溝、36bは切り欠き部、37aは対向面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
ケース31は、図1で示したように、その内部にボビン12、コイル13、軸受18、ハブ20及びベース40の大部分、並びにシャフト11の一部を収納しており、アーマチュアプレート37、スプリング15、スペーサ16及びeリング17をケース31はその外部に設けられている。また、ケース31は、磁性体で形成されており、図3に示すように、その背面側に対向部33を設けている。対向部33は、中央に開口部32を有する略円形板状に形成されている。また、コイル13への通電時にアーマチュアプレート37との間に磁束の流れを発生させるために、アーマチュアプレート37の対向面37aと対向するように、すなわちシャフト11の中心軸と直交する方向に設けられている。なお、ハブ20の中心軸とシャフト11の中心軸とは一致している、したがって、以下の説明において、例えばシャフト11の中心軸方向と直交する面とした面はハブ20の中心軸とも直交している。また、対向部33の開口部32にはハブ20が挿入されており、対向部33の端部はハブ20に非常に接近している。さらに、ケース31の前面側の開口部35には、エンドキャップを兼ねているベース40が嵌合されている。なお、ケース31の外形は、楕円筒状や、四角筒状、六角筒状などに形成してもよい。また、ベース40とは別にエンドキャップを設けてもよい。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドのハブの断面斜視図である。図4において、21は平坦面、24は底面、25は上面、26は外側面、27は内側面、28は大径部、29は小径部、30は貫通孔であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
ハブ20は、図4に示すように、全体形状を短い円筒状に形成された磁性の構成部品である。また、その背面側の一部を他の部分よりも径が小さい小径部29としており、その他の部分を大径部28としている。大径部28は、ケース31の対向部33の中央に形成した開口部の径よりも若干小さい径としており、ハブ20の動きが開口部で妨げられないように設定してある。小径部29は、アーマチュアプレート37を嵌合する部分であり、アーマチュアプレート37の中央に形成した開口部を嵌合するのに適した径に設定されている。なお、小径部29の形状は他の形状に形成してもよいし、大径部28の外周面に周辺の部材を組み込むための溝や切り欠きを形成することも可能である。さらに、負荷となる装置の構成によっては、例えばハブ20の背面側に凹凸や孔を形成して、その部分に非磁性材料から形成した負荷となる装置への接続アームを連結することもできる。なお、ハブ20の材料については、従来技術に係るものを適用できるので説明を省略する。
また、ハブ20は、中心とその近傍は中心軸に沿って貫通孔30を形成している。貫通孔30は、シャフト11を嵌合する孔であり、シャフト11の径を考慮した大きさに形成されている。なお、シャフト11は軸受18に支持されているので、ハブ20はシャフト11と軸受18とを介してベース40に間接的に支持されていることになる。また、ハブ20の平坦面21は、ハブ20の前面側の縁辺に沿って円環状に形成されており、またシャフト11の中心軸と直交するように形成されている。平坦面21に囲まれた領域には、凸部22を円環状に形成している。なお、凸部22は、ハブ20の母材を切削加工することによって簡単に安価に形成できる。さらに、凸部22の中心及びその近傍には、凹陥部23を形成している。凹陥部23は、底面24の中心及びその近傍には貫通孔30の開口部が露出している。また、平坦面21と凹陥部23とは、シャフト11の中心軸と直交する同一の仮想的平面上に配置されており、また後述するベース40の平坦面41及び上面48とそれぞれ正対している。ハブ20のこれらの部分と、後述するベース40の平坦面41などの面との間には、所定のエアギャップを設定しており、コイル13への通電時にはこのエアギャップを縮めるような吸引力が両者の間に働く。
凸部22は、回転開始時のトルクを増大させるために形成したものであり、本発明の中核となる部分である。また、ベース40の凹陥部42と対向するように形成されており、後で詳細に述べるように、ベース40の凹陥部42との間に流れる磁束によって回転開始時の吸引力を高めることによって、トルクの増大を図っている。また、凸部22の上面25は、円環状の平坦面として形成されており、またシャフト11の中心軸と直交するように形成されている。上面25は、ベース40の凹陥部42の底面43と正対しており、コイル13への通電時に上面25を底面43に吸引する磁束、すなわちハブ20をベース40に吸引するように作用する磁束の経路となる。なお、凸部22の上面25とその近傍は、例えば凸曲面状や、逆V字状の屈曲面として形成することも可能であるが、このように形成した場合、シャフト11の中心軸と平行に流れない磁束が生成され、吸引力を低減させる要因になるので、平坦面とすることが望ましい。
さらに、凸部22の外側面26と内側面27とは、それぞれシャフト11の中心軸と平行な面として形成されている。また、外側面26と内側面27とは、凸部22がベース40の凹陥部42に進入したときには、ベース40の凹陥部42の外側面44と内側面45とに対してそれぞれ正対し、コイル13への通電時にはこれらの間にも磁束が流れる。これらの間を流れる磁束は、正対しているこれらの面同士を吸着させようとする力を生成するので、ハブ20とベース40との吸引力、ひいてはロータリソレノイド10のトルクとしては寄与しない、又は少ししか寄与しない。なお、外側面26と内側面27とは、例えばテーパ面や、緩やかに湾曲した曲面に形成することも可能であるが、凸部22がベース40の凹陥部42に深く進入したときにロータリソレノイド10のトルクとして寄与する割合が高くなるので、垂直面とすることが望ましい。外側面26と内側面27とは、平坦面21から上面25までの長さと底面24から上面25までの長さを同じものにしている。すなわち、ハブ20及びシャフト11の中心軸方向に対する長さを同じものとしているが、これらの長さは異なっていてもよい。ただし、これらの長さに差があると、当該部分の加工が複雑になる。さらに、外側面26と内側面27とからベース40の外側面44と内側面45とにそれぞれ流れる磁束が偏り、後述するように、ハブ20がベース40に吸引されていく過程における吸引力の変化が大きくなる。したがって、これらは、ハブ20の中心軸を基準として同じ位置にあることが望ましい。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドのベースの断面斜視図である。図5において、41は平坦面、43は底面、44は外側面、45は内側面、47は胴体部、48は上面、49は縁辺部、50は貫通孔、51は蓋部、52a及び52bはネジ孔であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
ベース40は、磁性の構成品であり、図5に示すように、全体構造を肉厚の略円筒状の胴体部47の前面側に略円形板状の蓋部51を設けたものとしている。また、ベース40は、中心とその近傍は中心軸に沿って貫通孔50を形成している。貫通孔50は、軸受18を嵌合するための孔であり、軸受18の外径を考慮した大きさに形成されている。なお、ベース40は、胴体部47の外周面に周辺の部材を組み込むための溝や切り欠きを形成することも可能である。さらに、負荷となる装置の構成によっては、例えばベース40の前面側に凹凸や孔を形成して、その部分に非磁性材料から形成した負荷となる装置への接続アームを連結することもでき、蓋部51を別体のものとしてもよい。
胴体部47は、磁気回路を構成する主要部であり、背面側の端面の縁辺部49に沿って円環状の平坦面41を形成している。ベース40の平坦面41は、シャフト11の中心軸と直交するように形成されており、ハブ20の平坦面21と正対している。平坦面41に囲まれた領域には、凹陥部42を円環状に形成している。さらに、凹陥部42の中心及びその近傍には、凸部46を形成している。凸部46は、頂部の全体が平坦な上面48となっており、その中心及びその近傍には貫通孔50の開口部が露出している。また、平坦面41と上面48とは、シャフト11の中心軸と直交する同一の仮想的平面上に配置されており、またベース40の平坦面21及び底面24とそれぞれ正対している。
凹陥部42は、回転開始時のトルクを増大させるために形成したものであり、ハブ20の凸部22と共に本発明の中核となる部分である。なお、凹陥部42は、ベース40の母材を切削加工することによって簡単に安価に形成できる。また、凹陥部42の底面43は、円環状の平坦面として形成されており、またシャフト11の中心軸と直交するように形成されている。底面43は、ハブ20の凸部22の底面43と正対しており、コイル13への通電時に上面25を底面43に吸着させる磁束、すなわちハブ20をベース40に吸着させるように作用する磁束の経路となる。なお、凹陥部42の底面43は、ハブ20の凸部22の上面25とその近傍の形状に応じて、例えば凹曲面状や、V字状の屈曲面として形成することも可能であるが、このように形成した場合、シャフト11の中心軸と平行に流れる磁束が生成され、回転停止時のトルクを低減することが困難になるので、平坦面とすることが望ましい。
さらに、凹陥部42の外側面44と内側面45とは、それぞれシャフト11の中心軸と平行な垂直面として形成されている。また、外側面44と内側面45とは、凹陥部42にハブ20の凸部22が深く進入したときには、ベース40の凹陥部42の外側面44と内側面45とに対してそれぞれ非常に接近した状態で正対する。特に、凹陥部42の底面43と凸部22の上面25との距離よりもこれらの側面同士の距離が近い状態では、これらの側面の間に流れる磁束量の方が大きい。これらの側面の間を流れる磁束は、正対しているこれらの面同士を吸着させようとする力を生成するので、ロータリソレノイド10のトルクとしては寄与しない、又は少ししか寄与しないのでトルクを一定に保つ効果が大きいと言える。
なお、外側面44と内側面45とは、例えばテーパ面や、緩やかに湾曲した曲面に形成することも可能であるが、凹陥部42にハブ20の凸部22が進入したときにロータリソレノイド10の吸引力として寄与する割合が高くなるので、垂直面とすることが望ましい。また、外側面44と内側面45とは、底面43から平坦面41までの長さと底面43から上面48までの長さを同じものにしている。すなわち、ハブ20及びシャフト11の中心軸方向に対する長さを同じものとしているが、これらの長さは異なっていてもよい。ただし、これらの長さに差があると、当該部分の加工が複雑になる。さらに、外側面44と内側面45とハブ20の外側面26と内側面27とからベース40にそれぞれ流れる磁束が偏り、後述するように、ハブ20がベース40に吸引されていく過程における吸引力の変化が大きくなるので、これらの長さは同じであることが望ましい。
また、胴体部47の背面側の端面の凹陥部42に囲まれた領域内には凸部46を形成している。凸部46は、ハブ20の凸部22に準じた作用を持つ。すなわち、凹陥部42の内側面45は、凸部46を中心として見た場合、凸部22の外側面26と同じ位置関係となり、コイル13への通電時には凸部22の内側面27との間に磁束が流れる。これらの間を流れる磁束は、これらの面同士を吸着させようとする力を生成するので、ロータリソレノイド10のトルクとしては寄与しない、又は少ししか寄与しない。なお、貫通孔50の内側面は、シャフト11を嵌合するので、内側面45のようには作用しない。また、凸部46の上面48は、凹陥部23の底面24と対向しており、コイル13への通電時に底面24を上面48に吸着させる磁束、すなわちハブ20をベース40に吸着させるように作用する磁束の経路となる。蓋部51は、文字通りケース31のエンドキャップとなるものであるが、磁気回路の一部としての役割も持つ。また、蓋部51には、ネジ孔52a及び52bを設けており、ロータリソレノイド10を負荷装置等に取り付けられるようにしている。
ここで、以上で説明した磁束の流れについて図面に基づいて説明する。図6は、磁束の流れの説明図であり、(A)はロータリソレノイド全体における磁束の流れを示す断面図、(B)は凸部及び凹部における磁束の流れを示す断面図である。図6において、19は磁束であり、その他の符号は図1と同じものを示す。なお、図6は、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイドにおいて特徴的な磁束の流れを模式的に表したものである。
この実施の形態に係るロータリソレノイド10では、コイル13に通電すると、図6(A)に示すような磁束19の流れが発生する。すなわち、シャフト11を取り巻くようにハブ20から、ベース40、ケース31を経てハブ20に戻る主要な磁束19の流れと、ハブ20から、ベース40、ケース31、アーマチュアプレート37を経てハブ20に戻る傍流的な磁束19の流れとが発生する。ここで、ハブ20とベース40との間の磁束19の流れに着目する。コイル13に通電した当初、つまりロータリソレノイド10の回転開始時には、ハブ20とベース40とが離れていてエアギャップが相対的に大きいので、図6(B)のB−1に示すように、ハブ20とベース40との間の磁束19の流れはハブ20及びベース40の中心軸に沿ったもの、又は中心軸に近い方向のものの割合が高く、ハブ20とベース40との吸引力として寄与する比率が高い。また、ハブ20に凸部22を形成し、ベース40に凹陥部42を形成しているので、ハブ20とベース40との対向部分が全く平坦な従来技術に係るロータリソレノイドよりも表面積が大きい。したがって、ロータリソレノイド10の回転開始時には、ハブ20とベース40との間に従来技術に係る構造よりも吸引力が大きくなる。
コイル13に通電を継続すると、ハブ20は、後述するスペーサ16及びeリング17によって直動を規制されるところまで直動し、かつ回転し続ける。図6(B)のB−2は回転停止直前の状態であるが、回転停止直前においては、ハブ20とベース40とのエアギャップは相対的に小さくなっている。このエアギャップが小さくなると、ハブ20の凸部22とベース40の凹陥部42とは、これらの中心軸に直交する方向から見ると、B−1に示した状態よりも重なり合う部分が大きくなっている。そうすると、B−2に示すように、ハブ20とベース40との間の磁束19の流れは、ハブ20及びベース40の中心軸と直交する方向に、又は直交する方向に近いものの比率が高くなり、ハブ20とベース40との吸引力として寄与する割合が相当に低下する。したがって、したがって、ロータリソレノイド10の回転停止直前には、ハブ20とベース40との間に従来技術に係る構造よりも吸引力が小さくなる。
以上の磁束の流れの変化による本発明の効果については、以下に述べる実験によって確認した。図7は、本発明と従来技術との吸引力の比較実験の結果を示すグラフである。この実験では、本発明の実施例の全体構造を図1に示すものとした。また、実施例のハブ20は、図4に示す構造であり、大径部28の径を26.5mm、ハブ20の中心軸方向における外側面26と内側面27との長さ、つまり凸部22の高さを2.0mm、凹陥部23の径を8.0mmとした。さらに、実施例のベース40は、蓋部51の径を50.4mm、胴体部47の径を27.5mm、縁辺部49の幅を1.5mm、ベース40の中心軸方向における外側面44と内側面45との長さ、つまり凹陥部42の深さを2.0mm、凸部46の幅を1.5mmとした。従来技術による比較例は、図1に示す全体構造において、ハブ20の凸部22とベース40の凹陥部42とを設けず、互いに対向する部分の全体を平坦面とした。
以上説明した本発明の構造を備えた実施例と従来技術の構造による比較例とのトルクを測定した。その結果、図7に示すように、回転開始時のトルクでは、従来技術の構造による比較例が約0.15N・mであったのに対し、本発明の構造を備えた実施例では0.35N・mとなった。また、回転停止直前では、従来技術の構造による比較例が約0.6N・mであったのに対し、本発明の構造を備えた実施例では0.33N・mとなった。したがって、本発明の構造は、回転停止直前のトルクを増大させずに回転開始時のトルクの増大を図ることができる。また、回転開始から停止に至るまでのトルクの大きさがほぼ一定であり、従来トルクを得るためにモータを使用している機器においてもロータリソレノイドを採用することが可能にある。さらに、回転停止直前のトルクは従来技術の構造よりも大幅に減少しているので、打撃音を低減することができ、静かなロータリソレノイドを実現することができる。くわえて、回転停止直前のトルクは従来技術の構造よりも大幅に減少しているので、磁気飽和しない範囲において電流値を上げればさらに大きなトルクを得ることができる。なお、発明者がこの実施例に近似する構造を磁場解析したところ、ハブ20の凸部22の高さ、又はベース40の凹陥部42の深さを適宜変更することによって、従来技術の構造による比較例により近いトルク特性が得られることも分かった。
図1、図2及び図3に戻って、ハブ20及びベース40の周辺の構成品について説明する。シャフト11は、図1に示すように、軸受18によって回転可能、かつ、1mm強直動可能に支持されている。また、ロータリソレノイド10の前面側の部分は、外部に大きく突出しており、突出した部分に負荷となる装置が接続される。また、図3に示すように、中央近傍に周回溝36aが形成されており、図1に示すように、周回溝36aを利用してeリング17が設けられている。また、周回溝36aの近傍には切り欠き部36bが形成されており、スプリング15が係止されている。さらに、ロータリソレノイド10の背面側の部分は、ハブ20に嵌合されている。なお、シャフト11は、負荷となる装置の状況に応じて、ロータリソレノイド10の背面側に突出させてもよい。
ボビン12は、図1に示すように、ケース31の内部に設けられており、コイル13が巻回されている。また、ロータリソレノイド10の前面側の部分は、ベース40の蓋部51に当接しており、ケース31の対向部33と蓋部51とによってがたつかない状態で保持されている。コイル13は、図2に示すように、その端部がリード線14a及び14bとしてケース31の外部に導出されている。スプリング15は、ハブ20の復帰用のものであり、切り欠き部36bを利用してシャフト11に係止されている。また、スプリング15は、スペーサ16及びeリング17をロータリソレノイド10の背面側に押圧しており、ハブ20もベース40から離隔する方向に押圧されている。スペーサ16は、円盤状に形成されており、中央の開口部にシャフト11が挿通されている。スペーサ16の厚みは、ハブ20の直動距離を設定するものであり、後述するボールレース溝34などの長さ等に応じて適宜設定する。eリング17は、シャフト11がベース40から脱落することを防止するものであり、周回溝36aを利用してシャフト11に固定されている。
ケース31は、前述のように、収納容器であると共に、コイル13への通電時に磁気回路の一部を構成する。また、その背面側に略円形板状の対向部33が設けられている。図3に示すように、対向部33の背面側には、ボールレース溝34と図3に現れない2つのボールレース溝が所定間隔で形成されている。これらのボールレース溝は、図2に示しているアーマチュアプレート37のボールレース溝38a、38b及び38cに対応する位置に形成されている。また、金属ボール39に対応した形状及び深さに形成されており、ロータリソレノイド10の背面側から前面側を見たときに、左回りとなる方向に進むに従って漸次深くなるように形成されている。
アーマチュアプレート37は、前述のように、可動磁極の1つであり、図3に示すように、中央にハブ20を嵌合するために略円形の開口部を設けてある。また、アーマチュアプレート37の対向面37aは、ケース31の対向部33に対向しており、コイル13への通電時には、対向部33からアーマチュアプレート37を経由してハブ20へ磁束が流れ、アーマチュアプレート37を対向部33に吸着する力を生じる。なお、アーマチュアプレート37をケース31の外部に設けているので、アーマチュアプレート37の大きさを適宜変更すれば、ケース31との吸引力を調整することが可能である。また、アーマチュアプレート37によって補助される吸引力に対応する分だけハブ20の前面側及びベース40の背面側の面の大きさを縮小することができ、これらの磁極の小型化に寄与する。また、シャフト11を中心に回転可能に設けられているので、アーマチュアプレート37から負荷となる装置に対してトルクを出力することも可能である。その場合には、シャフト11をベース40又はハブ20から大きく突出させる必要がないので、ロータリソレノイド10の全長を大幅に短縮することができる。
また、図2に示すように、アーマチュアプレート37には、ボールレース溝38a、38b及び38cが所定間隔で対向面37a側に開口するように形成されている。ボールレース溝38a、38b及び38cは、ロータリソレノイド10の背面側から前面側を見たときに、左回りとなる方向に進むに従って漸次浅くなるように形成されている。したがって、例えば、ボールレース溝34とボールレース溝38aとの間にある金属ボール39は、ハブ20がベース40に吸引されると、ボールレース溝38aによってボールレース溝34に押圧される。ボールレース溝34は、背面側から見て左回りとなる方向に進むに従って漸次深くなるように形成されているので、金属ボール39はボールレース溝34内を左回り、つまりより深い方に回転移動しつづける。ボールレース溝38aは、金属ボール39を押圧しながら、金属ボール39と同じく左回りに、つまりアーマチュアプレート37と対向部33とが接近しながら回転する。
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るロータリソレノイド10は、ハブ20に凸部22を形成し、ベース40に凹陥部42を形成したので、回転停止直前のトルクを増大させずに回転開始時のトルクの増大を図ることができる。また、この第1の実施の形態に係るロータリソレノイド10は、回転停止直前のトルクを増大させずに回転開始時のトルクの増大を図ることができる。したがって、回転開始時に大きなトルクを必要とする装置に好適である。しかも、消費電力が大きくなることもない。また、回転開始から停止に至るまでのトルクの大きさがほぼ一定であり、従来トルクを得るためにモータを使用して機器においてもロータリソレノイドを採用することが可能にある。さらに、回転停止直前のトルクは従来技術の構造よりも大幅に減少しているので、打撃音を低減することができ、静かなロータリソレノイドを実現することができる。くわえて、回転停止直前のトルクは従来技術の構造よりも大幅に減少しているので、磁気飽和しない範囲において電流値を上げればさらに大きなトルクを得ることができる。また、ハブ20の凸部とベース40の凹陥部42とは切削加工で形成するが、この加工に係るコストはロータリソレノイド全体の製造コストから見ると非常に小さいものであり、ソレノイドの販売価格に与える影響は非常に小さいと言える。
さらに、本発明の第2の実施の形態に係るロータリソレノイドについて説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係るロータリソレノイドのハブの断面斜視図である。図8において、53は縁辺部、54は平坦面、55は凹陥部、56は底面、57は外側面、58は内側面、59は凸部、60は上面であり、その他の符号は図4と同じものを示す。また、図9は、本発明の第2の実施の形態に係るロータリソレノイドのベースの断面斜視図である。図9において、61は平坦面、62は凸部、63は上面、64は外側面、65は内側面、66は底面であり、その他の符号は図5と同じものを示す。
この実施の形態に係るロータリソレノイドにおいては、図8及び図9から分かるように、ハブ20とベース40との凸部と凹陥部とが逆に配置されている。すなわち、図8に示すように、ハブ20の平坦面54は、ハブ20の先端側の縁辺部53に沿って円環状に形成されており、またシャフト11の中心軸と直交するように形成されている。平坦面21に囲まれた領域には、凹陥部55を円環状に形成している。さらに、凹陥部55の中心及びその近傍には、凸部59を形成している。凸部59は、上面60の中心及びその近傍には貫通孔30の開口部が露出している。また、平坦面54と底面66とは、ハブ20及びシャフト11の中心軸と直交する同一の仮想的平面上に配置されている。さらに、図9に示すように、ベース40の平坦面61は、シャフト11の中心軸と直交するように形成されており、ハブ20の平坦面54と正対している。平坦面61に囲まれた領域には、凸部62を円環状に形成している。さらに、凸部62の中心及びその近傍には、凹陥部23を形成している。凹陥部23は、全体が平坦であり、底面66の中心及びその近傍には貫通孔50の開口部が露出している。また、平坦面61と底面66は、ハブ20及びシャフト11の中心軸と直交する同一の仮想的平面上に配置されており、同時にハブ20の平坦面54及び上面60とそれぞれ正対している。くわえて、ハブ20の底面56とベース40の上面63とも互いに正対している。その他の構造は、第1の実施の形態に係るロータリソレノイドと同じである。
以上の構造を持つ第2の実施の形態に係るロータリソレノイドでは、コイル13に通電すると、ハブ20とベース40とが接近するにつれて、これらの中心軸に直交する方向から見ると、ハブ20の外側面57とベース40の外側面64、及び、ハブ20の内側面58とベース40の内側面65との重なり合う部分が大きくなっている。そうすると、第1の実施の形態に係るロータリソレノイドと同じように、ハブ20とベース40との間の磁束の流れは、ハブ20及びベース40の中心軸と直交する方向に、又は直交する方向に近いものの比率が高くなり、ハブ20とベース40との吸引力として寄与する割合が相当に低下する。したがって、ロータリソレノイド10の回転開始時はハブ20とベース40との間の吸引力は従来技術に係る構造よりも吸引力が大きくなり、回転停止直前にはこの吸引力は小さくなる。なお、この実施の形態のベース40は、第1の実施の形態のベース40と全長が同じであると、貫通孔50の長さが多少短くなる。したがって、軸受18の嵌合に利用できる長さも短くなるので、ロータリソレノイドの全長を短くしたい場合には、第1の実施の形態に係るロータリソレノイドの方が有利となる場合がある。
続けて、本発明の第3の実施の形態に係るロータリソレノイドについて説明する。図10は、本発明の第3の実施の形態に係るロータリソレノイドのハブの断面斜視図である。図10において、67は外側面、68は上面、69は内側面、70は凸部、71は底面、72は凹陥部であり、その他の符号は図4と同じものを示す。また、図11は、本発明の第3の実施の形態に係るロータリソレノイドのベースの断面斜視図である。図11において、73は凹陥部、74は外側面、75は底面、76は内側面、77は上面、78は凸部であり、その他の符号は図5と同じものを示す。
この実施の形態に係るロータリソレノイドでは、ハブ20に凸部22と凸部70との2つの凸部を設けている。また、凸部22の上面25と凸部70の上面68との幅を等しくし、さらに凸部22の外側面26及び内側面27と、凸部70の外側面67及び内側面69との長さも等しくしている。また、凹陥部23の底面24と凹陥部72の底面71とは、ハブ20及びシャフト11の中心軸と直交する同一の仮想的平面上に配置されている。ベース40についても、凸部22と凸部70とに対応する凹陥部42と凹陥部73を設けている。凹陥部42の底面43と凹陥部73の底面75との幅を等しくし、さらに凹陥部42の外側面44及び内側面45と、外側面74及び内側面76との長さも等しくしている。したがって、したがって、ロータリソレノイド10の回転開始時はハブ20とベース40との間の吸引力は従来技術に係る構造よりも吸引力が大きくなり、回転停止直前にはこの吸引力は小さくなる。
以上の構造を持つ第3の実施の形態に係るロータリソレノイドでは、特に大きなトルクが要求される大型ロータリソレノイドなどにおいて、ハブ20に2つの凸部、ベース40に2つの凹陥部を設けることによって、中心軸に直交する側面をそれぞれ4つ形成して、さらに多くの磁束がハブ20及びベース40の中心軸と直交する方向に、又は直交する方向に近い方向に流れるようにしている。本発明は、この実施の形態に係るロータリソレノイドのように大型のものに対しても適用可能である。なお、直径がさらに大きいロータリソレノイドの場合には、凸部と凹陥部とを3つずつ設けることもできる。
以上説明したように、本発明の各実施の形態に係るロータリソレノイド10においては、ハブ20とベース40とに互いに噛み合う形状となる凸部と凹陥部とを1組以上設けることによって、シャフト11の進む方向、つまり吸引力の作用方向と直交する方向又は直交する方向に近い方向に作用する磁束の流れ、つまり吸引力には寄与しない又はほとんど寄与しない力を生成する磁束の流れによって、回転開始時のトルクを増大すると共に、回転停止直前におけるトルクの低減を図っている。したがって、各実施の形態に係るロータリソレノイド10は、従来技術に係るロータリソレノイドよりも回転停止直前のトルクを増大させずに回転開始時のトルクの増大を図ることができる。しかも、本発明の各実施の形態に係るハブ20及びベース40は、簡単な加工で形成できるので製造コストをあまり増大させない。
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、アーマチュアプレートの形状、ケースの内部構造、ルボビンの構造、又はシャフトの形状などについては、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。例えば、ハブ20の平坦面21と凸部22との間、またはベース40の平坦面41と凹陥部42との間に傾斜面や湾曲面からなる中間領域を設けてもよい。さらに、凸部に1つ又は複数の切欠を形成してもよい。また、コイルへの通電時に右回りに回転するようにしてもよい。くわえて各実施の形態における可動磁極の構造や形状を適宜組み合わせてもよい。