以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の光電変換装置及びその製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(光電変換装置及びその製造方法)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)、その他
[本開示の光電変換装置及びその製造方法、全般に関する説明]
本開示の光電変換装置の製造方法にあっては、熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着する前に、第1電極に清浄化処理を施す形態とすることができる。ここで、清浄化処理として紫外線照射処理やオゾン(O3)処理を挙げることができ、清浄化処理によって、例えば、第1電極の表面に存在する有機物の除去を行うことができる。
上記の好ましい形態を含む本開示の光電変換装置の製造方法にあっては、熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着する際、熱プレス装置と半導体層との間に、離型機能を有する材料、具体的には、離型機能を有するフィルム(離型フィルム)を配置することが好ましい。離型フィルムとして、シリコーン樹脂層やポリテトラフルオロエチレン層が表面に形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムを例示することができる。あるいは又、離型機能を有する材料として、離型機能を有する銅箔等の金属箔を挙げることもできる。
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の光電変換装置の製造方法にあっては、半導体層前駆体層、絶縁層前駆体層及び触媒層前駆体層が積層されて成る多層体を焼成して半導体層、絶縁層及び触媒層から成る積層構造体を得た後、熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着する形態とすることができる。また、本開示の光電変換装置において、光電変換層は、半導体層、絶縁層及び触媒層から成る積層構造体から構成されている形態とすることができる。
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の光電変換装置あるいはその製造方法にあっては、半導体層は酸化チタンから成る形態とすることができる。
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の光電変換装置あるいはその製造方法(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)において、半導体層(色素増感半導体層)は半導体微粒子から構成することができる。半導体層の前駆体であるグリーンシート(半導体層前駆体層)を予め支持部材上に形成し、また、絶縁層前駆体層を予め第2支持部材上に形成し、触媒層前駆体層を予め第3支持部材上に形成するが、支持部材や第2支持部材、第3支持部材は如何なる材料からも構成することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムを例示することができる。グリーンシートには、半導体微粒子の他、バインダー、分散剤、可塑剤等を含めることができ、また、絶縁層前駆体層、触媒層前駆体層には、絶縁層、触媒層を構成する材料の他、バインダー、分散剤、可塑剤等を含めることができる。グリーンシートや絶縁層前駆体層、触媒層前駆体層の調製方法は周知の方法とすればよい。具体的には、例えば、グリーンシートや絶縁層前駆体層、触媒層前駆体層を形成するためのスラリーを調製し、ドクターブレード等を用いて支持部材や第2支持部材、第3支持部材上にスラリーを塗布、乾燥することでグリーンシートや絶縁層前駆体層、触媒層前駆体層を調製することができる。半導体微粒子同士を電子的にコンタクトさせ、且つ、半導体層の強度を向上させるためにグリーンシート(半導体層前駆体層)の焼成を行うが、焼成は、バッチ式の焼成炉あるいは連続式の焼成炉を用いて行えばよい。焼成の際には、支持部材や第2支持部材、第3支持部材を除去しておけばよい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、通常40゜C乃至700゜C、より好ましくは40゜C乃至650゜Cである。また、焼成時間も特に制限はなく、通常10分乃至10時間程度である。焼成後、半導体微粒子から成る半導体層の表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めることを目的として、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や、三塩化チタン水溶液を用いたネッキング処理や、直径10nm以下の半導体超微粒子ゾルのディップ処理等を行ってもよい。
本開示において、第1電極を構成する透明導電層のシート抵抗(表面抵抗)は低いほど好ましい。具体的には、透明導電層のシート抵抗(表面抵抗)は500Ω/□以下とすることが好ましく、100Ω/□以下とすることが更に好ましい。透明導電層は公知の材料から構成することができ、具体的には、インジウム−錫複合酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、フッ素ドープSnO2(FTO)、IFO(FドープのIn2O3)、アンチモンドープSnO2(ATO)、SnO2、ZnO(AlドープのZnO,AZOや、BドープのZnOを含む)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。透明導電層をパターニングする場合、パターニングは、公知の各種のエッチング法、レーザスクライブ、物理的な研磨加工等によって行うことができる。
第2電極(対向電極)を構成する材料は、導電性物質であれば任意の材料とすることができる。半導体層に面している側に導電性の触媒層が配されていれば、この触媒層が第2電極を兼ねる構成とすることもできる。第2電極の材料として、電気化学的に安定である材料を用いることが好ましく、具体的には、ステンレス鋼、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、カーボンブラック等のカーボン(C)、導電性ポリマー等を挙げることができる。また、光電変換装置を色素増感太陽電池から構成する場合、酸化還元の触媒効果を向上させる目的で、半導体層に面している第2電極の側を微細構造とし、表面積を増大させてもよい。第2電極を、例えば白金から構成する場合、白金黒状態とし、カーボンから構成する場合、多孔質状態とすることが好ましい。白金黒状態は、白金の陽極酸化、白金化合物の還元処理等によって達成することができる。多孔質状態のカーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成等の方法により得ることができる。導電材料層は、例えば、櫛歯状にパターニングされていてもよいし、何らパターニングされていなくともよい。あるいは又、導電材料層は、真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法や、印刷法等によって触媒層あるいは第2基材上に形成することができるし、予め、シート状に賦形された材料を用いることもできる。
本開示において、光が入射する第1基材は、可視光領域で透明な材料から構成されていればよく、外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れている材料から構成することが好ましい。具体的には、第1基材を構成する材料として、ガラス基板、石英基板、サファイア基板の透明無機基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂;テトラアセチルセルロース樹脂;ブロム化フェノキシ樹脂;アラミド樹脂;ポリイミド類樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスルフォン樹脂;アクリル樹脂;エポキシ樹脂;フッ素樹脂;シリコーン樹脂;ジアセテート樹脂;トリアセテート樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;環状ポリオレフィン樹脂等の透明プラスチック基板やフィルムを挙げることができる。ガラス基板として、例えば、ソーダガラス基板、耐熱ガラス基板、石英ガラス基板を挙げることができる。第1基材の光入射側の表面に反射防止膜や、紫外線吸収層、汚染防止層、ハードコート層等を形成してもよいし、第1基材の表面に、アルミニウム、シリカ及びアルミナから成る群より選ばれた少なくとも1種以上のガスバリア性材料から成るガスバリア層を形成してもよい。
第2基材を構成する材料も、第1基材を構成する材料として挙げた材料から、適宜、選択すればよい。第1基材と第2基材を構成する材料は、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。あるいは又、第2基材(対向基板)として、不透明なプラスチックシート又はプラスチックフィルム、あるいは、不透明な金属膜が形成されたガラス基板、セラミックス基板、石英基板、プラスチックシート又はプラスチックフィルム等を挙げることができる。あるいは又、酸素透過度が100(cc/m2/day/atm)以下、水蒸気透過度が100(g/m2/day)以下のガスバリア性フィルムを用いることもでき、具体的には、例えば、アルミニウム、シリカ及びアルミナから成る群より選ばれた少なくとも1種以上のガスバリア性材料から成るガスバリア層が積層されたガスバリア性フィルム等を用いることもできる。第2基材として、Ni、Cr、Fe、Nb、Ta、W、Co及びZrから成る群より選ばれた少なくとも1種以上の元素を含む金属又は合金(例えば、ステンレス鋼)から成る基板や箔を用いる場合には、第2基材が第2電極を兼ねる形態とすることもでき、このような形態にあっても、第2基材は第2電極を有するとする。尚、酸素透過度は、JIS K7126−2:2006「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法」に基づき求めることができるし、水蒸気透過度は、JIS K7129:2008「プラスチック−フィルム及びシート−水蒸気透過度の求め方(機器測定法)」に基づき求めることができる。
絶縁層によって電解質層が構成され、絶縁層には電解質組成物が含浸されている構成とすることができる。このように、電解質組成物を含浸された絶縁層から電解質層を構成することで、作業性の向上を図ることができる。ここで、絶縁層は、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、酸化シリコン(シリカ)及び酸化アルミニウムから成る群から選択された少なくとも1種類の材料(例えば、金属酸化物材料層)から構成されている形態とすることができる。絶縁層を形成する方法として、上述した方法以外にも、絶縁層又は絶縁層前駆体を含む溶液を塗布あるいは印刷する湿式法や、スパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法、各種のCVD法等の乾式法等を挙げることができる。
場合によっては、絶縁層を、織布又は不織布、若しくは、織布又は不織布と金属酸化物材料層との積層構造とすることもできる。織布又は不織布を構成する材料として、合成繊維、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、アラミド、ナイロン 、ビニロン、ポリオレフィン 、レーヨン 、低密度ポリエチレン 、エチレン酢酸ビニル、 共重合ポリアミド、共重合ポリエステル等や、天然繊維のコットン、セルロース、ガラス繊維、合成ゴムを繊維状にしたもの等を例示することができる。
絶縁層が要求される基本的性能として、含浸された電解質組成物の移動を妨げないことが挙げられ、隣接する空孔が貫通(連通)している多孔質材料である酸化チタン等から絶縁層を構成すれば、あるいは又、織布又は不織布から絶縁層を構成すれば、含浸された電解質組成物の移動は妨げられない。但し、これらに限定するものではなく、絶縁層を省略して、半導体層と触媒層との間に、電解質組成物のみから成る電解質層を配する形態とすることもできる。上述したとおり、半導体層と触媒層との間を絶縁層だけで占めてもよいし、半導体層と絶縁層との間に空間を配してもよいし、絶縁層と触媒層との間に空間を配してもよい。空間を配する場合、必要に応じてスペーサを配してもよい。
例えば、電解質組成物を電解液から構成する場合、電解液として、リチウムイオン等の陽イオンやヨウ素イオン等の陰イオンを含む種々の電解液を挙げることができる。電解質組成物中に、酸化型構造及び還元型構造を可逆的にとり得るような酸化還元対を存在させることが好ましく、このような酸化還元対として、例えば、ヨウ素−ヨウ素化合物;臭素−臭素化合物;キノン−ヒドロキノン;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物;ビオロゲン色素等を挙げることができる。あるいは又、電解質組成物は、ヨウ素(I2)と金属ヨウ化物あるいは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2)と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせの他、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノン等を用いることができる。上記金属化合物のカチオンとして、Li、Na、K、Mg、Ca、Cs等、上記有機化合物のカチオンとして、テトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等の4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上混合して用いることもできる。これらの中でも、I2と、LiIやNaI、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質組成物が好ましい。電解質組成物における塩の濃度は、溶媒に対して0.05モル乃至5モルが好ましく、更に好ましくは0.2モル乃至3モルである。I2やBr2の濃度は0.0005モル乃至1モルが好ましく、更に好ましくは0.001モル乃至0.3モルである。また、開放端電圧Vocを向上させる目的で、4−tert−ブチルピリジンに代表されるアミン系化合物から成る添加剤を加えてもよい。尚、電解液以外にも、後述するように、ゲル電解質、固体電解質、溶融塩ゲル電解質から電解質組成物を構成することもできる。
電解質組成物(電解液)を構成する溶媒として、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上混合して用いることもできる。更に、溶媒として、テトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム類の4級アンモニウム化合物の溶液を用いることも可能である。
電解質層の構成、構造、形態にも依るが、電解質組成物の液漏れや揮発を低減する目的で、電解質組成物にゲル化剤、ポリマー、架橋モノマー等を溶解させたり、無機セラミック粒子を分散させた、ゲル状電解質組成物を用いることもできる。尚、この場合、電解質層は、ゲル状電解質組成物の単層構成、あるいは、絶縁層とゲル状電解質組成物の多層構成となる。ゲル・マトリクスと電解質組成物との比率は、電解質組成物が多ければイオン導電率は高くなるが機械的強度が低下し、逆に、電解質組成物が少なすぎると、機械的強度は高いがイオン導電率が低下するため、電解質組成物は、ゲル状電解質組成物の50質量%乃至99質量%であることが好ましく、80質量%乃至97質量%であることがより好ましい。また、電解質組成物と可塑剤とをポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発、除去することで、全固体型の光電変換装置を実現することも可能である。
電解質組成物を電解液から構成する場合、絶縁層へ、あるいは又、半導体層と触媒層との間へ、電解液を注入する。電解液の注入方法にも特に制限はないが、外縁部(外周部)が予め封止され、注入口を開けられた光電変換装置の内部に減圧下で注入を行う方法が好ましい。この場合、注入口に電解液を数滴垂らし、毛細管現象により注入する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧若しくは加熱下で注入を行うこともできる。完全に電解液が注入された後、注入口に残った電解液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はなく、必要であればガラス基板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することができる。また、この方法以外にも、液晶パネルの液晶滴下注入(ODF;One Drop Filling)法のように、電解液を滴下して減圧下で貼り合わせて封止することもできる。あるいは又、三辺の外縁部(外周部)が予め封止され、残りの一辺が開けられた状態にある光電変換装置の内部に電解液の注入を行い、その後、減圧下、残りの一辺を封止する方法を採用することもできる。尚、ポリマー等を用いたゲル状電解質組成物や全固体型の電解質組成物の場合、例えば、触媒層に対向する半導体層の上あるいは上方で、あるいは又、半導体層に対向する触媒層の面の上あるいは上方で、電解質組成物と可塑剤とを含むポリマー溶液をキャスト法により成膜した後、揮発、除去する。そして、可塑剤を完全に除去した後、上述した方法と同様の方法に基づき封止を行えばよい。この封止は、真空シーラー等を用いて、不活性ガス雰囲気下、若しくは、減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質組成物を絶縁層や半導体層へ十分に含浸させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行ってもよい。あるいは又、例えば、ディスペンサを用いる方法や、インクジェット印刷法等を含む印刷法にて行うこともできる。尚、以上に説明した各種の方法は、例えば、第1基材、第2基材を構成する材料に依存して、適宜、選択すればよい。
本開示において、半導体層を構成する材料として、一般に光電変換材料に使用される材料を挙げることができる。そして、半導体層を色素増感半導体から構成する場合、半導体層は、典型的には、色素(増感色素)を担持した半導体微粒子から成る。半導体微粒子を構成する材料として、シリコン(Si)に代表される半導体材料の他、各種の化合物半導体材料、ペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。これらの半導体として、具体的には、上述した酸化チタン(TiO2)以外にも、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化錫(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム(In3O3)、酸化ランタン(La2O3)、酸化タリウム(Ta2O5)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ホスホニウム(Ho2O3)、酸化ビスマス(Bi2O)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3等の半導体化合物や酸化物半導体を挙げることができ、これらの中でも、アナターゼ型のTiO2が特に好ましい。但し、半導体はこれらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上混合して用いることもできる。半導体微粒子は、粒子状、針状、チューブ状、鱗片状、球状、棒状等、必要に応じて様々な形状、形態を取ることが可能である。半導体微粒子の粒径に特に制限はなく、一次粒子の平均粒径で1×10-9m乃至2×10-7mが好ましく、特に好ましくは5×10-9m乃至1×10-7mである。また、このような平均粒径の半導体微粒子に大きな平均粒径の半導体微粒子を混合し、平均粒径の大きな半導体微粒子によって入射光を散乱させ、量子収率を増加させることも可能である。この場合、平均粒径の大きな半導体微粒子の平均粒径は2×10-8m乃至5×10-7mであることが好ましい。半導体層を、半導体微粒子の粒径が異なる半導体層を複数層、積層した多層構造とすることもできるし、粒径が異なる半導体微粒子の混合割合が異なる半導体層を複数層、積層した多層構造とすることもできる。
半導体微粒子から成り、色素増感半導体から構成された半導体層(色素増感半導体層)において、半導体微粒子は、多くの色素を吸着することができるように、表面積の大きな粒子であることが好ましい。具体的には、半導体微粒子を第1電極上に形成した状態での半導体層の表面積は、投影面積に対して1×101倍以上であることが好ましく、1×102倍以上であることがより好ましい。表面積の上限に特に制限はなく、通常、1×103倍程度である。半導体微粒子から成る半導体層は、一般に、その厚さが増加するほど、単位投影面積当たりの担持色素量が増加するため光の捕獲率が高くなるが、電子の拡散距離が増加するため、電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体層には好ましい厚さが存在し、その厚さは、一般的には1×10-7m乃至1×10-4mであり、1×10-6m乃至5×10-5mであることがより好ましく、3×10-6m乃至3×10-5mであることが特に好ましい。
半導体層に担持(吸着)されて光増感剤として機能する色素として、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を有する周知の種々の化合物を挙げることができ、有機色素、金属錯体色素等を使用することができる。有機色素として、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素(例えば、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニン等)、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素(例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン等)、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、クマリン系化合物、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素、アクリジン系色素、フェニルキサンテン系色素、アントラキノン系色素、塩基性染料(例えば、フェノサフラニン、カプリブルー、チオシン、メチレンブルー等)、ポルフィリン系化合物(例えば、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリン等)を挙げることができる。金属錯体色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系金属錯体色素、ルテニウムターピリジン系金属錯体色素、ルテニウムクォーターピリジン系金属錯体色素等のルテニウム系金属錯体色素を挙げることができる。これらの色素を2種類以上混合して用いてもよい。半導体層に色素を強固に担持(吸着)させるためには、色素分子中に、カルボキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等のインターロック基を有するものが好ましく、これらの中でもカルボキシ基(COOH基)を有するものが特に好ましい。一般に、インターロック基は、半導体層を構成する材料の表面へ色素を吸着・固定させる機能を有し、励起状態の色素と半導体層の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を供給する。
半導体層(色素増感半導体層)への色素の担持(吸着)方法に特に制限はなく、色素を、例えば、アルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水等の溶媒に溶解させ、これに半導体層を浸漬する方法、色素を含む溶液を半導体層に塗布する方法を挙げることができる。また、酸性度の高い色素を用いる場合には、色素分子同士の会合を低減する目的で、デオキシコール酸等を添加してもよい。色素を担持させた後に、過剰に担持された色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて表面を処理してもよい。アミン類としては、ピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられ、これらが液体の場合、そのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
本開示において、触媒層は、電解質層中のI3 -イオン等の酸化型のレドックスイオンの還元反応を促進させ、充分な速度で行なわせる触媒能を有するものであればよく、例えば、白金(Pt)、カーボン(C)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等から成る層を挙げることができる。触媒層を形成する方法として、上述した方法以外にも、触媒又は触媒の前駆体を含む溶液を塗布あるいは印刷する湿式法や、スパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法、各種のCVD法等の乾式法等を挙げることができる。
第1電極に集電電極(バスバー)に設けてもよい。集電電極の材料として、具体的には、例えば、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Al、Cr、In、Sn、Zn、C等、これらの合金、半田等が好ましく、これらの材料から成る導体ペーストをスクリーン印刷法やディスペンサ等を用いて塗布することで形成することが好ましい。必要に応じて、集電電極の全部又は一部を、導電性接着剤、導電ゴム、異方性導電接着剤等により形成してもよい。例えば、光電変換層の外形形状を矩形(辺A、辺B、辺C、辺Dから構成され、辺Aと辺Cが対向し、辺Bと辺Dとが対向しているとする)とする場合、集電電極は光電変換層の辺Aに沿って設けることができ、あるいは又、光電変換層の辺A、辺B、辺Dと平行に、「コ」の字状に設けることができ、あるいは又、光電変換層の辺A、辺Bと平行に、「L」の字状に設けることができる。あるいは又、集電電極の構造として、例えば、格子状構造、櫛型状構造、中央を延びる幹電極と、この幹電極から直交する方向に延びる枝電極とを組み合わせた構造を例示することができる。
本開示において、第1基材と第2基材とをそれらの外縁部において封止するための封止材料は、電解質組成物の漏洩や揮発を防止し、外部から不純物が内部へ進入することを防ぐ。封止材料として、電解質層を構成する電解質組成物に対する耐性を有する樹脂を使用することが好ましく、例えば、熱融着フィルム、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等を使用することができ、より具体的には、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート)、アイオノマー樹脂、セラミック、ガラスフリット、二軸延伸したポリプロピレン(CPP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルムといった各種熱融着フィルム等を用いることができる。
熱プレス装置として、平板プレス装置、カレンダープレス装置(ロールプレス装置)を挙げることができる。半導体層前駆体層(グリーンシート)を熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着する際の熱プレス装置におけるプレス温度、プレス圧力、プレス時間は、各種の試験を行い、決定すればよい。
光電変換装置は、その用途に応じて様々な形状、構造、構成に基づき作製すればよく、これらは特に限定されない。光電変換装置は、最も典型的には、太陽電池として用いられるが、その他、例えば感光センサー等に用いることもできる。また、光電変換装置を組み込む電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型電子機器と据え置き型電子機器の双方を含み、例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品等を挙げることができる。そして、これらの場合、光電変換装置は、例えば、これらの電子機器の電源として用いられる。
実施例1は、本開示の光電変換装置、より具体的には、色素増感太陽電池に関し、また、本開示の光電変換装置の製造方法に関する。実施例1の光電変換装置10Aの組立前の模式的な端面図を図1の(A)に示し、組立後の模式的な端面図を図1の(B)示す。
実施例1、あるいは、実施例1の光電変換装置の製造方法によって得られる光電変換装置10Aは、また、後述する実施例2〜実施例3の光電変換装置10B,10Cは、
(A)透明導電層から成る第1電極(透明電極)22が形成された第1基材21、
(B)第2電極(対向電極)32を有する第2基材31、及び、
(C)第1基材21と第2基材31との間に設けられ、第1電極22と接した半導体層42を少なくとも備えた光電変換層41、
から成る光電変換装置である。ここで、第1基材21と第2基材31とは外縁部において封止されている。尚、第1電極22が形成された第1基材21は、TCO(Transparent Conductive Oxide)基板とも呼ばれる。
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例3において、太陽光を通過させる第1基材21は、透明基板から成り、具体的には、厚さ約10μmのポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート/シリカ蒸着層/ポリプロピレンといったヒートシール層が積層されたガスバリア材料から構成されており、第2基材31は、金属箔ラミネート材料、具体的には、アルミニウム・ラミネートフィルムから構成されている。そして、第2基材31と対向する第1基材21の面には、例えばITOといった透明導電層から成る第1電極22が形成されており、第1基材21と対向する第2基材31の面には、電子を酸化還元させるレッドクス機能を有する、所謂触媒機能を備えた白金若しくはカーボン材料から成る第2電極32が形成されている。第1電極22及び第2電極32は、所望の形状にパターニングされている。また、光電変換層41は、具体的には、第1電極側から、半導体層(多孔質半導体層)42及び触媒層45から構成されており、半導体層42と触媒層45との間に位置する空間は電解質層43を構成する。半導体層42は、グリーンシートから成る半導体層前駆体層の焼成品から構成されており、具体的には、ルテニウム系の色素であるZ991を担持したアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)微粒子(平均粒径:25nm)の集合体から構成されている。触媒層45はカーボン(C)から構成されている。電解質層43には、ヨウ化ナトリウム0.1モル、1−プロピル−2,3ジメチルイミダゾリウムヨウ化物0.6モル、ヨウ素0.05モル、tert−ブチルピリジン0.5モルのアセトニトリル溶液から成る電解質組成物44が含まれている。
以下、実施例1の光電変換装置の製造方法を、半導体層等の模式的な一部断面図である図2の(A)〜(C)を参照して説明する。
[工程−100]
先ず、グリーンシートから成る半導体層前駆体層を調製する。即ち、半導体層42の前駆体である半導体層前駆体層としてのグリーンシート52を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から成る支持部材51の上に形成する。より具体的には、半導体微粒子の他、バインダー、分散剤、可塑剤、溶剤の混合物から成るスラリーを周知の方法に基づき調製する。そして、ドクターブレード等を用いて支持部材51の上にスラリーを塗布、熱風乾燥(乾燥温度:80゜C)することで、グリーンシート52を得ることができる(図2の(A)参照)。
[工程−110]
そして、こうして得られたグリーンシート52を焼成して半導体層42を得る。具体的には、グリーンシート52及び支持部材51を所望の大きさ(実施例1にあっては、試験のため、25mm×15mm)に裁断した後、グリーンシート52から支持部材51を除去し(剥がし)、バッチ式の焼成炉に搬入して、大気雰囲気において、510゜Cで0.5時間の焼成条件にて、グリーンシート52を焼成する。こうして、半導体層42を得ることができる。
[工程−120]
その後、得られた半導体層42を焼成炉から搬出する。そして、第1基材21に形成された第1電極22上に半導体層42を載置する(図2の(B)参照)。第1電極22の表面に存在する有機物の除去を行うために、第1電極22に、予め、紫外線照射処理といった清浄化処理を施しておく。次いで、半導体層42/第1電極22/第1基材21が積層された積層品を熱プレス装置(具体的には、平板プレス装置)54に搬入する。熱プレス装置54と半導体層42との間には(具体的には、熱プレス装置54の当たり面と半導体層42との間には)、離型機能を有する材料、具体的には、シリコーン樹脂層が表面に形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)から成る離型機能を有するフィルム(離型フィルム53)を配置する。離型機能を有する銅箔等の金属箔とすることもできる。尚、半導体層42とシリコーン樹脂層とが接する。そして、プレス力1トン重、プレス温度70゜C、プレス時間10分といったプレス条件で、熱プレス装置54を用いて半導体層42を第1電極22に圧着する。このようなプレス条件にあっては、半導体層42と第1電極22との間に接着剤等を介在させなくとも、半導体層42を第1電極22に強固に固定することができた。こうして、半導体層/第1電極/第1基材が一体となった第1積層構造体を得ることができた。その後、離型フィルム53を剥離し、半導体層42に、周知の方法に基づき、色素を含浸させる。
一方、第2基材31の上に形成された第2電極32上にカーボンペーストを印刷した後、カーボンペーストを焼成することで、第2基材31、第2電極32及び触媒層45が一体となった触媒層/第2電極/第2基材から成る第2積層構造体を得ることができる。
[工程−130]
その後、第1積層構造体と第2積層構造体とを、必要に応じて、適切なスペーサを介して重ね合わせ、第1基材21と第2基材31とを、それらの外縁部の三辺において、熱融着フィルムから成る封止材料23によって封止する(貼り合わせる)。そして、開放状態とされている残りの一辺から、半導体層42と触媒層45との間に位置する空間(電解質層43)に電解質組成物44を浸入させる。次いで、減圧下、この残りの一辺を封止材料23によって封止する。こうして、図1の(B)に示す光電変換装置10Aを得ることができる。尚、第1電極22及び第2電極32の一部は光電変換装置10Aから外部に突出しており、外部回路に接続できる構造となっているが、この状態は図示していない。以下に説明する実施例2〜実施例3においても同様である。
こうして得られた実施例1の光電変換装置10Aにあっては、AM1.5の光照射による発電の結果、4.8%の発電特性が確認された。尚、実施例1の光電変換装置のIV特性を評価した結果を図3の(A)のグラフに示す。
実施例1の光電変換装置あるいはその製造方法にあっては、グリーンシートから成る半導体層前駆体層の焼成を半導体層前駆体層を構成する材料に最適な条件で行うことができ、優れた特性を有する半導体層を得ることができるし、製造コストの増加を招くことも無い。しかも、熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着することができるので、接着剤等を使用する必要が無く、製造プロセスの簡素化、合理化を図ることができ、長期信頼性に問題が生じることもない。
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、半導体層前駆体層、絶縁層前駆体層及び触媒層前駆体層が積層されて成る多層体を焼成して半導体層142、絶縁層143及び触媒層145から成る積層構造体を得た後、熱プレス装置を用いて半導体層142を第1電極22に圧着する。また、光電変換層141は、半導体層142、絶縁層143及び触媒層145から成る積層構造体から構成されている。
半導体層142は酸化チタン(TiO2)微粒子(平均粒径:25nm)の集合体から構成されており、絶縁層143も酸化チタン(TiO2)微粒子(但し、平均粒径は250nm)の集合体から構成されており、触媒層145はカーボン(C)から成る。これらの点を除き,実施例2の光電変換装置は、実施例1の光電変換装置と同様の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
以下、実施例2の光電変換装置の製造方法を説明する。
[工程−200]
先ず、グリーンシートから成る半導体層前駆体層、絶縁層前駆体層及び触媒層前駆体層を調製する。即ち、絶縁層前駆体層を予め第2支持部材上に形成し、触媒層前駆体層を予め第3支持部材上に形成する。第2支持部材、第3支持部材はポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムから成る。より具体的には、絶縁層、触媒層を構成する材料の他、バインダー、分散剤、可塑剤、溶剤の混合物から成るスラリーを周知の方法に基づき調製する。そして、ドクターブレード等を用いて第2支持部材、第3支持部材の上にスラリーを塗布、熱風乾燥することで、絶縁層前駆体層、触媒層前駆体層を得ることができる。
[工程−210]
そして、支持部材、第2支持部材、第3支持部材を除去し(剥がし)、半導体層前駆体層、絶縁層前駆体層及び触媒層前駆体層を、例えば、温水等法プレスを用いて積層して一体化し、多層体を得る。次いで、多層体を所望の大きさ(実施例2にあっては、試験のため、25mm×15mm)に裁断した後、バッチ式の焼成炉に搬入して、大気雰囲気において、510゜Cで0.5時間の焼成条件にて、多層体を焼成して半導体層142、絶縁層143及び触媒層145から成る積層構造体を得る。
[工程−220]
その後、得られた積層構造体を焼成炉から搬出する。そして、第1基材21に形成された第1電極22上に、半導体層142が接するように積層構造体を載置する。実施例1と同様に、第1電極22の表面に存在する有機物の除去を行うために、第1電極22に、予め、紫外線照射処理といった清浄化処理を施しておく。次いで、積層構造体/第1電極22/第1基材21が積層された積層品を、実施例1と同様にして、熱プレス装置(具体的には、平板プレス装置)に搬入する。そして、プレス力1トン重、プレス温度70゜C、プレス時間10分といったプレス条件で、熱プレス装置を用いて半導体層142を第1電極22に圧着する。このようなプレス条件にあっては、実施例1と同様に、半導体層142と第1電極22との間に接着剤等を介在させなくとも、半導体層142を第1電極22に強固に固定することができた。こうして、触媒層/絶縁層/半導体層/第1電極/第1基材が一体となった第1積層構造体を得ることができた。その後、半導体層142に、周知の方法に基づき、色素を含浸させる。
一方、第2電極32が形成された第2基材31を準備する。
[工程−230]
その後、第1積層構造体と第2電極32が形成された第2基材31とを重ね合わせ、第1基材21と第2基材31とを、それらの外縁部の三辺において、熱融着フィルムから成る封止材料23によって封止する(貼り合わせる)。そして、開放状態とされている残りの一辺から、絶縁層143に電解質組成物144を浸入させ、電解質層43を形成する。次いで、減圧下、この残りの一辺を封止材料23によって封止する。こうして、図4の(B)に示す光電変換装置10Bを得ることができる。
こうして得られた実施例2の光電変換装置10Bにあっては、AM1.5の光照射による発電の結果、4.5%の発電特性が確認された。尚、実施例2の光電変換装置のIV特性を評価した結果を図3の(B)のグラフに示す。
尚、光電変換装置の変形例の組立前の模式的な端面図を図5に示すように、絶縁層/半導体層/第1電極/第1基材が一体となった第1積層構造体と、実施例1にて説明したと同様の触媒層/第2電極/第2基材から成る第2積層構造体とに基づき、光電変換装置を製造することもできる。
実施例3も、実施例1の変形である。組立前の模式的な端面図及び組立後の模式的な端面図を図6の(A)及び(B)に示すように、実施例3において、光電変換層241を構成する絶縁層243は、ポリエステルから成る不織布から構成されており、実施例1にて説明したと同様の電解質組成物244が含浸されている。絶縁層243は、半導体層242と触媒層245との間に配置されている。これらの点を除き,実施例3の光電変換装置は、実施例1の光電変換装置と同様の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例3の光電変換装置10Cの製造にあっては、先ず、実施例1の[工程−100]〜[工程−110]と同様に、グリーンシートから成る半導体層前駆体層を調製し、次いで、グリーンシートを焼成して半導体層(第1積層構造体)を得る。その後、実施例1の[工程−120]と同様にして、熱プレス装置を用いて半導体層を第1電極に圧着する。一方、実施例1と同様に、第2積層構造体を準備する。その後、第1積層構造体と不織布から構成された絶縁層243と第2積層構造体とを重ね合わせ、実施例1の[工程−130]と同様にして第1基材21と第2基材31とを封止する(貼り合わせる)ことで、光電変換装置10Cを得ることができる。
以上、本開示の光電変換装置及びその製造方法を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した光電変換装置の構成、構造、用いた材料や仕様、製造方法等は例示であり、適宜、選択、変更することができる。場合によっては、所謂ロール・トゥー・ロール加工法によって、第1積層構造体や第2積層構造体を得ることもできる。
実施例においては、専ら光電変換装置及びその製造方法について説明したが、本開示は、光電変換装置及びその製造方法以外の技術分野にも適用することができる。即ち、透明導電層が形成された基材に半導体層あるいは酸化物層を積層する、具体的には、熱プレス装置を用いて半導体層あるいは酸化物層を透明導電層に圧着する積層構造体の製造方法に適用することができる。このような積層構造体における半導体層を構成する材料として、前述した各種材料から構成することができるし、酸化物層として、例えば、PZT系化合物、Bi系層状構造ペロブスカイト型の強誘電体材料を挙げることができる。ここで、PZT系化合物として、ペロブスカイト型構造を有するPbZrO3とPbTiO3の固溶体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PbTiXZr1-XO3、但し、0.1≦X≦1、PZTと略す)、PZTにLaを添加した金属酸化物であるPLZT(PbYLa1-YTiXZr1-X)O3、あるいはPZTにNbを添加した金属酸化物であるPNZTを挙げることができる。また、Bi系層状構造ペロブスカイト型の強誘電体材料として、SrBi2Ta2O9、SrBi2Nb2O9、BaBi2Ta2O9、SrBi4Ta4O15、Bi4Ti3O12、SrBi2TaXNb2-XO9、PbBi2Ta2O9等を例示することができる。あるいは又、PbTiO3(チタン酸鉛)、BaTiO3、LiNbO3、LiTaO3、YMnO3を挙げることができる。