JP2012199089A - 分散型無機el素子およびその製造方法 - Google Patents

分散型無機el素子およびその製造方法 Download PDF

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萌 川原
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浩司 安部
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Masaru Karai
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Abstract

【課題】 発光素子用として十分に高い発光輝度を有する分散型EL蛍光素子を提供する。
【解決手段】 第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダー中に分散している流動性マトリックス層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層した積層体を準備する工程、
前記第一および第二の電極板によって前記流動性マトリックス層に電場を印加して、硫化亜鉛蛍光体粒子数を配向させる配向工程、および前記配向した硫化亜鉛蛍光体粒子を固定する固定工程を含む、分散型無機EL素子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、発光輝度が高く長寿命の分散型無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子およびその製造方法に関する。特に、本発明は硫化亜鉛を母体とし、発光の中心となる付活剤および共付活剤を含有する硫化亜鉛蛍光体粒子が分散している発光層を具備する分散型無機EL素子に関する。
分散型無機EL素子は表示装置用のバックライト等に利用されている。分散型無機EL素子は、バインダー(通常、フッ素系樹脂あるいはシアノ基を有する樹脂等の高誘電性樹脂)中に蛍光体粒子を分散させた発光層と、該発光層の両面にそれぞれ配置された2つの電極板とを備える素子である。通常、分散型無機EL素子は、絶縁破壊を防ぐために高誘電性樹脂中にチタン酸バリウムのような誘電体物質を分散させた誘電層をさらに備える。
分散型無機EL素子の発光層に含まれる蛍光体粒子としては、硫化亜鉛結晶と発光中心となる付活剤および共付活剤を含有する硫化亜鉛蛍光体粒子が広く知られている(特許文献1、2参照)。かかる硫化亜鉛蛍光体粒子を用いた分散型無機EL素子は、発光輝度、発光寿命等の改良が試みられてきた。
一方、硫化亜鉛結晶の(111)面が印加する電場の方向と平行な場合に、硫化亜鉛蛍光体粒子が最も強い発光輝度を示すことが知られている(非特許文献1参照)。
さらに、硫化亜鉛蛍光体粒子の軸長比(長軸長/短軸長)を3以上とし、硫化亜鉛結晶の(111)面を短軸と平行に配向させた硫化亜鉛蛍光体粒子を電極板の表面に塗工して、該硫化亜鉛蛍光体粒子の長軸が電極板と平行になるように配向させることによって発光輝度を向上できることが知られている(特許文献3参照)。
特開2005−132947号公報 特開2004−2867号公報 特開2004−131583号公報
フィジカル・レビュー(Physical Review)、1962年、第125巻、第1号、p.149−158
特許文献3には、軸長比が3以上の硫化亜鉛蛍光体粒子を電極面に塗布することによって硫化亜鉛蛍光体粒子の長軸方向を電極面と平行に配置した分散型無機EL素子が開示されているが、かかる分散型無機EL素子の輝度を向上させる上で重要となる硫化亜鉛結晶の面状欠陥の方向と硫化亜鉛蛍光体粒子の短軸方向を平行にするための方法が十分開示されているとはいえない。また、軸長比が3以上の硫化亜鉛蛍光体粒子を製造することは、結晶成長を促すことが困難な上、該結晶成長の促進に助剤(金属酸化物等)が必要となり、かかる助剤を除去する煩雑なプロセスを必要とするので、工業化が容易でないという問題があった。
上記課題を鑑み、本発明は高い発光輝度を有する分散型無機EL素子およびその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは鋭意検討した結果、電場を印加して、一定の量の硫化亜鉛蛍光体粒子を、特定の方向に配向させることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
(1)第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダーに分散している流動性マトリックス層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層した積層体を準備する工程、
前記第一および第二の電極板によって前記流動性マトリックス層に電場を印加して、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる配向工程、および
前記配向工程の後に、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を固定する固定工程を含む、分散型無機EL素子の製造方法;
(2)前記配向工程において、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上を、前記面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度が70〜90度となるように配向させる、(1)の製造方法;
(3)前記流動性バインダーが光硬化性樹脂であり、前記固定工程において、前記流動性マトリックス層を光硬化する(1)または(2)の製造方法;
(4)前記第一の絶縁層および/または第二の絶縁層の絶縁抵抗が1〜100MΩ、かつ誘電正接が5.0×10−4〜2.0×10−1である、(1)〜(3)のいずれかの製造方法;
(5)前記配向工程において、前記積層体の誘電率の経時変化を測定しながら、誘電率が一定になるまで前記流動性マトリックス層に電場を印加する、(1)〜(4)のいずれかの製造方法;
(6)前記硫化亜鉛蛍光体粒子が銅および塩素を含有する、(1)〜(5)のいずれかの製造方法;および
(7)第一の電極板と、第一の絶縁層と、流動性バインダーを固化してなる非流動性バインダー中に面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が分散している発光層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に、かつ前記第一の電極板と第二の電極板とが平行となるように積層してなり、
前記第一の絶縁層および/または第二の絶縁層の絶縁抵抗が1〜100MΩ、かつ誘電正接が5.0×10−4〜2.0×10−1であり、かつ
前記硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上が、前記面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度が70〜90度となるように配向している、分散型無機EL素子;
である。
本発明によれば、高い発光輝度を有する分散型無機EL素子およびその製造方法を提供できる。
本発明の分散型無機EL素子の概要を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において「〜」は両端の値を含む。
[1.分散型無機EL素子の製造方法]
本発明の製造方法は、(工程A)第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダーに分散している流動性マトリックス層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層した積層体を準備する工程、(工程B)前記第一および第二の電極板によって前記流動性マトリックス層に電場を印加して、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる配向工程、および(工程C)前記配向した硫化亜鉛蛍光体粒子を固定する固定工程を含む。
(1)工程A
工程Aは、第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダーに分散している流動性マトリックス層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層した積層体を準備する工程である。以下、かかる積層体を「第一電極/第一絶縁/マトリックス/第二絶縁/第二電極」と表記することがある。また、これ以外の積層体に関しても、前記各層を同様に略し、積層した順に並べて、例えば「第一電極/第一絶縁/マトリックス」のように表記することがある。
積層体は、任意の方法で製造できるが、第一の電極板の上に第一の絶縁層を形成して、第一の絶縁層の上に流動性マトリックス層を形成し、流動性マトリックス層の上に第二の絶縁層を形成し、さらに第二の絶縁層の上に第二の電極板を形成して製造することが好ましい。また積層体は、「第一電極/第一絶縁/マトリックス」の積層体1と「第二絶縁/第二電極」の積層体2を別個に調製して、これらを接合して製造してもよい。本発明で用いる積層体は、完成品である分散型無機EL素子の前駆体として用いることが作業効率の観点から好ましい。
本発明で用いる積層体は第一の電極板および第二の電極板を備える。電極板とは、導電性を有する層である。本発明において、電極板の少なくとも1つは、光を取り出すことができる透明電極板であることが望ましい。一方の電極板を透明電極板とし、もう一方の電極板を不透明な背面電極板とすることで、光を一方向に取り出すことができるので、多くの用途において好ましい。以下、透明電極板および背面電極板について説明する。
1)透明電極板
透明電極板を構成する材料としては公知の材料を使用でき、例えば、錫をドープした酸化インジウム、フッ素をドープした酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、ガリウムをドープした酸化亜鉛等の酸化物、およびそれらの微粒子と有機樹脂等からなる導電性ペースト、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造物、ポリアニリン、ならびにポリピロール等のπ共役系高分子等が含まれる。透明電極の厚みは特に限定されない。
透明電極板の形成方法も特に限定されず、スパッタ、真空蒸着等の気相法や、ペースト状のITOや酸化錫を塗工やスクリーン印刷する方法、またはITO等の膜全体をレーザー等を用いて加熱して成膜する等の方法を使用できる。透明電極板の表面抵抗率は、1000Ω/□以下であることが好ましく、0.1Ω/□〜800Ω/□がより好ましく、0.2Ω/□〜500Ω/□がさらに好ましい。透明電極板の表面抵抗率は、JIS K6911に準じて測定できる。透明電極板における、波長400〜800nmの光線の透過率は、通常70%以上が好ましいが、発光輝度の低下を防ぐため、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
2)背面電極板
本発明で用いることができる背面電極板は、任意の不透明な導電性材料からなってよい。該導電性材料としては、目的とする分散型無機EL素子の形態や製造工程の温度等に応じて、金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウム等の金属、およびグラファイト等の中から適宜選択できる。背面電極板の厚みは特に限定されない。
3)絶縁層
本発明で用いる積層体は第一の絶縁層および第二の絶縁層を備える。絶縁層とは次工程Bにおいては流動性マトリックス層の絶縁破壊を防止することを目的とし、完成品である分散型無機EL素子においては、発光層の絶縁破壊を防止することを目的として設けられる層である。本発明において、絶縁層は、第一の電極板と流動性マトリックス層との間、および流動性マトリックス層と第二の電極板との間に設けられる。このように絶縁層を配置することで、前記第一および第二の電極板の間に電圧をかけて前記流動性マトリックス層に電場を印加した場合に、第一の電極板または第二の電極板と流動性マトリックス層との間での短絡が抑制され、流動性マトリックス層に分散した面状積層欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子に均一な電場を印加できる。このため、工程Bで該硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる際に、所望の方向に均一に硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させることができる。また、絶縁層は、流動性マトリックス層を固化して発光層とした後も発光層の絶縁破壊を生じにくくするので、分散型無機EL素子の耐久性を高める。
絶縁層を構成する材料は、絶縁性が高く、かつ高い絶縁破壊電圧を有する材料であれば特に限定されず、無機材料および有機材料のどちらも使用できる。絶縁層を構成する材料としては、金属酸化物または金属窒化物が特に好ましい。金属酸化物または金属窒化物の具体例として、TiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO、PbNbO、Ta、BaTa、LiTaO、Y、Al、ZrO、AlON、ZnS、SiO、SiON、HfO、AlN等が挙げられる。
透明電極板に隣接する絶縁層は、透明絶縁層であることが好ましい。透明絶縁層を構成する材料は、透明性および絶縁性が高く、かつ高い絶縁破壊電圧を有する材料であれば特に限定されず、無機材料および有機材料のいずれも使用できる。透明絶縁層を構成する材料としては、SiO、SiON、Al、HfO、AlN等の無機材料や光硬化性樹脂等の有機材料が挙げられるが、化学的安定性の観点から無機材料が好ましく、SiO、SiON、Alがより好ましい。透明絶縁層における、波長400〜800nmの光線の透過率は、通常は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
絶縁層の形成方法は特に限定されない。例えば、無機材料を前記電極板または後述する流動性マトリックス層の表面にスパッタ、化学気相成長(CVD)、真空蒸着する方法や、有機材料を前記電極板または流動性マトリックス層の表面にスクリーン印刷、スピンコートにより塗工した後、紫外光照射や熱処理によって硬化する方法により絶縁層を形成できる。
絶縁層の厚みは特に限定されないが、厚いほど絶縁抵抗が向上する一方で電場強度の低下が著しくなる。このため次工程Bにおいて、硫化亜鉛蛍光体粒子を所望の方向に配向させにくくなることがある。また、流動性マトリックス層を固化して分散型無機EL素子とした場合、絶縁層が過度に厚いと、素子の発光輝度低下を招くことがある。よって、絶縁層厚みは、工程Bおよび分散型無機EL素子とした場合の絶縁性と前記硫化亜鉛蛍光体粒子に印加される電場強度を勘案して適宜選択されるが、通常は、5〜2000nmが好ましい。
絶縁層の絶縁抵抗は、数V/μmの高電場下で安定であることが好ましい。すなわち、絶縁層の絶縁抵抗は500Ω以上であることが好ましい。一方、絶縁抵抗が過度に大きいと、前記硫化亜鉛蛍光体粒子に印加される電場強度が低下して、分散型無機EL素子としたときの発光輝度低下をもたらすことがある。よって、絶縁層の絶縁抵抗は500MΩ以下であることが好ましい。さらに、絶縁破壊防止効果と発光輝度低下の抑制とのバランスを考慮すると、絶縁層の絶縁抵抗は1MΩ〜100MΩが特に好ましい。
絶縁層の誘電正接は、分散型無機EL素子としたときの発熱による劣化を防ぐため、5.0×10−1以下が好ましい。しかし、誘電正接が低すぎると絶縁層の厚みを厚くする必要がある。実際に誘電正接が5.0×10−4未満の絶縁層を成膜する場合、厚みを数μm以上とする必要があり、前記硫化亜鉛蛍光体粒子に印加される電場強度が低下して発光輝度が低下することがある。よって、絶縁層の誘電正接は5.0×10−4以上が好ましい。さらに、発光効率の観点から、誘電正接は5.0×10−4〜2.0×10−1が特に好ましい。
4)流動性マトリックス層
流動性マトリックス層とは、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子と該硫化亜鉛蛍光体粒子を分散できる流動性バインダーとを含む流動性マトリックスから形成される層である。流動性マトリックス層は固化されて発光層を形成する。
流動性バインダーとは、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を分散させ得る流動性を有する分散媒であり、その例としては、ポリマーを有機溶媒に溶解したポリマー溶液、熱硬化性モノマー、光硬化性モノマーが挙げられる。ポリマー溶液は、溶媒が除去されることで固化されて、発光層における非流動性バインダーとなる。熱硬化性モノマー、光硬化性モノマーはそれぞれ熱、光によって硬化されて非流動性バインダーとなる。以下、非流動性のバインダーを単に「バインダー」ともいう。
流動性バインダーを構成するポリマーは、発光する光の吸収率が充分に低い材料であれば特に限定されず、例えば、シアノエチルセルロース系樹脂、シアノエチル化プルラン、シアノエチル化ポリビニルアルコール等のシアノエチル化ポリマー;ポリフッ化ビニリデン等の比較的誘電率の高いポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。発光時の発熱または通電による発熱により性状が変化しないためには、発光層におけるバインダーのガラス転移温度は40℃よりも高いことが好ましい。
流動性マトリックス層は、誘電率を調整する目的でBaTiOやSrTiOなどの高誘電率の無機物を含有してもよい。該無機物を流動性マトリックス層に混合する場合には、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機、遠心脱泡機等を使用できる。
硫化亜鉛蛍光体粒子とは、硫化亜鉛結晶、付活剤、および共付活剤を含有し、外部からのエネルギーを光に変換する物質からなる粒子である。本発明に用いる硫化亜鉛蛍光体粒子は、面状欠陥を有する。面状欠陥とは結晶面の積み重ねがずれた場合に生じる面欠陥であり、具体的には双晶面ならびに相界面をいう。面状欠陥は硫化亜鉛蛍光体粒子を塩酸等の酸でエッチングした際に、粒子表面に現れる積層状構造を観察することで容易に特定できる。本発明に用いる硫化亜鉛蛍光体粒子が含有する硫化亜鉛結晶は実質的に硫化亜鉛立方晶からなり、実質的に硫化亜鉛立方晶の1つの(111)面と平行な面状欠陥を有することが極めて望ましい。かかる面状欠陥を製造するには、硫化亜鉛六方晶に超音波などの衝撃を加えることで該硫化亜鉛六方晶の(002)面に平行な面状欠陥を形成した後、加熱などの手段によって硫化亜鉛立方晶に転移させることが好ましい。
硫化亜鉛蛍光体粒子が含有する付活剤とは、硫化亜鉛結晶の格子欠陥中に少量含まれ、キャリアを受け取り励起されることで発光中心となる物質である。付活剤の例には、銅、マンガン、銀、金等の遷移金属、セリウム、ユーロピウム、テルビウム等の希土類金属が挙げられる。電場を印加することにより硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させやすいという観点から、付活剤としては、銅、金または希土類が好ましく、入手性などの観点から銅がさらに好ましい。付活剤の量は所望する発光色により異なるが、通常、質量基準で硫化亜鉛蛍光体粒子に対し、50〜50000ppm、より好ましくは100〜30000ppmである。
硫化亜鉛蛍光体粒子が含有する共付活剤とは、硫化亜鉛結晶の格子欠陥中に少量含まれ、付活剤が放出する電子を受け取る等の目的で用いられる物質である。共付活剤の例には、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、アルミニウム、ガリウム等の金属が挙げられ、このうち塩素がより好ましい。共付活剤の量は、通常、付活剤1質量部に対して、0.2〜10質量部、より好ましくは、0.3〜5質量部である。
硫化亜鉛蛍光体粒子の大きさは、取扱い性、生産の歩留まり等の経済性を考慮すると、通常、メジアン径が10〜30μmであることが好ましく、14〜27μmであることがより好ましい。流動性マトリックス中に分散した硫化亜鉛蛍光体粒子に電場を与えると、硫化亜鉛蛍光体粒子が分極し、静電引力が働くため配向する。硫化亜鉛蛍光体粒子の長軸長と短軸長との比(長軸長/短軸長、「軸長比」ともいう)が大きいほど分極しやすいが、軸長比を過度に大きくすると、配向させるためにより大きな電場力が必要となり、配向を阻害する電気粘性効果が生じるため、電場を印加して配向させることが実質上難しくなることがある。このため、軸長比は1.05〜1.50であることが好ましい。本発明においては、流動性マトリックス層に含まれる全硫化亜鉛蛍光体粒子数の90%以上が、このような軸長比を有する硫化亜鉛蛍光体粒子であることが好ましい。
かかる硫化亜鉛蛍光体粒子の調製方法は、特に限定されず、例えば、特許文献1に示されるような液相方法によって得られた前駆体を焼成する方法、また特許文献2に示されるような硫化亜鉛粉末に発光中心を固体混合して焼成する方法等により調製できる。
硫化亜鉛蛍光体粒子の含有量は、流動性マトリックス層を固化して発光層とした場合に、発光層中の30〜90体積%となる量が好ましく、40〜80体積%となる量がより好ましく、50〜70体積%となる量がさらに好ましい。硫化亜鉛蛍光体粒子の含有量が30体積%未満であると、得られる分散型無機EL素子の発光輝度が相対的に低くなることがある。また硫化亜鉛蛍光体粒子の含有量が90体積%超であると、発光層において硫化亜鉛蛍光体粒子を保持する非流動性バインダーの量が少なくなり発光層内に空隙が多く発生するため、電場が効率よく硫化亜鉛蛍光体粒子に印加されずに発光輝度が低下することがある。
流動性マトリックス層は、硫化亜鉛蛍光体粒子を流動性バインダー中に分散した分散液を、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗工法などを用いて絶縁層の上に塗工することで形成できる。特にスクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗工が可能な方法が好ましい。例えば、スクリーン印刷法においては、前記分散液を、スクリーンメッシュを通して塗工する。メッシュの厚さ、開口率、塗工回数を選択することにより膜厚が制御できる。また、スクリーンの大きさを変えることで大面積化も容易である。
流動性バインダーの流動性すなわち粘度は、次工程における硫化亜鉛蛍光体粒子の配向性に影響する。当該粘度が過度に高いと、硫化亜鉛蛍光体粒子が配向しにくい。また、当該粘度が過度に低いと、硫化亜鉛蛍光体粒子が沈降することがある。以上から、流動性バインダーの25℃での粘度は0.1〜100Pa・sが好ましい。粘度は、粘弾性測定装置(レオメータ)により測定できる。
(2)工程B
工程Bは、前記第一および第二の電極板の間に電圧をかけて前記流動性マトリックス層に電場を印加して、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる配向工程である。
第一および第二の電極板間に電圧をかけることで流動性マトリックス層に電場を印加して、流動性マトリックス層中の硫化亜鉛蛍光体粒子を特定の方向に配向させる。電場は、直流印加または交流印加のいずれでもよい。印加電場の強さは、直流印加の場合は0.001〜5V/μm、交流印加の場合は0.01〜50V/μmが好ましい。交流電圧の周波数は10Hz〜100kHzが好ましい。
特定の方向とは、硫化亜鉛蛍光体粒子が有する面状欠陥の法線と電極板主面の法線とが、垂直または垂直に近い状態にあることであり、好ましくは両法線のなす角度が70〜90度であることをいう。以下、この配向状態について図1を参照しながら説明する。図1中、10は電極板、12は電極板主面、14は電極板主面の法線、20は硫化亜鉛蛍光体粒子、22は硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥、24は硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線、および30は流動性マトリックス層または発光層である。αとβは硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板の法線とのなす角度(α≦β)である。本発明において、硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板の法線とのなす角度とは、90度以下の角度として定義されるαである。
面状欠陥22は硫化亜鉛蛍光体粒子中の硫化亜鉛立方晶の(111)面と平行である。面状欠陥の法線24とは、面状欠陥22から垂直に延びる線であり、硫化亜鉛蛍光体粒子20(硫化亜鉛立方晶)の(111)面と垂直である。
電極板主面の法線14とは、電極板主面12から垂直に延びる線である。通常、電場は電極板の厚み方向(短手方向)に印加され、さらに2つの電極板の内側の主面は平行である。従って、電場の方向は一方向になり、電極板の法線14と平行となる。これらの線は電子顕微鏡像やマイクロスコープ像により特定できる。本発明においては、硫化亜鉛蛍光体粒子の40%以上におけるαが70〜90度となるように配向させる。αがこの範囲にあると、硫化亜鉛蛍光体粒子20の面状欠陥が電場の方向と平行もしくは平行に近い状態となる。硫化亜鉛蛍光体粒子の、面状欠陥と平行に導電性物質の針状結晶が存在し、この導電性物質によってキャリアが付活剤に注入され発光すると考えられる。面状欠陥が印加する電場の方向と一致するとキャリアの注入効率が最大となるので、最も強い発光輝度を示すと考えられる。
電場を印加すると、硫化亜鉛蛍光体粒子に分極が発生し、静電引力により、面状欠陥が電場の方向に対して平行もしくは平行に近い状態に配向する。よって、配向状態および所望の状態に配向する粒子の数は、電場の強度や電場を与える時間等により調整できる。
以上から、本工程によって、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上の粒子を、前記αが70〜90度となるように配向させることが好ましい。配向させる粒子は全粒子数の50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。加えて、この場合のαは、80〜90度であることがより好ましく、85〜90度であることがさらに好ましい。
本工程において、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上における前記αが70〜90度となるように、かつ全硫化亜鉛蛍光体粒子数の80%以上におけるαが40〜90度であるように配向すると、発光輝度はさらに高くなる。
硫化亜鉛蛍光体粒子の配向状態は、分散型無機EL素子の断面をSEM、TEM、またはマイクロスコープなどで観察することにより容易に特定できる。この際、断面をミクロトーム、クロスセクションポリッシャー、イオンポリッシャーなどの切断機を用いて、超薄切片とすると観察精度がより高まるので好ましい。
さらに、硫化亜鉛蛍光体粒子の配向状態は、前記積層体の誘電率の経時変化を測定することによっても特定できる。硫化亜鉛蛍光体粒子が、前記αが70〜90度となるように配向していないとき、積層体の誘電率は低い。硫化亜鉛蛍光体粒子が、前記αが70〜90度となるように配向すると誘電率は向上する。前記αが70〜90度となるような硫化亜鉛蛍光体粒子の量が、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上となると、誘電率は一定値となる。誘電率が一定である状態は暫くの間継続するが、与えられる電場が強い場合などは、硫化亜鉛蛍光体粒子が回転し始めることがあり、誘電率は再び上昇し始める。従って、誘電率が一定となった時点を、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上において前記α70〜90度となるように配向した状態と判断できる。
(4)工程C
工程Cは工程Bの後、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上において前記α70〜90度となるように配向した硫化亜鉛蛍光体粒子を固定する固定工程である。流動性マトリックス層が、流動性バインダーとして熱または光硬化性のモノマーを含む場合、流動性マトリックス層を加熱するか、または当該層に光を照射して当該層を硬化することにより、配向した硫化亜鉛蛍光体粒子を固定できる。この処理により流動性マトリックス層は固化されて発光層となる。
加熱処理または光照射処理を行なう時機は、硫化亜鉛蛍光体粒子が所望の状態に配向した後が好ましい。具体的には、前述のとおりSEMや誘電率の変化から硫化亜鉛蛍光体粒子の配向状態を特定して、所望の状態に配向したことを確認してから加熱処理または光照射処理を行なうことが好ましい。また、硫化亜鉛蛍光体粒子が所望の状態に配向した状態をよりよく維持するために、流動性マトリックス層に電場を印加した状態で、前記加熱処理または光照射処理を行なってもよい。加熱や光照射の条件は、公知のとおりとしてよい。ただし、流動性マトリックス層を熱硬化する場合、当該層の流動性が変化して、硫化亜鉛蛍光体粒子が沈降することがありうる。このような観点からは、流動性マトリックス層を光硬化により固化する方法が好ましい。
流動性マトリックス層が、流動性バインダーとしてポリマー溶液を含む場合は、流動性マトリックス層から溶媒を除去することにより当該層を固化し、所望状態に配向した硫化亜鉛蛍光体粒子を固定できる。溶媒を除去するには、加熱等の公知の手段を用いてよい。
[2.分散型無機EL素子]
以上述べた製造方法により得られる、本発明の分散型無機EL素子は、
第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が非流動性バインダー中に分散している発光層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層してなり、前記硫化亜鉛蛍光体粒子が特定の方向に配向している分散型無機EL素子である。
当該分散型無機EL素子の第一の電極板と第二の電極板は平行であり、前記第一の絶縁層および/または第二の絶縁層の絶縁抵抗は1〜100MΩ、かつ誘電正接は5.0×10−4〜2.0×10−1であり、かつ前記硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上が、前記面状欠陥の法線と電極板の法線とのなす角度が70〜90度となるように配向していることが好ましい。
この分散型無機EL素子は、高い発光輝度、例えば、電場強度を2.83V/μmとした場合に210〜300cd/cmの発光輝度を有する。さらに、当該分散型無機EL素子は、硫化亜鉛蛍光体粒子に均一な電場を印加できるため、発光輝度が経時変化しにくいという特性も有する。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、配合割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定されない。
[試験例1]硫化亜鉛蛍光体粒子の調製
高純度硫化亜鉛粉末(商品名:堺化学工業株式会社製、RAK−N)150gに2.0gの酢酸銅水和物(Cu(CHCO・HO)を加え、さらに融剤として30gの塩化マグネシウム(MgCl)、20gの塩化ナトリウム(NaCl)、および10gの塩化カリウム(KCl)を混合し、遊星型撹拌脱泡機(装置名:株式会社シンキー製、AR−250)に装入し、10分間よく混合した。
次いで、この原料粉体を磁製ルツボに封入し、1050℃で3時間焼成した後、イオン交換水3リットルを用いて洗浄、濾過の工程を10回繰り返して融剤を完全に洗い流した。洗浄後の生成物を乾燥して中間硫化亜鉛蛍光体粒子(平均粒径22μm)を得た。次に、この中間硫化亜鉛蛍光体粒子120gをイオン交換水600gに分散し、超音波振動器(装置名:BRANSON製、Degital Sonifier)を用いて、出力60%で5分間連続照射、5分間停止のサイクルを3回行ない、3.6GJ/mの超音波により衝撃を加えた。更に、脱水し、熱風乾燥機内で80℃で12時間かけて乾燥した。以上のようにして超音波処理した中間硫化亜鉛蛍光体粒子100gに、硫酸銅5水和物2.5g、硫酸亜鉛7水和物25gを混合し、遊星型撹拌脱泡機(装置名:株式会社シンキー製、AR−250)に装入し、10分間よく混合した。
次いで、この原料粉体を磁製ルツボに封入し、窒素雰囲気下700℃で3時間再焼成し、室温に冷却した。焼成物を1200gの1.8質量%塩酸水溶液中に分散し、30分間撹拌して、残留した塩の洗浄および表面エッチング処理を行なった。その後、イオン交換水で洗浄し、さらに5.0質量%シアン化ナトリウム水溶液500gで洗浄して、粒子表面の硫化銅を除去した。さらにその後、イオン交換水2リットルで2回洗浄し、80℃で熱風乾燥を12時間乾燥して硫化亜鉛蛍光体粒子80gを得た。得られた硫化亜鉛蛍光体粒子をSEM(装置名:株式会社日立ハイテクノロジー製、走査型電子顕微鏡 TM−1000 MINISCOPE)で撮影し、200個の硫化亜鉛蛍光体粒子についてその軸長比(長軸長/短軸長)を測定した。200個の硫化亜鉛蛍光体粒子中、98%の数の硫化亜鉛蛍光体粒子の軸長比が1.1〜1.5の範囲であった。また、硫化亜鉛蛍光体粒子の比誘電率は20であった。
[実施例1]
アクリル系光硬化性モノマー(製品名:日本化薬株式会社製、FR21)40gに試験例2で得られた硫化亜鉛蛍光体粒子60gを遊星型撹拌脱泡機(装置名:株式会社シンキー製、AR−250)を用いて混合し、硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダーに分散した流動性マトリックスを調製した。このモノマーを単独で硬化して得た硬化物の誘電率は5.5である。
透明導電膜付ガラス(株式会社倉元製作所製、表面抵抗率:5Ω/□以下)の透明導電膜上にスパッタ装置(装置名:芝浦メカトロニクス株式会社製、CFS−4ES)を用いて酸素10sccm、アルゴン30sccmを流しつつ、基板温度200℃、成膜時間60分でSiOを200nmの厚さで成膜して絶縁層付透明導電膜付ガラスを作製した。このときのSiOの絶縁抵抗は2.7MΩ、誘電正接は3.2×10−2であった。この絶縁層付透明導電膜付ガラス(第一の絶縁層付透明導電膜付ガラス)の絶縁層側に、前記流動性マトリックスを59μmの厚さで塗工して流動性マトリックス層を形成した。この流動性マトリックス層の上に、別途同様に作製した絶縁層付透明導電膜付ガラス(第二の絶縁層付透明導電膜付ガラス)を絶縁層側が前記流動性マトリックス層と対面し、かつ第一の絶縁層付透明導電膜付ガラスと平行になるように配置し、透明電極間に電圧を供給するためのリード線を付設した。一対の透明電極間に50V、1kHzの交流電圧を2分間印加して硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させ、同時にUV照射装置(装置名:SAN−EI ELECTRIC社製、SUPERCURE−351S)を用いて3.5J/cmで2分間UV照射して光硬化性モノマーを硬化し、流動性マトリックス層を固化した。配向の際、積層体の誘電率の経時変化を測定したところ、硫化亜鉛蛍光体粒子の配向前を基準として誘電率が105%となった点で一定となったので、この時点で配向工程を終了した。このようにして絶縁層付透明導電膜付ガラス間に膜厚59μmの発光層を調製した。
上記第二の絶縁層付透明導電膜付ガラスを取り外し、露出した発光層上に絶縁層としてチタン酸バリウムペースト(製品名:デュポン社製、8153)を100メッシュスクリーンを用いて絶縁層の表面が第一の絶縁層付透明導電膜付ガラスと平行になるようにスクリーン印刷し、120℃で30分間乾燥した(絶縁層厚さ20μm)。この絶縁層の誘電率は45であった。その絶縁層上に背面電極として銀ペースト(製品名:ヘンケル株式会社製、ELECTRODAG461S)を印刷した。このとき背面電極と第一の絶縁層付透明導電膜付ガラスは平行に配置された。次に、透明電極と背面電極に電圧を供給するためのリード線を付設し、全体を封止フィルムで封止して分散型無機EL素子を得た。硫化亜鉛蛍光体粒子は光硬化性樹脂中に均一に分散しており、硫化亜鉛蛍光体粒子の体積分率は30体積%であった。
上記のように作製した分散型無機EL素子の透明電極の一端に接続した電圧印加用リード線と、背面電極の一端に接続した電圧印加用リード線との間に1kHzの交流電圧を印加して分散型無機EL素子を発光させ、その発光輝度を色彩輝度計(装置名:株式会社トプコン社製、BM7)にて測定した。この際、硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を2.83V/μmとした。発光輝度は227cd/cmであった。
また、硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を5.65V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加して分散型無機EL素子を発光させ、90秒後の発光輝度を色彩輝度計(装置名:株式会社トプコン製、BM7)にて測定したところ、508cd/cmであった。この90秒後の発光輝度は、電圧印加直後の発光輝度の101%であり、本例の分散型無機EL素子において、発光輝度の時間的な変化はほとんど見られなかった。
本例では、絶縁層を設けたために、硫化亜鉛蛍光体粒子に均一な電場を印加でき、高い発光輝度が得られさらに発光輝度の経時変化がなく、安定した発光輝度が得られたと考えられる。発光層中の硫化亜鉛蛍光体粒子100個の該硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板の法線のなす角度αを測定したところ、αが70〜90度に配向していた硫化亜鉛蛍光体粒子数は、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の80%であった。
[比較例1]
透明導電膜付ガラス上にSiOの成膜を行なわない以外は、実施例1と同様の方法で分散型無機EL素子を得た。配向の際、積層体の誘電率の経時変化を測定したところ、硫化亜鉛蛍光体粒子の配向前を基準として誘電率が104%でほぼ一定となったので、この時点で配向工程を終了した。硫化亜鉛蛍光体粒子は光硬化性樹脂中に均一に分散しており、硫化亜鉛蛍光体粒子の体積分率は30体積%であった。このように作製した分散型無機EL素子に、実施例1と同様にして硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を2.83V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加し、分散型無機EL素子を発光させ、その発光輝度を測定した。発光輝度は206cd/cmであった。実施例1と比較して90%の発光輝度となった。また、硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を5.65V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加して分散型無機EL素子を発光させ、発光輝度を測定したところ、その発光輝度は426cd/cmであった。実施例1と比較して84%の発光輝度を示すにとどまった。硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を5.65V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加した後、90秒後の発光輝度は、電圧印加直後の発光輝度と比較して84%であった。実施例1の結果と異なり、時間と共に発光輝度が低下した。
本例では、絶縁層を設けなかったために、硫化亜鉛蛍光体粒子に均一な電場を印加できなかったため、硫化亜鉛蛍光体粒子の配向が不均一となり、初期の発光輝度が低下し、さらに発光輝度の経時変化が大きく、安定した発光輝度が得られなかったと考えられる。発光層中の硫化亜鉛蛍光体粒子100個の該硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板の法線のなす角度αを測定したところ、αが70〜90度に配向していた硫化亜鉛蛍光体粒子数は、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の67%であった。
[比較例2]
電極間にかける交流電圧を0Vとし、硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させなかった以外は、実施例1と同様の方法で分散型印刷EL素子を得た。硫化亜鉛蛍光体粒子は光硬化性樹脂中に均一に分散しており、硫化亜鉛蛍光体粒子の体積分率は30体積%であった。このように作製した分散型無機EL素子を実施例1と同様に、硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を2.83V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加して分散型無機EL素子を発光させ、発光輝度を色彩輝度計(装置名:株式会社トプコン製、BM7)にて測定した。発光輝度は71cd/cmであった。実施例1と比較して34%の発光輝度を示すにとどまった。
また、硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を5.65V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加し、分散型無機EL素子を発光させ、その発光輝度を色彩輝度計(装置名:株式会社トプコン製、BM7)にて測定したところ、その発光輝度は208cd/cmであった。実施例1と比較して41%の発光輝度を示すにとどまった。硫化亜鉛蛍光体粒子にかかる電場強度を5.65V/μmとして、1kHzの交流電圧を印加した後、90秒後の発光輝度は、電圧印加直後の発光輝度と比較して102%となった。発光輝度の時間的な変化は見られなかった。
本例では、硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる工程を実施しなかったため、初期の発光輝度が低下したと考えられる。発光層中の硫化亜鉛蛍光体粒子100個の該硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板の法線のなす角度αを測定したところ、αが70〜90度に配向していた硫化亜鉛蛍光体粒子数は、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の4%であった。
10 電極板
12 電極板主面
14 電極板主面の法線
20 硫化亜鉛蛍光体粒子
22 硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥
24 硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線
30 発光層または流動性マトリックス層
α 硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度(≦β)
β 硫化亜鉛蛍光体粒子の面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度(≧α)

Claims (7)

  1. 第一の電極板と、第一の絶縁層と、面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が流動性バインダーに分散している流動性マトリックス層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に積層した積層体を準備する工程、
    前記第一および第二の電極板によって前記流動性マトリックス層に電場を印加して、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を配向させる配向工程、および
    前記配向工程の後に、前記硫化亜鉛蛍光体粒子を固定する固定工程を含む、分散型無機EL素子の製造方法。
  2. 前記配向工程において、全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上を、前記面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度が70〜90度となるように配向させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記流動性バインダーが光硬化性樹脂であり、前記固定工程において、前記流動性マトリックス層を光硬化する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記第一の絶縁層および/または第二の絶縁層の絶縁抵抗が1〜100MΩ、かつ誘電正接が5.0×10−4〜2.0×10−1である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記配向工程において、前記積層体の誘電率の経時変化を測定しながら、誘電率が一定になるまで前記流動性マトリックス層に電場を印加する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記硫化亜鉛蛍光体粒子が銅および塩素を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 第一の電極板と、第一の絶縁層と、流動性バインダーを固化してなる非流動性バインダー中に面状欠陥を有する硫化亜鉛蛍光体粒子が分散している発光層と、第二の絶縁層と、第二の電極板とを、この順に、かつ前記第一の電極板と第二の電極板とが平行となるように積層してなり、
    前記第一の絶縁層および/または第二の絶縁層の絶縁抵抗が1〜100MΩ、かつ誘電正接が5.0×10−4〜2.0×10−1であり、かつ
    全硫化亜鉛蛍光体粒子数の40%以上が、前記面状欠陥の法線と電極板主面の法線とのなす角度が70〜90度となるように配向している、分散型無機EL素子。
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