JP2012197871A - 走行装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トランスミッションや減速機等の動力伝達機構と転がり軸受とを共通のオイルで潤滑する走行装置において、その転がり軸受に異物が侵入しないようにする。
【解決手段】駆動源5と動力伝達機構Tと駆動輪3を車軸に支持する転がり軸受20とを同軸線上に備え、動力伝達機構Tと転がり軸受20とが共通の潤滑用オイルで潤滑される走行装置において、転がり軸受20の外側軌道輪21と内側軌道輪22との間に形成された軸受空間の動力伝達機構T側の開口が、動力伝達機構T側から転がり軸受20側へのオイルの流通路となって、その開口がシールリング40で覆われており、シールリング40に形成された通油孔40dを覆うようにフィルタ41を取付けた構成とした。
【選択図】図3

Description

この発明は、トランスミッションや減速機などの動力伝達機構とともに、オイル潤滑式の転がり軸受を併せて備えた走行装置に関するものである。
自動車や各種建設用機械等の走行装置には、トランスミッションや減速機などの動力伝達機構とともに、オイル潤滑式の転がり軸受を併せて備えたものがある。
この種の走行装置として、例えば、図3に示すような鉱山用ダンプトラック(建設用機械)1に用いられる走行装置4が挙げられる。この鉱山用ダンプトラック1は、荷台と運転台を支えるシャーシ2が、複数の駆動輪(タイヤ)3によって支持されている。走行装置4は、この駆動輪3に動力を伝達する。
走行装置4の構成は、図2に示すように、駆動源である走行モータ5と、この走行モータ5の回転軸に接続されるシャフト6を備える。そのシャフト6の先端部の外側には動力伝達機構Tとして減速機が配置されている。
また、シャフト6の外側には、固定の車軸を形成するスピンドル7が配置されている。このスピンドル7の外側には、転がり軸受20を介してホイール9が配置されている。ホイール9の回転は、リム8を介して駆動輪3に伝達される。
減速機は、その自動車や各種建設用機械等の用途や機種等に応じて、種々の構成が採用される。例えば、図2に示す走行装置4では、減速機として遊星歯車機構10を採用している。遊星歯車機構10は、第一遊星歯車機構10aと第二遊星歯車機構10bとを備え、この2つの遊星歯車機構10a,10bを介して、シャフト6の回転を減速してホイール9に伝達する。
第一遊星歯車機構10aは、シャフト6と一体に回転する第一太陽歯車11と、この第一太陽歯車11に噛み合う複数の第一遊星歯車12と、その第一遊星歯車12に噛み合う外輪歯車13とを備える。外輪歯車13には、シャフト6の軸周りに回転可能にする連結部材13aが接続されている。
第二遊星歯車機構10bは、連結部材13aの回転に伴って軸周りに回転する第二太陽歯車14と、この第二太陽歯車14と噛み合う第二遊星歯車15を備える。第二遊星歯車15は、遊星キャリア16の支持軸16b周りに回転可能に支持され、ホイール9と一体に回転する外輪歯車9aに噛み合っている。また、その遊星キャリア16は、その延長部16aがスピンドル7の内周部7aにスプライン結合で固定されている。さらに、その遊星キャリア16の端面とスピンドル7の端面との間には軸受押え部品(リテーナ)17が入り込んでその間隙が保持されている。
走行モータ5の駆動によってシャフト6が軸周りに回転すると、このシャフト6の回転によって第一太陽歯車11が軸周りに回転する。この第一太陽歯車11の回転によって、各第一遊星歯車12が外輪歯車13内で回転する。これらの第一遊星歯車12の回転に伴って連結部材13aが回転し、それに噛み合う第二太陽歯車14が軸周り回転する。
第二太陽歯車14の回転に伴って、各第二遊星歯車15が遊星キャリア16の支持軸16b周りに回転し、それに噛み合う外輪歯車9aを介してホイール9を回転させる。このホイール9の回転が、リム8を介して駆動輪3に伝えられ、鉱山用ダンプトラック1が走行する(例えば、特許文献1,2参照)。
この走行装置4では、スピンドル7とホイール9との間の転がり軸受20として、一対の単列円すいころ軸受を採用している。この種の建設用機械では、大きなラジアル荷重に耐え得る構造とするため、転がり軸受20として円すいころ軸受が用いられることが多い。
円すいころ軸受は、転動体23として円すいころを採用し、内側軌道輪(内輪)22の軌道面22aと外側軌道輪(外輪)21の軌道面21aとは、軸方向いずれかの側(図2では、2列の円すいころ軸受の軸方向外側から、その2列の円すいころ軸受間の中央部へ向かう側)に向かって互いの距離が狭まるように設けられている。また、その距離が狭まる方向へ向かって外側軌道輪21に対して内側軌道輪22を押圧することにより、各転動体23に予圧が付与されている。この予圧は、前記軸受押え部品17を、スピンドル7に対してボルト17aで締め付けることにより、両内側軌道輪22,22に対して、対側の軸受押え部品18との間で軸方向に圧縮力を作用させることで付与することができる。
さらに、この種の走行装置4には、転がり軸受20の軸方向いずれかの側に、必要に応じて回転センサ(図2に図示せず)が設けられる場合もある。回転センサは、必要に応じて回転方向、回転速度、回転角、回転加速度等の検出を適宜に行うように構成され、その出力信号がモータ軸等の回転軸の回転制御等に利用されている。
特開2009−204016号公報 米国特許出願公開2004/0065169号公報
この種の走行装置4では、トランスミッションや減速機等の動力伝達機構Tを潤滑するオイルが、転がり軸受20側にも流入するようになっている。すなわち、潤滑用のオイルは、動力伝達機構T側と転がり軸受20側とで共通に用いられている。
しかし、トランスミッションや減速機等の動力伝達機構Tを潤滑するオイルには、単体で用いられる一般的な転がり軸受20を潤滑するオイルよりも、相対的にギヤの摩耗粉(鉄粉等)等の異物の含まれている割合が多くなる。
このため、その動力伝達機構Tを潤滑するオイルがそのまま転がり軸受20側に侵入すると、それとともに、異物も転がり軸受20の内部に侵入する機会が増える。このような異物は、動力伝達機構T側のオイルに介在することは一定の限度内において問題ない。しかし、転がり軸受20では、その異物が軌道面や転動面に噛み込むことによって、軌道面や転動面に剥離や傷、圧痕等の損傷を生じさせてしまうことがある。このため、転がり軸受20の耐久性を低下させることになるので好ましくない。
そこで、この発明の課題は、トランスミッションや減速機等の動力伝達機構と転がり軸受とを共通のオイルで潤滑する走行装置において、その転がり軸受に異物が侵入しないようにすることを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、駆動源と、その駆動源からの回転を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、前記駆動輪を車軸に支持する転がり軸受とを同軸線上に備え、前記動力伝達機構と前記転がり軸受とが共通の潤滑用オイルで潤滑される走行装置において、前記転がり軸受の前記動力伝達機構に近い側に、その動力伝達機構側から転がり軸受側へのオイルの流通路を備え、その流通路に、オイルに含まれる異物を捕捉するフィルタを備えたことを特徴とする走行装置を採用した。
この構成によれば、動力伝達機構から流出してその潤滑油内に浮遊する摩耗粉(鉄粉等)等の異物が、フィルタによって転がり軸受の内部に侵入しないように捕捉される。このため、異物は、転がり軸受側に侵入しにくくなる。したがって、転がり軸受の軌道面や転動面に剥離や傷、圧痕等の損傷を生じさせず、転がり軸受の耐久性を高め、その運転寿命を長くすることができる。
この動力伝達機構としては、例えば、トランスミッションや減速機、増速機等が挙げられる。減速機の場合、特に、遊星歯車機構を備えた遊星減速機とすることができる。遊星歯車機構を備えた遊星減速機は、例えば、鉱山用ダンプトラック等、過酷な条件で使用される建設用機械に採用される場合が多い。このような過酷な使用条件では、遊星減速機の歯車等からオイルに異物が混入する頻度が高いので、オイルの流通路にフィルタを設ける効果がより高い。
また、フィルタを設けるための具体的構成としては、前記転がり軸受は、外側軌道輪と内側軌道輪との間に転動体が組み込みまれ、前記外側軌道輪と前記内側軌道輪との間に形成された軸受空間の軸方向一端の開口が前記流通路であってその開口がシールリングで覆われており、前記フィルタは、前記シールリングに形成された通油孔を覆うように取付けられている構成を採用することができる。
一般に、シールリングは、外側軌道輪と内側軌道輪との間に着脱可能であるから、このシールリングにフィルタを設けることによって、そのフィルタのメンテナンスが容易になる。
この構成において、前記フィルタのシールリングへの取付けは、接着剤による固定方法や嵌め込み固定による方法等、種々の手法を採用できるが、特に、フィルタがシールリングにインサート成型されている構成を採用することができる。
シールリングを合成樹脂やゴムの成形品とし、そのシールリングの成型時にフィルタをインサート成型して一体とすれば、コストの安いフィルタ付きシールリングを得ることができる。
また、このシールリングを備えた構成において、前記転がり軸受は軸方向に並列して複数設けられ、前記シールリングは、前記並列する複数の転がり軸受のうち、前記動力伝達機構に最も近い位置に配置される転がり軸受の動力伝達機構側の前記開口を覆っている構成を採用することができる。
この構成によれば、転がり軸受が軸方向に2つ、あるいはそれ以上並列して設けられている場合において、シールリングは、動力伝達機構に最も近い位置に配置される。このため、走行装置のメンテナンス時等において、その走行装置から動力伝達機構を取り外し(分解)すれば、そのシールリングが外部に露出するか、あるいは、外部から比較的手の届きやすいエリアに位置することとなる。したがって、そのシールリングの着脱がさらに容易となる。
さらに、その構成において、前記並列する複数の転がり軸受のうち、前記動力伝達機構から最も離れた位置に配置される転がり軸受の動力伝達機構とは反対側に、回転センサを設けた構成を採用することができる。
この構成によれば、最も動力伝達機構に近い位置に配置する転がり軸受の動力伝達機構側にフィルタを設け、動力伝達機構側から最も離れた位置に配置する転がり軸受の動力伝達機構とは反対側に回転センサを固定することにより、全ての転がり軸受に対して動力伝達機構から流出する異物の侵入を低減することができる。また、その異物が回転センサの検出部に侵入することも低減することができる。すなわち、回転センサのセンサ部に異物が付着しないので、センサの検出信頼性を向上させることができる。
さらに、このシールリングと回転センサとを併せて備えた構成において、前記外側軌道輪は回転側、前記内側軌道輪は静止側であり、前記動力伝達機構に最も近い位置に配置される転がり軸受の前記外側軌道輪と、前記動力伝達機構から最も離れた位置に配置される転がり軸受の前記外側軌道輪とは共通の部品を加工したものであり、その加工により、前記共通の部品の一方には、前記シールリングを固定するためのシール溝が、他方には、前記回転センサのエンコーダを固定するための周溝が形成されている構成を採用することができる。シール溝及び周溝は、例えば、切削、研削等によって形成することができる。
この構成によれば、並列する転がり軸受けの外側軌道輪を共通の部品をもとに製作できるので、コストの低減に寄与し得る。また、予圧の管理上、並列する転がり軸受の各軌道輪は、少なくとも転動体に触れる箇所については、このように同一の形状、寸法からなる部材であることが好ましい。
なお、シール溝と周溝とを同一の形状とすれば、並列する転がり軸受けの外側軌道輪同士を完全に共通化できる。
これらの各構成において、転がり軸受の種別は自由であり、例えば、転動体として円すいころを用いた円すいころ軸受であってもよいし、その他、転動体としてボールを用いた深溝玉軸受や、円筒ころを用いた円筒ころ軸受等であってもよい。
また、転がり軸受が複数並列する構成においても、転がり軸受はそれぞれ、円すいころ軸受であってもよく、その他、深溝玉軸受や円筒ころ軸受等であってもよい。
並列する転がり軸受として円すいころ軸受を用いた場合において、その転がり軸受は、前記円すいころの小径側端面同士が背面合わせに配置されて、前記内側軌道輪が軸方向に押圧されることにより予圧が付与されている構成を採用することができる。
また、その構成において、前記シール溝及び前記周溝を、それぞれ、前記外側軌道輪の内径面の大径側端部に設けた構成とすることができる。
すなわち、円すいころ軸受の外側軌道輪にシールリングや回転センサのエンコーダを固定する場合、外側軌道輪の部材を、転動体との接触範囲(軌道面)よりもさらに大径側端部側へと外側に拡大して、その位置に設けることが望ましい。この構成によれば、シールリングやエンコーダの取付け位置の内径が大きくなるから、その取付スペースが確保しやすく、取付作業も容易となるからである。
また、これらのフィルタ付きのシールリングを備えた前記全ての構成において、シールリングは外側軌道輪か内側軌道輪のいずれの側に固定してもよいが、特に、外側軌道輪が回転側、内側軌道輪が静止側である場合には、シールリングは外側軌道輪に嵌合している構成を採用することができる。
すなわち、各種建設用機械の足回り等で使用される転がり軸受は、内輪静止、外輪回転とする場合が多いので、このような場合には、シールリングは、回転側である外側軌道輪に嵌合している構成とすることが望ましい。
なお、この転がり軸受に回転センサを備える場合は、外側軌道輪側のエンコーダをパルサリングとし、内側軌道輪側のセンサ部に、バックマグネット式の磁気センサを備えた構成とすることができる。各種建設用機械の足回り等で使用される転がり軸受は比較的大径のものが多いので、回転センサを、このようにバックマグネット式とすることで、センサの性能を安定させることができる。
また、シールリングを回転側である外側軌道輪に嵌合した前記の構成において、前記シールリングは、前記外側軌道輪に係止される係止部と、その係止部から内径側に向かって立ち上がる壁部と、その壁部から伸びて前記内側軌道輪に微小間隙をおいて対向する内側円筒部とを備える構成とすることができる。
この構成によれば、シールリングと内側軌道輪との間の微小間隔の隙間を通じて、潤滑用のオイルが流通する。この微小間隔を通過し得る異物は、転がり軸受側への侵入が許容される大きさのものに限定される。また、シールリングの通油孔においては、フィルタによって異物が捕捉され、転がり軸受側には、その転がり軸受の軌道面や転動面に損傷を生じさせる異物が侵入しないようにできる。
この発明は、トランスミッションや減速機等の動力伝達機構と転がり軸受とを共通のオイルで潤滑する走行装置において、動力伝達機構から流出してその潤滑油内に浮遊する異物が、フィルタによって転がり軸受の内部に侵入しないように捕捉される。したがって、転がり軸受の軌道面や転動面に剥離や傷、圧痕等の損傷を生じさせず、転がり軸受の耐久性を高め、その運転寿命を長くすることができる。
この発明の一実施形態を示す要部拡大縦断面図 従来の走行装置の縦断面図 鉱山用ダンプトラックの全体図
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る走行装置4の要部拡大縦断面図を示す。この走行装置4は、従来例と同様に、鉱山用ダンプトラック(建設用機械)1の足回りに用いられるものである。図1に示す要部以外の構成は、従来例として説明した図2,3等の構成と同様とし得るので、一部その説明を省略し、以下は、その従来例との差異点を中心に説明する。
走行装置4は、駆動源5である走行モータと、その駆動源5からの回転を駆動輪3に伝達する動力伝達機構Tと、駆動輪3を車軸に支持する転がり軸受20とを同軸線上に備えている。動力伝達機構Tは、前述の従来例と同様、遊星歯車機構10を備えた減速機である。
この動力伝達機構Tと転がり軸受20とは、共通の潤滑用のオイルで潤滑されるようになっている。すなわち、走行装置4のケーシング内には一定のレベルまでオイルが貯留されている(図2参照)ので、動力伝達機構Tや転がり軸受20の少なくとも下部は、そのオイルに浸かった状態である。これにより、動力伝達機構Tや転がり軸受20の構成部品が、潤滑されるようになっている。
転がり軸受20は、外側軌道輪21と内側軌道輪22の各軌道面21a,22aの間に、転動体23が組み込みまれている。転動体23は、保持器24によって周方向に保持されている。
この実施形態では、転がり軸受20として、転動体23として円すいころを用いた円すいころ軸受を採用しており、その円すいころを軸方向に沿って2つ並列して配置している。この複列の円すいころ軸受を介して駆動輪3を車軸に支持している。
並列する転がり軸受20は、円すいころの小径側端面同士が背面合わせになるように配置されている。すなわち、内側軌道輪22の軌道面22aと外側軌道輪21の軌道面21aとは、2列の転がり軸受20,20の軸方向外側から、その2列の転がり軸受20,20間の中央部へ向かう側に向かって互いの距離が狭まるように設けられている。
また、その転がり軸受20は、内側軌道輪22が外側軌道輪21に対して軸方向に押圧されることにより、予圧が付与されている。すなわち、予圧は、軌道面22a,21a間の距離が狭まる方向へ向かって、各転がり軸受20の外側軌道輪21に対して内側軌道輪22を押圧することにより付与されている。
この内側軌道輪22の押圧は、従来例と同様、2列の転がり軸受20の軸方向外側に設けた前記軸受押え部品17、前記軸受押え部品18によって行うことができる。
なお、内側軌道輪22は、非回転軸である車軸(前記スピンドル7)に装着され回転不能である。また、外側軌道輪21は、回転ハウジングHと一体に回転するように装着される。回転ハウジングHは、駆動輪3の前記ホイール9と一体の部材として形成されるか、あるいは、前記ホイール9と一体に回転可能に結合される(スピンドル7、ホイール9については、いずれも図2参照)。
なお、減速機の遊星歯車機構10の構成は、従来例と同様であり、回転ハウジングHは、減速機の遊星歯車機構10の外輪歯車(内径歯車)9aに連結されている。これらの遊星歯車機構10の各部品は、前述のように、ケーシング内のオイルに浸った状態で回転する。また、非回転軸である前記スピンドル7は、遊星キャリア16を介して支持軸16bに連結されている(図2参照)。
また、ケーシング内において、転がり軸受20の動力伝達機構Tに近い側に、その動力伝達機構T側から転がり軸受20側へのオイルの流通路を備える。すなわち、動力伝達機構Tと転がり軸受20とは共通のオイルで潤滑されるから、その動力伝達機構Tと転がり軸受20との間が、相互間のオイルの流通路となっている。
この実施形態では、転がり軸受20は軸方向に並列して2つ設けられているので、オイルの流通路は、動力伝達機構Tに近い側の転がり軸受20の動力伝達機構T側の開口、すなわち、外側軌道輪21と内側軌道輪22との間に形成された軸受空間の動力伝達機構T側の開口である。
そのオイルの流通路が、シールリング40で覆われている。シールリング40は、動力伝達機構T側の転がり軸受20の軸受空間の開口を覆うように取付けられる。
その開口は、外側軌道輪21と内側軌道輪22の軌道面21a,22aに沿って環状に形成されているので、それを覆うシールリング40も環状を成すものとなっている。
また、シールリング40は合成樹脂の成形品からなる。その樹脂製のシールリング40が、内側軌道輪22の大つば22bと外側軌道輪21の内径面の大径側端部との間に取付けられている。
なお、この実施形態は、外側軌道輪21は回転側、内側軌道輪22は静止側であり、シールリング40は回転側である外側軌道輪21に嵌合で固定されている。
このシールリング40は、図1に示すように、外側軌道輪21に係止される係止部40bと、その係止部40bから内径側に向かって立ち上がる壁部40aと、その壁部40aから伸びて内側軌道輪22の外径面に対向する内側円筒部40cとを備える。
係止部40bは円筒状であり、その円筒状の係止部40bが、外側軌道輪21の内径面の大径側端部に設けたシール溝21bに嵌合して固定されている。
また、係止部40bの外径面には周方向に延びる突出部40eが形成され、その突出部40eは、シール溝21b内に形成した周方向の凹部21cに係脱自在に係合する。軸受空間の開口に取付けられたシールリング40に、軸方向外方(動力伝達機構T側)に向く外力を付加すれば、凹部21cに対する突出部40eの係合が解除して、そのシールリング40の取り外しが可能である。
また、内側円筒部40cの内径面は、それに対向する内側軌道輪22の外径面より僅かに大径である。その対向面間が微小間隙となっているので、その間隙を通じてオイルの通過は許容され、且つ、軸受内への有害な異物の侵入は阻止される。
シールリング40には、壁部40aを軸方向に貫通する通油孔40dが設けられている。通油孔40dは、側面視円弧状の長孔を成す。この円弧状の通油孔40dが、その円弧が軸周り方向に並ぶように、シールリング40の周方向に沿って間隔をおいて複数設けられている。
また、フィルタ41は、その通油孔40dを覆うように取付けられている。この実施形態では、フィルタ41は、図1に示すように、シールリング40の壁部40aの転動体23側の面に接着剤で固定されている。フィルタ41が、壁部40aの転動体23側の面に固定されているから、そのフィルタ41よりも動力伝達機構T側(遊星歯車機構10側)の通油孔40d内の空間が、異物の溜まり空間として機能するようになっている。
なお、このフィルタ41のシールリング40への固定方法は、接着剤による固定には限定されず、例えば、嵌め込み固定にするなど、他の固定方法を採用してもよい。また、フィルタ41をシールリング40にインサート成型することにより一体化する手法を採用することもできる。このとき、フィルタ41の外周部は、シールリング40の樹脂に埋め込まれて保持できる。
また、フィルタ41の素材としては、樹脂、金属、不織布等、種々の素材を採用し得る。ここでは、メッシュサイズが1mm〜3mm程度の網目状の樹脂を採用しているが、フィルタ41の素材やメッシュサイズは、捕捉しようとする異物の径に応じて適宜設定することができる。
また、この走行装置4には、回転センサ30が設けられている。回転センサ30は、動力伝達機構Tから離れた側の転がり軸受20において、動力伝達機構Tとは反対側の端部に設けられている。この回転センサ30は、建設用機械の場合、例えば、ホイール9の回転速度を検出することにより、ABS制御やトラクションコントロールに使用される。
回転センサ30は、回転側である外側軌道輪21に、エンコーダ31としてパルサリングを固定している。また、静止側である内側軌道輪22に、バックマグネット式の磁気センサからなるセンサ部32を備えたセンサケース34を固定している。
各種建設用機械の足回り等で使用される転がり軸受は比較的大径のものが多いので、回転センサ30を、このようにバックマグネット式とすることで、センサの性能を安定させることができる。ただし、この回転センサ30は、このバックマグネット式磁気センサには限定されず、他の構成からなる回転センサ30であってもよい。
センサ部32を収容したセンサケース34は、内側軌道輪22の外径面に嵌るリング状部材35に固定されている。センサケース34は、そのリング状部材35を介して、内側軌道輪22に固定される。
また、そのリング状部材35は周方向に沿って二つ割りに形成されて、半円状を成す二つの部材からなる。その半円状を成す二つの部材の両端間を結合することにより、リング状部材35は内側軌道輪22の周囲に締め付けられて固定されるようになっている。
このとき、リング状部材35の内径面に設けた周方向の突条35aが、内側軌道輪22の外径面に設けた周方向の溝22dに嵌って係止される。
また、センサ部32に実装される回路基板へ通じる入出力線33は、センサケース34からリング状部材35の引出孔36を通じて、転がり軸受20の外部へ引き出されている。
なお、エンコーダ31は、外側軌道輪21の内径面に形成した周溝21dに嵌めて固定されている。周溝21dは、外側軌道輪21の内径面の大径側端部に設けられている。
この実施形態では、軸方向に並列する両転がり軸受20の外側軌道輪21及び内側軌道輪22、円すいころ23等は、それぞれ共通の部品を採用している。
ただし、外側軌道輪21については、共通の部品を用いて加工を行っている。一方の部品の内径面の大径側端部には、シールリング40を固定するためのシール溝21bを、他方の部品の内径面の大径側端部には、回転センサ30のエンコーダ31を固定するための周溝21dを、切削等の加工により形成している。
この構成によれば、並列する転がり軸受20の軸受部品を共通とできるので、コストの低減に寄与し得る。また、予圧の管理上、並列する転がり軸受20の軸受部品は、このように共通とすることが望ましい。
この実施形態の走行装置4は上記の構造からなり、この走行装置4の使用中、動力伝達機構Tや転がり軸受20の回転に伴って、オイルの一部は、動力伝達機構T側から転がり軸受20の側面に向けて飛散する。
このとき、転がり軸受20の軸受空間における動力伝達機構T側の開口にはシールリング40が装着されているので、そのオイルはシールリング40に向かって飛散する。そして、シールリング40に当たったオイルのうち、その一部は、通油孔40dのフィルタ41に衝突する。
フィルタ41に衝突したオイルは、そのフィルタ41のメッシュを透過する際、オイルに含まれる異物のうち、フィルタ41のメッシュサイズより大きい異物がそのメッシュで捕捉される。フィルタ41を透過したオイルは、軸受空間内に流入して転がり軸受20を潤滑する。
このため、動力伝達機構Tから排出される異物が、転がり軸受20の内部に侵入することを防止できる。
また、回転センサ30を動力伝達機構Tから最も離れた位置に配置しているので、万が一、異物が転がり軸受20内部に侵入しても、回転センサ30に到達する異物の量が少なくて済む。このため、回転センサ30の性能を阻害しないようになっている。
なお、フィルタ41が異物によって目詰まりした場合には、そのシールリング40を新しいシールリング40と交換することで対応することができる。
この実施形態では、転がり軸受20として円すいころ軸受を採用したが、転がり軸受20はこれには限定されない。例えば、外側軌道輪21としての外輪と内側軌道輪22としての内輪との間に、転動体23としてのボールを組込み、そのボールを保持器で保持した深溝玉軸受であってもよい。あるいは、外側軌道輪21としての外輪と内側軌道輪22としての内輪との間に、転動体23としての円筒ころを組込み、その円筒ころを保持器で保持した円筒ころ軸受であってもよい。また、車軸と駆動輪3との間に介在する転がり軸受20が単列であってもよい。
また、この実施形態では、シールリング40は、外側軌道輪21に固定される係止部40bを円筒状としているが、係止部40bは、円筒状のものには限定されず、他の形状としてもよい。また、この係止部40bを内側軌道輪22に固定してもよい。特に、外側軌道輪21が静止側、内側軌道輪22が回転側である場合には、この構成が望ましい。
さらに、この実施形態では、シールリング40を、外側軌道輪21又は内側軌道輪22のいずれかに対して微小間隙をもって対向するようにしたが、これを、外側軌道輪21及び内側軌道輪22の両方に接するようにしてもよい。
また、シールリング40以外にフィルタ41を設けることも可能である。フィルタ41は、動力伝達機構Tと転がり軸受20との間に位置する相互間のオイルの流通路に設けられていればよく、例えば、最も動力伝達機構Tに近い側の転がり軸受20よりも、さらに動力伝達機構T側の空間に、動力伝達機構T側と転がり軸受20側とを隔てるフィルタ41を設けてもよい。このとき、そのフィルタ41は、例えば、遊星キャリア16の端面とスピンドル7(図2参照)の端面との間に入り込んでいる前記軸受押え部品17等に固定することができる。
1 建設機械(鉱山用ダンプトラック)
2 シャーシ
3 駆動輪(タイヤ)
4 走行装置
5 駆動源(走行モータ)
6 シャフト
7 スピンドル
8 リム
9 ホイール
10 遊星歯車機構
20 転がり軸受
21 外輪(外側軌道輪)
21a 軌道面
21b シール溝
21c 凹部
21d 周溝
22 内輪(内側軌道輪)
22a 軌道面
22b 大つば
22c 小つば
23 円すいころ(転動体)
24 保持器
30 回転センサ
31 エンコーダ(パルサリング)
32 センサ部
33 入出力線
34 センサケース
35 リング状部材
40 シールリング
40a 壁部
40b 係止部
40c 内側円筒部
40d 通油孔
40e 突出部
41 フィルタ

Claims (11)

  1. 駆動源(5)と、その駆動源(5)からの回転を駆動輪(3)に伝達する動力伝達機構(T)と、前記駆動輪(3)を車軸に支持する転がり軸受(20)とを同軸線上に備え、前記動力伝達機構(T)と前記転がり軸受(20)とが共通の潤滑用オイルで潤滑される走行装置において、
    前記転がり軸受(20)の前記動力伝達機構(T)に近い側に、その動力伝達機構(T)側から転がり軸受(20)側へのオイルの流通路を備え、その流通路に、オイルに含まれる異物を捕捉するフィルタ(41)を備えたことを特徴とする走行装置。
  2. 前記動力伝達機構(T)は、遊星歯車機構を備えた減速機であることを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
  3. 前記転がり軸受(20)は、外側軌道輪(11)と内側軌道輪(12)との間に転動体(13)が組み込みまれ、前記外側軌道輪(11)と前記内側軌道輪(12)との間に形成された軸受空間の軸方向一端の開口が前記流通路であってその開口がシールリング(40)で覆われており、前記フィルタ(41)は、前記シールリング(40)に形成された通油孔(40d)を覆うように取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行装置。
  4. 前記フィルタ(41)は、前記シールリング(40)にインサート成型されていることを特徴とする請求項3に記載の走行装置。
  5. 前記転がり軸受(20)は軸方向に並列して複数設けられ、前記シールリング(40)は、前記並列する複数の転がり軸受(20)のうち、前記動力伝達機構(T)に最も近い位置に配置される転がり軸受(20)の動力伝達機構(T)側の前記開口を覆っていることを特徴とする請求項3又は4に記載の走行装置。
  6. 前記並列する複数の転がり軸受(20)のうち、前記動力伝達機構(T)から最も離れた位置に配置される転がり軸受(20)の動力伝達機構(T)とは反対側に、回転センサ(30)を設けたことを特徴とする請求項5に記載の走行装置。
  7. 前記外側軌道輪(11)は回転側、前記内側軌道輪(12)は静止側であり、前記動力伝達機構(T)に最も近い位置に配置される転がり軸受(20)の前記外側軌道輪(11)と、前記動力伝達機構(T)から最も離れた位置に配置される転がり軸受(20)の前記外側軌道輪(11)とは共通の部品を加工したものであり、その加工により、前記共通の部品の一方には、前記シールリング(40)を固定するためのシール溝(21b)が、他方には、前記回転センサ(30)のエンコーダ(31)を固定するための周溝(21d)が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の走行装置。
  8. 前記並列する複数の転がり軸受(20)はそれぞれ、転動体(23)として円すいころを用いた円すいころ軸受であり、前記円すいころの小径側端面同士が背面合わせに配置されて、前記内側軌道輪(12)が軸方向に押圧されることにより予圧が付与されていることを特徴とする請求項7に記載の走行装置。
  9. 前記シール溝(21b)及び前記周溝(21d)は、それぞれ、前記外側軌道輪(11)の内径面の大径側端部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の走行装置。
  10. 前記外側軌道輪(11)は回転側、前記内側軌道輪(12)は静止側であり、前記シールリング(40)は前記外側軌道輪(11)に嵌合していることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一つに記載の走行装置。
  11. 前記シールリング(40)は、前記外側軌道輪(11)に係止される係止部(40b)と、その係止部(40b)から内径側に向かって立ち上がる壁部(40a)と、その壁部(40a)から伸びて前記内側軌道輪(12)に微小間隙をおいて対向する内側円筒部(40c)とを備えることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載の走行装置。
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