以下、本発明の蓄圧式燃料噴射装置及び蓄圧式燃料噴射装置の制御装置に関する実施の形態について、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、それぞれの図中において同じ符号が付されているものは、特に説明がない限り同一の構成要素を示しており、適宜説明が省略されている。
[第1の実施の形態]
1.蓄圧式燃料噴射装置の全体的構成
図1は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置10の全体的構成を概略的に示す図である。この蓄圧式燃料噴射装置10は、燃料タンク1内の燃料を高圧ポンプ13へ供給する低圧フィードポンプ11と、低圧フィードポンプ11により供給された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプ13と、高圧ポンプ13により圧送された燃料を蓄積するコモンレール15と、それぞれ図示しない内燃機関の気筒に対応して設けられてコモンレール15から供給された燃料を噴射する複数の燃料噴射弁17と、レール圧制御や噴射制御等を実行するECU50とを備えている。
このうち高圧ポンプ13は、内燃機関の駆動力によって駆動されるものであって、カム14が固定されたカムシャフトは内燃機関のクランクシャフトに連結されている。この高圧ポンプ13は、プランジャ29の下降時に、燃料吸入弁27を介して低圧の燃料が加圧室13aに供給される一方、カム14の回転によってプランジャ29が押し上げられたときに、加圧室13a内の燃料が加圧され、燃料吐出弁28を介して高圧の燃料がコモンレール15へと圧送されるように構成されている。
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた高圧ポンプ13は、二組のプランジャ29及び加圧室13aを備えて構成されているが、プランジャ29及び加圧室13aの組の数は特に限定されない。
また、高圧ポンプ13には、流量制御弁19が備えられている。流量制御弁19は、低圧フィードポンプ11と高圧ポンプ13の加圧室13aとを接続する燃料通路31の途中に配置されており、加圧室13aに供給する低圧の燃料の流量を調節するために備えられている。この流量制御弁19は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて燃料通過面積が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、流量制御弁19に供給する電流値を制御することにより、加圧室13aに供給する燃料の流量が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、流量制御弁19は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
また、流量制御弁19よりもさらに上流側の燃料通路31にはリターン通路37が接続されており、このリターン通路37にはオーバーフローバルブ21が備えられている。このオーバーフローバルブ21によって、流量制御弁19よりも上流側の燃料通路31から余剰の燃料が排出され、燃料タンク1へと戻されるようになっている。
コモンレール15には圧力センサ25及び圧力制御弁23が備えられている。このうち、圧力制御弁23は、コモンレール15内の高圧の燃料を低圧側に排出するためのものであり、排出される燃料はリターン通路38を介して燃料タンク1へと戻されるようになっている。この圧力制御弁23は、ECU50によって通電制御が行われ、電流値に応じて開弁圧力が比例的に変化する電磁比例制御弁が用いられている。すなわち、圧力制御弁23に供給する電流値を制御することにより、保持可能なレール圧の最大値が調節されるようになっている。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、圧力制御弁23は、いわゆるノーマルオープン型の構造を有している。
燃料噴射弁17は、電磁ソレノイド又はピエゾアクチュエータを備えて構成された公知の燃料噴射弁を用いることができる。この燃料噴射弁17は、ECU50の通電制御により、開弁時期や開弁時間等が制御されるようになっている。この燃料噴射弁17において、噴射制御に利用された背圧燃料はリターン通路39を介して燃料タンク1へと戻される。
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10においては、流量制御弁19又は圧力制御弁23を用いて、あるいはこれらの二つの弁を併用して、圧力センサ25によって検出される実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtとなるようにレール圧制御が行われる。流量制御弁19を閉ループ制御する供給量制御モードでレール圧制御を行うか、圧力制御弁23を閉ループ制御する排出量制御モードでレール圧制御を行うか、あるいはこれらの二つの弁をともに閉ループ制御する供給排出同時制御モードでレール圧制御を行うかは、内燃機関の運転状態や燃料温度等に応じてあらかじめ設定されている。
2.圧力制御弁の電流−圧力特性
図2は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた圧力制御弁23の電流−圧力特性を説明するために示す図であり、上限品、中央品、下限品それぞれにおける電流値Ipcvと開弁圧力Ppcvとの関係を示している。電流−圧力特性Lhighが上限品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性L0が中央品の電流−圧力特性を示し、電流−圧力特性Llowが下限品の電流−圧力特性を示している。ノーマルオープン型の圧力制御弁23が用いられているため、電流値Ipcvが大きくなるほど開弁圧力Ppcvが大きくなる。
図2に示すように、上限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも高くなるという特性を有している。逆に、下限品は、同じ電流値Ipcvであれば、開弁圧力Ppcvが中央品の開弁圧力Ppcvよりも低くなるという特性を有している。
図2に示す三つの電流−圧力特性Lhigh,L0,Llowは代表的な例にすぎず、量産される圧力制御弁は、個体差に応じた様々な電流−圧力特性を有している。また、図2においては、上限品及び下限品の電流−圧力特性Lhigh,Llowが、中央品の電流−圧力特性L0に対して同じ傾きを示しながらオフセットした状態となっているが、電流−圧力特性のばらつきはこのような例に限られるものではない。すなわち、上限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも大きくなるとともに、下限品の電流−圧力特性ラインの傾きが中央品の電流−圧力特性ラインの傾きよりも小さくなる場合もある。
量産される圧力制御弁においては中央品の占める割合が多いことから、通常、中央品の電流−圧力特性に基づいて基本特性マップが作製され、ECU50に記憶される。量産される圧力制御弁には上記のような電流−圧力特性のばらつきがあるにもかかわらず、ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時に、基本特性マップを参照して目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを決定するようになっている。そのために、目標開弁圧力Psetと実際の開弁圧力Ppcvとが一致しない状態が生じることになる。
3.ECU(電子制御装置)
図3は、ECU50の構成のうちのレール圧制御に関連する部分を機能的なブロックで表したものである。このECU50は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、目標レール圧演算部51と、制御モード選択部53と、流量制御弁制御部55と、圧力制御弁制御部57とを主たる要素として備えている。具体的に、これらの各部は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものとなっている。
また、ECU50には、RAMやROM等の記憶素子からなる図示しない記憶部、及び、流量制御弁19又は圧力制御弁23への通電を行うための図示しない駆動回路等が備えられている。さらに、ECU50には、圧力センサ25のセンサ信号が入力される他、機関回転数Nやアクセル開度Acc、燃料温度Tfなどの各種の情報が入力されるようになっている。
記憶部には、制御プログラム及び種々の演算マップがあらかじめ記憶されるとともに、上記した各部による演算結果等が書き込まれるようになっている。特に、記憶部には、供給量制御モードでのレール圧制御実行時の圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currの算出に用いられる基本特性マップM1があらかじめ記憶されている。この基本特性マップM1は、上述したように、中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性をデータ化したものである。
目標レール圧演算部51は、機関回転数Nと目標燃料噴射量Qとに基づき、図示しないレール圧マップを参照して目標レール圧Ptgtを算出する。目標燃料噴射量Qは、機関回転数N及びアクセル開度Acc等の内燃機関の運転状態に関連する情報に基づき、図示しない噴射量マップを参照して求めることができる。レール圧マップや噴射量マップは従来公知のものであるために、詳細な説明は省略する。
制御モード選択部53は、例えば、図示しない制御モードマップに基づいて、供給量制御モード、排出量制御モード、供給排出同時制御モードの中からレール圧制御を実行するための制御モードを選択する。制御モードマップは、機関回転数N及びアクセル操作量Acc等に例示される内燃機関の運転状態や、燃料温度Tf等に応じて、内燃機関の運転領域を制御モードごとに区分したものである。ただし、制御モードマップは、供給排出同時制御モードの領域を有しないものであってもよい。
流量制御弁制御部55は、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ifmu_currにしたがって流量制御弁19の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を供給量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する一方、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を開ループ制御する。指示電流値Ifmu_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
具体的に、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて目標吐出流量Fpump_tgtを算出するとともに、図示しない制御マップを参照して、流量制御弁19の指示電流値Ifmu_currを求める。
また、流量制御弁制御部55は、流量制御弁19を開ループ制御する場合、機関回転数Nに応じて指示電流値Ifmu_currを決定する。あるいは、流量制御弁19を開ループ制御する場合、流量制御弁19が全開で保持されるように指示電流値Ifmu_currを決定するようにしてもよい。すなわち、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10ではノーマルオープン型の流量制御弁19を用いているために、流量制御弁19を全開で保持する場合、指示電流値Ifmu_currはゼロになる。
圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを演算によって求めるとともに、求められた指示電流値Ipcv_currにしたがって圧力制御弁23の駆動回路に対して通電の指示を出力する。レール圧制御を排出量制御モード又は供給排出同時制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を閉ループ制御する一方、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する。指示電流値Ipcv_currの演算方法は、制御モードによって異なっている。
具体的に、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を閉ループ制御する場合、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づき、図示しない制御マップを参照して、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを求める。
また、圧力制御弁制御部57は、圧力制御弁23を開ループ制御する場合、基本的に、目標レール圧Ptgtに応じて目標開弁圧力Psetを決定し、基本特性マップM1を参照して、目標開弁圧力Psetに応じた指示電流値Ipcv_currを求める。このときの目標開弁圧力Psetは、基本的に、目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0が用いられる。そのため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtよりも著しく高くなる場合には圧力制御弁23が開弁し、異常上昇を生じないようになっている。
制御モードごとに説明するならば、レール圧制御を供給量制御モードで実行する場合、圧力制御弁制御部57は圧力制御弁23を開ループ制御する一方、流量制御弁制御部55は流量制御弁19を閉ループ制御する。供給量制御モードにおいては、基本的に圧力制御弁23は全閉状態とされてコモンレール15から燃料が排出されない一方、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて調節され、レール圧が調節される。ただし、目標レール圧Ptgtが急激に低下する場合等においては、圧力制御弁23を開弁しやすくして実レール圧Pactを速やかに低下させる開弁圧力低下制御が実行されるように構成されている。
また、レール圧制御を排出量制御モードで実行する場合、流量制御弁19が開ループ制御される一方、圧力制御弁23が閉ループ制御される。排出量制御モードにおいては、高圧ポンプ15の吐出流量Fpumpが、目標レール圧Ptgtを達成するために必要な流量以上となる状態で定量化される一方、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいてコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvが調節されて、レール圧が調節される。
また、レール圧制御を供給排出同時制御モードで実行する場合、流量制御弁19及び圧力制御弁23がともに閉ループ制御される。供給排出同時制御モードにおいては、目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの圧力偏差ΔP等に基づいて、高圧ポンプ15の吐出流量Fpump及びコモンレール15からの燃料排出流量Fpcvがともに調節されて、レール圧が調節される。
4.開弁圧力低下制御
ECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中に開弁圧力低下制御を実行可能に構成されている。開弁圧力低下制御は、レール圧を急激に低下させる場合に、減圧応答性を高めるために実行される制御である。
具体的には、供給量制御モードでのレール圧制御の実行時において、ECU50は、基本的に圧力制御弁23を全閉状態で保持するが、レール圧を急激に低下させる必要があるときには、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくすることによって、コモンレール15内の燃料の一部を排出し、レール圧を速やかに低下させるようになっている。
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_on以上になったときに、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(pset0)よりも小さくする第1低下制御を開始する。また、その後においても当該圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off以上となっている場合には、ECU50は、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currを、第1低下制御実行時の指示電流値よりもさらに小さくする第2低下制御を開始する。
以下、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について、図4〜図6に示すタイムチャート図と、図7〜図10に示すフローチャート図とに基づいて説明する。
(1)タイムチャート
図4〜図6は、ECU50によって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すタイムチャート図である。
図4は、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図5は、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。図6は、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の指示電流値Ipcv_curr、実レール圧Pact及び圧力制御弁23の実際の開弁圧力Ppcvの推移を示している。
まず、図4に基づいて、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
上述の通り、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中において、圧力制御弁23の目標開弁圧力Psetは、基本的に目標レール圧Ptgtに所定のオフセット量を加算した基本目標開弁圧力Pset0に設定される。また、圧力制御弁23の指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して求められる指示電流値Ipcv(Pset0)に設定される。
t1の時点で、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されるなどして目標レール圧Ptgtが急激に低下し始めると、目標レール圧Ptgtの変化に伴って基本目標開弁圧力Pset0及び指示電流値Ipcv_currも低下し始める。ただし、供給量制御モード特有の応答遅れの影響により、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが徐々に拡大する(t1〜t2の期間)。
その後、t2の時点において、圧力偏差ΔPが所定の開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。
図4の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されるようになっている。所定量αは、基本目標開弁圧力Pset0と目標レール圧Ptgtとの差分であるオフセット量がキャンセルされる値となっている。すなわち、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御実行中の圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、目標レール圧Ptgtに相当する。そのため、t2の時点以降、第1低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁する。その結果、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt3の時点において、圧力偏差ΔPが所定の解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。この場合、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
以上のように、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
次に、図5に基づいて、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、下限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも小さい値となっている。
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントを開始する。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
その後、タイマ値が待機時間T0に到達する前のt4の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第1低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。このとき、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが小さくなることから、実レール圧Pactの低下速度が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。したがって、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になる時期が、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合に比べて速くなる。この場合においても、タイマ値が待機時間T0に到達する前に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっていることから、第2低下制御は実行されない。
以上のように、下限品の圧力制御弁23が用いられている場合においても、ECU50が第1低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
次に、図6に基づいて、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合の実レール圧Pactの変化について説明する。
圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達するt2の時点までは、実レール圧Pact及び指示電流値Ipcv_currは、中央品の圧力制御弁23が用いられている場合と同じように推移する。ただし、上限品の圧力制御弁23であるため、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvは、基本目標開弁圧力Pset0よりも大きい値となっている。
t2の時点において、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_onに到達すると、第1低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも小さくされる。また、第1低下制御の実行開始と同時にタイマカウントが開始される。このときの指示電流値Ipcv_currは、図4の場合と同様に、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量α小さい値に設定されている。その結果、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Pactを下回るため、圧力制御弁23が開弁し、実レール圧Pactが速やかに低下し始める。
ただし、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合には、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが基本目標開弁圧力Pset0よりも大きいことから、タイマ値が待機時間T0に到達するt5の時点よりも前に、実レール圧Pactが圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvと同等の値にまで低下して、圧力制御弁23が閉じられる。そのために、t5の時点においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_offよりも大きくなっている。
第1低下制御の実行開始から待機時間T0を経過しても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上となっている場合には、第2低下制御が開始され、指示電流値Ipcv_currが、第1低下制御時の指示電流値よりもさらに小さくされる。
図6の例では、指示電流値Ipcv_currは、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)よりも所定量β小さい値に設定されるようになっている。所定量βは、第1低下制御実行時の所定量αよりも大きい値であるため、第2低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currは第1低下制御時の指示電流値よりも小さくなる。所定量βは、例えば所定量αの1.3倍〜1.8倍とすることができるが、この例に限定されるものではない。その結果、t5の時点以降、第2低下制御が実行されることにより、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが実レール圧Ppcvを下回り、圧力制御弁23が開弁するため、実レール圧Pactが再び低下し始める。
その後、t6の時点において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になると、第2低下制御が終了し、指示電流値Ipcv_currが、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)に設定されるようになる。
以上のように、上限品の圧力制御弁23が用いられている場合においては、第1低下制御のみでは実レール圧Pactを速やかに低下させることができない一方、ECU50がさらに第2低下制御を実行することによって、アンダーシュートを生じることなく、減圧応答性を向上することができる。
開始閾値Thre_on及び解除閾値Thre_offの値は、蓄圧式燃料噴射装置10の特性や圧力偏差ΔPの許容範囲等を考慮して最適な値に設定することができる。また、待機時間T0は、第1低下制御による減圧効果が発現するような時間を考慮して最適な値に設定することができるが、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するように待機時間T0を設定することが好ましい。このように待機時間T0を設定することにより、供給量制御モード特有の応答遅れを考慮して圧力制御弁23の電流−圧力特性を見極めることができる。
(2)開弁圧力低下制御の具体例フロー
図7〜図10は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10で実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。以下に説明するように、開弁圧力低下制御は、供給量制御モードにおいて所定の条件が成立したときに割り込みにより実行されるようになっている。
図7のフローチャート図において、ステップS1において、ECU50は、レール圧の制御モードが供給量制御モードであるか否かを判別する。供給量制御モードではなくNoと判定した場合には、開弁圧力低下制御を実行するモードではないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。
供給量制御モードでありYesと判定した場合には、ステップS2に進み、ECU50は、開弁圧力低下制御の実行条件が成立しているか否かを判別する。本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図8に示すフローチャート図に沿って、開弁圧力低下制御の実行条件の成立の判定を行う。すなわち、ECU50は、ステップS21で目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込んだ後、ステップS22で実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上であるか否かを判別することにより、開弁圧力低下制御の実行条件の成立を判定する。
そして、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上である場合には速やかに減圧させる必要があるために、ECU50はYesと判定してステップS23に進み、条件成立のフラグをオンにする。一方、圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_off未満である場合には、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに追従しているために、ECU50はNoと判定してステップS24に進み、条件成立のフラグをオフにする。
図7に戻り、ステップS2でNoと判定した場合には、現段階では開弁圧力低下制御を実行する必要がないためにそのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。一方、ステップS2でYesと判定した場合には、ECU50は、ステップS3に進んで第1低下制御を開始するとともに、ステップS4においてタイマカウントを開始する。
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図9に示すフローチャート図に沿って、第1低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS31において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS32において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS33において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS34において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量αを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。
次いで、ECU50は、ステップS35において、ステップS34で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
図7に戻り、第1低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS5において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS6において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第1低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
一方、ステップS6において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS7に進み、タイマ値が待機時間T0を経過したか否かを判別する。タイマ値が待機時間T0に到達していなければ、ECU50は、ステップS5に戻って第1低下制御を継続する一方、タイマ値が待機時間T0に到達している場合にはステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10において、ECU50は、図10に示すフローチャート図に沿って、第2低下制御を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS41において目標レール圧Ptgtを読み込んだ後、ステップS42において、目標レール圧Ptgtに基づき、圧力制御弁23の基本目標開弁圧力Pset0を求める。次いで、ECU50は、ステップS43において、基本特性マップを参照して、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)を求めた後、ステップS44において、基本目標開弁圧力Pset0に応じた指示電流値Ipcv(Pset0)から所定量βを減算して指示電流値Ipcv_currを求める。上述のとおり、所定量βは第1低下制御実行時の所定量αよりも大きな値となっている。
次いで、ECU50は、ステップS45において、ステップS44で求められた指示電流値Ipcv_currに従って圧力制御弁23の駆動制御を実行する。これにより、圧力制御弁23の開弁圧力Pactが第1低下制御実行時よりもさらに小さくなり、コモンレール15から燃料が排出されて実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づき始める。
図7に戻り、第2低下制御が実行されている間、ECU50は、ステップS9において、目標レール圧Ptgt及び実レール圧Pactを読み込むとともに、ステップS10において圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上であるか否かを判別する。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には、ECU50はYesと判定してステップS9に戻り、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になるまで第2低下制御を継続する。
一方、ステップS10において、圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている場合には、ECU50はNoと判定してステップS11に進む。圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になっている状態で第2低下制御を継続すると、アンダーシュートを生じるおそれがあることから、ECU50はステップS11において開弁圧力低下制御を終了してスタートに戻る。
以上説明したように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50は、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されている。そのため、中央品や下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、第1低下制御によってアンダーシュートを生じることなく実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合には、さらに実行される第2低下制御によって実レール圧Pactを速やかに低下させることができる。このように、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、圧力制御弁23の特性にかかわらず、アンダーシュートを生じさせることなく減圧応答性を向上させることが可能となる。
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、所定の待機時間T0を経過した後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合にのみ第2低下制御を実行開始するように構成されているため、実レール圧Pactを低下させる際に供給量制御モード特有の応答遅れに起因して一時的に圧力偏差ΔPが大きくなる場合であっても、圧力制御弁23の電流−圧力特性を正確に判断して第2低下制御の実行の可否を決定することができる。したがって、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合において第2低下制御が実行されることを防ぎ、アンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になったときに第1低下制御を実行開始するため、開弁圧力低下制御の実行が必要な場合にのみ第1低下制御が実行されるようになり、第1低下制御の実行時に、実レール圧Pactが低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することができる。
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御又は第2低下制御の実行中に圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off未満になったときに開弁圧力低下制御が終了するため、実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtに近づいたときには圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvが通常の設定に復帰するようになり、開弁圧力低下制御が継続されることによるアンダーシュートの発生を防ぐことができる。
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currが目標レール圧Ptgtと基本目標開弁圧力Pset0との差分であるオフセット量をキャンセルするようにされるとともに、第2低下制御実行中においては、指示電流値Ipcv_currがさらに小さい値にされるため、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあってはアンダーシュートを生じることなく、また、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合にあっては確実な減圧を可能にして、減圧応答性を向上させることが可能となる。
また、第1の実施の形態の蓄圧式燃料噴射装置10及びECU50によれば、第1低下制御の実行開始後、目標レール圧Ptgtが低下後の目標レール圧で保持される時期に到達するような待機時間T0の経過後に第2低下制御を実行するか否かを判定するため、供給量制御モード中の応答遅れを考慮して、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23を見極めることができる。したがって、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合においてのみ第2低下制御が実行されるようになり、下限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合に第2低下制御が実行されることによるアンダーシュートの発生を低減することが可能となる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、基本的に第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置と同様の構成を有しているが、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置は、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されている点で、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置とは異なる。
以下、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御について、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御と異なる点を中心に説明する。
図11は、本実施形態に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUによって実行される開弁圧力低下制御について説明するために示すフローチャート図である。
図11に示すステップS1〜ステップS13のうち、ステップS1〜ステップS11は、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置の場合と同様に行うことができる。
一方、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置においては、ECUは、ステップS7においてタイマ値が待機時間T0を経過したと判定したときに、ステップS13においてカウンタAの値を進めた上でステップS8に進み、第2低下制御の実行を開始するようになっている。カウンタAは、第2低下制御の実行回数をカウントするためのものであり、蓄圧式燃料噴射装置が製品として使用されはじめたときから計測が開始される。
ECUは、ステップS2において、開弁圧力低下制御の実行条件が成立していると判定したときには、ステップS12において、カウンタAの値が所定の基準回数Na0未満であるか否かを判定する。カウンタAの値が基準回数Na0未満であればYesと判定し、ECU50はそのままステップS3に進んで第1低下制御を開始する。一方、カウンタAの値が基準回数Na0以上となっていればNoと判定し、ECU50はステップS8に進んで第2低下制御を開始する。
すなわち、第2低下制御の実行回数が所定回数に到達したときには、用いられている圧力制御弁23が上限品に近い電流−圧力特性を有していると判断することができるため、この場合には、第1低下制御を実行しないで、一段階目から第2低下制御が実行されるようになっている。
基準回数Na0は、開弁圧力低下制御の信頼性や、許容範囲を考慮して、最適な値に設定することができる。
第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUによれば、供給量制御モードでのレール圧制御の実行中にレール圧を低下させる場合において、圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvを一旦小さくする第1低下制御を実行するとともに、その後においても圧力偏差ΔPが解除閾値Thre_off以上である場合には圧力制御弁23の開弁圧力Ppcvをさらに小さくする第2低下制御を実行するように構成されているため、第1の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUの場合と同様の効果を得ることができる。
また、第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、第2低下制御の実行回数が所定の基準回数N0以上となった後においては、第1低下制御を実行することなく一段階目から第2低下制御を実行するように構成されているために、上限品に近い特性を有する圧力制御弁23が用いられている場合であっても、一段階目の開弁圧力低下制御によって速やかに実レール圧Pactを低下させることができるようになり、減圧応答性を向上することが可能となる。
[他の実施の形態]
以上説明した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUは、本発明の一態様を示すものであってこの発明を限定するものではなく、それぞれの実施の形態は本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。本発明の蓄圧式燃料噴射装置及びECUに係る実施の形態は、例えば、以下のように変更することができる。
(1)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいて説明した各構成要素や、設定値、設定条件はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、ノーマルオープン型の圧力制御弁を用いているが、いわゆるノーマルクローズ型の圧力制御弁を用いた場合であっても、本発明を適用することが可能である。この場合、圧力制御弁の開弁圧力を小さくするには、指示電流値を大きくするように制御が行われる。
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、基本特性マップを中央品の圧力制御弁の電流−圧力特性に基づいて作製しているが、中央品に限定されるものではなく、特定の基準品であればよい。
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置においては、レール圧の制御モードとして、供給量制御モード、排出量制御モード及び供給排出制御モードのうちのいずれかを選択する例、あるいは、供給量制御モード及び排出量制御モードのうちのいずれかを選択する例を述べているが、少なくとも供給量制御モードが実行されるように構成されているものであれば、本発明を適用することが可能である。
(2)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御の実行条件として、実レール圧Pactから目標レール圧Ptgtを減算した圧力偏差ΔPが開始閾値Thre_on以上になっていることを判定しているが、実行条件はこのような例に限定されない。図12は、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。また、図13は、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される実行条件成立判定のフローチャート図を示している。
図12に示すように、変形例1に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS51で目標レール圧Ptgt(n)を読み込むとともに、ステップS52において前回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n-1)から今回読み込んだ目標レール圧Ptgt(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreV_on以上であるか否かを判定する。変化量が開始閾値ThreV_on未満でありNoと判定した場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が緩やかであり、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS56に進んで、条件成立フラグをオフにする。
一方、変化量が開始閾値ThreV_on以上でありYesと判定した場合には、ECUは、ステップS53に進んで、カウンタBの値を進めた後、ステップS54において、カウンタBの値が所定の閾値Nb0に到達しているか否かを判別する。カウンタBの値が閾値Nb0未満であればNoと判定してステップS51に戻る一方、カウンタBの値が閾値Nb0に到達している場合には、目標レール圧Ptgtの低下速度が速く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS55に進んで、条件成立フラグをオンにする。
また、図13に示すように、変形例2に係る蓄圧式燃料噴射装置において、ECUは、ステップS61で目標燃料噴射量Q(n)を読み込むとともに、ステップS62において、目標燃料噴射量Q(n)=0、かつ、前回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n-1)から今回読み込んだ目標燃料噴射量Q(n)を減算した変化量が所定の開始閾値ThreQ_on以上となっているか否かを判定する。これらの条件を満たしていない場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが低く、開弁圧力低下制御を実行する必要がないために、ECUは、ステップS64に進んで、条件成立フラグをオフにする。
一方、これらの条件を満たしている場合には、目標レール圧Ptgtが急激に低下するおそれが高く、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる可能性が極めて高いために、ECUは、ステップS63に進んで、条件成立フラグをオンにする。
変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、推定により実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの圧力偏差ΔPが大きくなる状況を選んで、開弁圧力低下制御を開始することが可能になる。また、変形例1及び2に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される開弁圧力低下制御によれば、第1低下制御の実行時に、実レール圧が低下しすぎてアンダーシュートを生じるおそれを低減することが可能になる。変形例1及び2に例示した方法以外にも、例えば、所定の単位時間当たりの目標レール圧Ptgtの低下量が開始閾値以上となったときや、アクセル操作量Accが急激にゼロに戻されたときに開弁圧力低下制御を開始するようにしてもよい。
(3)上述した第1及び第2の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置及びECUにおいては、開弁圧力低下制御実行時に、基本目標開弁圧力Pset0に基づき、基本特性マップM1を参照して得られる指示電流値Ipcv(Pset0)を基準として、第1低下制御時及び第2低下制御時の指示電流値Ipcv_currをそれぞれ算出するようにしているが、開弁圧力低下制御実行時の指示電流値Ipcv_currの演算方法はそのような例に限定されない。
図14は、変形例3に係る蓄圧式燃料噴射装置において実行される指示電流値Ipcv_currの演算方法について説明するためのブロック図を示している。変形例3にかかる蓄圧式燃料噴射装置においては、開弁圧力低下制御を実行しない期間と、第1低下制御実行中と、第2低下制御実行中とによってそれぞれ異なるオフセット分が目標レール圧Ptgtに加算されて、圧力制御弁の目標開弁圧力Psetが設定される。指示電流値Ipcv_currは、設定された目標開弁圧力Psetに基づき、基本特性マップM1を参照して決定される。このように指示電流値Ipcv_currを決定することによっても、第1低下制御実行時の圧力制御弁の開弁圧力Ppcvを通常制御時よりも小さくすることができるとともに、第2低下制御実行時の開弁圧力Ppcvを第1低下制御実行時の開弁圧力Ppcvよりも小さくすることができる。