JP2012197497A - 靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板 - Google Patents

靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】海洋構造物などの素材として要求される強度を維持しつつ、靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板を提供する。
【解決手段】C、Si、Mn、N、Tiを含有し、更に、Nb、Ni、およびCuよりなる群から選ばれる2種以上含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる厚鋼板であって、化学成分は、下記式(1)〜式(3)を満足し、金属組織は、マルテンサイトと残留オーステナイトとの混合物の平均円相当直径が2.0μm以下(0μmを含まない)で、且つ残留オーステナイトの体積分率が0.5〜4.0%である厚鋼板。下記式中、[ ]は厚鋼板中の各元素の含有量(質量%)を示す。
2.0≦[Ti]/[N]≦5.0 ・・・(1)
5.3≦7×[Si]+2×[Ni]+[Mn]+12×(5×[Nb]+3×[Ti])≦7.1 ・・・(2)
65≦39×[Mn]+17×[Ni]+10×[Cu]≦78 ・・・(3)
【選択図】なし

Description

本発明は、海洋構造物などに用いられる厚鋼板に関するものであり、特に靱性に優れており、しかも歪時効による靱性劣化の少ない厚鋼板に関するものである。
近年、海洋構造物は、大型化および建設地の寒冷地化が進んでおり、海洋構造物の素材には、従来にも増して更なる高強度化、高靱性化が求められている。特に、海洋構造物は氷点下となる海域においても建設されるため、低温靱性の向上が求められている。
低温靱性を改善する技術としては特許文献1、2が知られている。特許文献1には、Niを2.0〜4.5%の範囲で含有させたNi添加鋼について、バンド状のNi偏析を低減すると共に、焼き入れ組織を生成させ、この組織を微細化し、且つ組織の偏平化を抑制することによって、母材の低温靱性(具体的には、−70℃における靱性)を改善する技術が提案されている。特許文献2には、炭素当量Ceqを0.50〜0.68%とし、体積率で90%以上のベイニティックフェライト相を含む組織とすることによって、引張強さが900MPa以上の鋼板の低温靱性(具体的には、−40℃における靱性)を改善する技術が提案されている。
ところで、鋼板に塑性変形を加えると機械的特性(特に、靱性)が劣化することが一般に知られている。この劣化は歪時効によるものであり、塑性変形により歪が付与されると、鋼板に固溶しているC元素やN元素が炭窒化物として析出し、析出した炭窒化物が歪付与により導入された転位を固定するため鋼板が硬化することによって靱性が劣化する。そこで鋼板には、歪時効による靱性劣化を生じさせない特性(本明細書では、この特性を歪時効特性と呼ぶ)が良好であることも要求される。
本出願人は、歪時効による靱性劣化の少ない鋼板を特許文献3に開示している。特許文献3には、結晶方位差が15°以上の結晶粒の平均粒径と鋼板に含まれるC、N、Ti、Nb量の関係を適切に制御することによって、結晶粒界に固溶CやNを固定し、歪時効による靱性劣化を低減する技術を提案している。
なお、鋼中に固溶しているCやNを炭窒化物として固定し、高純度化した鋼として、IF(Interstitial Free)鋼が知られている(非特許文献1)。IF鋼では、TiやNbを添加し、固溶C、Nを、予めTiやNbの炭窒化物として析出させることによって固溶C、Nを低減している。しかしTiやNbを多量に添加すると粗大な炭窒化物が析出し、靱性が劣化することがある。また、IF鋼では、C含有量を最小限に抑えているため、厚鋼板に適用すると強度不足となり、引張強度で300MPaレベルしか得られない。
特許第4538095号公報 特開2005−281807号公報 特許3848091号公報
日本金属学会会報、第30巻、第8号(1991)
上記特許文献1、2に提案されている技術では、鋼板の低温靱性を改善できるが、歪時効特性については全く考慮されていない。一方、本出願人が先に提案した上記特許文献3の技術によって、歪時効特性を改善でき、しかも靱性についてもある程度改善できている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記特許文献3とは異なる方法で海洋構造物などの素材として要求される強度(具体的には、450〜550MPa)を維持しつつ、靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板を提供することにある。また、本発明の他の目的は、こうした厚鋼板を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る厚鋼板とは、C:0.02〜0.06%(質量%の意味。以下同じ)、Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:1.15〜1.6%、N:0.002〜0.009%、Ti:0.005〜0.03%を含有し、更に、Nb:0.03%以下(0%を含まない)、Ni:1%以下(0%を含まない)、およびCu:0.35%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる2種以上含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる厚鋼板である。そして、この厚鋼板は、化学成分が下記式(1)〜式(3)を満足し、金属組織は、マルテンサイトと残留オーステナイトとの混合物の平均円相当直径が2.0μm以下(0μmを含まない)で、且つ残留オーステナイトの体積分率が0.5〜4.0%で点に要旨を有している。下記式中、[ ]は厚鋼板中の各元素の含有量(質量%)を示す。
2.0≦[Ti]/[N]≦5.0 ・・・(1)
5.3≦7×[Si]+2×[Ni]+[Mn]+12×(5×[Nb]+3×[Ti])≦7.1 ・・・(2)
65≦39×[Mn]+17×[Ni]+10×[Cu]≦78 ・・・(3)
なお、本明細書では、残留オーステナイトを「残留γ」と表記することがある。また、マルテンサイトと残留オーステナイトとの混合物を「M−A変態生成物」ということがある。
本発明の厚鋼板は、固溶N量が0.0020%以下(0%を含む)であることが好ましい。厚鋼板の厚さは、例えば、75〜100mmであってもよい。
本発明の厚鋼板は、上記成分組成を満足する鋼を熱間圧延し、700〜750℃の温度範囲で仕上圧延を行い、圧延終了後、冷却停止温度を350〜450℃として冷却を行うと共に、700〜450℃の温度範囲における平均冷却速度を3.0〜6.0℃/秒とすることにより製造できる。上記鋼は、1000〜1200℃に加熱してから熱間圧延を行うことが好ましい。
本発明によれば、厚鋼板の成分組成を適切に制御し、且つ金属組織のうちM−A変態生成物を微細化すると共に、残留γ量を適切な範囲に制御することによって、厚鋼板の靱性および歪時効特性を改善できる。
本発明者らは、海洋構造物の素材として要求される強度を維持したうえで、靱性および歪時効特性を改善するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、歪時効による靱性劣化を低減するために厚鋼板中の固溶N量を低減するには、厚鋼板に含まれるTi量とN量の比を所定の範囲に制御すると共に、金属組織中に微細なM−A変態生成物を生成させ、且つ残留γを所定量生成させればよいこと、上記M−A変態生成物を微細化することによって靱性も改善できること、微細なM−A変態生成物を生成させるには、厚鋼板に含まれる化学成分が上記式(2)を満足するように調整すればよいこと、残留γを所定量生成させるには、厚鋼板に含まれる化学成分が上記式(3)を満足するように調整すればよいこと、を見出し、本発明を完成した。
まず、本発明を完成するに至った経緯について説明する。本発明者らが厚鋼板の歪時効特性を改善するために検討したところ、厚鋼板中の固溶N量を低減するには、厚鋼板に含まれるTi量とN量を別々に制御するだけでは不充分であり、Ti量とN量の比([Ti]/[N])を適切に制御することが有効であることが明らかになった[上記式(1)を参照]。しかし、Ti量とN量の比を適切に制御しても厚鋼板中の固溶N量を完全に無くすことはできなかった。そこで本発明者らは、厚鋼板中に残存する固溶Nを固定することによって歪時効特性を更に改善できないか検討を重ねた。その結果、厚鋼板の金属組織中に、マルテンサイトと残留γとの混合物(M−A変態生成物)を生成させれば良いことが判明した。マルテンサイトは、硬質な組織であるため、厚鋼板の高強度化に寄与し、残留γは、厚鋼板中の固溶Nを固定し、歪時効特性を改善するのに寄与する。
ところがM−A変態生成物は母相に比べて硬いため、へき開破壊の起点となり、靱性を劣化させることが知られている。そこで本発明者らは、靱性を劣化させることなく歪時効特性を改善するために検討を重ねた。その結果、母相に対してM−A変態生成物を微細分散させれば、へき開破壊が発生し難くなり、靱性が劣化し難くなることが明らかになった。そしてM−A変態生成物を微細分散させるには、厚鋼板の化学成分が上記式(2)を満足するように制御すれば良いことも明らかになった。
また、厚鋼板中の固溶Nを固定するには、残留γを所定量確保する必要がある。しかし残留γは不安定なため、マルテンサイトに容易に変態し易い。従って、M−A変態生成物中の残留γがマルテンサイト変態すると、島状マルテンサイトが生成する。島状マルテンサイトは残留γより硬質なため、靱性を劣化させる原因となる。そこで残留γを安定化させ、マルテンサイト変態するのを抑制して残留γを所定量確保するために検討したところ、厚鋼板の化学成分が上記式(3)を満足するように制御すれば良いことも明らかになった。
以上の通り、本発明の厚鋼板は、Ti量とN量の含有バランスを制御したうえで、M−A変態生成物を微細分散させ、更に残留γを所定量生成させているところに特徴がある。以下、本発明の厚鋼板について詳述する。
[式(1)について]
本発明の厚鋼板は、Ti量[Ti]とN量[N]の比([Ti]/[N])が2.0〜5.0である。Ti量とN量の含有バランスを適切に制御することによって、厚鋼板中の固溶N量を低減でき、歪時効特性を改善できる。
[Ti]/[N]の値が2.0を下回ると、固溶N量が増大するため歪時効特性が劣化する。従って[Ti]/[N]の値は2.0以上、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.3以上である。しかし、[Ti]/[N]の値が5.0を超えるとTi量が過剰になるため、粗大なTi系炭窒化物が生成し、靱性が低下する。従って[Ti]/[N]の値は5.0以下、好ましくは4.85以下、より好ましくは4.5以下である。
本発明の厚鋼板に含まれる固溶N量は、0.0020%以下であることが好ましい。固溶N量を低減することによって歪時効特性を一層改善できる。固溶N量は、より好ましくは0.0018%以下、更に好ましくは0.0015%以下、特に好ましくは0.0010%以下、最も好ましくは0%である。
上記厚鋼板に含まれる固溶N量は、電解抽出法によって測定できる。電解抽出は、電解液として、例えば、メタノール100cc中にアセチルアセトン10ccとテトラメチルアンモニウムクロリド1gを含有する溶液を用い、例えば、常温で20mA/cm2以下の電流で行えばよい。電解抽出後の電解液をポアサイズ0.1μmのフィルターを用いてろ過し、フィルターに残った抽出残渣中のN量を誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)発光分析によって定量する。厚鋼板に含まれる全N量から、上記抽出残渣中のN量を引いた値を固溶N量とすればよい。
[M−A変態生成物の平均円相当直径について]
本発明の厚鋼板は、金属組織に含まれるM−A変態生成物の平均円相当直径が2.0μm以下である。M−A変態生成物の平均円相当直径が2.0μmを超えると破壊起点となり、靱性が劣化する。従ってM−A変態生成物の平均円相当直径は2.0μm以下、好ましくは1.8μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。M−A変態生成物の平均円相当直径は靱性を高める観点からできるだけ小さい方が好ましいが、下限値は、通常0.3μm程度である。
M−A変態生成物の円相当直径は、次の手順で測定できる。厚鋼板を圧延方向に沿って切断し、この切断面のt/4(tは板厚)位置をレペラー腐食した後、光学顕微鏡写真を撮影する。観察倍率は例えば1000倍、観察視野は例えば50μm×50μm、視野数nは例えば10視野とすればよい。撮影した写真を画像解析装置(Media Cybernetics製「Image-Pro Plus」)で処理することによって、M−A変態生成物の個々の円相当直径を算出し、その算術平均(相加平均)を平均円相当直径とする。
M−A変態生成物の合計面積率は、金属組織に対し、例えば、5%以下であることが好ましい。
[式(2)について]
本発明では、上記M−A変態生成物の平均円相当直径を2.0μm以下に制御するために、厚鋼板に含まれる化学成分に基づいて求められる下記式(2)’の値(以下、X1値ということがある)を5.3〜7.1の範囲に調整する。
X1=7×[Si]+2×[Ni]+[Mn]+12×(5×[Nb]+3×[Ti]) ・・・(2)’
上記X1値は、M−A変態生成物の生成量およびその形態を制御するために規定した値である。即ち、式(2)’中、Si、Ni、Mnは、M−A変態生成物の生成量を増加させるのに作用する元素である。一方、NbとTiは、金属組織(マトリックス)を微細化するのに作用する元素であり、マトリックスを微細化することによってM−A変態生成物を微細化できる。なお、各元素の係数は種々の実験を繰り返すことによって決定した。
上記X1の値を変化させた厚鋼板を種々製造しそれらの物性を調べたところ、X1値を5.3〜7.1の範囲に調整すれば、厚鋼板の靱性および歪時効特性を改善できることが明らかとなった。即ち、上記X1値が7.1を超えると、M−A変態生成物量が過剰になり、粗大なM−A変態生成物が生成するため靱性が劣化する。従って上記X1値は7.1以下、好ましくは6.8以下、より好ましくは6.5以下である。しかし、上記X1値が5.3を下回るとM−A変態生成物量が少なくなり過ぎるためNを固定できず、固溶N量が増大して歪時効特性が劣化する。従って上記X1値は5.3以上、好ましくは5.5以上、より好ましくは5.6以上、更に好ましくは5.8以上である。
[残留γの体積分率について]
本発明の厚鋼板は、金属組織に含まれる残留γの体積分率が0.5〜4.0%である。残留γの体積分率が0.5%未満では、残留γ量が不足するため固溶Nを固定できず、固溶N量が増大するため歪時効特性を改善できない。従って残留γの体積分率は、0.5%以上、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.7%以上、更に好ましくは0.8%以上である。しかし残留γの体積分率が4.0%を超えると粗大なM−A変態生成物もあわせて生じるため靱性が劣化する。従って残留γの体積分率は、4.0%以下、好ましくは3.5%以下、より好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.8%以下である。
上記残留γの体積分率は、次の手順で測定できる。鋼板のt/4(tは板厚)位置から得られた試験片を鏡面研磨し、X線回折によってリードベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比を求める。求めたピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留γの体積分率を求める。
[式(3)について]
本発明では、上記残留γの体積分率を0.5〜4.0%の範囲に制御するために、厚鋼板に含まれる化学成分に基づいて求められる下記式(3)’の値(以下、X2値ということがある)を65〜78の範囲に調整する。
X2=39×[Mn]+17×[Ni]+10×[Cu] ・・・(3)’
上記X2値は、金属組織に占める残留γ量を制御するために規定した値である。即ち、式(3)’中、Mn、Ni、Cuは、いずれもオーステナイトを安定化させるのに作用する元素であり、これらの含有量を適切に制御することによってオーステナイトがマルテンサイト変態するのを抑制でき、残留γの残存量を確保できる。そして、生成した残留γに鋼中の固溶Nが固定されることによって歪時効特性を改善できる。なお、各元素の係数は種々の実験を繰り返すことによって決定した。
上記X2の値を変化させた厚鋼板を種々製造しそれらの物性を調べたところ、X2値を65〜78の範囲に調整すれば、厚鋼板の靱性を劣化させることなく、歪時効特性を改善できることが明らかとなった。即ち、上記X2値が78を超えると、元素の添加量が多くなるため、固溶硬化により強度が高くなり過ぎ、靱性が劣化する。従って上記X2値は78以下、好ましくは75以下、より好ましくは73以下である。しかし、上記X2値が65を下回ると残留γが不安定となり、マルテンサイト変態するのを抑制することができないため残留γ量が減少する。残留γ量が減少すると、固溶Nを固定できないため、歪時効特性が劣化する。従って上記X2値は65以上、好ましくは67以上、より好ましくは70以上である。
本発明に係る厚鋼板の母相組織(主体組織)は特に限定されず、例えば、フェライトやベイナイト、またはこれらの混合組織であればよい。
以上の通り、厚鋼板の靱性および歪時効特性を改善するには、Ti量とN量の含有バランスを最適化し、また金属組織のうちM−A変態生成物の平均円相当直径を所定値以下とすると共に、残留γの残存量を所定の範囲に制御することが重要であるが、厚鋼板の成分組成も適切に制御する必要がある。
次に、本発明の厚鋼板の成分組成について説明する。
[C:0.02〜0.06%]
Cは、厚鋼板の強度を確保するために欠くことのできない元素である。従ってC量は0.02%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.04%以上である。しかし、C量が過剰になるとM−A変態生成物が粗大化して靱性が劣化する。またC量が過剰になると残留γを殆ど含まない硬質な島状マルテンサイトが多く生成するため、強度が高くなり過ぎて靱性が劣化する。さらに、固溶C量が増加するため歪時効特性が悪化する。従ってC量は0.06%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.045%以下である。
[Si:0.5%以下(0%を含まない)]
Siは、厚鋼板の強度を確保し、且つM−A変態生成物を生成させるために有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Siは0.01%以上含有させることが好ましい。Si量は、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.2%以上である。しかし、Si量が過剰になると残留γを殆ど含まない硬質な島状マルテンサイトが多く生成して靱性の劣化を招くことになる。従ってSi量は0.5%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.35%以下である。
[Mn:1.15〜1.6%]
Mnは、焼入れ性を向上させて厚鋼板の強度を確保ために必要な元素である。従ってMn量は1.15%以上、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.3%以上である。しかしMn量が過剰になると残留γが多く生成し、靱性および歪時効特性が劣化する。従ってMn量は1.6%以下、好ましくは1.55%以下、より好ましくは1.5%以下である。
[N:0.002〜0.009%]
Nは、Tiと結合することにより微細な窒化物を形成し、鋼中の固溶Nを固定化する作用を有する元素である。また、微細な窒化物には、溶接の際にオーステナイト粒の粗大化を抑制し、溶接熱影響部(HAZ)の靱性を向上させる作用も期待できる。従ってN量は0.002%以上、好ましくは0.0030%以上、より好ましくは0.0040%以上である。しかしN量が過剰になると固溶N量が増大し、歪時効特性が劣化する。また粗大なTiNが生成すると、靱性も劣化することがある。従ってN量は0.009%以下、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.0060%以下である。
[Ti:0.005〜0.03%]
Tiは、Nと結合して微細な窒化物を形成し、Nを固定する作用を有している元素である。また、微細な窒化物は、HAZ靱性を向上させるのにも作用する。従ってTi量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.015%以上である。しかしTi量が過剰になると残留γが多く生成し、靱性および歪時効特性が劣化する。従ってTi量は0.03%以下、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.02%以下である。
本発明の厚鋼板は、上記各成分を必須成分として含有し、更にNb、Ni、およびCuよりなる群から選ばれる2種以上の元素を含有している必要がある。Nb、Ni、およびCuは、いずれも焼入れ性を高めて厚鋼板の強度を高める元素であり、1種のみの添加では、M−A変態生成物が粗大化したり、残留γが生成しにくくなるため、靱性または歪時効靱性のうち少なくとも一方の特性が劣化する。
[Nb:0.03%以下(0%を含まない)]
Nbは、ベイナイト変態を生じやすくさせ、しかも微細なM−A変態生成物を増加させる作用も有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Nb量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.013%以上、更に好ましくは0.015%以上である。しかしNbを過剰に含有すると、M−A変態生成物が増加し過ぎて粗大化し、靱性および歪時効特性が劣化する。また、粗大なNb炭窒化物が析出することによっても靱性および歪時効特性が劣化する。従ってNb量は0.03%以下、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下である。
[Ni:1%以下(0%を含まない)]
Niは、マルテンサイト変態を生じ難くして所望量の残留γを残存させる作用を有している元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Ni量は0.2%以上含有することが好ましい。Ni量は、より好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上である。しかし、Niを過剰に含有すると、M−A変態生成物が増加して粗大化し、また残留γも多く生成するため、靱性が劣化する。従ってNi量は1%以下、好ましくは0.90%以下、より好ましくは0.8%以下である。
[Cu:0.35%以下(0%を含まない)]
Cuは、マルテンサイト変態を生じ難くして所望量の残留γを残存させる作用を有している元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Cu量は0.05%以上含有することが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.2%以上である。しかし強化元素であるCuを過剰に含有すると、材料強度が高くなり過ぎるため、靱性が劣化する。従ってCu量は0.35%以下、好ましくは0.34%以下、更に好ましくは0.33%以下である。
本発明に係る厚鋼板の成分組成は上記の通りであり、残部成分は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって混入する微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)が許容される。
本発明は厚鋼板に関するものであり、該分野において厚鋼板とは、JISで定義されるように、一般に板厚が3.0mm以上であるものを指す。本発明の厚鋼板は、特に板厚が75〜100mmであっても靱性および歪時効特性に優れたものとなる。例えば、上記特許文献3では、粗圧延時の累積圧下率や仕上圧延時の累積相当塑性歪量を制御することによって、結晶粒の平均粒径を調整している。しかし、板厚が75〜100mm程度の極厚鋼板においては、圧延条件による結晶粒径の制御は非常に困難である。
本発明の厚鋼板は、海洋構造物の素材として好適に用いることができる他、圧力容器やタンクの素材としても用いることができる。
本発明の厚鋼板を製造するに当たっては、常法に従って溶製して得られた上記成分組成を満たす鋼を、例えば1000〜1200℃に加熱してから熱間圧延し、700〜750℃の温度範囲で仕上圧延を行い、圧延終了後、冷却停止温度を350〜450℃として冷却を行うと共に、700〜450℃の温度範囲における平均冷却速度を3.0〜6.0℃/秒とすればよい。この方法における各条件の範囲設定理由は次の通りである。
上記成分組成を満たす鋼(スラブ)は常法に従って溶製して作製すればよい。但し、鋼中に粗大なTiNが生成していると靱性が劣化することがあるため、例えば、1500〜1100℃の温度範囲における平均冷却速度を0.1〜2.0℃/秒として冷却を行い、凝固時の冷却速度を高めて粗大なTiNの生成を抑制することが好ましい。
上記成分組成を満たす鋼(スラブ)は、通常の温度範囲で加熱してから熱間圧延すればよく、その温度範囲は特に限定されないが、例えば、1000〜1200℃とすることが好ましい。加熱温度を1000〜1200℃とすることによって、鋼中にTiNを充分に生成させることができるため、鋼中の固溶N量を0.0020%以下に低減できる。その結果、歪時効特性を一段と改善できる。加熱温度は、好ましくは1050℃以上であり、好ましくは1150℃以下である。
加熱した上記鋼は、仕上圧延温度を700〜750℃として熱間圧延を行う必要がある。この温度範囲で仕上圧延を行うことによって、金属組織を微細化でき、これに伴ってM−A変態生成物を微細化できる。その結果、靱性を改善できる。また、仕上圧延温度が700℃を下回ると圧延負荷が大きくなるため、仕上圧延時に割れが発生しやすくなる。従って仕上圧延温度は700℃以上、好ましくは710℃以上とする。一方、仕上圧延温度は好ましくは740℃以下、より好ましくは730℃以下である。
圧延終了後は、冷却停止温度を350〜450℃として冷却を行う必要がある。冷却停止温度が450℃を超えると、セメンタイトが多量に析出するため、残留γの残存量が減少し、歪時効特性を改善できない。従って冷却停止温度は450℃以下、好ましくは440℃以下、より好ましくは430℃以下である。しかし冷却停止温度が350℃を下回ると、マルテンサイト変態が生じるため、残留γの残存量が減少し、歪時効特性を改善できない。従って冷却停止温度は350℃以上、好ましくは360℃以上、より好ましくは370℃以上とする。
圧延終了後の冷却は、700〜450℃の温度範囲における平均冷却速度を3.0〜6.0℃/秒とする必要がある。この温度範囲における平均冷却速度が3.0℃/秒を下回るとM−A変態生成物量が減少するため残留γの残存量が少なくなり、歪時効特性が劣化する。従って平均冷却速度は3.0℃/秒以上、好ましくは3.2℃/秒以上、より好ましくは3.4℃/秒以上である。しかし平均冷却速度が6.0℃/秒を超えるとマルテンサイト変態が生じやすくなるため残留γの残存量が少なくなり、歪時効特性が劣化する。従って平均冷却速度は6.0℃/秒以下、好ましくは5.5℃/秒以下、より好ましくは5.0℃/秒以下である。
このようにして得られた厚鋼板は、靱性に優れており、しかも歪時効による靱性劣化が低減されている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成(残部は、鉄および不可避不純物)を満足する鋼を溶製し、1500〜1100℃の温度範囲における平均冷却速度を約0.3℃/秒として冷却してスラブを得た。得られたスラブ(鋼)を、下記表2または表3に示す温度に加熱し、熱間圧延を行なった。仕上圧延温度を下記表2または表3に示す。圧延終了後、下記表2または表3に示す冷却停止温度まで冷却を行い、下記表2または表3に示す厚みの鋼板を製造した。
下記表1には、表1に示した成分組成に基づいて算出した上記式(1)の中辺の値([Ti]/[N])、上記式(2)の中辺の値(X1値)、上記式(3)の中辺の値(X2値)を夫々示す。また、下記表2または表3には、700〜450℃の温度範囲における平均冷却速度を示す。
得られた鋼板の金属組織を次の手順で観察し、M−A変態生成物の平均円相当直径および残留γの体積分率を算出した。
[M−A変態生成物の平均円相当直径の算出]
得られた鋼板を圧延方向に沿って切断し、切断面のt/4(tは板厚)位置をレペラー腐食した後、光学顕微鏡写真を撮影する。観察倍率は1000倍、観察視野は50μm×50μm、観察視野数は10とした。撮影した写真を画像解析装置(Media Cybernetics製「Image-Pro Plus」)で処理することによって、観察視野内に認められるM−A変態生成物の個々の円相当直径を算出し、その算術平均(相加平均)を算出した。算出したM−A変態生成物の平均円相当直径を下記表2または表3に示す。
[残留γの体積分率の算出]
得られた鋼板のt/4(tは板厚)位置から試験片を切り出し、これを鏡面研磨し、X線回折によるリードベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留γの体積分率を算出した。X線回折装置としては理学電気製の「RAD−RU300」を用い、ターゲットとしてはCoを用い、ターゲット出力は40kV、200mAとしてX線回折を行った。算出した残留γの体積分率を下記表2または表3に示す。
なお、下記表2、表3には、鋼板の母相組織(主体組織)を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。下記表2、表3において、αはフェライトが80面積%以上、Bはベイナイトが80面積%以上、α+Bはフェライトとベイナイトの混合組織を意味している。
次に、得られた鋼板に含まれる固溶N量を次の手順で測定した。
[固溶N量の測定]
得られた鋼板に含まれる固溶N量は、電解抽出法によって測定した。電解抽出は、電解液として、メタノール100cc中にアセチルアセトン10ccとテトラメチルアンモニウムクロリド1gを含有する溶液を用い、常温で10mA/cm2の電流で行った。電解抽出後の電解液をポアサイズ0.1μmのフィルターを用いてろ過し、フィルターに残った抽出残渣中のN量を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によって定量した。厚鋼板に含まれる全N量から、上記抽出残渣中のN量を引いた値を固溶N量とした。測定結果を下記表2または表3に示す。
次に、得られた鋼板の引張強度、靱性、歪時効特性を評価した。
[引張強度の評価]
得られた鋼板のt/4(tは板厚)位置から、試験片の長手方向が鋼板の板幅方向(C方向)となるようにJIS 4号試験片を採取した。得られた試験片を用いて引張試験を行い、引張強度を測定した。測定結果を下記表2または表3に示す。本実施例では、引張強度が450〜550MPaの範囲のものを高強度であると評価する(発明例)。
[靱性の評価]
得られた鋼板のt/4(tは板厚)位置から、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向(L方向)となるようにJIS Z2242に規定されているVノッチ標準試験片を採取した。得られた試験片を用いて種々の温度でシャルピー衝撃試験(衝撃刃半径は2mm)を行い、破面の脆性破面率が50%となる温度を破面遷移温度(vTrs)として測定した。測定結果を下記表2または表3に示す。本実施例では、vTrsが−85℃以下のものを靱性に優れている(発明例)と評価する。
[歪時効特性の評価]
得られた鋼板に8%の歪を付与した後、250℃で1時間の時効処理を施した。その後、上記靱性の評価と同じ条件で試験片を採取した。得られた試験片を用いて種々の温度でシャルピー衝撃試験を行い、vTrsを測定した。測定結果を下記表2または表3に示す。本実施例では、vTrsが−70℃以下のものを歪時効特性に優れている(発明例)と評価する。
下記表2または表3から次のように考察できる。No.1〜18は、本発明で規定する要件を満足している例であり、引張強度が450〜550MPaで、且つ靱性および歪時効特性に優れている。
一方、No.19〜41は、本発明で規定する何れかの要件を満足していない例である。詳細には、No.19、24、28は、仕上圧延温度が高過ぎるため、M−A変態生成物が粗大化し、靱性が劣化している。No.20、23、30は、平均冷却速度が大き過ぎるため、残留γの残存量が少なくなり、歪時効特性が劣化している。No.21と26は、平均冷却速度が小さ過ぎるため、残留γの残存量が少なくなり、歪時効特性が劣化している。No.22、27、31は、冷却停止温度が低過ぎるため、マルテンサイト変態が生じ、残留γの残存量が少なくなっている。従って歪時効特性を改善できていない。No.25と29は、冷却停止温度が高過ぎるため、セメンタイトが多量に生成し、残留γの残存量が少なくなっている。従って歪時効特性を改善できていない。
No.32は、C量が多過ぎる例であり、M−A変態生成物が粗大化しているため、靱性が劣化している。また、残留γを殆ど含まない硬質な島状マルテンサイトが多く生成することによって、引張強度が高くなり過ぎて靱性が劣化している。更に固溶C量が増加したため、歪時効特性も悪化している。No.33は、上記X1値が本発明で規定する範囲を超えている例であり、M−A変態生成物が粗大化しているため、靱性が劣化している。また、TiとNの関係が上記式(1)の下限値を下回っているため、固溶N量が過剰になり、歪時効特性が劣化している。No.34は、C量およびMn量が少な過ぎる例であり、強度が低下している。なお、No.34では、歪時効特性に影響を及ぼすC量が少ないため、歪時効特性は良好になっている。
No.35は、N量が過剰で、TiとNの関係が上記式(1)の下限値を下回っているため、固溶N量が多くなり、歪時効特性が劣化している。No.36は、Mn量およびTi量が過剰で、しかもTiとNの関係が上記式(1)の上限値を超えているため、残留γが多く残存し、靱性および歪時効特性が劣化している。No.37は、Nb量が過剰なため、M−A変態生成物が粗大化し、靱性および歪時効特性が劣化している。No.38は、Ni量が過剰なため、M−A変態生成物が粗大化し、また残留γが多く残存しているため、靱性が劣化している。No.39は、上記X2値が本発明で規定する範囲を超えているため、強度が高くなり過ぎて靱性が劣化している。
No.40は、Nb、Ni、およびCuよりなる元素群のうちNbを単独で含有している例であり、NiまたはCuの少なくとも一方を含有していないため、マルテンサイト変態が生じ易く、残留γ量が少なくなっている。従って靱性および歪時効特性が劣化している。No.41は、Nb、Ni、およびCuよりなる元素群のうちNiを単独で含有している例であり、NbまたはCuの少なくとも一方を含有していないため、M−A変態生成物が粗大化している。従って靱性および歪時効特性が劣化している。
Figure 2012197497
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Claims (5)

  1. C :0.02〜0.06%(質量%の意味。以下同じ)、
    Si:0.5%以下(0%を含まない)、
    Mn:1.15〜1.6%、
    N :0.002〜0.009%、
    Ti:0.005〜0.03%を含有し、
    更に、
    Nb:0.03%以下(0%を含まない)、
    Ni:1%以下(0%を含まない)、および
    Cu:0.35%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる2種以上含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる厚鋼板であって、
    化学成分は、下記式(1)〜式(3)を満足し、
    金属組織は、マルテンサイトと残留オーステナイトとの混合物の平均円相当直径が2.0μm以下(0μmを含まない)で、且つ残留オーステナイトの体積分率が0.5〜4.0%であることを特徴とする靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板。
    2.0≦[Ti]/[N]≦5.0 ・・・(1)
    5.3≦7×[Si]+2×[Ni]+[Mn]+12×(5×[Nb]+3×[Ti])≦7.1 ・・・(2)
    65≦39×[Mn]+17×[Ni]+10×[Cu]≦78 ・・・(3)
    [上記式中、[ ]は厚鋼板中の各元素の含有量(質量%)を示す。]
  2. 固溶N量が0.0020%以下(0%を含む)である請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 厚さが75〜100mmである請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 請求項1に記載の成分組成を満足する鋼を熱間圧延し、700〜750℃の温度範囲で仕上圧延を行い、圧延終了後、冷却停止温度を350〜450℃として冷却を行うと共に、700〜450℃の温度範囲における平均冷却速度を3.0〜6.0℃/秒とすることを特徴とする靱性および歪時効特性に優れた厚鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼を1000〜1200℃に加熱してから前記熱間圧延を行う請求項4に記載の製造方法。
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