JP2012195416A - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光電変換層にZnイオンの高濃度拡散を行い、かつ製造工程および設備コストの簡素化を図る。
【解決手段】少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、Zn源の濃度が0.1M以上、アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、20℃から45℃の所定温度に調整した反応液中に、下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して所定時間維持することにより、光電変換層中にZnイオンを拡散させ、その後、55℃から90℃の所定温度に調整した反応液中に、拡散工程を経た下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して、光電変換層上に高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、Zn源の濃度が0.1M以上、アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、20℃から45℃の所定温度に調整した反応液中に、下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して所定時間維持することにより、光電変換層中にZnイオンを拡散させ、その後、55℃から90℃の所定温度に調整した反応液中に、拡散工程を経た下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して、光電変換層上に高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、太陽電池、CCDセンサ等に用いられる光電変換素子の製造方法に関するものである。
光電変換層とこれに導通する電極とを備えた光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Siまたは多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCISあるいはCIGS系等の薄膜系とが知られている。CI(G)Sは、一般式Cu1−zIn1−xGaxSe2−ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)で表される化合物半導体であり、x=0のときがCIS系、x>0のときがCIGS系である。本明細書では、CISとCIGSとを合わせて「CI(G)S」と表記してある。
CI(G)S系等の従来の薄膜系光電変換素子においては一般に、pn接合を形成するために、CIGS光電変換層上にn型半導体層としてバッファ層が形成されている。バッファ層としては、CdS層あるいはZnS層等が知られている。
バッファ層は化学浴析出法(CBD法:Chemical Bath Deposition)により成膜する方法が好ましいと考えられている。
バッファ層は化学浴析出法(CBD法:Chemical Bath Deposition)により成膜する方法が好ましいと考えられている。
従来、光電変換層上にバッファ層を形成する工程(CBD工程)中に、n型イオン(バッファ層がCdSである場合にはCd2+、バッファ層が亜鉛系である場合にはZn2+)が拡散することにより、光電変換層の光電変換効率が向上することが報告されている。特許文献1には、n型ドーパント(n型イオン)の拡散と、バッファ層の形成の最適化を図って、接合性の良い特定の安定したpn接合を得るために、拡散工程とバッファ析出工程とを段階的に行うことが提案されている。具体的には、特許文献1にはCBD法により光電変換層上にバッファ層を形成するに際して、光電変換層の界面へn型ドーパントを拡散させる第1の工程と、表面反応律速領域により第1のバッファ層を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層を第1のバッファ層上に形成する第3の工程をとるようにして、n型ドーパントの拡散と最適なバッファ層の形成との両立を図る方法が提案されている。
一方で、CBD法によるバッファ層の析出工程には相応の時間を要するために、バッファ層形成工程が製造工程全体での律速工程の一つとなっている。
非特許文献1には、バッファ層を形成することなく、CIGS層に対して、Cd、Znイオンを拡散させてCIGS層中にpn接合を形成する試みもなされている。非特許文献1では、CIGS表面にバッファ層を形成することなく、部分電解液処理(partial electrolyte treatment)を行い、CIGS層表面にスパッタ法によりi−ZnO層を成膜して光電変換素子を製造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、CIGS層表面にバッファ層を形成する、もしくは、CIGS層表面からII族元素のドーピングを行うことによりpn接合を形成する旨が記載されている。
K. Ramanathan et al., 2002 Conference of the IEEE Photovoltaic Specialists Conference, pp.523-526
特許文献1に記載の方法では、拡散からバッファ層の形成において温度を3段階に変化させつつ3つの処理工程を行っているため、温度管理が複雑なものとなっている。また、第1段階の拡散工程の後、バッファ層形成のための第2段階を開始する際に、VIb族元素の溶液を加える必要があり、装置構成が大掛かりになる可能性がある。
非特許文献1に記載の方法では、pn接合形成のための部分電解液処理の後、CIGS層表面にZnO層をスパッタ成膜するため、CIGS層はスパッタによるダメージを受ける恐れがある。
さらに、特許文献2には、CIGS層表面からII族元素のドーピングを行うことによりpn接合を形成する旨が記載されているものの、具体的な例としてはCdを拡散した場合について記載されているにすぎず、さらに、その場合のCIGS層表面にいかなる層形成を行ったかについても不明である。
環境負荷を考慮するとCdを用いないでCIGS層とのpn接合を形成することが望ましい。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、Cdを用いることなく、光電変換層にpn接合を有効に形成させることができ、かつ、製造工程を簡素化し、より設備コストを抑えることができる光電変換素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の光電変換素子の製造方法は、基板上に下部電極と、化合物半導体層からなる光電変換層と、高抵抗酸化物層と、透光性導電層との積層構造を有する光電変換素子の製造方法において、
少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、前記Zn源の濃度が0.1M以上、前記アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、
20℃から45℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して所定時間維持することにより、前記光電変換層中にZnイオンを拡散させる拡散工程と、
55℃から90℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記拡散工程を経た前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して、前記光電変換層上に前記高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる析出工程とを含むことを特徴とする。
少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、前記Zn源の濃度が0.1M以上、前記アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、
20℃から45℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して所定時間維持することにより、前記光電変換層中にZnイオンを拡散させる拡散工程と、
55℃から90℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記拡散工程を経た前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して、前記光電変換層上に前記高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる析出工程とを含むことを特徴とする。
ここで、単位Mは体積モル濃度(mol/L)を示す。
前記反応液が、濃度0.001〜0.25Mのクエン酸化合物を含むものであることが好ましい。
前記拡散工程と前記析出工程とは、同一の反応槽中で行ってもよいし、異なる反応槽中で行ってもよい。
前記拡散工程の処理時間は1分以上60分以下とすることが望ましい。
前記Zn源として、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛およびこれらの水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
前記基板として、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、および、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板からなる群より選ばれる陽極酸化基板を用いることが好ましい。
前記基板として可撓性を有する基板を用いる場合、前記拡散工程および/または前記析出工程をロール・トウ・ロール方式で行うことが好ましい。この場合、各工程の前後にそれぞれ巻出しロール、巻取りロールを配置して、工程毎にロール・トウ・ロール方式で行ってもよいし、拡散工程の上流側に巻出しロールを、析出工程の下流側に巻取りロールを配置して拡散工程から析出工程までをロール・トウ・ロール方式で行ってもよい。さらには、拡散工程、析出工程のみならず、さらに別の工程を巻出しロールから巻取りロールの間に配置してもよい。
本発明の光電変換素子の製造方法は、基板上に、下部電極と、化合物半導体層からなる光電変換層と、高抵抗酸化物層と、透光性導電層との積層構造を有する光電変換素子の製造方法において、光電変換層中にZnイオンを拡散させる拡散工程と、その後、光電変換層上に高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる析出工程とを含み、拡散工程においては、温度を20℃から45℃の所定温度(一定温度)に調整しているため、ZnO層の析出がなされることなく、Znイオンの光電変換層への拡散のみを生じさせることができる。析出工程においては、ZnO層の最適な厚みの制御のみを考慮すればよいが、この工程でのZnイオンの光電変換層へのさらなる拡散も期待できる。
拡散工程と析出工程とを分離することにより、光電変換層へのZnイオンの拡散量を十分なものとすることができるので、n型バッファ層を形成することなく、光電変換層表面に直接i−ZnO膜を成膜することができる。n型バッファ層形成工程を省くことができるため、工程の簡略化を図ることができる。拡散と析出とを制御するために工程分離をする場合、拡散工程で析出が生じないようにするために、従来技術であげた特許文献1のように析出を生じさせるための原料を含まない溶液で拡散工程を行うことが一般に考えられる。しかしながら、特許文献1のように、拡散工程と析出工程とで異なる成分の溶液を用いる方法では、それぞれに溶液を用意するための準備工程やそのための設備のために余分なコストがかかる。本発明の製造方法では、ZnO層は、拡散工程で用いる反応液と同一の成分からなる溶液を用いた析出工程により析出形成することができる。
また、光電変換層層表面へのZnO膜の成膜は、CBD法による析出工程により行うため、光電変換層表面にダメージを与える恐れがない。
本発明の製造方法によれば、拡散工程、析出工程を別工程として管理するにも関わらず、両工程はいずれも液相工程であり、反応液は共通であるため、反応液の準備、保存などは共通化することができ、製造工程、設備コストを簡素化することができる。実用化に際しては、これらは製造コストの抑制につながり非常に好ましい。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、図面を参照して、本発明の光電変換素子の製造方法により作製される光電変換素子の一般的な構造について説明する。
まず、図面を参照して、本発明の光電変換素子の製造方法により作製される光電変換素子の一般的な構造について説明する。
図1は光電変換素子の概略断面図である。視認しやすくするため、図中、各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
光電変換素子1は、基板10上に、下部電極(裏面電極)20と光電変換層30と高抵抗酸化物層50と透光性導電層(透明電極)60と上部電極(グリッド電極)70とが順次積層された素子である。
光電変換素子1は、基板10上に、下部電極(裏面電極)20と光電変換層30と高抵抗酸化物層50と透光性導電層(透明電極)60と上部電極(グリッド電極)70とが順次積層された素子である。
本発明の光電変換素子の製造方法は、図1に示す光電変換素子1のように、基板10上に、少なくとも下部電極20と、化合物半導体層からなる光電変換層30と、高抵抗酸化物層50と、透光性導電層60との積層構造を有する光電変換素子の製造方法であって、少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、Zn源の濃度が0.1M以上、アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、20℃から45℃の所定温度に調整した反応液中に、下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して所定時間維持することにより、光電変換層中にZnイオンを拡散させる拡散工程と、55℃から90℃の所定温度に調整した反応液中に、拡散工程を経た下部電極および光電変換層が積層された基板を浸漬して、光電変換層上に高抵抗酸化物層としてZnO層(i−ZnO層)析出させる析出工程とを含むことを特徴とする。
拡散工程は、後工程の析出工程で用いられる反応液と同一の反応液中で行う。
20℃〜45℃の所定温度(たとえば、40℃)に調整した反応液中に、所定時間(例えば、10〜60分)、少なくとも光電変換層30表面を浸すことにより、光電変換層中にZnイオンを拡散させ、これにより、光電変換層中にpn接合を形成させる。
20℃〜45℃の所定温度(たとえば、40℃)に調整した反応液中に、所定時間(例えば、10〜60分)、少なくとも光電変換層30表面を浸すことにより、光電変換層中にZnイオンを拡散させ、これにより、光電変換層中にpn接合を形成させる。
本発明において析出工程は、所謂CBD法(化学浴析出法)によるものである。CBD法とは、一般式 [M(L)i] m+ ⇔Mn++iL(式中、M:金属元素、Lは配位子、m,n,i:正数を各々示す。)で表されるような平衡によって過飽和条件となる濃度とpHを有する金属イオン溶液を反応液として用い、金属イオンMの錯体を形成させることで、安定した環境で適度な速度で基板上に結晶を析出させる方法である。
反応液に用いられる、Zn源としては、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いればよい。
反応液中のZn源の濃度を0.1M以上とすることにより、CIGS層中へのZnの拡散を促進させることができるので析出工程の時間を抑制することができ、光電変換層表面を極端に長く(例えば、数時間以上の長時間)浸漬させる必要がない。従来の一般的なZn系バッファ層析出のためのCBD法においては、Zn源の濃度は0.1Mよりずっと小さく設定されている。このように従来のZn源濃度が低い理由の一因は、拡散工程を設けずCBD法による膜の析出を行う場合、反応液中のZn源の濃度を高めるとバッファ層の析出が促進されるため、ZnイオンがCIGS中に拡散する前にバッファ層の析出が進んでしまい、Znイオンの拡散が不十分なものとなってしまうことにあった。一方、本発明では、20℃〜45℃の所定の温度に保った反応液中に光電変換層を浸して予めZnの拡散を行うので、Zn源の濃度を高めた反応液を用いることができ、また、その後のi−ZnO膜析出時にZnの拡散について考慮する必要がないため、引き続きZnO膜の析出が促進される高い濃度のZn源を含む反応液中でCBD工程を行うことができる。
アルカリ剤はpH調整剤等として機能する成分であるが、錯形成剤等として機能する成分でもある。好適なアンモニウム塩としては特に制限されず、NH4OH等が挙げられる。
アルカリ剤の濃度によりpHを調整して、金属イオンの溶解度や過飽和度を調整することができる。
アルカリ剤の濃度によりpHを調整して、金属イオンの溶解度や過飽和度を調整することができる。
ZnO層を析出させるためには、反応液中のpHは、9−13の範囲に設定することが必要である。それゆえ、アルカリ剤の濃度は、上記pHの範囲になるように調節しなければならない。Zn濃度や錯形成剤の濃度等にもよるが、アルカリ剤の濃度が高すぎると、全く析出反応が起こらなくなる。よって、反応液中のアルカリ剤の濃度は2M以下とすることが必要である。
特に濃度が1.5Mの範囲内であれば反応速度が速く実用的な生産速度で成膜を実施することができ、好ましい。さらに好ましい濃度範囲は0.01〜1.2Mである。
特に濃度が1.5Mの範囲内であれば反応速度が速く実用的な生産速度で成膜を実施することができ、好ましい。さらに好ましい濃度範囲は0.01〜1.2Mである。
反応開始前の反応液のpHは9.0〜13.0とする。
反応液の反応開始前のpHが9.0未満では、水酸化亜鉛の沈殿しかできなかったりして目的のZnO膜を得ることができない。
また、反応液の反応開始前のpHが13.0超では、析出反応が進行しないか、あるいは進行しても極めて遅い進行となってしまう。反応液の反応開始前のpHは好ましくは9.5〜12.5である。
反応液の反応開始前のpHが9.0未満では、水酸化亜鉛の沈殿しかできなかったりして目的のZnO膜を得ることができない。
また、反応液の反応開始前のpHが13.0超では、析出反応が進行しないか、あるいは進行しても極めて遅い進行となってしまう。反応液の反応開始前のpHは好ましくは9.5〜12.5である。
アルカリ剤の濃度が0.001〜2Mであれば、このアルカリ剤以外のpH調整剤を用いるなどの特段のpH調整をしなくても、通常反応開始前の反応液のpHは9.0〜13.0の範囲内となる。
反応液の反応終了後のpHは特に制限されない。反応液の反応終了後のpHは8〜12.8であることが好ましい。反応液の反応終了後のpHが8未満では、反応が進行しない期間を含んでいたことになり、効率的な製造を考えると無意味である。また、緩衝作用のあるアンモニアが入っていた系でこれだけのpH低下があった場合には、アンモニアが加熱工程で過剰に揮発している可能性が高く、製造上の改善が必要であると考えられる。反応液の反応終了後のpHが12.8超では、亜鉛イオンの多くがアンモニウム錯体として安定になるため、析出反応の進行が著しく遅くなる場合がある。反応液の反応終了後のpHはより好ましくは9〜12.5である。
上記反応液では、成分(N)以外のpH調整剤を用いるなどの特段のpH調整をしなくても、通常反応開始後の反応液のpHは8〜12.8の範囲内となる。
析出工程は、55℃〜90℃の所定温度(例えば、60℃)に調整した反応液中に、所定時間、少なくとも光電変換層30表面を浸すことにより、光電変換層表面にZnOを析出させる。析出工程の時間は特に制限されない。反応温度にもよるが、例えば10〜60分間である。実用上は30分から60分程度が適する。
反応液には、濃度0.001〜0.25Mのクエン酸化合物(クエン酸ナトリウムおよび/またはその水和物)を含有させることが好ましい。クエン酸化合物を含有させることによって錯体が形成されやすく、CBD反応による結晶成長が良好に制御され、膜を安定的に成膜することができる。クエン酸化合物としては、特にはクエン酸三ナトリウムが好ましい。
濃度が0.001〜0.25Mの範囲内であれば錯体が良好に形成され、下地を良好に被覆する膜を安定的に成膜することができる。濃度が0.25M超では、錯体が良好に形成された安定な水溶液となるが、その反面、基板上への析出反応の進行が遅くなったり、反応が全く進行しなくなる場合がある。クエン酸化合物の濃度は好ましくは0.001〜0.1Mである。
本発明の製造方法では、拡散工程を20℃から45℃の所定温度で行うことにより、光電変換層にZnイオンを拡散させるが、この拡散工程ではZnO層を析出させない。反応液の温度が20℃未満ではZnイオンの光電変換層への拡散速度が遅くなり、実用的な反応時間で所望の拡散量を確保することが難しく、45℃を超えると、ZnO層の析出を生じる恐れがある。一方、析出工程においては、Znイオンの光電変換層へのさらなる拡散も同時に生じると考えられる。光電変換層へのZnイオンの拡散量は多いほど光電変換率の向上に寄与すると考えられ、析出工程において拡散が生じるのは問題ない。
析出工程は、反応液の温度が55℃未満では反応速度が遅くなり、ZnO層が成長しないか、あるいは成長しても実用的な反応速度で所望の厚み(例えば50nm以上)を得ることが難しくなる。一方、反応温度が90℃を超えると、反応液中で気泡等の発生が多くなり、それが膜表面に付着したりして平坦で均一な膜が成長しにくくなる。さらに、反応が開放系で実施される場合には、溶媒の蒸発等による濃度変化などが生じ、安定した薄膜析出条件を維持することが難しくなる。反応温度はより好ましくは70〜90℃の範囲である。
基板を20℃から45℃の所定温度の反応液に一定時間浸漬させた状態で維持して拡散工程を行った後、基板を反応液に浸漬させた状態で、反応液を55℃から90℃の所定温度に昇温させて、引き続き、ZnO層析出工程を行うようにしてもよいし、拡散工程の後、一旦反応槽から取り出し、同一または別の反応槽で55℃から90℃の所定温度に調整された反応液に浸漬させてZnO層析出工程を行うようにしてもよい。
基板として可撓性を有する基板を用いる場合、拡散工程および/または析出工程は、長尺な可撓性基板をロール状に巻回してなる供給ロール(巻出しロール)と、成膜済の基板をロール状に巻回する巻取りロールとを用いる、いわゆるロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)方式を用いることが好ましい。
ロール・トゥ・ロール方式とは、ロール状に巻かれた可撓性基板を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間のプロセスを実施する方式であり、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、簡易に量産が可能であり好ましい。ロール・トゥ・ロール方式と個別に切り離された基材を工程毎に搬送する枚葉方式とを比較すると、枚葉方式では、それぞれの工程に基材の搬入部、搬出部を設ける必要があり、工程毎の装置規模が大きくなりやすいが、ロール・トゥ・ロール方式では、基材は各工程間を間欠的、或いは連続的に流れるため各工程を互いに連結でき、基材搬送に伴う作業の削減や装置の小型化が可能となる。
本発明の実施形態による製造方法をロール・トゥ・ロール方式で実施するための製造装置の一例を説明する。
ここでは、基板10として長尺な可撓性を有する基板を用い、下部電極20と、化合物半導体層からなる光電変換層30とが成膜された光電変換層成膜済の基板10に対する、光電変換層へのZnイオン拡散工程および光電変換層上へのZnO層形成までの工程の実施形態を説明する。
図2は、製造装置の概略構成を示すものである。製造装置は、拡散工程用の反応槽110、析出工程用の反応槽120、拡散工程および析出工程の各工程後に、基板の洗浄および乾燥を行うために、各反応槽110、120の下流にそれぞれ配置された配置された水シャワー111、121および熱風ドライヤー121、122を備えている。また、ロール・トウ・ロールによる製造を行うために、拡散工程用の反応槽110の上流側に配置された、基板を供給する巻出しロール101、析出工程用の反応槽120の下流側に配置された、バッファ成膜後の基板を巻き取る巻取りロール102、巻出しロール101から供給される基板を拡散、洗浄、乾燥、析出、洗浄、乾燥の各工程に順次導くための複数のガイドロール103、および基板の各処理領域を反応槽中に浸漬させるために反応槽110、120中に配置されたドラム105、106を備えている。なお、ガイドロール103のうち、基板の各層成膜面側をガイドするように配置されているものは、表面を傷つけないために基板のエッジ部のみで基板を支持可能な構成のロールである。
巻出しロール101には、光電変換層成膜済の基板10が巻回されており、巻出しロール101から基板10が拡散工程に供給され、さらに各処理工程を経てZnO層が形成された後に巻き取りロール102に巻き取られるよう構成されている。
また、反応槽110、120は共に、ヒーターおよび温度センサなどを含む温調手段(図示せず)を備えており、反応槽内の反応液の温度を所望の温度に調整することができるよう構成されている。
また、反応槽110、120は共に、ヒーターおよび温度センサなどを含む温調手段(図示せず)を備えており、反応槽内の反応液の温度を所望の温度に調整することができるよう構成されている。
予め、Zn源と、アンモニアおよびアンモニウム塩の少なくとも1つと、必要に応じてクエン酸三ナトリウムとを含む水溶液からなる反応液90を用意し、拡散工程用の反応槽110、析出工程用の反応槽120のそれぞれに反応液90を注入しておく。
巻出しロール101から巻き出される光電変換層成膜済の基板10は、ガイドロール103により導かれ、各処理領域が順次各工程での処理に供される。
まず、20℃から45℃の所定温度に調整した、反応槽110内の反応液90中に、基板10を浸漬させて、光電変換層30中にZnイオンを拡散させる。拡散工程の処理時間は、1分以上60分以下とすることが望ましい。1分未満では所望の拡散量を得ることが難しく、60分を超えると実用的でない。
拡散処理の後、洗浄、乾燥工程を経て、55℃から90℃の所定温度に調整した、反応槽120内の反応液90中に、拡散工程を経た光電変換層30aを表面に有する基板10を浸漬して、光電変換層30a上にZnO層50を析出させる。
なお、基板を連続的に搬送する場合には、基板の処理領域のそれぞれが各反応液に各所定時間接触するように、基板の搬送速度やドラムの径あるいはドラムの反応液への浸漬深さ等を設定しておけばよい。
その後、洗浄、乾燥工程を経て、巻取りロール102に巻き取られる。
巻取りロール102で巻き取られた、高抵抗酸化物層50が形成された基板10は、その後、透光性導電層、取り出し電極等の形成工程を経て、光電変換素子にセル化される。
光電変換層への拡散処理の前、あるいは後には、光電変換層表面の不純物除去等の目的でKCN等による表面処理を行うことが望ましく、特には拡散処理の前に必要な表面処理を行うことが好ましい。
光電変換層への拡散処理の前、あるいは後には、光電変換層表面の不純物除去等の目的でKCN等による表面処理を行うことが望ましく、特には拡散処理の前に必要な表面処理を行うことが好ましい。
上記各工程における処理は、長尺な基板の所定の処理領域毎に行う。1回の拡散処理では反応液の成分はほとんど変化しないため、同一の反応液を複数回の拡散処理に使用することが可能である。一方、析出処理では、反応液内の析出される成分の濃度が著しく変化するため、所定の処理領域毎に反応液を交換する必要がある。
図3は、製造装置の設計変更例を示す。
図2に示した製造装置においては、巻出しロール、巻取りロールを2つの工程の上下流に備えたものについて説明したが、図3(A)、(B)に示すように、各工程の上下流にそれぞれ巻出しロール101a、101b、巻取りロール102a、102bを備えるようにしてもよい。この場合、光電変換層30を表面に備えた基板10は、同図(A)に示す拡散工程後に巻取りロール102aにより巻き取られ、この巻取りロール102aが、同図(B)に示す析出工程に拡散処理済光電変換層30aを表面に備えた基板10を供給する巻き出しロール101bとして用いられることとなる。
図2に示した製造装置においては、巻出しロール、巻取りロールを2つの工程の上下流に備えたものについて説明したが、図3(A)、(B)に示すように、各工程の上下流にそれぞれ巻出しロール101a、101b、巻取りロール102a、102bを備えるようにしてもよい。この場合、光電変換層30を表面に備えた基板10は、同図(A)に示す拡散工程後に巻取りロール102aにより巻き取られ、この巻取りロール102aが、同図(B)に示す析出工程に拡散処理済光電変換層30aを表面に備えた基板10を供給する巻き出しロール101bとして用いられることとなる。
さらには、図3(A)、(B)のいずれか一方のみを備えた装置として、同一の反応槽110を用いて拡散工程、析出工程の両工程を行うようにしてもよい。
同一の反応槽110で両工程を行う場合、反応槽110中の反応液90を20℃から45℃の所定温度に調整した後に、光電変換層30を備えた基板10を反応液90中に浸漬させて拡散処理を行い、拡散処理後、基板10を一旦反応液から取り出し、反応液90を70℃から90℃の所定温度に調整した後に、先に拡散処理を行った基板10を反応液中に浸漬させて析出処理を行えばよい。この場合、反応液90は、拡散工程と析出工程で連続して使用されることとなる。
光電変換層へのn型ドーパントの拡散処理からZnO層形成の工程までをロール・トゥ・ロール方式で製造する場合について説明したが、さらに、拡散処理前に光電変換層表面の不純物除去を行う表面処理や、透明電極層等の他の層を形成する工程も連続して、あるいは工程毎にロール・トゥ・ロール方式で実施することができる。
本発明の製造方法により作製される光電変換素子1の各層の詳細について以下に説明する。
(基板)
基板としては、可撓性を有するものであれば、特に制限はない。
特には、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、および、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板のうちいずれか1つの陽極酸化基板であることが好ましい。
基板としては、可撓性を有するものであれば、特に制限はない。
特には、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、および、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板のうちいずれか1つの陽極酸化基板であることが好ましい。
さらに、基板上にソーダライムガラス(SLG)層が設けられたものであってもよい。ソーダライムガラス層を備えることにより、光電変換層にNaを拡散させることができる。光電変換層がNaを含むことにより、光電変換効率をさらに向上させることができる。
(下部電極)
下部電極(裏面電極)20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,およびこれらの組合せが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極20の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
下部電極(裏面電極)20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,およびこれらの組合せが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極20の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
(光電変換層)
光電変換層30の主成分としては特に制限されず、高光光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましく、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
光電変換層30の主成分としては特に制限されず、高光光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましく、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
光電変換層30の主成分としては、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
上記化合物半導体としては、
CuAlS2,CuGaS2,CuInS2,
CuAlSe2,CuGaSe2,
AgAlS2,AgGaS2,AgInS2,
AgAlSe2,AgGaSe2,AgInSe2,
AgAlTe2,AgGaTe2,AgInTe2,
Cu(In,Al)Se2,Cu(In,Ga)(S,Se)2,
Cu1-zIn1-xGaxSe2-ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),
Ag(In,Ga)Se2,およびAg(In,Ga)(S,Se)2等が挙げられる。
CuAlS2,CuGaS2,CuInS2,
CuAlSe2,CuGaSe2,
AgAlS2,AgGaS2,AgInS2,
AgAlSe2,AgGaSe2,AgInSe2,
AgAlTe2,AgGaTe2,AgInTe2,
Cu(In,Al)Se2,Cu(In,Ga)(S,Se)2,
Cu1-zIn1-xGaxSe2-ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),
Ag(In,Ga)Se2,およびAg(In,Ga)(S,Se)2等が挙げられる。
また、Cu2ZnSnS4,Cu2ZnSnSe4,Cu2ZnSn(S,Se)4等であってもよい。
光電変換層30の膜厚は特に制限されず、1.0〜4.0μmが好ましく、1.5〜3.5μmが特に好ましい。
(高抵抗酸化物層)
高抵抗酸化物層50の組成は、ZnO層である。ZnO層の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
高抵抗酸化物層50の組成は、ZnO層である。ZnO層の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
(透光性導電層)
透光性導電層(透明電極)60は、光を取り込むと共に、下部電極20と対になって、光電変換層30で生成された電荷が流れる電極として機能する層である。透光性導電層60の組成としては特に制限されず、ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B等のn−ZnO等が好ましい。透光性導電層60の膜厚は特に制限されず、50nm〜2μmが好ましい。
透光性導電層(透明電極)60は、光を取り込むと共に、下部電極20と対になって、光電変換層30で生成された電荷が流れる電極として機能する層である。透光性導電層60の組成としては特に制限されず、ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B等のn−ZnO等が好ましい。透光性導電層60の膜厚は特に制限されず、50nm〜2μmが好ましい。
(上部電極)
上部電極70の主成分としては特に制限されず、Al等が挙げられる。上部電極70膜厚は特に制限されず、0.1〜3μmが好ましい。
上部電極70の主成分としては特に制限されず、Al等が挙げられる。上部電極70膜厚は特に制限されず、0.1〜3μmが好ましい。
なお、多数の光電変換素子(セル)が集積化されてなる集積化太陽電池においては、上部電極は直列接続されたセルのうち、電力取出し端となるセルに設けられている。
光電変換素子1は、太陽電池として好ましく使用することができる。光電変換素子1に対して必要に応じて、カバーガラス、保護フィルム等を取り付けて、太陽電池とすることができる。
なお、本発明の製造方法で作製される光電変換素子は、太陽電池のみならずCCD等の他の用途にも適用可能である。
図1に示した光電変換素子と同様の層構成の素子を、実施例1、2および比較例1、2の方法により作製し、その光電変換効率について評価した。
(基板−光電変換層)
基板、光電変換層および光電変換層の表面処理までの工程は全実施例、比較例に共通とした。
基板として、ソーダライムガラス(SLG)基板を用いた。
SLG基板上にスパッタ法により下部電極としてMo電極層を0.8μm厚で成膜し、Mo電極層上に多元蒸着法の一種である3段階法を用いた膜厚1.8μmのCu(In0.7Ga0.3)Se2層(CIGS層)を光電変換層として成膜した。
KCN10%水溶液の入った反応槽を用意し、基板上に成膜されたCIGS層の表面を室温にてKCN水溶液に浸漬させてCIGS層表面の不純物除去を行った。KCN水溶液から取出した後に十分に水洗を行い、後述の工程を実施した。
基板、光電変換層および光電変換層の表面処理までの工程は全実施例、比較例に共通とした。
基板として、ソーダライムガラス(SLG)基板を用いた。
SLG基板上にスパッタ法により下部電極としてMo電極層を0.8μm厚で成膜し、Mo電極層上に多元蒸着法の一種である3段階法を用いた膜厚1.8μmのCu(In0.7Ga0.3)Se2層(CIGS層)を光電変換層として成膜した。
KCN10%水溶液の入った反応槽を用意し、基板上に成膜されたCIGS層の表面を室温にてKCN水溶液に浸漬させてCIGS層表面の不純物除去を行った。KCN水溶液から取出した後に十分に水洗を行い、後述の工程を実施した。
(反応液1の調製)
硫酸亜鉛0.15M、アンモニア1.2Mの透明溶液を作製し、反応液1とした。pHは10.8であった。
硫酸亜鉛0.15M、アンモニア1.2Mの透明溶液を作製し、反応液1とした。pHは10.8であった。
(反応液2の調製)
硫酸亜鉛0.15M、クエン酸三ナトリウム0.03M、アンモニア1.2Mの溶液を作製し、反応液2とした。pHは10.8であった。
硫酸亜鉛0.15M、クエン酸三ナトリウム0.03M、アンモニア1.2Mの溶液を作製し、反応液2とした。pHは10.8であった。
(反応液3の調製)
硫酸亜鉛0.03M、チオ尿素0.05M、クエン酸三ナトリウム0.03M、アンモニア0.15Mの溶液を作製し、反応液3とした。pHは10.3であった。本反応液3は酸素を含んだZn硫化物層析出のために比較例2で用いられるものである。
硫酸亜鉛0.03M、チオ尿素0.05M、クエン酸三ナトリウム0.03M、アンモニア0.15Mの溶液を作製し、反応液3とした。pHは10.3であった。本反応液3は酸素を含んだZn硫化物層析出のために比較例2で用いられるものである。
以下、各実施例、比較例における拡散工程および析出工程について説明する。
なお、実施例1、2および比較例2において、拡散工程と析出工程は、同一の反応槽中において順次行った。具体的には、拡散工程温度に調整した反応液の入った反応槽に浸漬させて拡散工程を行い、Znイオンを拡散させた基板を反応槽から一旦引き上げ、その反応槽内の反応液を析出工程温度に調整した後に、再度同一の反応槽に浸漬させて析出工程を行った。
なお、実施例1、2および比較例2において、拡散工程と析出工程は、同一の反応槽中において順次行った。具体的には、拡散工程温度に調整した反応液の入った反応槽に浸漬させて拡散工程を行い、Znイオンを拡散させた基板を反応槽から一旦引き上げ、その反応槽内の反応液を析出工程温度に調整した後に、再度同一の反応槽に浸漬させて析出工程を行った。
(実施例1)
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させてi−ZnO層を析出させた。
析出工程後:基板を純水により十分洗浄した後、これを室温乾燥させた。その後、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させてi−ZnO層を析出させた。
析出工程後:基板を純水により十分洗浄した後、これを室温乾燥させた。その後、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
(実施例2)
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液2の入った反応槽に60分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液1の入った反応槽に180分間浸漬させてi−ZnO層を析出させた。
析出工程後:実施例1と同様とした。
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液2の入った反応槽に60分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液1の入った反応槽に180分間浸漬させてi−ZnO層を析出させた。
析出工程後:実施例1と同様とした。
(比較例1)
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:実施しなかった。
析出工程後:スパッタ法により膜厚50nmの高抵抗酸化亜鉛薄膜(i−ZnO)を形成した。さらに、その後、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液1の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:実施しなかった。
析出工程後:スパッタ法により膜厚50nmの高抵抗酸化亜鉛薄膜(i−ZnO)を形成した。さらに、その後、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
(比較例2)
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液3の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液3の入った反応槽に30分間浸漬させてZn化合物薄膜層を析出させた。
析出工程後:基板を純水により十分洗浄した後、空気中で200℃1時間のアニール処理を行った。その後、スパッタ法により膜厚50nmの高抵抗酸化亜鉛薄膜を形成した。さらに、高抵抗酸化亜鉛薄膜上に、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
拡散工程:光電変換層が形成された基板を、40℃に調整した反応液3の入った反応槽に30分間浸漬させて光電変換層にZnイオンを拡散させた。
析出工程:拡散工程後の基板を、90℃に調整した反応液3の入った反応槽に30分間浸漬させてZn化合物薄膜層を析出させた。
析出工程後:基板を純水により十分洗浄した後、空気中で200℃1時間のアニール処理を行った。その後、スパッタ法により膜厚50nmの高抵抗酸化亜鉛薄膜を形成した。さらに、高抵抗酸化亜鉛薄膜上に、スパッタ法により膜厚300nmのAlドープ導電性酸化亜鉛膜を成膜した。
<太陽電池の作製>
実施例および比較例の方法によりAlドープの導電性酸化亜鉛薄膜を形成したサンプルについて、上部電極としてAl電極を蒸着法により形成して光電変換素子(単セルの太陽電池:受光面積0.516cm2)を作製した。各実施例、比較例について8個のセルを作製した。
実施例および比較例の方法によりAlドープの導電性酸化亜鉛薄膜を形成したサンプルについて、上部電極としてAl電極を蒸着法により形成して光電変換素子(単セルの太陽電池:受光面積0.516cm2)を作製した。各実施例、比較例について8個のセルを作製した。
<光電変換効率の測定方法>
各実施例および比較例の方法を経て作製された各太陽電池について、ソーラーシミュレーターを用いて、Air Mass(AM)=1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を用いた条件下で、光電変換効率を測定した。なお、光電変換効率の測定は光照射を30分実施した後に行った。
各実施例および比較例毎に、それぞれ8個のセルについての光電変換効率の測定を行い、表1には、8個のセルについての光電変換効率の平均値を示している。
各実施例および比較例の方法を経て作製された各太陽電池について、ソーラーシミュレーターを用いて、Air Mass(AM)=1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を用いた条件下で、光電変換効率を測定した。なお、光電変換効率の測定は光照射を30分実施した後に行った。
各実施例および比較例毎に、それぞれ8個のセルについての光電変換効率の測定を行い、表1には、8個のセルについての光電変換効率の平均値を示している。
表1に示すように、本発明の実施例1、2の製造方法で作製した素子は、11.5%以上と比較例1の方法で作製した素子と比較して非常に高い光電変換効率を得ることができた。
比較例1は拡散工程によるpn接合形成は実施例1と同等に行われているが、CBD層による析出層形成を行うことなく、CIGS層上にスパッタ法によりi−ZnOを形成しているため、CIGS表面にスパッタダメージが生じ、結果として変換効率が低下したものと考えられる。
比較例1は拡散工程によるpn接合形成は実施例1と同等に行われているが、CBD層による析出層形成を行うことなく、CIGS層上にスパッタ法によりi−ZnOを形成しているため、CIGS表面にスパッタダメージが生じ、結果として変換効率が低下したものと考えられる。
比較例2は、従来のCBD法によりZnS系のバッファ層を形成し、さらにその上にスパッタ法によりi−ZnOを形成した従来の製造方法に、拡散工程をさらに設けたものである。12.1%と非常に高い変換効率を示すが、析出工程に加え、さらにスパッタ法によるi−ZnO膜の形成という工程を要するため、工程数が多く手間がかかる。
実施例1、2は、比較例2と比較して製造工程が一つ少ないが、比較例2と同等あるいはそれ以上の変換効率を達成することができている。すなわち、高変換効率の素子の製造工程の簡素化を実現できた。
1 光電変換素子(太陽電池)
10 基板
20 下部電極(裏面電極)
30 光電変換層
50 高抵抗酸化物層(i−ZnO層)
60 透光性導電層(透明電極)
70 上部電極(グリッド電極)
90 反応液
101 巻出しロール
102 巻取りロール
103 ガイドロール
110、120 反応槽
10 基板
20 下部電極(裏面電極)
30 光電変換層
50 高抵抗酸化物層(i−ZnO層)
60 透光性導電層(透明電極)
70 上部電極(グリッド電極)
90 反応液
101 巻出しロール
102 巻取りロール
103 ガイドロール
110、120 反応槽
Claims (3)
- 基板上に下部電極と、化合物半導体層からなる光電変換層と、高抵抗酸化物層と、透光性導電層との積層構造を有する光電変換素子の製造方法において、
少なくとも1種のZn源と、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ剤とを含み、前記Zn源の濃度が0.1M以上、前記アルカリ剤の濃度が2M以下であるpH9〜13の反応液を用意し、
20℃から45℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して所定時間維持することにより、前記光電変換層中にZnイオンを拡散させる拡散工程と、
55℃から90℃の所定温度に調整した前記反応液中に、前記拡散工程を経た前記下部電極および前記光電変換層が積層された前記基板を浸漬して、前記光電変換層上に前記高抵抗酸化物層としてZnO層を析出させる析出工程とを含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。 - 前記反応液が、濃度0.001〜0.25Mのクエン酸三ナトリウムを含むものであることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
- 前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
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-
2011
- 2011-03-16 JP JP2011057820A patent/JP2012195416A/ja not_active Withdrawn
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