JP2012193474A - 繊維用糊剤の製造方法およびその応用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、製織後の後加工工程において精練性に優れ、経糸切れを抑制するほどの接着性を付与でき、落糊の発生を抑制することができる繊維用糊剤の製造方法と、この製造方法で得られた繊維用糊剤をサイジングして得られる糊付糸と、この繊維用糊剤を用いて行われる織物の製造方法とを提供することである。
【解決手段】 本発明は、共重合体の中和物を含む繊維用糊剤の製造方法であって、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分を乳化重合により共重合させる共重合工程と、該共重合工程で得られた共重合体を中和する中和工程とを含む、繊維用糊剤の製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は繊維用糊剤の製造方法およびその応用に関する。さらに詳しくは、本発明は、製織の際に特に好ましく使用される経糸用糊剤の製造方法およびその応用に関する。
繊維の製織に使用される糊剤には、接着性、耐水性、耐摩耗性、精練性等の種々の性能が要求されている。特に、製織後の精練染色工程における精練性の向上が重要になっている。また、フィラメント糸を用いて製織する場合、その生産能率の向上をはかるために、織機を用いて製織が行われている(例えば特許文献1)。
製織では、一般的には、経糸に耐水性のアクリル系糊剤を付着させ、緯糸は原糸を糊剤処理なしでそのまま用いる。しかしながら、織機を用いた場合、脱落した糊剤が筬につまり、織物に経筋が発生するトラブルが起こりやすい。また、製織後の精練染色工程における精練性も満足できるものではなく、精練性について一層の向上が要求されている。
また、原糸の高機能化や、それに伴う原糸断面形状の変化、原糸油剤の多様化により、一般的に用いられているアクリル系糊剤では接着性が乏しく、トラブルが生じることから改善が望まれている。
特開2000−45145号公報
本発明の目的は、製織後の後加工工程において精練性に優れ、経糸切れを抑制するほどの接着性を付与でき、落糊の発生を抑制することができる繊維用糊剤の製造方法と、この製造方法で得られた繊維用糊剤をサイジングして得られる糊付糸と、この繊維用糊剤を用いて行われる織物の製造方法とを提供することである。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法によって得られた繊維用糊剤であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。詳細には、共重合体の中和物を含有する繊維用糊剤の製造方法であって、スチレン系単量体を含有する特定の重合性成分を乳化重合により共重合させた場合に、経糸切れを抑制するほどの接着性を付与でき、落糊の発生を抑制できること、さらには、同重合性成分を溶液重合により共重合させた場合と比べ、製織後の後加工工程において精練性が格段に優れていることを見出した。
すなわち、本発明は、共重合体の中和物を含む繊維用糊剤の製造方法であって、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分を乳化重合により共重合させる共重合工程と、該共重合工程で得られた共重合体を中和する中和工程とを含む、繊維用糊剤の製造方法である。
前記重合性成分に占める前記スチレン系単量体の重量割合は5〜40重量%であることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸の重量割合は16〜30重量%であることが好ましい。
前記共重合体の中和物の重量平均分子量は10,000〜200,000であることが好ましい。
前記共重合工程は、水を主体とする媒体および乳化剤の存在下、前記重合性成分を乳化分散させ、該重合性成分を共重合させる工程であることが好ましい。
本発明の繊維用糊剤の製造方法は、さらにワックスを添加する工程を含むことが好ましい。
本発明の繊維用糊剤は、上記の製造方法によって得られた繊維用糊剤であって、該繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHが7〜10の範囲にあるものである。
また、本発明の糊付糸は、上記の製造方法によって得られた繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなるものである。
本発明の織物の製造方法は、上記の糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含むものである。本発明の織物の製造方法は、前記製織機がウォータージェットルームであるときに好適である。
本発明の製造方法で得られた繊維用糊剤を用いた場合、製織後の後加工工程において精練性に優れる。また、製織時の経糸切れを抑制するほどの接着性を付与でき、落糊の発生を抑制することができる。
本発明の糊付糸を用いた場合は、製織後の後加工工程において精練性に優れる。また、製織時の経糸切れが抑制され、製織時の落糊の発生が抑制される。
本発明の織物の製造方法では、後加工工程において精練性に優れる織物が得られる。また、製織時の経糸切れが抑制され、製織時の落糊の発生が抑制される。
[繊維用糊剤の製造方法]
本発明は、共重合体の中和物(以下では、糊成分Aということもある。)を含む繊維用糊剤の製造方法である。糊成分Aは、繊維用糊剤を繊維に適用した際に接着性および抱合性を付与する成分、いわゆる糊成分として作用する。
このような糊成分Aと水とを含む液を、以下では糊成分液ということとする。糊成分液は一般には粘度が高い。pHメーターを用いて、糊成分液のpHをそのまま測定する場合、測定後のpHメーター洗浄等に支障があることがあるので、糊成分液に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHを20℃で測定した値を、糊成分液のpHと定義することにする。同様に、繊維用糊剤のpHは、繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHを20℃で測定した値を意味することにする。重量濃度を1%に調整する方法については、特に限定はないが、糊成分液や繊維用糊剤に対して、蒸留水やイオン交換水を添加したりする方法や、加熱および/または乾燥を行って、水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いたりする方法等が挙げられる。
ここで、固形分とは、糊成分液や繊維用糊剤から水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いた不揮発性の成分を意味することとする。固形分の重量は、実施例に示すとおり、糊成分液や繊維用糊剤を加熱および/または乾燥した後に残る成分の重量である。以下の説明において、糊成分の重量は、糊成分の製造後に得られる反応混合物の固形分の重量を意味する。
糊成分液や繊維用糊剤の粘度についても、上記で詳しく説明したpHと同様に、糊成分液や繊維用糊剤のそれぞれに含まれる固形分の重量濃度を25%に調整した水溶液の粘度を20℃で測定した値を意味することにする。重量濃度を25%に調整する方法も上記と同様である。
以下、本発明の共重合体の中和物(糊成分A)を含む繊維用糊剤の製造方法について、詳しく説明する。
共重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分を含有し、必要に応じてその他の単量体を含有することがある重合性成分(以下では、この重合性成分を重合性成分aということがある。)を乳化重合により共重合させる共重合工程によって製造される。さらに、共重合工程で得られた共重合体を中和する中和工程を経て、糊成分Aを製造できる。通常、中和工程では、水の存在下、アルカリ性物質を添加して共重合体をその中和物に変換するので、得られた糊成分Aは水と共存しており、糊成分Aと水を含む混合物は繊維用糊剤となる。
共重合工程で用いる重合性成分aは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分を含有し、その他の単量体を含有していてもよい。本願において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味するものとする。したがって、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、アクリル酸エステル系単量体および/またはメタクリル酸エステル系単量体を意味する。
(メタ)アクリル酸は、繊維用糊剤として要求される基本物性である水溶性、接着性および抱合性を付与し、製織後の後加工工程において精練性を高める成分である。
(メタ)アクリル酸中に占めるメタクリル酸の重量割合は、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%である。メタクリル酸の重量割合が少なすぎる場合、重合性成分a中に含まれることがある他の疎水性モノマーとの相溶性が低下し、均一な重合物を得ることが難しくなる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、繊維用糊剤として要求される接着性および抱合性を付与する成分である。本発明でいう(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、(メタ)アクリル酸におけるカルボキシル基の水素原子が炭化水素基に置換された構造を有するものである。
該炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基であってもよいが、共重合のしやすさの点から、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよいが、共重合のしやすさの点から、飽和脂肪族炭化水素基であるアルキル基が好ましい。つまり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体が好ましい。アルキル基の炭素数は、共重合のしやすさの点から、好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜26、特に好ましくは1〜22である。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ノナデシル、アクリル酸アラキジル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸リグノセレニル、アクリル酸セロチニル、アクリル酸メリシニル、アクリル酸パルミトレイニル、アクリル酸オレイル、アクリル酸リノリル、アクリル酸リノレニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ノナデシル、メタクリル酸アラキジル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸リグノセレニル、メタクリル酸セロチニル、メタクリル酸メリシニル、メタクリル酸パルミトレイニル、メタクリル酸オレイル、メタクリル酸リノリル、メタクリル酸リノレニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
スチレン系単量体は、繊維用糊剤として、接着性および抱合性を付与し、落糊の発生を抑制する成分である。特に、芳香族骨格を有するポリエステルから構成されるフィラメント糸の場合に、より効果を発揮する。スチレン系単量体としては、たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレンは、接着性が高いため好ましい。
その他の単量体は、重合性成分aにおいて必須ではないが、繊維用糊剤に一層の接着性および抱合性を付与したり、繊維用糊剤が乾燥して形成される皮膜の硬度を調整したりする目的で用いられることがある。
その他の単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリルアマイド、メタクリルアマイド、ダイアセトンアクリルアマイド、アクリルアマイド−t−ブチルスルホン酸等のアクリルアマイド系単量体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシペンチル、アクリル酸3−ヒドロキシペンチル、アクリル酸4−ヒドロキシペンチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシブチル、アクリル酸2,4−ジヒドロキシブチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸ポリブチレングリコール等のアクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸4−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシブチル、メタクリル酸2,4−ジヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリブチレングリコール等のメタクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体等が挙げられる。
これらのその他の単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。
重合性成分aにおいて、必須成分である(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体を含有する重合性成分や、必要に応じて含まれるその他の単量体の重量割合については、特に限定はないが、本発明の効果をより発揮させる点から、以下の割合が好ましい。
経糸切れを抑制するほどの接着性をより付与し、落糊の発生をより抑制する点から、重合性成分aに占めるスチレン系単量体の重量割合は、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。スチレン系単量体が5重量%未満であると、芳香族骨格を有するポリエステルに対する糊成分Aの接着性が乏しく、経糸切れの発生の原因となることがある。一方、スチレン系単量体が40重量%超であると、糊成分Aの造膜性が乏しく、落糊を増幅させることがある。
さらに、スチレン系単量体の重量割合が上記となる場合において、重合性成分aに占める(メタ)アクリル酸の重量割合は、好ましくは16〜30重量%、さらに好ましくは18〜28重量%、特に好ましくは20〜25重量%である。(メタ)アクリル酸が16重量%未満であると、糊成分Aの水溶性が低く、後の中和工程で中和しても水溶液とならないことがある。一方、(メタ)アクリル酸が30重量%超であると、中和物の粘度が上昇し、取り扱いが困難になる傾向が見られる。
重合性成分aに占める(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、好ましくは10〜94重量%、さらに好ましくは22〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体が20重量%未満であると、接着性が劣る傾向が見られる。一方、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が94重量%超であると、接着性が過度に強くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
重合性成分aに占める(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、100重量%から、(メタ)アクリル酸、スチレン系単量体の重量割合の和を差し引いた残りであり、その他の単量体を含む場合は、さらにこの重量割合を引いた残りである。
重合性成分aに占める(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体の合計の重量割合は、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは92重量%以上、特に好ましくは94重量%以上である。必須単量体の重合割合が90重量%未満の場合、精練性が不良となり、更に接着性不足となることがある。
共重合工程は、重合性成分aを乳化重合により共重合させる工程である。このように、乳化重合により重合性成分aを共重合させ、後述する中和工程を経て得られた共重合体の中和物を含む繊維用糊剤であれば、製織後の後加工工程において、溶液重合により共重合させた場合と比べ、精練性が格段に優れる。特に、重合性成分aに占めるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸の重量割合が前述の場合のときに、その効果をより発揮する。その理由は定かではないが、次のように考えられる。重合性成分aを溶液重合法にて共重合を行った場合、スチレン系単量体の重合速度が(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と大きく異なることから、スチレン系単量体の多い不均一な共重合体を形成することとなる。その結果、糊成分の外観が白濁したり、精練不良問題を起こしたりする可能性がある。一方、乳化重合法による共重合では、ミセル内におけるモノマー量をコントロールすることができるため、スチレン系単量体の単独重合を抑制することができる。特に、重合性成分aに占めるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸の重量割合が前述の場合のときに、この効果がより発揮される。
共重合工程では、重合性成分a以外にも、水や溶剤等の媒体、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、反応性界面活性剤等を用いるが、重合方法は乳化重合で行われれば、特に限定していない。ここで、乳化重合とは、ラジカル重合の一つで、水や溶剤等の媒体と、媒体に難溶な重合性成分(モノマー)を混合して、媒体中で重合性成分を乳化分散させ、重合開始剤を用いて行う重合法である。このような乳化重合によって、共重合体が水等の媒体中に分散した、いわゆるエマルジョンが得られる。通常は、水を媒体とし水に難溶なモノマーを重合する方法が一般的であり、得られたエマルジョンは、O/W型エマルジョンやW/W型エマルジョンと呼ぶこともある。その他にも、溶剤を媒体とし、溶剤に難溶なモノマーを重合する方法(W/O型エマルジョン、O/O型エマルジョン)などがある。すなわち、本発明では、いずれのエマルジョンを得られる重合方法でもかまわない。また、乳化重合に類似した重合方法として、ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合、ソープフリー乳化重合、懸濁重合などの方法が知られているが、これらの方法も本発明でいう乳化重合に含まれる。
本発明で用いる媒体は、重合性成分aが不溶又は難溶となるものであればよい。媒体としては、水や後述の溶剤を挙げることができるが、溶剤の除去等の作業性の点から、水を主体とするものが好ましい。媒体に占める水の重量割合は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。60重量%未満の場合、共重合体の重量平均分子量が低くなることがある。
媒体としての溶剤は、重合温度の制御や、得られる共重合体の分子量を抑制する目的で用いられることがある。溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類等を挙げることができる。溶剤の重量割合については特に限定はない。
乳化剤としては、媒体中で重合成分aを乳化分散させることができれば、特に限定はないが、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を挙げることができ、それらを単独または併用することができる。また、必要に応じて、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を用いることもできる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩(ポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル硫酸塩等)、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩等)、アルキルアリールジスルホン酸塩(アルキルジフェニルジスルホン酸塩等)、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアリールリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテルリン酸塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩(ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物塩等)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、ロート油、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。上記陰イオン界面活性剤が塩の場合、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等を挙げられる。これらの陰イオン界面活性剤は1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルの硫酸塩などが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(ポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが好ましい。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルベタインが好ましい。
陽イオン乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
乳化剤の重量割合については特に限定はないが、重合性成分aに対して好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%、特に好ましくは0.5〜3重量%である。乳化剤の重量割合が0.1重量%未満であると、重合時の乳化不良により中和後の水への溶解が困難となることがある。一方、乳化剤の重量割合が10重量%以上であると、皮膜の耐水性が劣り、ウォータージェットルーム用糊剤としては実用的でない。
重合開始剤としては、特に限定はしないが、媒体に溶解可能なものが好ましく、水溶性重合開始剤、油溶性重合開始剤等を挙げることができる。たとえば、水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド等のパーオキサイド類;2,2´−アゾビス−(2−アミジノプロパン二塩酸塩)等のアゾ化合物類等が挙げられる。油溶性重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート等のパーオキサイド類;アゾビスシクロヘキサンカルボニル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類等を挙げることができる。
重合開始剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分aに対して0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜2.5重量%、特に好ましくは0.5〜2重量%である。重合開始剤の重量割合が0.1重量%未満であると、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、重合開始剤の重量割合が3重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
重合開始方法として、酸化剤と還元剤を用い、レドックス的に分解させる方法を用いることもできる。酸化剤および還元剤としては、公知のレドックス触媒を用いることができる。たとえば、酸化剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウムが挙げられ、特に過硫酸アンモニウムが好ましい。一方、還元剤としては亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、アルキルメルカプタン類などが挙げられ、特に亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウムが好ましい。
酸化剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分aに対して0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2.5重量%、特に好ましくは0.5〜2重量%である。酸化剤の重量割合が0.05重量%未満であると、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、酸化剤の重量割合が3重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
還元剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分aに対して0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。還元剤の重量割合が0.05重量%未満であると、反応時間が長い、若しくは、反応が進行しないため好ましくない。一方、還元剤が4重量%超であると、皮膜の耐水性が低下するため好ましくない。
連鎖移動剤は、共重合体の分子量を抑制するために用いられることがある。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類等が挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合の連鎖移動剤の重量割合は、好ましくは重合性成分aに対して2.0重量%以下であり、さらに好ましくは1.5重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以下である。連鎖移動剤の重量割合が2.0重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
反応性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン−プロペニルアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンフェニルエーテル(第一工業製薬製アクアロンRN―10,RN―20,RN―30,RN―50)、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬製アクアロンHS−10,HS−20,BC−05,BC−10,BC−20)、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(花王製ラテムルS−180A)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(三洋化成製エレミノールJS−2)、α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(旭電化工業製アデカリアソープSE−10N)、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩(日本乳化剤製Antox MS−60)等が挙げられる。これらの反応
性界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
反応性界面活性剤を使用する場合の反応性界面活性剤の重量割合は、好ましくは重合性成分aに対して10重量%以下であり、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
共重合工程は、溶剤の除去等の作業性の点から、水を主体とする媒体および乳化剤の存在下、重合性成分aを乳化分散させ、該重合性成分を共重合させる工程であることが好ましい。さらには、水を主体とする媒体および乳化剤の存在下、重合性成分aを乳化分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて該重合性成分を共重合させる工程であることが好ましい。
乳化重合する際の重合温度や重合時間については、特に限定はなく、その系に適用した条件で行うことができる。共重合工程としては、例えば、以下の1)〜6)等の方法が挙げられる。
1)まず、重合性成分aを撹拌混合し、混合物を調製しておく。これとは別に、イオン交換水、乳化剤、水溶性の重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を混合撹拌して、所定温度に昇温させた系を調製し、その系に前述の混合物を所定時間かけて撹拌しながら添加し、添加終了後さらに所定時間撹拌し続け、共重合体を得ることができる。また、水溶性の重合開始剤を水溶液とし、所定時間滴下させることで重合することもできる。
2)イオン交換水、乳化剤、水溶性の重合開始剤、重合性成分a、必要に応じて連鎖移動剤を攪拌混合し、乳濁液を調製しておく。この乳濁液を所定温度に昇温し、所定時間攪拌を続けることで、共重合体を得ることができる。類似の重合法として水溶性の重合開始剤を水溶液とし、所定時間滴下させることで重合することもできる。
3)イオン交換水、乳化剤、酸化剤、還元剤、重合性成分a、必要に応じて連鎖移動剤を攪拌混合し、乳濁液を調製しておく。この乳濁液を所定温度に昇温し、所定時間攪拌を続けることで、共重合体を得ることができる。類似の重合法として酸化剤および/または還元剤を水溶液とし、所定時間滴下させることで重合することもできる。
4)イオン交換水、乳化剤、水溶性の重合開始剤、重合性成分aの一部、必要に応じて連鎖移動剤を攪拌混合し、乳濁液を調製しておく。この乳濁液を所定温度に昇温し、所定時間攪拌を続け、初期重合を行う。攪拌下、この系に残りの重合性成分aを所定時間滴下することで共重合体を得ることができる。類似の重合法として水溶性の重合開始剤を水溶液とし、所定時間滴下させることで重合することもできる。
5)イオン交換水、反応性界面活性剤、水溶性の重合開始剤、重合性成分a、必要に応じて連鎖移動剤を攪拌混合し、乳濁液を調製しておく。この乳濁液を所定温度に昇温し、所定時間攪拌を続けることで、共重合体を得ることができる。類似の重合法として重合性成分a、反応性界面活性剤、イオン交換水の一部を攪拌混合して乳濁液を調製し、水溶性の重合開始剤を溶解させたイオン交換水を所定温度に昇温させた系へ滴下させることで重合することもできる。
6)イオン交換水、反応性界面活性剤、油溶性の重合開始剤、重合性成分a、必要に応じて連鎖移動剤を攪拌混合し、乳濁液を調製しておく。この乳濁液を所定温度に昇温し、所定時間攪拌を続けることで、共重合体を得ることができる。類似の重合法として重合性成分a、油溶性の重合開始剤、反応性界面活性剤、イオン交換水の一部を攪拌混合し、乳濁液を調製し、所定温度に昇温させたイオン交換水へ滴下させることで重合することもできる。
また、上記のいずれの方法においても、重合性成分aの酸成分をアルカリ成分で中和し、共重合することもできる。
共重合工程で得られた共重合体の酸価は、好ましくは100〜230、より好ましくは120〜210、さらに好ましくは130〜190である。酸価が100未満の場合、糊成分Aの水溶性が低く、後の中和工程で中和しても水溶液とならないことがある。一方、230超の場合、中和物の粘度が上昇し、取り扱いが困難になる傾向が見られる。なお、本発明でいう酸価とは、共重合体1グラム中に含まれている(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
次に、共重合工程で得られた共重合体を中和する中和工程を説明する。中和工程では、水の存在下、共重合体を含む分散体にアルカリ性物質を添加して、共重合体をその中和物に変換する。得られた糊成分Aおよび水を含む組成物(糊成分液A)は本発明の繊維用糊剤である。
アルカリ性物質としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。これらのアルカリ性物質は水に溶解させた水溶液として滴下することが好ましく、たとえば、濃度10〜30重量%のアルカリ性物質の水溶液を調製し、10〜30分間かけて共重合体を含む分散体に滴下するとよい。アルカリ性物質の滴下の終点は、たとえば、共重合体を含む分散体が透明感のある状態に変化することで判断できる。この場合、糊成分Aは水に溶解した状態であり、糊成分液A(繊維用糊剤)は、糊成分Aが溶解した水溶液と言うことができる。
糊成分Aの中和度は、好ましくは40〜100mol%、より好ましくは50〜90mol%、特に好ましくは60〜80mol%である。糊成分Aの中和度が40mol%より低いと、糊成分Aの水溶性が低く水溶液とならないことがある。ここで、中和度とは、カルボキシル基含有単量体の酸量の合計量に対して中和反応を行ったアルカリ成分のmol%のことをいう。
糊成分液AのpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは7.2〜9.5、さらに好ましくは7.5〜9.2、特に好ましくは7.8〜9.0である。糊成分液AのpHが7より低いと、糊成分Aの水溶性が低く、中和しても水溶液とならないことがある。一方、糊成分液AのpHが10よりと高いと、糊成分Aの粘度が高くなり、扱いが難しくなり、好ましくない。
糊成分液Aの粘度は、好ましくは60〜1000mPa・s、さらに好ましくは80〜800mPa・s、特に好ましくは100〜600mPa・sである。糊成分液Aの粘度が60mPa・sより低いと、サイジング時の糊成分Aの付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、糊成分液Aの粘度が1000mPa・sより大きいと、取扱いが難しくなり好ましくない。
共重合体又はその中和物は、分子量の異なる同族体の集合体であり、その分子量は平均量として求められる。この平均分子量の定義は、数種類あり、例えば、数平均分子量、重量平均分子量、z平均分子量および粘度平均分子量等が一般に使用されている。なお、本発明では、重量平均分子量を用いることとする。重量平均分子量は、開始剤の比率、連鎖移動剤の有無、溶剤等公知の手法で調整できる。重合性成分aを共重合して得られる共重合体又はその中和物の重量平均分子量は、好ましくは10000〜200000、さらに好ましくは20000〜150000、特に好ましくは30000〜100000である。該重量平均分子量が200000超の場合、精練不良となることがある。一方、該重量平均分子量が10000未満の場合、接着性および抱合性が劣ることがある。
本発明の繊維用糊剤は、本発明の製造方法によって得られたものであり、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分aを乳化重合により共重合して得られる共重合体の中和物(糊成分A)と、水とを必須成分として含むものである。本発明の繊維用糊剤において、繊維用糊剤を繊維に適用した際に、糊成分Aだけを含有する繊維用糊剤のみを意味するのではない。本発明の繊維用糊剤には、糊成分Aおよび水とともに、糊成分A以外の他の糊成分をさらに含有してもよい。
繊維用糊剤に含まれる固形分に占める糊成分Aの重量割合については、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは70〜98重量%、特に好ましくは75〜95重量%である。糊成分Aの重量割合が繊維用糊剤に含まれる固形分の70重量%未満であると、接着性が乏しく、経糸切れの発生の原因となる可能性がある。
糊成分A以外の他の糊成分は、糊成分Aではない成分であれば特に限定はないが、たとえば、デンプン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、合成糊((メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系重合体、マレイン酸系重合体およびその塩等、水溶性ポリエステル、水溶性ウレタン等)が挙げられる。
本発明の繊維用糊剤は、糊成分以外にも、経糸に柔軟性および平滑性を付与し、製織時の開口不良等の粘着問題に対応するためのワックス、界面活性剤、糊付糸の剥離および摩擦帯電を防止するための帯電防止剤、糸条への繊維用糊剤の浸透を補助する目的の浸透剤、繊維用糊剤の起泡を抑えるための消泡剤、製織によって製造された生機の微生物汚染を防止するための抗菌剤等のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の中でも、ワックスを含有することが好ましい。
本発明の繊維用糊剤の製造方法において、その他の成分は、共重合工程や中和工程で添加されてもよく、共重合工程や中和工程とは別工程で添加されてもよい。本発明の繊維用糊剤の製造方法においては、共重合工程や中和工程とは別に、得られた糊成分Aにワックスを添加する工程をさらに含むことが好ましい。
ワックスとしては、たとえば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;木蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ラノリン、ライスワックス、バナナワックス、サトウキビワックス等の動植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、ステアリン酸、硬化牛脂、硬化豚脂等が挙げられる。これらのワックスは、1種または2種以上を併用してもよい。ワックスは油溶性であるので、通常は、分散性を考慮して、非イオン界面活性剤やアニオン界面活性剤等の界面活性剤を用いて乳化した水系分散体として用いられる。
ワックスを添加する工程としては、例えば、ワックスの水系分散体を別途調製しておき、上述の中和工程で得られた糊成分にワックスの水系分散体を添加して、これらを混合撹拌する工程等が挙げられる。
繊維用糊剤に含まれる固形分に占めるワックスの重量割合については、特に限定はないが、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは3〜17重量%となるように配合される。ワックスの重量割合が繊維用糊剤に含まれる固形分の1重量%未満であると、平滑性が劣る傾向が見られる。一方、重量割合が繊維用糊剤に含まれる固形分の30重量%超であると、ワックスの剥離効果により接着性や抱合性が阻害される傾向がある。
製織時の抱合性等の物性を考慮すると、繊維用糊剤には、界面活性剤を含有しない方が一般には好ましい。しかし、繊維用糊剤に含まれるワックスの安定性や、後加工工程における精練性の点では、界面活性剤(好ましくは非イオン界面活性剤)を含むほうが好ましい。繊維用糊剤において、界面活性剤はワックスとともに、ワックスの水系分散体として配合してもよく、ワックスとは別に配合してもよいが、前者が後者よりも好ましい。このような事情から、繊維用糊剤が界面活性剤を含む場合、その量は、製織および後加工における物性バランスを考慮して決定される。界面活性剤の重量割合は、好ましくはワックスの5〜45重量%、さらに好ましくは8〜40重量%、特に好ましくは10〜35重量%である。
本発明の繊維用糊剤は水を必須とする。繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度は、好ましくは繊維用糊剤全体の5〜18%、さらに好ましくは6〜15%、特に好ましくは7〜13%である。固形分の重量濃度が5%未満では、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、固形分の重量濃度が18%超では、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が多くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
繊維用糊剤のpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは7.2〜9.5、さらに好ましくは7.5〜9.2、特に好ましくは7.8〜9.0である。繊維用糊剤のpHが7より低いと、糊成分A等の糊成分の水溶性が低く、繊維用糊剤が水溶液とならないことがある。一方、繊維用糊剤のpHが10よりと高いと、糊成分A等の糊成分の粘度が全般に高くなり、扱いが難しくなる可能性がある。
繊維用糊剤の粘度は、好ましくは10〜800mPa・s、さらに好ましくは20〜600mPa・s、特に好ましくは30〜400mPa・s、である。繊維用糊剤の粘度が10mPa・sより低いと、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、繊維用糊剤の粘度が800mPa・sより大きいと、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が多くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
[糊付糸]
本発明の糊付糸は、上記で説明した繊維用糊剤を糸条にサイジングして得られる。
糸条は、フィラメント糸、紡績糸(スパン糸)のいずれでもよい。糸条を構成する糸種には特に限定はなく、綿;レーヨン;アセテート;麻;羊毛;アクリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステル繊維;ポリ−ε−カプラミドおよびポリヘキサメチレンジアミンアジパミド等の脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維);ポリメタフェニレンイソフタラミドおよびコポリパラフェニレン−3,4−オキシジフェニレンテレフタラミド等の芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)等が挙げられる。特に糸条を構成する糸種が芳香族骨格を有するポリエステルから構成されるフィラメント糸であると、繊維用糊剤との接着性および抱合性が良いために好ましい。芳香族骨格を有するポリエステルから構成されるフィラメント糸とは、実質的にポリエチレンテレフタレートからなるものが好適であるが、他の芳香族骨格を有するポリエステルや芳香族骨格を有するポリアミドに対しても良好な接着性および抱合性を示す。糸条は、単独の糸種から構成されていてもよく、複数の糸種から構成された混繊糸、混紡糸やマルチフィラメント糸であってもよい。
糸条の太さに制限はないが、フィラメント糸では、好ましくは1000デシテックス以下、さらに好ましくは470デシテックス以下、特に好ましくは167デシテックス以下である。紡績糸(スパン糸)では、好ましくは20〜100番手、さらに好ましく歯20〜90番手、特に好ましくは20〜80番手である。
サイジング方法については特に限定はないが、たとえば、ビームトゥービーム方式等を挙げることができる。ビームトゥービーム方式は、まず、クリールより糸条を引き出した整経ビームと、繊維用糊剤を入れた糊付ボックスとを準備する。次いで、糸条を整経ビームから引っ張り出し、糊付ボックス内を通過させて、糸条に繊維用糊剤を付着(糊付)させ、その後、ノンタッチホットエアー乾燥およびタッチシリンダー乾燥を施して得られた糊付糸を糊付ビームに巻く方式である(糊付け速度:50〜300m/min、ノンタッチホットエアー乾燥温度:80〜150℃、タッチシリンダー乾燥温度:50〜130℃)。
糊付糸における繊維用糊剤の付着量については、糸条の種類や太さ等によって相違するので特に限定はないが、一般的には、好ましくは2〜18重量%、さらに好ましくは
3〜15重量%、特に好ましくは4〜13重量%である。繊維用糊剤の付着量の測定条件等は以下に詳述する。
糸条がポリエステルフィラメント糸の場合、糊付糸における繊維用糊剤の付着量は、好ましくは2〜13重量%、さらに好ましくは4〜11重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。付着量が2重量%未満では、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、付着量が13重量%超では、付着量が多すぎて製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
本発明の糊付糸を製織に使用する場合、経糸、緯糸のいずれにも使用することができるが、通常、経糸に使用すると好ましい。経糸は、上記に示すように、糸条に繊維用糊剤を付着、乾燥後の糊付糸を、糊付ビームに巻取ることによって得られる。
[織物の製造方法]
本発明の織物の製造方法は、上記糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む方法である。
経糸は、上記糊付糸を糊付ビームに巻取ることによって得られる。また、緯糸は、糸条に処理を施してもよいが、通常は特段の処理をすることなく、原糸をそのまま用いるのが一般的である。
製織機としては、たとえば、レピアルームやエアージェットルームのドライ製織機;ウォータージェットルーム等が挙げられる。この中で製織機がウォータージェットルームであるときがより好ましい。
製織は、たとえば、上記で説明した糊付糸を一本ずつ綜絖と筬に引き通す経通し(ドローイング)を行って経糸を準備し、製織機にかける。次いで、経糸をたとえば互い違いに上下に運動させながら、緯糸として経糸間に挟み込むことによって、製織が行われ、織物が製造される。製織機がウォータージェット製織機であると、製織機の筬上に発生した落糊が、緯糸を飛ばす際に用いられるジェット水によって洗い流されるので、落糊を効果的に抑制できる。
製織する工程としては、たとえば、経糸として上記で説明した糊付糸を4,000〜20,000本、緯糸としてポリエステルフィラメント糸(11〜167デシテックス、5〜144フィラメント)を準備し、製織機としてウォータージェットルーム(津田駒工業(株)製ウォータージェットルーム等)やエアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム等)を用いて、織機回転数500〜800rpmで50mを一疋として、ポリエステルタフタを100〜200疋製織できる(織り幅:70〜200cm)。
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に示す物性等の測定方法を以下に示す。
(1)固形分の重量濃度
一定量(通常1.0〜2.0g)の試料(重量:M1)について、赤外線水分計装置((株)Kett科学研究所、乾燥減量法、FD230)を用いて固形分の重量濃度を測定する。
固形分の重量濃度は、赤外線水分計装置を用いれば自動で計算されるが、その測定の原理は、上記M1と、試料を赤外線水分計装置で乾燥し恒量に達した重量(M2)とから、固形分の重量濃度を次式で計算するものである。M2は固形分の重量である。
固形分の重量濃度(%)=(M2/M1)×100
(2)pH
ガラス電極pH測定装置((株)堀場製作所製、navihF−51)を使用して、20℃で測定する。
(3)粘度
B型回転粘度計(BROOK FIELD社製)を使用して、ローターNo.62で30回転にて、20℃で測定する。
(4)重量平均分子量
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)で標準物質ポリスチレン(東ソー(株))による検量線を用いて測定した。
(測定条件)
使用機器:高速液体クロマトグラフィHLC−8020(東ソー(株))
カラム:TSKgelGMHXL×2(東ソー(株))
溶剤:THF(テトラヒドロフラン)(和光純薬工業(株)、液体高速クロマトグラフィ用)
測定温度:40℃
流量:1.0ml/min.
検出器:示差屈折計
注入量:20μl
(5)糊成分の外観
20℃雰囲気下、100mlビーカーに25%の糊成分を80g加え、水平方向より目視により試料を観察した。
<糊成分の外観の評価基準>
○:透明
△:やや白濁
×:白濁
(6)繊維用糊剤の付着量
サイジング後の糊付糸(約2g)をサンプルとし、110℃で30分間乾燥後秤量(W1)し、100倍量の精練浴(炭酸ソーダ:2g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル:2g/L)中で、90℃で30分間浸漬させ、湯洗する。サンプルをさらに水洗後、1時間乾燥した後、サンプルを秤量(W2)し、次式より付着量を求めた。
付着量(%)=[(W1−W2)/W2]×100
(7−1)乾式抱合力(乾燥状態における接着性および抱合性の評価)
TM式抱合力試験機にて抱合力を測定する。20本の糊付糸を引き揃え、下記に示す糸張力をかけながら張り、左右が150°、中央が120°の角度で3列に配置したコーム間(コーム:20針×3列;コームの間隔:30mm;コームの往復運動距離:27mm)を往復運動(コームの運動速さ:150回/min)させ、糊付糸を摩擦する。20回摩擦して、糊付糸の割れ具合を目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
糸張力:一本当たり0.2〜0.6g/デシテックス
(ポリエステルフィラメント糸33デシテックス24フィラメントでは180g/20本(=9g/本)、56デシテックス24フィラメントでは200g/20本(=10g/本)で測定)
(7−2)湿式抱合力(湿潤状態における接着性および抱合性の評価)
上記乾式抱合力の測定において、往復運動によって摩擦される糊付糸の部分にイオン交換水を0.1g/sの速度で添加する以外は、乾式抱合力の測定と同様に湿式抱合力を評価する。
<乾式および湿式抱合力の評価基準>
5級:糸割れなし
4級:糸割れ少しあり
3級:糸割れあり
2級:糸割れ多数あり
1級:全体的に糸割れあり
(8−1)乾式落糊性(乾燥状態における落糊性の評価)
1000mの糊付糸1本を下記に示す糸張力をかけながら、左右が150°で、中央が120°の角度で屈曲したコームの間(コーム:20針×3列;コームの間隔:100mm)を50m/minの糊付糸送り速度で走らせ、糊付糸を摩擦する。脱落した落糊量、コームに付着した落糊を観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
糸張力:一本当たり0.2〜0.6g/デシテックス
(ポリエステルフィラメント糸33デシテックス24フィラメントでは6g、56デシテックス24フィラメントでは10gで測定)
(8−2)湿式落糊性(湿潤状態における落糊性の評価)
上記乾式落糊性の測定において、摩擦される糊付糸の部分にイオン交換水を0.1g/sの速度で添加する以外は、乾式落糊性の測定と同様に湿式落糊性を評価する。
<乾式および湿式落糊性の評価基準>
5級:糊の脱落、コームに落糊付着なし
4級:糊の脱落、コームに落糊付着少しあり
3級:糊の脱落、コームに落糊付着あり
2級:糊の脱落、コームに落糊付着少し多い
1級:糊の脱落、コームに落糊付着多い
(9)筬付着落糊性(実用製織性試験における落糊性の評価)
ウォータージェットルーム(津田駒工業(株)製ウォータージェットルーム)を用いた製織時の筬付着落糊性(筬に付着する脱落糊の程度)を目視で観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
<筬付着落糊性の評価基準>
5級:筬に落糊付着なし
4級:筬に落糊付着少しあり
3級:筬に落糊付着あり
2級:筬に落糊付着少し多い
1級:筬に落糊付着多い
(10)精練性
繊維用糊剤にイオン交換水を添加して、固形分の重量濃度を10%に調整した液に、ポリステルタフタ(10cm×10cm四角)を浸漬し、ローラーで絞って乾燥する。乾燥して得られたタフタについて、下記に示す2種類の精練条件でそれぞれ30秒間精練を行い、水洗する。その後、ローダミン染色(和光純薬工業(株))液に15分間浸漬し、再度水洗し、乾燥する。乾燥して得られた染色されたタフタを目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって色調を評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
(精練条件1)
精練液:炭酸ソーダ(和光純薬工業(株))0.5g/L、POE10モル付加ノニルフェノールエーテル(和光純薬工業(株))0.5g/L
精練温度:85℃
浴比:100倍
(精練条件2)
精練液:苛性ソーダ(和光純薬工業(株))2g/L、POE10モル付加ノニルフェノールエーテル(和光純薬工業(株))1g/L
精練温度:90℃
浴比:100倍
<精練性の評価基準>
5級:呈色なし
4級:微妙に赤い
3級:少し赤い
2級:やや赤い
1級:赤い
〔糊成分A1の製造例〕
(乳化重合による共重合工程)
重合性成分(表1に種類および量を示す)、n−ドデシルメルカプタン2gを攪拌混合し、混合物を得て、滴下ロートに移した。滴下ロート、温度計、撹拌機、コンデンサーおよび窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコにイオン交換水1500g、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、70℃に昇温した。次に、撹拌しながら、さらに水溶性重合開始剤である過硫酸アンモニウム5gを4つ口フラスコに加えて、75℃にて2時間かけて混合物を滴下ロートから4つ口フラスコに滴下した。滴下終了後、1時間共重合し、さらに、過硫酸アンモニウム0.5gを加え、後重合熟成を3時間行い、共重合体を含む反応混合物を得た。
(中和工程)
共重合後、濃度16%のアンモニア水74gを反応混合物に徐々に加えて共重合体を中和(pH7〜10)し、室温に冷却し、共重合体の中和物からなる糊成分A1を含む糊成分液A1を得た。
糊成分液A1に含まれる固形分の重量濃度25%に調整した水溶液の粘度(糊成分液1−1の粘度)は225mPa・sであった。また、糊成分液A1に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpH(糊成分液A1のpH)は、8.5であった。pH測定のための希釈には、粘度測定時と同様にイオン交換水を用いた。また、糊成分液A1を自然乾燥した後、濃度が0.5mg/mlになるようTHF(テトラヒドロフラン)(和光純薬工業(株)、液体高速クロマトグラフィ用)に溶解し、糊成分A1の重量平均分子量を測定した。
〔糊成分A2〜A7、B1の製造例〕
(乳化重合による共重合工程)
表1に示した種類および量の重合性成分と連鎖移動剤を滴下ロートに入れ、イオン交換水、溶剤、乳化剤を上記糊成分A1の製造例で用いた4つ口フラスコに加えた。次いで、開始剤を4つ口フラスコにさらに加え、撹拌混合し、窒素ガスを吹き込みながら、70℃に昇温した。次に、撹拌しながら、さらに水溶性重合開始剤である過硫酸アンモニウム5gを4つ口フラスコに加えて、75℃にて2時間かけて混合物を滴下ロートから4つ口フラスコに滴下した。滴下終了後、1時間共重合し、さらに、過硫酸アンモニウム0.5gを加え、後重合熟成を3時間行い、共重合体を含む反応混合物を得た。なお、表1のPOEアルキルエーテル硫酸ナトリウムは、花王製レベノールWXである。
(中和工程)
共重合後、濃度16%のアンモニア水表1に示した量を反応混合物に徐々に加え中和し、室温に冷却し、糊成分A2〜A7を含む糊成分液A2〜A7、B1を得た。糊成分液A2〜A7、B1に含まれる固形分の重量濃度は25%であった。
糊成分A1の製造例と同様にして測定した糊成分液A2〜A7、B1の粘度、pHおよび糊成分A2〜A7、B1の重量平均分子量をそれぞれ表1に示す。
〔糊成分B2〜B4の製造例〕
(溶液重合による共重合工程)
表1に示した種類および量の重合性成分と、溶剤とイオン交換水と(溶剤を主体とする媒体)を上記糊成分A1の製造例で用いた4つ口フラスコに加えた。次いで、表1に示した油溶性重合開始剤であるベンゾイルパーオキサイドを4つ口フラスコにさらに加え、撹拌混合し、82℃にて5時間共重合を行い、共重合体を含む反応混合物を得た。
(中和工程)
共重合後、濃度16%のアンモニア水表1に示した量を反応混合物に徐々に加え中和し、室温に冷却し、イオン交換水を加えて、糊成分B2〜B4を含む糊成分液B2〜B4を得た。糊成分液B2〜B4に含まれる固形分の重量濃度はそれぞれ25%であった。
実施例1−1と同様にして測定した糊成分液B2〜B4の粘度、pHおよび糊成分B2〜B4の重量平均分子量をそれぞれ表1に示す。
Figure 2012193474
繊維に付着させて用いる場合の物性を総合的に判断するために、以下の実施例および比較例では、ワックスをその水系分散体として配合した繊維用糊剤について諸物性を調べた。
〔実施例1−1〕
上記製造例で得た糊成分A1を含む糊成分液A1と、パラフィンワックスおよびエステルワックスを非イオン界面活性剤で乳化したワックスの水系分散体(サイジングワックスK−2、松本油脂製薬(株))とを混合し、それぞれの重量比率が、糊成分A1/ワックス/界面活性剤=96/3.5/0.5となる繊維用糊剤aを調製した。
繊維用糊剤aに含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpH(繊維用糊剤1のpH)を測定し、その結果を表2に示す。
繊維用糊剤aを調製してから12時間以内に、ポリエステルフィラメント糸(33デシテックス24フィラメント)、ポリエステルフィラメント糸(56デシテックス24フィラメント)の糸状に対して、下記に示すサイジング条件でサイジングマシーンを用いて繊維用糊剤aを付着させて糊付糸aを得た。なお、糊付糸aにおける繊維用糊剤aの付着量は5%であった。
<サイジング条件>
ビームトゥービーム方式
糊付け速度:80m/min
ノンタッチホットエアー乾燥温度:130℃
タッチシリンダー乾燥温度:100℃
タッチシリンダー数:3本
得られた糊付糸aについて、乾式および湿式における抱合力および落糊性を評価した。繊維用糊剤aの精練性はポリステルタフタを用いて評価した。その結果を表2に示した。
〔実施例1−2〜1−8および比較例1−1〜1−3〕
実施例1−1において、使用する糊成分の種類や、糊成分とワックスと界面活性剤との重量比率等をそれぞれ表2に示すものに変更する以外は実施例1−1と同様にして、繊維用糊剤b〜kをそれぞれ調製し、実施例1−1と同様にして、そのpHを測定した。次いで、実施例1−1と同様にして、繊維用糊剤を調製してから12時間以内にサイジングをそれぞれ行い、糊付糸b〜kをそれぞれ得た。なお、それぞれの糊付糸b〜kにおける繊維用糊剤b〜kの付着量は5%であった。得られた糊付糸b〜kについて、実施例1−1と同様にして、乾式および湿式における抱合力、落糊性および精練性をそれぞれ評価した。その結果を表2に示した。
Figure 2012193474
表2から、乾式抱合力および湿式抱合力については、本発明の製造方法で得られた実施例の繊維用糊剤a〜hにおいて満足できる。一方、糊成分B1、B2から作成された比較例の繊維用糊剤i、jでは劣っている。すなわち、スチレン系単量体を含まない重合性成分を共重合させた場合は、乳化重合や溶液重合であっても、乾式抱合力および湿式抱合力は劣る。
また、乾式落糊性および湿式落糊性については、本発明の製造方法で得られた実施例の繊維用糊剤a〜hにおいて満足できる。特に湿式落糊性については、実施例の繊維用糊剤a〜hでは、糊の脱落、コームに落糊が付着しないので優れている。したがって、実施例の繊維用糊剤a〜hを用いてウォータージェットルーム製織を行った場合、落糊のない優れた結果も得られる。一方、糊成分B1、B2から作成された比較例の繊維用糊剤i、jでは劣っている。すなわち、スチレン系単量体を含まない重合性成分を共重合させた場合は、乳化重合や溶液重合であっても、乾式落糊性および湿式落糊性は劣る。
また、精練性は、本発明の製造方法で得られた実施例の繊維用糊剤a〜hでは優れる。一方、糊成分B3(外観やや白濁)から作成された比較例の繊維用糊剤kでは劣っている。また、糊成分B4(外観白濁)は水溶性が低く、繊維用糊剤として評価できない。仮に評価した場合、精練性が劣るのは明白である。このように、スチレン系単量体を含む本願と同様な重合性成分を溶液重合で共重合させた場合は、精練性が極めて劣る。

Claims (8)

  1. 共重合体の中和物を含む繊維用糊剤の製造方法であって、
    (メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびスチレン系単量体を含有する重合性成分を乳化重合により共重合させる共重合工程と、該共重合工程で得られた共重合体を中和する中和工程とを含む、繊維用糊剤の製造方法。
  2. 前記重合性成分に占める前記スチレン系単量体の重量割合が5〜40重量%であり、前記(メタ)アクリル酸の重量割合が16〜30重量%である、請求項1に記載の繊維用糊剤の製造方法。
  3. 前記共重合体の中和物の重量平均分子量が10,000〜200,000である、請求項1または2に記載の繊維用糊剤の製造方法。
  4. 前記共重合工程が、水を主体とする媒体および乳化剤の存在下、前記重合性成分を乳化分散させ、該重合性成分を共重合させる工程である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維用糊剤の製造方法。
  5. さらにワックスを添加する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維用糊剤の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られた繊維用糊剤であって、該繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHが7〜10の範囲にある、繊維用糊剤。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られた繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなる、糊付糸。
  8. 請求項7に記載の糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む、織物の製造方法。
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