JP6473360B2 - 繊維用糊剤及びその応用 - Google Patents

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Description

本発明は繊維用糊剤及びその応用に関する。詳細には、本発明は、ドライ製織の際に特に好ましく使用される経糸用糊剤、該糊剤の製造方法、該糊剤をサイジングして得られる糊付糸及び該糊付糸を用いて行われる織物の製造方法に関する。
繊維の製織に使用される糊剤には、接着力、耐ガムアップ性、耐摩耗性、精練性等の種々の性能が要求されている。フィラメント糸を用いて製織する場合、汎用的にドライ織機製織が行われている。
ドライ織機製織では、一般的に、アクリル系共重合体とポリビニルアルコールとを混合させた糊剤を用いる。しかし、このような糊剤は、アクリル系共重合体とポリビニルアルコールとが容易に分離し、保存安定性に問題があった。分離した糊剤を用いると、糊剤としての性能を満たすができないという問題があった。そのため、通常、糊剤を糸条に付与する直前に、ポリビニルアルコールを水に溶解させ、アクリル系共重合体やその他成分を含む糊剤を混合させる糊炊き工程により、糊剤を調製していた。
しかし、糊剤を糸条に付与する度に糊炊き工程を行う必要があり、極めて生産性に劣るものであった。また、糊剤を糸条に付与する度に糊炊き工程を行うと、ポリビニルアルコールの溶解が不十分になる場合や、各成分の混合比を間違うといったトラブルになる可能性があった。以上のことから、アクリル系共重合体とポリビニルアルコールとを混合し、一液化した場合であっても保存安定性に優れている繊維用糊剤が求められている。
特開平5−163675号公報
本発明の目的は、保存安定性に優れたアクリル系重合体及びポリビニルアルコールを含む繊維用糊剤、当該繊維用糊剤の製造方法、当該繊維用糊剤をサイジングして得られる糊付糸、及び当該繊維用糊剤を用いて行われる織物の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の共重合体を特定のアミン化合物を必須に含む塩基性化合物により中和した中和物(A)と、特定のポリビニルアルコール(B)とを併用する繊維用糊剤であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の繊維用糊剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体と塩基性化合物との中和物(A)、及びケン化度が70〜90モル%のポリビニルアルコール(B)を含み、前記重合性成分に占める、前記(メタ)アクリル酸の重量割合が5〜30重量%であり、前記ニトリル系単量体の重量割合が0.1〜20重量%であり、前記塩基性化合物が、沸点が101〜400℃のアミン化合物を必須に含むものである。
繊維用糊剤の固形分に占める前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)の重量割合は、50重量%を超えることが好ましい。
繊維用糊剤の固形分に占める前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)と前記ポリビニルアルコール(B)の重量割合は、下記式を満たすものであることが好ましい。
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の重量割合>ポリビニルアルコール(B)の重量割合
前記ポリビニルアルコール(B)の平均重合度は、100〜4000であることが好ましい。
前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)の重量平均分子量は、100000〜350000であることが好ましい。
本発明の繊維用糊剤は、さらにワックス(C)を含むことが好ましい。
本発明の繊維用糊剤の製造方法は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合させる共重合工程と、前記共重合工程で得られた共重合体を塩基性化合物で中和する中和工程と、前記中和工程で得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)と、ケン化度が70〜90モル%のポリビニルアルコール(B)とを混合する混合工程とを含み、前記重合性成分に占める前記(メタ)アクリル酸の重量割合が5〜30重量%であり、前記ニトリル系単量体の重量割合が0.1〜20重量%であり、前記塩基性化合物が、沸点が101〜400℃のアミン化合物を必須に含むものである。
本発明の糊付糸は、上記の繊維用糊剤及び/又は上記の製造方法によって得られた繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなるものである。
本発明の織物の製造方法は、上記の糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含むものである。
前記製織機がドライ織機であることが好ましい。
本発明の繊維用糊剤及び本発明の製造方法で得られる繊維用糊剤は、保存安定性に優れる。そのため、アクリル系重合体及びポリビニルアルコールを混合させて一液化することが可能であり、糊炊き工程を簡略化でき、生産性の向上を図ることができる。また、本発明の繊維用糊剤は、所定の濃度に希釈することで使用可能であるため、糊処方を間違える可能性が低くなる。
本発明の糊付糸を使用した場合、製織後の後加工工程において精練性に優れる。
本発明の織物の製造方法では、後加工工程において精練性に優れる織物が得られる。
[繊維用糊剤及びその製造方法]
本発明の繊維用糊剤は、特定の共重合体を特定のアミン化合物を含む塩基性化合物で中和した中和物(A)と特定のポリビニルアルコール(B)を含むものである。本発明の繊維用糊剤の製造方法は、共重合体の中和物とポリビニルアルコールとを含み、特定の重合性成分を共重合させる共重合工程と、該共重合工程で得られた共重合体を特定のアミン化合物を含む塩基性化合物で中和する中和工程と、中和工程で得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)と特定のポリビニルアルコール(B)とを混合する混合工程とを含むものである。以下、詳細に説明する。
(共重合体と塩基性化合物との中和物(A))
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体と塩基性化合物との中和物である。
共重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合させる共重合工程によって製造される。共重合体と塩基性化合物との中和物(A)は、共重合工程で得られた共重合体を塩基性化合物で中和する中和工程を経て、製造できる。通常、中和工程では、水の存在下、塩基性物質を添加して共重合体をその中和物に変換するので、得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)は水と共存している。
重合性成分は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体を含有し、その他の単量体を含有していてもよい。本願において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味するものとする。したがって、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、アクリル酸エステル系単量体及び/又はメタクリル酸エステル系単量体を意味する。
(メタ)アクリル酸は、繊維用糊剤として要求される基本物性である水溶性、接着性、抱合力を付与し、製織後の後加工工程において精練性を高める成分である。
(メタ)アクリル酸中に占めるメタクリル酸の重量割合は、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは60〜100重量%である。メタクリル酸の重量割合が少なすぎる場合、重合性成分中に含まれることがある他の疎水性モノマーとの相溶性が低下し、均一な重合物を得ることが難しくなる。
重合性成分に占める(メタ)アクリル酸の重量割合は5〜30重量%であり、好ましくは6〜28重量%、さらに好ましくは7〜26重量%、特に好ましくは8〜24重量%である。(メタ)アクリル酸が5重量%未満であると、中和物の水溶性が低く、精練工程において精練性不良となる。一方、(メタ)アクリル酸が30重量%超であると、接着性が強くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす。
重合性成分としてニトリル系単量体を必須とすることにより、中和物の極性が高くなり、中和物とポリビニルアルコールとの相溶性が良くなり保存安定性に優れる。
ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜19重量%、さらに好ましくは3〜18重量%、特に好ましくは5〜17重量%である。ニトリル系単量体が0.1重量%未満であると中和物は極性が低く、ポリビニルアルコールとの相溶性が悪くなり、保存安定性が低下する。一方、ニトリル系単量体が20重量%超である中和物は極性が高くなり、ポリビニルアルコールとの相溶性が悪くなり保存安定性が低下する。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、(メタ)アクリル酸におけるカルボキシル基の水素原子が炭化水素基に置換された構造を有するものである。
該炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基であってもよいが、共重合のしやすさの点から、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよいが、共重合のしやすさの点から、飽和脂肪族炭化水素基であるアルキル基が好ましい。つまり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体が好ましい。アルキル基の炭素数は、共重合のしやすさの点から、好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜26、特に好ましくは1〜22である。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ノナデシル、アクリル酸アラキジル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸リグノセレニル、アクリル酸セロチニル、アクリル酸メリシニル、アクリル酸パルミトレイニル、アクリル酸オレイル、アクリル酸リノリル、アクリル酸リノレニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ノナデシル、メタクリル酸アラキジル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸リグノセレニル、メタクリル酸セロチニル、メタクリル酸メリシニル、メタクリル酸パルミトレイニル、メタクリル酸オレイル、メタクリル酸リノリル、メタクリル酸リノレニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
重合性成分に占める(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、好ましくは40〜94重量%、更に好ましくは45〜90重量%、特に好ましくは50〜85重量%である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体が40重量%未満であると、接着性が劣る傾向が見られる。一方、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が94重量%超であると、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
重合性成分がその他の単量体を含む場合、その重量割合は、100重量%から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体の重量割合の和を差し引いた残りである。
本発明の効果をより発揮させる点から、重合性成分に占める(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とニトリル系単量体の合計の重量割合は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上である。
重合性成分は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の単量体を含んでもよい。その他の単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン系単量体;アクリルアマイド、メタクリルアマイド、ダイアセトンアクリルアマイド、アクリルアマイド−t−ブチルスルホン酸等のアクリルアマイド系単量体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシペンチル、アクリル酸3−ヒドロキシペンチル、アクリル酸4−ヒドロキシペンチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシブチル、アクリル酸2,4−ジヒドロキシブチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸ポリブチレングリコール等のアクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸4−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシブチル、メタクリル酸2,4−ジヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリブチレングリコール等のメタクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体等が挙げられる。これらのその他の単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。
共重合工程は、重合性成分を共重合させる工程である。共重合工程では、重合性成分及び水以外にも、溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤等を用いるが、重合方法は既知なものであれば、特に限定していない。すなわち、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の方法で一つあるいは二つ以上の方法を用いることが可能である。
重合に使用する溶剤は、重合性成分の相溶性を向上させ、得られる共重合体の分子量を抑制する目的で使用される。溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類等を挙げることができる。溶剤の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは重合性成分に対して2〜50重量%、さらに好ましくは6〜40重量%、特に好ましくは8〜35重量%である。溶剤の重量割合が2重量%未満であると、共重合時の溶解安定性が悪くなる傾向が見られ、さらに、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、溶剤の重量割合が50重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。
重合開始剤としては、特に限定はしないが、水溶性重合開始剤及び油溶性開始剤等が好ましい。例えば、水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド等のパーオキサイド類;2,2´−アゾビス−(2−アミジノプロパン二塩酸塩)等のアゾ化合物類等が挙げられる。油溶性開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート等のパーオキサイド類;アゾビスシクロヘキサンカルボニル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類等を挙げることができる。重合開始剤の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは重合性成分に対して0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜2.5重量%、特に好ましくは0.5〜2重量%である。重合開始剤の重量割合が0.1重量%未満であると、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、重合開始剤の重量割合が3重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。
連鎖移動剤は、共重合体の分子量を抑制するために用いられることがある。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類等が挙げられる。連鎖移動剤の重量割合は、好ましくは重合性成分に対して0.8重量%以下であり、さらに好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。重合開始剤の重量割合が0.8重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。
共重合工程では、特には限定しないが、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の方法で適応した重合温度、重合時間で行うことができる。
共重合工程で得られた共重合体の酸価は、好ましくは40〜200、より好ましくは45〜185、さらに好ましくは50〜170である。酸価が40未満の場合、共重合体と塩基性物質の中和物が水溶性とならないことがある。一方、200を超えると接着性が強くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。なお、本発明でいう酸価とは、共重合体1グラム中に含まれている(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
次に、共重合工程で得られた共重合体を塩基性化合物で中和する中和工程を説明する。中和工程では、水の存在下、共重合体を含む分散体に塩基性化合物を添加して、共重合体をその中和物に変換する。
アミン化合物の沸点は、101〜400℃であり、好ましくは105〜390℃、より好ましくは110〜385℃、さらに好ましくは115〜380℃、特に好ましくは120〜375℃、最も好ましくは125〜370℃である。該沸点が101℃未満であると、アミン化合物が揮発しやすく、アミン化合物が揮発した中和物は水溶性等が変化し、ポリビニルアルコール(B)との相溶性が低下し、保存安定性が悪くなる。また、糊付糸は通常100℃以上で乾燥させる工程を含むため、101℃未満のアミン化合物が揮発しやすくなり、糊付糸物性が変化することから好ましくない。一方、該沸点が400℃超の場合、アミン化合物の構造が複雑化し、共重合体物とアミン化合物との中和工程において、中和反応が進行し難くなり、後の精練工程において精練不良となる可能性がある。
上記アミン化合物としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(沸点127℃)、トリブチルアミン(沸点217℃)、アミルアミン(沸点104℃)、モノエタノールアミン(沸点170℃)、ジエタノールアミン(沸点268℃)、トリエタノールアミン(沸点360℃)、N−メチルエタノールアミン(沸点156℃)、ジメチルエタノールアミン(沸点134℃)等のアルキルアミン化合物;ピペリジン(沸点106℃)、ピペラジン(沸点146℃)等といった環状アミン化合物等が挙げられる。これらの中でも作業性の観点からアルキルアミン化合物が好ましい。
塩基性化合物は、上記のアミン化合物以外のその他の化合物を含んでもよい。その他の塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン等の沸点が101℃未満のアミン化合物等が挙げられる。
塩基性化合物全体に占める沸点が101〜400℃のアミン化合物の割合は、好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは15〜70重量%である。該重量割合が1重量%未満の場合、ポリビニルアルコール(B)との相溶性が低下し、保存安定性が悪くなることがある。
塩基性化合物は水に溶解させた水溶液として滴下することが好ましく、例えば、濃度10〜30重量%の塩基性化合物の水溶液を調製し、10〜30分間かけて共重合体を含む分散体に滴下するとよい。塩基性化合物の滴下の終点は、例えば、共重合体を含む分散体が透明感のある状態に変化することで判断できる。この場合、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)は水に溶解した状態である。
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の中和度は、好ましくは30〜100mol%、より好ましくは40〜90mol%、特に好ましくは50〜80mol%である。共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の中和度が30mol%より低いと、糊付の際に異常付着を起こす可能性がある。ここで、中和度とは、(メタ)アクリル酸の酸量の合計量に対して中和反応を行った塩基性化合物のmol%のことをいう。
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)は、分子量の異なる同族体の集合体であり、その分子量は平均量として求められる。この平均分子量の定義は、数種類あり、例えば、数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量等が一般に使用されている。なお、本発明では、重量平均分子量を用いることとする。重量平均分子量は、開始剤の比率、連鎖移動剤の有無、溶剤等公知の手法で調整できる。重合性成分を共重合して得られる共重合体又はその中和物の重量平均分子量は、好ましくは100000〜350000、さらに好ましくは120000〜330000、特に好ましくは150000〜300000、最も好ましくは170000〜270000である。該重量平均分子量が100000未満の場合、接着力不足となることがある。一方、該重量平均分子量が350000超の場合、精練性不良となることがある。
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)を示差走査熱量計(DSC)で測定したときのガラス転移点は、30〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、50〜80℃がさらに好ましい。ガラス転移点が30℃未満であると、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。100℃超であると接着性が劣る傾向が見られる。
なお、本発明でいうガラス転移点とは、JIS−K7121に準拠し、後述するDSC測定により得られるDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、階段状変化部分の曲線とが交わる点(単位:℃)として定義される。
(ポリビニルアルコール(B))
本発明の繊維用糊剤は、ケン化度が70〜90モル%のポリビニルアルコール(B)を必須に含有する。このようなポリビニルアルコール(B)と、特定の共重合体を特定のアミン化合物を必須に含む塩基性化合物により中和した中和物(A)とを併用することにより、優れた保存安定性を有する繊維用糊剤を得ることができる。そのため、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)及びポリビニルアルコール(B)を混合させて一液化することが可能であり、糊炊き工程を簡略化でき、生産性の向上を図ることができる。
ポリビニルアルコール(B)は、1種または2種以上を併用してもよい。ポリビニルアルコール(B)は、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体を重合し、それをケン化することにより得られる。
ポリビニルアルコール(B)のケン化度は70〜90モル%である。該ケン化度が70モル%未満の場合、水溶性が低く、精練不良となる。一方、該ケン化度が90モル%超の場合、粘度が高くなり作業性が悪くなる。該ケン化度は、好ましくは71〜90%、特にさらに好ましくは73〜90%、特に好ましくは75〜90%である。なお、本発明におけるポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K6726に準拠して測定される値をいう。
ポリビニルアルコール(B)の平均重合度は、好ましくは100〜4000、さらに好ましくは200〜3700、特に好ましくは300〜3500、最も好ましくは500〜3000である。該重合度が100未満の場合、繊維への接着性が不十分となることがある。一方、該重合度が4000超の場合、粘度が高くなりサイジングの作業性が悪くなることがある。なお、本発明におけるポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726に準拠して測定される値をいう。
ポリビニルアルコール(B)は、通常、粉末のままでは共重合体と塩基性化合物との中和物(A)と混合することは難しいので、ポリビニルアルコール(B)を水へ溶解させた水溶液を使用する。ポリビニルアルコール(B)の水溶液の調製工程は、通常攪拌した水の中にポリビニルアルコール(B)を入れ、90℃まで昇温させ、攪拌し溶解させ、室温まで冷却する工程等が挙げられる。
(共重合体と塩基性化合物との中和物(A)とポリビニルアルコール(B)との割合及び混合工程)
繊維用糊剤の固形分に占める共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の重量割合は、好ましくは50重量%を超えること、さらに好ましくは51〜95重量%、特に好ましくは53〜90重量%、最も好ましくは55〜85重量%である。該重量割合が50重量%以下の場合、繊維との接着性が劣り、抱合力が悪くなることがある。
繊維用糊剤の固形分に占めるポリビニルアルコール(B)の重量割合は、50重量%未満、さらに好ましくは1〜45重量%、特に好ましくは3〜40重量%、最も好ましくは5〜35重量%である。該重量割合が50重量%超の場合、繊維用糊剤の粘度が高くなり作業性が悪くなることがある。
ここで、固形分とは、繊維用糊剤から水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いた不揮発性の成分を意味することとする。固形分の重量は、実施例に示すとおり、繊維用糊剤を加熱及び/又は乾燥した後に残る成分の重量である。
繊維への接着性の観点から、繊維用糊剤の固形分に占める共重合体と塩基性化合物との中和物(A)とポリビニルアルコール(B)の重量割合が下記式を満たすことが好ましい。
共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の重量割合>ポリビニルアルコール(B)の重量割合
中和工程で得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)とポリビニルアルコール(B)とを混合する混合工程とは、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)と別途調製したポリビニルアルコール(B)水溶液とを混合撹拌する工程等が挙げられる。
繊維用糊剤は一般には粘度が高い。pHメーターを用いて、繊維用糊剤のpHをそのまま測定する場合、測定後のpHメーター洗浄等に支障があることがあるので、繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHを20℃で測定した値を、繊維用糊剤のpHと定義することにする。重量濃度を1%に調整する方法については、特に限定はないが、繊維用糊剤に対して、蒸留水やイオン交換水を添加したりする方法や、加熱及び/又は乾燥を行って、水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いたりする方法等が挙げられる。
繊維用糊剤の粘度についても、上記で詳しく説明したpHと同様に、繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を20%に調整した水溶液の粘度を20℃で測定した値を意味することにする。重量濃度を20%に調整する方法も上記と同様である。
繊維用糊剤のpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは7.2〜9.5、さらに好ましくは7.5〜9.1、特に好ましくは7.8〜8.6である。該pHが7より低いと、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の水溶性が低く、水溶液とならない場合がある。一方、該pHが10よりと高いと、繊維用糊剤の粘度が高くなり作業性が悪くなる。
繊維用糊剤の粘度は、好ましくは60〜1500mPa・s、さらに好ましくは80〜1200mPa・s、特に好ましくは100〜1000mPa・sである。該粘度が60mPa・sより低いと、接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。一方、該粘度が1500mPa・sより大きいと、糊付の際に、糊剤が糸条表面に付着する傾向があり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
(ワックス(C))
本発明の繊維用糊剤は、上記の共重合体と塩基性化合物との中和物(A)、ポリビニルアルコール(B)に加え、さらにワックス(C)を含むことが好ましい。ワックスを含有することにより、平滑性が向上し、製織時の経糸切れ、経糸の開口不良及び落糊の発生を抑制することができる。また、上記の共重合体と塩基性化合物との中和物(A)とワックス(C)または、ポリビニルアルコール(B)とワックス(C)を混合しても保存安定性には影響が少ない。すなわち、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)とポリビニルアルコール(B)を併用することにより、ワックス(C)を混合しても保存安定性に優れる繊維用糊剤を提供することができる。
ワックス(C)としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;木蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ラノリン、ライスワックス、バナナワックス、サトウキビワックス等の動植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、ステアリン酸、硬化牛脂、硬化豚脂等が挙げられる。ワックス(C)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、平滑性の点から、石油系ワックス、合成ワックス、動植物系ワックス、鉱物系ワックスが好ましく、動植物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックスがさらに好ましく、動植物系ワックス、石油系ワックスが特に好ましい。
ワックス(C)は油溶性であるので、通常は、分散性を考慮して、非イオン界面活性剤やアニオン界面活性剤等の界面活性剤を用いて乳化した水系分散体として用いられる。
非イオン界面活性剤としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコールのエチレンオキサイド付加体や、オクチル基、ノニル基、ドデシル基などでアルキル化したフェノールのエチレンオキサイド付加体等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルアルコール/セチルアルコール/ステアリルアルコール配合系の高級アルコールのエチレンオキサイド付加体が好ましく、ラウリルアルコール/ステアリルアルコール配合系の高級アルコールのエチレンオキサイド付加体がさらに好ましい。
アニオン界面活性剤としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコールのエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩やリン酸エステル塩、さらにドデシル基でアルキル化したベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルアルコール/セチルアルコール/ステアリルアルコール配合系の高級アルコールのエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩が好ましく、ラウリルアルコール/ステアリルアルコール配合系の高級アルコールのエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩がさらに好ましい。
ワックス(C)の調製方法としては、例えば、90℃の温水を撹拌した系に、溶融したワックス、乳化剤を添加し、乳化温度90℃を保ったまま、固形分濃度20%に希釈してワックス乳化物を得ることができる。
ワックス(C)と界面活性剤の合計に占める界面活性剤の重量割合については、5〜45重量%、さらに好ましくは8〜40重量%、特に好ましくは10〜35重量%である。界面活性剤の重量割合が5重量%未満であると、ワックスの乳化が低下し、均一な乳化物を得ることが難しい。一方、界面活性剤の重量割合が45重量%超であると、皮膜が軟らかくなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
ワックス(C)を添加する工程としては、例えば、ワックス(C)の水系分散体を別途調製しておき、上述の中和工程で得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)にポリビニルアルコール(B)を水に溶解させた水溶液を添加して、混合撹拌し、更にワックス(C)の水系分散体を添加して、これらを混合撹拌する工程等が挙げられる。
繊維用糊剤に含まれる固形分に占めるワックス(C)の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜25重量%、特に好ましくは3〜20重量%となるように配合される。該重量割合が1重量%未満であると、平滑性が劣る傾向が見られる。一方、該重量割合が30重量%超であると、ワックス(C)の剥離効果により接着性や抱合性が阻害される。また、繊維用糊剤の保存安定性を損なうことがある。
(その他成分)
本発明の繊維用糊剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の共重合体と塩基性化合物との中和物(A)、ポリビニルアルコール(B)以外の他の糊成分をさらに含有してもよい。
他の糊成分としては、例えば、デンプン、ポリビニルアルコール(B)以外のポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、合成糊((メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系重合体、マレイン酸系重合体及びその塩等、水溶性ポリエステル、水溶性ウレタン、水溶性エポキシ等であって、共重合体と塩基性化合物との中和物(A)を除くもの)が挙げられる。
本発明の繊維用糊剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、糊成分以外にも、糊付糸の剥離及び摩擦帯電を防止するための帯電防止剤、繊維用糊剤の起泡を抑えるための消泡剤、製織によって製造された生機の微生物汚染を防止するための抗菌剤等のその他の成分を含有していてもよい。
本発明の繊維用糊剤の製造方法において、その他の成分は、共重合工程、中和工程、混合工程で添加されてもよく、共重合工程や中和工程とは別工程で添加されてもよい。
本発明の繊維用糊剤は水を含有する。繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度は、好ましくは繊維用糊剤全体の5〜18重量%、さらに好ましくは6〜15重量%、特に好ましくは7〜13重量%である。固形分の重量濃度が5重量%未満では、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が少なくなり、接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。一方、固形分の重量濃度が18重量%超では、糊付の際に、糊剤が糸条表面に付着する傾向があり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
[糊付糸]
本発明の糊付糸は、上記で説明した繊維用糊剤を糸条にサイジングして得られる。
糸条は、マルチフィラメント糸、紡績糸(スパン糸)のいずれでもよいが、本願発明の効果をより発揮させる点から、マルチフィラメント糸が好ましい。糸条を構成する糸種には特に限定はなく、綿;レーヨン;アセテート;麻;羊毛;アクリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステル繊維;ポリ−ε−カプラミド及びポリヘキサメチレンジアミンアジパミド等の脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維);ポリメタフェニレンイソフタラミド及びコポリパラフェニレン−3,4−オキシジフェニレンテレフタラミド等の芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)等が挙げられる。特に糸条を構成する糸種が芳香族骨格を有するポリエステルから構成されるマルチフィラメント糸であると、繊維用糊剤との接着性及び抱合性が良いために好ましい。芳香族骨格を有するポリエステルから構成されるマルチフィラメント糸とは、実質的にポリエチレンテレフタレートからなるものが好適であるが、他の芳香族骨格を有するポリエステルや芳香族骨格を有するポリアミドに対しても良好な接着性及び抱合性を示す。糸条は、単独の糸種から構成されていてもよく、複数の糸種から構成された混繊糸、混紡糸やマルチフィラメント糸であってもよい。
糸条の太さに制限は無いが、フィラメント糸では、好ましくは1000デシテックス以下、されに好ましくは470デシテックス以下、特に好ましくは275デシテックス以下である。紡績糸(スパン糸)では、好ましくは20〜100番手、更に好ましくは20〜90番手、特に好ましくは20〜80番手である。
サイジング方法については、特に限定はないが、例えば、ビームトゥービーム方式等を挙げることができる。ビームトゥービーム方式は、まず、クリールより糸条を引き出した整経ビームと、繊維用糊剤を入れた糊付ボックスとを準備する。次いで、糸条を整経ビームから引っ張り出し、糊付ボックス内を通過させて、糸条に繊維用糊剤を付着(糊付)させ、その後、ノンタッチホットエアー乾燥及びタッチシリンダー乾燥を施して得られた糊付糸を糊付ビームに巻く方式である(糊付け速度:50〜300m/min、ノンタッチホットエアー乾燥温度:80〜150℃、タッチシリンダー乾燥温度:50〜130℃)。
糊付糸における繊維用糊剤の付着量については、糸条の種類や太さ等によって相違するので特に限定はないが、一般的には、好ましくは2〜18重量%、さらに好ましくは
3〜15重量%、特に好ましくは4〜13重量%である。繊維用糊剤の付着量の測定条件等は以下に詳述する。
糸条がポリエステルフィラメント糸の場合、糊付糸における繊維用糊剤の付着量は、好ましくは2〜13重量%、さらに好ましくは4〜11重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。付着量が2重量%未満では、接着性及び抱合性が劣る傾向が見られる。一方、付着量が13重量%超では、付着量が多すぎて製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
本発明の糊付糸を製織に使用する場合、経糸、緯糸のいずれにも使用することができるが、通常、経糸に使用すると好ましい。経糸は、上記に示すように、糸条に繊維用糊剤を付着、乾燥後の糊付糸を、糊付ビームに巻取ることによって得られる。
[織物の製造方法]
本発明の織物の製造方法は、上記糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む方法である。従って、本発明の繊維用糊剤は、繊維用経糸糊剤と言うこともできる。
経糸は、上記糊付糸を糊付ビームに巻取ることによって得られる。また、緯糸は、糸条に処理を施してもよいが、通常は特段の処理をすることなく、原糸をそのまま用いるのが一般的である。
製織機としては、ドライ織機が好ましい。ドライ織機とは、シャトル織機、レピア織機、エアージェットルーム、グリッパ織機、ニードル織機、キャリア織機等の緯糸を入れるために水を用いない織機のことである。この中で製織機がエアージェットルーム、レピアルームであるときがより好ましい。
製織は、例えば、上記で説明した糊付糸を一本ずつ綜絖と筬に引き通す経通し(ドローイング)を行って経糸を準備し、製織機にかける。次いで、経糸を例えば互い違いに上下に運動させながら、緯糸として経糸間に挟み込むことによって、製織が行われ、織物が製造される。
製織する工程としては、例えば、経糸として上記で説明した糊付糸を4,000〜20,000本、緯糸としてポリエステルフィラメント糸(6〜275デシテックス、4〜144フィラメント)を準備し、製織機としてエアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム等)を用いて、織機回転数500〜800rpmで50mを一疋として、ポリエステルタフタを100〜200疋製織できる(織り幅:70〜200cm)。
以下の実施例及び比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、実施例及び比較例に示す物性等の測定方法を以下に示す。
(1)固形分の重量濃度
一定量(通常1.0〜2.0g)の試料(重量:M1)について、赤外線水分計装置((株)Kett科学研究所、乾燥減量法、FD230)を用いて固形分の重量濃度を測定する。
固形分の重量濃度は、赤外線水分計装置を用いれば自動で計算されるが、その測定の原理は、上記M1と、試料を赤外線水分計装置で乾燥し恒量に達した重量(M2)とから、固形分の重量濃度を次式で計算するものである。M2は固形分の重量である。
固形分の重量濃度(%)=(M2/M1)×100
(2)pH
ガラス電極pH測定装置((株)堀場製作所製、navihF−51)を使用して、20℃で測定する。
(3)粘度
B型回転粘度計(BROOK FIELD社製)を使用して、ローターNo.62で30回転にて、20℃で測定する。
(4)重量平均分子量
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)で標準物質ポリスチレン(東ソー(株))による検量線を用いて測定する。
(測定条件)
使用機器:高速液体クロマトグラフィHLC−8020(東ソー(株))
カラム:TSKgelGMHXL×2(東ソー(株))
溶剤:THF(テトラヒドロフラン)(和光純薬工業(株)、液体高速クロマトグラフィ用)
測定温度:40℃
流量:1.0ml/min.
検出器:示差屈折計
注入量:20μl
(5)ポリビニルアルコールの平均重合度及びケン化度
ポリビニルアルコールの平均重合度及びケン化度は、JIS K6726に準拠して測定する。
(6)分離試験
繊維用糊剤を室温で放置すると分離までに時間がかかることから、加速試験として繊維用糊剤を60℃に設定した恒温機に入れ、分離試験を実施した。繊維用糊剤の外観を確認し、分離等がないかを目視で確認した。分離等が見られなかった日数を繊維用糊剤の保存安定性とした。
(測定条件)
使用機器:環境試験機(ESPEC(株))
測定温度:60℃
(7)繊維用糊剤の付着量
サイジング後の糊付糸(約2g)をサンプルとし、110℃で30分間乾燥後秤量(W1)し、100倍量の精練浴(炭酸ソーダ:2g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル:2g/L)中で、90℃で30分間浸漬させ、湯洗する。サンプルをさらに水洗後、1時間乾燥した後、サンプルを秤量(W2)し、次式より付着量を求めた。
付着量(%)=[(W1−W2)/W2]×100
(8)乾式抱合力(乾燥状態における接着性及び抱合性の評価)
TM式抱合力試験機にて抱合力を測定する。20本の糊付糸を引き揃え、下記に示す糸張力をかけながら張り、左右が150°、中央が120°の角度で3列に配置したコーム間(コーム:20針×3列;コームの間隔:30mm;コームの往復運動距離:27mm)を往復運動(コームの運動速さ:150回/min)させ、糊付糸を摩擦した。20回摩擦して、糊付糸の割れ具合を目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
糸張力:一本当たり0.2〜0.6g/デシテックス
(ポリエステルフィラメント糸56デシテックス36フィラメントでは200g/20本(=10g/本))
<乾式抱合力の評価基準>
5級:糸割れなし
4級:糸割れ少しあり
3級:糸割れあり
2級:糸割れ多数あり
1級:全体的に糸割れあり
(9)乾式落糊性(乾燥状態における落糊性の評価)
1000mの糊付糸1本を下記に示す糸張力をかけながら、左右が150°で、中央が120°の角度で屈曲したコームの間(コーム:20針×3列;コームの間隔:100mm)を50m/minの糊付糸送り速度で走らせ、糊付糸を摩擦した。脱落した落糊量、コームに付着した落糊を観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
(ポリエステルフィラメント糸56デシテックス36フィラメントでは10g)
<乾式及び湿式落糊性の評価基準>
5級:糊の脱落、コームに落糊付着なし
4級:糊の脱落、コームに落糊付着少しあり
3級:糊の脱落、コームに落糊付着あり
2級:糊の脱落、コームに落糊付着少し多い
1級:糊の脱落、コームに落糊付着多い
(10)ガムアップ性試験
1000mの糊付糸1本を下記に示す糸張力をかけながら、左右が150°で、中央が120°の角度で屈曲したコームの間(コーム:20針×3列;コームの間隔:100mm)を50m/minの糊付糸送り速度で走らせ、糊付糸を摩擦した。コームに付着した糊剤の粘着の程度を観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
(ポリエステルフィラメント糸56デシテックス36フィラメントでは10g)
<ガムアップ性試験の評価基準>
5級:糊の粘着、コームに糊剤の粘着なし
4級:糊の粘着、コームに糊剤の粘着少しあり
3級:糊の粘着、コームに糊剤の粘着あり
2級:糊の粘着、コームに糊剤の粘着少し多い
1級:糊の粘着、コームに糊剤の粘着多い
(11)精練性
繊維用糊剤にイオン交換水を添加して、固形分の重量濃度を10%に調整した液に、ポリステルタフタ(10cm×10cm四角)を浸漬し、ローラーで絞って乾燥させた。乾燥して得られたタフタについて、下記に示す精練条件で30秒間精練を行い、水洗した。その後、はローダミン染色(和光純薬工業(株))液に15分間浸漬し、再度水洗し、乾燥する。乾燥して得られた染色されたタフタを目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって色調を評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
(精練条件)
精練液:苛性ソーダ2g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル1g/L
精練温度:90℃
浴比:100倍
<精練性の評価基準>
5級:呈色なし
4級:微妙に赤い
3級:少し赤い
2級:やや赤い
1級:赤い
(12)筬付着落糊性(実用製織性試験における落糊性の評価)
エアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム)を用いた製織時の筬付着落糊性(筬に付着する脱落糊の程度)を目視で観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
<筬付着落糊性の評価基準>
5級:筬に落糊付着なし
4級:筬に落糊付着少しあり
3級:筬に落糊付着あり
2級:筬に落糊付着少し多い
1級:筬に落糊付着多い
(13)開口性(実用製織性試験における開口性の評価)
エアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム)を用いた製織時の開口性(隣接する経糸同士の開口の程度)を目視で観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価した。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
<筬付着落糊性の評価基準>
5級:隣接する経糸同士の粘着なし
4級:隣接する経糸同士の粘着少しあり
3級:隣接する経糸同士の粘着あり
2級:隣接する経糸同士の粘着少し多い
1級:隣接する経糸同士の粘着多い
[アクリル成分の製造例]
以後、共重合体と塩基性化合物との中和物をアクリル成分といい、アクリル成分を含む水溶液をアクリル成分液という。以下にアクリル成分液の製造例を示す。
(製造例A−1)
温度計、撹拌機、コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコ(容量3000mL)に、重合性成分(表1に種類及び量を示す)、イオン交換水1000g、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム20gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、70℃に昇温した。次に、攪拌しながら水溶性重合開始剤である過硫酸アンモニウム4.0gを4つ口フラスコに加え、75℃で2時間かけて重合性成分を滴下漏斗から4つ口フラスコに滴下した。滴下終了後、2時間共重合した。
共重合後、濃度16%のモノエタノールアミン水160gを反応混合物に徐々に加えて共重合体を中和(pH7〜10)し、室温に冷却した。その後、アクリル成分に含まれる固形分の重量濃度が25%になるようにイオン交換水で希釈し、共重合体の中和物であるアクリル成分A−1を含むアクリル成分液A−1を得た。
アクリル成分液A−1を自然乾燥した後、濃度が0.5mg/mlになるようTHF(テトラヒドロフラン)(和光純薬工業(株)、液体高速クロマトグラフィ用)に溶解し、アクリル成分A−1の重量平均分子量を測定した。
(製造例A−2〜A−6、a−1〜a−5)
表1に示した種類及び量の重合性成分とイオン交換水と溶剤を上記製造例A−1で用いた同様な4つ口フラスコに加えた。次いで、表1に示した重合開始剤ベンゾイルパーオキサイドを4つ口フラスコにさらに加え、撹拌混合し、82℃にて5時間共重合を行い、共重合体を含む反応混合物を得た。
共重合後、表1に示した量の濃度16重量%の種々の塩基性化合物の水溶液を反応混合物に徐々に加え中和し、室温に冷却し、イオン交換水を加えて、アクリル成分A−2〜A−6、a‐1〜a−5を含むアクリル成分液A−2〜A−6、a‐1〜a−5を得た。各アクリル成分液に含まれる固形分の重量濃度は25%であった。その他は製造例A−1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0006473360
[ポリビニルアルコール(PVA)水溶液の製造例]
(製造例B−1)
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコ(500ml)に酢酸ビニル150g、メタノール30gを入れ還流させる。メタノール10mlにAIBN1.0gを溶解して加え反応させた。メタノールを追加しながら未反応酢酸ビニルを留出し、反応溶液を水に入れ、沈殿物を濾取乾燥させ、再沈殿により精製した。乾燥したポリ酢酸ビニル30gをメタノール100g、水3gに溶解させ、1N水酸化ナトリウム水溶液を0.02eq加える。50℃で反応させ、乾燥させることでケン化度85、平均重合度600のポリビニルアルコールB−1を得た。
次いで、1Lビーカーに水600gを入れ、攪拌させながら乾燥させたポリビニルアルコールB−1、106gを加えた。攪拌しながら90℃まで昇温し、溶解させ、室温まで冷却することでポリビニルアルコール水溶液B−1を得た。
(製造例B−2〜B−5、b−1〜b−2)
製造例B−1において、ポリビニルアルコールB−1を、上記製造例B−1と類似の反応を行うことにより得た表2に示すポリビニルアルコールB−2〜B−5、b−1〜b−2に変更する以外は製造例B−1と同様にして、ポリビニルアルコール水溶液B−2〜B−5、b−1〜b−2を得た。
Figure 0006473360
(実施例1−1)
上記製造例で得たアクリル成分A−1を含むアクリル成分液A−1と、ポリビニルアルコール水溶液B−1、パラフィンワックス及びエステルワックスを非イオン界面活性剤で乳化したワックスの水系分散体(サイジングワックスK−2、松本油脂製薬(株))とを混合して、糊剤の固形分に占める各成分(固形分)の重量比率が、アクリル成分A−1/ポリビニルアルコールB−1/ワックス=63/30/7とし、糊剤の固形分の重量濃度が20%になるようにイオン交換水で希釈し、繊維用糊剤を調製した。
固形分の重量濃度が20%である繊維用糊剤の粘度、繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpH、繊維用糊剤の分離試験の結果を表3に示す。
(実施例1−2〜1−9、比較例1−1〜1−8)
実施例1において、使用するアクリル成分、ポリビニルアルコール、ワックスの種類及びそれらの重量比率等をそれぞれ表3、4に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして、繊維用糊剤をそれぞれ調製し、実施例と同様にして、その粘度、pH、分離試験を測定した。
Figure 0006473360
Figure 0006473360
表3、4から、実施例1−1〜1−9の繊維用糊剤は、分離試験において、比較例1−1〜1−8の繊維用糊剤の3倍以上保存安定性に優れている。
(実施例2−1)
上記実施例1−1で得た繊維用糊剤を調製してから12時間以内に、ポリエステルフィラメント糸(56デシテックス36フィラメント(56T/36f)の糸状に対して、下記に示すサイジング条件でサイジングマシーンを用いて繊維用糊剤を付着させて糊付糸を得た。なお、繊維用糊剤の付着量は8重量%であった。得られた糊付糸について、乾式における抱合力及び落糊性、ガムアップ性、精練性を評価した。その結果を表5に示す。
<サイジング条件>
ビームトゥービーム方式
糊付け速度:80m/min
ノンタッチホットエアー乾燥温度:130℃
タッチシリンダー乾燥温度:100℃
タッチシリンダー数:7本
〔実施例2−2〜2−9及び比較例2−1〜2−3〕
表5に示す繊維用糊剤に変更する以外は実施例2−1と同様にして、各繊維用糊剤を調製してから12時間以内にサイジングをそれぞれ行い、糊付糸をそれぞれ得た。なお、それぞれの糊付糸における繊維用糊剤の付着量は8重量%であった。得られた糊付糸について、実施例2−1と同様にして、乾式における抱合力、落糊性、ガムアップ性、精練性をそれぞれ評価した。その結果を表5に示す。なお、表5、6の「実1−1」、「比1−1」等の表記は、実施例1−1で得た繊維用糊剤、比較例1−1で得た繊維用糊剤を示す。
ポリエステルフィラメント84デシテックス/36フィラメントについても、同様に評価を行ったが、56デシテックス/36フィラメントと同じ結果を得た。
Figure 0006473360
表5から、保存安定性に優れる実施例2−1〜2−9の繊維用糊剤は、乾式抱合力、落糊性、ガムアップ性、精練性について、全ての面で満足できる。一方、保存安定性に劣る比較例2−1〜2−3の繊維用糊剤は、乾式抱合力、乾式落糊性、ガムアップ性、精練性のどれか一つ以上で満足いく結果が得られていない。
(実用製織性試験)
(実施例3−1)
下記に示すサイジング条件でサイジング装置(津田駒工業(株)製サイザーKS−200)を用いて、実施例1−1の繊維用糊剤を、56デシテックス36フィラメントポリエステル糸にサイジングして得られた糊付糸を経糸として準備した。また、56デシテックス36フィラメントポリエステル糸を緯糸として準備した。エアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム;織機回転数450rpm;経糸:8000本;織り幅:173cm)を用いて、これらの経糸及び緯糸をそれぞれ製織して、200疋のポリエステルタフタを製造し、評価した。次に、製織後のポリエステルタフタ10cm×10cm四角を準備し、上記精練性の測定方法の精練条件で精練を行い、精練性を評価した。また、製織機の稼働率(製織に要した全時間から、製織中にトラブル等の理由で製織機が停滞した時間を差し引いて、その時間を製織に要した全時間で割った値の%表示)を算出した。これらの結果を表6に示す。
<サイジング条件>
ビームトゥービーム方式
糊付け速度:80m/min
ノンタッチホットエアー乾燥温度:130℃
タッチシリンダー乾燥温度:100℃
タッチシリンダー数:3本
(実施例3−2〜3−9及び比較例3−1〜3−3〕
表6に示す繊維用糊剤に変更する以外は実施例3−1と同様にして、それぞれ製織して、ポリエステルタフタを製造し、評価した。その結果を表6に示す。
Figure 0006473360
表6から、エアージェットルーム製織においても、実施例の繊維用糊剤は、比較例の繊維用糊剤よりも筬付着落糊性が優れている。さらに、製織機の稼働率の点でも実施例の繊維用糊剤は、比較例の繊維用糊剤よりも優れていることが分かる。特に、製織機の稼働率が10%以上も向上することは顕著な効果である。
本発明の繊維用糊剤は、製織の際に使用される経糸用の糊剤として好適に使用できる。

Claims (10)

  1. (メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体と塩基性化合物との中和物(A)、及びケン化度が70〜90モル%のポリビニルアルコール(B)を含み、
    前記重合性成分に占める、前記(メタ)アクリル酸の重量割合が5〜30重量%であり、前記ニトリル系単量体の重量割合が0.1〜20重量%であり、
    前記塩基性化合物が、沸点が101〜400℃のアミン化合物を必須に含む、
    繊維用糊剤。
  2. 繊維用糊剤の固形分に占める前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)の重量割合が50重量%を超える、請求項1に記載の繊維用糊剤。
  3. 繊維用糊剤の固形分に占める前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)と前記ポリビニルアルコール(B)の重量割合が下記式を満たすものである、請求項1又は2に記載の繊維用糊剤。
    共重合体と塩基性化合物との中和物(A)の重量割合>ポリビニルアルコール(B)の重量割合
  4. 前記ポリビニルアルコール(B)の平均重合度が100〜4000である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  5. 前記共重合体と前記塩基性化合物との中和物(A)の重量平均分子量が100000〜350000である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  6. さらにワックス(C)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  7. (メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびニトリル系単量体を含有する重合性成分を共重合させる共重合工程と、
    前記共重合工程で得られた共重合体を塩基性化合物で中和する中和工程と、
    前記中和工程で得られた共重合体と塩基性化合物との中和物(A)と、ケン化度が70〜90モル%のポリビニルアルコール(B)とを混合する混合工程とを含み、
    前記重合性成分に占める前記(メタ)アクリル酸の重量割合が5〜30重量%であり、前記ニトリル系単量体の重量割合が0.1〜20重量%であり、
    前記塩基性化合物が、沸点が101〜400℃のアミン化合物を必須に含む、
    繊維用糊剤の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維用糊剤及び/又は請求項7に記載の製造方法によって得られた繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなる、糊付糸。
  9. 請求項8に記載の糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む、織物の製造方法。
  10. 前記製織機がドライ織機である、請求項9に記載の織物の製造方法。
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