JP2012192454A - 高強度鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents

高強度鋼板のスポット溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高強度鋼板のスポット溶接において、良好な作業性を確保しつつ溶接継手の十字引張強さを向上させることが可能な溶接方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、高強度鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の十字引張強さを向上させる方法において、溶接通電時において一定の条件下で、冷却を挟んだ2段通電するスポット溶接方法に関する。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車用部品の取付けおよび車体の組立て等で使用されるスポット溶接方法で形成させた高強度鋼板溶接継手の引張強さを向上させる技術に関するものである。
近年、低燃費化やCO排出量削減を目的とした車体の軽量化および衝突安全性向上のために、自動車分野では、車体や部品などに、薄肉の高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。
一方、車体の組立てや部品の取付け等では、スポット溶接方法が主に用いられているが、高強度鋼板をスポット溶接した場合には、以下のような問題が生じる。
スポット溶接部(溶接継手)の品質指標としては、引張強さと疲労強度が挙げられるが、前者は部材の強度を決定するパラメーターとして非常に重要である。溶接継手の引張強さには、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。
一般に、溶接継手の引張せん断強さは、鋼板の引張強さとともに増加するが、十字引張強さは、鋼板の引張強さが780MPa位でピークを示し、それ以降は低下する。従って例えば、引張強さが290MPaの軟鋼板の代わりに、引張強さが1470MPaの高強度鋼板を用いれば、スポット溶接継手の引張せん断強さは増加するが、溶接継手の十字引張強さは増加せず、むしろ軟鋼板の場合より低い値を示すことがあるとされている。
図5は、高張力鋼について引張剪断強さ(TSS)と十字引張強さ(CTS)とを対比して示す説明図である。横軸が試験加重(MPa)を示す。
高強度鋼板としては、980MPaクラス、1180MPaクラス、1470MPaクラスまでの鋼種が開発されているが、図5に示す如く引張剪断強さ(TSS)1470MPaクラスの高張力鋼であっても、十字引張強さ(CTS)は遙かに低い値を示し、300MPa程度の軟鋼板と同程度かあるいはそれよりも低い値を示す場合もあることが知られている。
従来、高強度鋼板溶接継手の十字引張強さ(CTS)を向上させる方法として、スポット溶接の通電が完了した後、一定時間経過後にテンパー通電を行い、スポット溶接部(ナゲット部)と熱影響部を焼鈍して硬さを低下させる方法が知られている。(特許文献1、非特許文献1参照)
これらの方法の他に、炭素等量の低い鋼板を使用することも考えられるが、鋼板成分の制限によって製造が困難になったり、必要な機械的特性が得られなかったりすることがある。また、1470MPa級のホットスタンピング鋼板(特許文献2参照)では、焼き入れが必要であるため、炭素等量を下げることは困難である。
従来、溶接継手の十字引張強さ(CTS)を向上させるために、抵抗スポット溶接打点数(ナゲット数)を増やす方法も知られている。しかし、この方法は、溶接作業効率の低下、溶接施工コストの上昇、および設計自由度の制約等の問題を抱えている。
高張力鋼における点溶接継手疲労強度の改善 「鉄と鋼 第68年(1982年)第9号 P318〜325」
特開2002−103048号公報 特開2002−102980号公報
前述のテンパー通電を行う従来方法は、テンパー通電の適正な条件範囲の幅が非常に狭く、また、操業条件の変化により再現性が乏しいという実用上の問題がある。特に、めっき鋼板を連続的に打点してスポット溶接する場合には、打点数の増加とともに、電極先端がめっきとの合金化反応によって劣化し、電極先端径が増大して電流密度が低下し、最適なテンパー通電条件から外れるため、安定的に継手の十字引張強さを向上させることが困難となる。また、この方法は溶接プロセス全体の時間が2倍以上に長くなるという欠点を持っている。
次に、前述の抵抗スポット溶接打点数(ナゲット数)を増やす方法にあっては、継手に応力が負荷された場合、各溶接点(ナゲット)に必ずしも均等に応力がかからないため、応力分散効果が十分発揮されず、どちらかの溶接点に応力が集中する。その結果、溶接打点数を、例えば、1点から2点、3点と増やしたとしても、継手の疲労強度は、必ずしも2倍、3倍にはならない。
即ち、従来の技術においては、高強度鋼板、特に引張強さが980MPa級以上の鋼板をスポット溶接した場合に、ナゲット周囲での応力集中増加、炭素当量との関係等によって継手の十字引張強さが低下し、場合によっては軟鋼板を溶接した継手より低い値を示す場合があるという課題を解決できる技術が提供されていない状況であった。
本発明は、溶接中または溶接後の通電パターン制御によって、高強度鋼板のスポット溶接継手の十字引張強さを向上させることを目的としている。
本発明では、炭素等量等に制限を設けることもなく、また、溶接プロセス全体の時間を長くすることもなく、実用の範囲内で通電パターンを変化させることによって、スポット溶接継手の十字引張強さを向上させることを目的とする。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明は、引張強さが900〜1850MPaである高強度鋼板のスポット溶接方法において、溶接通電直後に下記(3)式を満たす冷却時間を置いた後、引き続き下記(4)式、(5)式を満たすように後加熱通電してスポット溶接継手の十字引張強さを向上させることを特徴とする。
20≦CT≦40 ・・・・・(3)
0.40×WC≦PHC2≦0.70×WC ・・・・・(4)
40≦PHT2≦200 ・・・・・(5)
ただし、CT:冷却時間(ms)、PHC2:冷却後後加熱電流(kA)、PHT2:冷却後後加熱時間(ms)を示す。
本発明によれば、自動車用部品の取付けおよび車体の組立て等で用いる高強度鋼板のスポット溶接において、良好な溶接作業性を確保しつつ溶接継手の十字引張強さを向上させることができる。
従って、本発明の適用により、自動車分野などで高強度鋼板適用による安全性向上や軽量化による低燃料費、CO排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、社会的な貢献は多大である。
図1は本発明に係るスポット溶接方法について説明するための断面図。 図2はスポット溶接方法の条件について説明するためのもので、図2(A)は一般的な溶接電流と時間の関係を示す図、図2(B)は本発明に係るスポット溶接方法の第1の例の溶接電流と時間の関係を示す図、図2(C)は本発明に係るスポット溶接方法の第2の例の溶接電流と時間の関係を示す図、図2(D)は本発明に係るスポット溶接方法の第3の例の溶接電流と時間の関係を示す図。 図3は十字引張強度試験の状態を説明するための説明図。 図4は実施例において行った十字引張試験を説明するための斜視図。 図5は一般的な高張力鋼のスポット溶接部における引張剪断強さ(TSS)と十字引張強さ(CTS)とを対比して示す説明図。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は本発明のスポット溶接方法を説明するための概念図である。まず、本実施形態に係るスポット溶接方法では、被接合材である2枚の高強度鋼板1を重ね合わせ、その重ね合わせ部分に対し、両側から(図1では上下方向から)挟み込むように銅などからなる溶接電極2、2を押し付けつつ通電し、2枚の高強度鋼板1の間に溶融金属部を形成させる。この溶融金属部は、スポット溶接通電終了後、水冷された電極への抜熱や高強度鋼板の熱伝導により急速に冷却されて凝固し、2枚の高強度鋼板1の間に図1に示す断面楕円形状のナゲット(溶接金属)3が形成されて2枚の高強度鋼板1が接合される。
ところで、一般的なスポット溶接法を実施する場合、図2(A)に示す如く規定の時間(t)、規定の電流値(I)を溶接電極2に通電し、通電後に電流を遮断している。また、スポット溶接を行う場合、溶接電極2は水冷による冷却手段により冷却されているので、通電を停止した後、高強度鋼板1は急冷される結果、高強度鋼板1の金属組織はマルテンサイト組織となって、高強度な特性を発揮する。以上説明のスポット溶接方法において通電電流の大きさと通電時間は、用いる高強度鋼板1の厚さ、鋼種、などに応じて適宜設定される。
本実施の形態において用いる高強度鋼板は引張強さが900〜1850MPaの範囲の鋼板であることが好ましい。
本発明のスポット溶接においては、鋼板の種類について特に限定する必要がなく、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等、いずれの型の鋼板であっても良い。鋼板の板厚についても、特に限定する必要はなく、本発明のスポット溶接方法の適用により、鋼板の特性を損なうことなく、優れた引張強さを有する継手を実現することができる。
鋼板の表層に施されるめっき層の種類も、Zn系のものなら特に限定するものではない。例えば、Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Sn−Zn等いずれのもので良い。これらのめっき層の目付量は特に限定しないが、両面で100/100g/m以下のものが望ましい。
また、本発明の方法は、同種同厚鋼板組合せに限定されるものではなく、規定を満たしているのであれば、同種異厚、異種同厚、異種異厚組合せであっても良い。
本実施の形態に係るスポット溶接方法を実施する場合、図2(A)に示す一般的なスポット溶接方法における電流印加条件に対し、第1の例では、図2(B)に示す如く、溶接通電終了後、通電条件を変更し、初期通電電流よりも1段低い電流を流して所定時間通電後、通電終了するような条件でスポット溶接を行う。
この場合に適用する高強度鋼板は、引張強さが900〜1850MPaである高強度鋼板とする。この第1の例では初期通電は通常の電流でスポット溶接通電を行い、次いで、下記(1)式、(2)式を満たすように後加熱通電する。
0.70×WC≦PHC1≦0.90×WC ・・・・・(1)
40≦PHT1≦80 ・・・・・(2)
ただし、WC:溶接電流(kA)、PHC1:後加熱電流(kA)、PHT1:後加熱時間(ms)を示す。
この第1の例の如く適用する高強度鋼板引張強さが900〜1850MPaの範囲が好ましいのは、一般的なスポット溶接を行う場合、900MPa以上の高強度鋼板において十字引張強さ(CTS)の低下が大きくなり、1470MPa以上では軟鋼板継手のCTSよりも低い値を示す傾向があるからである。また、1850MPaを超える引張強さの高強度鋼板ではCTSの向上効果が見込めない。
PHC1(後加熱電流)を前述の範囲としたのは、溶接電流の70%〜90%の範囲の後加熱通電条件でCTSの向上効果を得られるからである。PHT1(後加熱時間)を前述の範囲としたのは、40ms以上でCTS向上効果があり、また、80msを超えて長くなっても生産性が落ちるからである。
本実施形態に係るスポット溶接方法を実施する場合、図2(A)に示す一般的なスポット溶接方法における電流印加条件に対し、第2の例では、図2(C)に示す如く、溶接通電終了後、通電を完全に停止して所定時間冷却後、再度先の溶接電流よりも低い電流を所定時間印加して後加熱通電する。
この第2の例の場合に適用する高強度鋼板は、引張強さが900〜1850MPaである高強度鋼板とする。この第2の例では初期通電は通常の電流で溶接通電を行い、次いで、溶接通電直後に下記(3)式を満たす冷却時間をおいた後、引き続き下記(4)式、(5)式を満たすように後加熱通電する。
20≦CT≦40 ・・・・・(3)
0.40×WC≦PHC2≦0.70×WC ・・・・・(4)
40≦PHT2≦200 ・・・・・(5)
ただし、CT:冷却時間(ms)、PHC2:冷却後後加熱電流(kA)、PHT2:冷却後後加熱時間(ms)を示す。
この第2の例の如く適用する高強度鋼板引張強さが900〜1850MPaの範囲が好ましいのは、一般的なスポット溶接を行う場合、900MPa以上の高強度鋼板において十字引張強さ(CTS)の低下が大きくなり、1470MPa以上では軟鋼板継手のCTSよりも低い値を示す傾向があるからである。また、1850MPaを超える引張強さではCTSの向上効果が見込めない。
この第2の例において冷却時間CTを20ms以上とするのは、20ms以上でCTS向上効果があり、また、40ms以上の停止では生産性が低下するためである。また、冷却後の後加熱電流(PHC2)は溶接電流の40%以上70%以下の範囲で十字引張強さ(CTS)の向上効果がある。更に、冷却後後加熱時間は40ms以上でCTS向上効果があり、200msを超えると生産性が低下するために好ましくない。
本実施形態に係るスポット溶接方法を実施する場合、図2(A)に示す一般的なスポット溶接方法における電流印加条件に対し、第3の例では、図2(D)に示す如く、溶接通電終了後、通電条件を変更し、初期通電時よりも1段低い電流を流して所定時間通電後、更に1段低い電流を流して所定時間通電後、通電終了とするような条件でスポット溶接を行う。
即ち、この第3の例では、溶接通電に引き続き、下記(6)式、(7)式および(8)式、(9)式を満たすように2段階で後加熱通電する。
0.85×WC≦PHC3≦0.95×WC ・・・・・(6)
40≦PHT3≦80 ・・・・・(7)
0.70×WC≦PHC4≦0.80×WC ・・・・・(8)
40≦PHT4≦80 ・・・・・(9)
ただし、PHC3:溶接後後加熱電流(kA)、PHT3:溶接後後加熱時間(ms)、PHC4:溶接後後加熱電流(kA)、PHT4:溶接後後加熱時間(ms)を示す。
この第3の例の如く適用する高強度鋼板引張強さが900〜1850MPaの範囲が好ましいのは、一般的なスポット溶接を行う場合、900MPa以上の高強度鋼板において十字引張強さ(CTS)の低下が大きくなり、1470MPa以上では軟鋼板継手のCTSよりも低い値を示す傾向があるからである。また、1850MPaを超える引張強さではCTSの向上効果が見込めない。
この第3の例において1段目の後加熱電流を溶接電流の85%以上、95%以下としたのはこの範囲でCTSの向上効果があるからであり、1段目の後加熱時間は40ms以上でCTS向上効果があり、80msを超えると生産性が低下する。また、2段目の後加熱電流を溶接電流の70%以上、80%以下としたのはこの範囲でCTSの向上効果があるからであり、2段目の後加熱時間は40ms以上でCTS向上効果があり、80msを超えると生産性が低下する。
次に、本願発明で適用する高強度鋼板の炭素当量の基本概念について以下に説明する。
下記(10)式は溶接部の硬さに関わる炭素当量であり、また、(11)式は溶接部の靭性に関わる炭素当量である。一般的に、鋼板の引張強さが増加すると、(10)式、(11)式で示される炭素当量の値が増加し、その結果、溶接部の硬さは増加し靭性は低下する。靭性が低下すると、十字引張試験のようにナゲットの周囲で高い応力集中が起こる場合には、ナゲット内で亀裂が発生し易くなり、その結果、十字引張強さは低い値を示すようになるのである。特に、下記(11)式の値が0.24を超える場合には、ナゲット内で亀裂が発生し、十字引張強さは低下する。
Ceq.=C+Si/40+Cr/20 ・・・・・(10)
Ceq.=C+Si/30+Mn/20+2P+4S ・・・・・(11)
なお、上記の(10)式、(11)式で、C、Si、Mn、P、および、Sは、それぞれ、鋼板中の炭素、珪素、マンガン、リン、硫黄の各含有量(質量%)を示す。
上記のように、炭素等量が増加すると十字引張強さが低下するが、十字引張強さが低下するもうひとつの原因としては、鋼板の引張強さ増加に伴うナゲット周囲での応力集中増加が考えられる。鋼板の引張強さが980MPa以上では、上記(10)式、(11)式で示す炭素当量の値はほとんど増加しないが十字引張強さの値は低下する。これは、鋼板の引張強さの増加に伴ってナゲット周囲が変形し難くなるためで、ナゲット周囲での応力集中が高まると、その部分でより亀裂が発生し易くなる。
図3は高強度鋼板1、1を重ねてスポット溶接し、ナゲット3が形成されている状態の断面構造を示すが、ナゲット3の周囲にはナゲット3を一定幅で取り囲むように熱影響部3aが形成される。
そして、この構造を有するスポット溶接品は、高強度鋼板1、1を互いに剥離する方向に引き剥がす十字引張試験を行った場合、通常はナゲット3の外周縁部分から上下方向に伸びる亀裂ライン1aを生成するように剥離破壊される。
本発明に係るスポット溶接方法では、以上説明の如く、図2(B)に示す如く通常溶接通電後、1段低い通電処理を行うか、図2(C)に示す如く通常溶接通電後、一旦通電停止して所定時間経過後、再度通電するか、図2(D)に示す如く通常溶接通電後、1段目と2段目の後加熱通電を行うことで、スポット溶接部における熱履歴としては、溶接通電後の冷却時における冷却速度を緩くしていると言える。
本発明の実施後の溶接部の金属組織は、通常のスポット溶接方法の場合に得られるマルテンサイト組織になると想定できるが、後加熱通電処理により冷却速度を少し緩やかにしているので、マルテンサイトの性状が異なり、硬度が僅かに低下して亀裂感受性が鈍くなり、結果的に十字引張強さ(CTS)が向上したものと思われる。
即ち、本発明方法によれば、ナゲット3と熱影響部3aとの境界部分及びその周囲領域において、特にマルテンサイトの性状が異なり、硬度が僅かに低下して亀裂感受性が鈍くなっているものと思われる。
本発明方法による後通電加熱の時間は最大でも200ms以下、例えば数10msで良いので、スポット溶接時間を長くすることがない。これは生産性の面において極めて有利となる。
なおまた、従来知られていたスポット溶接後の後加熱処理ではスポット溶接時間に対して更に長い時間焼鈍するなどの処理が必要であったので、本願発明の概念とは全く異なる処理方法である。また、従来知られていたスポット溶接後の後加熱処理は疲労強度を高めるための処理であって、本願の如く十字引張強さを向上させるための処理ではなく、本願発明の如く短時間の後通電加熱により十字引張強さを向上できる技術は全く新規であって優れた技術であると把握することができる。
ところで、本願発明方法を適用する高強度鋼板の板厚は、スポット溶接に適用される鋼板として0.6mm〜3.2mm程度の厚さのものを適宜利用することができる。また、好ましくは、厚さ0.6mm〜2.0mm程度の高強度鋼板を利用できる。
また、トータルとしてのスポット溶接の通電時間は板厚に関係する。この関係はWT+PHT≦1.5t(tは板厚)で表記することができる。従って板厚に応じてトータルのスポット溶接時間をこの範囲内とすることが好ましい。
以下に実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す板厚:1.6mm、引張強さ:298〜1907MPaの軟鋼板(270E)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP、1900HP)、2相組織型鋼板(980Y、1180Y、1470Y)から(いずれも冷延鋼板)、抵抗スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137:「ISO/DIS14272:Specimen dimensions and procedure for cross tension testing resistance spot and embossed projection weldsと一部規定を除き同一」)に基づいて十字引張試験片を作製した。
これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、表1の溶接条件でスポット溶接し溶接継手を作製した。次に、得られた溶接継手について、抵抗スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、図4に示すように剥離方向(図4の符号5で示す如く上側の高強度鋼板を上方向に下側の高強度鋼板を下側に相互に剥離する方向)に負荷して十字引張試験を実施した。表1にその結果を示す。なお、表1に示す鋼種において、270E、980Yは日本鉄鋼連盟規格品を示し、1470HPは特開2000−234153号等に開示されているホットプレス品を示す。
Figure 2012192454
表1は先に説明した実施の形態において第1の例として説明した2段通電によりスポット溶接した場合の例を示す。
第1の例として説明した条件範囲内で2段通電して溶接した場合(条件No.1〜No.9)には、通常の1段通電で溶接した場合(条件No.10〜No.16)に比べて、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していた。また、第1の例の条件範囲外で2段通電して溶接した場合(条件No.17〜No.21)には、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していなかった。
即ち、2段目の通電を行っていない条件10〜16の試料では同等の鋼種である条件1〜9の試料と対比してCTSの値が悪く、2段目の電流を1段目の電流の50%とした条件17、1段目と2段目を同じ電流とした条件18、2段目通電時間を少なくするか多くした条件19、20、強度を1900MPaと大きくし過ぎた鋼板とした条件21はいずれにおいてもCTS向上効果がほとんど無かった。
これらに対して前述の条件、{0.70×WC≦PHC1≦0.90×WC・・・・・(1)}、{40≦PHT1≦80・・・・・(2)}の関係を満たした試料はCTS向上効果が17〜30%程度得られた。
(実施例2)
表2に示す、実施例1と同様の鋼板から、十字引張試験片を作製した。
これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、表2の溶接条件でスポット溶接し溶接継手を作製した。次に、得られた溶接継手について、図4に示すように剥離方向に負荷して十字引張試験を実施した。表2にその結果を示す。
請求項1の条件範囲内で、1段目と2段目の間に休止時間を設け、2段通電して溶接した場合(条件No.1〜No.12)には、通常の1段通電で溶接した場合(条件No.13〜No.19)に比べて、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していた。また、CTSの値は、実施例1の場合より高い値を示した。一方、請求項1の条件範囲外で溶接した場合(条件No.20〜No.26)には、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していなかった。
即ち、冷却時間を設けず、2段目の後通電を行っていない条件13〜19の試料では、同等の鋼種である条件1〜12の試料と対比してCTSの値が悪く、2段目の後通電電流が30%、80%の条件20、21の試料ではCTSの向上率が悪く、2段目の後通電時間が短すぎるか長すぎる条件22、23の試料ではCTS向上率が条件1〜12に対して悪く、冷却時間を0あるいは60msとして無くするか長すぎる条件24、25の試料はCTS向上率が悪く、強度を1900MPaと大きくし過ぎた鋼板とした条件26はCTS向上効果がほとんど無かった。
これらに対して前述の条件、{20≦CT≦40・・・・・(3)}、{0.40×WC≦PHC2≦0.70×WC・・・・・(4)}、{40≦PHT2≦200・・・・・(5)}の関係を満たした試料はCTS向上率として20〜70%の極めて大きな値を示した。
Figure 2012192454
(実施例3)
表3に示す、実施例1と同様の鋼板から、十字引張試験片を作製した。
これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、表3の溶接条件でスポット溶接し溶接継手を作製した。次に、得られた溶接継手について、図4に示すように剥離方向に負荷して十字引張試験を実施した。表3にその結果を示す。
第3の例として説明した条件範囲内で、3段通電して溶接した場合(条件No.1〜No.9)には、通常の1段通電で溶接した場合(条件No.10〜No.16)に比べて、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していた。一方、第3の例の条件範囲外で溶接した場合(条件No.17〜No.25)には、いずれの鋼種でも、十字引張強さ(CTS)は向上していなかった。
Figure 2012192454
即ち、2段目、3段目の通電を行っていない条件10〜16の試料では同等の鋼種である条件1〜9の試料と対比してCTSの値が悪く、2段目の電流を1段目の電流の80%、100%とした条件17、18、3段目の電流を1段目の電流の65%、85%とした条件19、20、2段目通電時間を少なくするか多くした条件21、22、3段目通電時間を少なくするか多くした条件23、24、強度を1900MPaと大きくし過ぎた鋼板とした条件25はいずれにおいてもCTS向上効果がほとんど無かった。
これらに対して前述の条件、{0.85×WC≦PHC3≦0.95×WC・・・・・(6)}、{40≦PHT3≦80・・・・・(7)}、{0.70×WC≦PHC4≦0.80×WC・・・・・(8)}、{40≦PHT4≦80・・・・・(9)}の関係を満たした試料はCTS向上効果が25〜41%程度得られた。
ところで、前記種々の鋼種の鋼板の板厚を変化させて試験してみたが、同じ結果が得られると共に、めっき鋼板を用いても、さらに、めっき種、目付量等を変えて実験を実施してみたが、本発明に係る後通電の作用効果は同様であった。
本発明によれば、自動車用部品の取付けおよび車体の組立て等で用いる高強度鋼板のスポット溶接において、良好な溶接作業性を確保しつつ溶接継手の十字引張強さを向上させることができる。したがって、これにより、自動車分野などで高強度鋼板適用による安全性向上や軽量化による低燃料費、CO排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、社会的な貢献は多大である。
1…高強度鋼板
1a…破断線
2…溶接電極
3…ナゲット
3a…熱影響部
4…溶接部
5…十字引張試験での負荷方向

Claims (1)

  1. 引張強さが900〜1850MPaである高強度鋼板のスポット溶接方法において、溶接通電直後に下記(3)式を満たす冷却時間を置いた後、引き続き下記(4)式、(5)式を満たすように後加熱通電してスポット溶接継手の十字引張強さを向上させることを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    20≦CT≦40 ・・・・・(3)
    0.40×WC≦PHC2≦0.70×WC ・・・・・(4)
    40≦PHT2≦200 ・・・・・(5)
    ただし、CT:冷却時間(ms)、PHC2:冷却後後加熱電流(kA)、PHT2:冷却後後加熱時間(ms)を示す。
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