JP2011005544A - 高強度鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板1A、1Bを抵抗スポット溶接方法によって溶接する際、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを次式{1960×t≦EF≦2940×t}で表される条件として溶接通電を行った後、引き続き、加圧力EFをそのままとして、次式{160≦HT≦300}で表される保持時間HTで、溶接電極2A、2Bで高強度鋼板1A、1Bを保持する。但し、上記各式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、HT:保持時間(ms)、を示す。
【選択図】図1
Description
スポット溶接部(溶接金属部:ナゲット)の品質指標としては、引張強さ(静的強度)と疲労強度が挙げられる。このような溶接継手の引張強さには、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。また、スポット溶接部の疲労強度には、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断疲労強度と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張疲労強度がある。一般に、静的引張強さおよび疲労強度の何れも、スポット溶接部に欠陥や割れが無い場合には、問題無く十分高い値が得られるが、これらの欠陥や割れが存在する場合には、著しい低下が生じるという問題がある。
Ceqh = C+Si/40+Cr/20 ・・・・・(a)
Ceqt = C+Si/30+Mn/20+2P+4S ・・・・・(b)
但し、上記(a)、(b)式において、C、Si、Mn、P、およびSは、それぞれ、鋼板中の炭素、珪素、マンガン、リン、硫黄の各含有量(質量%)を示す。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
160 ≦ HT ≦ 300 ・・・・・(2)
{但し、上記(1)、(2)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、HT:保持時間(ms)、を示す。}
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.30 × WT ≦ DST ≦ 0.50 × WT ・・・・・(3)
{但し、上記(1)、(3)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WT:溶接時間(ms)、DST:ダウンスロープ通電時間(ms)を示す。}
溶接電極の前記高強度鋼板に対する加圧力を下記(1)式で表される関係を満たす条件とし、溶接通電を行った後、引き続き、下記(4)、(5)式で表される各々の関係を満たす条件で後加熱通電を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.50 × WC ≦ PHC1 ≦ 0.90 × WC ・・・・・(4)
0.30 × WT ≦ PHT1 ≦ 0.50 × WT ・・・・・(5)
{但し、上記(1)、(4)、(5)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC1:後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT1:後加熱時間(ms)を示す。}
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.85 × WC ≦ PHC2 ≦ 0.95 × WC ・・・・・(6)
0.20 × WT ≦ PHT2 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(7)
0.70 × WC ≦ PHC3 ≦ 0.80 × WC ・・・・・(8)
0.20 × WT ≦ PHT3 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(9)
{但し、上記(1)、(6)、(7)、(8)、(9)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC2:第1の後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT2:第1の後加熱通電時間(ms)、PHC3:第2の後加熱電流(kA)、PHT3:第2の後加熱通電時間(ms)を示す。}
以下、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の各実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板1(1A、1B)を抵抗スポット溶接方法によって溶接する方法であり、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを、下記(1)式で表される関係を満たす条件として溶接通電を行った後、引き続き、加圧力EFをそのままとして、下記(2)式で表される関係を満たす保持時間HTで、溶接電極2A、2Bで高強度鋼板1A、1Bを保持する方法である。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
160 ≦ HT ≦ 300 ・・・・・(2)
但し、上記(1)、(2)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、HT:保持時間(ms)、を示す。
図1は、本発明において高強度鋼板1を溶接するのに用いられる抵抗スポット溶接方法を説明するための模式図である。
本発明で用いられる抵抗スポット溶接方法とは、まず、被溶接材である2枚の高強度鋼板1A、1B同士を重ね合わせる。そして、高強度鋼板1A、1Bの重ね合わせ部分に対して両側から、即ち、図1に示す例では上下方向から挟み込むように、銅合金からなる溶接電極2A、2Bを押し付けつつ通電することにより、2枚の高強度鋼板1A、1Bの間に溶融金属部を形成させる。この溶融金属部は、溶接通電が終了した後、水冷された溶接電極2A、2Bによる抜熱や高強度鋼板1A、1Bの熱伝導によって急速に冷却されて凝固し、2枚の高強度鋼板1A、1Bの間に、図示例のような断面楕円形状のナゲット(溶接金属)3が形成される。このようなナゲット3が形成されることにより、2枚の高強度鋼板1A、1Bが溶接される。
以下に、本発明における被溶接物である高強度鋼板1(1A、1B)の鋼板特性の限定理由について詳述する。
本発明では、被溶接物である高強度鋼板1(1A、1B)の引張強さを900〜1850MPaの範囲に規定する。
一般に、高強度鋼板の引張強さが900MPa以上である場合に、溶接後の溶接金属部において収縮欠陥や縦割れが発生し易いことから、この引張強さ以上である高強度鋼板が、本発明が適用される対象となる。また、高強度鋼板の引張強さが1850MPaを超える場合には、本発明による収縮欠陥や縦割れの防止効果が得られ難くなる。
本発明では、被溶接物である高強度鋼板1(1A、1B)の板厚を1.8〜2.8mmの範囲に規定する。
一般に、高強度鋼板の板厚が1.8mm以上である場合には、溶接後の溶接金属部において収縮欠陥や縦割れが発生することから、この板厚以上である高強度鋼板が、本発明が適用される対象となる。また、高強度鋼板の板厚が2.8mmを超える場合には、本発明による収縮欠陥や縦割れの防止効果が得られ難くなる。
本発明では、被溶接物である高強度鋼板をなす鋼種については特に限定されず、例えば、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等、何れの型の鋼板であっても良い。何れの鋼種からなる高強度鋼板であっても、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法を適用することにより、スポット溶接の際に収縮欠陥や縦割れが発生するのを防止でき、鋼板の特性を損なうことなく、信頼性の高い溶接継手(溶接金属部)が得られる。
本発明では、高強度鋼板の表層に施されるめっき層の種類については、例えば、Zn系、Zn−Fe系、Zn−Ni系、Zn−Al系、Zn−Mg系、Pb−Sn系、Sn−Zn系、Al-Si系等、何れのめっき層であっても良い。また、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜(例えば、潤滑皮膜等)が施されていても良い。また、これらのめっき層の目付量についても、特に限定されないが、両面の目付け量で100g/100g/m2以下とすることが好ましい。めっきの目付け量が片面あたりで100g/m2を越えると、めっき層が溶接の際の障害となる場合がある。
以下に、本実施形態で規定する抵抗スポット溶接の際の溶接条件について、その限定理由を詳述する。
本実施形態では、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EF(N)を、下記(1)式で表される範囲に規定する。
1960×t ≦ EF ≦ 2940×t ・・・・・(1)
但し、上記(1)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)を示す。
一方、加圧力EFが{2940×t}(N)を超えると、溶接部の凹みが大きくなって外観を損ねたり、継手強度が低下する等の問題が生じ、また、溶接ガン(溶接電極2A、2B)の剛性を上げる必要性が生じる。
ここで、上述したように、異厚の2枚重ねや3枚以上重ねの場合には、全ての鋼板の板厚を加算し、2枚重ねとして平均した値を鋼板の板厚として、これが上記限定範囲内に入っているかどうかを判断すれば良い。
本実施形態においては、上記(1)式で表される範囲の加圧力EFとされた条件で溶接通電した後、引き続き、上記(2)式で表されるように、保持時間HTを160〜300msの範囲として、溶接電極2A、2Bによって高強度鋼板1A、1Bを保持する。
本実施形態において、溶接通電後の保持時間HTを上記範囲としたのは、160ms以上保持することで溶接金属部の凝固が完了し、収縮欠陥や割れの防止に効果があるからである。また、保持時間HTが300msを超えると、生産性が低下する。
また、本実施形態のスポット溶接方法においては、溶接通電の際の溶接電流は、鋼板を溶接する抵抗スポット溶接方法において従来から採用されている電流値と同程度とすれば良い。
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第2の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同じ図面を参照してその構成を説明するとともに、共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.30 × WT ≦ DST ≦ 0.50 × WT ・・・・・(3)
但し、上記(1)、(3)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WT:溶接時間(ms)、DST:ダウンスロープ通電時間(ms)を示す。
また、本実施形態では、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを上記(1)式で表される関係を満たす条件とする点においても、上記第1の実施形態と同様である。
以下に、本実施形態で規定する溶接通電後のダウンスロープ通電の条件について、その限定理由を詳述する。
本実施形態では、上述したように、上記範囲の加圧力EFとされた条件で、溶接電極2A、2Bに溶接時間WT(ms)の時間で溶接通電した後、引き続き、下記(3)式で表される関係を満たす時間で規定されたダウンスロープ通電を行う。
0.30 × WT ≦ DST ≦ 0.50 × WT ・・・・・(3)
但し、上記(3)式において、WT:溶接時間(ms)、DST:ダウンスロープ通電時間(ms)を示す。
ダウンスロープ通電時間DST(ms)が、上記(3)式の規定範囲より短すぎる場合には、上記効果が得られ難くなり、また、長すぎる場合には生産性が低下する。
ここで、スポット溶接を行う場合、溶接電極2A、2Bは水冷手段によって冷却されているので、図5に示す通電パターンで通電を停止した場合には、高強度鋼板1A、1Bの溶接金属部は急冷されて金属組織がマルテンサイト組織となり、強度(硬さ)が増加するという特徴がある。しかしながら、従来の条件で高強度鋼板をスポット溶接した場合、図3に示すように、溶接金属部であるナゲット103Aの中心において、図示略の電極からの抜熱によって上下方向の収縮が生じ、通電終了後に急激な溶接金属の収縮が起こるため、ナゲット103Aの中心で収縮欠陥104が生じる。また、溶接金属は横方向にも収縮するが、温度が上昇していない母材はその収縮に追従できないため、図4に示すように、溶接金属が母材側から引張応力を受け、強度(硬さ)が増加して伸び(変態能)が低下したナゲット103B内部において縦割れ105が生じるという問題があった。
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第3の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態と同じ図面を参照してその構成を説明するとともに、共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.50 × WC ≦ PHC1 ≦ 0.90 × WC ・・・・・(4)
0.30 × WT ≦ PHT1 ≦ 0.50 × WT ・・・・・(5)
但し、上記(1)、(4)、(5)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC1:後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT1:後加熱時間(ms)を示す。
また、本実施形態では、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを上記(1)式で表される関係を満たす条件とする点においても、上記第1の実施形態と同様である。
以下に、本実施形態で規定する後加熱通電の条件について、その限定理由を詳述する。
本実施形態では、上述したように、上記(1)式で表される範囲の加圧力EFとされた条件で、溶接電極2A、2Bに溶接時間WTの時間で溶接通電した後、引き続き、上記(4)式で表される関係を満たす後加熱電流PHC1、及び、上記(5)式で表される関係を満たす後加熱時間PHT1の各条件で規定された後加熱通電を行う。
本実施形態で規定する後加熱通電の際の後加熱電流PHC1は、上記(4)式で表されるように、溶接電流WC(kA)の0.50〜0.90倍の範囲とする。
後加熱電流PHC1を上記範囲とした上で、後述の後加熱時間PHT1で後加熱通電を行うことにより、溶接金属部であるナゲット3において収縮欠陥や縦割れが発生するのを効果的に防止することが可能となる。後加熱電流PHC1が上記(4)式の規定範囲外だと、上記効果が得られ難くなる場合がある。
本実施形態で規定する後加熱通電の際の後加熱時間PHT1は、上記(5)式で表されるように、溶接時間WT(ms)の0.30〜0.50倍の範囲の数値とする。後加熱時間PHT1をこの範囲とするとともに、後加熱電流PHC1を上記範囲として後加熱通電を行うことにより、溶接金属部であるナゲット3において収縮欠陥や縦割れが発生するのを効果的に防止することが可能となる。この場合の通電パターンは、図2(b)のグラフに示すように、溶接時間WT(ms)で通電した後、溶接電極2A、2Bに通電する電流値(I)を下げ、一定の電流値(後加熱電流PHC1)で所定時間(後加熱時間PHT1)の通電を行うパターンとなる。
後加熱時間PHT1が、上記(4)式の規定範囲外で、0.30WTを下回る場合には上記効果が得られ難くなり、また、0.50WTを超えると生産性が低下する。
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第4の実施形態について、以下に説明する。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、上記第1の実施形態と同様、引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板を抵抗スポット溶接方法によって溶接する方法であり、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを下記(1)式で表される関係を満たす条件とし、溶接通電を行った後、引き続き、溶接電流WC(kA)、第1の後加熱電流PHC2(kA)、溶接時間WT(ms)、第1の後加熱時間PHT2(ms)の各々を、下記(6)、(7)式で表される関係を満たす条件として第1の後加熱通電を行ない、次いで、第2の後加熱電流PHC3(kA)、第2の後加熱時間PHT3(ms)の各々を、下記(8)、(9)式で表される関係を満たす条件として第2の後加熱通電を行う方法である。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.85 × WC ≦ PHC2 ≦ 0.95 × WC ・・・・・(6)
0.20 × WT ≦ PHT2 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(7)
0.70 × WC ≦ PHC3 ≦ 0.80 × WC ・・・・・(8)
0.20 × WT ≦ PHT3 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(9)
但し、上記(1)、(6)、(7)、(8)、(9)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC2:第1の後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT2:第1の後加熱通電時間(ms)、PHC3:第2の後加熱電流(kA)、PHT3:第2の後加熱通電時間(ms)を示す。
また、本実施形態では、溶接電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EFを上記(1)式で表される関係を満たす条件とする点においても、上記第1〜第3の実施形態と同様である。
以下に、本実施形態で規定する後加熱通電の条件について、その限定理由を詳述する。
本実施形態の第1の後加熱通電における、第1の後加熱電流PHC2(kA)は、上記(6)式で表されるように、溶接電流WC(kA)の0.85〜0.95倍の範囲とする。
第1の後加熱電流PHC2を上記範囲としたうえで、後述の第1の後加熱時間PHT2で第1の後加熱通電を行うことにより、溶接金属部であるナゲット3において収縮欠陥や縦割れが発生するのを効果的に防止することが可能となる。第1の後加熱電流PHC2が上記(6)式の規定範囲外だと、上記効果が得られ難くなる。
本実施形態の第2の後加熱通電における、第2の後加熱電流PHC3(kA)は、上記(8)式で表されるように、溶接電流WC(kA)の0.70〜0.80倍の範囲とする。
第2の後加熱電流PHC3を上記範囲としたうえで、後述の第2の後加熱時間PHT3で第2の後加熱通電を行うことにより、溶接金属部であるナゲット3において収縮欠陥や縦割れが発生するのを効果的に防止することが可能となる。第2の後加熱電流PHC3が上記(8)式の規定範囲外だと、上記効果が得られ難くなる場合がある。
ここで、本実施形態で規定する2段階の後加熱通電を実施した後の溶接金属部の組織は、通常の抵抗スポット溶接方法で溶接した場合に得られるマルテンサイト組織とほぼ同じ組織になっているものと考えられる。しかしながら、本実施形態では、2段階の後加熱通電を実施することで溶接金属部の冷却速度を緩やかにしていることから、従来の溶接に比べて、急冷による溶接金属部の収縮や、その収縮による欠陥発生が起こり難く、また、急激な収縮による縦割れが起こり難くなっているものと考えられる。その結果、本実施形態では、溶接金属部であるナゲット3に収縮欠陥や縦割れが発生するのを防止する効果が、より顕著に得られるものと考えられる。
下記表1に示すような、板厚:1.8〜3.0mm、引張強さ:986〜1907MPaの焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP、1900HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)、2相組織型鋼板(日本鉄鋼連盟規格:980Y、1180Y、1470Y)を用い(板厚1.8、2.3mmは冷延鋼板、板厚2.8、3.0mmは熱延鋼板)、40×40mmの組織観察用試験片を作製した。
下記表1に、各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
一方、本発明の請求項1で規定する範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.12〜24の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、収縮欠陥あるいは割れが発生し、また、加圧力を本発明で規定する範囲を超えて大きく設定した場合には、溶接部における窪みが大きくなっていることが確認された。
下記表2に示すような、上記実施例1と同様の各種鋼板を用い、実施例1と同様の手順で組織観察用試験片を作製した。
次いで、これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表2に示す溶接条件(本発明の請求項2に記載の溶接条件)で、上記実施例1と同様の手順で、抵抗スポット溶接方法によって試験片同士を溶接した。
そして、上記手順で得られた溶接継手について、上記実施例1と同様の方法を用いて、溶接金属部における収縮欠陥の有無、割れの有無、及び、溶接部の窪みの程度を観察し、結果を下記表2に示した。
一方、本発明の請求項2で規定する範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.36〜46の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、収縮欠陥あるいは割れが発生し、また、加圧力を本発明で規定する範囲を超えて大きく設定した場合には、溶接部における窪みが大きくなっていることが確認された。
下記表3に示すような、上記実施例1、2と同様の各種鋼板を用い、実施例1、2と同様の手順で組織観察用試験片を作製した。
次いで、これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表3に示す溶接条件(本発明の請求項3に記載の溶接条件)で、上記実施例1と同様の手順で、抵抗スポット溶接方法によって試験片同士を溶接した。
そして、上記手順で得られた溶接継手について、上記実施例1と同様の方法を用いて、溶接金属部における収縮欠陥の有無、割れの有無、及び、溶接部の窪みの程度を観察し、結果を下記表3に示した。
一方、本発明の請求項3で規定する範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.61〜74の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、収縮欠陥あるいは割れが発生し、また、加圧力を本発明で規定する範囲を超えて大きく設定した場合には、溶接部における窪みが大きくなっていることが確認された。
下記表4に示すような、上記実施例1〜3と同様の各種鋼板を用い、実施例1〜3と同様の手順で組織観察用試験片を作製した。
次いで、これらの試験片を、図1に示すように同鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表4に示す溶接条件(本発明の請求項4に記載の溶接条件)で、上記実施例1〜3と同様の手順で、抵抗スポット溶接方法によって試験片同士を溶接した。
そして、上記手順で得られた溶接継手について、上記実施例1〜3と同様の方法を用いて、溶接金属部における収縮欠陥の有無、割れの有無、及び、溶接部の窪みの程度を観察し、結果を下記表4に示した。
一方、本発明の請求項4で規定する範囲外の溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.93〜110の比較例においては、何れの鋼種を用いた場合においても、収縮欠陥あるいは割れが発生し、また、加圧力を本発明で規定する範囲を超えて大きく設定した場合には、溶接部における窪みが大きくなっていることが確認された。
Claims (4)
- 引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板を抵抗スポット溶接方法によって溶接する高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
溶接電極の前記高強度鋼板に対する加圧力を、下記(1)式で表される関係を満たす条件として溶接通電を行った後、引き続き、前記加圧力をそのままとして、下記(2)式で表される関係を満たす保持時間で、前記溶接電極で前記高強度鋼板を保持することを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
160 ≦ HT ≦ 300 ・・・・・(2)
{但し、上記(1)、(2)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、HT:保持時間(ms)、を示す。} - 引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板を抵抗スポット溶接方法によって溶接する高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
溶接電極の前記高強度鋼板に対する加圧力を下記(1)式で表される関係を満たす条件とし、溶接通電を行った後、引き続き、下記(3)式で表される関係を満たす時間でダウンスロープ通電を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.30 × WT ≦ DST ≦ 0.50 × WT ・・・・・(3)
{但し、上記(1)、(3)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WT:溶接時間(ms)、DST:ダウンスロープ通電時間(ms)を示す。} - 引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板を抵抗スポット溶接方法によって溶接する高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
溶接電極の前記高強度鋼板に対する加圧力を下記(1)式で表される関係を満たす条件とし、溶接通電を行った後、引き続き、下記(4)、(5)式で表される各々の関係を満たす条件で後加熱通電を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.50 × WC ≦ PHC1 ≦ 0.90 × WC ・・・・・(4)
0.30 × WT ≦ PHT1 ≦ 0.50 × WT ・・・・・(5)
{但し、上記(1)、(4)、(5)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC1:後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT1:後加熱時間(ms)を示す。} - 引張強さが900〜1850MPa、板厚が1.8〜2.8mmである高強度鋼板を抵抗スポット溶接方法によって溶接する高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
溶接電極の前記高強度鋼板に対する加圧力を下記(1)式で表される関係を満たす条件とし、溶接通電を行った後、引き続き、下記(6)、(7)式で表される各々の関係を満たす条件で第1の後加熱通電を行ない、次いで、下記(8)、(9)式で表される各々の関係を満たす条件で第2の後加熱通電を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
1960 × t ≦ EF ≦ 2940 × t ・・・・・(1)
0.85 × WC ≦ PHC2 ≦ 0.95 × WC ・・・・・(6)
0.20 × WT ≦ PHT2 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(7)
0.70 × WC ≦ PHC3 ≦ 0.80 × WC ・・・・・(8)
0.20 × WT ≦ PHT3 ≦ 0.40 × WT ・・・・・(9)
{但し、上記(1)、(6)、(7)、(8)、(9)式において、t:高強度鋼板の板厚(mm)、EF:溶接電極の高強度鋼板に対する加圧力(N)、WC:溶接電流(kA)、PHC2:第1の後加熱電流(kA)、WT:溶接時間(ms)、PHT2:第1の後加熱通電時間(ms)、PHC3:第2の後加熱電流(kA)、PHT3:第2の後加熱通電時間(ms)を示す。}
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