JP6879345B2 - 抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法 - Google Patents

抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法に関する。
近年、自動車車体には燃費改善のための軽量化、および衝突安全性の確保の観点から、種々の高強度鋼板(ハイテン)の適用が進められている。自動車の組み立てラインにおいて、このような高強度鋼板からなる部材の接合には、主に抵抗スポット溶接(以下、スポット溶接と称することもある。)が用いられている。スポット溶接で接合された溶接継手は、上述のように衝突安全性の確保より、衝突変形時でも破断しない強度(引張強度)が要求される。一般に、溶接継手におけるスポット溶接部の継手強度は、せん断方向への引張強度であるせん断引張強度(以下、TSS(Tensile shear strength)と称する場合がある。)と剥離方向への引張強度である十字引張強度(以下、CTS(Cross tension strength)と称する場合がある。)で評価される。
スポット溶接部におけるTSSは母材の引張強度と共に増加する傾向があるが、CTSは母材の引張強度が780MPa以上では低下する場合があるとされている。CTSが低下する場合、破断形態は、スポット溶接部の周囲の母材またはHAZ(熱影響部)で延性的に破断するプラグ破断からナゲット内に脆性的に破断する界面破断もしくは部分プラグ破断へ遷移する。CTSの低下は、ナゲット端部でのP、Sの偏析や急冷後のナゲット端部の硬化により脆性的な破壊が起こることが原因とされている。このような脆性的な破壊を解決するため、従来より、本通電後に再度通電を行う後通電法の検討が様々になされている。
本通電後に再度通電を行う後通電法として、例えば特許文献1〜3の技術がある。特許文献1では、溶接部を形成するための主通電工程の後の後通電工程として、凝固域と凝固域を囲む熱影響部を高温に保持することが開示されている。特許文献2では、多段階通電を行うことが開示されている。また、特許文献3では、後通電時間が総板厚によって限定されることが開示されている。
特開2016−68142号公報 特開2012−192454号公報 特開2013−86125号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、後通電電流値が本通電より低いために、融点直下の温度に達するまでに時間を要する問題がある。特許文献2に記載の技術では、後通電工程の電流値はいずれも本通電の値より低いため、特許文献1と同様に急速に融点直下の温度に上げることができない問題がある。
特許文献3に記載の技術を、鋼板成分としてMnを2.5〜10.0質量%含有する鋼板(以下、この鋼板を中Mn鋼板と称する)に適用する場合には、濃化した偏析を拡散するための十分な後通電時間を必要とする。そのため、特許文献3に記載されるような極短時間の後通電時間では、融点直下での偏析の拡散の促進を行うことができず、偏析緩和通電の効果を得ることができない。
また、引張強度が780MPa以上で、かつ鋼板成分としてMnを2.5〜10.0質量%含有する高強度鋼板に、単通電のみを行う従来のスポット溶接方法では、十字引張強度が低い問題点があった。
本発明は係る問題に鑑み、上記した高強度鋼板、すなわち引張強度が780MPa以上の中Mn鋼板であっても、スポット溶接部のナゲット端部における偏析を軽減し、継手強度を向上させることができる抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法の提供を目的とする。
本発明では、上記課題を解決するために、この高強度鋼板を含む板組みの抵抗スポット溶接部における十字引張強度が低下するメカニズムおよび十字引張強度を向上させる方法について、鋭意検討した。
上述のように、鋼板の高強度化が進むにつれ、十字引張強度の確保は困難となる。それは、ナゲットにおいて凝固時にセルもしくはデンドライト間に生じる偏析等が原因であると考えられている。通電によって溶接部が形成され、通電終了時の冷却工程において溶接部が凝固していく。その凝固時に溶質元素が濃化した偏析部が生じ、その偏析部は脆い性質を持ち、その部分は亀裂が生じやすい。本発明者らは種々検討した結果、十字引張強度を向上させるためには、偏析部の拡散を促すために凝固後に再度溶融しない様に融点直下の温度まで再加熱することが有効であり、そのための適切な後通電の溶接条件が存在することが明らかとなった。
具体的には、まず、ナゲット形成のために溶融点以上まで加熱を行う主通電を行う。その後、偏析緩和後熱処理工程として、溶融ナゲットの凝固を完了させる冷却過程に続き、融点直下の温度に再加熱することで偏析の拡散を促進するための後通電を行う。この後通電は、融点直下まで急速に昇温する昇温過程と、その後、融点直下の温度を保持するための保持過程および/または遷移過程を有する。それぞれの工程の電流値は、それぞれの目的に合わせて限定される。さらに、昇温過程と保持過程の間に遷移過程を有する場合には、昇温過程の電流値から保持過程の電流値へ連続的に変化する遷移過程を付加することで、昇温過程から保持過程に移行する過程においてナゲット端部を融点直下に制御することが容易となる。
偏析緩和後熱処理工程中にこれらの過程を設けることで、電流値I(kA)で主通電のみを行う場合と比較して、十字引張強度が向上することがわかった。この結果から、後述する本発明の通電パターンを行うことで十字引張強度を向上させることができる。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1] 2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で狭持し、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法であって、
前記板組を電流値Iw(kA)で通電することにより溶接部を形成する主通電工程と、
前記主通電工程の後に、
式(1)に示す冷却時間tcp(ms)の間溶接部を冷却する冷却過程と、
次いで、式(2)に示す電流値Ip(kA)で、式(3)に示す通電時間tp(ms)の間溶接部の通電を行う昇温過程と、
次いで、式(4)に示すダウンスロープ通電時間tpma(ms)の間、通電電流を電流値Ip(kA)から式(5)に示す電流値Ipm(kA)へ連続的に減少させる遷移過程および/または式(5)に示す電流値Ipm(kA)で、式(6)に示す通電時間tpm(ms)の間溶接部の通電を行う保持過程を有する偏析緩和後熱処理工程とを備え、
前記偏析緩和後熱処理工程における通電の合計時間が式(7)となるように制御し、
前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、
0.08≦C≦0.3(質量%)、
0.1≦Si≦0.8(質量%)、
2.5≦Mn≦10.0(質量%)、および
P≦0.1(質量%)
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分であることを特徴とする抵抗スポット溶接方法。
30≦tcp ・・・式(1)
Iw≦Ip≦2.5×Iw ・・・式(2)
10≦tp ・・・式(3)
0≦tpma ・・・式(4)
0<Ipm≦0.95×Ip ・・・式(5)
10< tpm ・・・式(6)
400<tP+tpma+tpm ・・・式(7)
ただし、遷移過程を有しない場合は式(4)および式(7)においてtpma=0(ms)とし、保持過程を有しない場合は式(5)、式(6)および式(7)においてIpm=0(kA)、tpm=0(ms)とする。
[2] 前記偏析緩和後熱処理工程では、前記遷移過程および/または前記保持過程を2回以上繰り返し行い、
全ての遷移過程のダウンスロープ通電時間の合計時間ttpma(ms)を前記式(4)および前記式(7)に示すtpma(ms)とみなすとき、該ダウンスロープ通電時間の合計時間ttpmaが前記式(4)および前記式(7)を満足し、
全ての保持過程の通電時間の合計時間ttpm(ms)を前記式(6)および前記式(7)に示すtpm(ms)とみなすとき、該通電時間の合計時間ttpmが前記式(6)および前記式(7)を満足し、
i=2〜nの整数、i回目の遷移過程のダウンスロープ通電時間をtpmai(ms)、i回目の保持過程の電流値をIpmi(kA)、i回目の保持過程の通電時間をtpmi
(ms)とするとき、該i回目の保持過程の電流値Ipmiが、前記昇温過程の電流値Ipおよび1回目の保持過程の電流値Ipmに対して、下記式(9)を満足するように制御することを特徴とする[1]に記載の抵抗スポット溶接方法。
Ipmi<Ipm<Ip ・・・式(9)
[3] 前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の抵抗スポット溶接方法。
[4] 前記板組における板厚合計T(mm)が式(8)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接方法。
T≦4.0 ・・・(8)
[5] 前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、前記成分に加えてさらに、質量%で、Cu、Ni、Mo、Cr、Nb、V、Ti、B、Al、Caのうちから選択される1種または2種以上を、合計で5%以下含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接方法。
] [1]〜[]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接方法を用いた抵抗スポット溶接継手の製造方法。
本発明によれば、高強度鋼板、特に中Mn鋼板を少なくとも1枚含む、複数枚の鋼板を重ね合わせた板組に対して抵抗スポット溶接方法を施すに際し、高強度鋼板の抵抗スポット溶接部におけるナゲット端の偏析を減らすことによって、抵抗スポット溶接継手の継手強度を向上させることができ、産業上格段の効果を奏する。
図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の抵抗スポット溶接方法の第1実施形態に係る通電パターンの一例を示すグラフである。 図3は、本発明の抵抗スポット溶接方法の第2実施形態に係る通電パターンの一例を示すグラフである。 図4は、本発明の抵抗スポット溶接方法の第3実施形態に係る通電パターンの一例を示すグラフである。 図5は、本発明の抵抗スポット溶接方法の第4実施形態に係る通電パターンの一例を示すグラフである。
以下、各図を参照して、本発明の抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法について説明する。なお、本発明はこの実施形態に限定されない。
本発明は、1枚以上の高強度鋼板を含む合計2枚以上の鋼板を抵抗スポット溶接によって接合するものである。図1には、一例として、2枚の鋼板の抵抗スポット溶接を行う場合を示す。図1に示すように、本発明の抵抗スポット溶接方法は、鋼板1、2を重ね合わせた板組3を、板組3に対して下側に配置される電極4および上側に配置される電極5(すなわち、上下一対の電極)で挟持し、加圧しながら通電する。そして、必要サイズのナゲット6を形成して溶接継手を得るものである。なお、本発明では、3枚以上の鋼板を重ねて板組3としてもよく、この場合も上記した溶接方法と同様にして溶接継手を得ることができる。
このような抵抗スポット溶接方法を実施する好適な溶接装置としては、上下一対の電極を備え、一対の電極で溶接する部分を挟んで、加圧、通電ができて、さらに溶接中の加圧力および溶接電流をそれぞれ任意に制御可能な加圧力制御装置および溶接電流制御装置を有していればよい。
なお、加圧機構(例えば、エアシリンダやサーボモータ等)や、電流制御機構(例えば、交流や直流等)、形式(例えば、定置式、ロボットガン等)等は特に限定されない。電源の種類(単相交流、交流インバータ、直流インバータ)なども特に限定されない。電極の形状も特に限定されない。電極の先端の形式は、例えばJIS C 9304:1999に記載されるDR形(ドームラジアス形)、R形(ラジアス形)、D形(ドーム形)である。
本発明は、高強度鋼板を含む複数枚の板組の溶接方法に適用することができる。例えば、図1に示す抵抗スポット溶接の場合には、板組3のうち、鋼板1および鋼板2の少なくとも1枚の鋼板が高強度鋼板である。
高強度鋼板は、セル界面に溶質が偏析し、P、Sなどの不純物が過度に濃化するとセル界面が脆化しやすくなる。しかしながら、本発明によれば、融点直下での再加熱により、元素の濃化部である偏析の拡散を行う。これにより、組織的に偏った脆い部分を減らすことができ、十字引張試験時に亀裂が生じにくくなる効果を有する。また、ナゲット形成のための本通電に比べて高い電流で短時間通電することで偏析を拡散する。これにより、生産時間の短縮も見込める。
そのため、本発明では、溶接を行う板組のうち、少なくとも1枚の鋼板が、0.08≦C≦0.3(質量%)、0.1≦Si≦0.8(質量%)、2.5≦Mn≦10.0(質量%)、P≦0.1(質量%)を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有する高強度鋼板とする。このような成分を有する高強度鋼板であっても、上記効果を有することができる。以下、各成分における%とは、質量%のことを指す。
C:0.08%以上0.3%以下
Cは鋼の強化に寄与する元素であり、C含有量が0.08%未満であると、強度レベルがかなり低くなってしまう。そのため、C含有量0.08%未満で引張強度780MPa
以上の鋼板を製作することは極めて困難である。一方、C含有量が0.3%を超えると、鋼板の強度は高くなるものの、ナゲットとその周辺の熱影響部が過度に硬化し、脆化も進むため、十字引張強度を向上させることは困難である。そのため、C含有量は0.08%以上0.3%以下とする。より好ましくは、C含有量は0.10%以上0.2%以下である。
Si:0.1%以上0.8%以下
Si含有量が0.1%以上であると、鋼の強化に有効に作用する。一方、Si含有量が0.8%を超えると、鋼は強化されるものの、靱性に悪影響を与えることがある。そのため、Si含有量は0.1%以上0.8%以下とする。より好ましくは、Si含有量は0.1%以上0.5%以下である。
Mn:2.5%以上10.0%以下
Mn含有量が2.5%未満であると、本発明のように長時間の冷却を与えずとも、高い継手強度を得ることができる。一方、Mn含有量が10.0%を超えると、溶接部の脆化あるいは脆化に伴う割れが顕著に現れるため、継手強度を向上させることは困難である。そのため、Mn含有量は2.5%以上10.0%以下とする。より好ましくは、Mn含有量は3.5%以上8.0%以下である。
P:0.1%以下
Pは不可避的不純物であるが、P含有量が0.1%を超えると、溶接部のナゲット端に強偏析が現れるため継手強度を向上させることは困難である。そのため、P含有量は0.1%以下とする。より好ましくは、P含有量は0.02%以下である。
残部Feおよび不可避的不純物
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
なお、本発明では、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、Cr、Nb、V、Ti、B、Al、Caから選択される1種または2種以上の元素を加えてもよい。
Cu、Ni、Moは、鋼の強度向上に寄与することができる元素である。Crは、焼き入れ性の向上により強度を向上させることができる。Nb、Vは、析出硬化により組織制御をして鋼を強化することができる元素である。Ti、Bは、焼き入れ性を改善して鋼を強化することができる元素である。Alは、オーステナイト細粒化のため組織制御をすることができる元素である。Caは、鋼の加工性向上に寄与することができる元素である。この効果を得るため、上記成分に加えて、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、Cr、Nb、V、Ti、B、Al、Caから選択される1種または2種以上の元素を加えてもよい。なお、これらの元素は入れすぎてしまうと靱性劣化や割れが生じてしまうことから、これらの元素を加える場合には、合計5%以下であれば許容できる。
また、上記した成分を有する高強度鋼板の引張強度は、780MPa以上とすることが好ましい。上述のように、特に母材の引張強度が780MPa以上の場合、CTSが低下する恐れがある。しかし、本発明によれば、引張強度が780MPa以上の高強度鋼板であっても、偏析緩和後熱処理工程における短時間の通電によりナゲット端でのP、Sの偏析によるCTSの低下を抑制できる。なお、引張強度が780MPa未満の高強度鋼板でも、当然に上記効果は得られる。
なお、溶接を行う板組のうち、少なくとも1枚の鋼板が、亜鉛めっき鋼板であっても、上記効果を得ることができる。本発明において亜鉛めっき鋼板とは、亜鉛を主成分とするめっき層を有する鋼板であり、亜鉛を主成分とするめっき層には、従来から公知の亜鉛めっき層をすべて含むものとする。具体的には、亜鉛を主成分とするめっき層として、溶融亜鉛めっき層や電気亜鉛めっき層をはじめとして、Zn−Alめっき層やZn−Ni層等が含まれる。
また、重ね合わせる複数の鋼板は、同種鋼板を複数枚重ねてもよいし、あるいは異種鋼板を複数枚重ねてもよい。各鋼板の板厚が異なっても何ら問題ないし、めっき層を有する表面処理鋼板とめっき層を有さない鋼板を重ね合わせてもよい。
なお、板厚が増加すると、ナゲット端部での応力が集中してしまう。そのため、本発明では、板組3における板厚の合計T(mm)が、式(8)を満たすことが好ましい。板厚が薄ければ、通電による熱の伝達量が大きくなるため、一般的なハイテンとして利用される板厚、すなわち1.0≦Tがより好ましい。
T≦4.0 ・・・(8)
本発明は、1枚以上の高強度鋼板を含む合計2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組3を、抵抗スポット溶接によって接合するものである。ここでは、図1を用いて、2枚の鋼板1、2を重ね合わせた板組3に一対の電極4、5によって加圧し、所定の溶接条件で通電し、接合する抵抗スポット溶接方法について説明する。
まず、下側に配置される鋼板1と上側に配置される鋼板2とを重ね合わせる。ここでは、鋼板1および鋼板2のうち、少なくとも1枚が高強度鋼板である。
次いで、下側に配置される電極4および上側に配置される電極5で鋼板1と鋼板2を挟持し、加圧しながら以下のように溶接条件を制御して通電する。
まず、板組を電流値I(kA)で通電することにより溶接部を形成する主通電工程を行い、次いで、偏析緩和後熱処理工程を行う。偏析緩和後加熱処理工程は、冷却過程、昇温過程、遷移過程および/または保持過程を有する。例えば、下記の式(1)に示す冷却時間tcp(ms)の間溶接部を冷却する冷却過程の後、式(2)に示す電流値I(kA)で、式(3)に示す通電時間t(ms)の間溶接部の通電を行う昇温過程を行う。その後、式(4)に示すダウンスロープ通電時間tpma(ms)の間、通電電流を電流値I(kA)から式(5)に示す電流値Ipm(kA)へ連続的に減少させる遷移過程および/または式(5)に示す電流値Ipm(kA)で、式(6)に示す通電時間tpm(ms)の間溶接部の通電を行う保持過程を行う。偏析緩和後熱処理工程における通電時間、すなわち昇温過程、遷移過程および/または保持過程の通電時間の合計は、式(7)となるように制御する。
30≦tcp ・・・式(1)
≦I≦2.5×I ・・・式(2)
10≦t ・・・式(3)
0≦tpma ・・・式(4)
0<Ipm≦0.95×I ・・・式(5)
10<tpm ・・・式(6)
400<t+tpma+tpm ・・・式(7)
ただし、式(7)は偏析緩和後熱処理工程の通電時間を示す。なお、遷移過程を有しない場合は式(4)および式(7)のtpmaは0msとし、保持過程を有しない場合は式(5)、式(6)および式(7)のIpmは0kA、tpmは0msとする。
なお、本発明では、ナゲット端部の偏析をより効果的に解消するため、ナゲット端部の温度がA3変態点(Ac3変態点)直下の温度を維持するように、偏析緩和後熱処理工程の通電において温度を上昇、低下させることが好ましい。これによりCTSをより一層向上させることができる。例えば、上述の偏析緩和後熱処理工程における遷移過程および/または保持過程を2回以上繰り返し行ってもよい。
〔主通電工程〕
主通電工程とは、下側の鋼板1と上側の鋼板2の重ね合わせ部を溶融してナゲット6を形成する通電工程である。なお、本発明では、主通電工程におけるナゲット6を形成するための通電条件、加圧条件は特に限定しない。従来から用いられている溶接条件を採用することができる。
なお、本発明の上記鋼板成分を有する高強度鋼板を用いる場合には、主通電工程の通電条件は、次のように制御することが好ましい。例えば、主通電工程の電流値I(kA)は、安定したナゲット径を得るために好ましくは4.0kA〜8.0kAとする。主通電工程の通電時間t(ms)は、好ましくは120ms〜400msとする。加圧条件は、好ましくは2.0kN〜4.0kNとする。
〔偏析緩和後熱処理工程〕
偏析緩和後熱処理工程とは、主通電工程で形成されたナゲット6における、ナゲット端部の偏析を減らすための後熱処理工程である。ナゲット端部の偏析を減らす効果を得るためには、偏析緩和後熱処理工程における溶接条件を次のように制御することが重要である。特に、偏析緩和後熱処理工程の通電時間の合計が所定の条件となるように制御する。
なお、本発明では、偏析緩和後熱処理工程として、例えば、冷却過程の後に昇温過程および保持過程をこの順に行ってもよく(図2を参照)、冷却過程後に昇温過程、遷移過程および保持過程をこの順に行ってもよく(図3を参照)、あるいは、冷却過程後に昇温過程および遷移過程をこの順に行ってもよい(図4を参照)。いずれの偏析緩和後熱処理工程であっても、本発明の上記効果は得られる。
<冷却過程>
まず、上記した式(1)に示す冷却時間tcp(ms)の間溶接部を冷却する冷却過程を行う。
冷却過程の冷却時間tcp(ms)が30(ms)未満の場合、ナゲットの凝固が進まず、融点以下の温度にならない可能性がある。その結果、後通電により再加熱を行っても、再度溶融してしまうだけになり、ナゲットを単通電により生成することになり、偏析の拡散効果は望めない。よって、冷却過程の冷却時間tcp(ms)は30(ms)以上とする。好ましくは、40(ms)以上である。
なお、冷却過程の冷却時間tcp(ms)の上限は特に限定しないが、冷却過程の冷却時間tcp(ms)は500(ms)以下とすることが好ましい。冷却過程の冷却時間tcp(ms)が500(ms)を超える場合、後通電により偏析を緩和できる温度に再加熱するまでに時間がかかり、生産性を阻害するので望ましくない。好ましくは、400(ms)以下とする。
<昇温過程>
冷却過程に引き続き、上記した式(2)に示す電流値I(kA)で、上記した式(3)に示す通電時間t(ms)の間溶接部を通電する昇温過程を行う。
昇温過程の電流値I(kA)が主通電の電流値I(kA)未満の場合、長時間の後通電を与えなければ温度が低いため偏析を緩和するのは困難であり、生産性が悪い。よって、昇温過程の電流値I(kA)は主通電の電流値I(kA)以上とする。好ましくは、4.0(kA)以上である。
一方、昇温過程の電流値I(kA)が、主通電の電流値I(kA)の2.5倍(すなわち、2.5×I(kA))を超える場合、融点を超えてしまう可能性がある。その結果、再溶融を起こすため、再度ナゲットが溶けてしまい、主通電で生み出したナゲットをもう一度生成することとなる。よって、昇温過程の電流値I(kA)は2.5×I(kA)以下とする。好ましくは、主通電の電流値I(kA)の1.5倍(すなわち、1.5×I(kA))以下である。
昇温過程の通電時間t(ms)が10(ms)未満の場合、偏析緩和の温度に到達しない可能性がある。その結果、偏析が残ったままになってしまう。よって、昇温過程の通電時間t(ms)は10(ms)以上とする。好ましくは、20(ms)以上である。
なお、昇温過程の通電時間t(ms)の上限は特に限定しない。昇温過程では偏析緩和を行うために比較的高温で通電することから、昇温過程の通電時間t(ms)を500(ms)以下とすることが好ましい。昇温過程の通電時間t(ms)が500(ms)を超える場合、A3変態点を超えてしまい、再度マルテンサイト組織が発現してしまう恐れがあるため望ましくない。また、本発明は、昇温過程で温度を上記変態点以下まで急上昇させ、その後の過程で温度を維持する制御を行うため、昇温過程を長くとる必要は無い。昇温過程の通電時間t(ms)は、400(ms)以下とすることがより好ましい。
<保持過程>
昇温過程に引き続き、上記した式(5)に示す電流値Ipm(kA)で、上記した式(6)に示す通電時間tpm(ms)の間溶接部を通電する保持過程を行うことができる。これにより偏析を緩和する。例えば、昇温過程の後、直ちに保持過程を行ってもよい(図2を参照)。
保持過程の電流値Ipm(kA)が、昇温過程の電流値I(kA)の0.95倍(すなわち、0.95×I(kA))を超える場合、融点を超えてしまう可能性がある。その結果、再度ナゲットを生成することになり後通電の意味を持たず、偏析を緩和することもできない。よって、保持過程の電流値Ipm(kA)は0.95×I(kA)以下とする。好ましくは、昇温過程の電流値I(kA)の0.8倍(すなわち、0.8×I(kA))以下とする。
なお、保持過程の電流値Ipm(kA)が1(kA)以下の場合、必ずしも偏析の緩和が十分でない場合もあるので、保持過程の電流値Ipm(kA)は1(kA)超えが好ましい。
保持過程の通電時間tpm(ms)が10(ms)以下の場合、偏析を拡散するための融点以下で温度保持を行うことができず、偏析が残存してしまい、十分な継手強度を保つことができない。よって、保持過程の通電時間tpm(ms)は10(ms)超えとする。好ましくは、20(ms)以上である。なお、保持過程の通電時間tpm(ms)の上限は特に限定しないが、溶接時間が長くなることにより、溶接の生産性が下がってしまうことから、保持過程の通電時間tpm(ms)は3000(ms)以下が好ましい。
上述のように、本発明では、偏析緩和後熱処理工程の通電時間の合計が式(7)を満足するように制御することが重要である。そのため、保持過程の通電時間が式(6)を満足しても、保持過程の通電時間tpm(ms)が、式(7)に示す偏析緩和後熱処理工程の通電時間の関係式を満たさない場合には、本発明の高強度鋼板のMn含有率が高いため、十分に偏析を緩和することができない。よって、保持過程の通電時間が式(6)を満足する場合には、さらに保持過程の通電時間tpm(ms)が、式(7)の関係式(400<t+tpma+tpm)を満たすように制御する。
なお、上記の通り、冷却過程の後に昇温過程および保持過程を行う場合、すなわち昇温過程および保持過程の各通電時間の合計が400(ms)以下の場合には、式(7)における後述する遷移過程のダウンスロープ通電時間tpma(ms)は0である。一方、冷却過程の後に昇温過程および遷移過程を行う場合、すなわち保持過程を有さない場合には、式(7)における保持過程の通電時間tpm(ms)は0である。
<遷移過程>
ナゲット端部の偏析を減らす効果をより有効に得るために、遷移過程を行うことができる。例えば、昇温過程と保持過程の間や、昇温過程の後直ちに、遷移過程を行うことができる(図3、4を参照)。遷移過程では、ダウンスロープ通電時間tpma(ms)の間、電流値を電流値I(kA)から電流値Ipm(kA)へ連続的に減少させる。この遷移過程における溶接条件(式(4)の関係式)は、同様に上記した式(7)に示す関係式400<t+tpma+tpmも満たすように制御する。
なお、遷移過程を有する場合は、保持過程は有さなくてもよい。すなわち、式(7)における保持過程の通電時間tpmは0であってもよい。この場合には、式(7)に示す関係式は、400<t+tpmaを満たすように制御すればよい。
上述のように、本発明では、偏析緩和後熱処理工程における「遷移過程および/または保持過程」を2回以上繰り返し行うことができる。
なお上記繰り返し行う場合において、「遷移過程」とは、ダウンスロープ通電時間(ms)の間、電流値を、ある電流値(kA)から他の電流値(kA)へ連続的に減少させる過程を指す。また「保持過程」とは、偏析緩和後熱処理工程において、昇温過程を除き、同一の電流値を保っている過程を指す。
遷移過程および/または保持過程を2回以上繰り返して行うことにより、ナゲット端部が融点直下の温度を保ちやすくなり、偏析緩和の効果をより一層高めることができる。なお、融点直下の温度を保てればよいため、繰り返し回数は特に限定しない。工数の増加の観点より、繰り返し回数は5回以下とすることが好ましい。
ここで、「遷移過程および/または保持過程を2回以上」とは、例えば「遷移過程および保持過程」を続けて2回以上繰り返す場合や、「遷移過程または保持過程」を続けて2回繰り返す場合や、「遷移過程および保持過程」の後に「遷移過程または保持過程」を続ける場合や、「遷移過程または保持過程」の後に「遷移過程および保持過程」を続ける場合を意味する。
遷移過程および/または保持過程を2回以上繰り返す場合には、上述の条件に加えて、さらに次の条件を満たすように制御することが好ましい。
遷移過程が繰り返し行われる場合、各遷移過程におけるダウンスロープ通電時間は、1回目をtpma1(ms)、2回目をtpma2(ms)、i回目をtpmai(ms)、i=2〜nの整数とするとき、全ての遷移過程におけるダウンスロープ通電時間の合計時間はttpma(ttpma=pma1+tpma2+…+tpmai)である。すなわち、ttpmaは偏析緩和後熱処理工程における1回目の遷移過程〜i回目の遷移過程におけるダウンスロープ通電時間の合計を指す。このダウンスロープ通電時間の合計時間ttpma(ms)を上記の式(4)および上記の式(7)に示すtpma(ms)とみなすとき、上記ttpmaが上記の式(4)および上記の式(7)を満足することが好ましい。満足しない場合には、十分に偏析の緩和を促進することができないからである。
また、保持過程が繰り返し行われる場合、各保持過程における通電時間は、1回目をtpm1(ms)、2回目をtpm2(ms)、i回目をtpmi(ms)、i=2〜nの整数とするとき、全ての保持過程における通電時間の合計時間はttpm(ttpm=pm1+tpm2+…+tpmi)である。すなわち、ttpmは偏析緩和後熱処理工程における1回目の保持過程〜i回目の保持過程における通電時間の合計を指す。この保持過程の通電時間の合計時間ttpm(ms)を上記の式(6)および上記の式(7)に示すtpm(ms)とみなすとき、上記ttpmが上記の式(6)および上記の式(7)を満足することが好ましい。満足しない場合には、遷移過程と同様に、十分に偏析の緩和を促進することができないからである。
さらに、i回目の保持過程の電流値をIpmi(kA)、i=2〜nの整数とするとき、i回目の保持過程の電流値Ipmiが、昇温過程の電流値Iおよび1回目の保持過程の電流値Ipmに対して、下記の式(9)を満足するように制御することが好ましい。
pmi<Ipm<I ・・・式(9)
i回目の保持過程の電流値Ipmiが昇温過程の電流値I以上の場合、ナゲット端部の温度を融点近くまで一気に上昇する通電であることから融点を超える恐れがある。その結果、ナゲット端部の組織が溶融し、オーステナイトとなり、通電終了後にナゲット端部の組織がマルテンサイトになる恐れがある。
また、i回目の保持過程の電流値Ipmiが1回目の保持過程の電流値Ipm以上の場合、保持過程において融点直下の温度を目標としていることから、融点を超えてしまい、その結果、再度溶融することにより、脆い組織に戻ってしまう恐れがある。より好ましくは、上記電流値Ipmiは(0.8×Ipm)以下である。
さらに、昇温過程の電流値Iと1回目の保持過程の電流値Ipmについては、上述のように、1回目の保持過程の電流値が昇温過程の電流値より大きくなる場合、融点を超えることによって溶融してしまう恐れがある。そのため、Ipm<Iの関係とすることが好ましい。
なお、電流値が一定であると、通電時間が長くなるにつれて温度が上昇していくが、上述のような保持過程を繰り返すことにより、偏析緩和後熱処理工程の通電の温度を下げることなく、一定に保つことが可能となる。
ここで、一例として、上記した本発明の抵抗スポット溶接方法における通電パターンを説明する。図2〜図4には、それぞれ本発明の抵抗スポット溶接の通電パターンを示す。図2〜図4に示すように、主通電工程および偏析緩和後熱処理工程は、各図に示した通電パターンに制御される。
図2に示す例では、主通電である主通電工程の電流値をI(kA)、通電時間をt(ms)に設定する。また、後通電である偏析緩和後熱処理工程における冷却過程の冷却時間をtcp(ms)、昇温過程における電流値をI(kA)、通電時間をt(ms)、保持過程における電流値をIpm(kA)、通電時間をtpm(ms)に、それぞれ設定する。そして、図1に示すように、板組3(鋼板1、2)を一対の電極4、5で挟持し、図2に示す通電パターンで通電を行い、鋼板1、2の境界にナゲット6を形成する。
図3および図4に示す例では、偏析緩和後熱処理工程の遷移過程を含む通電パターンの一例を示す。なお、図3には遷移過程に引き続き保持過程を行う場合を示し、図4には遷移過程に引き続き保持過程を行わない場合を示す。各工程は、図3、図4にそれぞれ示す通電パターンに制御される。そして、図1に示すように、板組3(鋼板1、2)を一対の電極4、5で挟持し、図3、4に示す通電パターンで通電を行い、鋼板1、2の境界にナゲット6を形成する。
なお、各工程における電流値I(kA)と電流値Ipm(kA)の大小関係は特に問わない。後通電工程では偏析の緩和を目的にしており、融点以下の温度で再溶融しなければ良いため、Ipm(kA)は0.95×I(kA)より小さければ問題はない。
図5には、遷移過程および/または保持過程を2回繰り返す一例として、保持過程を2回繰り返す場合を示す。図5に示すように、主通電工程および偏析緩和後熱処理工程は、各図に示した通電パターンに制御される。
図5に示すように、主通電である主通電工程の電流値をI(kA)、通電時間をt(ms)に設定する。また、後通電である偏析緩和後熱処理工程における冷却過程の冷却時間をtcp(ms)、昇温過程における電流値をI(kA)および通電時間をt(ms)、1回目の保持過程における電流値をIpm1(kA)(=Ipm(kA))および通電時間をtpm1(ms)(=tpm(ms))、2回目の保持過程における電流値をIpm2(kA)および通電時間をtpm2(ms)、にそれぞれ設定する。そして、図1に示すように、板組3(鋼板1、2)を一対の電極4、5で挟持し、図5に示す通電パターンで通電を行い、鋼板1、2の境界にナゲット6を形成する。この際、全ての保持過程における通電時間の合計時間はttpm(ttpm=pm1+tpm2)であり、この合計時間ttpm(ms)を上記の式(6)および上記の式(7)に示すtpm(ms)とみなし、上記ttpmが上記の式(6)および上記の式(7)を満足するように通電を制御する。またIpm1、Ipm2も上記の式(5)および上記の式(9)を満たすように通電を制御する。
本発明によれば、主通電で形成されナゲット6に対して、偏析緩和後熱処理工程において、融点直下での再加熱を行うため、板組3に上記した鋼板成分を有する高強度鋼板を含む場合であっても、偏析を緩和することができる。
次に、抵抗スポット溶接継手の製造方法について説明する。
本発明は、上述した抵抗スポット溶接方法を用いた抵抗スポット溶接継手の製造方法である。本発明の抵抗スポット溶接継手の製造方法では、例えば、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を一対の電極で狭持し、加圧しながら上記した各工程の溶接条件で通電する抵抗スポット溶接を行い、必要サイズのナゲットを形成し、抵抗スポット溶接継手を得る。なお、鋼板や溶接条件等は上述の説明と同様であるため、説明は省略する。
以上説明したように、本発明の抵抗スポット溶接方法および抵抗スポット溶接継手の製造方法は、後工程すなわち偏析緩和後熱処理工程での溶接条件を適切に制御することにより、亀裂の発生源である偏析部を解消することができる。これにより、得られる溶接継手の継手強度を向上させることができる。さらに、偏析緩和後熱処理工程の昇温工程と保持工程の間に、ダウンスロープ通電を行うことにより、偏析の拡散をより促すことができ、CTSを向上させる。そのため、板組に高強度鋼板として上記した鋼板成分を有する中Mn鋼板を含む場合でも、継手強度をより向上させることができる。
なお、本発明により得られるナゲットの成分は、0.05≦C≦0.35(質量%)、0.1≦Si≦0.8(質量%)、2.0≦Mn≦10(質量%)の範囲と規定する。ナゲット内成分の算出方法は、上述の方法で作製したサンプルからナゲットを切出し、化学分析により求めても良い。あるいは、溶接部の断面写真から求め、その割合を上下それぞれの鋼板の溶融部の断面積の割合とそれぞれの鋼板成分の含有量より換算しても良い。
以下、本発明の作用および効果について、実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
本発明の実施例として、上述の図1に示すように、2枚の鋼板(下側の鋼板1と上側の鋼板2)を重ね合わせた板組3について、Cガンに取付けられたサーボモータ加圧式で直流電源を有する抵抗溶接機を用いて抵抗スポット溶接を行い、必要サイズのナゲット6を形成し、抵抗スポット溶接継手を作製した。なお一部は3枚の鋼板を重ね合わせて板組みとした。
試験片には、780MPa級〜1180MPa級までの板厚0.8〜1.2mmの高強度鋼板(鋼板A〜鋼板F)を使用した。試験片のサイズは、長辺:150mm、短辺:50mmとした。鋼板A〜鋼板Fには、次に示す鋼板成分のものを用いた。以下、鋼板成分を表す%は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
[鋼板Aの鋼板成分]
C:0.2%、Si:0.6%、Mn:4.0%、P:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
[鋼板Bの鋼板成分]
C:0.10%、Si:0.2%、Mn:6.0%、P:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
[鋼板Cの鋼板成分]
C:0.10%、Si:1.1%、Mn:1.2%、P:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
[鋼板Dの鋼板成分]
C:0.13%、Si:0.8%、Mn:1.2%、P:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
[鋼板Eの鋼板成分]
C:0.58%、Si:0.25%、Mn:0.75%、P:0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
[鋼板Fの鋼板成分]
C:0.28%、Si:0.7%、Mn:12.0%、P:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板
まず、得られた試験片を用いて表1に示したように配置し、板組3とした。
次に、各板組3を用いて、表2−1および表2−2に示す溶接条件の抵抗スポット溶接を行い、必要サイズのナゲット6を形成し、抵抗スポット溶接継手を得た。なお、この時の通電は、以下に示す条件で行った。通電中の加圧力は一定とし、ここでは3.5kNで行った。また、下の電極4と上の電極5は、いずれも先端の直径:6mm、先端の曲率半径:40mmとし、クロム銅製のDR型電極を用いた。また、下側の電極4と上側の電極5で加圧力を制御し、直流電源を用いて溶接を行った。ナゲット径は、板厚:t(mm)とするとき5.5√t(mm)以下となるように形成した。
得られた抵抗スポット溶接継手を用いて、以下に記載の方法で十字引張試験を行い、CTSの評価を行った。
[CTSの評価]
CTSの評価は、作製した抵抗スポット溶接継手に対し、JISZ3137に規定の方法で十字引張試験を行い、CTS(十字引張力)を測定して行った。測定値がJIS A級(3.4kN)以上であったものに対して記号○を付し、JIS A級未満であったものに対して記号×を付した。なお、本実施例では、記号○の場合を良好と評価し、記号×の場合を劣ると評価する。
表2−1および表2−2に溶接後の抵抗スポット溶接継手におけるCTSの評価結果を示す。
Figure 0006879345
Figure 0006879345
Figure 0006879345
表2−1および表2−2に示したとおり、本発明の方法に従い抵抗スポット溶接を行った本発明例では、良好な抵抗スポット溶接継手が得られた。これに対し、本発明の方法の溶接条件を外れる比較例では良好な継手が得られなかったことが分かる。
本発明例のうち、遷移過程および/または保持過程を2回以上繰り返す実施例では、CTSがより一層向上したことが分かる。
1 下の鋼板
2 上の鋼板
3 板組
4 下の電極
5 上の電極
6 ナゲット

Claims (6)

  1. 2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で狭持し、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法であって、
    前記板組を電流値I(kA)で通電することにより溶接部を形成する主通電工程と、
    前記主通電工程の後に、
    式(1)に示す冷却時間tcp(ms)の間溶接部を冷却する冷却過程と、
    次いで、式(2)に示す電流値I(kA)で、式(3)に示す通電時間t(ms)の間溶接部の通電を行う昇温過程と、
    次いで、式(4)に示すダウンスロープ通電時間tpma(ms)の間、通電電流を電流値I(kA)から式(5)に示す電流値Ipm(kA)へ連続的に減少させる遷移過程および/または式(5)に示す電流値Ipm(kA)で、式(6)に示す通電時間tpm(ms)の間溶接部の通電を行う保持過程を有する偏析緩和後熱処理工程とを備え、
    前記偏析緩和後熱処理工程における通電の合計時間が式(7)となるように制御し、
    前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、
    0.08≦C≦0.3(質量%)、
    0.1≦Si≦0.8(質量%)、
    2.5≦Mn≦10.0(質量%)、および
    P≦0.1(質量%)
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分であることを特徴とする抵抗スポット溶接方法。
    30≦tcp ・・・式(1)
    ≦I≦2.5×I ・・・式(2)
    10≦t ・・・式(3)
    0≦tpma ・・・式(4)
    0<Ipm≦0.95×I ・・・式(5)
    10< tpm ・・・式(6)
    400<t+tpma+tpm ・・・式(7)
    ただし、遷移過程を有しない場合は式(4)および式(7)においてtpma=0(ms)とし、保持過程を有しない場合は式(5)、式(6)および式(7)においてIpm=0(kA)、tpm=0(ms)とする。
  2. 前記偏析緩和後熱処理工程では、前記遷移過程および/または前記保持過程を2回以上繰り返し行い、
    全ての遷移過程のダウンスロープ通電時間の合計時間ttpma(ms)を前記式(4)および前記式(7)に示すtpma(ms)とみなすとき、該ダウンスロープ通電時間の合計時間ttpmaが前記式(4)および前記式(7)を満足し、
    全ての保持過程の通電時間の合計時間ttpm(ms)を前記式(6)および前記式(7)に示すtpm(ms)とみなすとき、該通電時間の合計時間ttpmが前記式(6)および前記式(7)を満足し、
    i=2〜nの整数、i回目の遷移過程のダウンスロープ通電時間をtpmai(ms)、i回目の保持過程の電流値をIpmi(kA)、i回目の保持過程の通電時間をtpmi(ms)とするとき、
    該i回目の保持過程の電流値Ipmiが、前記昇温過程の電流値Iおよび1回目の保持過程の電流値Ipmに対して、下記式(9)を満足するように制御することを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。
    pmi<Ipm<I ・・・式(9)
  3. 前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接方法。
  4. 前記板組における板厚合計T(mm)が式(8)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
    T≦4.0 ・・・(8)
  5. 前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、前記成分に加えてさらに、質量%で、Cu、Ni、Mo、Cr、Nb、V、Ti、B、Al、Caのうちから選択される1種または2種以上を、合計で5%以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法を用いた抵抗スポット溶接継手の製造方法。
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