JP2012192451A - 圧延ロール位置測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧延ロールとギャップセンサとの間の間隙を制御する必要が無く、圧延ロールが緊急退避した場合でもギャップセンサが破損したり、圧延ロールの表面に疵が付いたりすることのない圧延ロール位置測定装置を提供する。
【解決手段】圧延ロール位置測定装置10は、下圧延ロール12の圧延面14までの距離を測定するギャップセンサ23及び圧延面14に向けて流体Wを噴出する噴出口24を有するギャップ測定部17と、ギャップ測定部17の下方に設置され、内部に流体Wが供給される容器20と、容器20に対するギャップ測定部17の相対変位を測定する変位計19と、ギャップ測定部17に変位計19を介して連結され、容器20内に充填される流体Wの浮力でギャップ測定部17を押し上げる浮体部25とを備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、金属材料の圧延に使用される圧延ロールの位置を測定するための圧延ロール位置測定装置に関する。
対となる上圧延ロールと下圧延ロールで金属材料を挟んで圧延する作業では、上圧延ロールと下圧延ロールの間の圧延ロールギャップが圧延材の厚みとなるように設定される。圧延が開始されると、上圧延ロール及び下圧延ロールに作用する圧延反力によって各圧延ロールが変形し、圧延ロールギャップが増大する。この現象に対して、例えば特許文献1では、圧延ロールに作用する圧延反力を荷重計で検出し、検出された荷重値を圧延設備の推定ミル剛性で除して得られた値を圧延ロールギャップ増大量とし、この圧延ロールギャップ増大量が消失するように、上圧延ロールと下圧延ロールの位置を調整して圧延材の厚みの変動を防止している。
しかし、特許文献1に記載された板厚制御方法では、検出された荷重値を圧延設備の推定ミル剛性で除した値を圧延ロールギャップ増大量と推定するので、圧延ロールギャップ増大量が消失するように上圧延ロールと下圧延ロールを近づけると、圧延反力が増加して圧延ロールギャップ増大量が更に増大し、制御系が発散するおそれがある。このため、推定された圧延ロールギャップ増大量より小さい値で上圧延ロールと下圧延ロールの位置調整を行って制御系の発散を防止する必要があり、制御応答性が悪いという問題がある。
また、圧延設備の推定ミル剛性が非線形であるため、圧延ロールの荷重−変位関係がヒステリシス(履歴依存性)を有するものとなり、圧延ロールギャップ増大量に大きな誤差が生じ、圧延材の厚みを高精度で制御できないという問題もある。
そこで、特許文献2では、圧延設備の圧延ロールの直下及び/又は直上に対向して配置され、該圧延ロールとの距離を測定するギャップセンサと、圧延設備の基台フレームに配置され、前記ギャップセンサを圧延ロールに対して進退可能に支持するエアシリンダと、前記ギャップセンサと前記基台フレームとの距離を測定する距離計と、前記ギャップセンサから出力される第1の測定値及び前記距離計から出力される第2の測定値の和から前記基台フレームに対する圧延ロールの位置を求めて出力する演算手段とを有する圧延ロール位置測定装置の発明が開示されている。
この圧延ロール位置測定装置では、圧延ロールの位置が、ギャップセンサの測定値と距離計の測定値の和として得られるので、圧延ロールギャップ増大量を推定する従来の方法に比べて、圧延ロールの位置を正確に求めることができる。また、測定された圧延ロールの位置に基づいて圧延ロールを移動することにより、圧延中における圧延ロールギャップの調整を行うので、迅速かつ高精度で圧延ロールギャップの調整を行うことができる。
特開2000−288613号公報 特開2009−248106号公報
しかしながら、特許文献2に記載された圧延ロール位置測定装置の場合、ギャップセンサの進退をエアシリンダで行っているため、圧延トラブル等の緊急時に圧延ロールが急に退避(上昇又は下降)した際、ギャップセンサの退避が間に合わず、圧延ロールがギャップセンサに衝突してギャップセンサが破損したり、圧延ロールの表面に疵が付いたりするおそれがある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、圧延ロールとギャップセンサとの間の間隙を制御する必要が無く、圧延ロールが緊急退避した場合でもギャップセンサが破損したり、圧延ロールの表面に疵が付いたりすることのない圧延ロール位置測定装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る圧延ロール位置測定装置は、下圧延ロールの直下に配置され、該下圧延ロールの圧延面までの距離を測定するギャップセンサ及び該下圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出する噴出口を有するギャップ測定部と、前記ギャップ測定部の下方に設置され、内部に流体が供給される容器と、前記ギャップ測定部に連結され、前記容器内に充填される流体の浮力で前記ギャップ測定部を押し上げる浮体部と、前記容器に対する前記ギャップ測定部の相対変位を測定する変位計とを備えることを特徴としている。
第1の発明では、浮体部に作用する浮力によって、ギャップ測定部を下圧延ロールの圧延面に向けて押し付けると共に、ギャップ測定部から下圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出することにより、下圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に流体膜を形成する。これにより、緊急時に下圧延ロールが下降した際、流体膜が下圧延ロールとギャップセンサとの間の緩衝材となり、ギャップ測定部は下圧延ロールと同期して下降する。その際、ギャップ測定部を下圧延ロールに押し付ける力が小さいので、下圧延ロール下降時に流体膜が破壊することはない。
圧延時に浮体部に作用する浮力は、(I)式で示すように、ギャップ測定部及び浮体部の自重と、ギャップ測定部から下圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出させることによりギャップ測定部に作用する反力との和となる(図7参照)。
浮力=自重+反力 (I)
また、第2の発明に係る圧延ロール位置測定装置は、上圧延ロールの直上に配置され、該上圧延ロールの圧延面までの距離を測定するギャップセンサ及び該上圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出する噴出口を有するギャップ測定部と、前記ギャップ測定部の上方に設置され、内部に流体が供給される容器と、前記ギャップ測定部に連結され、前記容器内に充填される流体の浮力で前記ギャップ測定部を支持する浮体部と、前記容器に対する前記ギャップ測定部の相対変位を測定する変位計とを備えることを特徴としている。
第2の発明は、ギャップ測定部から圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出することにより、圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に流体膜を形成する点において第1の発明と技術思想を同じくするが、浮体部の機能が第1の発明と異なる。
第2の発明では、ギャップ測定部が上圧延ロールの直上に配置されるため、ギャップ測定部の自重によってギャップ測定部が上圧延ロールの圧延面に押し付けられる。しかし、ギャップ測定部から上圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出させた際にギャップ測定部に作用する反力が、ギャップ測定部の自重に比べて小さいため、上圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に隙間を生じさせることができないことがある。そこで、浮体部に作用する浮力によって、ギャップ測定部の自重の少なくとも一部をキャンセルするようにしている。これにより、上圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に流体膜が形成され、緊急時に上圧延ロールが上昇した際、流体膜が上圧延ロールとギャップセンサとの間の緩衝材となり、ギャップ測定部は上圧延ロールと同期して上昇する。その際、ギャップ測定部を上圧延ロールに押し付ける力が小さいので、上圧延ロール上昇時に流体膜が破壊することはない。
圧延時に浮体部に作用する浮力は、(II)式で示すように、ギャップ測定部及び浮体部の自重と、ギャップ測定部から上圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出させることによりギャップ測定部に作用する反力との差となる(図8参照)。
浮力=自重−反力 (II)
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、前記ギャップセンサに外装され、前記噴出口から出没する筒状部材を備え、前記圧延面に向けて前記噴出口から噴出する流体の圧力により、前記筒状部材が前記噴出口から前記圧延面に向けて突出することを好適とする。
筒状部材を備えることで、圧延ロールがギャップセンサと衝突するのを回避するのに充分なギャップ量を容易に確保することができる。筒状部材が無い場合、図9に示すように、ギャップ測定部の内圧をP、圧延面とギャップ測定部の間のギャップ圧力をP、大気圧をPとすると、圧延面とギャップ測定部の間を流れる流体の流速が大きいため、ギャップ圧力Pはベルヌーイの定理により小さくなる。そうすると、圧延面とギャップ測定部の間のギャップ量は、内圧Pによりギャップ測定部が圧延面から離れる力Fと、大気圧Pによりギャップ測定部が圧延面に向かう力Fによって決まることになり、単位面積当たりの力はFよりFのほうが大きいものの、力が作用する面積はFのほうがFより大きいため、ギャップセンサは圧延面に押し付けられる。本発明者等の実験によれば、圧延面とギャップセンサの間のギャップ量は0.1〜0.2mm程度であった。流体の速度が増大すればするほど、ギャップ量は小さくなる傾向にある。
筒状部材を備えた当該構成では、圧延面に向けて噴出する流体の圧力により、ギャップセンサに外装された筒状部材が噴出口から圧延面に向けて突出する際の反作用で、ギャップ測定部が圧延面から離れ、圧延面とギャップセンサの間に充分なギャップを確保することができる。
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、前記圧延面に面する、前記筒状部材の先端に、耐摩耗材が装着されていることを好適とする。これにより、筒状部材の先端が圧延面に接触して摩耗するのを防止することができる。
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、前記耐摩耗材が弾性体であることを好適とする。
耐摩耗材を弾性体とすると、圧延ロールの圧延面と筒状部材の間を流れる流体によって弾性体が圧縮され、流体の流速が大きくなることなく流量が維持される。これにより、圧延面とギャップセンサの間にギャップを安定して確保することができる。本発明者等の実験によれば、筒状部材と弾性体からなる耐摩耗材を備えることで、2〜3mm程度のギャップを安定して確保することができた。
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、前記ギャップ測定部と前記容器とが管で連通され、前記容器内の流体が前記管を経由して前記ギャップ測定部の噴出口から噴出するようにしてもよい。
当該構成では、容器内に供給する流体を、圧延ロールの圧延面に向けて噴出させる流体と兼用するので、噴出口に流体を送給する送給手段を別途設ける必要がない。
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、前記噴出口から噴出する流体及び前記容器内に充填される流体は水でもよい。
流体を水とすることにより、コストを抑えることができるだけでなく、劣悪環境でも使用することができる。
本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、ギャップ測定部を浮力によって支持しつつ、ギャップ測定部から圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出して、圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に流体膜を形成する。これにより、緊急時に圧延ロールが昇降した際、流体膜が圧延ロールとギャップセンサとの間の緩衝材となり、ギャップ測定部が圧延ロールと同期して昇降する。このため、圧延ロールとギャップセンサとの間の間隙を制御する必要が無く、圧延ロールが緊急退避した場合でもギャップセンサが破損したり、圧延ロールの表面に疵が付いたりすることがない。
また、本発明に係る圧延ロール位置測定装置では、圧延面に向けて噴出する流体の圧力により、ギャップセンサに外装された筒状部材を噴出口から圧延面に向けて突出させることで、圧延ロールの圧延面とギャップセンサの間に充分なギャップを確保することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る圧延ロール位置測定装置の立面図である。 同圧延ロール位置測定装置の立断面図である。 図2のA−A矢視断面図である。 (A)は水噴出とギャップとの関係を示すグラフ、(B)はX部分の拡大図である。 (A)は水噴出時のギャップセンサの測定値の時刻歴変化、(B)は水噴出時の変位計の測定値の時刻歴変化、(C)はギャップセンサの測定値と変位計の測定値の和の時刻歴変化をそれぞれ示したグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係る圧延ロール位置測定装置の立断面図である。 力の釣合を説明するための模式図である。 力の釣合を説明するための模式図である。 圧延ロールの圧延面とギャップ測定部との間に作用する力を説明するための模式図である。 変形例に係るギャップ測定部の立断面図である。 (A)〜(D)は同ギャップ測定部の動作を説明するための模式図である。 (A)は下圧延ロールが下降したときのギャップセンサ測定値及び変位計測定値の各時刻歴変化、(B)はギャップセンサ測定値と変位計測定値の和の時刻歴変化をそれぞれ示したグラフである。 ギャップセンサ及び変位計の基準位置を示した模式図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る圧延ロール位置測定装置10の立面図を図1に、立断面図を図2に示す。
金属材料の圧延に使用される圧延機(図示省略)は、対となる圧延ロール、即ち下圧延ロール12と上圧延ロール13(図6参照)を備えている。圧延ロール位置測定装置10は、下圧延ロール12の直下に配置され、下圧延ロール12の圧延面14に対峙するギャップ測定部17と、ギャップ測定部17の下方に設置され、内部に流体Wが供給される容器20と、ギャップ測定部17に連結され、容器20内に充填される流体Wの浮力でギャップ測定部17を押し上げる浮体部25と、容器20に対するギャップ測定部17の相対変位を測定する変位計19とを備えている。
ギャップ測定部17は、下圧延ロール12の圧延面14に向けて上面が開口する有底円筒状のケーシング18と、ケーシング18に内蔵され、圧延面14までの距離を測定するギャップセンサ23とから大略構成されている。円柱状とされたギャップセンサ23とケーシング18の内壁との間には隙間が設けられており、圧延面14に向けて流体Wを噴出する噴出口24とされている。ケーシング18は、上部に比べて下部が拡径し、下部側面には、フレキシブルホースからなる管22の一端が平面視して放射状に4本接続されている。各管22から送給された流体Wは、ケーシング18内に浸入して噴出口24から噴出する。
また、下圧延ロール12の圧延面14にできるだけ近接させてギャップセンサ23を対峙させるため、ギャップ測定部17を下圧延ロール12の回転軸方向に見た際、ケーシング18の上面が、周縁部に比べて中央部が僅かに凹んだ湾曲形とされている。これは、一般にギャップ(圧延面までの距離)が小さい程、ギャップセンサ23の測定精度が上がるからである。
ギャップセンサ23は非接触式変位計であり、渦電流式、静電容量式、超音波式、光学式のいずれでも良いが、本実施の形態では、精度が高く、応答速度が速いことに加え、埃や水、油などにも強い渦電流式変位計を使用する。渦電流式変位計の測定範囲は、一般に0〜10mm程度である。
一方、容器20に対するギャップ測定部17の相対変位を測定する変位計19には、接触式変位計を使用する。本実施の形態では、有底円筒状の筒状部19aと、筒状部19aに挿入され、筒状部19aの軸方向に進退するロッド19bとを有する差動トランス式変位計を使用する。差動トランス式変位計は、精度が高く、広い測定範囲(例えば0〜300mm)を有し、悪環境下でも使用することができる。
なお、変位計19として、磁歪式変位計など他の接触式変位計を使用しても良い。
容器20は直方体状の密閉容器とされ、下圧延ロール12及び上圧延ロール13を支持するハウジング16に容器20の底板20dが固定される。容器20の各側面には、前述した管22の他端が接続され(図3参照)、容器20の下部側面には、容器20内に流体Wを供給するための供給口27が設けられている。容器20内には、内部が中空とされた直方体状の浮体部25が収納されている。
また、容器20の天板20uの中央部には、変位計19の筒状部19aが挿通する孔が設けられ、孔の直上には、変位計19の筒状部19aを鉛直方向にガイドするブッシュ29が設置されている。
変位計19は、ロッド19bを下側にして鉛直方向に配置され、筒状部19aの底部がギャップ測定部17に固定されている。そして、筒状部19aの中間部がブッシュ29でガイドされ、変位計19の先端部が容器20内に挿入されている。筒状部19aの先端部は、浮体部25の中央に設けられた挿通孔25aに挿入され、浮体部25に固定されている。また、ロッド19bの先端部は、挿通孔25aを挿通し、容器20の底板20dに固定されている。流体Wの浮力によって浮体部25が、筒状部19aさらにはギャップ測定部17と共に上昇すると、ロッド19bが筒状部19aから延び出ることとなり、容器20に対するギャップ測定部17の相対変位を測定することができる。
なお、浮体部25の内部に流体Wが浸入しないように、浮体部25と挿通孔25aとの境界部は水密状態に保たれている。
流体Wとしては、気体に比べて比重が大きな液体が望ましい。なかでも、取扱いが容易で、劣悪環境でも使用可能な水が好ましい。その際、水圧は、水道水の水圧程度、即ち0.4MPa程度であれば良い。
次に、上記構成を有する圧延ロール位置測定装置10の動作について説明する。
(1)下圧延ロール12の直下に圧延ロール位置測定装置10を設置する。
(2)容器20の下部側面に設けられた供給口27から容器20内に流体Wを供給する。これにより、容器20内が流体Wで満たされ、浮体部25が流体Wの浮力によって徐々に上昇する。これに伴い、変位計19を介して浮体部25に連結されたギャップ測定部17が上昇する。
(3)供給口27から容器20内に流体Wをさらに供給すると、容器20の各側面に接続された管22を介して流体Wがギャップ測定部17に送給され、噴出口24から下圧延ロール12の圧延面14に向けて流体Wが噴出する。
(4)前述の(I)式が成立し、下圧延ロール12の圧延面14とギャップ測定部17との間に流体膜が形成される。
(5)下圧延ロール12が下降した場合は、流体膜が下圧延ロール12とギャップセンサ23との間の緩衝材となり、ギャップ測定部17は下圧延ロール12と同期して下降する。
図4及び図5は、流体Wとして水を使用した際の圧延ロール位置測定装置10の動作試験結果について示したものである。
図4(A)、(B)は、噴出口24から噴出する水流とギャップとの関係を示したグラフである。同図において、ギャップ:0mmは、下圧延ロール12の圧延面14とギャップセンサ23が接触している状態を示し、「水流ON」は、下圧延ロール12の圧延面14に向けて噴出口24から水が噴出している状態を示す。同図より、下圧延ロール12の圧延面14に向けて噴出口24から水が噴出すると、ギャップは0.3mm程度に維持されることがわかる。
また、図5(A)〜(C)は、ギャップセンサ23の測定値と変位計19の測定値(容器20に対するギャップ測定部17の相対変位)との相関性を示したグラフである。同図より、ギャップが大きくなると、変位計19の測定値が小さくなり、ギャップセンサ23の測定値と変位計19の測定値の和は略一定に保たれることがわかる。なお、本実験における変位計19のゼロ点は任意点であり、変位計19の数値自体に工学的な意味はない。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る圧延ロール位置測定装置11について説明する。圧延ロール位置測定装置11の立断面図を図6に示す。なお、圧延ロール位置測定装置10と同じ構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
圧延ロール位置測定装置11は、概略、圧延ロール位置測定装置10を逆さまにした構成を有している。具体的には、上圧延ロール13の直上に配置され、上圧延ロール13の圧延面15に対峙するギャップ測定部17と、ギャップ測定部17の上方に設置され、内部に流体Wが供給される容器21と、容器21に対するギャップ測定部17の相対変位を測定する変位計19と、ギャップ測定部17に変位計19を介して連結され、容器21内に充填される流体Wの浮力でギャップ測定部17の自重の少なくとも一部をキャンセルしてギャップ測定部17を支持する浮体部26とを備えている。
容器21は直方体状の密閉容器とされ、ハウジング16に容器21の天板21uが固定される。容器21の各側面には、前述した管22の他端が接続され、容器21の下部側面には、容器21内に流体Wを供給するための供給口28が設けられている。容器21内には、内部が中空とされた直方体からなる浮体部26が収納されている。但し、ギャップ測定部17の自重の少なくとも一部をキャンセルできればよいので、圧延ロール位置測定装置10の浮体部25に比べて浮体部26は小さくなっている。
また、容器21の底板21dの中央部には、変位計19の筒状部19aが挿通する孔が設けられ、孔の直下には、変位計19の筒状部19aを鉛直方向にガイドするブッシュ29が設置されている。
変位計19は、ロッド19bを上側にして鉛直方向に配置され、筒状部19aの底部がギャップ測定部17に固定されている。そして、筒状部19aの中間部がブッシュ29でガイドされ、変位計19の先端部が容器21内に挿入されている。筒状部19aの先端部は、浮体部26の中央に設けられた挿通孔26aに挿入され、浮体部26に固定されている。また、ロッド19bの先端部は、挿通孔26aを挿通し、容器21の天板21uに固定されている。
次に、上記構成を有する圧延ロール位置測定装置11の動作について説明する。
(1)上圧延ロール13の直上に圧延ロール位置測定装置11を設置する。
(2)容器21の下部側面に設けられた供給口28から容器21内に流体Wを供給する。これにより、容器21内が流体Wで満たされ、浮体部26に流体Wの浮力が作用し、ギャップ測定部17の自重の少なくとも一部がキャンセルされる。
(3)供給口28から容器21内に流体Wをさらに供給すると、容器21の各側面に接続された管22を介して流体Wがギャップ測定部17に送給され、噴出口24から上圧延ロール13の圧延面15に向けて流体Wが噴出する。
(4)前述の(II)式が成立し、上圧延ロール13の圧延面15とギャップ測定部17との間に流体膜が形成される。
(5)上圧延ロール13が上昇した場合は、流体膜が上圧延ロール13とギャップセンサ23との間の緩衝材となり、ギャップ測定部17は上圧延ロール13と同期して上昇する。
[圧延ロールギャップ制御方法]
次に、圧延ロール位置測定装置10、11による圧延ロールギャップ制御方法について説明する。なお、以下の説明では、変位計19の正負に関し、ロッド19bが筒状部19aから延び出る向きの変位を正、その逆向きの変位を負とする。
(0)下圧延ロール12と上圧延ロール13とを接触させた状態で、圧延ロール位置測定装置10、11の容器20、21内に流体Wを供給する。ギャップ測定部17が下圧延ロール12の圧延面14及び上圧延ロール13の圧延面15にそれぞれ接触した時点で、流体Wの供給を一旦停止し、ギャップセンサ23及び変位計19の初期値をそれぞれゼロにセットする。
(1)流体Wの供給を再開して下圧延ロール12の圧延面14及び上圧延ロール13の圧延面15とギャップ測定部17との間に流体膜を形成する。この時点におけるギャップセンサ23の測定値を下側Gd1、上側Gu1、変位計19の測定値を下側Dd1、上側Du1とすると、Gd1+Dd1=0、Gu1+Du1=0である。
(2)下圧延ロール12と上圧延ロール13との間の圧延ロールギャップを圧延材の厚さHに設定するため、下圧延ロール12をH/2下降させると共に、上圧延ロール13をH/2上昇させる。この時点におけるギャップセンサ23の測定値を下側Gd2、上側Gu2、変位計19の測定値を下側Dd2、上側Du2とすると、Gd2+Dd2=Gd1+Dd1−H/2=−H/2、Gu2+Du2=Gu1+Du1−H/2=−H/2となる。
(3)圧延開始に伴い、下圧延ロール12がΔd下降し、上圧延ロール13がΔu上昇した場合、ギャップセンサ23の測定値を下側Gd3、上側Gu3、変位計19の測定値を下側Dd3、上側Du3とすると、Gd3+Dd3=Gd2+Dd2−Δd、Gu3+Du3=Gu2+Du2−Δuとなる。従って、Δd=(Gd2+Dd2)−(Gd3+Dd3)、Δu=(Gu2+Du2)−(Gu3+Du3)となる。
(4)上記測定値に基づき、下圧延ロール12をΔd上昇させると共に、上圧延ロール13をΔu下降させる。これにより、下圧延ロール12と上圧延ロール13との間の圧延ロールギャップが、圧延材の厚さHに維持される。
[ギャップ測定部の変形例]
変形例に係るギャップ測定部30を図10に示す。以下では、下圧延ロール12の直下に配置されるギャップ測定部30について説明するが、上圧延ロール13の直上に配置されるギャップ測定部も同様である。
ギャップ測定部30は、下圧延ロール12の圧延面14に向けて上面が開口する有底筒状のケーシング31と、ケーシング31に内蔵され、圧延面14までの距離を測定するギャップセンサ23と、ギャップセンサ23に外装され、ケーシング31から出没する筒状部材32とから大略構成されている。
筒状部材32は、ギャップセンサ23とケーシング31の内壁との間に設けられた噴出口34内を上下方向に移動自在とされている。筒状部材32の圧延面14がわ周縁部には、側方に向けて張り出した鍔部32aが形成され、圧延面14に面する、鍔部32aの表面には、鍔部32aの全周に亘って耐摩耗材33が取り付けられている。
一方、ケーシング31の圧延面14がわ端部には、鍔部32aが着座する凹部31aが形成されている。また、ケーシング31の下部側面には、流体Wの流入口35が設けられている。
耐摩耗材33としては、スポンジゴムなどの弾性体が好ましく、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、イソブチレンイソプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴムなどを使用することができる。耐摩耗材33の硬さは、JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」により規定されているデュロメータ硬さで、ショアE70以下が望ましい。ショアE70を超えると、硬くなりすぎて流体Wによる圧縮性が不十分となる。耐摩耗材33は柔らかいほどよいが、ショアE20未満になると入手が困難となる。
次に、上記構成を有するギャップ測定部30の動作について図11を用いて説明する。
(1)ギャップ測定部30の内部に流体Wを注入していない状態では、筒状部材32はケーシング31内に収納され、筒状部材32の鍔部32aは、ケーシング31の凹部31aに着座している(図11(A)参照)。
(2)流入口35からギャップ測定部30の内部に流体Wを注入し、噴出口34から下圧延ロール12の圧延面14に向けて流体Wを噴出させると、噴出口34に向かって流れる流体Wに背後から押されて、筒状部材32がケーシング31(噴出口34)から圧延面14に向けて突出する(図11(B)参照)。そして、圧延面14と耐摩耗材33の間を流体Wが流れることによりギャップが生成され、ギャップ量に応じてケーシング31が下降する。
(3)圧延が開始されると、下圧延ロール12が圧延材を噛み込むことにより、下圧延ロール12が、例えば1〜2mm程度急速に下降する。下圧延ロール12が下降すると、耐摩耗材33が圧縮されると共に、筒状部材32がケーシング31内に没入する(図11(C)参照)。
(4)流体Wの圧力によって筒状部材32はケーシング31から突出しようとするが、突出できないため、その反作用としてケーシング31が一定距離下降する(図11(D)参照)。
図12は、下圧延ロール12が下降したときのギャップ測定部30の動きを検証した試験結果を示したグラフであり、図12(A)はギャップセンサ測定値G及び変位計測定値Dの各時刻歴変化、図12(B)はギャップセンサ測定値Gと変位計測定値Dの和、即ち下圧延ロール12の位置の時刻歴変化をそれぞれ示している。検証試験におけるギャップセンサ23及び変位計19の基準位置(変位がゼロの位置)を図13に示しておく。図12より以下のことがわかる。
下圧延ロール12の下降に伴い、先ずギャップセンサ測定値Gが減少し、遅れて変位計測定値Dが減少する(図12(A)参照)。即ち、先ず筒状部材32が下降し、遅れてギャップセンサ23が内蔵されたケーシング31が下降する。ケーシング31が下降することにより、ギャップセンサ測定値Gは、0.16秒当たりから増大に転ずる。しかし、ケーシング31は、下圧延ロール12が下降を停止(0.2秒付近)しても(図12(B)参照)、慣性によって下降を続け、0.25秒付近から上昇に転じ、何度か振動を繰り返した後、安定する(図12(A)参照)。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、変位計の筐体を、ギャップ測定部と浮体部とを連結する連結部としたが、専用の連結部を設け、浮体部の下面と容器の底面との間などに変位計を設置してもよい。また、上記実施の形態では、容器に供給する水を管を経由させてギャップ測定部の噴出口から噴出するようにしたが、ギャップ測定部と容器へ、それぞれ独立に水を供給するようにしてもよい。こうすることで、容器に供給する水の量、即ち、容器内の水位を調整し、圧延設備に応じて適切な位置にギャップ測定部の最高点を制御することが可能となる。
10、11:圧延ロール位置測定装置、12:下圧延ロール、13:上圧延ロール、14、15:圧延面、16:ハウジング、17、30:ギャップ測定部、18、31:ケーシング、19:変位計、19a:筒状部、19b:ロッド、20、21:容器、20u、21u:天板、20d、21d:底板、22:管、23:ギャップセンサ、24、34:噴出口、25、26:浮体部、25a、26a:挿通孔、27、28:供給口、29:ブッシュ、31a:凹部、32:筒状部材、32a:鍔部、33:耐摩耗材、35:流入口、W:流体

Claims (7)

  1. 下圧延ロールの直下に配置され、該下圧延ロールの圧延面までの距離を測定するギャップセンサ及び該下圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出する噴出口を有するギャップ測定部と、前記ギャップ測定部の下方に設置され、内部に流体が供給される容器と、前記ギャップ測定部に連結され、前記容器内に充填される流体の浮力で前記ギャップ測定部を押し上げる浮体部と、前記容器に対する前記ギャップ測定部の相対変位を測定する変位計とを備えることを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  2. 上圧延ロールの直上に配置され、該上圧延ロールの圧延面までの距離を測定するギャップセンサ及び該上圧延ロールの圧延面に向けて流体を噴出する噴出口を有するギャップ測定部と、前記ギャップ測定部の上方に設置され、内部に流体が供給される容器と、前記ギャップ測定部に連結され、前記容器内に充填される流体の浮力で前記ギャップ測定部を支持する浮体部と、前記容器に対する前記ギャップ測定部の相対変位を測定する変位計とを備えることを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  3. 請求項1又は2記載の圧延ロール位置測定装置において、前記ギャップセンサに外装され、前記噴出口から出没する筒状部材を備え、前記圧延面に向けて前記噴出口から噴出する流体の圧力により、前記筒状部材が前記噴出口から前記圧延面に向けて突出することを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  4. 請求項3記載の圧延ロール位置測定装置において、前記圧延面に面する、前記筒状部材の先端に、耐摩耗材が装着されていることを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  5. 請求項4記載の圧延ロール位置測定装置において、前記耐摩耗材が弾性体であることを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧延ロール位置測定装置において、前記ギャップ測定部と前記容器とが管で連通され、前記容器内の流体が前記管を経由して前記ギャップ測定部の噴出口から噴出することを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧延ロール位置測定装置において、前記噴出口から噴出する流体及び前記容器内に充填される流体が水であることを特徴とする圧延ロール位置測定装置。
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