JP2012185989A - 電解液及び光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】色素増感太陽電池セルを組み立てたときに充分な光電変換効率を有し、且つ、高温耐久性を有するイオン液体を用いた電解液を提供することを本発明の目的とする。
【解決手段】ヨウ素、ヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを含む電解質、並びに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを含むイオン液体を含有する電解液。電解質の濃度は、ヨウ素が0.1〜0.6モル/リットル、ヨウ化リチウムが0.05〜0.3モル/リットル、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが1.0〜3.0モル/リットルであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、電解液及び光電変換素子に関する。
色素増感太陽電池の高温における耐久性向上のために、電解液の溶媒としてイオン液体を用いる検討がなされている。特に、色素増感太陽電池モジールを屋外に設置する場合には、夏場の晴天時に表面の温度が80℃以上の高温になる可能性がある点から、高温における耐久性が要求されている。イオン液体は蒸気圧がほぼゼロである、化学的安定性が高い、熱的安定性が高い等の特性を有しているため、色素増感太陽電池の80℃以上の高温での耐久性向上が期待できる。
色素増感太陽電池の電解液としてのイオン液体の応用例としては、例えば、ヨウ化物としての電解質としてヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いること(非特許文献1)、電解質としてヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを用いること(非特許文献2)、電解質と溶媒を兼用したヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを単独で用いること(非特許文献3)が知られている。
Journal of American Chemical Society 128, 4146-4154 (2006) Journal of American Chemical Society 128, 7732-7733 (2006) Journal Photochemistry & Photobiology A 164, 67-73 (2004)
上述のヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムの25℃における粘度は865mPa・s、ヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムの25℃における粘度は965mPa・sとかなり粘性が高い。これらのヨウ化物を色素増感太陽電池の電解液に添加して使用した場合、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )の拡散が遅くなるため、短絡電流密度の値が低くなり、光電変換効率の値も低くなる。
また、電解液の粘度が高いと色素増感太陽電池セルに電解液を注入するのが困難になるという欠点も有する。
これらの理由から、色素増感太陽電池セルを組み立てたときに充分な光電変換効率を有し、且つ、高温耐久性を有するイオン液体を用いた電解液はいまだ存在しておらず、このような電解液を提供することを本発明の目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ヨウ素、ヨウ化物としてヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを用いた電解液とすることで、前記課題を解決した。
即ち、ヨウ化物としてヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用することにより、電解液の粘度を小さくして、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )の拡散速度を向上させて、短絡電流密度(Jsc)を高くして、高い光電変換効率を発現する色素増感太陽電池用電解液の開発に成功した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成したものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを含有する電解液。
項2.ヨウ素を0.1〜0.6モル/リットル、ヨウ化リチウムを0.05〜0.3モル/リットル、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを1.0〜3.0モル/リットル含有する、項1に記載の電解液。
項3.さらに、4−ターシャルブチルピリジン及びN−メチルベンズイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性物質を含有する、項1又は2に記載の電解液。
項4.前記塩基性物質を0.1〜1.0モル/リットル含有する、項3に記載の電解液。
項5.項1〜4のいずれかに記載の電解液を用いて得られる光電変換素子。
項6.項5に記載の光電変換素子を用いて得られる色素増感太陽電池。
本発明の電解液を光電変換素子に用いれば、従来のイオン液体を溶媒とした電解液を使用した場合と比較し、光電変換効率を向上させて、かつ高温における耐久性を向上させることができる。
1.電解液
<電解質>
本発明の電解液は、電解質として、ヨウ素、ヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを使用する。
ヨウ素と、ヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムは、本発明の電解液中で酸化還元対であるI/I を形成する(I存在下にIを添加することでI が生成する)。なお、ヨウ化リチウムの添加により生成するリチウムイオンは、色素増感太陽電池のチタニア負極等に用いられる多孔質チタニアに吸着する。
その結果、チタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果がある。また、チタニアに注入された電子の輸送を促進させる効果もある。これにより、短絡電流密度を向上させ、結果的に光電変換効率を向上させることができる。
濃度
各々の電解質の濃度としては、色素増感太陽電池の開放電圧を充分に保持して充分な光電変換効率を得る観点から、ヨウ化物イオンIの供給源としてはヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを主成分とするのが好ましい。具体的には、ヨウ化リチウムとヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとの濃度比は、特に限定されないが、色素増感太陽電池の開放電圧を充分に保持して充分な光電変換効率を得る観点から、1:5〜1:30(モル比)、特に1:15〜1:25(モル比)が好ましい。
また、本発明では、溶媒として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用しているが、この溶媒は、25℃における粘度が19mPa・s程度であり、有機溶媒より粘度が高い(例えば、25℃における粘度が0.378mPa・sであるアセトニトリルの約50倍である)。このため、有機溶媒を用いた電解液よりも、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )の拡散速度が遅い。このため、有機溶媒を用いた電解液と比較し、ヨウ素及びヨウ化物(ヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)の濃度を高めに設定することが好ましい。
さらに、これら電解質の濃度を高くすると、電解液の粘度が上昇するため、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )の拡散速度が遅くなる。
また、電解質の濃度を高くして三ヨウ化物イオン(I )濃度を大きくすると、色素からチタニアへ注入された電子と三ヨウ化物イオン(I )とが再結合しやすくなること、三ヨウ化物イオン(I )自体が光を強く吸収して色素の光励起を阻害することから、結果として短絡電流密度が減少し、光電変換効率が低くなる傾向にあることから、電解質の濃度を高くしすぎないことが好ましい。
このような観点から、電解質の濃度は、それぞれ、ヨウ素が0.1〜0.6モル/リットル(好ましくは0.2〜0.5モル/リットル)、ヨウ化リチウムが0.05〜0.3モル/リットル(好ましくは0.1〜0.2モル/リットル)、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが1.0〜3.0モル/リットル(好ましくは1.5〜2.5モル/リットル)程度が好ましい。
<溶媒>
本発明の電解液は、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを使用する。ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの融点は−14℃、25℃における粘度は19mPa・sである。
この1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの25℃における粘度は、1−エチル−3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体の中では低い部類で、従来から使用されている、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(23.1mPa・S;融点は−50℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロスルホニルイミド(28mPa・S;融点は−16℃)等よりも低い値であり、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )が拡散しやすいという面で有利である。
また、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラシアノボレートは25℃における粘度は20mPa・Sとヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドとほぼ同程度であるが、融点が13℃であり、冬場など温度が低い環境では、電解液が固体になり、色素増感太陽電池の性能が著しく低下するという欠点を有する。さらに、テトラシアノボレートアニオン(BF )が、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I )の移動を阻害し、短絡電流密度(Jsc)が低下する。
なお、溶媒としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドと有機溶媒又は他のイオン液体との混合溶媒とすることも考えられる。しかし、有機溶媒との混合溶媒とすると、高沸点の有機溶媒でも蒸気圧を有しているため、高温での封止維持が困難で、耐久性が欠如する。また、他のイオン液体との混合溶媒とすると、カチオン及びアニオンの種類を増加させることになり、色素増感太陽電池の安定性に問題が生じる。したがって、本発明では、溶媒としては、イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを単独で使用する。
なお、後述の実施例においても示されているように、従来から使用されているヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートの組み合わせ、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートの組み合わせを使用した場合には、短絡電流密度が低下してしまうため、結果的に充分な光電変換効率は得られない。
その他の成分
本発明の電解液には、上記した成分以外にも、塩基性物質、例えば、4−ターシャルブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール等を含有させることもできる。これらの塩基性物質を含有させれば、光電変換素子を作製した際に、チタニア電極のチタニア表面に吸着し、チタニア電極からの逆電子移動を防ぐことができ、開放電圧をより向上させるとともに、光電変換効率をより向上させることができる。
また、チタニアに吸着した増感色素を脱離させないため、塩基性物質の添加量は、金属錯体色素を使用する場合は、0.1〜1.0モル/リットル程度、特に0.3〜0.8モル/リットル程度が好ましい。また、有機色素を使用する場合は、0.01〜0.1モル/リットル程度、特に0.03〜0.08モル/リットル程度が好ましい。
他にも、本発明の電解液には、上述のヨウ化リチウムと同様に、チタニアの伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果のあるグアニジンチオシアネート等も添加することができる。この場合、これらの添加量は、0.1〜1.0モル/リットル程度とすればよい。
なお、本発明の電解液においては、上記成分以外にも、粘度調整剤(ポリエチレングリコール等)や脱水剤(ゼオライト、シリカゲル等)等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませることができる。
2.光電変換素子及び色素増感太陽電池
本発明の光電変換素子は、チタニア電極の多孔質チタニア膜の上に対向電極(対極)を形成し、これら電極間を本発明の電解液で満たすことにより得られる。
上記チタニア電極は、例えば、樹脂基板又はガラス基板上に多孔質チタニア膜を形成してなる。
多孔質チタニア膜に使用されるチタニアとしては、例えば、公知又は市販のチタニアナノ粒子;公知又は市販のチタニアナノチューブ;チタニアナノロッド;チタニアナノファイバー;チタニアナノ粒子のチューブ状集合体(特開2010−24132号公報等)等を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、「チタニア」とは、二酸化チタンのみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含むものである。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi−O−Ti以外の基を含んでいても良い。
樹脂基板としては、導電性の樹脂基板であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂基板(PEN樹脂基板)、ポリエチレンテレフタレート樹脂基板(PET樹脂基板)等のポリエステル;ポリアミド;ポリスルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;トリ酢酸セルロース;ポリメチルペンテン等が挙げられる。
ガラス基板としても特に制限はなく、公知又は市販のものを使用すればよく、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等のいずれでもよい。
この樹脂基板又はガラス基板としては、板厚が0.05〜10mm程度のものを使用すればよい。
本発明では、多孔質チタニア膜は、樹脂基板又はガラス基板の表面上に直接形成されていてもよいが、透明導電膜を介して形成されていてもよい。
透明導電膜としては、例えば、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンドープ酸化スズ膜(ATO膜)アルミニウムドープ酸化亜鉛膜(AZO膜)、ガリウムドープ酸化亜鉛膜(GZO膜)等が挙げられる。これらの透明導電膜を介することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの透明導電膜の膜厚は、0.02〜10μm程度とするのが好ましい。
樹脂基板又はガラス基板上に多孔質チタニア被膜を形成する方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、上述したチタニアを含む被膜形成用組成物を作製し、樹脂基板又はガラス基板上に当該被膜形成用組成物を塗布及び乾燥させればよい。また、乾燥させた後、得られた被膜に、必要に応じて加熱処理を施して焼成させてもよい。
塗布方法は特に制限はなく、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、スキージ法等の常法を採用すればよい。
また、乾燥条件及び焼成条件は特に制限はなく、乾燥温度を60〜250℃程度、焼成温度を250〜800℃程度とすればよい。
多孔質チタニア膜の作製に当たっては、得られる膜の膜厚が0.5〜50μm程度となるように塗布すればよい。
対極は、導電性材料からなる単層構造でもよいし、導電層と基板とから構成されていてもよい。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。また、電荷輸送層上に直接導電性材料を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)して対極を形成しても良い。
導電性材料としては、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属や、炭素材料、導電性有機物等の比抵抗の小さな材料が用いられる。
また、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。
本発明では、対極を形成する前に、前記チタニア電極の光吸収効率を向上すること等を目的として、多孔質チタニア膜に色素を担持(吸着、含有など)させることが好ましい。
色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し、チタニアの光吸収効率を向上(増感)させる色素であれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体等が好ましい。また、多孔質チタニア被膜への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基等の官能基を有するものが好適に用いられる。
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えば、メリクルクロム等)や、金属ポルフィリン、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素、ペリレン系色素、クマリン系色素、ポリエン系色素、インドリン系色素、カリバゾール系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、又は光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
色素を多孔質チタニア膜に吸着させる方法としては、例えば、溶媒に色素を溶解させた溶液を、多孔質チタニア膜上にスプレーコートやスピンコート等により塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。また、多孔質チタニア膜を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることもできる。浸漬する時間は色素が充分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは1〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。溶液にする場合の色素の濃度としては、0.01〜100mmol/L、好ましくは0.1〜10mmol/L程度である。
色素溶液に用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、多孔質酸化チタン膜に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、多孔質酸化チタン膜の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子をモジュール化するとともに、所定の電気配線を設けることによって製造することができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
[チタニアを含む膜形成用組成物の作製]
チタンイソプロポキシド0.05molに酢酸0.05molを加えて15分撹拌した。蒸留水73mlを加えて1時間撹拌した。さらに濃硝酸1mlを加えて80℃で75分間加熱及び撹拌を行った。蒸留水を加えて全量を93mlとしてチタニアゾル水溶液を得た。このチタニアゾル水溶液40mLを内容積125mlの圧力反応容器に入れて250℃で12時間加熱した。得られた白色沈殿物(チタニア)をエタノールで溶媒置換した後、100mlエタノール分散液とした。これにα−テルピネオール7gとエチルセルロースの10重量%エタノール溶液8.65gを加えて撹拌した。十分に撹拌した後、エバポレータを用いてエタノールを留去してチタニアを含む膜形成用組成物10gを得た。
[チタニア負極の作製]
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付きガラス(日本板硝子(株)製;4mm厚)にポリエステル製スクリーン印刷版(225メッシュ)を用いて、上記で作製したチタニアを含む膜形成用組成物を、5ミリ角の大きさに膜厚14μmになるまで繰り返しスクリーン印刷を行った。さらに電気炉に入れて500℃にて1時間焼成を行った。
[増感色素の固定]
スイス・ソラロニクス社製のZ−907色素をターシャルブチルアルコールとアセトニトリルの容量比1:1の混合溶媒に0.5ミリモル/リットルの濃度で溶解したものに上記500℃で焼成したチタニア負極を25℃で20時間浸漬して色素を固定した。
[小型セルの組み立て]
色素を固定した上記チタニア負極に、スペーサー兼シール剤として厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルム(デュポン社製バイネル)を用いて、白金をスパッタしたフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付きガラス(ピルキントン社製;2.2mm厚)を貼り合わせた。その後、後述する実施例1〜4及び比較例1〜5の電解液を注入して封止を行い、光電変換素子を作製した。
[小型セルの性能評価]
作製した小型セルに(株)三永電機製作所製のソーラーシミュレータでAM1.5(JISC8912Aランク)の条件下の100mW/cmの強度の光を照射して上記小型セルの光電変換特性を25℃にて評価した。
[小型セルの85℃耐久評価]
作製した小型セルを85℃の乾燥炉に入れて、1000時間保持した。1000時間保持した後、上記の性能評価と同様に、小型セルの光電変換特性を評価した。
実施例1
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:1.0M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
実施例2
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:1.8M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
実施例3
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:2.4M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
実施例4
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:3.0M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
比較例1
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:1.9M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
比較例2
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:1.9M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用した。
比較例3
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム:1.8M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを使用した。
比較例4
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。結果を表1に示す。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム:1.8M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを使用した。
比較例5
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム:1.8M
4−ターシャルブチルピリジン:0.5M
溶媒は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを使用した。
Figure 2012185989

Claims (6)

  1. ヨウ素、ヨウ化リチウム及びヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを含む電解質、並びに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを含むイオン液体を含有する電解液。
  2. ヨウ素を0.1〜0.6モル/リットル、ヨウ化リチウムを0.05〜0.3モル/リットル、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを1.0〜3.0モル/リットル含有する、請求項1に記載の電解液。
  3. さらに、4−ターシャルブチルピリジン及びN−メチルベンズイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性物質を含有する、請求項1又は2に記載の電解液。
  4. 前記塩基性物質を0.1〜1.0モル/リットル含有する、請求項3に記載の電解液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の電解液を用いて得られる光電変換素子。
  6. 請求項5に記載の光電変換素子を用いて得られる色素増感太陽電池。
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