JP2012183752A - 転写構造体の製造方法及びそれに用いる母型並びに微細構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に転写パターンが形成された母型をオゾン洗浄し、オゾン洗浄した母型の表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成し、シランカップリング剤の膜が形成された母型の表面に被転写材料を付与するとともに300℃以上に加熱することにより被転写材料に母型の表面の転写パターンを転写させる(式(I)中、nは10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す。)。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、ガラス基板上に導電性膜を形成し、導電性膜上にフォトレジストで所定のパターンを形成した後、導電性膜が露出する部分にめっき膜を形成し、さらにそのめっき膜にベースフィルムを貼り合わせてめっき膜を転写させる方法が開示されている。
特に、転写工程での温度が高くなるほど離型剤の性能(離型性)が低下し、転写しにくいという問題がある。
<1> 表面に転写パターンが形成された母型をオゾン洗浄する工程と、前記オゾン洗浄した母型の前記転写パターンが形成されている表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、前記シランカップリング剤の膜が形成された前記母型の転写パターンが形成されている表面に融点が300℃以上の被転写材料を付与するとともに加熱することにより前記被転写材料に前記母型の表面の転写パターンを転写させる工程と、前記被転写材料を前記母型から剥離させることにより前記転写パターンが反映された転写構造体を得る工程と、を含む転写構造体の製造方法。
(式(I)中、nは10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
<2> 前記被転写材料として、スーパーエンプラを用いる<1>に記載の転写構造体の製造方法。
<3> 前記母型は、前記転写パターンが形成された表面に酸化膜を有する<1>又は<2>に記載の転写構造体の製造方法。
<4> 前記母型は、前記転写パターンが形成されているガラス状炭素からなる基材と、該基材の前記転写パターンが形成されている表面に形成されている金属膜とを有する<1>〜<3>のいずれかに記載の転写構造体の製造方法。
<5> 前記転写パターンが、高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を含むパターンである<1>〜<4>のいずれかに記載の転写構造体の製造方法。
<6> 表面に転写パターンが形成されているガラス状炭素からなる基材と、前記基材の前記転写パターンが形成されている表面に形成されている金属膜と、下記一般式(I)で表され、前記金属膜の表面に形成されているシランカップリング剤の膜と、を有する母型。
(式(I)中、nは10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
<7> スーパーエンプラからなる基材を含み、該基材の表面に、高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を有する微細構造体。
本発明者らは、一般式(I)で表されるシランカップリング剤の有用性を検証したところ、nが8以下の化合物では、被転写材料の融点が300℃以上である場合に転写が困難であり、最初の転写ができたとしても繰り返して転写を行うことができないことを知見した。これは、nが8以下の化合物では、転写工程において300℃以上で加熱された場合に離型性が大きく低下するためと考えられる。
これらの知見に基づき、本発明が完成された。
表面に転写パターンが形成された母型をオゾン洗浄する工程と、
前記オゾン洗浄した母型の前記転写パターンが形成されている表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤(以下、適宜、「シランカップリング剤」、「離型剤」と記す。)の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜が形成された前記母型の転写パターンが形成されている表面に融点が300℃以上の被転写材料を付与するとともに加熱することにより前記被転写材料に前記母型の表面の転写パターンを転写させる工程と、
前記被転写材料を前記母型から剥離させることにより前記転写パターンが反映された転写構造体を得る工程と、
を含む。
一方、前記一般式(I)においてnが10以上のシランカップリング剤(10F2P3S3M)では、300℃を超えても接触角の低下は見られず、400℃程度の高温でも高い接触角が維持されている。
‐母型‐
まず、表面に転写パターン14が形成されている母型10を用意する(図1(A))。
母型10の本体となる基材12の形状、サイズ、転写パターン(凹凸パターン)14は、特に限定されず、転写すべき材料や用途等に応じて選択すればよいが、基材12の材質(モールド材料)としては、オゾン洗浄によって侵食されず、かつ、300℃以上、好ましくは350℃以上、より好ましくは400℃以上の耐熱性を有するものを用いる。
耐オゾン性、耐熱性のほか、転写パターン14の形成容易性、母型10としての機械的強度などの観点から、例えば、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)、シリコン、SOG、石英、セラミックス、金属等を挙げることができる。
なお、グラッシーカーボンは、耐熱性、微細加工性において優れ、グラファイトのような他の炭素素材とは異なり機械的強度も高い反面、オゾン洗浄によって侵食、すなわち、酸化されて二酸化炭素となってしまう。そのため、グラッシーカーボンを用いる場合は、グラッシーカーボンからなる基材の表面に転写パターンを形成した後、転写パターンを形成した表面(適宜、「転写パターン面」又は「パターン面」と略記する。)に、Al、Cr、W等の金属膜(図示せず)を形成したものを母型10とすればよい。
例えば、シリコン基板等の基材12の表面(片面)に、リソグラフィ(フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィなど)とエッチングにより所望の配線パターンを形成することができる。また、シリコン基板等の平坦な基板上に、SOG(Spin on Glass)を焼成した後、所定の凹凸パターンに成形することもできる。
反応ガスとしては酸素を含むガスを用い、酸素のみでもよいし、酸素にCF4等のCF系のガスを混ぜたガスも用いることができる。
そして、グラッシーカーボン基材において、上記のような先端に向けて縮径する形状を有する微細突起群が形成された表面は、柱状体の突起が形成されている場合に比べて入射光が反射し難く、より高い反射防止効果を奏するものと考えられる。
そして、無反射構造となるには、理論上、突起のピッチ(P)<137nm、高さ(h)>200nmが条件となる。これより、2θ<37.8°の場合に無反射構造となる。従って、突起14の先端部分の角度が上記の関係を満たすときに無反射又はそれに近い反射率を達成できると考えられる。ただし、突起先端部の角度が小さすぎる場合は、転写時に突起が折れ易く、また、径が均一な柱状に近づいて反射率が上昇してしまうものと考えられる。従って、突起14が針状又は円錐状の場合、先端部の角度は好ましくは3°以上、より好ましくは10°以上、特に好ましくは15°以上である。
一方、例えば、基材が石英の場合には、石英上にCrで成膜すれば、密着性の高いCr膜が得られる。また、基材がSOGの場合も同様に安定した酸化クロムが形成され、密着性が高いCr膜が得られる。
表面に転写パターンが形成された母型を用意した後、母型をオゾン洗浄する。
オゾン洗浄は、例えば、市販のオゾン洗浄機を用い、10〜120分行うことが好ましく、15〜60分行うことがより好ましい。また、オゾン洗浄後は、すぐに離型剤に浸漬させることが好ましい。
オゾン洗浄した母型の表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜(離型層)16を形成する(図1(B))。
また、本発明で用いるシランカップリング剤は、ペルフルオロアルキル基及びビフェニルアルキル基を有するため、上記離型剤膜はモノレーヤー(分子一層)となり、しかも加熱処理によって、2次元ないし3次元の網状のシロキサン結合を形成するシロキサンネットワークが構築されるので、微細パターンの転写に効果的であると推察される。
F(CF2)nI (3)
(式中、nは10〜14の整数である。)
下記一般式(4)で表される4−ペルフルオロアルキル−4’−ブロモビフェニルを合成する。
CH2=CH(CH2)p−Br (5)
(式中、pは1〜4の整数である。)
下記一般式(6)で表される4−ペルフルオロアルキル−4’−ビニルアルキルビフェニルを合成する。
なお、離型層は、転写パターン面の全体に形成してもよいし、微細パターンの大きさ、密度、転写されたパターンの用途、被転写部材の材質などによっては、パターン面の一部、例えば凸部のみに形成してもよい。
リンスを行う目的は、転写パターン面に強固に結合したシランカップリング剤とは別に、単に物理吸着し、結合方向がバラバラで空気側に必ずしもフッ素鎖が向いてなく、表面自由エネルギーの低下を妨げる余計なシランカップリング剤を洗い除くことである。
リンス液としては、有機溶媒、水などを用いることができ、例えば、HFE−7100(住友スリーエム社製)等のフッ素系溶媒を用いることができる。フッ素溶媒でリンスした後、さらに水でリンスしてシランカップリング剤のメトキシ基をOH基に変えることでカップリング効果を向上させることもできる。
加熱処理を行う目的は、シロキサン結合と転写パターン面へのシランカップリング剤の結合を促進させ、かつフッ素鎖を安定な状態に持っていくことである。
シロキサン結合が完了すると、分子間距離が小さくなって母型表面をフッ素系シランカップリング剤が密に覆うことになって離型性を向上させる効果を発揮するものと考えられる。
35分行うことが好ましい。
母型10の転写パターン面にシランカップリング剤の膜16を形成した後、転写パターン面に融点が300℃以上の被転写材料を付与するとともに加熱することにより被転写材料に母型10の表面の転写パターン14を転写させる(図1(C))。
母型10の転写パターンを転写させる材料(被転写材料)18としては、融点が300℃以上の材料を用いる。例えば、スーパーエンプラ、低融点ガラスが挙げられる。本発明におけるスーパーエンプラとしては、好ましくは熱変形温が200度以上のもの、具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PEB)、ポリフェレンサルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート(PAR)などが挙げられる。
特に、母型10を構成する基材としてグラッシーカーボンを用い、転写パターン面にCrなどの金属膜を設けた母型であれば、融点が400℃以上の材料に対しても繰り返し転写することができる。
例えば、樹脂溶液を転写パターン14に塗布した後、支持部材20を貼り合わせ、必要に応じて支持部材20を母型10に対して加圧した状態で被転写材料18を硬化させる。このようにして被転写材料18を支持部材20と一体化させれば、支持部材20を保持することで、母型10からの剥離を一層容易に行うことができる。
例えば、被転写材料18を支持部材20と一体化させた場合は、支持部材20を保持して母型10から引き離せばよい。これにより、母型10の転写パターン14が被転写材料18に精度良く反映された転写構造体30が得られる。
以下の工程により、一般式(I)において、X、Y、Zが全てメトキシ基であり、(1)RがF(CF2)8のもの(8F2P3S3M)、(2)F(CF2)10のもの(10F2P3S3M)、(3)F(CF2)12のもの(12F2P3S3M)をそれぞれ合成した。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Mass(m/z 651)の各スペクトルにより、8F2PBであると同定した。
収量 22.9g(35.2mmol)
収率 44%
沸点 134−135℃/30Pa
性状は、白色固体であった。
黄褐色に変化した溶液に触媒CuI0.42g(22.2mmol)を加えた後、アリルブロミド3.82ml(45.18mmol)を滴下し、2時間攪拌後、飽和NH4Cl水溶液を沈殿が生じなくなるまで加え反応を停止した。酢酸エチルで抽出後、硫酸マグネシウムで脱水し、酢酸エチルを減圧除去した。残留物を減圧蒸留により精製して留出物を得た。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Mass(m/z 612)の各スペクトルにより、8F2PAであると同定した。
収量 1.86g(3.04mmol)
収率 41%
沸点 164−167℃/80Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより、8F2P3S3Mであると同定した。
収量 1.50g(2.04mmol)
収率 67%
沸点 160−165℃/30Pa
性状は、白色固体であった。
収量 28.2g(37.5mmol)
収率 59%
沸点 139−143℃/32Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物についてMassスペクトルの分析結果、m/z(分子量)712により、10F2PAであると同定した。
収量 2.16g(3.04mmol)
収率 41%
沸点 169−173℃/77Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物についてNMR、FT−IR、Massの各スペクトルに分析を行った。FT−IR、Massの各スペクトルを図4、図5、図6に示す。
各スペクトルの分析結果、得られた留出物は、10F2P3S3Mであると同定された。HRMS=834.1083(計算値:834.5323)。
収量 1.65g(1.98mmol)
収率 65%
沸点 164−167℃/28Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物について、Massスペクトルを分析した結果、m/z(分子量)934により、12F2P3S3Mであると同定した。
収量 1.96g(2.09mmol)
収率 65%
沸点 172−174℃/26Pa
性状は、白色固体であった。
表面が研磨されたグラッシーカーボン(東海カーボン株式会社製)の基板(厚さ:1mm、縦横:10mm×10mm)を、図2に示したような構成のECR(電子サイクロトン共鳴)型のイオンビーム加工装置(株式会社エリオニクス製、商品名:EIS−200ER)を用いて表面にイオンビーム加工を施した。
ビーム照射角度:加工面に対して垂直(基板の転写パターン面に対して90°)
反応ガス:酸素
ガス流量:3.0SCCM
マイクロ波:100W
加速電圧:500V
加工時間:30分
真空度:1.3×10−2Pa
図6に示す工程により母型の表面にシランカップリング剤を付与した。
まず、前記のように作製した母型を超音波洗浄機(BRANSONIC 3510J−DTH)を用いてアセトン及びエタノールでそれぞれ15分間超音波洗浄行った。
次いで、UVオゾンクリーナー(BIOFORCE UV/Ozone ProCleaner)を用い、母型のオゾン洗浄(1時間)を行った。
次いで、シランカップリング剤として10F2P3S3MをHFE−7300(3M社製、ハイドロフルオロエーテル)溶媒に濃度0.1%となるように調製し、この調製液に前記オゾン洗浄した母型を6時間浸漬した。
次いで、母型を、ホットプレート(AZONE HP−2SA)上で120℃、15分間、加熱処理(ベーク)を行った。
加熱・加圧を停止し、室温まで冷却した後、PEEK基板から母型を引き離した。
実施例1において母型のオゾン洗浄を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてPEEK基板に対する転写を試みた。しかし、加熱・加圧を停止し、室温まで冷却した後、PEEK基板から母型を引き離すことができなかった。
実施例1において離型剤として10F2P3S3Mに代えて8F2P3S3Mを用いたこと以外は実施例1と同様にしてPEEK基板に対する転写を試みた。しかし、加熱・加圧を停止し、室温まで冷却した後、PEEK基板から母型を引き離すことができなかった。
12・・・基材
14・・・凹凸パターン(転写パターン)
16・・・シランカップリング剤(離型剤)
18・・・被転写材料
20・・・支持部材
30・・・転写構造体
50・・・ECR型イオンビーム加工装置
P・・・ピッチ
Claims (7)
- 表面に転写パターンが形成された母型をオゾン洗浄する工程と、
前記オゾン洗浄した母型の前記転写パターンが形成されている表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜が形成された前記母型の転写パターンが形成されている表面に融点が300℃以上の被転写材料を付与するとともに加熱することにより前記被転写材料に前記母型の表面の転写パターンを転写させる工程と、
前記被転写材料を前記母型から剥離させることにより前記転写パターンが反映された転写構造体を得る工程と、
を含む転写構造体の製造方法。
(式(I)中、nは10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す。) - 前記被転写材料として、スーパーエンプラを用いる請求項1に記載の転写構造体の製造方法。
- 前記母型は、前記転写パターンが形成された表面に酸化膜を有する請求項1又は請求項2に記載の転写構造体の製造方法。
- 前記母型は、前記転写パターンが形成されているガラス状炭素からなる基材と、該基材の前記転写パターンが形成されている表面に形成されている金属膜とを有する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の転写構造体の製造方法。
- 前記転写パターンが、高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を含むパターンである請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写構造体の製造方法。
- 表面に転写パターンが形成されているガラス状炭素からなる基材と、
前記基材の前記転写パターンが形成されている表面に形成されている金属膜と、
下記一般式(I)で表され、前記金属膜の表面に形成されているシランカップリング剤の膜と、
を有する母型。
(式(I)中、nは10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す。) - スーパーエンプラからなる基材を含み、該基材の表面に、高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を有する微細構造体。
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