JP2012176865A - 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法 - Google Patents

窒化炭素及び窒化炭素の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2012176865A
JP2012176865A JP2011040698A JP2011040698A JP2012176865A JP 2012176865 A JP2012176865 A JP 2012176865A JP 2011040698 A JP2011040698 A JP 2011040698A JP 2011040698 A JP2011040698 A JP 2011040698A JP 2012176865 A JP2012176865 A JP 2012176865A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon nitride
raw material
carbon
nitrogen
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2011040698A
Other languages
English (en)
Inventor
Takayuki Akaogi
隆之 赤荻
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Chemicals Corp filed Critical Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority to JP2011040698A priority Critical patent/JP2012176865A/ja
Publication of JP2012176865A publication Critical patent/JP2012176865A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】高い結晶性を有する六方晶又はそれに類似の結晶構造を有する窒化炭素を提供する。
【解決手段】窒素原子と炭素原子とを有する化合物、並びに、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物、からなる群より選択される少なくとも1種の原料に、電極間距離が0mmを超え5mm以下、且つ、周波数1kHz以上1MHz以下の条件により、誘電体バリア放電した電子を照射する、窒化炭素の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は窒化炭素、及びその製造方法に関するものである。
窒化炭素は、立方晶又は六方晶の結晶構造を有する。窒化炭素は、高硬度の物質であり、高い熱伝導性を有することから、硬質保護材、高強度材料及び高熱伝道材料など、様々な応用が期待でき、盛んに研究が行われている。
また、最近の研究では、窒素を含有する炭素材料がLiイオン電池電極として優れた物性を有することや、電子放出材料としての優れた特性が報告され、窒化炭素についても、電子電気部品の材料への応用が期待できる。Liイオン電池の電極材料として炭素材料を用いる場合、Liはグラファイトの層間化合物として存在することから、Liイオン電池のエネルギー密度を高くするためには、より多くの層構造を有する炭素材料を用いることが望ましい。また、Liイオン電池の特性には電極の電気伝導性が高い方が好ましく、炭素材料の結晶性は高い方がより好ましい。さらに、最近の研究では、炭素材料における窒素含有量が多いほど、Liイオン電池の特性が良好であることが多数報告されている。
窒化炭素又は窒素を含有する炭素(窒素含有炭素)の合成方法としては、例えば、レーザーアブレーションを用いた方法、グラファイト電極と窒素ガスとにより発生するピンチプラズマを利用した方法、プラズマ化学的気相成長法及びイオンビーム堆積法を用いた方法、炭素蒸気と窒素イオンビームとを組み合わせた方法、高周波マグネトロンスパッタリングを用いた方法、並びに、マイクロ波プラズマを用いた方法が提案されている。また、結晶性を有する窒化炭素の合成方法としては、特殊な物理蒸着法(特許文献1参照)が提案されている。
米国特許第5110679号明細書
上述のことから推測すると、Liイオン電池の電極材料としては、高い結晶性を有する六方晶又はそれに類似の結晶構造を有する窒化炭素がより好ましい材料であると考えられる。その結晶サイズが大きすぎるとLiイオン交換能が低下し、電池の容量が低下する恐れがあるものの、アルカリ賦活、水蒸気賦活、NH3やH2雰囲気中で焼成する等、賦活処理を行えば改善できると考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載のものを除く従来の一般的な技術は、非晶質の窒化炭素合成法であり、そのような方法では、高い結晶性を有する窒化炭素は得られない。例えば、プラズマを用いて原料となる分子を励起した場合、アーク放電やマイクロ波プラズマを用いると単原子まで解離されてしまう。単原子の窒素ラジカルはエネルギーが高すぎるため、合成物を破壊してしまい、結晶性を有する窒化炭素の合成は非常に困難である。一方で、窒素原子を炭素材料中に導入するには窒素原子の励起が必要であり、高いエネルギー状態の窒素の存在は避けられないため、結晶性を有する窒化炭素の合成は非常に困難である。
また、特許文献1に記載の方法により得られる窒化炭素は立方晶であり、導電性が低いことから、電極材料にすることができない。
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、高い結晶性を有する六方晶又はそれに類似の結晶構造を有する窒化炭素及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、結晶性を有する窒化炭素の合成方法を鋭意検討した結果、特許文献1に記載のものとは異なる結晶構造を有する窒化炭素を合成することができ、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記に示すとおりの窒化炭素及びその製造方法である。
[1]CuKα1線を用いたX線回折の測定において、26.4°を超え26.6°未満の範囲に回折角2θのピークを有する結晶性成分を含む窒化炭素。
[2]窒素原子と炭素原子とを有する化合物、並びに、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物、からなる群より選択される少なくとも1種の原料に、電極間距離が0mmを超え5mm以下、且つ、周波数1kHz以上1MHz以下の条件により、誘電体バリア放電した電子を照射する、窒化炭素の製造方法。
[3]前記窒素原子と炭素原子とを有する化合物が、窒素含有炭化水素を含む、[2]の製造方法。
本発明によると、高い結晶性を有する六方晶又はそれに類似の結晶構造を有する窒化炭素及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態の窒化炭素を合成できる反応装置の一例を示す模式図である。 実施例の窒化炭素表面のFE−SEM写真である。 実施例の窒化炭素断面のFE−SEM写真である。 実施例の窒化炭素の粉末X線回折スペクトルである。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[1]窒化炭素
(1)組成
本実施形態の窒化炭素は、窒素原子と炭素原子とを有しており、それらの原子の好ましいモル比は、炭素原子に対する窒素原子の比をN/Cで表した場合に、1.33≧N/C>0であり、より好ましくは1.33≧N/C>0.25である。結晶性窒化炭素のN/Cの最大値は4/3であり、窒素原子と炭素原子とが交互に結合した場合にこの最大値をとる。N/Cが4/3以下であることにより、窒化炭素の結晶性がより高くなる。窒素原子が結晶内に均一に配置されている場合、N/Cが0.25以上であると、グラファイト構造の六員環の原子のうちの少なくとも1つは窒素原子となり、窒化炭素に含まれる全ての六員環構造に窒素原子が含まれることにより、グラファイト構造を有しない構造となる点で好ましい。
窒素原子と炭素原子とのモル比は、CHN分析装置で測定することができる。例えば、ジェイサイエンスラボ社製のCHN分析装置である「MICRO CORDER JM10」(商品名)を用い、2500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行う。試料炉は950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)は850℃、還元炉(銀粒子と酸化銅とのゾーン、還元銅のゾーン、及び酸化銅のゾーンからなる)は550℃に設定する。炉内には、酸素ガス及びヘリウムガスを流通させ、酸素ガスの流通量は15mL/min、ヘリウムガスの流通量は150mL/minに設定する。各元素の検出器にはTCDを用いる。
なお、上述の組成(N/C)は、結晶質の部分におけるものであって、材料全体として非晶質の部分をも含む場合、非晶質の部分が、それ以外の組成を有していても構わない。結晶質以外(非晶質)の部分については、窒素及び炭素以外の元素を有しても差し支えない。結晶質以外の部分における好ましい元素としては、例えば、水素、酸素及びホウ素が挙げられる。本実施形態の窒化炭素における、窒素及び炭素以外の元素の含有量は特に限定されないが、60モル%以下であると好ましく、40モル%であるとより好ましい。言い換えると、本実施形態の窒化炭素における窒素及び炭素の含有量は、40モル%以上であると好ましく、60モル%以上であるとより好ましい。
(2)結晶構造
本実施形態の窒化炭素は、CuKα1線を用いたX線回折の測定において、26.4°を超え26.6°未満の範囲に回折角2θのピーク(以下、「回折ピーク」ともいう。)を有する。このピークは、JCPDSカード番号41−1487に記載されているGraphite−2Hの回折パターンにおいて現れる26.381°の回折ピークとも、JCPDSカード番号26−1079に記載されているGraphite−3Rの回折パターンにおいて現れる26.603°の回折ピークとも明らかに異なるピーク位置である。その一方、JCPDSカード番号87−1526に記載されている六方晶C34の回折パターンにおいて現れる26.504°の回折ピークに極めて近い位置である。このことから、本実施形態の結晶性の窒化炭素は、六方晶C34に類似する構造を有しており、六方晶又はそれに類似の結晶構造を有しているといえる。
回折角2θのピーク位置は、本実施形態の窒化炭素中の窒素含有量などによって多少変化すると考えられるものの、26.4°<2θ<26.6°であり、より好ましくは26.45°<2θ<26.55°である。以下、本明細書において、この回折ピークを「特定の回折ピーク」ともいう。かかる、特定の回折ピークを有する本実施形態の窒化炭素は、従来のグラファイトとは明らかに異なる物質である。結晶性を示す指標として、X線回折における回折ピークの半値幅があり、その幅が狭い方が結晶性が高いことを意味する。本実施形態の窒化炭素の上記特定の回折ピークの半値幅は、1°以下であることが好ましく、より好ましくは0.5°以下、さらに好ましくは0.4°以下である。
立方晶のC34は導電率が低く、例えば電池の電極として用いた場合に、その性能を低下させてしまうため、本実施形態の窒化炭素において、立方晶のC34が少ない方が好ましい。そのような観点から、JCPDSカード番号78−1693に記載されている立方晶C34の回折パターンにおいて現れる45.781°、37.035°及び25.955°の回折ピークが実質的に現れないのが好ましい。ここで、「実質的に現れない」とは、特定の回折ピークの面積をS1、立方晶C34の回折パターンにおいて現れる45.781°、37.035°及び25.955°の回折ピークの面積の合計値をS2とした場合、S1/S2>1であることを意味する。
結晶構造は、X線回折装置(XRD)により解析することができ、例えば、リガク社製の粉末X線回折装置(XRD)「RINT2500型」(商品名)を用いることができる。解析の条件は、X線源Cu管球(40kV、200mA)、測定範囲5〜90°(0.02°/step)、測定速度0.2°/分、スリット幅(散乱、発散、受光)1°、1°、0.15mmとする。試料をメノウ乳鉢で粉砕した後、粉末用無反射試料板上に均一に固定する。X線回折角(2θ)の補正は、結晶性シリコン粉末のX線回折角を測定して行う。
[2]窒化炭素の製造方法
本実施形態の窒化炭素の製造方法は、窒素原子と炭素原子とを有する化合物、並びに、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物、からなる群より選択される少なくとも1種の原料に、電極間距離が5mm以下、且つ、周波数1kHz以上1MHz以下の条件により、誘電体バリア放電した電子を照射する工程を含むものである。誘電体バリア放電は、間欠的に電子を照射してプラズマを発生させる手法であり、電子温度のみが上昇し、原子又は分子は常温に近い温度で存在する非平衡プラズマ発生方法である。誘電体バリア放電によって電子を照射された分子は、解離エネルギーの低い結合から選択的に切断される。したがって、例えば、シアン化水素に誘電体バリア放電で電子を照射した場合、解離エネルギーの低い水素原子と炭素原子との結合から切断されるため、炭素原子と窒素原子とが結合したままの励起された活性分子(ラジカル又はイオン)が得られる。この活性分子を重合することにより、窒化炭素を得ることができる。この活性分子は、窒素イオンや窒素ラジカルよりもエネルギーが低く、生成物のエッチングも抑制されるため、適当な条件で合成すれば、結晶性の窒化炭素を得ることができる。
(1)原料
原料は、窒素原子と炭素原子とを有する化合物、及び/又は、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物である。所望の本実施形態の窒化炭素を容易に得る観点から、窒素原子と炭素原子とを有する化合物としては、窒素含有炭化水素が好ましい。窒素含有炭化水素は、炭化水素の水素原子及び炭素原子の一部が窒素原子を有する1価の基に置換されたものである。窒素含有炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリルなどのシアノ基を有する炭化水素、メラミン、ピリジンなど環状の窒素含有炭化水素が挙げられる。これらのうち、窒素原子と炭素原子との間に結合を有するものが好ましく、その結合が二重結合又は三重結合であるものがより好ましい。窒素原子と炭素原子との二重結合を含む窒素含有炭化水素としては、例えば、メラミン、ピリジンが挙げられる。窒素原子と炭素原子との三重結合を含む窒素含有炭化水素としては、例えば、上述のシアノ基を有する炭化水素が挙げられる。
窒素含有炭化水素以外の窒素原子と炭素原子とを有する化合物としては、窒素原子と炭素原子との間に結合を有するものが好ましく、その結合が二重結合又は三重結合であるものがより好ましい。窒素原子と炭素原子との二重結合を含む化合物としては、例えば、塩化シアヌル、シアヌル酸が挙げられる。窒素原子と炭素原子との三重結合を含む化合物としては、例えば、BrCN、ICNが挙げられる。
窒素原子と炭素原子とを有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物を原料とする場合、炭素原子を有する化合物としては、例えば、メタン等の炭化水素及び一酸化炭素が挙げられ、窒素原子を有する化合物としては、N2及びアンモニアなどが挙げられる。これらの原料の混合比は、製造する窒化炭素のN/Cによって調整すればよく、原料に含まれる炭素原子に対する窒素原子のモル比N/Cが、N/C≧0.25となるような混合比であることが好ましく、より好ましくはN/C≧1.3である。
炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物とは、それぞれ、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
電子を照射するチャンバー内にまで原料を供給するために、キャリアガスが用いられてもよい。キャリアガスと原料との混合比は任意に決めればよい。液体又は固体の状態にある原料(以下、単に「液体又は固体原料」という。)を安定してチャンバー内に供給できる流量とする観点から、キャリアガスの流量をT[mol/min]、液体又は固体原料の供給量をM[mol/min]とした場合、T/M≧1であることが好ましい。
(2)電子の照射
原料として常温で液体又は固体のものを用いる場合、その原料を予備加熱して気化させ、加熱したキャリアガスに同伴させてチャンバー内に導入するのが好ましい。キャリアガスには、Arなどの希ガス、N2ガス、アンモニアガスなどを用いることができる。ガス化された原料は、予め反応温度に加熱してからチャンバー内に導入するのが好ましい。
チャンバー内は設定した反応温度に保持するのが好ましい。反応温度は、気化した原料が液化又は固化しない温度であればよく、好ましくは150℃以上400℃以下である。チャンバー内の圧力は大気圧であってもよいが、チャンバー内への大気などの混入を避けるために、チャンバー内を大気圧に対して0.1MPa程度加圧してもよい。また、原料に毒性が高い物質を用いた場合など、チャンバー内の原料ガス、又は反応ガスをチャンバー外へ漏出する危険を避けるために、チャンバー内を大気圧に対して0.1〜1MPa程度減圧してもよい。
誘電体バリア放電は、一対の電極間に、それらの少なくとも一方の表面を覆うようにして誘電体を設けて放電する。一方の電極に設置した誘電体表面ともう一方の電極の表面との距離、あるいは、両方の電極表面に設置した誘電体表面間の距離を電極間距離dとすると、所望の窒化炭素を安定的に得る観点から、0<d≦5mmであることが好ましい。安定した放電を保持しながら、生成した窒化炭素による電極間の短絡を防ぐために、0.5mm≦d≦5mmがより好ましく、更に好ましくは0.5mm≦d≦2mmである。誘電体は、誘電体バリア放電に用いることのできるものであれば特に限定されず、その例としては、ガラス、石英、アルミナ及びチタン酸バリウムが挙げられ、従来の誘電体バリア放電に用いられるものであってもよい。
窒化炭素は、誘電体バリア放電した電子の照射により、誘電体又は電極金属上に堆積する。誘電体バリア放電の際、電極間には、正弦波、矩形波又は鋸波の交流電圧を印加するのが好ましい。所望の窒化炭素を容易に得る観点から、周波数は1kHz以上1MHz以下であるが、3kHz以上100kHz以下がより好ましい。また、同様の観点から、好ましい電圧は2kV以上40kV以下である。より好ましい電圧は、原料の種類及び量、電極間距離、周波数によっても異なるが、プラズマが発生する電圧であればよい。例えば原料としてアセトニトリルを使用し、電極間距離2mm、周波数40kHzとした場合、印加する電圧は5kV以上8kV以下とするのが好ましい。
(3)反応装置
図1に、本実施形態の窒化炭素の製造方法に使用可能な反応装置の一例を示す。円筒状のプラズマ反応チャンバー(以下、単に「チャンバー」という。)10内に、高周波電源18に接続された一対の電極13、15が収容されている。電極13、15の間には間隙があり、そこに誘電体14が電極15の表面を覆うようにして挿入されている。電極13と誘電体14との間隙を電極間距離dとした場合、dは0mmを超え5mm以下に設定される。誘電体14の厚さは任意に決められるが、取り扱いのしやすさから、0.1mm以上2mm以下が好ましい。誘電体14は電極15の電極13に対向する側の表面全体に亘って接触していればよく、安定して設置できるのであれば電極15に固定する必要はない。図示しないが、誘電体は、電極13の電極15に対向する側に設けてもよく、あるいは、誘電体14を設けることなく、電極13の電極15に対向する側にのみ設けてもよい。図1に戻って、誘電体14又は電極13の表面に窒化炭素が生成することから、誘電体14及び電極13は容易に取り外しが可能であると好ましい。窒化炭素合成後は、チャンバー10内から誘電体14及び/又は電極13を取り出して窒化炭素を回収する。誘電体14を成長基板として、窒化炭素を薄膜成長することも可能である。
電極13、15の素材は十分な電気伝導性があれば特に限定はなく、Cu、Al、Fe、W、Ag、Au、Ptなどの金属、あるいは、ステンレス(SUS304、SUS316等)を用いることができる。誘電体14の素材は、ガラス、石英、アルミナなど、絶縁体や低電気伝導率の材料であれば特に限定されない。放電効率が高くなることから、誘電体14の素材として、チタン酸バリウムなどの強誘電体を用いるとエネルギー効率上、より好ましい。
チャンバー10内の温度は、チャンバー加熱装置11によって調整され、電極13、15及び誘電体14の温度は、それぞれ電極13、15に取り付けられた電極温度制御装置12、16によって調整される。電極温度制御装置12、16によって電極13、15を加熱することにより、液体又は固体原料が電極13、15付近で冷却されて液化又は固化するのを防ぐことができる。また、電極温度制御装置12、16によって電極13、15を冷却することも可能である。沸点が非常に高い原料を用い、チャンバー10内の温度が高くなった場合に、電極13、15や誘電体14を冷却して、これらの表面に生成した窒化炭素の脱離及び熱分解などを抑制し、窒化炭素の生成効率を向上させることも可能である。
チャンバー10に原料を供給する配管には原料予備加熱装置9が付帯しており、さらにその上流で配管が分岐している。分岐した一方の配管は、流量制御装置(マスフローコントローラー)1を介して原料ガスボンベ2に接続されている。他方の配管は、更に上流側で分岐しており、その一方の配管は液体又は固体原料用ポンプ7を介して原料タンク5に接続され、他方の配管は流量制御装置3を介してキャリアガスボンベ4に接続されている。その配管の分岐部分は、そこを通過する原料を気化するための液体又は固体原料気化器(以下、単に「原料気化器」という。)8内に配置されている。原料ガスボンベ2は複数であってもよく、常温において気体である原料、例えばメタン、エチレン、窒素などがそれぞれ収容されている。原料の数に合わせて、原料ガスボンベ2の個数を変更できる。原料ガスボンベ2から供給される原料ガスは、流量制御装置1により流量が制御される。
原料タンク5には、常温で液体又は固体の原料、例えば、臭化シアン、シアン化水素、アセトニトリル、ベンゼン、シクロヘキサン及びアンモニアなどが収容される。原料が常温で固体の場合、原料ボンベ5を包囲するように設置される液体又は固体原料予備加熱装置6を用いて液化することができる。液体又は固体原料予備加熱装置6は、原料タンク5内の原料を、予め所定の温度まで加熱するために用いられてもよい。液体原料又は液化された固体原料は、ポンプ7により原料気化器8内の配管に供給される。原料気化器8内の配管には、キャリアガスボンベ4から、流量制御装置3により流量を制御されたキャリアガスも供給される。キャリアガスとしては、Arなどの不活性ガスを用いることができる。また、N2や常温で気体であるメタンなどの炭化水素ガスをキャリアガスとして用いることもできる。N2や炭化水素ガスをキャリアガスとして用いる場合、これらのガスも窒化炭素を生成するための窒素源又は炭素源となる。液体又は液化された固体原料は、原料気化器8によって気化されると共に、キャリアガスと合流して混合される。
チャンバー10に供給される原料は、流量制御装置1、3、ポンプ7により、その混合比が調整される。混合された原料ガスは原料予備加熱装置9で加熱されて、チャンバー10内に供給される。
チャンバー10には排気ポンプ17が接続されていてもよく、減圧下で窒化炭素の合成をする場合、この排気ポンプ17を用いて排気する。常圧での反応においても、反応前にチャンバー10内の気体を一旦除去して不純物を減らすために、排気ポンプ17でチャンバー10内を排気して減圧し、原料ガスをチャンバー10内に供給してチャンバー内の圧力を常圧(大気圧)に戻す手順を繰り返してもよい。
チャンバーの有無及び形状、並びに、電極及び誘電体の形状は特に限定されず、図1に示した円筒状のチャンバー10内に、互いに平行するように配置された平板型の電極13、15及び誘電体14に代えて、円筒状の誘電体で形成された反応管の中に棒状の電極を挿入し、反応管の周りに帯状にもう一方の電極を設置して、内部の電極から放射状にプラズマを発生させる形態のものであってもよい。この場合、誘電体がチャンバーの役割を兼ねることになるので、原料ガスを供給するための配管及び排気ポンプへの配管は、誘電体に接続される。
また、チャンバーの形状は円筒状でなくてもよい。
(4)窒化炭素の製造
窒化炭素の製造方法の、より具体的な限定されない一例として、上記反応装置を用いて窒化炭素を製造する方法を説明する。まず、チャンバー10内の電極15の電極13に対向する側に誘電体14を設置し、電極13の位置を調整して電極間距離dを0<d≦5mmにする。チャンバー10を閉めた後、排気ポンプ17によりチャンバー10内の排気を開始し、十分排気した後、原料ガスボンベ2、キャリアガスボンベ4の供給弁を開き、流量制御装置1、3で流量を調整して、チャンバー10内に原料ガス及びキャリアガスの混合ガスを供給する。この際、排気と供給とを2回以上繰り返し、チャンバー10内の不純物を除去するのが好ましい。
原料ガスボンベ2、キャリアガスボンベ4から、原料ガスとキャリアガスとをそれぞれ10〜200mL/min流しながら、原料気化器8、原料予備加熱装置9、及びチャンバー加熱装置11を用いて、原料供給ライン及びチャンバー10内を反応温度(好ましくは150℃〜400℃)に加熱する。反応温度に到達した後、液体又は固体原料タンク5に固体を収容している場合は液体又は固体原料予備加熱装置6によって、固体原料が液化するまで加熱する。固体原料が液化した後、あるいは原料タンク5に液体原料を収容している場合、ポンプ7によってその原料を原料気化器8内の配管に供給して気化させると共に、キャリアガスと混合する。運転状況が安定したら、流量制御装置1、3、及びポンプ7を調整して、窒化炭素合成用の原料混合比になるよう制御する。
次いで、混合比を制御した原料ガスを、チャンバー10内に5分以上流し続け、チャンバー10内が原料ガスのみになり、かつ、原料ガスが安定に供給されていることを、図示しないガス分析計や流量計により確認した後、高周波電源18の電源を投入する。窒化炭素の合成条件(周波数として1kHz〜1MHz)に出力を調整して、電極13、15に電圧を印加する。電圧は1kVから徐々に上げ、放電が開始しプラズマ発光が見られる電圧まで上昇させる。放電は1〜20分間行うのが好ましい。
窒化炭素の合成が終了したら、電源を落とし、放電を終了する。次いで、ポンプ7を停止し、液体又は固体原料の供給を停止する。さらに、液体又は固体原料予備加熱装置6を停止する。原料供給ラインに残った気化された液体又は固体原料が全てなくなった後、原料気化器8、原料予備加熱装置9及びチャンバー加熱装置11を停止し、反応装置を40℃以下まで冷却する。次に、流量制御装置1、3を調整して原料ガス及びキャリアガスを停止する。次いで、排気ポンプ17を用いてチャンバー10内に残存する原料ガス及び反応ガスを排気する。続いて、チャンバー10内を常圧に戻し、チャンバー10を開け、窒化炭素が生成した誘電体14及び/又は電極13を取り出す。窒化炭素を粉末として得たい場合、誘電体14及び/又は電極13から削ぎ落とす。
なお、誘電体14及び/又は電極13を基板として用いることにより、薄膜状の窒化炭素を得ることも可能である。
[3]窒化炭素の用途
窒化炭素は、電極の他、触媒、触媒の担体として利用可能である。触媒の担体として使用する場合、用途に応じて、例えば、Pt、Pd、Ir、Rh、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Pb、La、Ce等を担持させることができる。担持させる方法は特に限定されず、一般的に用いられる金属担持物の製造方法、例えば、含浸法(吸着法、ポアフィリング法、蒸発乾固法、スプレー法)、沈殿法(共沈法、沈着法、混練法)、イオン交換法、気相蒸着法等を適用することができる。
本実施形態によると、硬質保護膜、高強度材料、高熱伝導材料、電子放出材料、Liイオン電池電極として好適に用いることができる窒化炭素を提供可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
反応チャンバー、電極及び誘電体を、円筒状の誘電体で形成された反応管の中に棒状の電極を挿入し、反応管の周りに帯状にもう一方の電極を設置して、内部の電極から放射状にプラズマを発生させる形態とした以外は図1に示したものと同様の構成を備える反応装置を用いて、上記実施形態で説明したのと同様にして窒化炭素を製造した。原料ガスには、アセトニトリルを加熱して気化したものを用い、Arガスをキャリアガスとして反応管に導入した。チャンバー内の圧力は常圧(大気圧)であり、アセトニトリルの流量は0.9mmol/min、Arガスの流量は40cc/minとし、反応管導入前に180℃に加熱した。内部電極にはSUS304製の棒状のものを用い、内径1cmのガラス製の反応管を誘電体として用いた。内部電極表面と誘電体表面との距離(電極間距離)は2mmとした。外部電極としてAl製の帯状の電極を用いた。この反応管を外部から加熱し、反応場の温度を200℃とした。印加した電圧は±6kVの正弦波であり、周波数は40kHzであった。反応時間は10分として、誘電体(ガラス管)及び棒状の電極の表面上に膜状に窒化炭素を形成した。
得られた窒化炭素のCHN分析を上記本実施形態に記載の方法に準じて行った結果、モル比がN/C=0.3であった。得られた窒化炭素を誘電体(ガラス管)から剥離してからサンプリングし、日立ハイテクノロジー社製の電解放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「SU−70」(商品名)により観察した。図2は得られた窒化炭素の表面、図3は断面のFE−SEM像である。このFE−SEM像が示すように、得られた窒化炭素は、粒界や表面の凹凸が認められず、平坦な表面及び断面になっており、形態が一様であった。また、それぞれの図中に示した白線で囲まれた矩形領域に対して、エネルギー分散型X線分光法(EDS)により組成分析を行った。図2に示す領域では、炭素濃度が75mol%、窒素濃度が21mol%であり、図3に示す領域では、炭素濃度が73mol%、窒素濃度が22mol%であった。
次に、得られた膜状の窒化炭素の表面及び璧開した断面について、電子線を直径約10nm以下の範囲に照射してEDSにより組成分析を行った。これを1点の測定点として窒化炭素の表面及び断面について、それぞれ100点以上の測定点で組成分析を行った。その結果、いずれの測定点においても、炭素濃度が70〜80mol%、窒素濃度が20〜30mol%の範囲にあり、窒化炭素の膜内において、炭素原子に対する窒素原子のモル比N/Cが、およそ0.3で均一であることが明らかとなった。
次いで、得られた膜状の窒化炭素について、CuKa1線を用いた粉末X線回折(XRD)を、上記本実施形態の記載の方法に準じて測定した。図4に、その結果のスペクトルを示す。この図4から明らかなように、26.5°に鋭い回折ピークが現れた。この26.5°の回折ピークの半値幅は0.35°であった。
本発明によると、硬質保護膜、高強度材料、高熱伝導材料、電子放出材料、Liイオン電池電極として好適に用いることができる窒化炭素を提供可能な点において、産業上の利用可能性がある。
1、3…流量制御装置、2…原料ガスボンベ、4…キャリアガスボンベ、5…液体又は固体原料タンク、6…液体又は固体原料予備加熱装置、7…液体又は固体原料用ポンプ、8…液体又は固体原料気化器、9…原料予備加熱装置、10…プラズマ反応チャンバー、11…チャンバー加熱装置、12、16…電極温度制御装置、13、15…電極、14…誘電体、17…排気ポンプ、18…高周波電源。

Claims (3)

  1. CuKα1線を用いたX線回折の測定において、26.4°を超え26.6°未満の範囲に回折角2θのピークを有する結晶性成分を含む窒化炭素。
  2. 窒素原子と炭素原子とを有する化合物、並びに、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物、からなる群より選択される少なくとも1種の原料に、電極間距離が0mmを超え5mm以下、且つ、周波数1kHz以上1MHz以下の条件により、誘電体バリア放電した電子を照射する、窒化炭素の製造方法。
  3. 前記窒素原子と炭素原子とを有する化合物が、窒素含有炭化水素を含む、請求項2に記載の製造方法。
JP2011040698A 2011-02-25 2011-02-25 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法 Withdrawn JP2012176865A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011040698A JP2012176865A (ja) 2011-02-25 2011-02-25 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011040698A JP2012176865A (ja) 2011-02-25 2011-02-25 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2012176865A true JP2012176865A (ja) 2012-09-13

Family

ID=46979008

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011040698A Withdrawn JP2012176865A (ja) 2011-02-25 2011-02-25 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2012176865A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015151356A (ja) * 2014-02-13 2015-08-24 旭化成ケミカルズ株式会社 ジニトリル化合物の製造方法
JP2017043511A (ja) * 2015-08-26 2017-03-02 国立大学法人 鹿児島大学 窒化炭素の製造方法
CN108126725A (zh) * 2016-12-01 2018-06-08 天津理工大学 表面改性类石墨相氮化碳光催化剂材料及其制备方法和应用

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015151356A (ja) * 2014-02-13 2015-08-24 旭化成ケミカルズ株式会社 ジニトリル化合物の製造方法
JP2017043511A (ja) * 2015-08-26 2017-03-02 国立大学法人 鹿児島大学 窒化炭素の製造方法
CN108126725A (zh) * 2016-12-01 2018-06-08 天津理工大学 表面改性类石墨相氮化碳光催化剂材料及其制备方法和应用
CN108126725B (zh) * 2016-12-01 2021-07-13 天津理工大学 表面改性类石墨相氮化碳光催化剂材料及其制备方法和应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7156648B2 (ja) カーボンナノ構造化材料及びカーボンナノ構造化材料の形成方法
KR100965834B1 (ko) 이중금속―탄소나노튜브 혼성촉매 및 이의 제조방법
JPH0346436B2 (ja)
JP7431422B2 (ja) カーボンナノ構造体の堆積のための方法及び装置
US11511316B2 (en) Plasma annealing method and device for the same
KR20200128975A (ko) 그래핀의 형성방법
US8778295B2 (en) Combinatorial synthesis of diamond
JPWO2006043433A1 (ja) プラズマcvd装置
JP2006111517A (ja) カーボンナノチューブの作製装置および作製方法
JP2012176865A (ja) 窒化炭素及び窒化炭素の製造方法
JP2007070158A (ja) カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法
US20150140232A1 (en) Ultrahigh Vacuum Process For The Deposition Of Nanotubes And Nanowires
JPS62158195A (ja) ダイヤモンドの合成法
US20140044874A1 (en) Graphene manufacturing system and the method thereof
JP2012207249A (ja) 粉体に対するクラスタ堆積方法及び粉体に対するクラスタ堆積装置
KR101276240B1 (ko) 오산화바나듐(v2o5)이 코팅된 이산화티타늄(tio2)분말의 제조방법 및 이에 따라 제조되는 오산화바나듐이 코팅된 이산화티타늄 분말
Zhu et al. Thermodynamic mechanism of controllable growth of two-dimensional uniformly ordered boron-doped graphene
Çelikel et al. Catalyst-free carbon nanowalls grown on glass and silicon substrates by ECR-MPCVD method
US20220195593A1 (en) Method for producing N-doped carbon nanomesh
JPS63277767A (ja) 高圧相窒化ホウ素の気相合成法
WO1998042896A1 (en) Process of diamond growth from c¿70?
JPS63215596A (ja) ダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド状薄膜の製造方法
JP2006143562A (ja) カーボンナノチューブとその低温合成方法
JP2009046325A (ja) カーボンナノチューブおよびその製造方法
KR100367455B1 (ko) 탄소나노튜브 합성용 다중 진공챔버 플라즈마화학기상증착장치 및 이 장치를 이용한 탄소나노튜브 합성방법

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20140513