JP2012176725A - 車両衝突判定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、衝突判定精度の安定化を実現可能な車両衝突判定装置を提供する。
【解決手段】車両衝突判定装置は、車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、前記高周波振動に含まれる第1帯域の振動成分を抽出する第1抽出手段と、前記高周波振動に含まれる第2帯域の振動成分を抽出する第2抽出手段と、前記第1帯域の振動成分のエネルギ変化量を第1エネルギ変化量として算出する第1エネルギ変化量算出手段と、前記第2帯域の振動成分のエネルギ変化量を第2エネルギ変化量として算出する第2エネルギ変化量算出手段と、前記第1エネルギ変化量及び前記第2エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段とを備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両衝突判定装置に関する。
一般的に、車両衝突時に乗員を保護するためのシステムとして、SRS(Supplemental Restraint System)エアバッグシステムが知られている。このSRSエアバッグシステムとは、車両の各部に設置された加速度センサから取得した加速度データを基に、車両衝突の発生を検知してエアバッグ等の乗員保護装置を起動するものである。
従来では、車両前部に設置された複数のフロントクラッシュセンサと、車両中央部に設置されたSRSユニット(SRSエアバッグシステムを統括制御するECU)内のユニットセンサとから得られる加速度データに基づいて、前面衝突(正面衝突、オフセット衝突、斜突を含む)が発生したか否かの判定を行い、その衝突判定結果に応じて乗員保護装置の起動制御を行う技術が知られている(下記特許文献1参照)。
また、近年では、音響センサを用いて衝突時の車体変形に起因して発生する衝撃音を検出し、その検出結果を基に衝突判定を行うCISS(Crash Impact Sound Sensing)技術の開発が進んでいる。音響センサと加速度センサとの違いは、検出対象振動の周波数帯域が異なるだけであり、どちらも振動センサに属するものである。一般的には、周波数帯域0Hz〜400Hzの低周波振動を加速度データとして扱い、周波数帯域5kHz〜20kHz(音響帯域)の高周波振動を音響データとして扱う。
下記特許文献2には、バルク音波センサを用いて車両衝突時に車体要素(サイドメンバー)に発生するトランスバーサル方向のバルク音波の振れを検出し、その検出結果を基に衝突判定を行う技術が開示されている。
特開平10−287203号公報 特表2001−519268号公報
上記特許文献1に記載されているように、加速度センサを用いて前面衝突判定を行うためには、フロントクラッシュセンサとユニットセンサが必要である。これは、ユニットセンサだけでは、判別が困難な衝突モード(乗員保護装置の起動が必要な高速オフセット衝突と、乗員保護装置の起動が不要な低速オフセット衝突)が存在するからである。ユニットセンサは前面衝突時の車体変形が小さい車両中央部に設置されているため、衝突発生時点から両方の衝突モードを正確に判別できる程の大きな差がセンサ出力に現れるまで長い時間(約40ms以上)を要する。
つまり、ユニットセンサだけを用いる場合、衝突発生時点から40ms後に衝突判定(具体的には閾値判定)が実施されるよう閾値設定を行う必要があり、必然的に乗員保護装置の起動タイミングが遅くなる。乗員保護の観点から、衝突発生時点から20〜30msの間に乗員保護装置を起動することが理想とされているため、ユニットセンサだけでは要求される乗員保護性能を満足できない。そこで、従来では、前面衝突時の車体変形が大きい車両前部にフロントクラッシュセンサを設けることで、迅速且つ正確な衝突判定を実現しているのである。
フロントクラッシュセンサを使用するとシステムコストの上昇を招くため、SRSユニットに内蔵されたユニットセンサのみで衝突判定を行うことが理想であるが、上記のようにユニットセンサだけでは要求される乗員保護性能を満足できない。そこで、ユニットセンサとして加速度センサの代わりに音響センサを用いることで、フロントクラッシュセンサを不要とするシステムの構築が試みられている。
音響センサから得られる音響データは、車体が変形(損壊)する特徴を捉えやすい傾向があり、車体変形が大きい高速オフセット衝突と車体変形が軽微な低速オフセット衝突との判別が容易で、迅速且つ正確な衝突判定の実現に有効である。しかしながら、音響帯域の振動成分は、損壊した場所(車体衝突位置)からSRSユニットに届くまでの区間で減衰しやすく、且つ車体の構造上の違いから減衰の度合いも異なるため、衝突判定精度が安定しないという課題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、衝突判定精度の安定化を実現可能な車両衝突判定装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、車両衝突判定装置に係る第1の解決手段として、車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、前記高周波振動に含まれる第1帯域の振動成分を抽出する第1抽出手段と、前記高周波振動に含まれる第2帯域の振動成分を抽出する第2抽出手段と、前記第1帯域の振動成分のエネルギ変化量を第1エネルギ変化量として算出する第1エネルギ変化量算出手段と、前記第2帯域の振動成分のエネルギ変化量を第2エネルギ変化量として算出する第2エネルギ変化量算出手段と、前記第1エネルギ変化量及び前記第2エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記衝突判定手段は、前記第1エネルギ変化量を第1軸、前記第2エネルギ変化量を第2軸とする2次元マップ上において、前記第1及び第2エネルギ変化量算出手段によって算出された前記第1及び第2エネルギ変化量が2次元的に設定された2次元衝突判定閾値を越えた場合に、前記乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したと判定することを特徴とする。
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記第1エネルギ変化量算出手段は、前記第1帯域の振動成分の絶対値を区間積分することで前記第1エネルギ変化量を算出し、前記第2エネルギ変化量算出手段は、前記第2帯域の振動成分の絶対値を区間積分することで前記第2エネルギ変化量を算出することを特徴とする。
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記第1エネルギ変化量算出手段は、前記第1帯域の振動成分の絶対値のエンベロープを区間積分することで前記第1エネルギ変化量を算出し、前記第2エネルギ変化量算出手段は、前記第2帯域の振動成分の絶対値のエンベロープを区間積分することで前記第2エネルギ変化量を算出することを特徴とする。
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、前記振動検出手段は、前記音響帯域の高周波振動として周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を検出し、前記第1抽出手段は、前記第1帯域の振動成分として周波数帯域5kHz〜15kHzの振動成分を抽出し、前記第2抽出手段は、前記第2帯域の振動成分として周波数帯域15kHz〜20kHzの振動成分を抽出することを特徴とする。
車両に生じる音響帯域の高周波振動に含まれる第1帯域の振動成分を基に算出した第1エネルギ変化量と、第2帯域の振動成分を基に算出した第2エネルギ変化量との関係には、衝突パターン、つまり車体変形を伴う激しい衝突(乗員保護装置の起動が必要な衝突)か、或いは車体変形が軽微な穏やかな衝突(乗員保護装置の起動が不要な衝突)かによって明確な差異が生じるため、第1エネルギ変化量及び前記第2エネルギ変化量に基づいて衝突判定を行うことで、正確に乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定することができる。
ここで、音響帯域の高周波振動の減衰や振動検出手段の感度などの誤差要因によって第1及び第2エネルギ変化量に変動が生じたとしても、両方のエネルギ変化量は同じ増減方向に変動するため、第1及び第2エネルギ変化量の関係に影響はなく、衝突判定精度は一定に保たれる。つまり、本発明によれば、車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、衝突判定精度の安定化を実現することができる。
本実施形態におけるSRSエアバッグシステムの構成概略図(a)及びSRSユニット1(車両衝突判定装置)の要部ブロック構成図(b)である。 第1エネルギ変化量算出部14の詳細構成図(a)及び変形例(b)である。 本実施形態の衝突判定原理に関する補足説明図である。 SRSユニット1の動作フローチャートである。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本実施形態におけるSRSエアバッグシステムの構成概略図である。この図に示すように、本実施形態におけるSRSエアバッグシステムは、車両100の中央部に設置されたSRSユニット1(車両衝突判定装置)と、車両100の運転席及び助手席に設置されたエアバッグ2(乗員保護装置)とから構成されている。
SRSユニット1は、内蔵する音響センサ11の出力信号に基づいて、車両100に前面衝突が発生したか否かの判定(衝突判定)を行い、その衝突判定結果に応じてエアバッグ2の起動制御を行うECU(Electronic Control Unit)である。エアバッグ2は、SRSユニット1から入力される点火信号に応じて展開し、車両100の前面衝突により乗員が前方に2次衝突することで負う傷害を軽減する乗員保護装置である。なお、一般的に車両100には、エアバッグ2の他、シートベルトプリテンショナ等の他の乗員保護装置も設けられているが、図1(a)では図示を省略している。
図1(b)は、SRSユニット1の要部ブロック構成図である。この図に示すように、SRSユニット1は、音響センサ11(振動検出手段)、第1バンドパスフィルタ12(第1抽出手段:以下、第1BPFと称す)、第2バンドパスフィルタ13(第2抽出手段:以下、第2BPFと称す)、第1エネルギ変化量算出部14(第1エネルギ変化量算出手段)、第2エネルギ変化量算出部15(第2エネルギ変化量算出手段)、及びマップ判定部16(衝突判定手段)を備えている。
音響センサ11は、SRSユニット1に内蔵された振動センサであり、車両100の長さ方向(図中のX軸方向)に生じる、周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を音響帯域の高周波振動として検出し、その検出結果を音響データS(t)として第1BPF12及び第2BPF13へ出力する。音響センサ11から得られる音響データS(t)は、前面衝突によって車両100が変形(損壊)する特徴をよく捉えたものである。
第1BPF12は、通過周波数帯域が5kHz〜15kHzに設定されたバンドパスフィルタであり、音響センサ11から入力される音響データS(t)から第1帯域の振動成分として周波数帯域5kHz〜15kHzの振動成分を抽出し、その抽出した振動成分を第1バンド音響データS1(t)として第1エネルギ変化量算出部14へ出力する。第2BPF13は、通過周波数帯域が15kHz〜20kHzに設定されたバンドパスフィルタであり、音響センサ11から入力される音響データS(t)から第2帯域の振動成分として周波数帯域15kHz〜20kHzの振動成分を抽出し、その抽出した振動成分を第2バンド音響データS2(t)として第2エネルギ変化量算出部15へ出力する。
第1エネルギ変化量算出部14は、第1BPF12から入力される第1バンド音響データS1(t)のエネルギ変化量(以下、第1エネルギ変化量と称す)ΔE1を算出し、その算出した第1エネルギ変化量ΔE1をマップ判定部16へ出力する。具体的には、図2(a)に示すように、第1エネルギ変化量算出部14は、絶対値算出部14a及び区間積分部14bを備えている。
絶対値算出部14aは、第1BPF12から入力される第1バンド音響データS1(t)の絶対値|S1(t)|を算出し、その算出した絶対値|S1(t)|を区間積分部14bへ出力する。区間積分部14bは、絶対値算出部14aから入力される絶対値|S1(t)|を区間積分することで第1エネルギ変化量ΔE1を算出し、その算出した第1エネルギ変化量ΔE1をマップ判定部16へ出力する。
本来、第1バンド音響データS1(t)の第1エネルギ変化量ΔE1は、S1(t)の二乗を区間積分すること、つまり、下記(1)式で表されるように、一定時間区間内で{S1(t)}を積算することで求めることができるが、本実施形態では第1エネルギ変化量ΔE1の算出処理に掛かる負荷を減らすために、下記(2)式で表されるように、第1バンド音響データS1(t)の絶対値|S1(t)|を区間積分する(一定時間区間内で積算する)ことにより、近似的に第1エネルギ変化量ΔE1を算出する。
ΔE1 = Σ{S1(t)} ・・・(1)
ΔE1 ≒ Σ|S1(t)| ・・・(2)
図1(b)に戻り、第2エネルギ変化量算出部15は、第2BPF13から入力される第2バンド音響データS2(t)のエネルギ変化量(以下、第2エネルギ変化量と称す)ΔE2を算出し、その算出した第2エネルギ変化量ΔE2をマップ判定部16へ出力する。なお、第2エネルギ変化量算出部15は、上述した第1エネルギ変化量算出部14と同様に、第2バンド音響データS2(t)の絶対値|S2(t)|を区間積分する(一定時間区間内で積算する)ことにより、近似的に第2エネルギ変化量ΔE2を算出する。
マップ判定部16は、第1エネルギ変化量ΔE1及び第2エネルギ変化量ΔE2に基づいて乗員保護装置の起動、つまりエアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したか否かを判定し、その衝突判定結果を出力する。具体的には、このマップ判定部16は、図3(a)に示すように、第1エネルギ変化量ΔE1を横軸(第1軸)、第2エネルギ変化量ΔE2を縦軸(第2軸)とする2次元マップ上において、第1エネルギ変化量算出部14及び第2エネルギ変化量算出部15によって算出された第1エネルギ変化量ΔE1及び第2エネルギ変化量ΔE2が2次元的に設定された2次元衝突判定閾値THを越えた場合に、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと判定する。
図3(a)の2次元マップ上において、符号L1は高速オフセット衝突などの車体変形を伴う激しい衝突(エアバッグ2の展開が必要な衝突)が発生した場合のΔE1−ΔE2特性波形を示し、符号L2は低速オフセット衝突などの車体変形が軽微な穏やかな衝突(エアバッグ2の展開が不要な衝突)が発生した場合のΔE1−ΔE2特性波形を示している。このように、車体変形を伴う激しい衝突と車体変形が軽微な穏やかな衝突とでは、ΔE1−ΔE2特性波形に明確な差異が生じることがわかる。
つまり、図3(a)に示すように、車体変形を伴う激しい衝突と車体変形が軽微な穏やかな衝突を確実に切り分けできる値に2次元衝突判定閾値THを設定しておくことにより、第1エネルギ変化量算出部14及び第2エネルギ変化量算出部15によって算出された第1エネルギ変化量ΔE1及び第2エネルギ変化量ΔE2が2次元衝突判定閾値THを越えた時、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと正確に判定することができる。
また、図3(b)に示すように、例えば音響帯域の高周波振動の減衰や音響センサ11の感度などの誤差要因によって、エアバッグ2の展開が必要な衝突パターンより縁石乗り上げなどの非衝突パターンの方が第1エネルギ変化量ΔE1が大きくなる場合がある。しかしながら、このように第1及び第2エネルギ変化量ΔE1、ΔE2に変動が生じたとしても、両方のエネルギ変化量ΔE1、ΔE2は同じ増減方向に変動するため、第1及び第2エネルギ変化量ΔE1、ΔE2の関係に影響はなく、衝突判定精度は一定に保たれる。つまり、第1及び第2エネルギ変化量ΔE1、ΔE2の関係に基づいて衝突判定を行うことにより、衝突判定精度の安定化を実現することができる。
以上説明した第1BPF12、第2BPF13、第1エネルギ変化量算出部14、第2エネルギ変化量算出部15及びマップ判定部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置が衝突判定用プログラムを実行することで実現されるソフトウェア的な機能である。以下では、図4のフローチャートを参照しながら、CPUが衝突判定用プログラムに基づいて実行する衝突判定処理について説明する。
まず、CPUは、衝突判定処理が開始されると、制御変数nをインクリメントした後、音響センサ11からアナログデータとして入力される音響データS(t)をサンプリング及びA/D変換することで、音響データS(t)の現在値を示すデジタルデータS(n)を取得する(ステップS1)。以下では、S(n)を音響データS(t)の今回値と呼ぶ。
なお、CPUは、上記のように取得した音響データS(t)の今回値S(n)をRAM等の揮発性メモリに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に取得された音響データS(t)={S(1)、…、S(n−2)、S(n−1)、S(n)}が記憶されることになる。なお、RAMの記憶容量をオーバーする場合には、古いデータから順に削除して、空いた記憶領域に新しいデータを記憶すれば良い。
続いて、CPUは、RAMからデジタルバンドパスフィルタ処理に必要な音響データS(t)を読み出し、通過周波数帯域が5kHz〜15kHzに設定されたデジタルバンドパスフィルタ処理用の演算式に代入することで、周波数帯域5kHz〜15kHzの振動成分である第1バンド音響データS1(t)の今回値S1(n)を算出する(ステップS2)。ここで、例えば、デジタルバンドパスフィルタ処理に、音響データS(t)の今回値、前回値、前々回値が必要な場合には、RAMからS(n)、S(n−1)、S(n−2)を読み出せば良い。
なお、CPUは、上記のように算出した第1バンド音響データS1(t)の今回値S1(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出された第1バンド音響データS1(t)={S1(1)、…、S1(n−2)、S1(n−1)、S1(n)}が記憶されることになる。このようなステップS2の処理によって、上述した第1BPF12の機能が実現される。
続いて、CPUは、RAMからデジタルバンドパスフィルタ処理に必要な音響データS(t)を読み出し、通過周波数帯域が15kHz〜20kHzに設定されたデジタルバンドパスフィルタ処理用の演算式に代入することで、周波数帯域15kHz〜20kHzの振動成分である第2バンド音響データS2(t)の今回値S2(n)を算出する(ステップS3)。
なお、CPUは、上記のように算出した第2バンド音響データS2(t)の今回値S2(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出された第2バンド音響データS2(t)={S2(1)、…、S2(n−2)、S2(n−1)、S2(n)}が記憶されることになる。このようなステップS3の処理によって、上述した第2BPF13の機能が実現される。
続いて、CPUは、RAMから第1エネルギ変化量ΔE1の算出に必要な第1バンド音響データS1(t)を読み出し、一次区間積分用の下記演算式(3)に代入することで第1エネルギ変化量ΔE1の今回値ΔE1(n)を算出する(ステップS4)。なお、下記(3)式において、Nは積分区間である。また、下記(3)式は、上記(2)式と等価である。
ΔE1(n)=|S1(n)|+|S1(n−1)|+…+|S1(n−N+1)|
…(3)
なお、CPUは、上記のように算出した第1エネルギ変化量ΔE1の今回値ΔE1(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出された第1エネルギ変化量ΔE1={ΔE1(1)、…、ΔE1(n−2)、ΔE1(n−1)、ΔE1(n)}が記憶されることになる。このようなステップS4の処理によって上述した第1エネルギ変化量算出部14の機能が実現される。
続いて、CPUは、RAMから第2エネルギ変化量ΔE2の算出に必要な第2バンド音響データS2(t)を読み出し、一次区間積分用の下記演算式(4)に代入することで第2エネルギ変化量ΔE2の今回値ΔE2(n)を算出する(ステップS5)。なお、下記(4)式において、Nは積分区間である。
ΔE2(n)=|S2(n)|+|S2(n−1)|+…+|S2(n−N+1)|
…(4)
なお、CPUは、上記のように算出した第2エネルギ変化量ΔE2の今回値ΔE2(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出された第2エネルギ変化量ΔE2={ΔE2(1)、…、ΔE2(n−2)、ΔE2(n−1)、ΔE2(n)}が記憶されることになる。このようなステップS5の処理によって上述した第2エネルギ変化量算出部15の機能が実現される。
続いて、CPUは、RAMから第1エネルギ変化量ΔE1の今回値ΔE1(n)と、第2エネルギ変化量ΔE2の今回値ΔE2(n)を読み出し、これらΔE1(n)及びΔE2(n)が、図3(a)に示した2次元衝突判定閾値THを越えたか否かを判定する(ステップS6)。
CPUは、上記ステップS6において「Yes」の場合、つまりエアバッグ2の展開を必要とする衝突(車体変形を伴う激しい衝突)が発生した場合、衝突判定結果を「1」にセットして衝突判定処理を終了する(ステップS7)。一方、CPUは、上記ステップS6において「No」の場合、つまりエアバッグ2の展開が不要な場合、衝突判定結果を「0」に保持した状態で衝突判定処理を終了する。このようなステップS6、S7の処理によって、上述したマップ判定部16の機能が実現される。
上記のような衝突判定処理が一定周期で繰り返し実行されることにより、衝突判定に有効な第1エネルギ変化量ΔE1の今回値ΔE1(n)と、第2エネルギ変化量ΔE2の今回値ΔE2(n)とが得られる毎に衝突判定(2次元衝突判定閾値THとの比較)が実施され、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと判定された場合(衝突判定結果が「1」にセットされた場合)にエアバッグ2が展開されることになる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1バンド音響データS1(t)を基に算出した第1エネルギ変化量ΔE1と、第2バンド音響データS2(t)を基に算出した第2エネルギ変化量ΔE2との関係から衝突判定を行うことにより、高速オフセット衝突等のエアバッグ2の展開が必要な衝突と、低速オフセット衝突、縁石乗り上げ等のエアバッグ2の展開が不要な衝突とを正確に判別することができると共に、衝突判定精度の安定化を実現することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態において、絶対値算出部14a及び区間積分部14bを備える第1エネルギ変化量算出部14を例示したが、図2(b)に示すように、絶対値算出部14a及び区間積分部14bに加えてエンベロープ出力部14cを設けても良い。このエンベロープ出力部14cは、絶対値算出部14aから入力される第1バンド音響データS1(t)の絶対値|S1(t)|のエンベロープ|S1e(t)|を出力するものである。
このようなエンベロープ出力部14cとしては、例えばカットオフ周波数が400Hzに設定されたローパスフィルタを用いることができる。この場合、区間積分部14bは、エンベロープ出力部14cから入力されるエンベロープ|S1e(t)|を区間積分することで第1エネルギ変化量ΔE1を算出する。なお、第2エネルギ変化量算出部15においても、同様に、第2バンド音響データS2(t)の絶対値|S2(t)|のエンベロープ|S2e(t)|を区間積分することで第2エネルギ変化量ΔE2を算出するようにしても良い。
(2)上記実施形態では、音響帯域の高周波振動として周波数帯域5kHz〜20kHzの振動を検出する場合を例示したが、検出対象振動の周波数帯域はこれに限定されず、車両100の構造や要求される乗員保護性能に応じて適宜設定すれば良い。つまり、高周波振動の周波数帯域は、前面衝突によって車両100が変形(損壊)する特徴(構造音響)を捕捉可能であれば良い。
また、上記実施形態では、音響データS(t)から第1帯域5kHz〜15kHzの振動成分を抽出し、第2帯域15kHz〜20kHzの振動成分を抽出する場合を例示したが、これら抽出すべき第1帯域及び第2帯域の振動成分も車両100の構造や要求される乗員保護性能に応じて適宜設定すれば良い。さらに、第1帯域と第2帯域は、両方の一部が重複するように設定しても良い。
1…SRSユニット(車両衝突判定装置)、11…音響センサ(振動検出手段)、12…第1BPF(第1抽出手段)、13…第2BPF(第2抽出手段)、14…第1エネルギ変化量算出部(第1エネルギ変化量算出手段)、15…第2エネルギ変化量算出部(第2エネルギ変化量算出手段)、16…マップ判定部(衝突判定手段)、14a…絶対値算出部、14b…区間積分部、14c…エンベロープ出力部、2…エアバッグ、100…車両

Claims (5)

  1. 車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、
    前記高周波振動に含まれる第1帯域の振動成分を抽出する第1抽出手段と、
    前記高周波振動に含まれる第2帯域の振動成分を抽出する第2抽出手段と、
    前記第1帯域の振動成分のエネルギ変化量を第1エネルギ変化量として算出する第1エネルギ変化量算出手段と、
    前記第2帯域の振動成分のエネルギ変化量を第2エネルギ変化量として算出する第2エネルギ変化量算出手段と、
    前記第1エネルギ変化量及び前記第2エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、
    を備えることを特徴とする車両衝突判定装置。
  2. 前記衝突判定手段は、前記第1エネルギ変化量を第1軸、前記第2エネルギ変化量を第2軸とする2次元マップ上において、前記第1及び第2エネルギ変化量算出手段によって算出された前記第1及び第2エネルギ変化量が2次元的に設定された2次元衝突判定閾値を越えた場合に、前記乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両衝突判定装置。
  3. 前記第1エネルギ変化量算出手段は、前記第1帯域の振動成分の絶対値を区間積分することで前記第1エネルギ変化量を算出し、
    前記第2エネルギ変化量算出手段は、前記第2帯域の振動成分の絶対値を区間積分することで前記第2エネルギ変化量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両衝突判定装置。
  4. 前記第1エネルギ変化量算出手段は、前記第1帯域の振動成分の絶対値のエンベロープを区間積分することで前記第1エネルギ変化量を算出し、
    前記第2エネルギ変化量算出手段は、前記第2帯域の振動成分の絶対値のエンベロープを区間積分することで前記第2エネルギ変化量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両衝突判定装置。
  5. 前記振動検出手段は、前記音響帯域の高周波振動として周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を検出し、
    前記第1抽出手段は、前記第1帯域の振動成分として周波数帯域5kHz〜15kHzの振動成分を抽出し、
    前記第2抽出手段は、前記第2帯域の振動成分として周波数帯域15kHz〜20kHzの振動成分を抽出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両衝突判定装置。
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