JP2012172208A - プラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置 - Google Patents

プラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】大気圧状態でも被膜の形成等のプラスチックボトル内面の処理を短時間で均一に実施することができるプラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置1及び処理方法は、ガス供給間2を構成する、誘電体からなる供給管本体の内部に設けられた導電体の細棒部材が、プラスチックボトルBの内部を優れた共振系として、リング状共振器6からスリット61を介して360°方向から照射されたマイクロ波により表面波プラズマを形成する。よって、マイクロ波閉じ込め室Mには、極めて均一なプラズマ(表面波プラズマ)が生成され、大気圧状態でもボトルBの内部にプラズマを維持しやすくなり、供給された原料ガスを効率よくプラズマ化してボトル内面BIを均一に処理し、成膜等が効率よくかつ安定して行われることになる。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置に関する。さらに詳しくは、大気圧ないしは大気圧近傍の圧力において、原料ガスをプラズマ化し、ガスバリア性の高い被膜等の機能性被膜を形成させることが可能なプラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置に関する。
プラスチックボトル内面の処理方法としては、清浄化、殺菌ならびに被膜形成がある。このうち清浄化、殺菌に関しては、エアーブローによる吹き飛ばし、水、洗浄剤による洗浄、紫外線殺菌、薬剤殺菌等が知られている。しかし、エアーブローによる吹き飛ばしでは固着した汚れの除去は困難であり、また、液体を用いた洗浄、殺菌は一般的であるが、設備コストや廃液処理等の経済的な問題があった。近年、プラスチックボトルの内部にプラズマを発生させて内面処理する方法が提案されているが、プラズマ処理するためにボトルの内部を真空(数Paから数10Pa)にしなければならない(例えば、特許文献1を参照。)。
被膜形成に関しては、プラスチックボトルのガスバリア性を改善するために、無機物薄膜や炭素膜をコーティング(被覆)する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献及び特許文献3を参照。)。例えば、酸化ケイ素被膜(SiOx)及びダイアモンド状炭素被膜(Diamond−Like Carbon:DLC。非晶質水素化炭素薄膜とも呼ばれる。)のコーティング技術は、プラスチックボトルのガスバリア性や表面保護特性を改善する技術として知られている。かかる酸化ケイ素被膜やダイアモンド状炭素被膜のコーティングは、プラスチックが一般的な大気圧付近での熱プラズマでは分解、変形してしまうため、真空(数Paから数10Pa)中での低温プラズマによる化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)コーティングが必要とされる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)では、その熱変形温度は80℃程度であり、熱プラズマでは分解ないし変形してしまうため、低温プラズマによるCVDコーティングが必要である。
また、高周波やマイクロ波を印加することによってボトルの内部においてプラズマを発生させるためには、プラスチックボトル内部の圧力を100Pa以下にすることが必要である。しかし、100Pa以下の真空を含むプロセスは、高性能な真空ポンプが必要である等、真空設備、電力、真空に要する時間等の排気処理にともなう費用、処理時間の面で、大気圧下での処理や、1000Pa(約1/100気圧)以上の圧力での簡便なロータリーポンプを用いて短時間で到達できる圧力で処理する場合に比較して著しく不利となっていた。加えて、ボトル内部を真空度が高い状態にする場合、ボトルを処理する空間であるマイクロ波閉じ込め室もボトルが外圧によってつぶされない程度に減圧しなければならず、その一方でマイクロ波によってボトル外部にプラズマが励起しない程度の圧力にすることが必要であった。よって、ボトル外部の圧力は10000Pa(約1/10気圧)程度にしてプラズマが発生しないようにする必要があるため、ボトルは、10000Paの外圧に耐える強度が必要とされ、肉厚の薄い軽量ボトルや1リットル以上の大容量の薄肉ボトルのプラズマ処理は難しいという問題もあった。
大気圧下にてプラスチックにもコーティング可能な低温プラズマを発生するためには、大気圧下での熱プラズマの生成を抑制し、電子温度は高いが、イオンは低温に保たれている非平衡プラズマを形成する必要があり、例えば、大気圧プラズマ法によるプラスチックボトルへのバリア膜をコーティングする技術の開示がある(例えば特許文献4及び特許文献5を参照。)。しかし、特許文献4に開示される技術は、従来の真空低温プラズマ法を大気圧プラズマに置換したものに過ぎず、低温大気圧プラズマ生成の技術への示唆はなく、仮にプラズマが生成したとしても一般的な大気圧付近での熱プラズマとなってプラスチックが変形してしまう。また特許文献5に開示される技術は、高周波パルス放電によって低温で大気圧プラズマを生成させているが、その原理上電極とボトル壁面との距離が数mm程度であり、表面処理としての被膜形成はボトルの外表面に限られ、また、ボトルの回転を要する等その装置は複雑であった。
近年、マイクロ波によって、大気圧下で非平衡プラズマ(電子温度は高いが、イオンは低温に保たれている)を形成する技術の提案がされている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照。)。これらの技術は、円周方向からマイクロ波を内部に照射することにより、内部空間の気体に表面波プラズマを発生させて円筒状の空間領域にプラズマを発生させるものであり、具体的には、リング状共振器の内側の壁に設けられたスリットアンテナからマイクロ波を照射することによって前記リング状共振器の円環内部に設けられたマイクロ波閉じ込め室の内部にプラズマを発生させるものである。
特開平8−53117号公報 特表2000−510910公報 特開2006−131306号公報 特開2003−41372号公報 特開2005−313939号公報
H.Sung−Spitzl,In−line plasma treatment for 3D plastics parts− rapid plasma activation in the medium pressure range,KUNSTST−PLAST EUR 91(6)(2001)46. F.Werner,D.Korzec,J.Engemann,Slot antenna 2.45GHz microwave plasma source SLAN,Plasma Sources Sci. Technol.3(4)(1994)473−481.
しかし、大気圧に近い圧力のプラズマは気体原子、分子の密度は高いため、非平衡プラズマであってもプラズマガスの温度は、プラズマが生成できるために必要な最小のマイクロ波出力においても200℃以上になる。このためポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等の一般的にプラスチックボトルに使用される樹脂材料では、プラズマによる処理時間が2秒、好ましくは1秒以内でないと熱変形を生じやすい。一方、高い圧力下でのプラズマ着火は従来火花放電で励起種を生成させる必要があり、プラズマ発生後に放電部材を除去する必要があり複雑で困難であった。そこで100Pa以下の低圧状態で着火してから圧力を上昇させる方法が一般的であるが、これではプラズマにさらされる時間が長くなり、プラスチック基材の処理ができなかった。
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、大気圧状態でも被膜の形成等のプラスチックボトル内面の処理を短時間で均一に実施することができるプラスチックボトル内面の処理方法及びプラスチックボトル内面の処理装置を提供することにある。
前記の課題を解決するために、本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、マイクロ波閉じ込め室の内部に処理対象のプラスチックボトルを配置し、前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入して、前記プラスチックボトルの内部に配置されたガス供給管により供給された原料ガスを含むガスをプラズマ化して、プラスチックボトル内面に処理を施す方法であって、筒状の誘電体からなる供給管本体の内部に導電体からなる細棒部材を配置してなる前記ガス供給管に、前記マイクロ波閉じ込め室の周囲に配置され、前記マイクロ波閉じ込め室に対向する面に設けられたスリットアンテナから前記マイクロ波閉じ込め室の内部にリング状共振器によりマイクロ波を導入することにより、前記細棒部材を放電させて前記プラスチックボトルの内部にプラズマを発生させ、前記プラズマの発生を前記マイクロ波の導入により維持して、前記ガス供給管により供給された原料ガスを含むガスをプラズマ化することを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、前記した本発明において、前記プラスチックボトルの内部から前記原料ガスを含むガスが排気されることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、前記した本発明において、前記マイクロ波は、パルス状ののこぎり波形状とされることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、前記した本発明において、前記のこぎり波のパルス周波数は500〜5000Hzであることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、前記した本発明において、前記細棒部材は、先端が尖っていることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理方法は、前記した本発明において、前記細棒部材は、前記供給管本体の内部を長手方向に延びるように配設されることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置は、処理対象となるプラスチックボトルが内部に配置されるマイクロ波閉じ込め室と、前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記マイクロ波閉じ込め室に配置される前記プラスチックボトルの内部に原料ガスを含むガスを供給可能なガス供給管とを備え、前記プラスチックボトルの内部に原料ガスを含むガスを供給し、前記プラスチックボトル内面に処理を施す装置であって、前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波閉じ込め室の周囲に配置され、前記マイクロ波閉じ込め室に対向する面に設けられたスリットアンテナから前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入するリング状共振器を含み、前記ガス供給管は、筒状の誘電体からなる供給管本体の内部に導電体からなる細棒部材を配置してなることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置は、前記した本発明において、前記プラスチックボトルの内部から前記原料ガスを含むガスを排気する排気手段を備えることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置は、前記した本発明において、前記細棒部材は、先端が尖っていることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置は、前記した本発明において、前記細棒部材は、前記供給管本体の内部を長手方向に延びるように配設されることを特徴とする。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置及び処理方法は、マイクロ波閉じ込め室には極めて均一なプラズマ(表面波プラズマ)が生成され、大気圧状態でもボトルの内部にプラズマを維持しやすくなり、原料ガスが効率よくプラズマ化され、成膜等のボトル内面の処理がプラズマによって短時間で均一に実施することができる。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置の一態様を示した概略図である。 本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置を構成するガス供給管の一態様を示した概略図である。 細棒部材の先端の断面形状を示した概略図である。 のこぎり波の形状に出力制御したマイクロ波を示す説明図である。 本発明に係る処理装置を構成するガス供給管の他の態様を示した概略図である。
以下、本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置の構成を図面に基づいて説明する。
(I)プラスチックボトルの内面処理装置1の構成:
図1は、本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置1(以下、単に「処理装置1」とする場合もある。)の一態様を示した概略図である。
本発明に係るプラスチックボトル内面の処理装置1は、底部となる台座31及び側壁32,33が導電体であるアルミニウム等の金属材料により構成され、全体が有底円筒状に形成されたチャンバー3を備える。また、かかるチャンバー3の上部に配設される円形状の蓋面34も、導電体であるアルミニウム等の金属材料で構成されている。
蓋面34の略中央には、ボトル固定部4が配設されている。例えば、フッ素樹脂、セラミックス等の誘電体からなるボトル固定部4は、円筒状部材からなる固定部本体41の天面に天面部42を形成してなり、チャンバー3の蓋面34の上部から固定部本体41を挿入し、天面部42が蓋部34の上部に現れるようにして蓋部34に固定されている。固定部本体41は、処理対象となるプラスチックボトルB(以下、単に「ボトルB」とすることもある。)の口部に形成されているネジ部を取り付けられるように、内部にネジ山が形成されている。また、ボトル固定部4は、ボトルBの口部を保持し、図1に示すように、チャンバー3の内部35(マイクロ波閉じ込め室M)でボトルBの底部を台座31に接地させず、チャンバー3の軸芯上に配置された状態で、ボトルBを固定保持する。
チャンバー3の蓋面34に配設されているボトル固定部4には、排気手段として、プラスチックボトルBの内部の原料ガスを含むガスを排気するとともに、必要に応じてボトルBの内部を減圧に維持等するため、図示しない吸引ポンプと繋がれたガス排気管51が取り付けられており、内部に存在する原料ガスを含むガスが排気されることになる。ボトルBの内部に存在する原料ガスを含むガスが排気されることにより、原料ガスを含むガスがボトルBの内部を移動し、ボトル内面の処理がスムースに進行することになる。
また、チャンバー3の側壁32には、チャンバー3の内部35(マイクロ波閉じ込め室M)を減圧に維持するため、図示しない吸引ポンプに繋がれた圧力調整管52が接続されており、必要に応じてマイクロ波閉じ込め室Mを所定の圧力まで減圧できるようになっている。なお、本発明にあっては1000〜100000Pa(約1/100〜1気圧(大気圧))での実施がなされるが、ボトルBが外圧で潰れることを防止するため、ボトルBの外部であるマイクロ波閉じ込め室Mは、ボトルBの内部の圧力と同じ圧力の空気とすることが好ましい。また、蓋面34にはパージ管55が接続されており、流量制御弁56を介して図示しないガス供給源(ボンベ)と繋がっており、マイクロ波閉じ込め室Mに所定のガス(原料ガスと、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスや、窒素、酸素、水素、空気等)をパージすることができる。なお、これらのガス排気管51、圧力調整管52及びパージ管55には、いずれも、マイクロ波閉じ込め用の図示しないシールドが配設されている。
このような構成でチャンバー3の内部35(マイクロ波閉じ込め室M)に固定保持されているプラスチックボトルBの内部には、ボトル固定部4からボトルBの口部を介して、図2に示す構造のガス供給管2が挿入されている。
図2は、本発明に係る処理装置を構成するガス供給管2の一態様を示した概略図を示す。図2に示すように、ガス供給管2は、円筒状の誘電体からなる供給管本体21と、かかる供給管本体21の内部に配置される、導電体からなる細棒部材22から構成される。本実施形態にあっては、供給管本体21の先端は、原料ガスを含むガス等が通過して、プラスチックボトルBの内部に吹き出されるよう、開口部211が形成されて開放状態となっている。
ガス供給管2は、本実施形態にあっては、中空の支持部212の先端に接合されており、マイクロ波閉じ込め室Mに保持されたプラスチックボトルBの口部からその内部に挿入される。ガス供給管2は、供給通路53に形成された流量制御弁54を介して図示しないガス供給源(ボンベ)と繋がっており、原料ガスを含むガスが、支持部212の中空部を通ってガス供給管2の内部に供給され、開放されたガス供給管2(供給管本体21)の先端から、原料ガスを含むガスがボトルBの内部に吹き出されることになる。
誘電体からなる供給管本体21の内部に設けられた導電体の細棒部材22は、プラスチックボトルBの内部を優れた共振系として、電界強度を高めかつ処理すべきボトルBの軸方向に沿っての電界強度分布を安定化することになる。すなわち、導電体の細棒部材22は、マイクロ波を引きつける効果があり、マイクロ波が照射されることによって、誘電体(供給管本体21)を通過したマイクロ波が供給管本体21の内部に存在する細棒部材によって放電・着火して、ガス供給管2の内部でプラズマが生成することになる。生成されたプラズマは、原料ガスを含むガスの導入と吸引による排気にともなって、ガス供給管2(供給管本体21)の先端の開口部211からボトルBの内部を移動するが、この移動中もマイクロ波による表面波プラズマ励起により、活性が維持されつつ、ボトルの内面BIと反応して処理(エッチング、被膜形成等)を行いながらガス排気管51より排出される。このようにして大気圧状態でもボトルBの内部で原料ガスのプラズマ化が効率よく行われ、成膜等のボトル内面BIの処理が高密度プラズマによって短時間で均一に実施することができる。また、大気圧状態においても、導電性の細棒部材22の先端へのマイクロ波集中によって分子の電離が生じ、これが種となってボトル内面BIの全体にプラズマが発生する。
このような電界強度分布を安定化する機能を効率よく発現させるために、細棒部材22は、チャンバー3を構成するシールドされた蓋面34や側壁32,33等に電気的に接続され、アース(設置)されることが好ましい。細棒部材22をアースすることにより、電位はゼロとなるが、プラズマが発生するとイオンより移動しやすい電子は細棒部材22と供給管本体21の両面に蓄積してマイナスに帯電する一方、供給管本体21の内面はより電位が低下する。この結果、供給管本体21の外面はプラスの電位となり、ボトルBの内部での正のガス分子イオンは、負の電位になっているボトル内面に引き付けられて衝突することになり、効果的にボトル内面BIの処理が行われることになる。
細棒部材22を接地(アース)するには、例えば、中空の支持部212を導電体で構成するようにして、かかる支持部212を介して、細棒部材22とチャンバー3を構成する蓋面34等との導通を図るようにすればよい。また、支持部212の先端部分は、支持部212の中空部分の通路と供給管本体21との連通を損なわないように、導電体からなる細棒部材支持部221を設け、この細棒部材支持部221に細棒部材22を支持させるようにすればよい。支持部212は、チャンバー3を構成するシールドされた蓋面34や側壁32,33との導通が得られるものであれば任意の金属材料で構成するようにすればよいが、細棒部材22を構成する金属材料と共通する金属材料を採用することが好ましい。
図3は、細棒部材22の先端(供給管本体21の内部に現れる側の先端のこと。以下同じ。)の断面形状を示した概略図である。図3(a)に示すように、細棒部材22の形状としては、供給管本体21の内部に現れる側の先端を水平(フラット)な断面とするのが一般的であるが、図3(b)に示すように、先端を尖らせるように形成してもよい。細棒部材22は、供給管本体21の内部に現れる側の先端を尖らせることにより、マイクロ波がより集中して放電を起こしやすくなり、確実にプラズマの着火をさせることができる。なお、図3に示す構成のような細棒部材22の先端にあっては、エッジ(角)222にアールを付けるようにしてもよい。
細棒部材22は、本実施形態にあっては、図2に示すように、供給管本体21の付け根部分からその内部を長手方向に延び、その先端が供給管本体21の内部に現れるように配設されるが、細棒部材22のプラスチックボトルBの口部天面から差し込まれる長さ(軸方向長さ。以下、供給管本体について同じ。)としては、一概に規定することはできないが、例えば、500mLのプラスチックボトルB(全高約200mm)の場合には、100〜170mm程度とすればよく、120〜160mm程度とすることが好ましい。
供給管本体21の軸方向長さは、前記した細棒部材22の軸方向長さやプラスチックボトルBの全高に応じて決定されるが、例えば、500mLのプラスチックボトルB(全高約200mm)の場合には、140〜180mm程度とすることが好ましく、また、前記した細棒部材22の軸方向長さと比較して、10〜20mm長くすることが好ましい。また、供給管本体21の軸方向長さは、ボトルBの底部との間隔が20〜60mm程度となるように設定されることが好ましい。
さらに、供給管本体21は、内径を5〜15mm、外径を7〜18mm、厚さを1.5〜3mmとすればよく、内径を6〜10mm、外径を9〜14mm、厚さを1.5〜2mmとすることが好ましい。また、細棒部材22は、外径を0.5〜2mmとすればよく、1〜1.5mmとすることが好ましい。
供給管本体21を構成する材料としては、誘電体、すなわち電気絶縁性に優れた絶縁体であり、耐熱性に優れた非金属材料であることが好ましく、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド等の樹脂材料や、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス等の非金属材料が挙げられる。供給管本体21は、これを構成する材料の種類に応じて、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、焼成法、切削加工法等の公知の方法により成形することができる。
導電体からなる細棒部材22を構成する材料としては、金属材料であることが好ましく、例えば、タングステン、ステンレス鋼、白金等の金属材料が挙げられる。細棒部材22は、これを構成する材料の種類に応じて、焼成法、切削加工法等の公知の方法により成形することができる。
一方、チャンバー3の内部25ないしはマイクロ波閉じ込め室Mの周囲には、マイクロ波導入手段として、リング状共振器6が設けられている。このリング状共振器6は、断面略矩形状の導波管を無端円環状に形成したものである。
また、このリング状共振器6のマイクロ波閉じ込め室M側(マイクロ波閉じ込め室Mに配置されるプラスチックボトルB側)の面と壁面32,33には、半径方向に延在する複数個のスリットアンテナ61(細長い溝)が周方向に離間して形成されており、マイクロ波は、かかるスリットアンテナ61(スロットアンテナとも呼ばれる。また、単にスリット(あるいはスロット)とも呼ばれる。以下、単に「スリット61」とする場合もある。)61からマイクロ波閉じ込め室Mに導入されることになる。本発明に係る処理装置1では、このようにリング状共振器6からスリット61を介して周方向からマイクロ波が導入されることになるので、円筒状の立体プラズマを表面波プラズマによって形成し、大気圧状態でボトルの内部にプラズマを維持しやすくする。なお、このリング状共振器6の外周面には、伝搬導波管62を介してマイクロ波発振器63が接続されており、かかるマイクロ波発振器63からマイクロ波を供給するようになっている。
リング状共振器6に形成されるスリット61の形状は、細長い矩形状とすることができ、また、スリット61の形成される向きは、リング状共振器6の周方向と平行に形成される横スリット(水平スリット)、リング状共振器6の周方向と直交するように形成される縦スリット(垂直スリット)が一般的であるが、特に方向性を持たずランダムな方向となるように形成するようにしてもよい。なお、スリット61が形成される位置としては、リング状共振器6の周囲に等間隔で形成すれば、マイクロ波がマイクロ波閉じ込め室Mに均一に導入されることとなり好ましい。
(II)プラスチックボトル内面の処理方法の一例:
次に、前記した処理装置1を用いた、プラスチックボトル内面の処理方法の一例を説明する。
まず、チャンバー3の蓋面34に配設されたボトル固定部4に、処理対象となるプラスチックボトルBの口部を固定し、蓋面34をチャンバー3に取り付ける。なお、ボトル固定部4には、あらかじめガス排気管51が取り付けられている。
本発明において、処理対象となるプラスチックボトルBを構成する樹脂(プラスチック)材料としては、それ自体が公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的な樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる、これらの樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
また、プラスチックボトルBの形状としては、特に制限はなく、飲料ボトルとして一般的な、胴部が軸対称形状(例えば断面視円形状)のものに加えて、軸非対称形状といった任意の形状のボトルについて対応可能である。
ボトル排気管51に繋がれた図示しない吸引ポンプで、プラスチックボトルBの内部を例えば、1000〜100000Pa(約1/100〜1気圧)の間の所定の圧力に維持し、同様に、圧力調整管52に繋がれた図示しない吸引ポンプで、チャンバー3の内部35(マイクロ波閉じ込め室M)を1000〜100000Pa(約1/100〜1気圧)の間の所定の圧力に維持し、原料ガスを含むガスが、流量制御弁54を介して図示しないガス供給源(ボンベ)から供給通路53及び支持部212の中空部を通ってガス供給管2の内部に供給される。
ガス供給管2から供給される原料ガスとしては、プラズマ処理の目的に応じて種々のそれ自体公知のガスが使用される。原料ガスとしては、揮発性の高いものである必要があり、炭素膜や炭化物膜の形成には、アセチレン、エチレン、メタン、エタン等の炭化水素類が使用される。また、シリコン膜の形成には四塩化ケイ素、シラン、有機シラン化合物、有機シロキサン化合物等が使用される。チタン、ジルコニウム、錫、アルミニウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、タンタル、ニオブ、鉄、ニッケル、クロム、ホウ素等のハロゲン化物(塩化物)や有機金属化合物が使用される。さらに、酸化物膜の形成には酸素ガス、窒化物膜の形成には窒素ガスやアンモニアガスが使用される。これらの原料ガスは、形成させる薄膜の化学的組成に応じて、2種以上のものを適宜組み合わせて用いることができる。
また、プラスチックボトル内面BIの表面改質のために、炭酸ガスを用いてボトル内面BIに架橋構造を導入したり、あるいははフッ素ガスを用いてボトル内面BIにポリテトラフルオロエチレンと同様の特性、例えば非粘着性、低摩擦係数、耐熱性、耐薬品性を付与したりすることができる。
原料ガスを含むガスの導入量は、処理すべきプラスチックボトルBの表面積や、原料ガスの種類によっても相違するが、例えば、プラスチックボトル内面BIの処理では、ボトル1個当たり、標準状態のガス容積に換算して1〜500cc/分程度とすればよく、2〜200cc/分の流量で供給することが好ましい。
なお、原料ガスを含むガスとしては、前記した原料ガス単体のほか、所定のガスと混合した希釈ガスとしてもよい。希釈ガスは、原料ガスと、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスや、窒素、酸素、水素等の希釈用ガスを使用することができる。
なお、原料ガスを含むガスを供給する前に、前記した希釈ガスと共通するガスを所定時間供給し、プラスチックボトル内部の空気を置換して、その後に、原料ガスを含むガスを供給するようにしてもよい。
好ましくは、原料ガスを含むガスの供給によってボトルBの内部に原料ガスを含むガスが完全に置換すると同時に(あるいは、原料ガスを含むガスがガス供給管2の内部に到達したときにマイクロ波を発振させてもよい。)、マイクロ波発振器63から、高周波として例えば2.45GHzのマイクロ波を発振させる。マイクロ波発振器63から供給されたマイクロ波は、伝搬導波管62を伝搬し、リング状共振器6の内部に供給され、スリット61を通過して、マイクロ波閉じ込め室Mに導入されプラズマを発生させる。すなわち、このリング状共振器6の内部を進行波として伝搬するマイクロ波は、リング状共振器6に形成された複数のスリット61からチャンバー3の内部35のマイクロ波閉じ込め室Mに導入・放出されることになる。
ここで、リング状共振器6の内部を伝搬されるマイクロ波は、定在波ではなく無端環状のリング状共振器6の内部を回転する進行波であるため、スリット61から放出される電磁界は、リング状共振器6の周方向に均一になる。リング状共振器6からスリット61を介して360°方向から照射されたマイクロ波は、円筒状の立体プラズマを表面波プラズマによって形成するため、大気圧状態でボトル内部にプラズマを維持しやすくなり、マイクロ波閉じ込め室Mには、極めて均一なプラズマ(表面波プラズマ)が生成されることになる。
また、プラスチックボトルBの内部では、ボトルBの口部から挿入されたガス供給管2に配設された導電体の細棒部材22が電極となり、マイクロ波が放電することによって火花が生じて、この圧力範囲においてプラズマの着火が容易に生じ、発生したプラズマはマイクロ波によって励起が維持され、プラズマ活性が維持される。プラズマガスはガス供給管2からボトルBの内部に導入され、排気される流れによってボトルBの内部を移動してプラズマ化され、ボトル内面BIを均一に処理する。ガス供給管2から出たプラズマガスは、マイクロ波によって表面波プラズマとしてエネルギー伝達されてプラズマ活性が維持され、ボトル内面BIを均一に処理することになり、成膜が効率よくかつ安定して行われることになる。
ここで、マイクロ波発振器63からリング状共振器6に供給されるマイクロ波の周波数は、例えば、300MHz〜100GHzの範囲内の任意の周波数を選択することができるが、工業的に使用が許可されている周波数が2.45GHz、5.8GHz、22.125GHzのものを用いることが好ましい。
また、マイクロ波は、マイクロ波の出力を、0〜100%まで、のこぎり波の形状で変動させるようにしてもよい。図4は、のこぎり波の形状に出力制御したマイクロ波を示す説明図であり、(a)はマイクロ波の定常出力、(b)はのこぎり波の出力制御信号、(c)はのこぎり波の形状に出力制御したマイクロ波、をそれぞれ示す。出力が傾斜して上昇し、最高点から出力0に戻ることを繰り返すのこぎり状の波形(のこぎり波の形状)からなるマイクロ波のパルス状の出力は、ON/OFFのマイクロ波出力を繰り返すことによって、プラズマの発生/消滅が繰り返されることになる。これにより、のこぎり波の形状に出力制御したマイクロ波は、連続出力のマイクロ波と比較して、プラズマ温度の上昇が抑制され、かつプラズマの活性は適度に維持される。この結果、プラズマガスの温度の高温化が抑制され、より長時間の表面処理が可能となる結果、例えば、表面をよりエッチングすることができ、また、成膜される被膜の厚さを厚くすることができる。
マイクロ波の出力をパルス状ののこぎり波形状とすることにより、プラズマ中の活性種(酸素イオン、酸素ラジカル、炭化水素イオン、炭化水素ラジカル、炭素イオン、水素ラジカル等)は、マイクロ波出力が瞬時に零になることによって、プラスチックボトル内面BIに引き寄せられてエッチング、被膜形成を行うが、そのままではエネルギーを失い空間中での粒子化を生じる。そこで、零レベルの出力から傾斜して出力を増加させ再びプラズマの活性状態を維持することを繰り返すことによって、大気圧領域(0.01〜1気圧)のプラズマ状態であっても比較的低いプラズマガス温度(数百度K程度)に維持しつつ再結合粒子を生じにくい状態で内面処理することができる。なお、のこぎり波のパルス周波数は、500〜5000Hzとすることが好ましい。ここで、マイクロ波の出力をパルス状ののこぎり波形状とするには、例えば、マイクロ波発振器63の内部のマグネトロン管の出力調整器に、関数発生器等によって生成されたのこぎり波形状のパルス信号を接続してパルス変調することにより、簡便に実施することができる。
なお、マイクロ波の出力は、処理すべきプラスチックボトル内面BIの表面積、形成させる薄膜の厚さ及び原料ガスの種類等により適宜決定することができるが、例えば、一般的な500mL容量のPETボトル1個当たり、50〜5000(0.05k〜5.0k)Wの電力となるようにすればよく、100〜3000(0.1k〜3.0k)Wの電力となるように供給するのが好ましい。同様に、プラズマ処理の時間も、ボトル内面BIの表面積、形成させる薄膜の厚さ及び原料ガスの種類等によって適宜決定することができる。
(III)本発明の効果
以上説明したように、本実施形態に係るプラスチックボトル内面の処理装置及び処理方法は、大気圧状態でもマイクロ波閉じ込め室Mに極めて均一なプラズマ(表面波プラズマ)が生成され、被膜形成等のボトル内面BIの処理が高密度プラズマによって短時間で均一に実施することができる。
すなわち、誘電体からなる供給管本体21の内部に設けられた導電体の細棒部材22はプラスチックボトルBの内部を優れた共振系とするため、リング状共振器6からスリット61を介して360°方向から照射されたマイクロ波により表面波プラズマが形成され、マイクロ波閉じ込め室Mには、極めて均一なプラズマ(表面波プラズマ)が生成される。よって、供給された原料ガスのプラズマ化が効率よく行われ、大気圧状態でもボトルBの内部にプラズマを維持しやすくなり、ボトル内面BIを均一に処理することになり、成膜が効率よくかつ安定して行われることになるため、ボトル内面BIの種々の処理に利用することができる。
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
例えば、前記した実施形態では、処理装置1を構成するガス供給管2が、図2に示すように、筒状の誘電体からなる供給管本体21の内部に導電体からなる細棒部材22を配置し、細棒部材22が、供給管本体21の内部を長手方向に延びるように配設される態様を示した。一方、ガス供給管2は、筒状の供給管本体21の内部に細棒部材22を配置するものであれば特に制限はなく、例えば、図5に示すように、細棒部材22を、供給管本体21の胴部からその内部を横切るように配設して、ガス供給管2を形成するようにしてもよい。
なお、以下の説明においては、前記した実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
図5は、本発明に係る処理装置を構成するガス供給管2の他の態様を示した概略図である。図5に示したガス供給管2は、細棒部材22を、供給管本体21の胴部からその内部を直交するように差し込んで配設している。このような構成とすることにより、図2に示した構成と比較して、細棒部材22をコンパクトにすることが可能となり、材料コストの削減を図ることができる。細棒部材22は、前記した図2で示した態様と同様、図3(b)に示すように、先端が尖っていることが好ましく、また、接地(アース)されることが好ましい。その他、細棒部材22が形成される位置は、一概に規定することはできないが、500mLのプラスチックボトルB(全高約200mm)を例にとると、プラスチックボトルBの口部天面から50〜140mm程度とすればよく、この範囲の位置に20mm以上の距離をおいて2個以上取り付けてもよい。また供給管本体21の長さは、例えば、最下部の細棒部材22の位置よりもさらに10〜40mm長くすることが好ましい。
また、チャンバーの内部35に形成されるマイクロ波閉じ込め室としては、キャビティー3の内部35に配置されるプラスチックボトルBを、マイクロ波が透過可能な材料からなる、壁面がチャンバー3の壁面32,33と略並行になるような筒状部材で軸方向に囲うようにして、かかる部材の内部をマイクロ波閉じ込め室Mとするようにしてもよい。例えば、筒状部材として、図示しない石英管でボトルBの周りを軸方向に囲うようにして、かかる石英管の内部をマイクロ波閉じ込め室Mとするようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造等としてもよい。
以下、実施例等に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
図1に示した構成のプラスチックボトル内面の処理装置を用いて、原料ガスをアセチレン(CHCH)としてDLC(非晶質水素化炭素薄膜)をプラスチックボトル(PETボトル)の内面に形成させて処理した場合における、「プラズマ着火状態の確認試験」、「成膜状態の確認試験」及び「マイクロ波パルス変調試験」を、下記の方法を用いて実施して比較・評価した。
(基本操作)
まず、処理対象となる下記仕様のプラスチックボトルをボトル固定部に取り付け、チャンバーの内部(マイクロ波閉じ込め室)にボトルを配置した。次に、チャンバーの内部を下記の所定の圧力に維持しつつ、原料ガスであるアセチレン(CHCH)ガスを、ガス供給源(ボンベ)から流量制御弁を介して、ボトルの内部に配設された下記仕様のガス供給管からボトルの内部に供給し、ボトルの内部を通過した後、ガス排気管を介して排気するようにした。このとき必要に応じて、希釈ガスの窒素ガスをガス供給源(ボンベ)から流量制御弁を介して、原料ガスの流量制御弁の後で混合して原料ガスを希釈した。また、原料ガスであるアセチレンガスの供給と同時に、マイクロ波発振器から、周波数が2.45GHz、出力が3kWのマイクロ波を発振させた。そして、マイクロ波発振器から供給されたマイクロ波を、伝搬導波管を伝搬し、リング状共振器の内部に供給され、リング状共振器に等間隔に形成された5ヶ所の横スリット(水平スリット)、2ヶ所の縦スリット(垂直スリット)を通過して、マイクロ波閉じ込め室に導入・放出され、プラズマを発生させた。マイクロ波については、試験例1及び試験例2は連続波、試験例3は、のこぎり波形状の出力とした。
(プラスチックボトルの仕様)
構成材料 : ポリエチレンテレフタレート(PET)
容量 : 0.5L
胴部の外径: 65mm
全長 : 200mm
胴部の厚さ: 0.3mm
なお、下記の試験例1及び試験例2では、ボトル内部の圧力を100Pa、1000Pa、10000Pa、100000Pa(約1気圧)の4種類として、試験例3では100000Pa(約1気圧)としてそれぞれ評価を行った。一方、ボトルが潰れることを防止するため、ボトルの外部(チャンバーの内部)の圧力はボトルの内部の圧力と同じ圧力となるように調整した。
また、原料ガスであるアセチレンガスは、ボトル内部が100Pa、1000Paの圧力では、アセチレンガスを単独で用いて、アセチレンガスの流量を30sccm(標準状態容量cc/分)として、ボトル内部の圧力をガス排気管に繋がれる吸引ポンプにより調整した。一方、ボトル内部が10000Pa、100000Paの圧力では、同様な流量のアセチレンガスに、流量が3slm(標準状態3L/分)窒素ガスを混合して導入し、ボトル内部の圧力をガス排気管に繋がれる吸引ポンプにより調整した。
(ガス供給管の仕様)
供給管本体の形状は、図2や図5に示されるような、外径14mm、内径10mmの円筒形状であり、先端に開口部が形成されて開放状態とされている。供給管本体(ガス供給管)は、プラスチックボトルの口部天面より160mmまで差し込んだ。ガス供給管全体の構成を変えて、下記実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4の10種類のガス供給管を用いて比較・評価した。
[実施例1]
供給管本体の構成材料をフッ素樹脂(テフロン(登録商標))とし、図2に示すように、タングステンからなる直径1mmの細棒部材を、供給管本体の付け根部分からその内部を長手方向に延びるように配設して、ガス供給管を形成した。細棒部材は、プラスチックボトルの口部天面より140mmまで差し込んだ。なお、細棒部材は非接地(アースしない)状態とし、細棒部材の先端は図3(a)に示すように水平切断面とした。
[実施例2]
細棒部材の先端を図3(b)に示すように尖らせた以外は実施例1と同様な構成として、ガス供給管を形成した。
[実施例3]
細棒部材を接地(アース)した以外は実施例1と同様な構成として、ガス供給管を形成した。なお、接地は、取り付け部から導電体を介して接地した。
[実施例4]
細棒部材の先端を図3(b)に示すように尖らせた以外は実施例3と同様な構成として、ガス供給管を形成した。
[実施例5]
供給管本体の構成材料をフッ素樹脂(テフロン(登録商標))とし、図5に示すように、内部にタングステンからなる直径1mmの細棒部材を、供給管本体の胴部からその内部を略直交するように、プラスチックボトルの口部天面より80mmの位置に差し込んで配設して、ガス供給管を形成した。なお、細棒部材は非接地(アースしない)状態とし、細棒部材の先端は図3(a)に示すように水平切断面とした。
[実施例6]
細棒部材の先端を図3(b)に示すように尖らせた以外は実施例5と同様な構成として、ガス供給管を形成した。
[比較例1]
細棒部材を用いなかった以外は実施例1と同様な構成として、ガス供給管を形成した。
[比較例2]
供給管本体の構成材料をフッ素樹脂(テフロン(登録商標))として、実施例1と同様な構成の供給管本体を用い、かかる供給管本体の外面におけるボトル口部天面より80mmの位置に縦方向に、両端を尖らせた長さ30mm、直径1mmのタングステン棒をポリイミドテープによって貼り付け固定して、ガス供給管を形成した。
[比較例3]
供給管本体の構成材料をフッ素樹脂からステンレス鋼に変更した以外は、比較例1と同様な構成として、ガス供給管を形成した。なお、供給管本体は非接地(アースしない)状態とした。
[比較例4]
ステンレス鋼からなる供給管本体を接地(アース)状態とした以外は比較例3と同様な構成として、ガス供給管を形成した。
[試験例1]
着火状態の確認試験:
プラズマ着火状態を目視で確認し、問題なく着火した場合を「○」、着火しなかった場合を「×」として比較・評価した。結果を表1に示す。
(結果)
Figure 2012172208
表1に示すように、実施例1ないし実施例6のガス供給管を用いた場合には、問題なく着火できることが確認できた。
[試験例2]
成膜状態の確認試験:
前記の操作を用いて原料ガスをアセチレンガスとしてDLC(非晶質水素化炭素薄膜)をPETボトルの内面に形成させた場合における成膜状態を観察した。成膜状態は、「着色の均一性」について、DLC被膜の着色のむらを目視して確認するとともに、「被膜の厚さ」を段差膜厚計より測定し、それぞれ下記の評価基準により比較・評価した。なお、プラズマが発生しなかった場合には、評価不能として、「−」で表した。結果を表2(上段:着色の均一性、下段:被膜の厚さ)に示す。なお、プラズマ励起時間(プラズマ処理の時間)は1秒間とした。
(評価基準:着色の均一性)
評 価 内 容
○ : ボトルの内面に対して均一に被膜形成
× : ボトル中央部にのみ被膜形成
(評価基準:被膜の厚さ)
評 価 内 容
厚み大 : 20nm以上
厚み中 : 10nm以上20nm未満
厚み小 : 10nm未満
(結果)
Figure 2012172208
表2に示すように、実施例1ないし実施例6のガス供給管を用いた場合には、着色の均一性が良好であった。また、被膜の厚さも良好で、実施例4については10000Pa、実施例3については1000Paでも、20nm以上の被膜を得ることができた。
[試験例3]
マイクロ波パルス変調試験:
実施例3及び実施例4のガス供給管を用いて、周波数が2.45GHz、出力が3kWのマイクロ波をパルス変調し、パルス状ののこぎり波形状とされたマイクロ波を用いて、のこぎり波のパルス周波数を下記の周波数として、前記の操作を用いて原料ガスをアセチレンガス及び窒素ガス(希釈ガス)としてDLC(非晶質水素化炭素薄膜)をPETボトルの内面に形成させた場合における「ボトルが熱変形しないプラズマ処理の最大時間」、「最大時間における被膜の厚さ」、及び「ボトルへの被膜密着度」を比較・評価した。結果を表3(上段:最大時間(秒)、中段:被膜の厚さ、下段:ボトルの被膜密着度)に示す。なお、ブランクとして、連続波についても同様に評価した。
パルス周波数: なし(連続波)、100Hz、500Hz、1kHz、5kHz、
10kHz、1MHz
パルス波形 : のこぎり波(連続波を除く)
ボトル内圧力: 100000Pa(大気圧)
原料ガス : アセチレン(C
希釈ガス : 窒素(N
なお、被膜の厚さについては前記した試験例2に示した評価基準を用いて評価し、ボトルへの被膜密着度については、セロテープ(登録商標)剥離法を用いて、ボトル内面の被膜にセロテープ(登録商標)を貼り付け、引き剥がしたときの密着度を、下記の評価基準で評価した。「○」と「△」を合格とした。
(評価基準:ボトルへの被膜密着度)
評 価 内 容
○ : 全く剥がれない
△ : 一部剥がれる
× : 全て剥がれる(炭状の微粒子被膜が生成)
(結果)
Figure 2012172208
表3に示すように、連続波と比較して、パルス状ののこぎり波形状とされたマイクロ波は、連続波と比較して熱変形しないプラズマ処理の最大時間が長く、プラズマ温度を低減して、プラスチックボトルの熱変形を防止できることが確認できた。また、特にパルス周波数が500〜5000Hzの範囲では、ボトルへの被膜密着度も優れていた。
本発明は、プラスチックボトル内面に機能性被膜を形成させ、ボトル内面を処理する手段として有利に使用することができる。
1 …… プラスチックボトル内面の処理装置(処理装置)
2 …… ガス供給管
21 … 供給管本体
211 … 開口部
212 … 支持部
22 … 細棒部材
221 … 細棒部材支持部
222 … エッジ(角)
3 …… チャンバー
31 … 台座
32,33 … 側壁
34 … 蓋面
35 … チャンバーの内部
4 …… ボトル固定部
41 … 固定部本体
42 … 天面部
51 … ガス排気管
52 … 圧力調整管
53 … 供給通路
54 … 流量制御弁
55 … パージ管
56 … 流量制御弁
6 …… リング状共振器
61 … スリットアンテナ(スリット)
62 … 伝搬導波管
63 … マイクロ波発振器
B …… プラスチックボトル
BI … プラスチックボトル内面
M …… マイクロ波閉じ込め室

Claims (10)

  1. マイクロ波閉じ込め室の内部に処理対象のプラスチックボトルを配置し、前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入して、前記プラスチックボトルの内部に配置されたガス供給管により供給された原料ガスを含むガスをプラズマ化して、プラスチックボトル内面に処理を施す方法であって、
    筒状の誘電体からなる供給管本体の内部に導電体からなる細棒部材を配置してなる前記ガス供給管に、前記マイクロ波閉じ込め室の周囲に配置され、前記マイクロ波閉じ込め室に対向する面に設けられたスリットアンテナから前記マイクロ波閉じ込め室の内部にリング状共振器によりマイクロ波を導入することにより、前記細棒部材を放電させて前記プラスチックボトルの内部にプラズマを発生させ、
    前記プラズマの発生を前記マイクロ波の導入により維持して、前記ガス供給管により供給された原料ガスを含むガスをプラズマ化することを特徴とするプラスチックボトル内面の処理方法。
  2. 前記プラスチックボトルの内部から前記原料ガスを含むガスが排気されることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックボトル内面の処理方法。
  3. 前記マイクロ波は、パルス状ののこぎり波形状とされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックボトル内面の処理方法。
  4. 前記のこぎり波のパルス周波数は500〜5000Hzであることを特徴とする請求項3に記載のプラスチックボトル内面の処理方法。
  5. 前記細棒部材は、先端が尖っていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラスチックボトル内面の処理方法。
  6. 前記細棒部材は、前記供給管本体の内部を長手方向に延びるように配設されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチックボトル内面の処理方法。
  7. 処理対象となるプラスチックボトルが内部に配置されるマイクロ波閉じ込め室と、前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記マイクロ波閉じ込め室に配置される前記プラスチックボトルの内部に原料ガスを含むガスを供給可能なガス供給管とを備え、前記プラスチックボトルの内部に原料ガスを含むガスを供給し、前記プラスチックボトル内面に処理を施す装置であって、
    前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波閉じ込め室の周囲に配置され、前記マイクロ波閉じ込め室に対向する面に設けられたスリットアンテナから前記マイクロ波閉じ込め室の内部にマイクロ波を導入するリング状共振器を含み、
    前記ガス供給管は、筒状の誘電体からなる供給管本体の内部に導電体からなる細棒部材を配置してなることを特徴とするプラスチックボトル内面の処理装置。
  8. 前記プラスチックボトルの内部から前記原料ガスを含むガスを排気する排気手段を備えることを特徴とする請求項7に記載のプラスチックボトル内面の処理装置。
  9. 前記細棒部材は、先端が尖っていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のプラスチックボトル内面の処理装置。
  10. 前記細棒部材は、前記供給管本体の内部を長手方向に延びるように配設されることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のプラスチックボトル内面の処理装置。
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