JP2007191797A - 被膜形成装置及び被膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】5〜150Torrの中圧力において被膜を形成する装置とその方法を提供する。
【解決手段】放電空間において発生したラジカルが基板表面に達するまでの間、周辺の雰囲気の影響を受けないように放電空間を包むようにパージガスで遮蔽を施す。磁場をバイアス電圧をプラズマに作用させることにより、該ラジカルが基板表面に到達し易くなり、到達したラジカルにより基板表面において被膜形成反応を促進させる。
【選択図】図1

Description

本発明は5〜150Torrの中圧力雰囲気に於て被膜を形成することのできる被膜形成方法と装置に関するものである。それにより、真空ポンプ等の排気装置が簡略化され低コストの被膜形成装置を提供することができる。被膜は硬質炭素、窒化珪素、酸化珪素等の被膜を成膜することができ、これらの被膜はプラスチック、ガラス、有機感光体等の表面硬質化、表面改質、反射防止等に応用することができ、その応用範囲は多岐にわたる。本発明はこれらの被膜を安価に、大量に生産する方法と装置を提供するものである。
現在、硬質炭素、窒化珪素、酸化珪素等の新機能材料被膜はプラズマCVD(化学気相合成法)法を利用して作成される場合が多く、これらの方法のほとんどは1Torr以下の減圧状態を利用する。減圧状態を用いることの主な利点としては、
(1)大気中に含まれる酸素等の不純物の影響が取り除かれる。
(2)プラズマの場合、安定なグロー放電が広い領域で得られ易い。
(3)平均自由行程が長いため膜厚均一性やステップガバレッジを向上させ易い。
といった点が挙げられる。しかし、1Torr以下の減圧状態を得るには高価な真空排気装置と真空状態に耐える充分な強度を有した真空容器が必要である。
一方1Torr以上の圧力、例えば50Torr程度の圧力でプラズマを生成させることもできるが、狭い反応空間に大きなエネルギーを投入する必要があり生産性やコスト、さらには使いやすさの点で問題がある。
一般に不純物の混入を極度に嫌う半導体分野では高純度を達成する必要があり、また付加価値の高い製品の価格に高価な設備償却費を転嫁させやすい事情もあるため、これら被膜は前述の如くプラズマCVD法により作製されていた。一方、プラスチック、ガラス、有機感光体等の表面硬質化、表面改質、反射防止等の目的に薄膜を形成する場合にはさほどの高純度は要求されず、むしろ高価な設備を使用することによるコスト高が問題となる。即ち、性能とコストを最適化する必要がある。
一方、真空排気装置を必要としないプラズマ処理は一部知られており、エッチングに応用したものには特願平2−286883がある。これは、送流状態にあるヘリウムを主成分とするガスがほぼ大気圧に等しい圧力で充満された空間に交流の電界を印加し、前記ガスと前記ガス中に添加されたハロゲン系エッチングガスを電離して励起子を生成し、エッチングに供するものである。また、ヘリウムを主成分とするガスの放電を薄膜堆積に応用しようとする方法も知られている。(第37回応用物理学関係連合講演会講演予稿集第2分冊28p−ZH−10)
しかしながらこの研究は反応空間をヘリウムを主成分とするガスで置換する必要があるため、反応空間を一度真空に排気する行程を経ねばならない。またプラズマの発生が極めて狭い微少領域で行われるため、生産性に問題がある。さらにプラズマの発生が不安定であるという問題がある。
本発明は、プラズマ発生装置において、(1)大掛かりな真空排気装置を必要とないこと、(2)大きな放電空間を得ること、(3)プラズマを有効に利用することを実現することを目的とする。
本発明は、放電空間をパージガスで包むように覆い、該放電空間と基体の間にスパッタを生じるようなバイアスを印加し、さらに、プラズマ中の各種粒子が基体の方向に引き出されるように磁場を印加したことを特徴とする。
本発明の被膜形成方法は、5〜150Torrの中圧力で行うことによりコストの低減を計るものであり、簡単な真空排気装置、さらには簡単な真空容器で実用になるという特徴がある。
本発明においてはプラズマを生成させるガスとして稀ガスを用いることが特徴である。この稀ガスとして、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオンを用いることができる。
またこの稀ガスに各種原料ガスを添加することにより、成膜、エッチング、アッシング等の各種プラズマ処理を行うことができる。原料ガスの濃度は希ガスに対して5%以下、好ましくは1%以下がよい。
原料ガスは、行われるプラズマ処理の種類によって決められる。例えば、硬質炭素膜を形成する場合はメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、メチルベンゼン等の炭化水素系ガス、及び4弗化炭素、4塩化炭素、フロロベンゼン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素、ハロゲン化炭化水素系ガス、エタノール、メタノール等アルコール類等炭素を含むガスを用いることができる。
また、一分子中の炭素原子の多いものほど反応速度が速いという傾向があるので、メタンよりはエチレン、エチレンよりはアセチレンの方が望ましく、ベンゼン等芳香族系分子がより望ましい。
さらに、成膜速度は原料ガスにハロゲン系元素が含まれる場合に大きくなる。これは、ハロゲン系元素例えば弗素が、触媒的に作用し、炭化水素分子の水素をHFの形で引き抜き、よって、炭化水素分子が活性化されやすくなるためである。ハロゲン系元素は4弗化炭素、4塩化炭素、フロロベンゼン、クロロベンゼン等の炭素化合分子として供給されても、また、3弗化窒素、6弗化硫黄、6弗化タングステン、弗素ガス等の状態で供給されてもよい。
尚、原料ガス中に窒素、ボロン、リン等のIII-V族元素を含んだガスを添加すると、硬質炭素膜は若干の導電性を示すようになり、静電気対策に有用な被膜を得ることができる。例えば、エチレン、メチルベンゼン等炭化水素ガスに3弗化窒素を添加すると成膜速度の高い、半絶縁体の(即ち静電対策の施された)硬質炭素膜を得ることができる。また、原料ガス中に水素を混合すると硬質炭素膜中の未結合手に水素がターミネートされ、また、未反応のsp、sp2結合が水素の作用によりsp3結合になり易く、そのため硬質炭素膜はより硬く、透明度も高くなる。
形成する被膜が窒化珪素の場合は原料ガスとしてシラン、ジシラン等シラン系ガス及び窒素ガス、アンモニアガス等窒素源を用いることができる。酸化珪素の場合はシラン系ガス及び酸素、N2 O等を用いることができる。
また、反応中の成膜前駆体の衝突確率を低下させ、これにより粉の発生を抑制する目的で原料ガスに水素ガスを緩衝ガスとして混合することもできる。
これら原料ガスは反応空間に稀ガスとともに導入され、プラズマ化した反応ガスによって活性化される。反応空間は1個もしくは複数個の電極が存在し、該電極と外側に配置されたシールドとの間には絶縁体が配置された構成となっている。前記電極にはシールドとの間に20kHz以上の交流電界を印加し、前記電極と絶縁体を介したシールドとの間にプラズマを発生させる。このプラズマはグロー放電もしくはコロナ放電により発生する。前記絶縁体と20kHz以上の周波数はアーク放電防止の為である。低い周波数で電力を多く投入しようとするとアーク放電が発生する。アーク放電が発生すると電極及び絶縁体が損傷し、また、電子温度が低下する。よって、正常な被膜形成ができなくなる。アーク放電に移行させずより大きな電力を投入するには、電源周波数を上げればよい。これは高周波コロナにおいて高い電力が投入されることと同じ原理である。即ち、空間の静電容量を通して高周波電流が流れ、等価回路的には直列に接続された抵抗体であるプラズマにおいて損失が発生(実効電力が消費)することに相当する。
電源周波数として、一般に13.56 MHzが利用されるが、マイクロ波の領域まで周波数を高くすると更に効率よく電力を投入することができる。ただしマイクロ波を用いた場合、導波路や電極に工夫をする必要がある。即ち、放電空間自体を損失の存在する導波路とみなし、各接続点で反射が発生しない様にインピーダンスの整合をとるような形状、材質等を選ばねばならない。
また、放電空間に供給する電力はパルスもしくは矩形波変調された高周波であってもかまわない。デューティーが50%以下であると、放電開始初期のプラズマとアフターグローの影響が大きくなって、連続放電時とは違った性質を発生する。放電開始初期はプラズマのインピーダンスが高く、(放電開始初期の過渡期はまだプラズマと言えるかどうか確かではないが、ここでは暗流以上の放電電流が流れたときよりプラズマ化するとしている。)よって、空間中に掛かる電圧は高くなる。即ち、プラズマ中の電子1個当りの得るエネルギーが大きく、電子温度は高くなる。この時プラズマ空間中に存在する原料ガスは効率よく励起される。次に、印加電力が停止したときよりプラズマはアフターグローとなるが、この時、空間に印加される外部電界は存在せず、空間内に存在する内部電界のみとなる。この内部電界もアフターグロー中のイオンと電子の再結合により急速に消滅してしまう。連続放電では基体表面の微小な突部の電界集中により、選択的に膜成長が起こり、ピンホールやボイドの原因となっていたのがアフターグロー放電においては基体表面の微小な突部への電界集中は起こらず、よって、ピンホールやボイドのない良質な被膜が形成される。即ち、パルスもしくは矩形波変調された高周波を用いると効率よく活性化されたクラスター等成膜前駆体が均一に基体表面に付着するため、成膜速度の高い良質な被膜を得ることができる。尚、パルス周期はアフターグローの消滅する時間に等しい数ミリ秒程度が適当である。
本発明の放電空間の形状は最も簡単なもので同心円筒状とすることができる。これは円筒状の接地された外側電極と該円筒電極の中心に配置された円柱電極の間に円筒状絶縁体を配し、前記中心部の円柱電極と前記接地された外側電極の間に交流電界を印加して、前記円筒状絶縁体と前記中心円柱電極間の隙間にプラズマを発生させるものである。前記円筒状絶縁体と前記中心円柱電極間の隙間は5mm〜50mm程度とすればよい。同心円筒状は例えて言えば点光源の如きもので、移動させることによって被膜が形成される。よって広い面積の基体に被膜を均一に成膜しようとすれば、基体もしくは被膜形成装置を移動させる必要がある。基体が平面の場合は2軸駆動装置(X−Yテーブル)を組み合わせればよい。更にあと1軸追加して(X−Y−Zテーブル)、コンピューター等で制御すれば任意の曲面に成膜することが可能である。
他の形状としては直線状、ドーナツ状等がある。直線状放電装置は前記同心円筒状(点状)装置をアレイ状に配置しても良いし、また、直線状電極に隙間を絶縁体および外側電極(接地電位)との間に設け、該隙間を直線状放電空間としても良い。基体が平面の場合、直線状放電装置であれば基体もしくは被膜作製装置の移動は一軸のみでよい。基体がドラム状態の場合はドーナツ状被膜形成装置が都合がよい。ドーナツ状被膜形成装置は前記直線状放電装置の両端を閉じて構成される。
使用するパージガスとしては、非酸化性の気体が使用される。例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン等が代表的である。これら気体の役目は放電領域と周辺雰囲気との遮蔽である。このパージガスの導入方法としては放電領域を取り囲むように例えば前述の点状の膜の形成の場合では、外側電極を取り囲むようにその外側に導出用のノズルまたは導出口を設け、放電領域を取り囲むようにパージガスを導入する。この際、パージガスの量は放電雰囲気ガスより相当多く導入され、かつパージガス自身が放電しないように、高めの圧力で導入することがよい。
プラズマを有効利用するためには、イオン、ラジカル、膜前駆体等を被膜表面に積極的に輸送する必要がある。大気圧放電によりできた放電雰囲気ガスのプラズマ中の活性種を被膜形成用基体まで確実に輸送する為の工夫として、本発明では基体へのバイアス電界の印加と放電プラズマへの磁界の印加を行う。プラズマに対して磁界を印加する手段としては種々の方法がある。例えば、放電装置に対抗した位置の被膜形成用基体の背面に一般に知られている永久磁石を設置したり、放電装置の放電領域近傍にソレノイドコイルを設け磁界を印加すること、およびそれらの組み合わせがある。いずれの場合にも、印加される磁界の方向は放電によりできた放電雰囲気ガスのプラズマ中の活性種を被膜形成用基体まで確実に輸送するようにこれらの磁場発生手段が設けられる。このプラズマへの磁場の印加は主として、スピンを持ったラジカル種、電子およびイオン化した活性種を基体の被膜形成面にまで到達させる作用として機能する。これにより、基体表面付近の活性種の密度が高められる。磁場の強さは強い方が良く、200ガウス以上、好ましくは500ガウス以上が良い。
一方、基体へのバイアス電界印加の方法としては、基体と放電電極間に直流または高周波の電源によりバイアスを印加する方法を挙げることができる。このバイアス電界によりプラズマ中のイオン活性種が基体側に引き寄せられ、基体付近では高エネルギーのイオンの密度が高められる。そしてこのイオンより原料ガスがエネルギーを受取りラジカル種の密度が基体付近で高められることになる。
また、このバイアス電界により、イオンが基体に衝突することになる。この衝突によりイオンより基体にエネルギーが渡され、基体のごく表面に近い部分の温度が高くなり、被膜の基体との密着性が向上し、基体表面での膜形成の反応が促進される。即ち、バイアス電界により基体に移動されたイオンによって、基体加熱と同じ効果を実現することができる。尚、基体と放電電極間の距離が変化すると基体に加わるバイアス電界の効果は著しく変化する。その為、基体と放電電極間の距離は常に一定に保たれる必要がある。よって距離測定装置及び距離制御機構が必要である。
バイアス電界の周波数はプラズマ中のイオン密度で決まるイオンプラズマ周波数より低い周波数である必要がある。イオンプラズマ周波数より低い周波数であればバイアス電界によりイオンは振動し、その運動エネルギーを基板に伝えられるからである。一般に1MHz以下が適当である。
これらの工夫により空間中で発生したラジカルは基板表面に確実に輸送され、また、基板表面での反応は促進される。
5〜150Torrno減圧下においてヘリウムを主成分とするガスを放電せしめ、該ガス中に原料となるガス(硬質炭素膜の場合はメタン、水素等)を混合し、同時に該放電を包むように窒素等でパージを行い、磁場とバイアス電圧を加えることにより、従来粉の発生が著しくまた成膜速度が遅かったのが、粉の発生もなく、成膜速度の高い良質の被膜を形成することが可能となった。
本実施例では点状装置と該装置による被膜形成方法について述べる。図1に装置断面図およびガス系、電気系の系統図を同時に示す。中心導体(201)、円筒絶縁体(202)、パージガスノズル(203)は同軸に配置され、中心導体(201)は絶縁支持体(204)に支持されている。中心導体(201)、パージガスノズル(203)はステンレス、円筒絶縁体(202)は石英ガラス、絶縁支持体(204)はテフロン(登録商標)で構成されている。パージガスノズル(203)は同軸円筒2重構造になっており、2重構造の間にパージガスを導入し、吹き出し口(206)よりパージガスを噴出させる。吹き出し口(206)は外周方向に吹き出すように外向きになっている。中心導体(201)と円筒絶縁体(202)の間で放電が発生し、ラジカルを生成する。発生したラジカルは基板(271)の方向にガス流によって運ばれるが、本発明では更にソレノイド(261)及び永久磁石(262)を各々装置外周及び基板ホルダー(270)裏側に配し、ラジカルを磁束に沿って基板(271)の方向に引き出している。中心導体(201)の外径は5mm、円筒絶縁体(202)の内径及び外径は各々20mm、21mmである。また、放電空間の長さは40mmである。
基板(271)はポリカーボネートを用い、常磁性体であるステンレス製の基板ホルダー(270)の上に設置した。基板(271)は積極的に加熱していない。放電空間端から基板表面までの距離は1mmとした。
また装置は簡単な真空容器に入れられており、放電空間における圧力が5〜150Torr、本実施例では100Torrとなるように真空排気が行われている。この真空容器は多少のリークがあるのでもよい。特に本実施例の構成においては、パージガスの作用によって、反応生成物が成膜される領域を囲まれる構成となるので、リークによる空気の混入に起因する膜質の低下を防ぐことができる。
放電空間内に導入されるガスは原料ガスボンベ(211)より調圧器(221)により調圧され、ストップバルブ(231)を介して流量制御器(241)により流量を制御された原料ガスと、同様にヘリウムガスボンベ(212)より調圧器(222)により調圧され、ストップバルブ(232)を介して流量性制御器(242)により流量を制御されたヘリウムガスが混合され、放電空間内に導入される。原料ガスボンベ(211)には水素ガスでバランスされた10%メタンガスが充填されている。ヘリウムと原料ガスの混合比は99対1とした(原料ガス1%)。ヘリウムと原料ガスの総流量は100sccmである。
中心導体(201)に供給される電力はブロッキングコンデンサ(253)を介して高周波電源(251)より供給される。電源周波数は13.56MHz、実効投入電力は50Wである。また、本発明の特徴であるバイアス電圧をバイアス電源(252)より高周波阻止コイル1(255)、高周波阻止コイル2(256)を介して印加した。バイパスコンデンサ(254)は高周波阻止コイル1(255)を通過した高周波電力を逃がし、バイアス電源(252)を保護する役割を持っている。本実施例では印加したバイアスは直流とし、電圧は基板ホルダーに対して−100Vとした。このバイアス電源は交流とするこもできる。
パージガスはボンベ(213)より調圧器(223)により調圧され、ストップバルブ(233)を介して流量制御器(243)により流量を制御されてパージガスノズルに供給される。本実施例ではパージガスは窒素を用いた。流量は1000sccmである。
前述のような装置と方法によりポリカーボネート基板(271)上に硬質炭素膜が成膜された。被膜の成膜速度は放電領域開口部の直下で0.1μm/minとでありながら、粉の発生は殆ど無く、ピンホールの少ない良質な膜であった。尚、微小押し込み硬度計による硬度測定値は約3000kgf/mm2 であり、分光透過率測定における可視域での透過率は90%以上とほぼ透明に近いものであった。また、FT−IR、ラマン分光測定等によれば、sp3結合とsp2結合の比は1.6対1とダイヤモンドに近い構造を有していることが分かった。
尚、本実施例では被膜形成装置を移動させることはしなかったが、平面上を等速度で走査させれば、大面積の基板にも均一に被膜を形成できることは言うまでもない。
『比較例1』 本比較例では実施例1における磁場のない場合について述べる。成膜等の条件は磁場のないことを除き実施例1と同じである。この方法による形成された被膜は比較例1と比べて硬度測定値、透過率は殆ど変わらないものの、成膜速度は若干小さくなり、粉の発生が多く見られた。
『比較例2』 本比較例では実施例1におけるバイアスのない場合について述べる。成膜等の条件はバイアスのないことを除き実施例1と同じである。この方法による形成された被膜は比較例1と比べて硬度は減少し、透過率は向上した。また、粉の発生は『比較例1』同様多く見られた。成膜速度の変化は見られなかった。
『比較例3』 本比較例では実施例1におけるパージガスのない場合について述べる。成膜等の条件はパージガスのないことを除き実施例1と同じである。この方法による形成された被膜は放電領域開口部の直下に被膜が形成されたのみで、成膜速度は半分以下に低下した。これは外部から混入した酸素により外周部近傍の被膜がエッチングされたものと思われる。尚、硬度、透過率に変化は見られなかった。
本実施例では円筒状基体に硬質炭素膜を形成する場合を述べる。図2に装置の外観を図示する。架台(4)に固定された上下機構(3)に被膜形成装置(2)が取りつけられ、被膜形成装置(2)の内側に円筒状基体(1)が設置されている。被膜形成装置内部の放電開口部は内周に向かっており、よって、基体表面に被膜が形成される。上下機構(3)は成膜速度に応じた速度で等速度に上下に運動する。図3に基体と被膜形成装置の断面図を示す。放電電極(1)、絶縁体(2)、パージノズル(3)及び電極支持対(4)を有した構造となっており、基本的には実施例1と同じである。磁石(61)によりラジカルを基板(70)の表面に輸送する。ガス比、ガス流量、電源周波数、バイアス電圧を実施例1と同じにし、投入電力を2W/mm(円周40mmの場合は80W)とした。得られた被膜の硬度、透過率、sp3対sp2比、成膜速度等の被膜特性は実施例1とほぼ同じであり、また、粉の発生も見られなかった。
同軸円筒状被膜形成装置の断面図とガス及び電気系の系統図を示す。 円筒基体成膜用装置の外観図を示す。 円筒基体成膜用装置の放電部の断面を示す。
符号の説明
201 中心導体
202 円筒絶縁体
203 パージガスノズル
204 絶縁支持体
261 ソレノイド磁石
262 永久磁石
211 原料ガスボンベ
212 ヘリウムボンベ
213 パージガスボンベ
251 高周波電源
252 バイアス電源
261 ソレノイド磁石
262 永久磁石
270 基板ホルダー
271 基板

Claims (10)

  1. 5〜150Torrの圧力に保持可能な放電空間、前記放電空間を包むように配置したパージガスノズル、前記放電空間に磁場を印加する手段及び基体にバイアス電界を印加する手段を有し、
    前記パージガスノズルの噴出し口から外周方向に吹き出したパージガスが前記放電空間を周辺雰囲気より遮蔽することを特徴とする被膜形成装置。
  2. 5〜150Torrの圧力に保持可能な放電空間、前記放電空間を包むように配置したパージガスノズル、前記放電空間に磁場を印加する手段及び基体にバイアス電界を印加する手段を有し、
    前記放電空間の中心に配置された放電電極に電力を供給する第1の電源及び前記基体にバイアス電界を印加するための第2の電源を有し、
    前記パージガスノズルは、前記パージガスノズルの噴出し口から外周方向にパージガスを吹き出すことを特徴とする被膜形成装置。
  3. 請求項1または請求項2において、前記放電空間に磁場を印加する手段の一つは、ソレノイドコイルであることを特徴とする被膜形成装置。
  4. 放電空間を包むように外周方向にパージガスを導入する工程と、
    前記放電空間に稀ガス及び原料ガスを導入し、5〜150Torrの圧力に保持する工程と、
    前記放電空間において前記原料ガスを活性化する工程と、を有し、
    前記パージガスが前記放電空間を周辺雰囲気より遮蔽した状態で基体の表面に被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。
  5. 放電空間を包むように外周方向にパージガスを導入する工程と、
    前記放電空間に稀ガス及び原料ガスを導入し、5〜150Torrの圧力に保持する工程と、
    前記放電空間において前記原料ガスを活性化する工程と、を有し、
    前記放電空間に磁場を印加しつつ、基体にバイアス電界を印加することにより前記活性化した原料ガスを前記基体の表面に輸送することを特徴とする被膜形成方法。
  6. 請求項4又は請求項5において、前記原料ガスは炭素を含むガスであることを特徴とする被膜形成方法。
  7. 請求項4乃至請求項6のいずれか一項において、前記原料ガスはハロゲン元素を含むガスであることを特徴とする被膜形成方法。
  8. 請求項4乃至請求項7のいずれか一項において、前記原料ガスは窒素、ボロン、又はリンを含むガスであることを特徴とする被膜形成方法。
  9. 請求項4乃至請求項8のいずれか一項において、前記パージガスは非酸化性のガスであることを特徴とする被膜形成方法。
  10. 請求項4乃至請求項9のいずれか一項において、前記基体は円筒状基体であることを特徴とする被膜形成方法。
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