JP2012171944A - θ波発現増強剤 - Google Patents

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Kuniyoshi Shimizu
邦義 清水
Eri Matsubara
恵理 松原
Koichiro Onuki
宏一郎 大貫
Ryuichiro Kondo
隆一郎 近藤
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Abstract

【課題】仕事や勉強等の作業により向上した覚醒状態や自律神経の緊張状態を、作業終了後に速やかに低下ないし緩和させるための手段を提供する。好ましくは、仕事や勉強等の作業中はその作業効率に悪影響を与えることなく、作業終了後には向上した覚醒状態や緊張状態を心身ともに速やかに低下ないしは緩和して、リラックス状態や安眠に導くための手段を提供する。
【解決手段】酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、または安静時に交感神経活動の低下を増強する作用を発揮する製剤、及びそれを含む機能製品。
【選択図】なし

Description

本発明はθ波発現増強剤に関する。詳細には、本発明は、仕事や勉強などの緊張状態から開放されたとき、すなわち安静時にθ波の発現を速やかに促進し誘導するθ波発現増強剤に関する。好ましくは、本発明は、仕事や勉強等の作業効率を低下させることなく、当該作業が終了した後にθ波の発現を速やかに促進し誘導するθ波発現増強剤に関する。
また、本発明は、仕事や勉強などによって向上した覚醒状態や自律神経の緊張状態を、速やかに低下若しくは緩和するために用いられる、覚醒状態低下剤及び自律神経緊張緩和剤に関する。
(-)-酢酸ボルニル(図1)は、マツやモミなどのマツ科樹木の針葉から採る精油に多く含まれる成分の一つであり、松葉の爽やかな香りを有し、“森の香り”とも呼ばれる成分である(非特許文献1及び2)。また、オミナエシ科のバレリアン(和名;西洋カノコソウ)の根の抽出物や精油の主成分の一つとしても知られる(非特許文献3)。(-)-酢酸ボルニルには抗炎症作用(非特許文献4)と鎮静作用(非特許文献5)が報告されており、マツ科樹木の精油には鎮静作用(非特許文献6)、バレリアン根の抽出物には睡眠促進効果(非特許文献7及び8)が以前からよく知られている。しかしながら、(-)-酢酸ボルニルを吸入することによる人の生理心理学的な影響についてはこれまでに報告されていない。(-)-酢酸ボルニルは爽やかな印象を持つ香料であることから、ウッディーな香りの商品を作る際、例えば石鹸や入浴剤、ルームフレグランスなどを作る際などによく使われ、特に男性用化粧品に使われることが多いとも言われる。
近年の社会は、スピード社会とも言われ、効率化・IT化を追求するあまり、作業環境が劇的に変化し、長時間の集中力を要する仕事も増加しつつある。加えて、自動化されたシステム内での検査作業や監視作業も多く、注意を特定の対象に集中し、警戒態勢を持続的に保つことが求められている。特に操作監視システムや工場の品質管理、長距離ドライバなどの職種にとっては、長時間に渡る集中力が要求される。そのような社会環境においては、作業効率を長時間維持することが求められており、本発明者らは、一部の植物揮発成分にかかる所望の作用があることを既に報告している(非特許文献9)。
一方で、急激に変化する労働形態や作業環境により、過度の集中力が要求され、その状況に適応できず、鬱や睡眠障害などの精神疾患が引き起こす労働者も増加していることも問題となっている(非特許文献10〜12)。
植物の揮発成分が持つ薬理学的、治療的な可能性についてはこれまでに広く議論されており(非特許文献13)、特にメンタルヘルスに関わる問題は、昨今の労働状況の変化も反映し、社会的な関心が高い。最近では、ストレスを和らげ、仕事の能率を向上させることを目的として、作業環境に人工的に香りを発生させる機械を導入する手法も取り上げられつつある(非特許文献1及び14)。
しかしながら、仕事や勉強などの作業中はその作業効率を落とすことなく作業に集中でき、作業が終了した後には、作業中に向上した覚醒状態や緊張状態から心身を速やかに開放し、リラックス状態に導くことができる方法は、未だ知られていない。
谷田貝光克、森と一緒に生きてみる!, p. 98-99, 中経出版, 東京 (2006). Surburg H., Panten J. Common fragrance and flavor materials: preparation, properties, and uses. 5th, Completely Revised and Enlarged Edition, p. 226, Wiley-VCH, U.S.A.(2006) Bos R., Woerdenbag H.J., Hendriks H., Scheffer J.J.C. Flavor. Frag. J. 12, 359-370 (1997) Tung Y., Chua M., Wang S., Chang S. Bioresour. Technol. 99, 3908-3913 (2008) Buchbauer G., Jirovetz L., Jager W., Plank C., Dietrich H. J. Pharm. Sci. 82, 660-664 (1993) Lim W.C., Seo J.M., Lee C.I., Pyo H.B., Lee B.C. Arch. Pharm. Res. 28, 770-774 (2005) Houghton P.J. J. Pharm. Pharmacol. 51, 505-512 (1999) Gyllenhaal C., Merritt S.L., Peterson S.D., Block K.I., Gochenour T. Sleep Med. Rev. 4, 229-251 (2000) 松原恵理、深川未央、岡本剛、福田淳子、林ちか子、大貫宏一郎、清水邦義、近藤隆一郎、Aroma Res. 44, 370-379 (2010). Akerstedt T., Fredlund P., Gillberg M., Jansson B. J. Psychosom. Res. 53, 585-588 (2002) Hayashi M., Chikazawa Y., Hori T. Ergonomics 47, 1549-1560 (2004) Haslam C., Atkinson S., Brown S.S., Haslam R.A. J. Affect. Disord. 88, 209-215 (2005) Edris A.E. Phytother. Res. 21, 308-323 (2007). におい・かおり環境協会編集委員会. におい・かおり環境学会誌. 40, 425-437 (2009). 清水邦義ら、Aroma Res. 39, 211-216 (2009) Cantero J., Atienza M., Stickgld R., Kahana M.J., Madsen J.R., Kocsis B. J Neurosci. 26, 10897-10903 (2003) Haze S., Sakai K., Gozu Y. Jpn. J. Pharmacol. 90, 247-253 (2002) Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing Electrophysiology. Circulation 93, 1043-1065 (1996) Warm J.S., Dember W.N., Parasuraman R. J Soc Cosmet Chem 42, 199-210 (1991) Gould A., Martin G.N. Appl. Cognit. Psychol. 15, 225-232 (2001) Jones K.S., Ruhl R.L., Warm J.S., Dember W.N. Automation technology and human performance: current research and trends. p. 193-197. Mahwah, New Jersey (1999) Lipsitz L.A., Mietus J., Moody G.B., Goldberger A.L. Circulation 81, 1803-1810 (1990). Shannon D.C., Carley D.W., Benson H. Am. J. Physiol. 253, H874-H877 (1987).) Zhong X., Hilton J., Gates G.J., Jelic S., Stern Y., Bartels M.N., DeMeersman R.E., Basner R.C. J. Appl. Physiol. 98, 2024-2032 (2005)
本発明は、上記状況に鑑み、仕事や勉強等の作業により向上した覚醒状態や自律神経の緊張状態を、作業終了後に速やかに低下ないし緩和させるための手段を提供することを課題とする。より好ましくは、本発明は、仕事や勉強等の作業中はその作業効率に悪影響を与えることなく、作業終了後には、向上した覚醒状態や緊張状態を心身ともに速やかに低下ないしは緩和して、リラックス状態や安眠に導くための手段を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、日夜鋭意検討を重ねていたところ、香気成分の一種である酢酸ボルニルを、仕事や勉強等の作業期間中、ヒトに嗅がせることで、かかる作業により向上した覚醒状態や自律神経の緊張状態が、作業終了後に速やかに低下ないし緩和することを見出し、当該酢酸ボルニルの作用が、作業終了後の脳波の一種であるθ波の発現を酢酸ボルニルが誘導若しくは増強すること、また作業終了後の交感神経活動の低下を酢酸ボルニルが誘導若しくは増強することに起因していることを確認した。
また、本発明者らは、被験者に提示する酢酸ボルニル濃度を、716.3μg/40Lよりも低く、好ましくは500μg/40L程度以下に調整することで、仕事や勉強等の作業期間(活動期間)中の作業効率に悪影響を与えることなく、作業終了後に、上記効果が速やかに発揮されることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を有するものである。
(I)θ波発現増強剤
(I-1)酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用を有するθ波発現増強剤。
(I-2)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有しない、(I-1)記載のθ波発現増強剤。
(I-3)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有するθ波発現増強剤であって、当該揮発成分が酢酸ボルニルの安静時におけるθ波発現増強作用を損なわないものである(I-1)記載のθ波発現増強剤。
(I-4)上記揮発成分が、さらに、作業期間(working time, active time)にθ波発現を誘導する作用を有しないものである(I-3)記載のθ波発現増強剤。
(I-5)大気中の酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、(I-1)〜(I-4)のいずれかに記載のθ波発現増強剤。
(I-6)酢酸ボルニルが(-)-酢酸ボルニルである、(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載のθ波発現増強剤。
後述する実験例(図6-B)に示すように、酢酸ボルニルは、常にθ波の発現を増強するように作用するのではなく、作業中はθ波に殆ど影響を与えず、作業終了後においてθ波の発現を早めるとともに高める作用(つまり、θ波の発現を増強する作用)を有する。このため、上記本発明の「θ波発現増強剤」は、「θ波発現誘導を制御(コントロール)する剤」という意味で「θ波発現誘導制御剤」と言うこともできる。一方、図6-Aに示すように、酢酸ボルニルは、α波に対しては作業中も作業後も殆ど影響しない。このため、上記作用はθ波において生じる酢酸ボルニル特有の作用である。
(II)覚醒状態低下剤
(II-1)酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用を有する覚醒状態低下剤。
(II-2)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有しない、(II-1)記載の覚醒状態低下剤。
(II-3)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有する覚醒状態低下剤であって、当該揮発成分が酢酸ボルニルの安静時におけるθ波発現増強作用を損なわないものである(II-1)記載の覚醒状態低下剤。
(II-4)上記揮発成分が、さらに、作業期間(working time, active time)にθ波発現を誘導する作用を有しないものである(II-3)記載の覚醒状態低下剤。
(II-5)大気中に揮散する酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、(II-1)〜(II-4)のいずれかに記載の覚醒状態低下剤。
(II-6)酢酸ボルニルが(-)-酢酸ボルニルである、(II-1)〜(II-5)のいずれかに記載の覚醒状態低下剤。
θ波は、覚醒と睡眠の間の状態、つまり意識レベルが低下して眠くなると発現してくる脳波である(非特許文献16:Cantero J., Atienza M., Stickgld R., Kahana M.J., Madsen J.R., Kocsis B. J Neurosci. 26, 10897-10903 (2003))。つまり、θ波発現と意識レベル(覚醒状態)の低下は連動していると考えられる。前述するように、酢酸ボルニルは作業終了後の回復期にθ波の発現を増強するため、それに伴い、意識レベル(覚醒状態)を低下させるものと考えられる。また、前述するように、酢酸ボルニルは、常にθ波の発現を増強するように作用するのではなく、作業中はθ波に殆ど影響を与えず、作業終了後においてθ波の発現を早めるとともに高める作用(つまり、θ波の発現を増強する作用)を有する。このため、上記本発明の「覚醒状態低下剤」は、「覚醒状態の低下を制御(コントロール)する剤」という意味で「覚醒状態低下制御剤」と言うこともできる。
(III)自律神経の緊張緩和剤
(III-1)酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時に交感神経活動の低下を増強する作用を有する自律神経緊張緩和剤。
(III-2)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有しない、(III-1)記載の自律神経緊張緩和剤。
(III-3)酢酸ボルニル以外の揮発性成分を含有する自律神経緊張緩和剤であって、当該揮発成分が酢酸ボルニルの安静時における交感神経活動の低下増強作用を損なわないものである(III-1)記載の自律神経緊張緩和剤。
(III-4)上記揮発成分が、さらに、作業期間(working time, active time)に交感神経活動の低下を誘導する作用を有しないものである(III-3)記載の覚醒状態低下剤。
(III-5)大気中の酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、(III-1)〜(III-4)のいずれかに記載の自律神経緊張緩和剤。
(III-6)酢酸ボルニルが(-)-酢酸ボルニルである、(III-1)〜(III-5)のいずれかに記載の自律神経緊張緩和剤。
後述する実験例(図4及び図5-B)に示すように、酢酸ボルニルは、作業終了後に速やかに、心拍数の顕著な減少を誘導するとともに(図4に示す心電図のR波の間隔の増加は心拍数の減少を示す)、交感神経活動を低下させる(図5-Bに示すLF(低周波成分)/HF(高周波成分)比は、交感神経活動の指標になる)。これは、作業終了による心血管系循環の緊張状態の緩和が、酢酸ボルニルによって促進され且つ高まったことによるものと考えられる(自律神経の緊張状態の緩和を増強する作用)。
酢酸ボルニル、特に低濃度(279.4μg/40L)の酢酸ボルニルは、自律神経の緊張状態を常に緩和するように作用するのではなく、作業期間(working time, active time)中は殆ど影響を与えず、作業終了後の安静時において自律神経の緊張状態の緩和を増強する作用を有する。このため、上記本発明の「自律神経緊張緩和剤」は、「自律神経の緊張緩和を制御(コントロール)する剤」という意味で「自律神経緊張緩和制御剤」と言うこともできる。
(IV)機能製品
(IV-1)上記(I-1)〜(I-6)に記載するθ波発現増強剤、(II-1)〜(II-6)に記載する覚醒状態低下剤、及び(III-1)〜(III-6)に記載する自律神経緊張緩和剤からなる群から選択される機能剤を含有する、機能製品。
(IV-2)θ波発現増強剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波発現増強作用を発揮する作用、覚醒状態低下剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、または自律神経緊張緩和剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時に神経活動の低下を増強する作用を発揮する、(IV-1)に記載する機能製品。
(IV-3)θ波発現増強剤、覚醒状態低下剤、または自律神経緊張緩和剤以外の成分として、酢酸ボルニルに起因する作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用))を損なう成分を含有しないことを特徴とする、(IV-1)または(IV-2)に記載する機能製品。
(IV-4)酢酸ボルニルに起因する作用を有し、作業が終了した安静時に、作業中に向上した覚醒状態や緊張状態から心身を速やかに開放し、リラックス状態に導くために使用される(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する機能製品。
(IV-5)酢酸ボルニルに起因する作用を有し、仕事や勉強等の作業期間中は、その作業効率を低下させることなく、作業が終了した安静時に、作業中に向上した覚醒状態や緊張状態から心身を速やかに開放し、リラックス状態に導くために使用される(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する機能製品。
(IV-6)機能製品が、芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、繊維製品、建材、医薬品、医薬部外品及び日用品(雑貨)からなる群から選択されるいずかである、(IV-1)乃至(IV-5)のいずれかに記載する機能製品。
本発明のθ波発現増強剤または覚醒状態低下剤によれば、酢酸ボルニルを嗅ぐことによって生じる、安静時におけるθ波発現増強作用(θ波発現を速やかに且つ高く誘導する作用)により、作業終了後に速やかに覚醒状態を低下させ、リラックス状態に導くことができる。また、本発明の自律神経緊張緩和剤によれば、酢酸ボルニルを嗅ぐことによって生じる、安静時における交感神経活動の低下増強作用(交感神経活動の低下を速やかに且つ高く誘導する作用)により、作業終了後に速やかに自律神経の緊張を緩和させ、リラックス状態に導くことができる。
このため、本発明のθ波発現増強剤、覚醒状態低下剤または自律神経緊張緩和剤によれば、自律神経の緊張状態から弛緩状態へ、また覚醒状態から睡眠状態へ、というように、心身状態がON状態(活動状態)からOFF状態(安静状態)に切り替わることを手助けすることができ、その結果、近年の過度の集中力を要する長時間労働後に生じ得る睡眠障害(不眠症等)を予防したり、また改善することが可能になると考えられる。
また、本発明のθ波発現増強剤、覚醒状態低下剤または自律神経緊張緩和剤は、それを716.3μg/40Lよりも低く、好ましくは500μg/40L程度以下の濃度で使用することで、仕事や勉強中の作業中の効率には悪影響を与えず、作業終了後に、θ波の発現を速やかに且つ強く誘導することで、向上した覚醒状態を低下させ、また交換神経の低下を速やかに且つ強く誘導することで、自律神経の緊張を緩和することができる。
(-)-酢酸ボルニルの化学構造式を示す。 実験系の概要を示す模式図である。 実験のタイムスケジュールを示す図である。 実験期間中の心拍間隔(R-R間隔平均値)の経時的変動を示す図である。図中、BPは視覚弁別作業前5分間の「ベースライン期」を、RPは視覚弁別作業後5分間の「回復期」を意味する(以下、図5〜7において同様)。白丸: 対照条件、灰色丸:酢酸ボルニル低濃度条件、黒丸:酢酸ボルニル高濃度条件。 実験期間中の自律神経活動の経時的変動を示す。Aは高周波成分値(HF成分値)の5分間の平均値、BはLF/HF比(LF; 低周波成分、0.04〜0.15Hz、HF; 高周波成分、0.15-0.4 Hz)の5分間の平均値をそれぞれ示す。白丸: 対照条件、灰色丸:酢酸ボルニル低濃度条件、黒丸:酢酸ボルニル高濃度条件。 実験期間中の脳波の経時的変動を示す。Aはα波の占有率%(左はC3位、右はC4位での測定結果)、Bはθ波の占有率%(左はC3位、右はC4位での測定結果)をそれぞれ示す。白丸: 対照条件、灰色丸:酢酸ボルニル低濃度条件、黒丸:酢酸ボルニル高濃度条件。 作業効率の経時的変動を示す図である。Aは正答率(%)から作業効率を評価した結果であり、Bは反応時間(ミリ秒)から作業効率を評価した結果である。白丸:対照条件、灰色丸:酢酸ボルニル低濃度条件、黒丸:酢酸ボルニル高濃度条件。 酢酸ボルニルに対する主観評価の結果を纏めたものである。白丸:対照条件、灰色丸:酢酸ボルニル低濃度条件、黒丸:酢酸ボルニル高濃度条件。
(I)θ波発現増強剤
本発明のθ波発現増強剤は、酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用を有することを特徴とする。
酢酸ボルニルには、l体〔R(−)型、本発明では「(−)−酢酸ボルニル」と称する〕、d体〔S(+)型、本発明では「(+)−酢酸ボルニル」と称する〕、及びdl体〔ラセミ体、本発明では「(±)−酢酸ボルニル」と称する〕がある。本発明が対象とする酢酸ボルニルには、これらのいずれもが含まれるが、好ましくは(−)−酢酸ボルニルである。
なお、これらの酢酸ボルニルの由来は特に制限されず、植物の精油等から抽出精製される天然由来のもの、または合成由来のもののいずれであってもよい。好ましくは天然由来の酢酸ボルニルである。なお、酢酸ボルニルは、(−)−酢酸ボルニルも含めて、例えば、シグマアルドリッチなどから商業的に入手することができる。
本発明のθ波発現増強剤は、前述するように、有効成分として含まれる上記酢酸ボルニルが、被験者の嗅覚を刺激して安静時にθ波の発現を増強する作用を有する。
ここで被験者とは、ヒトを含む哺乳動物を意味し、好ましくはヒトである。ヒト以外の哺乳動物としては、ウサギ、ネコ、サル、マウス、ラット等を例示することができる。
θ波は、α波、β波及びδ波などと同じく、脳波の一つであり、リラックス状態にあり、まどろんでいる状態(睡眠と覚醒の間)に有意に発現することが知られている。ちなみにヒトにおけるθ波の周波数は4〜8Hzである。
本発明のθ波発現増強剤は、上記酢酸ボルニルの作用に基づいて、安静時にθ波発現増強作用を発揮するものであればよい。その限りにおいて、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するものであってもよいし、また酢酸ボルニル以外に他の揮発性成分を含有するものであってもよい。
なお、θ波発現増強剤(酢酸ボルニル)の安静時におけるθ波発現増強作用は、後述する実施例に記載する方法で測定評価することができる。具体的には、被験者に、図2に示す実験系にて、図3に示すタイムスケジュールのもとでθ波発現増強剤(酢酸ボルニル)を吸気させながら視覚弁別作業を行わせ(非特許文献15:清水邦義ら、Aroma Res. 39, 211-216 (2009)参照)、その期間中、脳波計を用いて、経時的に被験者のθ波(C3位、C4位)を測定する。作業終了後の安静時(回復期間)の30〜35分間におけるθ波の増加率が、被験者にθ波発現増強剤(酢酸ボルニル)に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのθ波の増加率よりも高い場合に、θ波発現増強剤(酢酸ボルニル)に安静時にθ波発現増強作用があると判断することができる。
θ波発現増強剤に、揮発性成分として酢酸ボルニル以外の揮発性成分を配合する場合、当該揮発性成分は、酢酸ボルニルの上記安静時におけるθ波発現増強作用を損なわない成分であることが求められる。
当該揮発性成分が酢酸ボルニルの上記θ波発現増強作用を損なわない成分であるか否かは、当該揮発性成分を酢酸ボルニルとともに配合したθ波発現増強剤を用いて上記実験を行うことで判定することができる。具体的には、当該揮発性成分と酢酸ボルニルとを配合したθ波発現増強剤を用いた作業終了後のθ波の増加率が、当該θ波発現増強剤に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのθ波の増加率と同等または低い場合は、当該揮発性成分は酢酸ボルニルの安静時におけるθ波発現増強作用を損なう成分であると判定される。一方、対照条件でのθ波の増加率よりも高い場合は、酢酸ボルニルのθ波発現増強作用を損なわない成分であると判定される。
θ波発現増強剤に、揮発性成分として酢酸ボルニル以外の揮発性成分を配合する場合、更に好ましくは、当該揮発性成分は、作業期間中にθ波発現を誘導する作用を有しない成分であることが望ましい。
当該揮発性成分が作業期間中にθ波発現を誘導する作用を有しない成分であるか否かは、当該揮発性成分を酢酸ボルニルとともに配合したθ波発現増強剤を用いて上記と同様の実験を行うことで判定することができる。具体的には、当該揮発性成分及び酢酸ボルニルを配合したθ波発現増強剤を用いた作業期間中のθ波占有率が、当該θ波発現増強剤に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのθ波占有率よりも有意に高い場合は、当該揮発性成分は作業期間中にθ波発現を誘導する作用を有する成分であると判定され、一方、上記対照条件でのθ波占有率よりも同じ程度またはそれ以下である場合は、当該揮発性成分は作業期間中にθ波発現を誘導する作用を有しない成分であると判定される。
本発明のθ波発現増強剤は、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するか、または揮発性成分として酢酸ボルニルと上記揮発性成分だけを含有するものであっても、又、本発明の効果を奏する範囲において、不揮発性成分を含有するものであってもよい。不揮発性成分としては、通常香料組成物の調製に使用される基剤や添加剤等を挙げることができる。制限はされないが、例えば、実施例で使用するスクワランは基剤として好適に使用される不揮発性成分である
本発明のθ波発現増強剤が酢酸ボルニル以外に他の成分を含有する場合、当該組成物中に含まれる酢酸ボルニルの含有割合としては、本発明の効果を奏することを限度として、例えば0.1〜99%(w/w)の範囲から適宜選択することができる。
本発明のθ波発現増強剤は、有効成分である酢酸ボルニルを揮発させるようにして用いられるが、その結果、大気中の酢酸ボルニル濃度が716.3μg/40L(約17μg/L)より低くなるように調整されることが望ましい。かかる大気中の酢酸ボルニル濃度として、好ましくは500μg/40L(約12.5μg/L)程度以下、より好ましくは400μg/40L(約10μg/L)程度以下、更に好ましくは300μg/40L(約7.5μg/L)程度以下である。大気中の酢酸ボルニル濃度は、後述する実施例に記載するように、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。
例えば、40L容積の閉鎖空間において、θ波発現増強剤を40分間稼働させた後に、当該閉鎖空間中の大気中の酢酸ボルニル濃度を、上記GC-MSを用いて分析する方法を例示することができる。この場合、「θ波発現増強剤を稼働させる」とは、当該θ波発現増強剤の適用対象物の種類やその使用方法に応じて適宜設定することができる。例えば、θ波発現増強剤を、後述する配置型の芳香剤に適用して用いる場合は、θ波発現増強剤を当該芳香剤に適用した状態で、40L容積の閉鎖空間に配置し、40分後に当該閉鎖空間の大気中の酢酸ボルニル濃度を測定する。なお、その測定時の温度条件や湿度条件も、θ波発現増強剤の適用対象物の種類やその使用方法に応じて適宜設定される。
本発明のθ波発現増強剤は、その形状を特に問うものではない。例えば、通常の香料の溶剤として使用されるエタノール、プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどの炭素数1〜6の低級アルコール、並びにプロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールに溶解した溶液状;アラビアガムやトラガントガム等の天然ガム質類、またはグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどを用いて乳化した乳化状;アラビアガムなどの天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの香料の賦形剤として公知の材料で被覆した粉末状;界面活性剤などを用いて可溶化(分散化)した可溶化状(分散状);公知のカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセルなど、目的に応じて任意の形状を選択し、常法に従って調製することができる。また、サイクロデキストリンなどの公知の賦形剤で包接して、徐放性を持たせることもできる。
(II)覚醒状態低下剤
本発明の覚醒状態低下剤は、酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時のθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用を有することを特徴とする。
ここで使用される「酢酸ボルニル」の種類、含有量、及びその作用は、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。また、「覚醒状態の低下」はθ波が発現することによって誘導されるため、本発明の覚醒状態低下剤の「安静時のθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用」についても、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明したθ波発現増強剤の作用(安静時のθ波の発現を増強する作用)と同様に評価判断することができる。
また本発明の覚醒状態低下剤は、θ波発現増強剤と同様に、酢酸ボルニルの作用に基づいて、安静時にθ波発現増強作用を発揮するものであればよく、その限りにおいて、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するものであってもよいし、また酢酸ボルニル以外に他の揮発性成分を含有するものであってもよい。ここで使用される揮発性成分は、その評価方法も含めて、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
さらに本発明の覚醒状態低下剤は、θ波発現増強剤と同様に、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するか、または揮発性成分として酢酸ボルニルと上記揮発性成分だけを含有するものであっても、又、本発明の効果を奏する範囲において、不揮発性成分を含有するものであってもよい。ここで使用される不揮発性成分は、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
本発明の覚醒状態低下剤は、θ波発現増強剤と同様に、有効成分である酢酸ボルニルを揮発させるようにして用いられるが、大気中の酢酸ボルニル濃度が716.3μg/40L(約17μg/L)より低くなるように調整されることが望ましい。かかる大気中の酢酸ボルニル濃度として、θ波発現増強剤と同様に、好ましくは500μg/40L(約12.5μg/L)程度以下、より好ましくは400μg/40L(約10μg/L)程度以下、更に好ましくは300μg/40L(約7.5μg/L)程度以下である。大気中の酢酸ボルニル濃度の測定方法は、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
(III)自律神経緊張緩和剤
本発明の自律神経緊張緩和剤は、酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時の交感神経活動の低下を増強する作用を有することを特徴とする。
ここで使用される「酢酸ボルニル」の種類、含有量、及びその作用は、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
本発明の自律神経緊張緩和剤は、前述するように、有効成分として含まれる上記酢酸ボルニルが、被験者の嗅覚を刺激して安静時に交感神経活動の低下を増強する作用を有する。
ここで「被験者」、「安静時」、「作業」及び「作業期間」の意味については、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
本発明の自律神経緊張緩和剤は、上記酢酸ボルニルの作用に基づいて、安静時に交感神経活動の低下を増強する作用を発揮するものであればよい。その限りにおいて、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するものであってもよいし、また酢酸ボルニル以外に他の揮発性成分を含有するものであってもよい。
なお、自律神経緊張緩和剤(酢酸ボルニル)の安静時における交感神経活動低下増強作用は、後述する実施例に記載する方法で測定評価することができる。具体的には、被験者に、図2に示す実験系にて、図3に示すタイムスケジュールのもとで自律神経緊張緩和剤(酢酸ボルニル)を吸気させながら視覚弁別作業を行わせ(清水邦義ら、Aroma Res. 39, 211-216 (2009)参照)、その期間中、心電図を用いて、経時的に被験者の心拍変動の指標となるR波の間隔(R-R間隔)、及び/又は交感神経活動の指標となるLF/HF比(ここで、LFは0.04〜0.15Hzの低周波成分、HFは0.15〜0.4Hzの高周波成分を意味する)を測定する。作業終了後の安静時(回復期間)の30〜35分間におけるR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率が、被験者に自律神経緊張緩和剤(酢酸ボルニル)に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率よりも大きい場合に、自律神経緊張緩和剤(酢酸ボルニル)について安静時に交感神経活動低下増強作用があると判断することができる。
自律神経緊張緩和剤に、揮発性成分として酢酸ボルニル以外の揮発性成分を配合する場合、当該揮発性成分は、酢酸ボルニルの上記安静時における交感神経活動低下増強作用を損なわない成分であることが求められる。
当該揮発性成分が酢酸ボルニルの上記交感神経活動低下増強作用を損なわない成分であるか否かは、当該揮発性成分を酢酸ボルニルとともに配合した自律神経緊張緩和剤を用いて上記実験を行うことで判定することができる。具体的には、当該揮発性成分と酢酸ボルニルとを配合した自律神経緊張緩和剤を用いた作業終了後のR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率が、当該自律神経緊張緩和剤に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率と同等または小さい場合は、当該揮発性成分は酢酸ボルニルの安静時におけるR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率を損なう成分であると判定される。一方、対照条件でのR-R間隔の増加率及び/又はLF/HF比の低下率よりも大きい場合は、酢酸ボルニルの交感神経活動低下増強作用を損なわない成分であると判定される。
自律神経緊張緩和剤に、揮発性成分として酢酸ボルニル以外の揮発性成分を配合する場合、更に好ましくは、当該揮発性成分は、作業期間中に交感神経活動の低下を誘導する作用を有しない成分であることが望ましい。
当該揮発性成分が作業期間中に交感神経活動の低下を誘導する作用を有しない成分であるか否かは、当該揮発性成分を酢酸ボルニルとともに配合した自律神経緊張緩和剤を用いて上記と同様の実験を行うことで判定することができる。具体的には、当該揮発性成分及び酢酸ボルニルを配合した自律神経緊張緩和剤を用いた作業期間中のR-R間隔(Δ心拍間隔%)が、当該自律神経緊張緩和剤に代えて清浄空気を吸気させながら視覚弁別作業を行わせた対照条件でのR-R間隔(Δ心拍間隔%)よりも有意に高い場合、及び/又は、揮発性成分及び酢酸ボルニルを配合した自律神経緊張緩和剤を用いた場合のLF/HF比が対照条件でのLF/HF比よりも有意に低い場合は、当該揮発性成分は作業期間中に交感神経活動の低下を誘導する作用を有する成分であると判定される。一方、上記対照条件でのR-R間隔(Δ心拍間隔%)よりも同じ程度またはそれ以下である場合、また対照条件でのLF/HF比がよりも同じ程度またはそれ以下である場合は、当該揮発性成分は作業期間中に交感神経活動の低下を誘導する作用を有しない成分であると判定される。
本発明の自律神経緊張緩和剤は、揮発性成分として酢酸ボルニルだけを含有するか、または揮発性成分として酢酸ボルニルと上記揮発性成分だけを含有するものであっても、又、本発明の効果を奏する範囲において、不揮発性成分を含有するものであってもよい。不揮発性成分としては、通常香料組成物の調製に使用される基剤や添加剤等を挙げることができる。制限はされないが、例えば、実施例で使用するスクワランは基剤として好適に使用される不揮発性成分である。
本発明の自律神経緊張緩和剤が酢酸ボルニル以外に他の成分を含有する場合、当該組成物中に含まれる酢酸ボルニルの含有割合としては、本発明の効果を奏することを限度として、例えば0.1〜99%(w/w)の範囲から適宜選択することができる。
本発明の自律神経緊張緩和剤は、有効成分である酢酸ボルニルを揮発させるようにして用いられるが、その結果、大気中の酢酸ボルニル濃度が716.3μg/40L(約17μg/L)より低くなるように調整されることが望ましい。かかる大気中の酢酸ボルニル濃度として、好ましくは500μg/40L(約12.5μg/L)程度以下、より好ましくは400μg/40L(約10μg/L)程度以下、更に好ましくは300μg/40L(約7.5μg/L)程度以下である。大気中の酢酸ボルニル濃度は、後述する実施例に記載するように、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。具体的な測定方法は、上記「(I)θ波発現増強剤」で説明した通りである。
本発明の自律神経緊張緩和剤は、その形状を特に問うものではない。例えば、通常の香料の溶剤として使用されるエタノール、プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどの炭素数1〜6の低級アルコール、並びにプロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールに溶解した溶液状;アラビアガムやトラガントガム等の天然ガム質類、またはグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどを用いて乳化した乳化状;アラビアガムなどの天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの香料の賦形剤として公知の材料で被覆した粉末状;界面活性剤などを用いて可溶化(分散化)した可溶化状(分散状);公知のカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセルなど、目的に応じて任意の形状を選択し、常法に従って調製することができる。また、サイクロデキストリンなどの公知の賦形剤で包接して、徐放性を持たせることもできる。
(IV)上記θ波発現増強剤、覚醒状態低下剤、及び自律神経緊張緩和剤の応用
前述する本発明のθ波発現増強剤、覚醒状態低下剤、及び自律神経緊張緩和剤(以下、これらを便宜上「本発明の機能剤」という)は、それぞれθ波発現増強機能(効能)、覚醒状態低下機能(効能)、及び自律神経緊張緩和機能(効能)を付与若しくは発揮させる目的で、各種の製品に応用することができる。
ここで対象とする製品(ここでは、便宜上「機能製品」という。)は、上記θ波発現増強剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波発現増強作用を発揮したり;上記覚醒状態低下剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用を発揮したり;または自律神経緊張緩和剤に含まれる有効成分たる酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時に神経活動の低下を増強する作用を発揮するものである。従って、かかる機能製品は、上記θ波発現増強剤、覚醒状態低下剤、または自律神経緊張緩和剤(本発明の機能剤)以外の成分として、酢酸ボルニルに起因する上記の各種作用を損なう成分を含有しないことが望まれる。当該成分が、酢酸ボルニルに起因する各種作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用)を損なう成分か否かは、(I)〜(III)において説明した方法に従って評価することができる。
かかる機能製品は、上記作用を有し、作業が終了した安静時に、作業中に向上した覚醒状態や緊張状態から心身を速やかに開放し、リラックス状態に導くために使用することができる。好ましくは、仕事や勉強等の作業期間中は、その作業効率を低下させることなく、当該作業が終了した後に、覚醒状態や緊張状態から心身を速やかに開放し、リラックス状態に導くために使用することができる。
具体的な機能製品としては、例えば、芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、繊維製品、建材、医薬品、医薬部外品または日用品(雑貨)などを挙げることができる。好ましくは芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品、及び建材であり、さらに好ましくは芳香剤、香粧品、繊維製品、及び建材である。なお、これらの機能製品は、本発明の機能剤(θ波発現増強剤、覚醒状態低下剤、または自律神経緊張緩和剤)を含有することに基づいて、それが有する上記の各種作用や用途に応じて、特定の機能(効能)や用途を示す表示が付されてなる製品であってもよい。
芳香剤としては、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、室内用芳香剤、トイレ用芳香剤、自動車用芳香剤、玄関用芳香剤、浴室用芳香剤、クローゼット用芳香剤、衣類等の繊維用芳香剤、タンス用芳香剤等のいずれの芳香剤であってもよい。なお、消臭効果を兼ね備えているものもここでいう芳香剤に含まれる。芳香剤の形態も固体状、半固体状(ゼリー状、ゲル状等)、液体状、エアゾール状等の様々な形態が使用される。
香粧品は、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、例えば、化粧料、石鹸等の生体洗浄剤や入浴剤、香水などのフレグランス、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、マウスペット、及び口中清涼剤等が包含される。香粧品として、具体的には、例えばクリーム、乳液、化粧パウダー、ボディーローション、整髪料、洗髪料、石鹸、ボディーソープ、制汗剤、シャンプー、リンス、香水、化粧水、口紅、リップクリーム、サンスクリーン、マッサージオイル、マッサージクリーム、及びスキンケアオイル等が挙げられる。
吸入投与剤としては、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、例えば、スプレーや芳香成分の揮発等によって鼻付近で芳香を発生させ、意図的に芳香を吸入させるもの等を挙げることができる。例えば、点鼻薬、噴霧剤、吸入液等である。
繊維製品用洗剤としては、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性若しくは両性イオン性の洗剤、繊維製品柔軟剤、繊維製品柔軟用製品、ドライヤー用繊維柔軟剤製品等が挙げられる。
繊維製品としては、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、肌着(靴下、タイツ及びストッキングも含まれる)や上着などの衣料品、ハンカチやタオル類、マスクや汗吸収パットなどの衛生用品、敷物、バッグや袋、カーテン、寝装品(掛布団、敷布団、敷きマット、ブランケット、タオルケット、枕、ベッドマット、ソファー、クッション、座布団、及びこれらのカバー等)及び小物等を挙げることができる。
また、医薬部外品には、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、例えば、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、マウスペット、口中清涼剤、パップ剤などが含まれる。
建材には、本発明の機能剤を含有することによって上記作用の少なくとも1つを有するものであればよく、例えば、壁紙、障子紙、フスマ紙、ボード、及び塗材等が含まれる。
機能製品における本発明の機能剤の含有量は、目的とする作用を有する限り特に制限されず、酢酸ボルニルの含有量に換算して0.1〜50%(w/w)の範囲から適宜選択することができる。
芳香剤には、酢酸ボルニルに起因する各種作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用)を損なわない限り、本発明の機能剤に加えて、従来芳香剤に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。芳香剤用基剤としては、固体、液体、半固体状(ゼリー状、ゲル状等)、エアゾール状等の形態をとるものが一般的である。例えば、水、エタノール、固体又は液体の陰イオン性、陽イオン性、非イオン性活性剤、高分子剤、油脂、グアガム、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、カラギーナン、ゼラチン、寒天等が挙げられる。さらに、固体ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン)、ケイ酸カルシウム等の保持用担体に含浸させた製品形態で用いることができる。
香粧品には、酢酸ボルニルに起因する各種作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用)を損なわない限り、本発明の機能剤に加えて、従来香粧品に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。基剤としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノール、タルク、ゼラチン、等が挙げられる。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、保湿剤、皮膚柔軟剤、防腐剤、溶解剤等が挙げられる。
香粧品が香水の場合には、本発明による機能製剤をそのまま単独で何も加えずに使用するか、アルコール(例えば、エチルアルコール)または水性アルコールに本発明の機能製剤を溶解した状態で使用することができる。香水には、本発明の機能剤を、酢酸ボルニルの含有量に換算して0.1〜50(w/w)%の割合で配合することができる。コロンは、溶解剤、柔軟化剤、ヒューメクタン、濃化剤、静菌剤、またはその他化粧品に通常用いられる材料を含有することができる。
吸入投与剤には、酢酸ボルニルに起因する各種作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用)を損なわない限り、本発明の機能剤に加えて、従来吸入投与剤に使用されてきた基剤、添加剤等の成分を含有させることができる。また、吸入用の気体を使用する場合も従来の吸入投与剤に使用されてきた気体を使用することができる。
繊維製品用洗剤には、酢酸ボルニルに起因する各種作用(嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用、安静時に神経活動の低下を増強する作用)を損なわない限り、本発明の機能剤に加えて、従来から繊維製品用洗剤に使用されている他の成分を使用することができる。
本発明の構成及び効果をより明確にすべく、以下に、本発明を実験例をもって説明する。但し、本発明はかかる実験例によって何ら制限されるものではない。
(I)実験方法
(I-1)被験者
実験は、九州大学規定およびヘルシンキ宣言に沿って実施した。被験者は9名の健康な男性(年齢; 19から25歳)とし、全ての被験者には嗅覚に異常がないこと、身体的精神的な問題がないこと、薬を服用していないこと、喫煙者ではないことを事前に確かめた。また実験前に、実験の目的とタイムスケジュールについて説明をして、実験参加の同意を得た。実験前には十分に睡眠を取ること、過度の運動など特別な活動をしないことを説明し、実験日に疲労した状態で実験に参加することがないようにと、実験前日にも再度確認を行った。またアルコール類の摂取と薬の服用は前日から避けてもらい、実験日はカフェイン類の摂取を控えてもらった。各被験者は同一実験に3回参加し(対照(ゼロ濃度)、低濃度条件、高濃度条件)、実験間隔は一週間と設定した。
(I-2)被験試料の調製
酢酸ボルニルとして(-)-酢酸ボルニルを使用した。当該(-)-酢酸ボルニルは、下記に示す方法で従って、低濃度酢酸ボルニル含有試料、及び高濃度酢酸ボルニル含有試料として調製した。
(1)低濃度酢酸ボルニル含有試料:(-)-酢酸ボルニル(シグマアルドリッチ製)7.4 mgを不揮発性溶媒(スクワラン)7.5 mLに希釈して調製。
(2)高濃度酢酸ボルニル含有試料:(-)-酢酸ボルニル(シグマアルドリッチ製)18.5 mgを不揮発性溶媒(スクワラン)7.5 mLに希釈して調製。
(I-3)酢酸ボルニルの吸気(吸入・吸香)方法
酢酸ボルニルの吸気方法を表す模式図を図2に示す。
清浄空気(符号1)をマスフローコントローラーより1.0 L/分の一定流速に調節して、活性炭(符号2)、トラップ(符号3)、及び被験試料(低濃度酢酸ボルニル含有試料、または高濃度酢酸ボルニル含有試料)を封入した30 mL容ガラスチャンバー(柴田科学、日本)(符号4)の順番で空気を送り込み、防音室(アビテックス;(株)ヤマハ、日本)(符号5)内に座っている被験者(符号6)の鼻先から斜め下方15 cmの位置より酢酸ボルニルを含む空気を提示した。
(-)-酢酸ボルニル含有空気提示(吸気)のタイムスケジュールを図3に示す。図3に示すように、(-)-酢酸ボルニル含有空気の提示(吸気)は合計40分間行い、最初の5分間と最後の5分間は、被験者に目を閉じてもらい安静状態とした。それらの間の30分間に、後述する視覚弁別作業をしてもらった。なお、コントロールとして、(-)-酢酸ボルニル含有空気に代えて清浄空気のみを提示した。なお、実験は、室温を25±2℃で一定に保持した状態で行った。
(I-4)提示空気(吸気)中の(-)-酢酸ボルニル量のGC-MS分析
提示空気(吸気)中の(-)-酢酸ボルニルの定量分析には、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS; GC-17A/QP5050;(株)島津製作所、日本)に、DB-5カラム(30 m×0.25 mm., 膜厚0.25μm;(株)アジレント・テクノロジー、USA)を装着して用いた。
被験者が作業中に吸気した揮発(-)-酢酸ボルニル量を算出するために、(I-3)に記載するように、1.0 L/分の一定流速に調節した清浄空気を、活性炭、トラップ、及び被験試料(低濃度酢酸ボルニル含有試料、または高濃度酢酸ボルニル含有試料)を封入した30 mL容ガラスチャンバーの順番で空気を40分間送り込み、揮発(-)-酢酸ボルニルを含む空気を全て50 L容のテドラーバッグ((株)三商、日本)に回収した。その後、吸着管(ORBO100、(株)スペルコ、USA)に0.05 L/分で15時間かけて捕集し、アセトンで脱着して、下記条件のGC-MS分析に供した。内部標準物質にはヘキサデカンを用い、(-)-酢酸ボルニルとヘキサデカンのピーク面積比を用いて定量した。
<GC条件>
注入口温度: 250℃,
検出器温度: 250℃,
昇温プログラム: 50℃(3分保持)から200℃まで 10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持
ヘリウム流量: 1.0 mL/分、
イオン化電圧:70eV。
(I-5)視覚弁別作業(図2参照)
図3に示すタイムスケジュールに従って、被験者に、清浄空気(対照条件)、低濃度酢酸ボルニル含有空気(低濃度条件)、または高濃度酢酸ボルニル含有空気(高濃度条件)を吸気させながら、視覚弁別作業をしてもらった。
視覚弁別作業は、防音室(アビテックス)(符号5)内で行い、外界からの音と光刺激を遮断した条件で行った。被験者の目の位置から水平に100 cm離して設置したモニタ画面(RDT214S, 1600×1200 pixels, 300 cd/m2;(株)三菱電機、日本)(符号7)に映る視覚刺激は、防音室の外に設置したコンピュータ(Windows(登録商標) XP)(符号8)で制御した。視覚弁別作業は既報(非特許文献17:Haze S., Sakai K., Gozu Y. Jpn. J. Pharmacol. 90, 247-253 (2002))で述べた通りとし、作業時間は30分間とした。モニタ画面上に表示される「0」から「9」の数字のうち、「0」が表示された場合にのみ片手でマウスの左クリックを行い、それ以外の場合には反応を行わないようにと、予め、被験者に教示した。呈示は1秒に一つの数字とし、一つの数字の呈示時間は0.04秒とした。数字は視角直径0.91×0.68°で提示した。試験の難易度を調整するために数字にランダムドットノイズを加えた。「0」の出現頻度は1分間に約6回とした。作業効率の指標は、[1]正答率 (%):刺激に対する正答率から不正解率を引いた割合と、[2]反応時間 (ミリ秒):正答をクリックするまでに要した時間とした。
(I-6)心電図および脳波記録
心電図及び脳波データは、脳波モニタ(MWM-01;(株)GMS、日本)を通してコンピュータ(VAIO, VGN-T70B;(株)ソニー、日本)に直接取り込み、リアルタイム解析システム(MemCalc Ver. 2.5;(株)GMS、日本)を用いて周波数解析を実施した。
心電図はCM5で導出した。R波の間隔(R-R間隔)を用いてローレンツプロット法により分布および中心点の経時的な変化を算出し、心拍変動の直接的な指標とした(非特許文献18:Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing Electrophysiology. Circulation 93, 1043-1065 (1996))。0.04〜0.15 Hzまでを低周波成分(LowFrequency: LF)、0.15〜0.4Hzを高周波成分(High Frequency: HF)と定義して、HFを副交感神経活動の指標、LF/HF比を交感神経活動の指標とした。
脳波はAg電極(10 mm)を用い、国際脳波学会標準電極配置法(10-20法)に基づきC3、C4位から両耳朶結合を基準として単極導出した。電気抵抗は5Kオーム以下とした。各周波数帯域は、デルタ帯域(1.0-4.0 Hz)、シータ帯域(4.0-8.0 Hz)、アルファ帯域 (8.0-13.0 Hz)、ベータ帯域(13.0-30.0 Hz)として各帯域の時間占有率を算出した。
(I-7)主観評価
視覚弁別作業を行う前に、各被験者にアンケートへの回答を求めた。予備実験から適当と考えた8つの対語を選抜してアンケートを作成し、視覚的アナログスケール法により、(-)-酢酸ボルニルに対する主観評価を分析した。本研究で用いた対語は以下の通りとした。“快い−不快な”、“自然な−人工的な”、“軽やかな−重い”、“はっきりした−ぼんやりした”、“安全な−危険な”、“強い−弱い”、“すっきりした−すっきりしない”、“落ち着く−落ち着かない”。
(I-8)統計処理
統計処理は、作業中の条件間の平均値の差は一要因分散分析を用いて検定した。さらに、作業中の30分目と作業後の条件内の平均値の差は、対応のあるt検定を用いて行った。全ての検定の有意水準は危険率5 %以下とし、10 %以下を有意傾向とした。解析には統計解析ソフトSPSS 15.0 Jを用いた。
(II)実験結果
視覚弁別を用いたビジランス状態に対して、酢酸ボルニル含有空気が与える影響について、清浄空気をコントロールとして、比較検討した。心電図と脳波は、作業中の30分間と作業前後各5分間を含む合計40分間の経時的な変化を計測し、主観評価は作業前に回答を求めたアンケートに基づいて行った。提示空気(吸気)中に含まれる(-)-酢酸ボルニル量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)を用いて分析した。
(II-1)提示空気(吸気)中の(-)-酢酸ボルニル含有量のGC−MS定量分析
図2の提示装置を用いて、酢酸ボルニルを含む空気を、被験者実験と同条件にて、40分間テドラーバッグに捕集し、GC-MS分析に供した。その結果、実験中に防音室に供給した空気40L中の酢酸ボルニル量は、下記表に示すように、低濃度条件で279.4μg、高濃度条件では716.3μgであった。
Figure 2012171944
(II-2)心拍変動解析
心電図の5分間のR波の間隔(R-R間隔)の平均値を統計解析に用いた。作業による影響のない視覚弁別作業前5分間(ベースライン期:安静状態)の測定値を基準として変化率 (%) を算出した。結果を図4に示す。図4からわかるように、対照条件(清浄空気提示条件)、低濃度条件(低濃度酢酸ボルニル含有空気提示条件)及び高濃度条件(高濃度酢酸ボルニル含有空気提示条件)のすべての条件で、作業後の回復期に顕著な心拍変動の変化を示した。具体的には、視覚弁別作業終了後の回復期(図中、30−35分の期間)において、対照条件(白丸)では95.3±1.5(%)から99.8±2.5(%)への4.5%の増加(P < 0.05)であったのに対して、低濃度条件(灰色丸)では96.4±1.9(%)から106.2±2.5(%)への9.8%の増加(P < 0.01)、高濃度条件(黒丸)では101.3±1.8(%)から109.9±2.6(%)への8.6%の増加(P < 0.01)と、いずれも酢酸ボルニルの吸気条件では対照条件よりも有意に高い増加率が認められた。R-R間隔の増加は心拍数の減少を示すことから、酢酸ボルニルの吸入によって、酢酸ボルニルを吸入しない場合と比較して、作業終了後の心血管系循環の緊張状態の緩和が格段に促進(増強)されることが示唆された。
(II-3)自律神経活動解析
高周波成分値(HF成分値)およびLF/HF比(LF; 低周波成分、0.04〜0.15Hz、HF; 高周波成分、0.15-0.4 Hz)の5分間の平均値を統計解析に用いた。平均値は作業による影響のない視覚弁別作業前5分間(ベースライン期:安静状態)の測定値を基準として変化率 (%) を算出した。HF成分値は副交感神経活動の指標、LF/HF比は交感神経活動の指標になる。
HF成分値に関する結果を図5Aに、LF/HF比に関する結果を図5Bにそれぞれ示す。
図5Aからわかるように、HF成分値については、低濃度条件及び高濃度条件において、作業後の回復期にHF成分値が速やかに増加する傾向が認められた(但し、有意差なし)。また図5Bからわかるように、LF/HF比については、低濃度条件及び高濃度条件において、作業後の回復期にLF/HF比が速やかに低下する傾向が認められた。特に低濃度条件で著しい低下が認められた。具体的には、視覚弁別作業終了後の回復期(図中、30−35分の期間)において、対照条件(白丸)では211.2±32.5(%)から189.0±48.8(%)への22.2%の低下(n.s.)であったのに対して、低濃度条件(灰色丸)では245.3±41.2(%)から120.9± 16.5(%)への124.4%の減少(P < 0.01)、高濃度条件では147.5±23.7(%)から91.8±15.9(%)への55.7%の減少(P < 0.05)であり、いずれも酢酸ボルニルの吸気条件では対照条件よりも有意に高い低下が認められた。
このように、酢酸ボルニルを吸気させることにより、作業終了後の回復期に、副交感神経活動の指標になるHF成分値が増加する傾向が認められ、また交感神経活動の指標になるLF/HF比が速やかに顕著に低下したことから、酢酸ボルニルの吸入により交感神経活動が低下すること、つまり心血管系循環の緊張状態が緩和することが示唆された。このことは(II-2)で説明した心拍変動解析の結果を支持する結果であった。
(II-4)脳波解析
実験期間中の覚醒状態の変化を測るために、アルファ帯域 (8.0-13.0 Hz)とシータ帯域(4.0-8.0 Hz)の変動に着目して、脳波のα波とθ波の占有率%をそれぞれ解析した。国際法10-20法に従って中心領域のC3位とC4位を測定した。ともに5分間の平均値を統計解析に用いた。結果を図6に示す。図6のうち、Aはα波の占有率(%)を、Bはθ波の占有率(%)をそれぞれ示す。いずれの図も左側にC3位の測定値、右側にC4位の測定値を示す。
図6Aからわかるように、α波はC3位、C4位ともに、各条件間(対照条件、低濃度条件、高濃度条件)で特徴的な変化(差異)は観察されなかった。一方、θ波はC3位、C4位ともに、対照条件に比べて、酢酸ボルニル吸入条件で、作業終了後の回復期においてθ波の占有率%が格段に増加した。具体的には、対照条件では13.8±1.3(%)から15.1±2.4(%)への1.3%の増加(n.s.)であったのに対して、低濃度条件では14.5±1.3(%)から19.6±1.7(%)へと5.1 %の増加(P < 0.01)、高濃度条件では14.6 ± 2.0 (%)から18.8 ± 2.5 (%)へと4.2 %の増加(P < 0.05)であり、いずれも酢酸ボルニルの吸気条件では対照条件よりも有意に高いθ波の増加が認められた。
(II-5)作業効率の経時変化
作業効率は、正答率 (%)と反応時間 (ミリ秒)で評価した。正答率と反応時間は5分間の平均値として算出して30分間経時的に追跡した。
結果を図7に示す。
図7に示すように、酢酸ボルニル低濃度条件(灰色丸)では、正答率 (%)と反応時間 (ミリ秒)のいずれの指標も、対照(白丸)との差が殆ど観察されなかった。一方、高濃度条件(黒丸)では、正答率(図A)は作業開始25分で対照よりも低い傾向(対照条件; 96.5 ± 1.8 (%), 高濃度条件; 87.1± 4.4 (%), P < 0.1)を示した。統計的な有意差は観察されなかったが、高濃度条件での反応時間(図B)の平均値は、作業期間を通して対照条件および低濃度条件よりも高い値を示した。
(II-6)主観評価
視覚作業を行う前に被験者にアンケート回答を求めた。視覚的アナログスケールにより酢酸ボルニルに対する主観評価を分析した。100 mm長のラインの両端に質問対語を配置し、被験者には、酢酸ボルニルを含む空気に対して感じた通りに、ライン上にポイントマークするように指示した。得点は、行の左端からの距離をミリメートル単位で計測して算出し、0〜100点に換算した。
結果を図8に示す。図8に示すように、低濃度条件と対照条件はいずれの評価語に対しても統計的な有意差が認められなかったが、高濃度条件と対照条件とは有意な差が認められた。“はっきりした−ぼんやりした”は、高濃度条件(60.4±7.9点)は対照条件(32.1±6.1点, P < 0.05)に対して有意差が認められた。“強い−弱い”は、高濃度条件(58.4±5.9点)は対照条件(29.6±6.9点, P < 0.05)に対して有意差が認められた。
(III)考察
(III-1)作業後安静状態での生理応答
(i)心拍変動(図4及び5)
R-R間隔の平均値(Δ心拍間隔(%))およびLF/HF比は、酢酸ボルニル低濃度と高濃度条件で対照条件よりも変動が大きく、R-R間隔の平均値は作業期間終了後の安静状態において速やかに有意に増大し(心拍数の低下:図4)、LF/HF比で示される交感神経活動は有意な減少を示した(図5-B)。これらの変化より、作業後の安静時において酢酸ボルニルが自律神経活動の緊張緩和を速やかに誘発したことが示唆された。
(ii)脳波変動(図6)
酢酸ボルニル吸気条件では、作業終了後の回復期においてθ波占有率が有意に増加した(図6-B)。前述のとおり、作業中では全時間帯において条件間に統計的に有意な差が認められなかったことから、酢酸ボルニルは作業後の安静時においてθ波占有率の増大を誘導することが示された。安静時には目を閉じた状態を維持してもらったことからα波が増大することが推測されたが、実際には、酢酸ボルニルを吸入することにより、α波よりもさらに周波数の低いθ波の発現が増大した。このことは、酢酸ボルニル吸入条件では、対照条件よりも、意識レベルがさらに低下したことを示唆する。θ波は覚醒と睡眠の間の状態、つまり意識が下がって眠くなると発現してくることが知られている(非特許文献16:Cantero J., Atienza M., Stickgld R., Kahana M.J., Madsen J.R., Kocsis B. J Neurosci. 26, 10897-10903 (2003))。この結果から、酢酸ボルニルは連続した視覚作業によって向上した覚醒状態を、作業終了後に、θ波の発現を増大させることで、速やかに低下させる効果を有することが示唆された。
(iii)主観評価(図8)
快−不快感情を引き起こす揮発物質は、作業効率の低下抑制に影響することが知られている。先行研究では、被験者が快いと認識した揮発成分を嗅ぎながら作業することで、視覚作業時の作業効率の改善が見られたと報告されている(非特許文献19:Warm J.S., Dember W.N., Parasuraman R. J Soc Cosmet Chem 42, 199-210 (1991)、非特許文献20:Gould A., Martin G.N. Appl. Cognit. Psychol. 15, 225-232 (2001)、非特許文献21:Jones K.S., Ruhl R.L., Warm J.S., Dember W.N. Automation technology and human performance: current research and trends. p. 193-197. Mahwah, New Jersey (1999))。本研究では、酢酸ボルニルに対する主観評価は、低濃度条件では対照(空気)との差がみられなかったが、高濃度条件と対照条件では二つの記述語で異なった(図8)。“はっきりした”“強い”という単語は試料濃度により影響を受けやすいと考えられたが、視覚作業中に被験者に提示された酢酸ボルニル量(表1)から、提示量としては約2倍強であった。
(III-2)作業中の生理応答及び作業効率
(i)心拍変動(図4)
R-R間隔の平均値(Δ心拍間隔%)は、酢酸ボルニル高濃度条件では、作業期間の後半において、対照条件と比較して有意に高い値を示した(図4)。さらに作業中の交感神経活動の指標となるΔLF/HF比の平均値は、酢酸ボルニル高濃度条件では対照条件と比較して、低値を示した(図5-B)。
心血管系機能は、交感神経系と副交感神経系の調節によって制御されている。副交感神経優位ではR-R間隔の延長がみられ、交感神経優位ではR-R間隔の短縮がみられる。また、心拍変動のHF成分(0.15-0.4 Hz)およびLF/HF比(0.04-0.15 Hz/ HF)はそれぞれ、副交感神経系活動と交感神経活系動を反映する指標として用いられる(非特許文献22:Lipsitz L.A., Mietus J., Moody G.B., Goldberger A.L. Circulation 81, 1803-1810 (1990). 非特許文献23;Shannon D.C., Carley D.W., Benson H. Am. J. Physiol. 253, H874-H877 (1987).)。
本研究の結果から、酢酸ボルニル吸入が高濃度(≧716.3μg/40L)でなければ作業中の交感神経活動を抑制しないことが示唆された。作業中には交感神経活動が優位になることが報告されており(非特許文献24:Zhong X., Hilton J., Gates G.J., Jelic S., Stern Y., Bartels M.N., DeMeersman R.E., Basner R.C. J. Appl. Physiol. 98, 2024-2032 (2005))、高濃度(≧716.3μg/40L)の酢酸ボルニル吸入は、かかる交感神経活動を低下するとともに作業効率の低下を引き起こす可能性が示唆されたものの、それより濃度を低くすることで交感神経活動を低下させることなく作業効率を維持することができることも確認できた。
(ii)脳波変動
本研究においては、脳波解析としてα波とθ波の変動について検討した。脳波解析は脳の活動状態を把握するために広く用いられている手法の一つであり、α波は安静状態を示し、意識レベルが下がってきて眠くなるとθ波の発現がみられる。α波およびθ波のC3位、C4位の変動を図6に示した。作業期間中はα波(図6-A)、θ波(図6-B)ともに全時間帯において条件間で統計的に有意な差が認められなかった。
(iii)作業効率
酢酸ボルニル高濃度条件(≧716.3μg/40L)では作業期間の後半で正答率の低下がみられ、作業期間を通して反応時間の平均値は、対照条件および低濃度条件よりも高い値を示した(図7)。これに対して、酢酸ボルニル濃度を上記濃度よりも低くすることで正答率も反応時間も対照条件と同じレベルになることが確認できた。つまり、上記(i)で説明したように、高濃度(≧716.3μg/40L)の酢酸ボルニル吸入は、作業効率の低下を引き起こす可能性があるものの、それより濃度を低くすることで作業効率を維持することができることが確認できた。

Claims (7)

  1. 酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強する作用を有するθ波発現増強剤。
  2. 大気中の酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、請求項1に記載のθ波発現増強剤。
  3. 酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時にθ波の発現を増強して覚醒状態の低下を誘導する作用を有する覚醒状態低下剤。
  4. 大気中に揮散する酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、請求項3に記載の覚醒状態低下剤。
  5. 酢酸ボルニルを有効成分として含有し、当該酢酸ボルニルに起因して嗅覚を通じて、安静時に交感神経活動の低下を増強する作用を有する自律神経緊張緩和剤。
  6. 大気中の酢酸ボルニル濃度が500μg/40L以下になるように調整されてなる、請求項5かに記載の自律神経緊張緩和剤。
  7. 上記請求項1〜2に記載するθ波発現増強剤、請求項3〜4に記載する覚醒状態低下剤、及び請求項5〜6に記載する自律神経緊張緩和剤からなる群から選択されるいずれかの機能剤を含有する、機能製品。
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