JP7141960B2 - 心身管理システム - Google Patents
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Description
(1)本発明は、呼吸周波数を指標する第1指標値(V1)の増減と、心拍情報から得られた心拍変動の高周波成分(HF)と低周波成分(LF)の合計に対する該低周波成分の割合(LF/HF+LF)である第2指標値(V2)の増減とに基づいて、作業に対する心身状態の適性を推定する推定手段を備える心身管理システムである。
(1)本発明は、装置または方法としても把握できる。例えば、本発明は、心身状態の推定装置またはその推定方法としても把握される。本明細書でいう各手段は、各ステップと読み替えることにより方法の構成要素となる。また本発明は、各ステップをコンピュータで実行するプログラムや、そのプログラムを記録した記憶媒体等としても把握され得る。
(1)第2指標値
第2指標値は、LF/(HF+LF)により求まる。これは、HFとLFから正規化されたLF(normalizedLF)に相当し、本明細書では「LFnorm」という。
第1指標値は、呼吸周波数を指標している。第1指標値は、呼吸周波数自体または呼吸周波数を直接的に指標する値でもよいし、呼吸周波数を間接的に指標する相関値でもよい。後者として、高周波成分の重心周波数(「HFcentF」という。)がある。
指標値の増減は、基準となる指標値(基準指標値)との比較により判断する。基準指標値は、経時的に新たな指標値が算出される毎に更新されてもよいし、特定の時点で算出された指標値が所定期間維持(継続)されていてもよい。
第1指標値となるHFcentFや第2指標値となるLFnormを算出するためには、自ずと、ある測定時間(期間)の心拍間隔を採取する必要がある。
心身を作業に適した状態へ誘導するために、機能性成分が放出されてもよい。このような機能性成分は種々ある。機能性成分は香りとして知覚されなくてもよい。機能性成分は、例えば、シトロネロール、リモネン、酢酸ボルニル、カンファーまたは1,8-シネオールの一種以上であるとよい。機能性成分は、適当な濃度に調整されて放出されるとよい。機能性成分は、特定の作業者のみに対して放出されてもよいし、その作業者がいる環境下(例えば室内)全体に対して放出されてもよい。
本システムは、推定手段や放出手段の他に、人の呼吸や心拍を直接または間接に測定する測定手段と、測定手段から得られたデータを処理または解析する解析手段を適宜備えてもよい。また、心身が適正状態にないと推定されるとき、機能性成分の放出に替えて、またはその放出と共に、音や振動等の刺激(警告)が作業者に与えられてもよい。
被験者に対して行った試験の様子を図1に模式的に示した。具体的には、次の通りである。
無作為に抽出した被験者20名に対して試験を行った。
各被験者に次の数字探索課題を処理させた。試験開始後(合図後)、着席した被験者の前にあるディスプレイの画面に100個の数字群(0~99)が格子状にランダムに表示される。それと同時に、その画面上部に探索対象の数字が表示される。ランダム表示された数字群から、制限時間内(10秒内/緑色のバーが消えるまでの間)に、探索対象の数字を、被験者に探索させる。正しい数字を探索してクリックできたときは、「探索成功」とする。制限時間内に、正しい数字がクリックされなかったときは、「探索失敗」とする。こうした課題処理(以下、「タスク」という。)を3分間継続する。
香り成分(機能性成分)を放出しない無臭環境下(1条件)と、図3に示した9種の香り成分を個別に放出する芳香環境下(9条件)とを併せた10条件下で、1条件あたり1セットのタスクを被験者に課した。こうして被験者一人あたり、合計で10セットのタスク(10×6回のタスク)を行った。
被験者の心電図を、第II誘導胸部誘導法により測定した。心電図は、本試験中、継続して測定した。心電図の測定には、Polymate Mini AP108(株式会社ミユキ技研製)を用いた。
(1)指標値
心電図から得られた心電データ(心電波形)からR波を検出して、その時間間隔(RRInterval)を心拍間隔とした。心拍間隔の時系列データである心拍変動データを周波数解析して、低周波数側(0.04~0.15Hz)の心拍変動成分(低周波成分:LF)と、高周波数側(0.15~0.50Hz)の心拍変動成分(高周波成分:HF)とを算出した。また、高周波成分の重心周波数(HFcentF)と、LF/LF+HF(LFnorm)も算出した。なお、心拍変動データの取込、周波数解析、HF、LF、HFcentFの算出は、数値解析ソフトウェア MATLAB(Math works社製)を用いて行った。このとき、R波の検出不良を判定するための心拍間隔が適切な範囲の値であることを確認し(例:500~1300ms)、R波の検出不良が含まれた区間は解析から除外した。
各タスク毎に、探索失敗割合を算出した。例えば、1タスクあたり、20個の数字を探索できた場合に、そのうち1個が探索失敗であったとき、探索失敗割合は1/20=0.05となる。なお、探索は、その成否とは別に、所定時間内において次々になされる。
こうして得られた全タスクに係るΔHFcentF、ΔLFnorm、探索失敗割合変化を、TukeyのHSD法による多重比較により整理した。その結果を図2に示した。なお、このときのデータ数(全タスク数)は723(被験者19名×10条件×4タスク)であった。被験者1名は心電計測に問題があったため、その被験者に係るデータは除外した。
(1)課題成績と指標値
図2から明らかなように、ΔHFcentF>0(正)、かつΔLFnorm<0(負)のときだけ、探索失敗割合変化が減少している。つまり、そのときだけ、課題成績が向上することがわかった(ΔHFcentF<0(負)かつΔLFnorm<0(負)のとき、および、ΔHFcentF<0(負)かつΔLFnorm>0(正)のときと比べて、p<0.01で有意に課題成績が向上したといえる)。
各条件下で、ΔHFcentF>0(正)かつΔLFnorm<0(負)(適正状態)となったタスクの回数の割合(適正状態の発生割合)を、図3にまとめて示した。例えば、香り成分を全く放出しないとき(条件j:無臭)、適正状態となったタスクは、全タスク76(被験者19名×4タスク)に対して20であった。このときの適正状態の発生割合は26.3%となる。
Claims (5)
- 呼吸周波数を指標する第1指標値(V1)の増減と、心拍情報から得られた心拍変動の高周波成分(HF)と低周波成分(LF)の合計に対する該低周波成分の割合(LF/HF+LF)である第2指標値(V2)の増減とに基づいて、作業に対する心身状態の適性を推定する推定手段を備え、
該推定手段は、該第1指標値が増加(ΔV1>0)し、かつ該第2指標値が減少(ΔV2<0)するときを作業に対する心身の適正状態と推定し、それ以外のときを作業に対する心身の非適正状態と推定する心身管理システム。 - 前記第1指標値は、前記高周波成分の重心周波数(HFcentF)である請求項1に記載の心身管理システム。
- 作業に適した心身状態へ誘導する機能性成分を放出する放出手段を備える請求項1または2に記載の心身管理システム。
- 前記機能性成分は、シトロネロール、リモネン、酢酸ボルニル、カンファーまたは1,8-シネオールの一種以上を含む請求項3に記載の心身管理システム。
- 前記放出手段は、前記第1指標値が増加(ΔV1>0)しないとき、または前記第2指標値が減少(ΔV2<0)しないときに、前記機能性成分を放出する請求項3または4に記載の心身管理システム。
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