JP2012171813A - 表面処理無機酸化物粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記方法は、下記の工程(1)乃至(6)を以下に記載の順で行うことを特徴とする;(1)塩基性触媒の存在下におけるゾルゲル反応を行い、無機酸化物粒子の分散液を得る反応工程、(2)前記反応工程によって得られた無機酸化物粒子の分散液に、特定の表面処理剤を添加して、前記無機酸化物粒子に対して第1の表面処理を行う工程、(3)前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子の分散液に、特定の化合物からなる凝析剤を添加する工程、(4)ろ過によって前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子を回収する工程、(5)回収した第1の表面処理後の無機酸化物粒子を乾燥する工程、並びに(6)乾燥後の第1の表面処理後の無機酸化物粒子に、特定の表面処理剤を添加して、前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子に対して第2の表面処理を行う工程。
【選択図】なし
Description
ところで近年、複写機やプリンタの電子写真技術において、印刷の高速化、高画質化が進んでいる。そのような複写機やプリンタにおいては、トナーの転写回数が増えるため、トナーの転写効率を高めるような添加剤が必要となってきている。そのような添加剤として、粒度分布幅が狭く、表面が疎水化されたゾル−ゲル法シリカ(表面処理無機酸化物粒子)が効果的であることが報告されている(特許文献1参照)。
このような表面が疎水化されたゾル−ゲル法シリカを製造する方法として、例えばシリカゾルにシラザン化合物を添加して反応させることにより、疎水化処理したシリカを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法における疎水化処理後のシリカの回収は、表面処理後のシリカを含有するスラリーから溶媒を留去することによって実施される。このような回収方法は、実験室スケールにおいてフラスコ内からシリカを取り出す方法には容易に適用できるものの、この方法を現実の大スケールの製造プラントに適用した場合、反応釜の中から疎水化されたゾル−ゲル法シリカを掻き出すことは困難であり、実用的ではない。そこで、一般的なシリカ回収方法として、シリカを含有するスラリーに対して減圧ろ過、遠心ろ過等のろ過法を適用することが考えられるが、特にゾル−ゲル法によって製造された粒子のような粒径1μm以下の小さな粒子にろ過法を適用すると、粒子がろ紙やろ布を通過してしまうという問題があった。また、ろ過後の粒子から溶媒を除去して乾固する際に、疎水化されたゾル−ゲル法シリカは、強固に凝集してしまい、再分散が困難となる傾向にあった。
(1)塩基性触媒の存在下における金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応を行い、無機酸化物粒子の分散液を得る反応工程、
(2)前記反応工程によって得られた無機酸化物粒子の分散液に、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記無機酸化物粒子に対して第1の表面処理を行う工程、
(3)前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子の分散液に、二酸化炭素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる凝析剤(以下、単に「凝析剤」ともいう。)を添加する工程、
(4)ろ過によって前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子を回収する工程、
(5)回収した第1の表面処理後の無機酸化物粒子を乾燥する工程、並びに
(6)乾燥後の第1の表面処理後の無機酸化物粒子に、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子に対して第2の表面処理を行う工程。
本発明の方法により製造された表面処理無機酸化物粒子は、凝集力が弱いから、容易に解砕することができ、流動性に優れる表面処理無機酸化物粒子とすることができる。更に、本発明の方法に使用される凝析剤は、無機酸化物粒子の分散液中にはそのまま又はその誘導体の状態で安定に存在することができるが、上記(5)の乾燥工程における乾燥温度を、例えば35℃以上とすることによって二酸化炭素、アンモニア及び水に分解するため、容易に分解・除去することができる。そのため、本発明の方法によると、これらの凝析剤に起因する不純物が生成物中に残存するおそれがなく、高い純度の表面処理無機酸化物粒子を得ることができる。このことは、粒子中に残存しやすい金属塩を使用する従来法に対する大きな利点である。
本発明の方法によって製造される表面処理無機酸化物粒子は、解砕性に優れ、表面処理によって疎水化されているとともに、ゾル−ゲル法の反応に基づくものである場合には粒度分布幅が狭いから、特に電子写真用トナーの外添剤として有用である。
以下、各工程について順に説明する。
工程(1)
本発明の方法においては、まず塩基性触媒の存在下、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応、即ちゾル−ゲル法の反応、により溶媒中に無機酸化物粒子が分散した分散液を得る、反応工程を行う。
ゾル−ゲル法によって無機酸化物粒子を含有する分散液を製造する方法は公知であり、本発明においてもこの工程は従来技術と特に変わるところなく行うことができる。即ち、適当な溶媒中、適当な塩基性触媒の存在下で原料である金属アルコキシドを、加水分解及び重縮合する。
本発明の製造方法において用いられる金属アルコキシドとしては、ゾル−ゲル法の反応による無機酸化物粒子の製造に用いられる化合物であれば、特に制限されず、製造する無機酸化物粒子の種類に応じて、適宜に選択して使用することができる。
本発明において、後述する無機酸化物粒子を得るための金属アルコキシドの具体例としては、チタンアルコキシドとして、例えばチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド等を;
ジルコニウムアルコキシドとして、例えばジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド等を;
ホウ素のアルコキシドとして、例えばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等を;
アルミニウムアルコキシドとして、例えばアルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド等を;
インジウムアルコキシドとして、例えばインジウム(III)イソプロポキシド等を;
ケイ素のアルコキシド(アルコキシシラン)として、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を;
ケイ素以外の4族元素のアルコキシドとして、例えばゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)メトキシド、すず(IV)ブトキシド等を、それぞれ挙げることができる。
上記のうちでもチタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランは、工業的に入手が容易に可能であること及び取扱いが容易であることからより好ましく、
特にメチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
本発明の製造方法において、上記のような金属アルコキシドは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、特に、アルコキシシランと、アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとを混合して使用することにより、シリカを含有する複合無機酸化物粒子を得ることができる。また、アルコキシシランを加水分解及び重縮合して一定径を有するシリカ粒子を得た後、アルコキシシラン以外の金属アルコキシドを添加して更に加水分解及び重縮合を行うことも可能であり、かかる場合には、シリカからなるコア粒子の表面にその他の金属酸化物が結合した複合無機酸化物粒子を得ることができる。
金属アルコキシドが常温常圧で液体である場合には、そのまま使用することも
可能であるし、後述する有機溶媒で希釈して使用することも可能である。金属アルコキシドが、常温常圧で固体である場合には、有機溶媒中に溶解又は分散して使用することができる。
ゾル−ゲル法による無機酸化物粒子の製造においては、適当な触媒が好ましく使用される。ゾル−ゲル法においては、酸性触媒が用いられる場合もあるが、粒子径の揃った球状粒子を得ることが容易であるという点で、本発明では塩基性触媒を使用する。ただし、ゾル−ゲル法では先ず酸性触媒下で予備加水分解を行った後に粒子成長を行わせることも多いが、本発明では上記のように予備加水分解時に酸性触媒を用いることを排除するものではなく、粒子成長時に塩基性触媒を用いる方法であればよい。
本発明において用いられる塩基性触媒としては、ゾル−ゲル法の反応による無機酸化物粒子の製造に用いられる公知の塩基性触媒であれば、これを好適に使用することができる。
このような塩基性触媒としては、例えば、アミン化合物、水酸化アルカリ金属等を挙げることができる。特に、目的とする無機酸化物粒子を構成する金属元素以外の金属を含有する不純物量が少なく、高純度の無機酸化物粒子が得られるという観点から、アミン化合物を用いることが好適である。このようなアミン化合物としては、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を挙げることができる。これらのうち、揮発性が高く除去し易いこと、ゾル−ゲル法の反応速度が速いこと等から、アンモニアを使用することが特に好ましい。
上記塩基性触媒は、工業的に入手可能なものを、そのまま(市販されている形態のまま)使用することも可能であるし、例えばアンモニア水等のように、水や有機溶媒に希釈して使用することも可能である。特に、反応の進行速度を制御しやすい点で、塩基性触媒を水に希釈し、必要に応じて濃度を調整した水溶液として使用することが好ましい。塩基性触媒として水溶液を使用する場合の濃度は、工業的に入手が容易であること、濃度調整が容易であること等から、1〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
塩基性触媒の使用割合は、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応の反応速度等を勘案して適宜決定すればよい。塩基性触媒の使用割合としては、反応溶液中における塩基性触媒の存在量が、使用する金属アルコキシドの質量に対して、0.1〜60質量%とすることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲で使用することがより好ましい。
本発明において上記金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応に使用される溶媒としては、極性溶媒が好ましい。ここで極性溶媒とは、常温・常圧下で100g当たり10g以上の水を溶解する有機溶媒であるか、又は水である。水以外の有機溶媒を複数種混合して使用してもよく、この場合には、当該有機溶媒の混合物が、上記の要件を満たせばよい。
上記水以外の極性溶媒である有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物等を挙げることができる。
アルコールはゾル−ゲル法の反応時に副生するものであるから、上記のうちメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコールを使用することが、反応後の無機酸化物粒子分散液中への不必要な不純物の混入を抑制する点、加熱によって容易に除去可能である点等から特に好ましい。
上記有機溶媒及び水は、単独で用いることも、或いは2種以上の溶媒の混合物として用いることも可能である。
有機溶媒又は水の使用割合は、目的とする無機酸化物粒子の粒径及びゾル−ゲル法の反応後の無機酸化物粒子分散液における無機酸化物粒子の濃度の所望値に応じて適宜決定すればよい。例えば、有機溶媒としてアルコールを使用する場合、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液の質量(100質量%)におけるアルコールの割合としてし、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%の範囲となるように使用される。
水の使用割合は、製造する無機酸化物粒子の粒径に応じて適宜調整して選択される。水の使用割合が少なすぎると反応速度が遅くなり、逆に多すぎると乾燥(溶媒除去)の際に長時間を要するため、水の使用割合はこれらの両要件を勘案して選択される。水の使用割合としては、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子分散液の全質量に対して、2〜50質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。
水は、反応溶媒の一部又は全部として使用してもよく、水以外の反応原料等を全部準備した後に反応液に加えてもよい。しかしながら、ゾル−ゲル法の反応を速やか且つ安定的に進行させるためには、水を溶媒の一部として使用すること、即ち溶媒として水と有機溶媒との混合物を用いること、が好ましい。ここでいう、溶媒としての水は、塩基性触媒添加等に伴って添加される場合も含む概念である。
本発明における加水分解及び重縮合反応(ゾル−ゲル法の反応)は、前記したように塩基性触媒の存在下で行われる。反応条件としては公知の条件を採用することができ、金属アルコキシドと塩基性触媒との接触方法も特に制限されず、反応装置の構成や反応スケールを勘案して適宜選択して決定すればよい。
ゾル−ゲル法の反応方法の一例を具体的に示すと、例えば以下の如くである。
反応容器に水、水以外の極性溶媒(有機溶媒)及び塩基性触媒を仕込み、ここに金属アルコキシド(又は金属アルコキシドの有機溶媒溶液)と塩基性触媒の水溶液とを同時に添加する方法を挙げることができる。この方法によれば、反応効率が良好で、粒子径の揃った球状の無機酸化物粒子を、効率よく、且つ再現性よく製造することができ、好ましい。この場合、例えば、先に金属アルコキシドの一部を添加した後に、残りの金属アルコキシドと塩基性触媒とを同時に添加することも可能である。
2種以上の金属アルコキシドを併用する場合、各々を混合して同時に添加してもよく、或いは各々を順次に添加することも可能である。特に、シリカを含有する複合無機酸化物の製造を行う際、先ず1種の金属アルコキシドを用いて予備加水分解・重縮合反応を行い、その後に他の種類の金属アルコキシドを添加して反応を継続することにより、複合金属アルコキシドを製造することができる。例えばアルコキシシランをメタノール中において塩酸の存在下に加水分解・重縮合反応を行って、先ず酸性触媒による加水分解を行い、次いでチタンテトライソプロポキシド等のアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを添加して反応を継続することにより、シリカからなるコアとチタニアからなるシェルとを有する複合無機酸化物を製造することができる。
金属アルコキシドと塩基性触媒の添加時間(添加開始から添加終了までの時間)は、粒径分布の幅の狭い粒子を製造するうえで非常に重要な因子である。この添加時間が短すぎると粒径分布幅が広くなる傾向にあり、逆に長すぎると安定した粒子成長ができない。従って、粒度分布幅が狭く、粒径が揃った無機酸化物粒子を得るには、粒子が成長するのに適した添加時間を選択して採用する必要がある。このような観点から、上記添加時間としては、所望の粒子直径100nmあたり、0.2〜8時間の範囲とすることが好ましい。
反応温度は、ゾル−ゲル法の反応が速やかに進行する温度であれば、特に制限されず、目的とする無機酸化物粒子の粒径に応じて適宜に選択すればよい。一般的に、反応温度が低いほど得られる無機酸化物粒子の粒径が大きくなる傾向にある。メジアン径が0.01〜5μmの無機酸化物粒子を得る場合、反応温度としては、−10〜60℃の範囲で適宜選択すればよい。
ゾル−ゲル法の反応を確実に進行させるために、金属アルコキシド及び塩基性触媒の滴下が終了した後、熟成(次の表面処理剤の添加を行うまで暫く時間をおくこと)を行ってもよい。この場合、熟成温度としては反応温度と同程度の温度、即ち−10〜60℃とすることが好ましく、熟成時間としては0.25〜5時間とすることが好ましい。
所望の粒径の無機酸化物粒子を得るために、熟成後に再度金属アルコキシド及び塩基性触媒を添加し、無機酸化物粒子の粒径を成長させる等の手法を用いてもよい。
上述した方法によって得られる分散液には、前述の原料として使用した金属アルコキシドの元素に対応する無機酸化物粒子が含有されている。用いた金属アルコキシドの種類、量及び添加順に応じて、如何なる組成の無機酸化物粒子が得られるかは、当業者には自明であろう。
このような無機酸化物のうち、ケイ素、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムの酸化物、及びこれらの元素の複数を含有する複合無機酸化物が好ましい。特に、後述する表面処理剤との反応性がよく、また例えばトナー用外添剤に適用したときの物性に優れるとの観点から、特にシリカ、又はケイ素と他の金属元素とを含有する複合無機酸化物が好ましく、更にはシリカが好ましい。
一般に、ゾル−ゲル法の反応により得られる無機酸化物粒子の粒径は、メジアン径が0.01〜5μmであるが、本発明の製造方法は、無機酸化物粒子の粒径に関わらず適用することができる。メジアン径が例えば1μm以下の、粒径が小さな無機酸化物粒子は、通常、固液分離で採用するろ過による回収が困難である。本発明の方法を、メジアン径が0.01〜1μmと、特に粒径が小さな無機酸化物粒子の製造に適用すると、小粒径の無機酸化物粒子を簡易に回収することができ、好適である。
ゾル−ゲル法の反応により製造される無機酸化物粒子は、粒径分布幅が狭いことが特徴である。前記の製造方法により得られる無機酸化物粒子の粒径分布幅は非常に狭く、例えば粒径分布の広がりを示す指標の1つである変動係数として40%以下とすることができる。本発明においては、この変動係数を30%以下とすることも可能である。しかしながら本発明の製造方法は、分散液中に含有される無機酸化物粒子の粒径分布幅に関わらず適用することができる。
当該分散液中に含まれる無機酸化物粒子の割合が多すぎると、分散液の粘度が高くなるため、取り扱いが困難となる。一方、分散液中の無機酸化物粒子の割合が少なすぎると、1回の反応で得られる無機酸化物粒子の量が少なくなり、不経済である。このような観点から、得られる無機酸化物粒子分散液中の無機酸化物粒子の濃度は、1〜40質量%とすることが好ましく、特に2〜25質量%とすることが好ましい。従って無機酸化物粒子の濃度が上記の範囲に調整されるよう、極性溶媒、特に水以外の極性溶媒の使用量を調整しておくことが好ましい。ゾル−ゲル法の反応によって得られた分散液中における無機酸化物粒子の割合が多すぎて取扱い性に難がある場合等には、次に説明する表面処理工程の前に、極性溶媒を添加して濃度調製を行うことが好ましい。
本発明においては、次いで工程(2)において、上記の如くして工程(1)で得られた無機酸化物粒子の分散液に、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記無機酸化物粒子の第1の表面処理を行う。
上記シリコーンオイルとしては、通常、無機酸化物粒子の表面処理に用いられる公知のシリコーンオイルを、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理無機酸化物粒子の性能等に応じて適宜選択して、使用すればよい。
シリコーンオイルの具体例としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を挙げることができる。
上記のうちのジメチルシリコーンオイルを使用することにより、無機酸化物粒子の疎水化を効率的に行うことができる点で、が好ましい。
シリコーンオイルの使用割合は特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粒子100質量部に対して、0.05〜80質量部とすることが好ましく、0.1〜60質量部とすることがより好ましい。
シランカップリング剤の具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記のうちのメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン又はデシルトリメトキシシランを使用することにより、無機酸化物粒子の疎水化が効率的に行うことできる点で、好ましい。
シランカップリング剤の使用割合は特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粒子100質量部に対して、0.05〜80質量部とすることが好ましく、0.1〜40質量部とすることがより好ましい。
シラザンの使用割合は、特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用する無機酸化物粒子100質量部に対して、0.1〜150質量部とすることが好ましく、1〜120質量部とすることがより好ましい。
上記の表面処理剤は、単独で1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のような表面処理剤のうち、得られる表面処理無機酸化物粒子の流動性がよいことから、シランカップリング剤及びシラザンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましく、シラザンを使用することがより好ましい。
第1の表面処理を行う際の処理温度は、使用する表面処理剤の反応性等を勘案して決定すればよいが、処理温度が低すぎると反応の進行が遅く、高すぎると操作が面倒であるため、10〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。
第1の表面処理を行う際の処理時間は特に制限はされず、使用する表面処理剤の反応性等を勘案して決定すればよい。表面処理反応の十分な進行と、工程時間を短くすることの双方を考慮して、処理時間を0.1〜48時間とすることが好ましく、0.5〜24時間とすることがより好ましい。
本発明における工程(3)は、前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子の分散液に、二酸化炭素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる凝析剤を添加する工程である。このことにより、分散液中で表面処理無機酸化物粒子の弱い凝集体が形成される。この凝集体は、分散液中に存在する凝析剤又はその誘導体の存在により、分散液中で安定に存在することが可能であり、従ってろ過により容易に回収することができることとなる。
無機酸化物粒子の分散液に金属塩を添加して無機酸化物粒子の凝集体を形成する技術は公知であるが、この方法によると、例えばナトリウム塩、カリウム塩等を使用した場合、得られる無機酸化物粒子にこれらの塩を構成する金属元素成分が混入してしまう可能性があり、これを除去するための洗浄(精製)操作が必要となり工業的に不利となる。
これに対して本発明で使用される上記の凝析剤は、わずかの加熱により容易に分解・除去されるため、高純度の表面処理無機酸化物粒子を容易に製造することができる利点がある。本発明の方法によると、得られる表面処理無機酸化物粒子中における、例えばナトリウム元素の含有割合を100ppm以下とすることができ、予好ましくは10ppm以下とすることが可能である。
凝析剤の使用割合及び添加方法は、使用する凝析剤の種類に応じて下記のように設定することができる。凝析剤の使用割合は、分散液中での表面処理無機酸化物粒子の弱い凝集体の形成の程度と、不当に多量の原料を使用することの無駄とのバランスを勘案することによって設定される。以下における凝析剤の使用割合の基準としての無機酸化物粒子の質量は、用いた金属アルコキシドがすべて加水分解及び重縮合して無機酸化物粒子となっていると仮定した場合の換算値である。
二酸化炭素の添加方法としては、気体の状態で分散液中に吹き込む方法、固体の状態(ドライアイス)で添加する方法等を挙げることができるが、固体の状態で添加することが、操作が簡単であることから好ましい。
上記凝析剤として炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はカルバミン酸アンモニウムを使用する場合、その使用割合は、分散液中に含有される表面処理無機酸化物粒子100質量部に対して、15質量%以上とすることが好ましく、15〜80質量部とすることがより好ましく、17〜60質量部とすることが更に好ましく、特に20〜50質量部とすることが好ましい。
炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はカルバミン酸アンモニウムは、固体の状態で添加してもよく、適当な溶媒に溶解した溶液状態で添加してもよい。これらを溶液状態で添加する場合に使用される溶媒としては、これらを溶解するものであれば特に制限されないが、溶解能力が高く、またろ過後の除去が容易であるとの観点から、水を使用することが好ましい。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はカルバミン酸アンモニウム溶液の濃度は、これらが溶解する範囲ならば特に制限されないが、濃度が低すぎると溶液の使用量が多くなり、不経済であるため、2〜15質量%とすることが好ましく、特に5〜12質量%とすることが好ましい。
特に、いわゆる「炭酸アンモニウム」として市販されている、炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムとの混合物は、これをそのまま、或いは適当な溶媒に溶解した溶液として使用することができる。この場合における、炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムとの合計の使用割合、これを溶液として添加する場合に使用される溶媒の種類及び溶液の濃度は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はカルバミン酸アンモニウムの場合として上記したところと同様である。
本発明における凝析剤としては、炭酸水素アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、炭酸水素アンモニウムを使用することがより好ましく、特に炭酸水素アンモニウムを水溶液として添加することが好ましい。
本発明の工程(3)において、第1の表面処理無機酸化物粒子の分散液中へ凝析剤を添加する際の温度は特に制限はされないが、工程(2)において表面処理を行う際の好ましい温度と同じ温度範囲で実施することができ、表面処理を行った際と同じ温度で実施すれば足りる。
凝析剤の添加後、熟成を行う、即ち次工程のろ過までに暫く間隔をおくこと、が好ましい。凝析剤添加後に熟成を行うことにより、前記した表面処理無機酸化物粒子の弱い凝集体の形成が促進されることとなり、好ましい。熟成時間は長いほどよいが、長すぎると不経済である。一方、熟成時間が短すぎると、第1の表面処理無機酸化物粒子の弱い凝集体の形成が不十分となる。そこで熟成時間としては、0.5〜72時間とすることが好ましく、特に1〜48時間とすることが好ましい。熟成の際の分散液の温度は特に制限されず、凝析剤添加の際の好ましい温度と同じ温度範囲で実施することができ、凝析剤の添加を行った際と同じ温度で実施すれば足りる。
本発明の工程(4)は、上記のようにして凝析剤を添加し、好ましくは熟成した後の、第1の表面処理後の無機酸化物粒子を含有する分散液から、該表面処理無機酸化物粒子を回収する工程である。
上記工程(3)によって弱い凝集体を形成した表面処理無機酸化物粒子は、ろ過によって容易に回収することができる。ろ過の方法は特に制限はされず、例えば減圧濾過、加圧ろ過、遠心ろ過等の公知の方法を適用することができる。
ろ過で使用する、ろ紙やフィルター、ろ布等(以下、これらを包括して「ろ紙等」という。)は、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく使用することができ、分離装置(ろ過器)のスケールに応じて適宜選択すればよい。本発明によれば工程(3)における凝析剤の添加により一次粒子が弱く凝集した凝集体となっているため、ろ紙等の孔径は一次粒子径よりもはるかに大きくてよく、例えばメジアン径が、0.01〜5μmの無機酸化物粒子であれば、例えば孔径5μm程度のもので十分である。このようにろ紙等の孔径が大きなものですむため、迅速にろ過することが可能である。
ろ過により、第1の表面処理後の無機酸化物粒子がケークとして回収される。
上記工程(3)において炭酸水素アンモニウム水溶液を使用した場合、得られたケークを、適当な溶媒、例えば水、アルコール等、でリンスすることにより、ゾル−ゲル法による反応で使用した溶媒、塩基性触媒、未反応の表面処理剤の分解乃至除去を行うことができる。
次いで、上記工程(4)で回収した第1の表面処理後の無機酸化物粒子を、工程(5)において乾燥する。
本発明においては、上記のようにして回収された第1の表面処理後の無機酸化物粒子のケークは、35℃以上の温度で乾燥すると、その解砕性が更に向上する。従って本発明においては、工程(5)における乾燥温度は、35℃以上の温度とすることが好ましい。この温度における加熱により、上記のろ過、リンス等によっても除去されずにケーク中に残存している凝析剤を、熱分解により容易に除去することができる。このことも本発明の大きな利点の1つである。
乾燥の方法は特に制限はされず、送風乾燥や減圧乾燥等の公知の方法を採用することが可能である。しかしながら、本発明者らの検討により、大気圧下で乾燥するよりも減圧下で乾燥する方が、より解砕され易くなる傾向にあることが明らかとなったため、減圧乾燥を採用することが好ましい。
乾燥時の温度を高くする方が、凝析剤の分解効率の観点及びより解砕され易い表面処理無機酸化物粒子とすることの観点からは有利である。しかしながら乾燥温度が高すぎると、表面処理によって無機酸化物粒子の表面に導入された置換基が分解することとなるため、好ましくない。また、この乾燥温度が高すぎると表面無機酸化物表面の水の含有割合が著しく少なくなるため、得られる表面処理無機酸化物粒子をトナーの外添剤として用いる場合に帯電立ち上がり性が悪化する点でも不利となる。従って、上記のバランスをとるために、乾燥の温度は35〜200℃とすることが好ましく、50〜200℃とすることがより好ましく、特に80〜200℃とすることが好ましく、120〜200℃とすることがとりわけ好ましい。
乾燥時間は、特に制限はされないが、2〜48時間程度とすることにより、第1の表面処理後の無機酸化物粒子を十分に乾燥することができる。
本発明においては、上記のようにして得られた、乾燥後の第1の表面処理後の無機酸化物粒子に対して、本工程(6)において、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子に対して第2の表面処理を行う。
工程(6)において使用することのできる表面処理剤としては、上記工程(2)において第1の表面処理を行うための表面処理剤として説明したものと同様のものを使用することができる。しかしながらこの第2の表面処理工程においては、無機酸化物粒子の表面の官能基と直接に化学結合することが可能な表面処理剤を用いることが、反応性を有さない表面処理剤(例えば通常のシリコーンオイル)を用いた場合と比較して、得られる表面処理酸化物粒子の流動性に優れることとなり、好ましい。
第2の表面処理工程における表面処理剤の使用割合は、その種類に応じて、それぞれ以下のとおりである。
シリコーンオイル:第1の表面処理後の無機酸化物粒子100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.01〜20質量部;
シランカップリング剤:第1の表面処理後の無機酸化物粒子100質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.2〜50質量部;及び
シラザン:第1の表面処理後の無機酸化物粒子100質量部に対して、好ましくは0.10〜150質量部、より好ましくは0.2〜100質量部。
工程(6)における第2の表面処理は、無機酸化物粒子表面に、表面処理剤と反応可能なシラノール基の十分な量を確保するとの観点から、水の存在下に行うことが好ましい。この場合における水の使用割合としては、第1の表面処理後の無機酸化物粒子100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましく、0.2〜20質量部とすることがより好ましい。
処理温度:好ましくは100〜500℃、より好ましくは150〜350℃;
処理圧力:好ましくは3×105以下、より好ましくは1×104〜2×105Pa
;及び
処理時間:好ましくは1〜300分、より好ましくは5〜180分。
工程(6)における第2の表面処理は、1回だけ行ってもよく、2回以上行ってもよい。第2の表面処理を2回以上行う場合には、各回に使用する表面処理剤の種類及び量、並びに処理条件は、それぞれ同じであってもよく、各回ごとに異なっていてもよい。特に、各回ごとに異なる表面処理剤を使用することにより、表面の性質がより緻密に制御された表面処理酸化物粒子を得ることができることとなる。
上記の如き本発明の表面処理無機酸化物粒子の製造方法によって得られた表面処理無機酸化物粒子は、流動性に優れ、好ましくはその表面が高度に疎水化されている。また、本発明の方法によって得られた表面処理無機酸化物粒子は、窒素等の不純物の含量が極めて少ないものである。
表面処理無機酸化物粒子の流動性は、凝集度として評価することができ、この値が低いほど流動性に優れる。
この凝集度は、目開き355μmの篩、目開き250μmの篩及び目開き150μmの篩(いずれも直径75mmの、JIS Z8801準拠の篩である。)を、上からこの順に、それぞれの篩の間隔が一定の幅(2cm)となるように重ねた三段篩を準備し、最上段の篩上に粒子5gを乗せ、振幅1mm及び振動数60Hzで上下に15秒間振動を行った後に各篩上に残存した粒子量から、下記数式によって算出することができる。
凝集度(%)={(上段篩残+中段篩残×0.6+下段篩残×0.2)}÷表面処理無機酸化物粒子の初期質量×100
このような凝集度の測定は、市販の粉粒体特性測定機、例えばホソカワミクロン(株)製のパウダテスタ(登録商標)を用いて容易に測定することができる。
本発明の方法によって得られる表面処理無機酸化物粒子は、その凝集度を60%以下とすることができ、更には50%以下とすることができる。
表面処理無機酸化物粒子の窒素含量は、例えば酸化物粒子を高温で完全酸化させた後に元素分析を行う方法によって定量することができる。
本発明の方法によって得られる表面処理無機酸化物粒子は、その窒素含量を0.05%以下とすることができ、更には0.02%以下とすることができる。
特に本発明の方法によって得られる表面処理無機酸化物粒子をトナーの外添剤として用いた場合には、該表面処理無機酸化物粒子は流動性に極めて優れるため、トナー用樹脂粒子への表面被覆率を高くすることができる利点を有する。また、本発明の方法の好ましい態様によって得られる表面処理無機酸化物粒子は高度に疎水化されており、トナーチャージがリークする原因となる表面水分の吸着・解離が起こり難いから、帯電安定性に優れる。一方で粒子の表面には水分が存在するため、帯電立ち上がり性にも優れることとなり、好ましい。この点、従来のゾル−ゲル法による無機酸化物粒子は吸着・脱離が可能な有意量の水分を有しており、これをトナーの外添剤として使用するとトナーチャージのリークが生じ易く、従って帯電安定性に劣ることとなる。
また、本発明の方法によって得られる表面処理無機酸化物粒子は疎水性を有するから、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の各種樹脂材料の添加剤等として好適に使用することができる。
更に、本発明の方法によって得られる無機酸化物粒子は純度が極めて高いから、半導体の封止剤、トナー外添剤等に適用した場合に、対象材料を汚染することがなく、好適に使用することができる。
本発明における諸物性の測定方法は、以下の通りである。
50mLの水を入れた容量250mLのビーカー中に、シリカ粒子0.2gを加え、マグネチックスターラーで攪拌した。これにビュレットによってメタノールを徐々に加えて行き、試料粒子の全量がビーカー内の溶媒に濡れて懸濁した時点を終点として、滴定した。このとき、メタノールはチューブで溶液内に導き、添加するメタノールが試料に直接触れないようにした。
終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの容量%を疎水度として評価した。
ホソカワミクロン(株)製のパウダテスタPT−R(商品名)を用い、上段に目開き355μmの篩、中段に目開き250μmの篩及び下段に目開き150μmの篩を、それぞれの篩の間隔が2cmとなるように装着した。シリカ粒子5gを上段の篩上に載せて、振幅1mm及び振動数60Hzで上下に15秒間震とうを行った後に各篩上に残存したシリカ粒子の量から、下記数式によって凝集度(%)を算出した。凝集度の値が小さいほど、流動性に優れるシリカである。
凝集度(%)={(上段篩残(g)+中段篩残(g)×0.6+下段篩残(g)×0.2)÷5(g)}×100
(株)住化分析センター製の高感度N.CアナライザーNC−22Fを用い、ボートにシリカ粒子50mgを秤り取り、830℃において完全酸化させた後、TCDガスクロマトグラフィーにて窒素成分の定量分析を行うことによって、シリカ粒子中の窒素含量(質量%)を測定した。
(金属元素成分量の測定)
各実施例、比較例及び参考例で得られた無機酸化物粒子の約2gを精秤して白金皿に移し、濃硝酸10mLおよびフッ酸10mLをこの順に加えた。これを200℃に設定したホットプレート上に乗せて加熱して内容物を乾固した。室温まで冷却後、更に濃硝酸2mLを加え、200℃に設定したホットプレート上に乗せて加熱して溶解した。室温まで冷却後、白金皿の内容物である溶液を容量50mLのメスフラスコに移し、超純水で希釈して標線に合わせた。
これを試料として、ICP発光分析装置((株)島津製作所製、型番「ICPS−1000V」)により、金属元素成分量を測定した。
各実施例、比較例及び参考例で得られた無機酸化物粒子0.8g及び中位径6.1μmのスチレンーアクリル樹脂粒子20gを100mLのポリエチレン製容器に入れ、振とう機で60分間混合した。得られた混合粒子につき、電界放射型走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、型番「S−5500」)を用いて倍率10,000倍で50視野観察した。得られた画像につき、画像解析システム(旭化成(株)製、商品名「IP−1000PC」)を用いて、下記の式により樹脂表面の被覆率の平均値を算出した。このとき、表面被覆率が高いほどトナー用の外添剤として良好であり、この値が5%以上であった場合、実用レベルと評価することができる。
表面被覆率(%)=無機酸化物粒子に覆われている部分の面積/スチレンーアクリル樹脂粒子の面積×100
50mLスクリュー管瓶7本を準備し、これらの中に上記樹脂表面の被覆率の測定で用いた無機酸化物粒子とスチレンーアクリル樹脂との混合粒子1gと、粒径範囲45〜75μmのフェライトキャリア99gとをそれぞれ入れ、25℃50%相対湿度の条件下で24時間以上静置し、調湿した。次いで、調湿後の試料が入ったスクリュー管瓶を、アズワン(株)製のミックスローター「VMR−5」にセットし、ローター回転数90rpm、混合時間1分、3分、5分、10分、30分、60分又は120分間にてそれぞれ混合した。
上記の各試料につき、京セラケミカル(株)製、粉体帯電量測定装置「TB−203」を使用し、ブロー圧10kPa、引き圧−5kPaにて10秒間窒素ブローした後の摩擦帯電量を測定した。
このとき、混合時間3分の摩擦帯電量を帯電立ち上がり性の指標とした。この数値が高いほど、トナー特性として良好である。
また、摩擦帯電量の最大値を飽和摩擦帯電量とし、下記数式により、帯電安定率を算出した。この帯電安定率が高いほどトナー特性として良好である。
帯電安定率(%)=混合時間120分の摩擦帯電量(μC/g)/飽和摩擦帯電量(μC/g)×100
(1)反応工程
10Lの4つ口フラスコに、塩基性触媒として15質量%アンモニア水150g(後述の金属アルコキシドの質量に対して1.2質量%)及び有機溶媒としてメタノール1,040g(反応により生成する無機酸化物粒子分散液の質量に対して27質量%)を投入し、35℃で攪拌した。ここに、金属アルコキシドとしてテトラメトキシシラン1,940g及び塩基性触媒として5質量%アンモニア水700g(金属アルコキシドの質量に対し、アンモニアの含量として1.8質量%、先に仕込んだアンモニア水との合計で3.0質量%)を、それぞれ独立に液中滴下した。滴下は、5時間で終了するように速度を調整して実施した。滴下開始後10分の段階で、反応液は白濁しており、反応が進行している様子が確認された。滴下終了後、35℃において0.5時間の熟成を行うことにより、無機酸化物粒子の分散液を得た。
この無機酸化物粒子分散液の質量は3,830gであり、分散液中のシリカ濃度は20質量%(シリカ量として766g)である。
(2)第1の表面処理工程
上記工程(1)で得られた分散液に、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン230g(分散液中のシリカに対して30質量%)を添加し、35℃において1時間攪拌を行った。
上記工程(2)で得られた表面処理シリカ分散液に、凝析剤として10質量%の炭酸水素アンモニウム水溶液1,530g(炭酸水素アンモニウム量として153gであり、分散液中のシリカに対して20質量%)を添加した後、35℃において2時間攪拌した。
(4)粒子回収工程
上記工程(3)で得られた凝析剤添加後の分散液につき、減圧濾過を行い、ケークを得た。このとき、ろ過漏れしている様子は確認されなかった。
(5)粒子乾燥工程
工程(4)で回収したケークを、150℃において24時間減圧乾燥して、第1の表面処理後のシリカ粒子790gを得た。
(6)第2の表面処理工程
上記工程(5)で得られた第1の表面処理後のシリカ粒子を20L圧力容器に入れ、230℃まで昇温した。容器内を窒素雰囲気に置換後、大気圧力下で密封し、粒子を攪拌しながら水16gを噴霧した。その後、15分間攪拌を継続した後、脱圧し、ヘキサメチルジシラザン95gを噴霧した。更に攪拌を1時間継続した後、脱圧することにより、第2の表面処理後のシリカ粒子400gを得た。
得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
上記実施例1において、工程(6)の第2の表面処理工程を以下の工程(6’)のとおりに行ったほかは、実施例1と同様にして、第2の表面処理後のシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
(6’)第2の表面処理工程(別法1)
工程(5)で得られた第1の表面処理後のシリカ粒子を20L圧力容器に入れ、230℃まで昇温した。容器内を窒素雰囲気に置換後、大気圧力下で密封し、粒子を攪拌しながらメチルトリメトキシシラン50gを噴霧した。攪拌を1時間継続した後、脱圧し、水16gを噴霧し、攪拌を15分間継続した。脱圧後、ヘキサメチルジシラザン95gを噴霧して、更に攪拌を1時間継続した。次いで脱圧することにより、第2の表面処理後のシリカ粒子240gを得た。
上記実施例1において、(6)第2の表面処理工程を以下の工程(6”)のとおりに行ったほかは、実施例1と同様にして、第2の表面処理後のシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
(6”)第2の表面処理工程(別法2)
上記工程(5)で得られた第1の表面処理後のシリカ粒子を20L圧力容器に入れ、230℃まで昇温した。容器内を窒素雰囲気に置換後、大気圧力下で密封し、粒子を攪拌しながら水16gを噴霧した。その後、15分間攪拌を継続した後、脱圧し、ヘキサメチルジシラザン95gを噴霧した。攪拌を1時間継続した後、脱圧し、更に粘度50cpsのシリコーンオイル1gを噴霧して攪拌を1時間継続した。次いで脱圧することにより、第2の表面処理後のシリカ粒子300gを得た。
上記実施例1において、(6)第2の表面処理工程を行わなかったほかは、実施例1と同様にして、表面処理したシリカ粒子790gを得た。得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
上記実施例1において、(3)凝析剤添加工程を行わずに、(4)粒子回収工程を行おうと試みたが、粒子がろ紙を通過してしまい、回収することができなかった。そこで、減圧下で分散液中の溶媒を除去することにより、シリカを回収した。その後、実施例1における(6)第2の表面処理工程と同様の操作を行い、表面処理シリカ粒子600gを得た。得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
なお、本比較例における樹脂表面の被覆率は5%未満であり、樹脂表面へはほとんど付着しておらず、実用レベルに満たないと判断されたため、摩擦帯電量は測定しなかった。
特許文献3(特開2000−44226号公報)の実施例1に準拠して表面処理シリカ粒子を調製した。
実施例1の(1)反応工程と同様にして得られた表面処理前のシリカ分散液2,297gを5L4つ口フラスコに投入し、60〜70℃の温度を維持しつつ加熱してメタノール678gを留去した時点で、水1,600gを添加し、次いで更に70〜90℃の温度を維持しつつ加熱してメタノール195gを留去し、シリカ微粒子の水性分散液を得た。
この水性分散液に、室温においてメチルトリメトキシシラン115.8g及び5.4質量%アンモニア水46.6gを0.5時間かけて滴下し、滴下後更に15時間攪拌を継続して、シリカ微粒子の表面処理を行った。
上記のようにして得られた表面処理後のシリカを含有する分散液に、メチルイソブチルケトン1,000gを添加した後、80〜110℃の温度を維持しつつ加熱して、メタノール及び水を、その合計量として1,338gを7時間かけて留去した。
得られた分散液に、室温においてヘキサメチルジシラザン357.6gを添加し、120℃に加熱して3時間反応を行い、シリカ粒子の表面をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下留去することにより、520gの表面処理シリカを得た。
得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
なお、本比較例における樹脂表面の被覆率は5%未満であり、樹脂表面へはほとんど付着しておらず、実用レベルに満たないと判断されたため、摩擦帯電量は測定しなかった。
特許文献1(特開2002−108001号公報)の合成例1に準拠して表面処理シリカ粒子を調製した。
上記実施例1の(1)反応工程と同様にして得られた表面処理前のシリカ分散液600g(シリカ量として120g)を加熱し、メタノールを除去した後、トルエンを加え更に加熱して水を除去した。次にここに、ヘキサメチルジシラザンを48g(シリカスラリー中のシリカに対して40質量%の割合)を加え、撹拌下に120℃で2時間加熱した後、更に加熱してトルエンを除去した。これを100℃で24時間減圧乾燥することにより、107gの表面処理シリカを得た。
得られたシリカ粒子について、上記の方法に従って各種測定を行った。結果は表1に示した。
なお、本比較例における樹脂表面の被覆率は5%未満であり、樹脂表面へはほとんど付着しておらず、実用レベルに満たないと判断されたため、摩擦帯電量は測定しなかった。
Claims (7)
- 少なくとも下記の工程(1)乃至(6)を以下に記載の順で行うことを特徴とする、表面処理無機酸化物粒子の製造方法;
(1)塩基性触媒の存在下における金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応を行い、無機酸化物粒子の分散液を得る反応工程、
(2)前記反応工程によって得られた無機酸化物粒子の分散液に、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記無機酸化物粒子に対して第1の表面処理を行う工程、
(3)前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子の分散液に、二酸化炭素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる凝析剤を添加する工程、
(4)ろ過によって前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子を回収する工程、
(5)回収した第1の表面処理後の無機酸化物粒子を乾燥する工程、並びに
(6)乾燥後の第1の表面処理後の無機酸化物粒子に、シリコーンオイル、シランカップリング剤及びシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を添加して、前記第1の表面処理後の無機酸化物粒子に対して第2の表面処理を行う工程。 - 前記工程(3)における凝析剤が、二酸化炭素及び炭酸水素アンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の表面処理無機酸化物粒子の製造方法。
- 前記工程(3)における凝析剤の添加量が、無機酸化物粒子100質量部に対して15質量部以上である、請求項1又は2に記載の表面処理無機酸化物粒子の製造方法。
- 前記工程(3)における凝析剤が、炭酸水素アンモニウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理無機酸化物粒子の製造方法。
- 前記炭酸水素アンモニウムを水溶液として添加する、請求項4に記載の表面処理無機酸化物粒子の製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表面処理無機酸化物粒子の製造方法によって製造されたことを特徴とする、表面処理無機酸化物粒子。
- 目開き355μmの篩、目開き250μmの篩及び目開き150μmの篩(いずれも直径75mmの、JIS Z8801準拠の篩である。)を、上からこの順に2cm間隔で重ねた三段篩を準備し、最上段の篩上に粒5g子を乗せ、振幅1mm及び振動数60Hzで上下に15秒間振動を行った後に各篩上に残存した粒子量から、下記数式によって算出した凝集度が60%以下である、請求項6に記載の表面処理無機酸化物粒子。
凝集度(%)={(上段篩残+中段篩残×0.6+下段篩残×0.2)}÷表面処理無機酸化物粒子の初期質量×100
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