JP2012170911A - 高速凝集沈澱池を立ち上げる際に行う初期母フロックの形成方法 - Google Patents

高速凝集沈澱池を立ち上げる際に行う初期母フロックの形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高速凝集沈澱池の運転を開始又は再開する際に行う初期母フロックの形成を、短時間で行うことができる方法を提案する。
【解決手段】高速凝集沈澱池を立ち上げる際、水槽内において、初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を存在させて当該初期原水から初期母フロックを形成し、その後、当該初期母フロックの存在下で原水からフロックを形成する高速凝集沈澱法における初期母フロックの形成方法であって、100μm以上の質量割合が5%以下で、且つ10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有し、且つ比重が2.0〜4.0である微細砂からなる凝集助剤と、無機凝集剤とを、初期原水に加えて初期母フロックを形成することを第1の特徴とし、水槽内における微細砂の濃度を100mg/L〜4000mg/Lとすることを第2の特徴とする、初期母フロックの形成方法を提案する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水道水、工業用水などを製造する水処理分野や、下水を処理する水処理分野などで実施されている高速凝集沈澱池において、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、すなわち高速凝集沈澱池の運転を開始又は再開する際に行う初期母フロックの形成方法に関する。
河川水、地下水、雨水等の水処理では、凝集沈澱処理や砂ろ過処理などの固液分離技術によって、不溶解性分である濁度成分や藻類等を除去する処理が行われている。
このうち凝集沈澱処理は、無機凝集剤やpH調整剤を原水に添加して、原水中の汚濁物質を析出させたり、無機凝集剤から生成するフロックに汚濁物質を吸着させたりした後に、汚濁物質を含むフロックを原水から沈降除去して清浄化する処理方法である。
従来の凝集沈澱処理では、混和槽、フロック形成槽及び沈澱槽を連続して設置し、混和槽で原水(被処理水)と無機凝集剤を混合した後、これをフロック形成槽、沈澱槽へと移しながらフロックを形成させて原水の浄化を図る、いわゆる横流式沈澱池が採用されていた。しかし、この方法は、フロックの沈澱速度が遅く、一定の原水を処理するのに広い面積が必要であるという問題があった。
そこで、沈澱部の上昇流速を速くして沈澱部の設備面積を小さくすることができる“高速凝集沈澱池”が提案された。
図2は、高速凝集沈澱池の実施設の構成例を示す模式図である。原水51に無機凝集剤58が添加された後、一次撹拌室52および二次撹拌室53を備えた撹拌部に送られ、ここでスラリが生成される。そして、このスラリが沈澱部54内でスラリ界面を形成する一方、沈澱部54の下部は1次撹拌室52と連通しており、沈澱部54内のスラリ(;フロックを含有している)は1次撹拌室52に返送され、1次撹拌室52内では既存のスラリの存在下で新たなスラリが生成されるようになっている。他方、沈澱部54内の沈澱水55は上方の越流口からオーバーフローして沈澱処理水として流出するようになっている。
高速凝集沈澱池は、フロック形成速度がフロック粒子数の2乗及びフロック粒径の3乗に比例することを利用して、フロックの濃度が高い部分を設けて、原水がここを通るようにすることで、初期の微細なフロックを、既に成長したフロック(これを本発明では「母フロック」と称する)に補足させながら凝集させて凝集沈澱の効率を高める方法である(非特許文献1)。よって、高速凝集沈澱池によれば、迅速にフロックを形成することができ、しかも、生成されたフロックが粗大で大きな沈降速度を有するため沈澱池面積が小さく済ませることもできる。また、高分子凝集剤を用いる必要が無いため、水道等、安全・安心を要求される水処理分野にも広く利用されている。
このような高速凝集沈澱地に関して、特許文献1には、無機凝集剤とともに被処理水に添加する不溶解性凝集助剤として、被処理水に添加した場合のゼータ電位が−40mV以下であり、比重が2.0以上4.0以下であり、粒度分布が100μm以上の粒子の存在割合が5質量%以下でかつ10μm以下の粒子の存在割合が30質量%以下である凝集助剤が開示されている。
「水道施設設計指針2000」、第199〜201頁
特開2006−7086号公報
この種の高速凝集沈澱池では、点検及び修繕を1年に1回程度の頻度で行う必要があり、その都度、沈澱池をいったん空にして点検及び修繕を行い、その後、空となった沈澱池内に新たな原水を引き込み、原水由来の濁質分をもとにして、フロック形成の種となる母フロック(本発明では、「初期母フロック」と称する)を形成して沈澱池内に滞留させる必要がある。
従来は、初期母フロックを形成して沈澱池内に十分滞留させるまでに長期間を要していたため、高速凝集沈澱池を新設した際或いはメンテナンスした際、通常運転に復帰させるまでに長期間を要するという課題を抱えていた。しかも、近年、ダム設置等の河川改修が進み、取水源となる河川水の濁度はますます低くなる傾向にあるため、初期母フロックの形成に要する期間がさらに長期化する傾向にあった。
そこで本発明の目的は、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、すなわち、高速凝集沈澱池の運転を開始又は再開する際に行う初期母フロックの形成を、より短時間で行うことができる方法を提案することにある。
本発明は、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、水槽内において、初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を存在させて当該初期原水から初期母フロックを形成し、その後、当該初期母フロックの存在下で原水からフロックを形成する高速凝集沈澱法における初期母フロックの形成方法であって、100μm以上の質量割合が5%以下で、且つ10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有し、且つ比重が2.0〜4.0である微細砂からなる凝集助剤と、無機凝集剤とを、初期原水に加えて初期母フロックを形成することを第1の特徴とし、水槽内における微細砂の濃度を100mg/L〜4000mg/Lとすることを第2の特徴とする、初期母フロックの形成方法を提案するものである。
高速凝集沈澱池の「水槽」とは、高速凝集沈澱池において初期原水が滞留する槽全体を意味し、例えば混和槽、フロック形成槽及び沈澱槽を別々に設けている場合には、その全てを包含する意味である。
本発明が提案する初期母フロックの形成方法によれば、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、すなわち、高速凝集沈澱池の運転を開始又は再開する際に行う初期母フロックの形成を、従来に比べて短時間で行うことができる。
実施例及び比較例で使用した実験装置、すなわち、実設備の高速凝集沈澱池を模擬した実験装置の構成を示した模式図である。 高速凝集沈澱池の構成例を示した模式図である。
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明がここで説明する実施形態に限定されるものではない。
<本初期母フロック形成方法>
本実施形態における初期母フロック形成方法は、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、水槽内において、初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を存在させて前記初期原水から初期母フロックを形成する方法(「本初期母フロック形成方法」と称する)に関するものである。
このように初期母フロックを形成した後は、水槽内に原水、すなわち被処理水を引き込み、初期母フロックの存在下で原水(被処理水)からフロックを形成し、清浄化した処理水を水槽から流出する一連の通常運転を開始又は再開することができる。
具体的な初期母フロック形成法としては、例えば、空の水槽内に初期原水を導入して必要量を溜めた後、或いは、初期原水を水槽内に溜める途中から、無機凝集剤及び凝集助剤を初期原水に加えて撹拌し、処理水を流出させることなく、初期原水から初期母フロックを形成する方法(「バッチ式形成法」と称する)を挙げることができる。
また、初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を空の水槽内に導入し、水槽内において撹拌して初期原水から初期母フロックを形成する一方、その際に水槽から処理水を流出させる方法(「フロー式形成法」と称する)を挙げることができる。
ただし、これらの方法に限定するものではなく、これら以外の方法を採用することも可能である。
(初期原水)
本発明において「初期原水」とは、初期母フロックを形成するために用いられる原水(被処理水)の意味である。バッチ式形成法においては、初期母フロック形成のために水槽内に溜める原水であり、フロー式形成法においては、初期母フロック形成のために水槽内に導入した原水全てである。
初期原水としては、例えば河川水、地下水及び雨水のほか、下水、し尿、産業排水等の排水の処理水など、浄化を必要とする水全般を包含する。
初期原水の濁度は10度以下であるのが好ましい。初期原水の濁度が10度より高ければ、本初期母フロック形成方法を採用しなくても、通常運転時のフロック形成条件によって、十分短時間のうちに初期母フロックを形成できる可能性があるからである。
このように本発明の効果をより一層享受できる観点からすると、初期原水の濁度は5度以下であるのがさらに好ましく、その中でも3度以下であるのがより一層好ましい。
初期原水のpHは6.0〜8.0の範囲に調整するのが好ましい。
原水(被処理水)が強酸性であると、例えばアルミニウムや鉄などの金属塩を含有する凝集剤などを使用する場合、アルミニウムが単純イオン(Al3+)の形で存在することになるため、フロックを形成させることが困難になる。また、原水が酸性の場合、Al3+としてアルミニウムが溶解する割合が多く、またその後の処理で被処理水を中性域にした場合に固形分が析出するようになる。その一方、原水(被処理水)がアルカリ性であると、アルミニウムは負電荷(AlO2−)として溶解する割合が増加し、その後の処理で被処理水を中性にすると固形分が析出する。これに対し、原水(被処理水)のpHが中性付近であると、Al3+と水酸化物イオンとが結合する割合が増加し、電気的に中性で不溶性の水酸化アルミニウムになる。この不溶性水酸化アルミニウムが濁度成分と凝集助剤とを取り込んでフロックになる。
このような観点から、初期原水のpHは6.0〜8.0、特に7.0以上或いは7.5以下の範囲に調整するのが好ましい。
よって、必要に応じて、初期原水にpH調整剤を加えてpHを調整した後、無機凝集剤及び凝集助剤を添加するのが好ましい。
この際、アルミニウムや鉄などの金属塩を凝集剤として用いる場合、金属塩が弱酸性であるため、水に加えるとpHが低下する。このときに必要以上にpHの低下が起こると、上述のようにフロックが形成しなくなるおそれがあるため、その場合には、アルカリ(苛性ソーダ、石灰、重炭酸ソーダなど)を用いて初期原水のpHを調整することが望ましい。
(凝集助剤)
凝集助剤としての微細砂は、100μm以上の質量割合が5%以下であり、且つ10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有し、且つ比重が2.0〜4.0であることが重要である。
このような微細砂を凝集助剤として用いれば、粘土、色コロイド、有機コロイド等、種々の濁度成分の凝集沈澱処理において、効果的にフロックの形成及び成長を促進することができる。
微細砂は、100μm以上の質量割合が5%以下で、10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有することが重要である。
粒径が100μm以上の粒子は、通常微粒子と呼ばれる粒子に比べて大きく、沈降速度も大きいため、沈積を防止して原水中に均一に分散させるためには、撹拌速度を大きくしなければならない。また凝集助剤の粒径が大きいということは、質量基準の添加量が同じでも粒子表面積は小さくなることを意味し、これにより凝集助剤と無機凝集剤との接触確率が減少しうる。したがって、凝集助剤として100μm以上の粒子があまり多く存在しないことがより好ましいと言える。さらに、10μm以下の粒子は、質量基準の添加量が同じでも粒子数が多くなることを意味し、これによりフロックに取り込まれない凝集助剤の割合も増加しうる。したがって、凝集助剤として10μm以下の粒子が必要以上に多く存在しないことが好ましいと言える。すなわち、フロックに取り込まれなかった凝集助剤が、自身で沈降し、処理水に混入することがないようにするためには、粒径が細かすぎず、かつ一定以上の沈降速度(すなわち一定以上の比重)を有することが必要となる。
微細砂はさらに、比重が2.0〜4.0であることが重要である。比重が大きすぎると、被処理水中に均一に分散させるために撹拌速度を増大させる必要が生じ、比重が小さすぎると、フロックの沈降速度を増加する作用が不十分となる上、フロックに取り込まれなかった場合に凝集助剤自身で沈降することが困難であるため、被処理水に凝集助剤が混入するおそれがある。
かかる観点から、微細砂の比重は2.4以上或いは2.7以下であるのがさらに好ましい。
なお、凝集助剤については、特開2006−7086号公報の段落[0022]−[0034]の記載も引用する。
微細砂の添加形態としては、注入ラインで閉塞しないようにすれば、粉体でも、溶液でもよい。
微細砂は、水に不溶解性で、かつ被処理水に添加した場合のゼータ電位が−30mV〜−60mVであることが重要である。
ゼータ電位とは、液体中の粒子が動くときに、同時に動く層と動かない層とのせん断面における電位、すなわち粒子のすべり面の電位のことであり、凝集状態の良否の判定指標として広く用いられる値である。
このようなゼータ電位を有する微細砂であれば、無機凝集剤から生成するフロックに効率的に取り込まれ、処理水に残留することがほとんどないという点で好ましい。凝集剤(PAC、硫酸アルミニウムなど)が水中で水酸化アルミニウムを生成する過程で、濁度成分と共に凝集助剤をも取り込んでフロックを形成するが、凝集助剤のゼータ電位が−30mV〜−60mVであることでフロックに取り込まれやすくなる。
かかる観点から、微細砂のゼータ電位は、特に−50mV以下であるのが好ましい。
このような微細砂は、水槽内における微細砂の濃度(初期原水に対する濃度)が100〜4000mg/Lとなるようにその添加量を調整するのが好ましい。すなわち、バッチ式形成法であれば、初期原水に対する微細砂の添加量が100〜4000mg/Lとするのが好ましく、フロー式形成法であれば、添加した微細砂が水槽から流出されることはないから、初期原水に対する微細砂の濃度が100〜4000mg/Lの範囲内となるように制御するのが好ましい。
微細砂が少ないと、凝集不良が生じて初期母フロックが十分生成せず、凝集で捕捉されなかった濁質分は浮遊し、立ち上げ時に処理水と共に越流して処理水濁度が上昇し、長時間を要するようになる。一方、微細砂が多すぎると、余分な微細砂が処理水中に残留して処理水水質の低下を招いたりする可能性がある。
よって、かかる観点から、微細砂の添加量は、水槽内における、初期原水に対する微細砂の濃度が200mg/L以上或いは2000mg/L以下、その中でも350mg/L以上或いは1200mg/L以下、さらにその中でも900mg/L以下となるように、その添加量を調整するのがさらに好ましい。
微細砂の添加速度に関しては、バッチ式形成法においては、微細砂を水槽内に投入開始してからの、微細砂の水槽内平均濃度の上昇速度が1〜90mg/L/minの範囲内となるように制御するのが好ましい。微細砂平均濃度の上昇速度が低過ぎては効率が悪い一方、高過ぎると、凝集不良を起こして初期母フロックの形成効率が低下してしまうことが確認されている。かかる観点から、バッチ式形成法においては、微細砂を水槽内に投入開始してからの、微細砂の水槽内平均濃度の上昇速度が60mg/L/min以下となるように制御するのがより一層好ましい。
他方、フロー式形成法においては、上記と同様の理由から、微細砂を水槽内に投入開始してからの、微細砂の水槽内平均濃度の上昇速度が120mg/L/min以下となるように制御するのが好ましく、中でも1mg/L/min以上或いは90mg/L/min以下、その中でも60mg/L/min以下となるように制御するのがより一層好ましい。
(凝集剤)
初期母フロック形成時に添加する無機凝集剤は、通常の凝集沈澱水処理方法において使用される一般的な凝集剤を用いることができる。例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸ばん土、固形硫酸アルミニウム、液体硫酸アルミニウム、硫酸第二鉄等を挙げることができる。これらのうちの1種或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
凝集剤は、微細砂100質量部に対して10〜150質量部加えるのが好ましい。
通常運転時には、凝集剤に対する凝集助剤の比率を一定範囲内になるように、両者の量を調整するのが好ましいが、初期母ブロック形成時には、微細砂に対する凝集剤の添加量が一定範囲内になるように調整するのが好ましい。そしてこの際、微細砂に対する凝集剤の量が少な過ぎると、凝集に取り込まれない微細砂が生じることになり、逆に多すぎると、フロックが膨化して沈降性に乏しいフロックが形成されるようになり、その結果、運転開始後に水質の低下を招く一因となる可能性がある。
よって、かかる観点から、微細砂100質量部に対して25質量部以上或いは100質量部以下の割合で凝集剤を加えるのがより一層好ましく、その中でも、40質量部以上或いは60質量部以下の割合で凝集剤を加えるのがさらにより一層好ましい。
(初期母フロック形成方法)
凝集助剤と微細砂の添加の順序はいずれでもよいし、同時に添加してもよい。
凝集剤と微細砂の注入点は同じとすることが好ましいが、凝集剤や微細砂を処理水中に残留させないという観点からすると、沈降性を有する微細砂を先に添加することが好ましい。
初期原水、凝集剤及び微細砂を水槽内に導入すると共に、或いは、導入した後、水槽内の初期原水を撹拌するのが好ましい。
(高速凝集沈澱池の構成)
高速凝集沈澱池の構成は、特に限定するものではない。例えば高速凝集沈澱池の原理及び機構を分類した、参考文献(設計指針)記載の分類で説明すると“スラリ循環型“、”スラッジブランケット型“、”複合型“の全てにおいて、本初期母フロック形成方法を適用することができる。
また、高速凝集沈澱池に傾斜板等沈降装置を組み合わせた構成など、水処理一般に用いられている変形や組合せにも、適用可能である。
<用語の説明>
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
(実験装置)
図1は、実施例及び比較例で使用した実験装置(以下「本実験装置」と称する)、すなわち、実設備の高速凝集沈澱池を模擬した実験装置の構成を示した模式図である。
原水貯槽の下流側に、一次撹拌室2(5.0L)及び二次撹拌室3(1.5L)を備えた撹拌部、沈澱部4が順次配設されている。沈澱部4は、径が120mm、高さ1500mmであり、上昇流速(標準)は50mm/minであり、原水ポンプ注入量で水量(上昇流速)が可変である。沈澱部4の下流側には、循環ポンプP3を経由して撹拌部の一次撹拌室2へスラリを返送するラインが設けられている。また、沈澱部4には、上方に越流口が設けられ、通常運転時、すなわち初期母フロック形成終了後に被処理水を処理する時には、オーバーフローした処理水が越流口から沈澱処理水5として流出するようになっている。
なお、実施例及び比較例の初期母フロック形成処理時においては、一次撹拌室内の原水のみに凝集剤及び微細砂を加えるようにした。
また、実施例及び比較例の初期母フロック形成処理中は、循環ポンプP3を常時稼動させて、沈澱部の越流口からオーバーフローしないようにすると共に、排泥に利用するポンプP4は稼働させないようにした。
(実施例1−8及び比較例1−3)
本実験装置を用いて、濁質源としてのカオリンを市水(藤沢市水道水)に添加して原水貯槽内で混合撹拌し、初期原水を調製した(濁度1度、pH7、水温15℃(室温))。
次に、調製した初期原水を一次撹拌室2内に導入し、撹拌羽が完全に浸漬する量の初期原水を撹拌部内に溜めた後、表1に示した量及び添加速度で凝集剤及び微細砂を加えて撹拌を開始した。
凝集剤及び微細砂を加えてから、表1に示した時間(初期母フロック形成時間)後に、沈澱部4内にスラリ界面が形成したことを目視で確認できたため、この時点で初期母フロック形成完了とした。
なお、「凝集剤」として、PAC(既存化学物質官報公示整理番号:1-12および1-17、CASNo.1327-41-9、JIS規格水道用ポリ塩化アルミニウムJISK1475、一般式[Al2(OH)nCl6-n]m(0<n<6、m≦10、塩基度=n/6×100%)、比重1.25/20℃、粘度11cps/20℃、pH2.5/20℃)を用いた。
「微細砂」として、成分:SiO294%以上、Al235%以下、Fe230.5%以下、粒度分布(レーザー回折 粒度分布測定装置 SALD-2100(島津製作所):100μm以上の質量割合3%、10μm以下の質量割合20%、比重:2.7、ゼータ電位が−50mVである微細砂を用いた。
なお、凝集操作においては、当然のことながら、凝集剤を注入するとアルカリ分が消費されて、アルカリ分が不足すると凝集反応に阻害を生じる。そこで、実施例および比較例では、適時苛性ソーダを注入し、水槽内のpHを7.0±0.5になるよう制御しているが、ここでは特に表記しない。
また、比較例3では、微細砂の代わりに、カオリンを加えた。
表1において、「微細砂及び凝集剤の濃度」とは、初期原水量に対する添加した微細砂又は凝集剤の比率、すなわち、撹拌部及び沈澱部内に存在する初期原水量(L)に対する、添加した微細砂又は凝集剤の量(mg)の割合(mg/L)を示している。
「微細砂及び凝集剤の濃度上昇速度」は、撹拌部及び沈澱部内に存在する微細砂又は凝集剤の平均濃度の投入開始してからの上昇速度(mg/L/min)を示している。
「初期母フロック形成時間」は、凝集剤及び微細砂を添加後に、沈澱部4内にスラリ界面が形成したことを目視で確認できた時間を示している。
「スラリ界面(mm)」は、ドラフトチューブ下端を基準として、スラリ界面の厚さを、直視型水面計を用いて測定した。
また、表1の「SV値(%)」は、次のように測定した。
1)先ず、第2撹拌室上方でスラリ(母フロック)を採取し、メスシリンダに入れて体積(体積量1)を測定した。
2)そのまま5分間静置し、スラリを濃縮されながら沈積させた。
3)沈積したスラリ部の体積(体積2)を測定した。
4)そして、 SV値(%)=体積2÷体積1×100の計算式でSV値(%)を算出した。
表1における「処理水濁度」は、通常運転を開始した後の処理水濁度を測定することを目的として、上記の如き初期母フロック形成終了後に、設計処理量0.5L/minで原水を流入させつつ、沈澱部4の越流口から沈澱処理水5を流出させて得られる処理水の濁度を測定した。その際、高感度濁度計(笠原理化工業株式会社製「TR-55」)で濁度を測定した。
Figure 2012170911
実施例1−8に示した条件、すなわち、高速凝集沈澱池を立ち上げる際、水槽内における微細砂の濃度を100mg/L〜4000mg/Lの範囲に設定することにより、初期原水から初期母フロックを形成するまでの時間を、比較例1及び3よりも短時間にすることができ、しかも処理水濁度が原水濁度よりも常に低くなる通常の処理に移行することができることが分かった。よって、このような初期母フロックの形成方法によれば、高速凝集沈澱池の運転を開始又は再開する際に行う初期母フロックの形成を、従来に比べて短時間で行うことができる。
1 原水
2 一次撹拌室
3 二次撹拌室
4 沈澱部
5 沈澱処理水
7 排泥
9 撹拌翼
11 凝集剤及び微細砂
P1、P2、P3、P4、P5 ポンプ
51 原水
52 一次撹拌室
53 二次撹拌室
54 沈澱部
55 沈澱水
57 排泥
58 無機凝集剤
59 撹拌翼
60 外側ドラフトチューブ

Claims (7)

  1. 高速凝集沈澱池を立ち上げる際、水槽内において、初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を存在させて前記初期原水から初期母フロックを形成し、その後、当該初期母フロックの存在下で原水からフロックを形成する高速凝集沈澱法における初期母フロックの形成方法であって、
    100μm以上の質量割合が5%以下で、且つ10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有し、且つ、比重が2.0〜4.0である微細砂からなる凝集助剤と、無機凝集剤とを、初期原水に加えて初期母フロックを形成することを第1の特徴とし、
    水槽内における微細砂の濃度を100mg/L〜4000mg/Lとすることを第2の特徴とする、初期母フロックの形成方法。
  2. 初期原水に対して100mg/L〜4000mg/Lの微細砂を加えることを特徴とする請求項1に記載の初期母フロックの形成方法。
  3. 微細砂100質量部に対して凝集剤を10〜150質量部加えることを特徴とする請求項1又は2に記載の初期母フロックの形成方法。
  4. 初期原水を水槽内に溜めた後、或いは、初期原水を水槽内に溜める途中から、無機凝集剤及び凝集助剤を初期原水に加えて撹拌し、初期原水を流出させることなく、初期原水から初期母フロックを形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の初期母フロックの形成方法。
  5. 初期原水と共に無機凝集剤及び凝集助剤を水槽内に導入する一方、処理水を水槽から流出させながら、水槽内において撹拌して初期原水から初期母フロックを形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の初期母フロックの形成方法。
  6. 凝集助剤を水槽内に投入開始してからの、凝集助剤の水槽内平均濃度の上昇速度を1〜90mg/L/minとすることを特徴とする請求項4に記載の初期母フロックの形成方法。
  7. 凝集助剤を水槽内に投入開始してからの、凝集助剤の水槽内平均濃度の上昇速度を120mg/L/min以下とすることを特徴とする請求項5に記載の初期母フロックの形成方法。
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