JP2012167301A - 溶射粉及び溶射粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の溶射粉は、真密度に対するかさ密度の相対密度が46%以下であることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
その結果、本発明者らは、溶射粉のかさ密度を変化させることにより付着性を制御することが可能であり、従来の溶射粉ではかさ密度が高いものの、当該かさ密度を下げることによって所望の付着性を得られるとの知見に至った。
本発明は、上記知見に基づいて得られたものであり、以下のとおりである。
本発明の溶射粉は、真密度に対するかさ密度の相対密度が46%以下であることを特徴とする。
この際、溶射粉は内部に空隙を有するのが好ましい。
次に、本発明の第一の実施形態に係る溶射粉及び溶射粉の製造方法について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の溶射粉及び溶射粉の製造方法における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
次に、図1のフロー図に基づいて、本発明の溶射粉の製造方法を具体的に説明する。
ステップS1では、ジルコニア粒子を成形してステップS2へと移行する。また、ここで成形されたジルコニア粒子の粒径は0.5〜10μの範囲にあることが好ましい。
図2は、このステップS1のジルコニア粒子の具体的な成形ルーチン(第一の実施の形態)を示す。
ステップS11では、ボールミルに酸化ジルコニウム(ZrO2)と酸化イッテルビウム(Yb2O3)とを混合し(重量比84:16)、その固溶体であるイッテルビア安定化ジルコニア(YbSZ)であるジルコニア粒子の成形を開始して、ステップS12へと移行する。尚、原料粉末の大きさは共に1.0μである。
ステップS12では、ステップS11で混合された原料を乾燥・粉砕してステップS13へと移行する。
ステップS13では、ステップS12で乾燥・粉砕した原料を熱処理してステップS14へと移行する。この際、熱処理温度は1200〜1400℃である。
ステップS14では、熱処理後の原料を粉砕してジルコニア粒子を成形する。尚、本実施の形態における粒径は約3μである。
ステップS2では、上述したステップS1とは別に、予め有機物粒子を所定粒径で成形する。本実施の形態では、セルロース(繊維)をボールミルで粉砕した後、乾燥して有機物粒子(ビーズ)を形成した。この際、有機物粒子は、500〜1000℃で分解除去可能なものであれば特に限定はされないが、ポリエステル又はセルロースが好ましく、その粒子大きさは5〜30μが良い。
ステップS3では、ステップS1で成形されたジルコニア粒子と、水と、界面活性剤とが所定の割合となるように秤量する。尚、割合としては、例えば、重量で、水1に対して、ジルコニア粒子の粉体6、界面活性剤0.6程度である。
ステップS4では、ステップS3で秤量した材料を転動ボールミルを用いて混練し、凝集していた粒子が元の粒径程度になるまで再分散してスラリーを製作し、ステップS5へと移行する。この際の混練時間は約24時間である。また、転動ボールミル内で形成されるジルコニアボールの直径は20mm程度である。
ステップS5では、ステップS4でスラリー化された原料に、ステップS2で予め成形された有機物粒子とともに、水やバインダーを添加して混合し、スラリー調整を行ってステップS6へと移行する。尚、スラリーは固形分濃度50〜70重量%で粘度が50〜500mPa.sec程度に調整するのが好ましい。また、水とスラリーとの比は1:1である。また、有機物粒子は、後述するように有機物粒子によって空隙が形成され、真密度に対するかさ密度の相対密度が46%以下となるように、スラリー内におけるジルコニア粒子に対する割合が適切に制御される。
ステップS6では、ステップS5で調整されたスラリーをスプレードライによって粉末成形してステップS7へと移行する。この際のスプレードライには例えばロータリアトマイザー(回転円板式噴霧乾燥機)を用い、その回転速度は10000〜13000rpm、熱風温度は200〜300℃とするのが好ましい。また、スラリーの送り速度は100−500g/min程度とし、その際の有機物粒子の平均粒径は70〜100μとなる。また、有機物粒子は500〜1000℃で分解除去されうるため、ここでは、有機物粒子が分解除去されないように、両者の温度は調整される。さらに、スラリーは約60μの液滴となるが、乾燥空気中で徐々に乾燥する。また、外穀から固化していくが、原料粒子が粗いため、粒子の隙間から水分が抜けていく。
ステップS7では、ステップS6で粉末成形したものを熱処理炉に投入し、固溶体化してステップS8へと移行する。この際、熱処理の温度は1400〜1800℃で、処理時間は約10時間である。この固溶体化処理により、微細な酸化ジルコニウム(ZrO2)や安定化剤が拡散・固溶化する。また、粒径は焼成されることから約50μとなる。また、有機物粒子の分解温度よりも高い温度で処理を実施することから、混入している有機物粒子は分解除去され、有機物粒子が存在していた箇所は空隙として形成される。
ステップS8では、ステップS7で固溶体化した原料をジャイロシフタにより分級して粗大なゴミ等を除去し、このルーチンを終了する。
このように形成されたジルコニア粒子は、ステップS3で投入されたジルコニア粒子に有機物粒子が付着し、ステップS7でその有機物粒子が分解除去される。これにより、ジルコニア粒子の表面には、図3(本発明1)に示すように、有機物粒子が内部に食い込んだ分だけ凹んだクレータ状の空隙が形成される。したがって、ジルコニア粒子は、空隙が形成された分だけかさ密度を低くすることができる。
次に、図4のフロー図に基づいて、第二の実施形態に係るジルコニア粒子の成形ルーチンを説明する。上記第一の実施形態では、ジルコニア粒子の成形ルーチンにおいて、二種類の酸化材料を混合し(ステップS11)、乾燥・粉砕したうえで(ステップS12)、熱処理を施し(ステップS13)後に、粉砕した(ステップS14)。これに対し、第二の実施形態では、ステップS11の酸化原料を混合した後に、電融処理を施したうえで粉砕し(ステップS21)、ステップS14として電融処理後の原料を粉砕してジルコニア粒子を成形する。
即ち、ステップS21では、ステップS11で混合された原料を坩堝に入れ、アーク電融(2400〜2600℃)で溶かし込み、冷却後、ステップS14粉砕へ移行する。このように形成されたジルコニア粒子の表面においても、図3(本発明2)に示すように、従来の製造方法で製造されたジルコニア粒子と比較して、かさ密度が低いものとなる。なお、この第二の実施形態においては、上記ステップS2で説明した有機物粒子の投入は行わないが、これに限るものではなく、さらに有機物粒子を投入するようにしても良い。
上記第一の実施形態の製造方法でイッテルビア安定化ジルコニアによって溶射粉を製造した結果、有機物粒子の混合割合を制御することで、イッテルビア安定化ジルコニアの真密度6.5g/cm3に対するかさ密度の相対密度が40.1%(かさ密度で2.61g/cm3)とすることができた。
上記第二の実施形態の製造方法でイッテルビア安定化ジルコニアによって溶射粉を製造した結果、電融により溶射材料を溶解することで、同様の相対密度が42.5%(かさ密度で2.76g/cm3)とすることができた。
また、比較例として、従来の製造方法でもイッテルビア安定化ジルコニアによって溶射粉を製造した。具体的には、従来の製造方法は、第一の実施形態において有機粒子を混合せずに溶射粉を製造する。
相対密度46%以下(かさ密度3g/cm3以下)となる実施例1,2ではいずれも成膜(溶射)回数が1未満であり、良好な付着性のもと少ない成膜回数で所定厚の膜を形成することができた。なお、実施例1の成膜回数は、比較例1の成膜回数を基準として、0.85倍及び0.90倍であった。また、実施例2の成膜回数は、比較例1の成膜回数を基準として、0.85倍、0.90倍及び0.95倍であった。
Claims (4)
- 真密度に対するかさ密度の相対密度が46%以下であることを特徴とする溶射粉。
- 内部に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載の溶射粉。
- 溶射材料を構成する成分を混合して、溶射材料となる粉体を形成する第一の工程と、
前記粉体と有機材料からなる粒子とを混合してスラリーを生成する第二の工程と、
前記スラリーから粉体を成形する第三の工程と、
成形した粉体を熱処理する第四の工程と、
を備えることを特徴とする溶射粉の製造方法。 - 溶射材料を構成する成分を混合して、電融により溶射材料となる粉体を形成する第一の工程と、
前記粉体からスラリーを生成する第二の工程と、
前記スラリーから粉体を成形する第三の工程と、
成形した粉体を熱処理する第四の工程と、
を備えることを特徴とする溶射粉の製造方法。
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